Info. 2005/01/31 [雑誌・新聞]「文藝春秋」「プレジデント」「毎日新聞夕刊」掲載

・3月10日発売「文芸春秋」4月号 new!
伊右衛門の録音風景など、音楽制作中の久石さんの表情を見ることが出来ます。

・2月28日(月)発売 「PRESIDENT」3月21日号
人に教えたくないお店という事で、久石さんがよく通うの秘密のお店を紹介しています。久石さんの別の面が見られる興味深い記事になっているようです。 “Info. 2005/01/31 [雑誌・新聞]「文藝春秋」「プレジデント」「毎日新聞夕刊」掲載” の続きを読む

Disc. 久石譲 『FREEDOM PIANO STORIES 4』

久石譲 『PIANO STORIES 4 FREEDOM』

2005年1月26日 CD発売 UPCI-1014

 

日常に追われ、がんじがらめの生活。
息苦しい、閉塞感。
人は少なからずそんな思いを心に宿しているのでは?

いつの日だったろう? 夢をあきらめ自分の手の届く範囲で納得しようと言い聞かせてしまったのは。
その大きな壁を作っているのは自分なのでは?
でも、それも自分自身の人生。

それを受け入れた上で、自由に、そして心を解き放てたら。
自分の中で自由な気持ちを取り戻せたら、きっと楽になれるのでは。

Freedom

久石譲

(「Joe Hisaishi Freedom Piano Stories 2004」コンサート・パンフレット より)

 

 

「実は、サブタイトルに”心の自由を求めて”ってつけようかなって思ってたくらい、最近、なんとなく世の中に閉塞感があって生きづらくなってると思うんです。たとえば”なにかやろう”って思っても、結果がなんとなくわかっちゃうんですよね。そうすると”これやっても仕方がない””これもやっても先が見えてる”みたいな感じで自分のほうで壁を作っちゃってなにもやらなくなってきてる気がしてて。僕自身もそうだし、周りの人たちなんかを見ててもすごくそういうのを感じていて。だから、自分の中のそういうバリアをはずしてやったらもっと生きやすくなるんじゃないかなぁって。そんな思いからこういうコンセプトになったんです」

「そうですね。僕にとってこの”FREEDOM”は過渡期だったと思うんですよ。いまの世の中みたいに価値観がボロボロに崩れだした時代は、作家ってどうしても発言をきちっとしたいんですよ。自分が感じる世の中だったりとか、僕もそうしたくなってたんですけど、でもなんかそれは違うなっていう予感だけがあって。それで悩んだんです。でも、結果的に宮崎さんの『ハウルの動く城』も、たとえば『もののけ姫』のときのような壮大な、”人間とは?”っていう問いかけはしていないですよね。決して重い作品ではないし。きっとこの時代に、シリアスな発言しても疲れきってる人間にそれ言ってなんになる? っていうことなんです。それだったら、隣の人とつながってるんだとか、一日一日の思いを大切にするんだとか、もっと身近なことを言うくらいがせいぜいかなって。だから僕にとっても、宮崎さんにとっても次のための準備期間でありオアシス的作品になったんじゃないかな」

「あのね、僕にとって2004年はワルツの年だったんですよ。実は『ハウル~』だけじゃなくて、バスター・キートンもテーマがワルツだったし、ワールド・ドリーム・オーケストラでもショスタコーヴィチのワルツを演奏したし。すごくワルツに凝った1年だったなぁって。なんかね、ワルツのあのリズムっていうのが、前作の『ETUDE』なんかでちょっと行き過ぎちゃった自分をもう一回戻してくれたんだよね。それが『ハウル~』の映像にも不思議とハマったんだよね」

Blog. 「月刊ピアノ 2005年2月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

2003年9月6日CM放送開始「東ハト キャラメルコーン」では、本作収録曲「Ikaros」が使用されているが、CM original versionとは少し異なる。CMでは伴奏にアコスティックギターも使われ、メロディーから最後のサウンドロゴまでの流れを手がけている。

2003年11月25日CM放送開始「ベネッセコーポレーション 進研ゼミ」では、本作収録曲「Spring」が使用されているが、CM original versionとは少し異なる。CMでは、伴奏のピアノに加えてアコースティックギターも重なり16分音符粒が細かく、より爽快で軽快な印象になっている。

