Posted on 2025/06/27
ドイツ・グラモフォンYouTubeチャンネルに、新しいミュージックビデオ「The End of the World (Version for Soprano): III. D.e.a.d (Visualizer)」が公開されました。 “Info. 2025/06/27 久石譲「The End of the World: III. D.e.a.d (Visualizer)」Music Video公開” の続きを読む
Posted on 2025/06/27
ドイツ・グラモフォンYouTubeチャンネルに、新しいミュージックビデオ「The End of the World (Version for Soprano): III. D.e.a.d (Visualizer)」が公開されました。 “Info. 2025/06/27 久石譲「The End of the World: III. D.e.a.d (Visualizer)」Music Video公開” の続きを読む
Posted on 2025/06/25
久石譲は稀代のメロディメーカーである。ここは手短に先に進んでいいですよね。これまでにたくさんの名曲を生み出してきました。さて、今一瞬思い浮かべた名曲は歌ものですか?それともインスト曲ですか?
「鶏が先か、卵が先か」”Which came first: the chicken or the egg?” テーマは明解!いろいろな説明をすっ飛ばしても大丈夫、さっそくいってみましょう。
映画音楽編
久石譲が音楽担当する映画そのケースのひとつに主題歌も含めたその全てをトータルコーディネートすることがあります。映画全体から音楽設計することで主要テーマ曲のメロディが主題歌(歌曲)やメインテーマ(器楽曲)となって多彩に本編に登場してきます。このときその歌とインストは同時に誕生していると言えます。
例えば、ワールドベスト盤に収録されている「Innocent」も「My Neighbour TOTORO」も「Ponyo on the Cliff by the Sea」も。それから「FOR YOU」「TWO OF US」「Tango X.T.C.」も。映画主題歌の器楽曲版とも言えますが、初めのサウンドトラックからインストゥルメンタルver.があります。ワールドベスト盤にあるのは、映画のための曲想や曲尺といった制約から解放された自身の音楽作品(ソロアルバム)や演奏会用作品へと昇華させたものたちです。
だから今回のテーマ「鶏が先か、卵が先か」でピックアップできるような曲はそんなにありません。


それもそのはず!
「映画はインストゥルメンタル(器楽)が基本であり、主題歌はインストゥルメンタル(器楽)で通用するメロディーであるのが望ましい」by 久石譲
とはっきり明言しています。そのスタンスは映画音楽を始めた1980年代から一貫しています。なるほど久石譲が手がけた映画音楽には主題歌(歌曲)とメインテーマ(器楽曲)の両方で楽しめるものが多いということですね。これまでに語られてきた中から久石譲の映画音楽・歌の流儀については【テキスト編】でみていきましょう。
『おくりびと』
この映画のメインテーマといえば「おくりびと/Departures」です。チェロの美しい旋律はただただ耳を傾けたくなります。心を寄せたくなります。久石譲の映画音楽年表にとって欠くことのできないエポックな作品です。しっかりと自身のライフワークであるピアノストーリーズ・シリーズや集大成アルバムにもそのメロディを刻み込んでいます。
実はこの曲、映画主題歌にはなっていませんがイメージソングがあります。12本のチェロと1管編成のアンサンブルにのせてAIが歌詞をつけたものです。その作られた経緯やエピソードも当時からあまり触れられていないため、歌曲版が存在することを知らない人も多いかもしれません。サウンドトラックと発売日は同じです。




映画『海洋天堂』にはメインテーマに歌詞をつけたイメージ・ソング「海洋天堂」があります。映画『川流不“熄”(A Summer Trip)』には主要テーマ曲に歌詞をつけたプロモーション・ソング「慢慢(Slowly)」があります。どちらも映画本編では使われていませんし、編曲は久石譲の手を離れて楽曲制作されています。音源化されていないのでこの話はしません(キッパリ)。
カバー
NHK連続テレビ小説「ぴあの」(1994)は音楽:久石譲です。主演と主題歌も務めた純名里沙の翌年アルバムでは映画『アリオン』から珠玉のメロディ「レスフィーナ」に新たな歌詞をつけた歌曲版「愛の果て」が誕生しています。また『魔女の宅急便』から「めぐる季節」もカバーしています。久石譲プロデュース作品です。

映画から飛び出して新しく生まれた、となったらこのくらいじゃないかなあと思っていますが、何かあったら教えてくださいね。
映画『菊次郎の夏』メインテーマ「Summer」は久石譲の代名詞、いや夏の定番曲、いざ夏の主旋律です。この曲にはコーラスバージョンがあります。!? ほんとです。2022年リトルキャロルのコンサートで初披露されています。音源化はされていません(まだ聴いたことはありません)。器楽曲をコーラス版にしたもので歌詞はありません。編曲は麻衣さん。いつか聴ける日が来たらアップデートして紹介できたらうれしい。
麻衣さんが中心となる女声コーラスグループ リトルキャロルには、スタジオジブリや映画音楽の枠を超えて久石譲のメロディを残していってほしいなと願っています。
とにもかくにも!
久石譲が映画やドラマのために書き下ろした、その作品のための替えの効かない珠玉の主題歌/メインテーマです。サウンドトラックはそのメロディを歌曲版/器楽曲版で楽しむことができる作品がたくさんあります。
『坂の上の雲』『この世界の片隅に』『ウルルの森の物語』『ぴあの』『LE PETIT POUCET』などなど、イニミニマニモ~

