2025年12月10日 CD発売 SICP-31831
※高品質CD Blu-spec CD2でのリリース
※配信はグローバルで先行配信(2025.9.19)
『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』
(原題:A Big Bold Beautiful Journey)
監督:コゴナダ
脚本:セス・リース
音楽:久石譲
出演:コリン・ファレル、マーゴット・ロビー
US公開日:2025年9月19日
日本公開日:2025年12月19日
もしも人生をやり直せる不思議なドアがあったら?
日本が誇る作曲家・久石譲が初めてハリウッド映画音楽を手がけた『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』。主演は、「スーサイド・スクワッド」シリーズや『ウルフ・オブ・ウォールストリート』など数々の話題作に出演し、『スキャンダル』でアカデミー賞にもノミネートされたハリウッドを代表するトップ俳優、マーゴット・ロビー。全世界で社会現象を巻き起こした『バービー』以来、約2年ぶりの映画出演作としても注目を集めています。また、『イニシェリン島の精霊』でベネチア国際映画祭・最優秀男優賞を受賞し、『アフター・ヤ』で全米映画批評家協会賞主演男優賞を獲得したコリン・ファレルがW主演。名実ともにハリウッドのトップスターの2人を演出するのは、韓国系アメリカ人のコゴナダ監督。スタジオジブリの熱烈なファンとしても知られ、ジブリ作品の音楽で世界的に名高い久石へ本作の音楽を直接オファー。久石のルーツであるミニマル・ミュージックの手法で全曲が作曲されたサウンドトラックにも注目が集まります。また、劇中を彩る挿入歌としてシンガーソングライターLaufey(レイヴェイ)やMitski(ミツキ)の楽曲も収録。
(CD帯より)
(メーカー・インフォメーションより)
CDライナーノーツには前島秀国氏による楽曲解説5ページが収められている。映画ストーリーと楽曲の関係性、および楽曲ごとの結びつきを久石譲の作曲手法をまじえて具体的に紐解いている。本編未使用楽曲がサントラ盤に収録されていることにも言及している。物語の内容にも深く触れているため映画鑑賞後の深い振り返りとして大いに役立つにちがいない。
久石譲コメントのみ紹介する。
「コゴナダさんはインディーズの監督ですが、今回はハリウッド、しかもエンタテインメント作品ということで、ポップスの曲を多用していました。そのため、僕の音楽の曲数はそれほど多くはないですが、それを承知の上でお引き受けしました。映画音楽では、いろいろなタイプの劇伴を書かされることが多いのですが、今回は(曲数が少ないことが幸いして)それをしないで済みましたし、かえってミニマル・ミュージック的な曲で通せたので、嬉しかったです」
(CDライナーノーツより)
レビュー
本編109分、サウンドトラック61分、うち久石譲音楽40分、本編使用は約30~35分。
久石譲コメントにあるとおり音楽は全てミニマル・ミュージックのスタイルで書かれている。演奏はオーケストラの小さい編成そして久石譲によるピアノ。Future Film Orchestraは久石譲のもと結集したFuture Orchestra Classicsから派生している在京オケを中心としたトップ奏者からなる精鋭たちだ。
切り詰められた素材と音色とで豊かな余白を作り出している。控えめという言い方もできるかもしれないが、むしろスペースの広がりを活かしてうまく映画の展開やバラエティに富んだ挿入歌らを有機的に繋ぐ役割を果たしている。不思議なのは感情やエモーショナルの煽動を抑えるはずのミニマル音楽がこの映画の感情移入を助けている。
本作にはポップスをはじめ多くの挿入歌が使用されている。エンドクレジットや海外の情報サイトなども参照すると10曲以上に及ぶ。ただしそのほとんどは1,2分程度しか流れていない。一方で、サントラ収録の書き下ろし含む挿入歌6曲はたっぷりと聴くことができる。映画を彩るにふさわしいナンバーたちだ。
パッヘルベルのカノンを使用したポップス「Full of life / Christine and the Queens」も印象に残っている。
「実は2022年にアメリカのテレビドラマの音楽の話があって、これも実はトラウマを受けた青年の話だったんですよ。いわゆる配信系の大作で、まだ台本はなく、ただトラウマを受けた青年の話ということくらいしかわかっていなかった。」
これは映画『君たちはどう生きるか』についての久石譲インタビューからだ。当時日常的に書き溜めていた曲のいくつかは『君たちはどう生きるか』で活かされることになる。もしかするとその時採用されなかったデモ音源らから本作の音楽に活かされた楽曲もあるのかもしれない。ミニマルのスタイルといい音色パレットといい、『君たちはどう生きるか』と『ビューティフル・ジャーニー』は姉妹作品と呼べるほど密接している。二つを合わせて繊細な世界観を扱った壮大な音楽世界として並べ聴くのもまた味わい深い。