2004年3月6日CM放送開始「サントリー 京都福寿園 伊右衛門」では、本作収録曲「Oriental Wind」がしようされているが、CM original versionとは異なる。

 

 

久石譲 『PIANO STORIES 4 FREEDOM』

1.人生のメリーゴーランド (映画「ハウルの動く城」メインテーマ リアレンジヴァージョン)
2.Ikaros (Tohato「キャラメルコーン」CFソング)
3.Spring (Benesse「進研ゼミ」CFソング)
4.Fragile Dream
5.Oriental Wind (サントリー緑茶「伊右衛門」CFソング)
6.Legend (MBS「美の京都遺産」テーマソング)
7.Lost Sheep on the bed
8.Constriction
9.Birthday

初回盤:「人生のメリーゴーランド」ピアノ譜 封入

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano:Joe Hisaishi

Strings:Angèle Dubeau & La Pietà (except Track-9)
Solo Violin:Angèle Dubeau
Percussion:Sawako Yasue
Bandoneon:Koji Kyotani
Guitar:Masayoshi Furukawa
Pianica:Joe Hisaishi
Strings:Koike Hiroyuki Strings (Track-9)
Interpreter:Iris Germain

Recorded at
Wonder Station
Victor Studio
HAKUJU HALL

 

FREEDOM PIANO STORIES 4

1.Merry-Go-Round of Life (from ‘Howl’s Moving Castle’)
2.Ikaros
3.Spring
4.Fragile Dream
5.Oriental Wind
6.Legend
7.Lost Sheep on the bed
8.Constriction
9.Birthday

 

報告編:「Freedom」全国ツアー終了

連載 ハウルの動く城 久石譲

連載 久石譲が挑む「ハウル」の動く音 (読売新聞)
報告編:「Freedom」全国ツアー終了

作曲家でピアニストの久石譲によるコンサートツアー「Freedom」の最終公演が11月29日、東京・初台の東京オペラシティコンサートホールで行われた。

ツアーは、カナダの女性弦楽アンサンブル、アンジェル・デュボー&ラ・ピエタとの共演で、11月3日の神奈川・相模大野での公演を皮切りに、全国14か所で行われた。

自らの希望で今回の共演を実現させた久石は、「彼女たちを、偶然テレビで見て、そのスタイルに魅了された。真っ黒な衣装で激しく体を揺らす姿がとても魅力的だった」と話す。

夏のオーケストラツアーでは指揮が中心だったが、今回はピアニストに徹した。難易度の高い編曲に自ら演奏者として挑む苦労もあったようで、演奏の途中、「今日で最後だと思うと、正直ほっとする」と語った。

前半は、1992年に発売されたソロアルバム「MY LOST CITY」からの曲が中心。「密度の高い曲を前半に集中させようとした時に思いついたのが、ピアノと弦の曲が中心の『MY LOST CITY』だった。今あれをやるとどうなるのかなと思った」

「心の自由」をテーマに制作中の新アルバム(1月発売)の楽曲も披露。収録予定の「ハウルの動く城」のテーマ曲を新アレンジで演奏すると、客席から大きな拍手が起こった。

コンサートのために施された編曲には、どれも荒々しさと優雅さ、単純さと複雑さといった相対する要素が混在している。あえて極端に対比させることで、自己をさらけ出すことを徹底的に追求しているようだった。

久石は、ツアー前に行ったインタビューでこう話している。

「まず自分自身が作ってしまっている束縛から解放されないと何も始まらないんじゃないかという思いが強い。何かを捨てるということではなく、ありのままの自分を受け入れることで生まれる自由があるはず」

コンサートでは、それを見事に実践していた。この日は演奏に粗さも残ったが、もはやそんなことは些細なことに感じられる「久石譲の音楽」がそこにあった。(依田謙一)

(2004年12月7日 読売新聞)

 

連載 ハウルの動く城 久石譲

 