Posted on 2025/06/20
久石譲は稀代のメロディメーカーである。ここは手短に先に進んでいいですよね。これまでにたくさんの名曲を生み出してきました。さて、今一瞬思い浮かべた名曲は歌ものですか?それともインスト曲ですか?
「鶏が先か、卵が先か」”Which came first: the chicken or the egg?” テーマは明解!いろいろな説明をすっ飛ばしても大丈夫、さっそくいってみましょう。
スタジオジブリ編 3
『崖の上のポニョ』
映画冒頭タイトルバックで流れる「海のおかあさん」です。イメージアルバムは歌6曲・インスト4曲の全10曲です。ここで「海のおかあさん」はインスト曲です。豊嶋泰嗣さんのヴァイオリンソロによってメロディが奏でられています。あえて、です。
映画本編では林正子さんのソプラノで印象的に歌われています。これから始まる物語への期待とまるで海のゆりかごのように大きく優しく包み込む一曲です。
曲ができるまでのエピソードをご紹介します。
新しい海の唄の誕生 ~覚 和歌子作「さかな」より翻案
宮崎監督は、「崖の上のポニョ」で、これまでにない”新しい海の唄”を作りたいと考えていました。これまで海の唄というと「うみはひろいな 大きいな」(文部省唱歌「うみ」)という唱歌に代表されるように、海を風景や舞台として捉えた唄ばかりでした。監督は今回の作品のために、”海そのもの”を歌った唄を作りたいと思い悩んでいたのです。そんなある日、覚和歌子さんの詩集『海のような大人になる』(理論社刊)の中の一編の詩「さかな」に出会い衝撃を受けます。その詩には、監督が思い描いていた”海そのもの”が表現されていたからです。そして、宮崎監督はこの詩を元に、「海のおかあさん」の歌詞を書き上げたのでした。後日、音楽担当の久石譲氏に手渡された音楽ノートには、歌詞とともに次の一文が添えられていました。《これは覚和歌子さんの詩集『海のような大人になる』の一編「さかな」を元にしました。》こうして、宮崎監督と覚和歌子さんと久石譲さんによる全く新しい海の唄、「海のおかあさん」が生まれたのです。
海のおかあさん
歌:林正子 作詞:覚和歌子 宮崎駿 ~覚和歌子作「さかな」より翻案 作・編曲:久石譲
(CDライナーノーツより)
覚和歌子さんの詩をもとにしたイメージ・ポエムを宮崎さんからいただいた時、「文部省唱歌ではない”海の唄”が、もっと日本にはあってもいいですね」と宮崎さんがおっしゃっていたんです。それで出来上がったのが《海のおかあさん》ですが、「今回はクラシックもありですね」と宮崎さんにお話しして、林さんに歌っていただいたら非常に良かった。これを映画冒頭に使ったのは、プロデューサーの鈴木さんのアイディアです。「この曲で映画が始まるとすごいぞ!こんなことは今まで誰もやっていない」という、鈴木さん独特の嗅覚ですね。そのアイディアを宮崎さんも気に入られて、実は去年の夏の前には、オープニングは林さんのソプラノでいくと決まっていたんですよ。イメージアルバムを制作した段階では、本編をご覧になった時のお楽しみということで、敢えてヴァイオリンのインストゥルメンタルで録音しましたが。
(Blog. 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る 『久石譲 in 武道館』より より抜粋)


2012年、ジブリ楽曲たちを集めたアルバムで「海のおかあさん」フルバージョンが初音源化されました。

『スタジオジブリの歌』(2008)、そして以降の5作品を追加した『スタジオジブリの歌 増補盤』(2015)に収録されている「海のおかあさん」はサウンドトラックと同一約2分半です。フルサイズ約4分半は『ジブリ・ベスト ストーリーズ』だけです。


ジブリフィルムコンサートでも欠かせない一曲になっています。

そのほかイメージアルバムの時には歌曲だったものが、サウンドトラックでは器楽曲(スキャット含む)になっていろいろな曲に登場しています。
イメージアルバム → サウンドトラック 曲名の変化
『かぐや姫の物語』
映画公開から2年後、久石譲が紡ぎだした主要テーマ曲のひとつ《なよたけのテーマ》に高畑勲監督自ら新しい歌詞をつけて歌曲版「なよたけのかぐや姫」が誕生しました。ミニマルな声部を駆使した女声三部合唱で約7分からなる大曲です。
《なよたけのテーマ》そのメロディは、サウンドトラック盤「はじまり」「小さき姫」「なよたけ」「蜩の夜」「悲しみ」「飛翔」「別離」「月」など使われたシーンと曲ごとにいろいろな装いを映す旋律になっています。
サウンドトラック初回プレス限定特典ディスクには、映画収録曲よりサウンドトラック未収録音源5曲が収録されています。その名も「なよ竹のかぐや姫(古筝)」と「レンゲ草(古筝)」の2曲が《なよたけのテーマ》のメロディです。フリークにはぜひその全てを聴いてほしい。


(初回プレス限定特典)

カバー
ジブリソングはたくさんの愛溢れたカバー曲があります。
井上あずみはオリジナル歌唱の「君をのせて」や「となりのトトロ」などのほかに【スタジオジブリ編1】でも紹介した『魔女の宅急便』から生まれた歌曲版などもカバーしています。
1. さんぽ(となりのトトロより)
2. めぐる季節(魔女の宅急便より)
3. わたしのこころ(魔女の宅急便より)
4. 想い出がかけぬけてゆく(魔女の宅急便より)
5. 何かをさがして(魔女の宅急便より)
6. 魔法のぬくもり(魔女の宅急便より)
7. 風のとおり道/Instrumental(となりのトトロより)
8. まいご(となりのトトロより)
9. おかあさん(となりのトトロより)
10. ドンドコまつり(となりのトトロより)
11. となりのトトロ(となりのトトロより)
12. 君をのせて(天空の城ラピュタより)
13. 風のとおり道/Voice Edit

新しいジブリ作品が生まれていくなか年代ごとに新たなカバーも録音しています。その最新アルバムは2023年です。
1. いのちの名前(千と千尋の神隠し)
2. となりのトトロ(となりのトトロ)
3. 風になる(猫の恩返し)
4. 君をのせて(天空の城ラピュタ)
5. さよならの夏(コクリコ坂から)
6. Arrietty’s Song(借りぐらしのアリエッティ)
7. ルージュの伝言(魔女の宅急便)
8. 鳥になった私(魔女の宅急便)
9. ひこうき雲(風立ちぬ)
10. テルーの唄(ゲド戦記)
11. さんぽ(となりのトトロ)
12. 風のとおり道(となりのトトロ)

麻衣×DAISHI DANCEによる「君をのせて」(英語ver./日本語ver.)も隠れた人気曲です。またリトルキャロルの久石譲ソングも素敵なハーモニーで優しく歌われています。麻衣さんが中心となった女声コーラスグループです。



すべてをピックアップできてはいませんが、いろいろなカバー曲も見つけて楽しんでみてください。
久石譲はインタビューで「宮崎さんから頂く詩っていうのは、何故かこうメロディーが浮かんでしまうものですから」と語っています。宮崎監督の詩が久石譲に新しいメロディを、時代を超えて愛されるメロディを書かせている根源なのかもしれませんね。ジブリメロディは宮崎駿×久石譲でできている、そう言ってきっと大丈夫です。

