Info. 2024/07/11-13 「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」(ニューヨーク) 開催決定!! 【3/5 update!!】

Posted on 2023/11/14

2024年7月11日、久石譲によるスタジオジブリ宮崎駿監督作品演奏会がアメリカ・ニューヨークにて開催決定!

2017年6月パリ世界初演、「久石譲 in パリ -「風の谷のナウシカ」から「風立ちぬ」まで 宮崎駿監督作品演奏会-」(NHK BS)TV放送されたことでも話題になりました。 “Info. 2024/07/11-13 「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」(ニューヨーク) 開催決定!! 【3/5 update!!】” の続きを読む

Info. 2024/02/26 久石譲オフィシャル・ウェブサイト「joehisaishi.com」リニューアル!!

Posted on 2024/02/26

久石譲オフィシャル・ウェブサイト「joehisaishi.com」がリニューアルされました。2021年11月30日から”UNDER RENEWAL CONSTRUCTION”(リニューアル中)となっていたものがいよいよオープンです。おめでとうございます!今後もますます応援しましょう! “Info. 2024/02/26 久石譲オフィシャル・ウェブサイト「joehisaishi.com」リニューアル!!” の続きを読む

Blog. 「新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 すみだクラシックの扉 #20」コンサート・レポート

Posted on 2024/02/24

2月16,17日開催「新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 すみだクラシックの扉 #20」です。同楽団のMusic Partnerにも就任している久石譲は、シーズンプログラムとして企画される定期演奏会にも指揮者として登場しています。年間スケジュールで発表されるから早々と楽しみを見つけておくことができる。〈2023/2024シーズン〉は2023年9月「定期演奏会 #651」開催で「久石譲:Adagio for 2 Harps and Strings(世界初演)」と「マーラー:交響曲 第5番」を。そして趣向を凝らしまた新しい一面を魅せてくれる本公演です。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだクラシックへの扉 #20

[公演期間]  
2024/02/16,17

[公演回数]
2公演
東京・すみだトリフォニーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:崔文洙、ビルマン聡平 **
ヴィオラ:中恵菜 **
チェロ:向井航 **
コンサートマスター:崔文洙、伝田正秀

[曲目]
J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番より第2曲アリア (小澤征爾氏への献奏として)

久石譲:I Want to Talk to You – for string quartet, percussion and strings – **
モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

—-intermission—-

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』

[参考作品]

久石譲指揮 東京交響楽団 『ストラヴィンスキー:「春の祭典」』

 

 

 

会場でも配られたプログラム・ノート(小冊子)は、コンサート数日前にウェブ閲覧できるこまやかさでした。ゆっくり読めて、ゆっくり聴けて、楽しみふくらんで。そんな心配りうれしいですね。対象期間中しか公開されていないと思います。早めにPDFはこちらへ。

 

 

第653回定期演奏会(2024年1月)とすみだクラシックへの扉第20回(2月)のプログラムノートを公開

公式サイト:新日本フィルメディア(PDF閲覧/ダウンロード)
https://www.njp.or.jp/magazine/?p=2038

 

 

Program Notes

あらゆる音楽においてリズムは、メロディと同じぐらい根源的な要素である。ダンスがあれば多くの場合、リズムを生み出す打楽器が欠かせないし、なんらかの言語を発した時点で、そこには韻律としてのメロディやリズムの芽吹きがあるからだ。

ミニマル・ミュージックにも影響を与えたインド音楽などのように、世界の伝統音楽には非常に複雑なリズムが存在している。だがクラシック音楽(西洋音楽)においてリズムの可能性が追求されるようになるのはメロディやハーモニーに比べると遅く、20世紀になってからなのだ。作曲家としてのみならず指揮者としてもリズムの秘められた可能性に着目し、古典的な名作からも新たなリズムを引き出す久石譲の手腕が、本公演の聴きどころとなるだろう。