Info. 2004/11/23 [TV] NHK「夢・音楽館 久石譲&平原綾香」出演

10月27日に収録されたNHKの番組「夢・音楽館」が放送予定です。
イッセー尾形さんの司会で、ゲストは久石さんと歌手の平原綾香さん。
久石さんの演奏は最新作2曲と平原さんとのコラボレーション1曲。
曲名は見てのお楽しみ!乞うご期待。

11月23日(火) 14:30~14:59 デジタルハイビジョン(Bモード)
11月25日(木) 23:15~23:44 総合
11月30日(火) 1:55~2:24 総合
12月1日(水) 2:45~3:14 BS-2

 

 

2023.05.14 追記

プログラム

  • ジュピター(平原綾香)
  • いのちの名前(平原綾香、久石譲)
  • 人生のメリーゴーランド(久石譲、高橋尚久ストリングス)
  • 祝福(平原綾香)
  • Spring(久石譲)

 

Disc. 久石譲 『ハウルの動く城 サウンドトラック』

ハウルの動く城 サウンドトラック

2004年11月19日 CD発売 TKCA-72775
2020年11月3日 LP発売 TJJA-10030

 

2004年公開 スタジオジブリ作品 映画「ハウルの動く城」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

新たに作曲されたテーマ「人生のメリーゴーランド」を中心に構成された映画本編の楽曲を収録。新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で今回もホールで生収録された。指揮・ピアノも久石が担当。録音は2004年6月。倍賞千恵子の主題歌も収録。

 

 

制作ノート

1曲のテーマ曲が決め手となった音楽

今回の音楽制作はヨーロッパへの音楽ロケハンからはじまった。久石譲さんはアルザス地方を訪問、そこで掴んだ映画の世界観を宮崎監督からの音楽メモと照らし合わせながら創作し、東欧の名門チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、非常に完成度の高いイメージ交響組曲をまず作った。その中にはミロスラフ・ケルマン(63歳にしてチェコ・フィル現役のトランペット奏者)によるソロ演奏が印象的な「ケイヴ・オブ・マインド」という曲もあった。完成したアルバムを聴いた宮崎監督はこの曲を気に入り、劇中でも使用することにしたが、監督はここで久石さんに対しひとつの注文を出した。テーマ曲を1曲作ってほしい、というものだ。実は宮崎監督、これまでの作品では各キャラクターの感情や動き等場面に合わせた音楽をつけるという方向性で久石さんとやってきたのだが、今回は映画全体を通して常に流れる印象的なテーマを1曲欲しいと要望したのだ。久石さんの1曲のテーマ曲作りがはじまった。そうして誕生したのがあるワルツ曲。その曲を聞いた宮崎監督は大喜びし、「人生のメリーゴーランド」と命名した。その後、このテーマ曲を中心に本作の映画音楽は構成されていった。

(映画「ハウルの動く城」劇場用パンフレット より)

 

 

一つのテーマ曲で貫いた『ハウルの動く城』

で、まずは一曲め。弾き終わると宮崎さんは大きく頷いて微笑んだ。鈴木さんもまあまあの様子。ほっと胸を撫で下ろす。ちょっと勢いのついた僕は三番目に弾く予定だった曲の順番を繰り上げた。

「あのー、ちょっと違うかもしれませんが、こういう曲もあります」

宮崎さんたちの目を見ることもできず、ピアノの鍵盤に向かって弾き出した。

そのワルツは、そんなに難しくはないのだが、僕は途中でつっかえて止まってしまった。まるで受験生気分なのである。最高の緊張状態で弾き終えたとき、鈴木敏夫プロデューサーがすごい勢いで乗り出した。眼はらんらんと輝いている。「久石さん、面白い!ねえ、宮さん、面白くないですか?」宮崎さんも戸惑われた様子で「いやー」と笑うのだが、次の瞬間、「もう一度演奏してもらえますか?」と僕に言った。が、眼はもう笑ってはいなかった。

再び演奏を終えたとき、お二人から同時に、「いい、これいいよー!」「かつてないよ、こういうの!」との声をいただいた。

その後、何回かこのテーマを弾かされたが、この数か月本当に苦しんできたことが、ハッピーエンドに変わる瞬間だったので、ちっとも苦ではなかった。

Blog. 一つのテーマ曲で貫いた『ハウルの動く城』「人生のメリーゴーランド」誕生秘話 (久石譲著書より) 抜粋)

 

 

 

-それらはどんな曲だったんですか?