Posted on 2025/06/20
日本センチュリー響、久石譲体制が始動 現代的・機動的なオケ目指す “Info. 2025/06/20 日本センチュリー響、久石譲体制が始動 現代的・機動的なオケ目指す(日本経済新聞より)” の続きを読む
Posted on 2025/06/15
2025年6月14日、「久石譲 presents センチュリー・ファミリーコンサート」が京都・ロームシアター京都で開催されました。久石譲が日本センチュリー交響楽団ととも、小さな子どもと家族に贈るスペシャルなコンサートです。 “Info. 2025/06/15 「久石譲 presents センチュリー・ファミリーコンサート」プログラム 【6/18 update】” の続きを読む
Posted on 2025/06/15
2025年6月13日、「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第290回 定期演奏会」が開催されました。久石譲は2021年に日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任して以来数多くの定期演奏会・特別演奏会を精力的に行ってきました。そして2025年4月日本センチュリー交響楽団音楽監督に就任しました。その記念すべき1年目のシーズン、満を持しての定期演奏会登場です。
日本センチュリー交響楽団 定期演奏会 #290
[公演期間] 
2025/06/13
[公演回数]
1公演
大阪・ザ・シンフォニーホール
[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
[曲目]
ベートーヴェン:交響曲 第6番 へ長調 作品68 「田園」
—-intermission—-
久石譲:交響曲 第2番
—-encore—-
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第8番 ト短調 作品46-8
[参考作品]
前日には同内容公演が茨木市文化・子育て複合施設 おにクル ゴウダホールにて開催されました。2025年2月に追加公演で発表されたものです。「2025-26シーズン 日本センチュリー交響楽団 北摂定期演奏会」として今後も北摂地域(茨木市、高槻市、箕面市)全3カ所で定期演奏会に合わせて開催予定になっています。
2025.06.18 update
公式写真4枚を追加しました。
from 日本センチュリー交響楽団公式SNS
まずは会場で配られたプログラム冊子からご紹介します。
MESSAGE
皆さんこんにちは、久石譲です。
このたび、2025年4月に日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就任することになりました。日本センチュリー交響楽団とは10年以上前から共演し、2021年からは首席客演指揮者を務めてきました。
一度はオーケストラともっと深く関わる仕事をしたいと思っていたので、今回このようなポジションを頂くことはとても嬉しく、光栄です。
就任最初のシーズンである2025-2026年の定期演奏会はすべて、ベートーヴェンの交響曲と現代の音楽を組み合わせるプログラムにしました。親子で楽しめるコンサートや小編成アンサンブルで最先端の現代の音楽を聴いてもらえるコンサートも企画します。
このオーケストラとともに、過去から未来につながるクラシック音楽の在り方を追求していく。そして、たくさんのお客様に喜んでもらい、応援してもらえるオーケストラになるよう努めます。
楽しみにしていてください。
(日本センチュリー交響楽団イヤーブック2025-2026 より)
Program Notes
久石譲:交響曲 第2番
Symphony No.2は2020年4月から夏にかけて作曲し、翌年2021年3月から6月にかけて3管編成のオーケストレーションを施し、その年の夏に行ったワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)ツアーで初演した。
本来なら2020年にストラスブールとパリで初演し、その後世界各地で演奏する予定だったが、COVID-19により延期を余儀なくされたためにこのようになった。その後、ストラスブールとパリは2022年5月、そして6月にはバンクーバー、トロントなどで演奏し、現在世界各地で演奏している。
当初は全4楽章を想定していたが、3楽章で完結していることがわかり、またパンデミックの時だからこそ重くないものを書きたかった。つまり純粋に音の運動性を追求する楽曲を目指した。その結果36分くらいの作品になった。
Mov.1 What the world is now?
チェロから始まるフレーズが全体の単一モチーフであり、それのヴァリエーションによって構成した。またリズムの変化が音楽の表情を変える大きな要素でもある。
Mov.2 Variation 14
元々シンフォニーの2楽章として作曲したが、2020年は大きな編成の楽曲がソーシャルディスタンス確保のため演奏できないので「Variation 14」として僕自身が主催しているMusic Future(MF)Vol.7(2020)においてラージ・アンサンブルで演奏した。MFはミニマル系のコンテンポラリー・ミュージックを演奏するコンサート・シリーズである。曲はテーマと14のヴァリエーション、それとコーダでできている。とてもリズミックな楽曲に仕上がった。ネット配信で観た海外の音楽関係者からも好評を得た。
Mov.3 Nursery rhyme
日本のわらべ歌をもとにミニマル的アプローチでどこまでシンフォニックになるかの実験作である。途中から変拍子のアップテンポになるがここもわらべ歌のヴァリエーションでできている。より日本的であることがむしろグローバルである!そんなことを意識して作曲した。約15分かかる大掛かりな曲になった。
(久石譲)
(「日本センチュリー交響楽団 第276回定期演奏会 第290回,第291回 2025年6,7月プログラム冊子」より)
ここからはレビューになります。
5月「大阪4オケ2025」でのお披露目も経て(プログラム:「久石譲:Adagio for 2 Harps and Strings」「ストラヴィンスキー:火の鳥(1945年版)」)いよいよ音楽監督就任記念となる今シーズン初の定期演奏会です。
ホール入り口に設置された久石譲サイン入りのコンサートポスター掲示は、ちょっとした写真スポットとしておなじみになっています。若い人から海外のお客様までワクワクな期待と笑顔に頬があがっています。そしてこちらもおなじみになっている満員御礼です。
久石譲は年間シーズンプログラムのコンセプトとして「ベートーヴェン交響曲と現代の作品」を掲げています。久石譲指揮ではベートーヴェン交響曲から第6番・第1番・第3番をプログラムしています。
ベートーヴェン:交響曲 第6番 へ長調 作品68 「田園」
よく知られている作品だけに、観客それぞれにイメージがある第6番、これこそ田園だという演奏もあるだろう作品です。久石譲のアプローチは、弦14型2管編成で古典時代からあった対向配置をもとにバロックティンパニの小気味よさも活かしながら、あくまでも作曲家視点から作品を浮き立たせる。そしてプログラム全作品をとおして同じように現代的なアプローチでオーケストラと臨む、そんな意欲的な演奏が特徴です。
ここは個人の感想を書く場所でもあるので、ちょっと主観的にストレートに書くところもあります。いわゆる画面下隅に「※個人の感想です」テロップがあると思って見てください。
第1楽章から僕の雲行きが怪しい。木管のいくつかのパートが明らかに音楽にブレーキをかけてしまっている印象。周りのテンポ感とそこだけが分離していて違和感が響いてくる。第1楽章も第2楽章も弦楽パートと木管パートがフレーズをかけ合ったりが多いです。弦楽や全体が軽快に刻みながら進んでいるのに、そのいくつかの木管パートがかけ合いで主旋律に出てくるたびにそこでブレーキがかかって0コンマ何秒のはっきりと体感できるテンポダウンする。そして僕の気持ちもトーンダウンする。音楽を進めている推進力を削いでしまっていると感じてストレスのたまる「田園」でした。どうも意図的にとは感じとれなかった。
そのぶん第3楽章は弦楽セクション中心にキビキビとザクザクと勢いよく進むパートもあって、そこは水を得た魚のように活き活きとした響きでした。
そうは言っても全体的には「快速な田園」という感想も多かったです。僕には第1,2楽章の印象もあって…やあやあごにょごにょ…、印象も感想もいろいろです。まだまだアプローチや解釈のせめぎ合いだったんでしょうか。これから久石譲×日本センチュリー交響楽団がどう溶け合っていくのか、どんな化学反応を起こしていくのか、とても楽しみです。