サウンドトラックに戻る。本編音楽中「4. Sara and David」前半部のみ、「7. The Lighthouse」後半部のみ、「9. Memory of Dad」冒頭のみ、などとなっていた。トラックから切り貼りしているのではなく、トラックのここしか使っていない、ここまでしか使っていないがあるようだ。きっと他にもあるだろう。
同じモチーフをテーマとした楽曲は、Track-1,5,7、Track-4, 22、Track-12, 19、Track-13, 20, 21でグルーピングすることができる。物語と呼応するように、楽曲を変容させることで結びつきを提示している。
さらに見ていくと「1. Rain」冒頭から流れる「タタタ・タタタ」のモチーフは、様々なトラックで素材の一部として使われていると聴こえる。「9. Memory of Dad」もまたそうだ。そしてこのTrack-9などでは久石譲が提唱する単旋律(Single Track Music)の手法も用いらている。
また本編未使用楽曲は「3. The Point」「6. The Door」「8. Silent」「22. Meet Again」であった。実はサントラ盤をPCに取り込んだとき曲名に”(Bonus Track)”と表記される楽曲がありこれと一致している。ライナーノーツで前島氏は未使用楽曲について「8. Silent」を挙げ言及している。つまりは、『ビューティフル・ジャーニー』サウンドトラックは、久石譲がこの作品のために書き下ろした曲が余すところなく収録されている贅沢な音楽集だ。

映画鑑賞後のまとめとして、サウンドトラック61分、うち久石譲音楽40分、本編使用は約30~35分ということになる。ハリウッドスタイルでもなく音楽過多・音楽過剰でもなく、久石譲のスタイルをしっかりと貫き、そのうえで映画と観客を繋げている貢献度は極めて大きいと感じた。
原題のA Big Bold Beautiful Journeyは本編セリフでも登場する。日本語字幕には「心に残る壮大な旅」とあった。
メディアレビュー
久石譲初のハリウッド作『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』を読み解く / その選曲が、映画をつくる | カルチャーメディアNiEW(ニュー)
https://niewmedia.com/series/shibasaki/2512abbbj_edski_wrsbs/

1. Rain
2. I’m Not
3. The Point
4. Sara and David
5. A Big, Bold, Beautiful Journey
6. The Door
7. The Lighthouse
8. Silent
9. Memory of Dad
10. High School
11. Mom Passed Away
12. To Her Mother’s Side
13. Memories of Mother
14.The Balloon and the Bear
15. Earth Kiss
16. Couple Fight
17. The Accident
18. Midnight Walk
19. Twin Paths
20. The Childhood Home
21. When I Was Young
22. Meet Again
23. The Risk Laufey
24. Winter Wonderland Laufey
25. But Beautiful Laufey
26. Let’s Dream in the Moonlight (Take 1) Laufey
27. Let My Love Open the Door Mitski
28. The Risk (Instrumental) Laufey
Score Composed and Produced by Joe Hisaishi
Conductor / Piano: Joe Hisaishi
Performed by Future Film Orchestra
Voices by Mai Fujisawa and The Philharmonic Orchestra of Tokyo (Track 8)
Manipulator: Yasuhiro Maeda
Recorded by Hiroyuki Akita, Suminobu Hamada
Mixed by Hiroyuki Akita
Mastered by Rob Kleiner
Music Sheet Preparation: Saori Minomo
Recorded at Victor Studio, Tokyo / LANDMARK Studio, Yokohama, Japan, December 17-19, 2024
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