久石 「1曲目は、わりと誰が聴いても「いいね」と思えるオーソドックスなテーマでした。2曲目は、自分としては隠し球として用意していったワルツで。これは採用されないだろうと思って演奏したんですけど、途端に宮崎さんと鈴木さんの表情が変わって、すごく気に入ってくれたんです。それが『人生のメリーゴーランド』で、結局3曲目は演奏せずに終わりました。」

-なぜ、ワルツにしてみようと思ったんですか?

久石 「その理由はちょっと難しいんだけど、最近、個人的に音楽への要求度が高くなってきていて、映像に付けるには、自分のやっている音楽は強すぎるんですよ。でも、今自分が最も求めていることをやるのが作曲家としては正しいのだから、その落としどころをどうしようかと考えていて出てきたのが、ワルツだったんです。ワルツなら、自分がやりたい音楽と『ハウル』の映像の接点になってくれると。だから、宮崎さんに気に入ってもらえたのは、すごく嬉しかったです。」

 

-サントラのレコーディングでは、チェコフィルから一人だけトランペット奏者の方を招いたということですが?

久石 「ええ。交響組曲の中の「ケイブ・オブ・マインド」という曲のソロを吹いてくれたミロスラフ・ケイマルさんという方です。この曲は、サウンドトラックの打ち合わせの時に、試しにある重要なシーンに流してみたら、あまりにもぴたっりハマってしまったのでそのまま使おうということになったんです。でも、サウンドトラックの中に、チェコフィルの演奏を入れるわけにはいかないので、ケイマルさんをこの1曲のために呼ぼうということになりました。」

-他の方ではダメだったんですか?

久石 「ケイマルさんはこの曲を完全に自分のものにして吹いていたし、宮崎さんの心の中にも、ケイマルさんのトランペットの音が染みついていました。この曲を使うなら、ケイマルさん以外に考えられない、と。楽器というものは、他の奏者が演奏すると、全く音の表情が違ってしまうものなのですが、特にトランペットはそれが顕著なんです。」

 

-交響組曲もサウンドトラックも、完成度が高く、それぞれ違った魅力を持つ作品になったんじゃないでしょうか?

久石 「サウンドトラックは「人生のメリーゴーランド」を、これが同じ曲なのかと思えるくらい、いろいろ変奏しているので、そこを中心に楽しんでいただければ、と。交響組曲は、三管編成のフルオーケストラ作品としてかなり完成度が高いので、ぜひ聴いていただきたい。僕も、いつかコンサートで全曲まとめて演奏してみたいと思っているんです。」

Blog. 久石譲 「ハウルの動く城」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「サウンドトラックを録っている時に宮崎さんが、ある曲を僕がつけようと思っていた場面と違う所につけたいと思ったんです。宮崎さんは作業をしながらどんどん考えていく方ですから。その時、宮崎さんは悩まれたらしいですね。思っている所と別のシーンに曲を使ったら、僕が怒り狂うということを宮崎さんは知っていますから(笑)。オーケストラの音録りをしている間中、『ウ~ン』と唸っていたと聞きました。僕は離れた場所にいますから、そんなことは知らなかったんですが。それでとりあえず、宮崎さんが使いたいという場面にその曲をあててみたんです。これがキッカケの部分が音楽的にズレることも全然なくて、いいんですよ。ものを作る人間同士ですから、ぶつかり合うことや毎回いろんなことがありましたけれども、20年やれてこれて良かったと思いますね。画と音が生理的にシンクロすることも含めて、いい意味でここまで来れたんだなあと実感しました。どんな作品でも苦しみますから、最後は早く終わればいいと思うんです。でも『ハウルの動く城』に関しては、もう半年この仕事をやっていたいと思いました。」