久石譲:交響曲 第2番
堂々久石譲交響曲の第2番です。日本では「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」での世界初演以来となる2度目です。どうしてこんなことになってるの、とても悲しい、もっと聴きたい!プログラムされるやテンション爆上がりな作品です。
前半部の「田園」を聴いてからの休憩時間、これ第2番どうなっちゃうのかなと勝手な不安よぎっていました。杞憂でした。素晴らしい演奏でした!!WDO2021、パリ公演配信、グラモフォン録音アルバムなども経てきたなか、かなりベストに近い満足感を得ることができました。もちろん難しすぎる作品なので精度を突き詰めれば違った見方もできるのかもしれません。それでも全体を支配する強靭なまとまり、勢い、重厚なアタック、ハイライトの爆発力、これを聴いてしまったらCDは物足りなくなる。間違っても復習~復習~とルンルンでコンサート後にアルバムを聴き返さないほうがいい、損をする。今日の演奏の余韻を音源でかき消さないほうがゼッタイ良かったと。前半部よりも少し大きい弦14型3管編成です。第2楽章のリズミックで楽しいところや、第3楽章のどこか懐かしいわらべ歌の心地よさと巨大に膨れ上がっていくさまは、今日のこの演奏が記憶に残らないはずはない、そんな満足感でいっぱいです。
耳ではっきりわかるほどの改訂はなかったように思います。グラモフォンアルバムでは見つけることができなかったフレーズに気づいたり、隠れていた楽器の音がライブらしい音像で明瞭に聴こえてきたり。だから楽しい。日本でももっと聴きたい!
生演奏に遭遇する2度目ということもあり、やっとしっかり確認できたこともあって以下お詫びして修正いたします。(ほかにも間違ってるとこあるぞのツッコミはうすうす承知…)
Mov.3 Nursery rhyme
”ミニマル的アプローチでどこまでシンフォニックになるかの実験作である”、久石譲の楽曲解説からです。ここからはテーマ(メロディ)だけに注目して楽章冒頭を紐解いていきます。コントラバス第1群がD音から13小節のテーマを奏します。2巡目以降は12小節のテーマになります。本来は1コーラス=12小節のテーマでできていて、1巡目に1小節分だけ頭に加えているかたちです。「レーレレ/レーレミ、レーレーレー」(13小節版)、「レーレミ、レーレーレー」(12小節版)というように。なぜ、こうしているのかというと、かえるの歌の輪唱とは違うからです。かえるの歌はメロディ1小節ごとに、次の歌い出しが加わっていきますよね。なので、ズレて始まって、そのままズレズレて終わっていきます。
コントラバス第1群が2巡目に入るとき、同じ歌い出しの頭から、チェロ第1群コントラバス第2群がA音から13小節のテーマを奏します。同じく2巡目以降は12小節のテーマになります。この手法によってズレていくんです、すごい!12小節のテーマだけなら、同じ歌い出しの頭から次が加わっていくと、メロディをハモるように重なりあってズレることはありません。でも、なんらかの意図と理由で、歌い出しの頭を統一しながらもズラしたい。だからすべて1巡目だけ13小節で、2巡目以降は12小節なんだと思います、すごい!テーマは低音域から高音域へとループしたまま引き継がれていきます。つづけて、チェロ第2群チェロはE音から、ヴィオラはC音から、第2ヴァイオリンはG音から、第1ヴァイオリン第1群はB音から、最後に第1ヴァイオリン第2群はD音からと、壮大な太陽系を描くように紡いでいきます。そして全7巡回したころには、壮大なズレによる重厚なうねりを生みだしていることになります。対向配置なので、きれいにコントラバスから第1ヴァイオリンまで時計回りに一周する音響になることにも注目したい。さらに言うと、コントラバス第1群のD音に始まり、最終の第1ヴァイオリン第2群もD音で巡ってくるわけですが、このとき響きが短調ではないと思います。メロディの一音が替わっているからです。あれ? なんで同じD音からなのにヴァイオリンのときは抜けた広がりがあるんだろう、暗いイメージがない。ここからくるようです。
(Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサート・レポート より一部抜粋)

—-encore—-
ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第8番 ト短調 作品46-8
久石譲指揮の舞曲といえばこれこれ、こんな演奏になるよね。とても快速&躍動的に勢い一気に駆け抜けます。思えばスラブはロシアやウクライナなども含まれる民族や地域です。振り返ると、本公演のプログラムは土着的だったり民族的な着想をもった作品で貫かれています。その土地の大切さやその土地で暮らす人々の大切さ、それぞれの人が持ってる壊してはいけない原風景や心象風景、遺していきたい大切なもの。
本演終了後とアンコール・カーテンコールには「ブラボー!」も幾度となく飛び交っていました。だけど、僕は気になった、団員たちが活き活きと見えない。演奏中もたんたんとしている姿で、難しいスコアに挑む姿勢や食らいつこうとする前のめり感をあまり感じとることができなかった。カーテンコールになっても、やりきった感のシルエットや表情をオーケストラとして見ることは出来なかったと思う。観客の拍手喝采に応える一瞬の笑顔も見れない。あれ、演奏してるほうはそんな演奏でもなかった感じ??ってなったら悲しい。
もったいない、せっかくいい演奏会だったのに。たまたま自分がそう見えただけならそれでいいし、そうであってほしいかな。見せることも大切だと思います。やっぱりオーケストラも楽しさ・難しさ・真剣さを体で伝えてくれたらうれしいです。それを見て聴いたらもっと素晴らしい観客体験ができます。その演奏会の一期一会や感動はたった一瞬見せてくれた表情やしぐさだけで時として一生モノにもなります。関西オケの一つに収まることなく世界と勝負する日本センチュリー交響楽団であってほしいなと思います。
次回も全力で楽しみにしています。
今シーズンの日本センチュリー交響楽団ラインナップと今後の久石譲登場回です。
リハーサル風景