「元々音自体に関しては、シンセサイザーとかいろんなものを使って、枠にはめない作り方をしてきたんです。『千と千尋の神隠し』ではバリ島や沖縄、アフリカのリズムを、現地の人が叩いたリズムをサンプリングしてオーケストラと融合させた。そういう音がアバンギャルドであるのは、僕にとっていいことなんです。ただ音の入れ方に関しては、これまでクリックを作ってかっちりと画にはめ込んでいたんです。ただ今はもっとファジーにやってもいいかなと。つまり多少音は伸びたとしても、そこに心がこもっていれば微妙なニュアンスが伝わるほうを選ぶ。これは自分がオーケストラの指揮をするようになって、変わったんだなと思うんです。音やリズムの正確さだけではなく、そこでもう一歩踏み込んだ表現をして次にいく。『ハウルの動く城』のレコーディングでは、そのニュアンスを大事にしました。とは言えちゃんとしたクリックも用意したんです。ただアクシデントでレコーディングの時に機械が故障して、曲の終わりを示すマーカーも無しに勘だけで3分ぐらいの曲をお尻がピッタリ合うようにしなくてはいけなくなって。それでも大体は合うものなんですよ。ちょっとしたズレが音楽的なニュアンスになって、映画の余韻にもなっている。作曲者の意図としては、画面が変わった瞬間に音がガンと入るとか、設計図を書いて組み立てていく。それでしっかりした演奏さえすれば、レコーディングはOKなんです。でも今回のように生の演奏をしていくと、自分が思ったテンポと実際にいい音楽になるテンポは違うんです。演奏者がいい気持ちになって朗々と演奏をすると長くなりますね。その長くなったことで成立するニュアンスの方を大事にして、その分をどこかで調整しようと努力する。こういうやり方をしていくと、映像が呼吸するように音楽も呼吸をしだすんです。がっちりしたものを作るよりも、音のニュアンスを活かす。これは僕にとって大きな方向転換なんです。ただ、最初からファジーでいいというのではない。きっちりと作り上げておいて、レコーディング本番で崩す。今回はそれが、いい効果を上げていると思います。僕にとっては新鮮で、凄く興奮するレコーディングでしたよ。」

Blog. 「月刊アピーリング 2004年10月号」久石譲スペシャルインタビュー “ハウルの動く城” 内容 より抜粋)

 

 

「あれは、実は宮崎さんの意図なんです。今回はソフィーというヒロインが90歳から18歳の間でどんどん表情が変わっていく。そこで一貫してこれはソフィーであるということを印象づけるために、そのときに必ず流れる音楽がほしいって要望があって。それは、宮崎さんの中でとっても重要だったんです。それで、実は劇中の全30曲中18曲がこのテーマのヴァリエーションなんです。これは作曲家にとっては、非常につらいんですよ。だって作曲の技術を駆使しなくちゃならないから(笑)。あるときは、ラブロマンス的なもの、あるときは勇壮で、あるときはユーモラスで。でも、大変ではあったけど仕上がりを観て、こういう意図を要求された宮崎さんはあらためてスゴイと思いましたね」

Blog. 「月刊ピアノ 2005年2月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「舞台が西洋で、フルオーケストラでやろうと決めていました。個人的には音楽的な主張が強くなって、複雑な方向にいきそうな時期でしたから、映像との調和を考え、シンプルなワルツの力を借りました。」

「僕らはそんなこと言い合いません。「最高!」と僕はいい、テレもあるのか「とんでもないものを作っちゃいましたね」と宮崎さんは毎回いわれる。僕が『ハウル』で「やったな!」と思うのは、これまでは1秒の30分の1まで計算して、映像と音楽を合わせてきました。今回はアバウトにしています。映像を見ながらオーケストラを指揮して、音楽をつけたのですから。」

「デジタルだとテンポが一定になるじゃない。そうした計算づくではなく、たとえシーンの合わせ目が微妙にズレたとしても、気分の充実を大事にしたかった。この方法は『風の谷のナウシカ』や『となりのトトロ』以来。20年ぶりですが、後退ではなく、前進だと思っています。」

Blog. 「kamzin カムジン FEB. 2005 No.3」”ハウルの動く城” 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

「ハウルの動く城」

しばらく悩んだ後、「ハウル」のメインテーマはワツルがいいと考えた。アルバム「ETUDE」の影響もあり、自分の音楽が映像とマッチングするよりも強い主張を持ち始めていることをボクは自覚していた。この問題を解消するための方法がワルツのど導入だった。

どんなに複雑なテクスチュアを導入しても、ワルツという3拍子のリズムは行き過ぎた音楽表現を抑制してくれる。

ワールド・ドリーム・オーケストラでも演奏したショスタコーヴィチのワルツ(キューブリックの「アイズワイドシャット」のなかにも使われている)が頭のなかに残っていたこともあって、もともと4拍子で書いたものを3拍子に切り替えた。

優れたクリエイターは、自分の予想の範囲内の出来事に興味を示さない。予定調和はおもしろくない。

宮崎監督、鈴木プロデューサーの想定を裏切るのは大変だが、自分のためにも、そして映像と作品のためにも、「ハウル」のテーマをワルツにしたのは正解だった。

余談になるけれど、このとき別案として書いた曲も、完全に捨ててしまったわけではなくて、実は「ハウル」の中で使っている。どこの部分かは、読者の皆様のご想像にお任せしたい。

(「久石譲 35mm日記」(2006年刊)~「ハウルの動く城」項より 一部抜粋)

 

 

参考資料:
連載 久石譲が挑む「ハウル」の動く音 (読売新聞)

 

 

 

 

2020.11 Update

2020年発売LP盤には、新しく書き下ろされたライナーノーツが封入された。時間を経てとても具体的で貴重な解説になっている。

 

 

 

 

ハウルの動く城 サウンドトラック

1.-オープニング- 人生のメリーゴーランド
2.陽気な軽騎兵
3.空中散歩
4.ときめき
5.荒地の魔女
6.さすらいのソフィー
7.魔法の扉
8.消えない呪い
9.大掃除
10.星の湖 (うみ) へ
11.静かな想い
12.雨の中で
13.虚栄と友情
14.90歳の少女
15.サリマンの魔法陣~城への帰還
16.秘密の洞穴
17.引越し
18.花園
19.走れ!
20.恋だね
21.ファミリー
22.戦火の恋
23.脱出
24.ソフィーの城
25.星をのんだ少年
26. -エンディング- 世界の約束~人生のメリーゴーランド

M26.「世界の約束」 歌:倍賞千恵子
作詞:谷川俊太郎 作曲:木村弓 編曲:久石譲

作曲・編曲・指揮:久石譲
プロデュース:久石譲

演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:久石譲
トランペット:ミロスラフ・ケイマル (チェコ・フィルハーモニー管弦楽団)

音楽収録:ワンダーシティ, すみだトリフォニーホール

 

Howl’ Moving Castle (Original Soundtrack)

1.Opening Song – Merry-Go-Round of Life
2.The Merry Light Cavalrymen
3.A Walk in the Skies
4.Heartbeat
5.Witch of the Waste
6.Sophie in Exile
7.The Magic Door
8.Irremovable Spell
9.Cleaning House
10.To Star Lake
11.Unspoken Love
12.In the Rain
13.Vanity and Friendship
14.A Ninety-Year-Old Girl
15.Saliman’s Spell – Return to the Castle
16.The Secret Cave
17.Moving to a New House
18.The Flower Garden
19.Run!
20.You’re in Love
21.Family
22.Love Under Fire
23.Escape
24.Sophie’s Castle
25.The Boy Who Swallowed a Star
26.Ending Song – Merry-Go-Round of Life

 

하울의 움직이는 성 Original Soundtrack
(South Korea, 2004) PCKD-20167

1.오프닝- 인생의 회전 목마
2.명랑한 경기병
3.공중 산책
4.고동
5.황무지의 마녀
6.방랑하는 소피
7.마법의 문
8.풀리지 않는 저주
9.대청소
10.별의 호수로
11조용한 상념
12빗속에서
13.허영과 우정
14.90세의 소녀
15.설리먼의 마법진~성으로의 귀환
16.비밀의 동굴
17.이사
18.꽃의 정원
19.뛰어!
20.사랑이야
21.패밀리
22.전쟁의 사랑
23.탈출
24.소피의 성
25.별을 삼킨 소년
26.엔딩- 세계의 약속 ~인생의 회전 목마

 