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茨木公演ゲネプロ



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公演風景(茨木公演)





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公演風景






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Posted on 2025/06/12
久石譲は稀代のメロディメーカーである。ここは手短に先に進んでいいですよね。これまでにたくさんの名曲を生み出してきました。さて、今一瞬思い浮かべた名曲は歌ものですか?それともインスト曲ですか?
「鶏が先か、卵が先か」”Which came first: the chicken or the egg?” テーマは明解!いろいろな説明をすっ飛ばしても大丈夫、さっそくいってみましょう。
スタジオジブリ編 2
『もののけ姫』
もののけ姫といえば主題歌「もののけ姫」、もののけ姫といえば「アシタカせっ記」、もののけ姫といえば「アシタカとサン」と屈指の名曲は堂々神々しい。ここでは物語のクライマックスで流れる「アシタカとサン」の器楽曲から歌曲への変遷をみてみましょう。
宮崎駿監督をして「すべて破壊されたものが最後に再生していく時、画だけで全部表現出来るか心配だったけど、この音楽が相乗的にシンクロしたおかげで、言いたいことが全部表現できた」と言わしめ、久石譲もその言葉が強く印象に残っているというエバーグリーンな曲です。
2008年開催「久石譲 in 武道館」コンサートで歌曲版が初披露されました。本編・アンコールと進んで一番最後に演奏されたこの曲は、1コーラスを久石譲によるピアノで、続けて1コーラスを合唱とオーケストラという流れになっています。『The Best of Cinema Music』のライヴ音源でも聴くことができます。また2021年の交響組曲版はソプラノによって歌われています。ジブリフィルムコンサート世界ツアー版では英語で歌われている「Ashitaka and San」そのメロディと想いは世界中に響いています。作詞は麻衣さんが担当しています。




イメージアルバムからの一曲がありました。「失われた民」の日本音階なメロディは、映画本編タタラ場で歌われる「タタラ踏む女達 ~エボシ タタラうた~」になっています。作詞は宮崎駿監督です。