Disc. 久石譲 『世界の約束 / 人生のメリーゴーランド』

久石譲 『ハウルの動く城 主題歌 世界の約束』

2004年10月27日 CDS発売 TKCA-72774

 

2004年公開 スタジオジブリ作品 映画「ハウルの動く城」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲 主題歌:倍賞千恵子

 

 

本作品に収録されている「人生のメリーゴーランド」は、「ハウルの動く城 サウンドトラック」に収録のものと、尺(パート構成/繰り返し)などが異なる。サウンドトラック未収録versionとなる。

 

 

久石譲 『ハウルの動く城 主題歌 世界の約束』

1. 主題歌:世界の約束 歌:倍賞千恵子
2. テーマ:人生のメリーゴーランド (インストゥルメンタル)
3. 世界の約束 (オリジナルカラオケ)

「世界の約束」
作詞:谷川俊太郎 作曲:木村弓 編曲:久石譲

プロデュース:久石譲

ジャケット監修:宮崎駿

 

インタビュー:「ハウル」に通じる「Freedom」

連載 ハウルの動く城 久石譲

連載 久石譲が挑む「ハウル」の動く音 (読売新聞)
インタビュー:「ハウル」に通じる「Freedom」

作曲家でピアニストの久石譲によるコンサートツアー「Freedom」が、11月3日から29日まで全国各地で行われる。カナダの女性弦楽アンサンブル、アンジェル・デュボー&ラ・ピエタとの共演だ。コンサートへの意気込みを聞いた。(依田謙一)

—ツアータイトルを「Freedom」とした理由は。

久石 制作中のソロアルバム(10月発売予定だったが1月に延期)と共通のタイトルにしようと思っているところから話したい。今、自分自身が日常にがんじがらめになっていて、強い閉塞感を感じている。これは、この国に生きている皆が感じていることじゃないかと思う。夢は夢として実現しないものになっていて、最初から手の届く範囲で納得しないとやっていけなくなっている。

—前アルバム「ETUDE」は、収録曲「a Wish to the Moon」に代表されるように「夢はいつかかなう」というテーマでしたが。

久石 もちろんそれは今でも大切だと思っているが、まず自分自身が作ってしまっている束縛から解放されないと、何も始まらないんじゃないかという思いが強い。何かを捨てるということではなく、ありのままの自分を受け入れることで生まれる自由があるんじゃないかと。そういうことをアルバムとツアーで伝えたい。

—テーマを代表する曲は。

久石 新アルバムのために「Ikaros」という曲を書いた。アルバムを象徴する曲になると思う。ツアーでも演奏するよ。タイトルありきで、まさにギリシャ神話に登場するイカロスのこと。ろうで固めた羽で飛んで海に落ちてしまった彼に対して、身のほど知らずだと言う人もいれば、自分の好きなようにして納得しているんだからいいじゃないかと言う人もいるだろう。40歳以上の人は前者が多いかも知れない。しかし、若い子たちはきっと後者なんじゃないかと思う。ただ、僕はどちらがいいということを言いたいわけじゃない。客観的に語りたいだけ。

—曲を聴いて自分がどういう人間か知る。

久石 人によって明るいと感じる人もいれば、暗いと感じる人もいるだろうね。反応が楽しみ。

—アンジェル・デュポー&ラ・ピエタと共演することになったきっかけは。

久石 彼女たちを知ったのは、「ハウルの動く城」が一段落して気分転換したいとハワイに行った時、偶然テレビで演奏していたのを聴いたんだ。すぐに「これだ!」と思った。まず、彼女たちの演奏スタイルにひかれた。真っ黒な衣装で、立ちながら激しく体を揺らして演奏している姿は、とても魅力的だった。ちょうど、ライブならでは迫力ある演奏をやりたいと思っていたから、彼女たちとなら、相当激しいステージができるんじゃないかと直感した。弦楽の編成がツアーでやりたいと想定していたものとほぼ同じだったことも、大きなポイントだった。それで、日本に帰ってコンタクトを取ったんだ。

—彼女たちの反応は。

久石 CDを送ったら気に入ってくれて、すぐに共演が決まったよ。最初はアルバムを先行して発売する予定だったから、日程面で迷惑をかけたけど、とても好意的に対応してくれている。

—セッションはすでに行った?