せっかくだから主題歌「もののけ姫」のエピソードもみてみましょう。
「毎回、イメージアルバムを作る時に、作曲の手がかりになるような言葉を宮崎さんから頂くんです。その中の一つに、あの曲の詩のような言葉があったんです。宮崎さん本人は、きっと詩のつもりで書かれたわけではないと思うんですが、僕がこれは曲になるんじゃないかと思って、”歌”として仕上げたものです」
(Blog. 久石譲 「もののけ姫」インタビュー 劇場用パンフレットより より抜粋)
「タタリ神、犬神モロ、シシ神の森……などでした。さすがに宮崎さんもこれだけではマズイと思ったんでしょうね、言葉に対して自分の思いや説明を長く書いてくれたんです。その中に「もののけ姫」というタイトルでポエムのような言葉が綴られたものがありました。それを見たとき、これは歌になるなと思ったんです。タイトル曲にならなくても、イメージ・アルバムならあってもいいんじゃないかという軽い気持ちで「もののけ姫」という曲を書いたんです。」
(Blog. 「キーボード・マガジン Keyboard magazine 1997年9月号」久石譲インタビュー内容 より抜粋)
「監督も忙しいですし、私も日本にいなかったんです。レコーディングのとき、私はいろいろと悩んでいたんです。どういう気持ちで歌っていいか判らない。私一人の個性を表現することはたやすいことですが、主題曲は映画のなかの一つの部品ですから、強すぎる個性ではいい映画もだめにしてしまうんです。逆に空気のようにただあるという存在では、私がいやなのです。これは誰の気持ちで、どういう立場で歌ったらいいのかと悩んでいたんです。前日のテストのときも悩みながら歌っていて、でも誰もわからない。そしたらレコーディングの日、監督が見えて、「これはね、アシタカがサンに対する想いを歌った歌なんですよ。米良さんが思ったように歌ってください」とおっしゃってくださって、肩の力がすーっと抜けたんです。」(米良美一)
「短い詩なんですよ。ところが監督は1番しか書けないとおっしゃる。この歌は1番で完結しちゃっているんですね。この詩には美辞麗句もメッセージもないんですが、私の胸の中にすんなり入ってくるんです。詩の中にはこの映画の意味がすべて含まれていました。」(米良美一)
(Blog. 「キネマ旬報 臨時増刊 1997年2月3日号 No.1233」 もののけ姫 久石譲インタビュー内容 より抜粋)
「米良さんはカウンターテナーの中でも、ちょっと変わった存在だと思うんです。独特の”運命”のようなものを表出しているような声が、この作品には合っていたんじゃないかな。宮崎監督はそういう微妙な差をとても深く理解される人ですから、普通のカウンターテナーだったらOKを出さなかったと思います。実際に米良さんで主題歌を録音してみて、宮崎さんが『このカウンターテナーで行こう』と言った理由がよくわかりました」
~(中略)~
「ところが宮崎監督が『邦楽器は外してください』とおっしゃったので、『全部外しまします』と言って外したフリをしたんだけど、実は外していない(笑)。『♪もののけ達だけ~』という箇所の伴奏では、上の旋律線を南米のケーナという楽器が演奏していますが、その3度下の旋律線を篳篥(ひちりき)が演奏しています。単にケーナで2つ(の旋律線を)重ねたら、音楽的にはノホホンとしてしまうのですが、チャルメラ系の篳篥を重ねると不思議な浮遊感が出てくるんです」
(Blog. 「もののけ姫 サウンドトラック」(LP・2020) 新ライナーノーツより より抜粋)
最後の部分のメロディーでしょ。あれを考案した段階で「勝った」と思いましたね。「いただき!」という感じです(笑)。結局歌の曲のメロディーをそのまま1コーラス使ってアルバムの中に歩かせると、すごくダサイんですよ。「いかにもテーマ曲ですね」みたいな感じというか。だから、いちばん最後のリフレインのところを使って、インスト・バージョンをもう1個作った。それを映画の旅立ちの場面のところから、順番に要所要所、サン(もののけ姫)と出会うシーンなどにその曲をつけていって、それがだんだんメロディーが伸びてきたら、「もののけ姫」の歌になるという。その設計が自分でも相当気に入ってます。
~(中略)~
インスト・バージョンでメロディーをとっている楽器は、4タイプぐらい録ったんですよ。篳篥、竜笛(りゅうてき)、ケーナ、それからもうひとつなんだったかな。結果的にいちばんクセのないケーナを選んだんですよ。インストゥルメンタルでボーカル曲をやると、本当に陳腐になっちゃう。それをどう避けようかというのがやっぱりあって。
それは、歌と同じぐらい説得力があるインストゥルメンタルがメロディーをとっていないと、相当難しいんです。今回はたまたまケーナだったけど、希望でいうと僕は篳篥で行きたかった。だけど、映像と合わせると音楽が強くなり過ぎてしまったんです。つまりその曲は、サンが乾し肉をかんでアシタカに口移しするシーンつまりラブシーンともとれるシーンに使われているんですね。だから、妙にムードに際立たせられると宮崎さんが恥ずかしいわけですよ(笑)。
~(中略)~
カウンター・テナー米良美一(めら よしかず)さんのボーカルですね。カウンター・テナーというのは、外国ではそんなに珍しくないんですよ。男の人の裏声状態なんですけど。でも日本でこれだけの人はいないですね。
正確に言うと、カウンター・テナーは男性の裏声を使っているためにソプラノの音域には行かなくて、女性のアルトの音域までをカバーするんです。実のところを言うと、アルトというのはやっぱりちょっと暗めになる印象が僕の中にはあって、もしかしてメイン・テーマではどうかな、という不安はあったんですよ。男の人が歌っているという先入観を除いて、純粋に音楽的に大丈夫なのか、暗くならないかという心配が、僕にはあったんです。だけど、やっぱり米良さんは本当にすばらしい歌手で、そういう心配は無用でしたね。
恐らく宮崎さんは、今回の”犬神モロ”というキャラクターの声優に美輪明宏さんを起用したことに象徴されるように、”ひとりの人間の中の二重構造”とか、もっと言ってしまえば、”ひとりの人間の中の善と悪”を意識されていたんではないでしょうか。だから、内容的には、けっして山を切って鉄を作っている人たちを”悪”とも決めてないですよね。要するに、ひとりひとりが矛盾というか、二律背反するものを抱え込みながら、それでも生きていかなければいけないというのが、いちばん深いテーマとしてあったと思うんです。米良さんの声を聴いた時、恐らく宮崎さんは”男性なのに女性の声”というその複雑さにすごく興味を持たれたんじゃないかなという気がするんです。
(Blog. 「KB SPECiAL キーボードスペシャル 1997年9月号 No.152」『もののけ姫』久石譲インタビュー内容 より抜粋)
主題歌「もののけ姫」はイメージアルバムからサウンドトラックへと歌詞の一部が変更になっています。何時間にも及ぶ貴重なドキュメンタリーは必見です。こちらで歌詞の経緯が紹介されています。もっと観たくなる、もっと知りたくなる。
『千と千尋の神隠し』
「あの夏へ」と「ふたたび」が歌曲として生まれ変わっています。
「あの夏へ」については語ることが多すぎて….こちらに完全まとめています。

2008年開催「久石譲 in 武道館」コンサートで「ふたたび」歌曲版が初披露されました。平原綾香による伸びやかな歌声にオーケストラが翼となってどこまでも彼方まで連れていってくれる。世界ツアー版を作品集にした『A Symphonic Celebration』にはブラッシュアップされたものが麻衣さんの歌唱で音源化されています。
2009年平原綾香×久石譲の再タッグで古楽器アンサンブルにリアレンジ、どこか懐かしい牧歌的な雰囲気に。シングル盤c/wでリリースされました。
「ふたたび」歌曲版ができるまでのエピソードは、作詞を担当した鈴木麻実子の著書「鈴木家の箱」で見ることができます。ありありと鮮明に蘇る当時のキャッチボールは感動的です。感想は、尊い。記録に残されたことは、尊い。




おっと、2曲の印象が強すぎて次にいこうとしてました。
『千と千尋の神隠し』イメージアルバムは、歌4曲・インスト6曲の全10曲というバラエティに富んだ内容です。もちろんこの中から多くのメロディが映画本編で使われています。イメージアルバムの歌曲からサウンドトラックの器楽曲へと変化した曲はどんなものがあるでしょうか。とても楽しいアルバムです。
イメージアルバム → サウンドトラック 曲名の変化


『ハウルの動く城』
今や世界中で演奏されている人気曲「人生のメリーゴーランド」です。すぐにメロディを口ずさみたくなります。実は歌もあります。ほんとです。
2006年、歌手のクミコから宮崎駿監督への依頼で実現しました。作詞:覚和歌子/作曲:久石譲/快諾:宮崎駿で大人のポップスへと生まれ変わっています。2021年には村松崇継のリアレンジでシングル化されています。久石譲編曲でもプロデュースでもない手を離れた歌曲版ですが、宮崎駿監督の公認手形があることとカバー曲とはならない初登場の歌です。
エピソードをご紹介します。
〈覚和歌子コメント〉より 2006ver.
ジブリ映画とのご縁が続きます。今回は「ハウルの動く城」テーマ曲に詞を付けました。宮崎駿監督からは「映画本編とは全く関係なくていいですから、クミコさんが歌ってリアリティのある内容にしてください。」とのご要望。しかし同時にタイトルは、本編のテーマ曲タイトル「人生のメリーゴーランド」のままでというご指定もあり。それでは、クミコさんの「人生のメリーゴーランド」を作ろうと思いました。
〈クミコ コメント〉2021ver.
新録音です。宮崎駿監督の「ハウルの動く城」のテーマ曲ですが、これが流れてきた途端耳が直立してしまいました。何とか唄えないものだろうかと思い悩み、とうとう覚和歌子さんの詞で実現が。新たに詞をつけることをお許しくださった宮崎監督、そして作曲者久石譲さんのあたたかいお心に感謝するばかりです。
〈Web うたびと〉より
『人生のメリーゴーランド』は、ジブリ映画『ハウルの動く城』の主題歌。宮崎駿監督がクミコの歌声のファンだったことから、映画のパンフレットにコメントを提供することになり、映画を鑑賞したところ、スクリーンに響く楽曲に大感動。自ら監督に日本語詞をつけて歌わせてほしいと依頼し、快諾のもと実現した一曲だ。