久石 実はまだ彼女たちの演奏を生で聴いていないんだ。でも、なぜか不安より楽しみが勝る。きっと音量は大きくて勢いがあるだろうという確信さえある。不思議だよね。彼女たちは全員女性だけど、女性だから音に迫力がないということはないんだ。去年、チェロ奏者たちとツアーを回ったけど、一番大きな音を出していたのは女性だった。音楽の世界は、「男だから」「女だから」ということがないのがいいところ。

—プログラムの構成は。

久石 今までなら後半に演奏しているような密度の高い曲を、前半に集中させようと思っている。精神的にはもちろん、体力的にも大変なものになるだろうね。

—「ハウル」の曲も演奏される?

久石 メインテーマ曲「人生のメリーゴーランド」は、新アレンジで演奏するよ。実は「Freedom」の考え方は「ハウル」に通じるところが多い。僕は何もこのツアーやアルバムで、自分や聴いてくれた人の心が自由になるなんて思わないし、相変わらず「人生のメリーゴーランド」なんだ。下がる時もあれば上がる時もある。でも大切なのは、自分を受け入れながら自由になりたいと思って生き続けるプロセスなんじゃないかな。「人生のメリーゴーランド」というタイトルは、宮崎駿監督が付けたものなんだけど、「ハウル」はまさにそういう映画だよね。

(2004年10月18日  読売新聞)

 

連載 ハウルの動く城 久石譲

 

Disc. 久石譲 『七子と七生 ~姉と弟になれる日~』 *Unreleased

2004年10月4日 TV放送

 

NHS BSハイビジョンドラマ 『七子と七生~姉と弟になれる日~』
原作:瀬尾まいこ 音楽:久石譲 出演:蒼井優 / 知念侑李 他

 

第59回芸術祭優秀賞受賞作品。上海テレビ祭審査員特別賞受賞作品。

人と交わることを拒み続けている多感な高校生の少女・七子が、父の違う弟との出会いと葛藤、そして母親との永遠の別れを通して、大人へと成長していく姿を詩情豊に描く。

 

2005年5月25日 DVD発売

2005年8月11日 NHK総合にて地上波初放送

 

 

本作品のサウンドトラックは未発売である。

全編をとおして印象的に流れるピアノによるメインテーマ。一度聴くと忘れられないとても印象的な切ないメロディである。他にもBGMとしていくつかメロディのある楽曲がピアノや弦楽器によって奏でられるものもあるが、多くはメロディをもたない楽曲が多い。ピアノ、ギター、シンセサイザーといった、アコースティックでシンプルな音楽構成となっている。

メインテーマはオープニングから流れ、物語の印象的なシーン、重要なシーンで繰り返される。またピッツィカートによる変奏など、メインテーマをモチーフとした楽曲も登場する。ピアノによるメインテーマが4-5回、ピッツィカートによるメインテーマ変奏が3-4回、これだけをとっても、いかにこの作品がメインテーマ1本おしなのかがわかる。それだけ繰り返させる旋律だけあって、観終わったあとに強烈に印象に残るのだ。

物語エンディング~エンドロールでは、ピアノによるメインテーマに、アコスティックギターが加わったバージョンが流れる。シンセサイザーも隠し味として使われているがリズム系はなくしっとりと聴かせている。

 

ピアノによるベスト・アルバム『ENCORE』に収録されていてもおかしくないそれほどの隠れた名曲である。※「ENCORE」(2002)なので、時系列上これは無理である

余談だが、雰囲気が近い楽曲といえば、「ENCORE」に収録された「はつ恋」メインテーマだろうか。もちろんメロディーも曲想も違うのだけれど、個人的には「はつ恋」よりもインパクトと切ない余韻が強い。

サウンドトラックも発売されていない、かつメインテーマ1曲としてもどのアルバムにも収録されていない、よって要望も多いピアノ譜なども発売されていない、そんな知る人ぞ知る名曲である。

いつかなにかのかたちで作品化されることを祈るばかりである。

 

 

七子と七生~姉と弟になれる日~