久石譲はスタジオジブリ作品の音楽・主題歌そのどちらも担当した作品であれ、メインテーマにもとりわけ重きを置いています。『天空の城ラピュタ』「君をのせて」は当初主題歌を想定して書かれたものではありません。『となりのトトロ』「風のとおり道」は裏テーマと呼んでいたほどです。
『もののけ姫』「アシタカせっ記」については「1ヶ月半くらい悩んで書いた」「この曲の方が本当のメインテーマとしての重みを持っていると僕は思いますね」と久石譲は当時を振り返っています。
主題歌と同じくらいメインテーマや主要テーマ曲に心血を注いでいるからこそ、そのメロディからまた歌曲として生まれ変われるほどの光が宿っているのかもしれませんね。

Posted on 2025/06/09
久石譲は稀代のメロディメーカーである。ここは手短に先に進んでいいですよね。これまでにたくさんの名曲を生み出してきました。さて、今一瞬思い浮かべた名曲は歌ものですか?それともインスト曲ですか?
「鶏が先か、卵が先か」”Which came first: the chicken or the egg?” テーマは明解!いろいろな説明をすっ飛ばしても大丈夫、さっそくいってみましょう。
スタジオジブリ編 1
『天空の城ラピュタ』
おなじみ「君をのせて」のメロディです。曲名をたくさん持っているのでトップバッターからややこしいですが、英語タイトルの場合は歌曲版「Carring You」器楽曲版「Innocent」と表記されることが近年は多いです。

「6. シータとパズー」「11. シータとパズー」器楽曲として収録されています。《君をのせて》の原石ともいえるこの楽曲、実はこの時まだサビのメロディはありません。♪父さんが~ のメロディは主題歌のとき生まれたものです。「Asian Dream Song」から「旅立ちの時 ~Asian Dream Song~」と同じパターンですね。♪夢をつかむ者たちよ~ 君だけの花を咲かせよう~ のサビは歌曲版に合わせて誕生したものです。

「空から降ってきた少女」(サビメロディあり)「月光の雲海」(サビメロディなし)で器楽曲版を、「合唱 君をのせて」「ラピュタの崩壊」「君をのせて」で歌曲版を聴くことができます。これだけバリエーションに富んだ楽曲として本編に散りばめることができたのは、イメージアルバムがあったからこそと言えるでしょう。
ラピュタ愛に溢れている書き手としてもうちょっと言わせてください。「月光の雲海」(サビメロディなし)は、タイガーモス号の見張り台でシータとパズーが話すシーンです。サビまでいけなかったわけじゃなくてAメロを繰り返せるほどの曲尺です。イメージアルバム「シータとパズー」を継いでいるようにも感じます。曲名や曲に込められたテーマからも。宮崎駿×高畑勲×久石譲の綿密なディスカッションが目に浮かぶようです。
北米版ラピュタのサントラ盤「Confessions in the Moonlight」では、AB-AじゃなくてAB-サビへと変更がかかっていることもまた注目です。時を経てラピュタという作品を久石譲が再構築するときに、全体から俯瞰的に捉えなおしてそう判断した何かがきっとあったと思います。
主題歌「君をのせて」誕生までのエピソードはこれまで多方面にて語られています。
本編には主題歌は使われない予定であった。しかし、高畑は、観終わった観客に「宝を求めて行ったんだけれど、宝は手に入らなかった。かわりに何を手に入れたんだろう…」と和やかな気持ちで映画を反芻してもらいたい、そのためには歌があった方がいいのではないかと提案。急遽、高畑日く「映画全体と有機的に結びついた」主題歌制作が決定した。
高畑は宮崎に作詞を要請。曲は、「イメージアルバム」収録の「パズーとシータ」を元に中盤のサビを加えるよう久石に依頼した。高畑は久石と共に、メロディに合わせて助詞を添削してこれを補作し、主題歌「君をのせて」が出来上がった。レコーディングは86年7月7日であった。余りにもギリギリに完成したため、公開時にはシングルレコード発売は間に合わず、「サウンドトラック」に収録される形となった。
(Disc. 久石譲 『天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎』 より抜粋)
「あれは夜中の11時ぐらいだったかな、他のシーンの音楽を書いていて疲れた時に、ふと浮かんだメロディだったんです。「ワクワクするような冒険活劇に暗いメロディは必要ないな」と、いったんはボツにしたんですが、宮崎さんとプロデューサーの高畑さんがとても気に入られて「歌詞を付けよう」という話になり、気がついた時には《君をのせて》がメインテーマになっていてビックリ(笑)。冒険活劇というと「スター・ウォーズ」に代表されるジョン・ウィリアムズのような曲を連想しますが、それとは正反対の《君をのせて》をメインテーマに据えることで、音楽の方向性が大きく変わった。宮崎さんと高畑さんが《君をのせて》のメロディに新たな意味づけをなされたおかげです。」(久石譲)
(Blog. 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る 『久石譲 in 武道館』より より抜粋)
「天空の城ラピュタ」の「君をのせて」は、最初、久石譲さんが歌われたデモテープを聴かせていただいたんですが、温かくて広がりのあるすてきな歌だと思いました。オーディションだったので、「絶対この曲を歌いたい!」って心から願いました。レコーディングのとき、宮崎駿監督に「自由に歌ってください」と言っていただいたことで気持ちが楽になったのを覚えています。完成披露試写会で作品を見たんですけど、どこで流れるのかを知らされてなくて、いつまでたっても流れてこないので、「使われなかったのかな…」って思っていたらエンディングで流れてきたんですよ。映画の感動もあって、号泣しました。(井上あずみ)
(Blog. 「別冊カドカワ 総力特集 崖の上のポニョ featuring スタジオジブリ」(2008) 久石譲インタビュー内容 より抜粋)
『天空の城ラピュタ』では、主題歌「君をのせて」を作るにあたって、まず宮崎さんからいただいた詞がありました。それをメロディにはめていく作業を、高畑さんと二人で何日もやったことを覚えています。いまでは世界中の人から愛されるようになったあの歌は、宮崎さんと僕、そして高畑さんがいなかったら、生まれていなかったのです。
(Blog. スタジオジブリ小冊子「熱風 2018年6月号」《特集/追悼 高畑勲》 久石譲 内容紹介 より抜粋)
久石:
「ラピュラ」の時すごく考えてたのは、音楽的にまとめたオーケストラベースのものをできたらいいなあと。ただあの曲がメインテーマになるとは思わなかった。一応もうちょっと違ったやつを作ったはずなんですが、こういうのもあっていいやと夜の23時半ぐらいから20分ぐらいで作った曲。それで渡したら、これをメインテーマにしましょうと。あれぇ、全部ひっくり返ったぞと、そういう記憶があります。だからその「君をのせて」はメロディが先にあった曲。それに宮崎さんの言葉を当てはめていく作業。そこに足りない言葉を補っていく、これは僕と高畑さんとでやった。あの作業はとても楽しかったですよね。
鈴木:
これが主題歌になるとは思ってなかったですよね。とはいえね、宮崎のメモは大きいんですよ。あの地平線~ でしょ。高畑さんに言われてなるほどと思ったのはね、「わかります?鈴木さん。あの地平線、要するに目線がもう空にいる」って。多くの人は地上から空を見上げる。ところが宮さんの詩は、もう自分が空の上にいてそれで語ってる、それを中心にすれば歌になりますよって。なるほどおと思ってね。
久石:
「たくさんの灯が」っていうのが、まあ普通は言わないんですよね。プロの作詞家では絶対に書けない言葉。宮崎さんの言葉にはいつもそういうのがいっぱいあって、それが曲をかたちづくってる原点にはなってます。
(Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)
そして今では世界中で歌われています。日本語で大切に歌われています。

『となりのトトロ』
この作品では企画段階から歌が重視されていたこともありイメージアルバムはすべて歌曲からなる「イメージソング集」として生まれました。映画を観て流れてくるあの温かくて可愛くて優しくてわくわくするメロディたちは、そのほとんどに歌が先にあります。ぜひサウンドトラックと聴き並べながら同じ曲を見つけてみてください。名曲「風のとおり道」は歌曲と器楽曲と同時に誕生していたんですね。
1. となりのトトロ
2. 風のとおり道
3. さんぽ
4. まいご
5. すすわたり
6. ねこバス
7. ふしぎしりとりうた ※本編未使用メロディ
8. おかあさん
9. 小さな写真 ※本編未使用メロディ
10. ドンドコまつり ※本編未使用メロディ
11. 風のとおり道 (インストゥルメンタル)


エピソードもご紹介します。
「この作品には二つの歌が必要です。オープニングにふさわしい快活でシンプルな歌と、口ずさめる心にしみる歌の二つです。(中略) せいいっぱい口を開き、声を張りあげて歌える歌こそ、子供達が望んでいる歌です。快活に合唱できる歌こそ、この映画にふさわしいと思います。(後略)」(宮崎駿)
(ジブリの教科書 3 となりのトトロ より抜粋)
『トトロ』のオープニング原画はもともと久石譲のイメージアルバム主題歌を元に描かれている。イントロが太鼓とシンバルだけの曲。ところが原画が上がる頃にバグパイプの入った曲が届けられると、これを聴いた宮崎駿は一瞬で気に入って曲の変更を決めている。
(ふたりのトトロ 宮崎駿と『となりのトトロ』の時代/木原浩勝 より抜粋)
「となりのトトロ」は、映画に先駆けて制作されるイメージアルバムのデモ作りから参加させてもらいました。主題歌はわたしが歌うことになっていたのですが、当初「さんぽ」は杉並児童合唱団が歌うことになっていました。でも、「井上あずみの声が入った方がしんがあっていいのでは」ということになり、児童合唱団用に歌ったわたしのデモがそのまま映画に使われたんです。こんな経験は後にも先にもこの一曲だけです。その曲が、20年たった今でも子どもたちが歌ってくれるわたしの代表曲になったのですから、出会いや縁は大切なものだなってつくづく思いましたね。(井上あずみ)
(Blog. 「別冊カドカワ 総力特集 崖の上のポニョ featuring スタジオジブリ」(2008) 久石譲インタビュー内容 より抜粋)
『魔女の宅急便』
こちらもまたメロディの宝庫といえる作品です。魔女の宅急便の好きな曲を口ずさんでみて?となったら結構いろいろ飛び出すかもしれませんね。当初から輝くメロディたちの評判も良かったのでしょう。映画公開後に制作された歌曲集は、原作者の角野栄子はじめ作家陣が主人公キキの思いを詠った詩を作り4人の女性シンガーが歌っています。久石譲プロデュースです。
ひとつ添えると、元となっているのは一曲として完成しているイメージアルバムからです。そこからメロディを素材として映画本編用に施しているのがサウンドトラック曲です。曲名も変わっているので、イメージアルバム、サウンドトラック、ヴォーカルアルバムと曲名カード神経衰弱三つ巴にチャレンジしてみてください。


イメージアルバム → サウンドトラック 曲名の変化
*サウンドトラックに継がれなかった曲:渚のデイト、突風
また曲名カードで結びつかずに残ったものは、サウンドトラック盤で初めて登場することになる、新たに映画本編のために書き下ろされた楽曲です。

イメージアルバム → ヴォーカル・アルバム 曲名の変化

歌でもインストでもメロディを楽しめるジブリ音楽です。そして歌らしい曲想に、インストゥルメンタルらしい曲想に仕立てあげる久石譲の魔法も光っています。

Posted on 2025/06/06
2025年5月28~30日、久石譲コンサートがカナダ・トロントで開催されます。共演オーケストラは2022年と2024年に続いてトロント交響楽団です。新作初演予定になっています。 “Info. 2026/05/28-30 「Hisaishi Returns」久石譲コンサート(トロント)開催決定!!” の続きを読む
Posted on 2025/06/05
久石譲×ロイヤル・フィル 待望の来韓公演決定!
久石がコンポーザー・イン・アソシエーションを務めるロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との韓国公演がついに実現! “Info. 2025/07/21,22 久石譲&ロイヤル・フィル スペシャルツアー(ソウル) 開催決定!!” の続きを読む