■久石譲:I Want to Talk to You -for String quartet, percussion and strings-

2023年3月30日、音楽レーベルの名門ドイツ・グラモフォンは久石譲(1950~)との契約を発表。同年6月30日に英国のロイヤル・フィルを指揮した作品が世界にむけてリリースされたことで、改めて久石の世界的な人気に注目が集まっている。現在73歳だが、映画音楽のみならず長年追求してきたミニマル・ミュージックを通して、これから更に世界的な名声を高めてゆくに違いない。

そんな久石が、意外にも初めて書き下ろした合唱曲から派生して生まれたのが本作である。きっかけになったのは山形県合唱連盟から委嘱された創立70周年を記念する合唱曲であった。直訳すれば「あなたと話したい」という意味になるこのタイトルについて、久石は「街中を歩いていても、店の中でも人々は携帯電話しか見ていない。人と人とのコミュニケーションが希薄になっていくこの現状に警鐘を鳴らすつもりでこのテーマを選んだ」と語っている。

2020年3月にまず合唱曲(全2楽章)として完成。だがパンデミックの拡大により初演の見通しがたたなくなってしまう(久石自身も語っているように、こうなると携帯電話のお陰でコミュニケーションが出来るという、まるで逆の状況になってしまったのが興味深い)。そこで作曲中に考えていた、第1楽章を弦楽四重奏と弦楽オーケストラ(最終的には打楽器も加わった)に置き直すというアイデアを実行。こうして誕生した弦楽版は2021年3月に、オリジナルの合唱版は2022年4月に初演されている。

[楽器編成] 弦楽四重奏、ヴィブラフォン、マリンバ、大太鼓、弦楽5部。

小室敬幸(音楽ライター)

 

■モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

■ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』ー2部によるロシアの異教徒の情景

(*解説あり 割愛)

(新日本フィルハーモニー交響楽団 2024年1月,2月 プログラムノート より)

 

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

久石譲:I Want to Talk to You -for String quartet, percussion and strings-

弦楽四重奏と弦楽合奏を融合させた作品です。グローバルに見渡して現代作品たちにも特徴的な編成です。アルヴォ・ペルトらの文脈をも飲み込んで久石譲色を強く滲ませた作品です。

久石譲といえばオーケストラは対向配置、そんななかフォーメーションも現代的に変化を続けています。直近コンサートや録音風景でも見られることがありました、本公演は低弦が下手側から上手側へ。シンプルに言うと、久石譲対向配置の特徴だったコントラバス(下手)とテューバ(上手)が左右で拮抗する低音部から、コントラバスとテューバどちらも上手側となり、そのコントラバスの前にチェロも移動しています。(細かく言うとチェロとヴィオラが従来配置から入れ替わっていることになります。)これは本公演で作品ごとにオーケストラが拡大していく全てのプログラムでそうなっています。

弦10型です。静謐に厳かに幕を開けます。2021年の初演から国内外のコンサートと楽団とで演奏を広げている作品です。詳しかったり詳しくなかったりする感想もぜひご覧ください。

 

 

モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

弦12型です。前作品から見ると、管楽器も加わったフルオーケストラになったうえに弦楽器の人数も増えています。モーツァルトら古典時代の定番オーケストラサイズ感のようです。この作品だけの演奏特徴というと、時代のバロックティンパニが使用され、トランペットもコルネットに替えて演奏されています。さもありなん久石節。かくあるべし久石節。久石譲が振ったらこうなるというキビキビと小気味よい快速&快感です。よくわかったりよくわからなかったりする感想もぜひご覧ください。

 

 

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』

弦16型です。ステージに収まりきれないくらいのラージ・オーケストラは一目で多い増えたとわかります。視覚的にも圧巻ですが、さらに上回るリズム重視の大迫力な響きがダイレクトに迫ってきます。こんなに大音響を味わえる機会も実はなかなかないかもです。

プログラム順に弦10型、弦12型、弦16型とオーケストラは拡大しています。なんとなく少し増えたのかな、みたいな数字の変化に感じますけれど、実際には弦10型と弦16型、ストリングスで2倍近く増えています。「I Want to Talk to You」で30人くらいだったのが「春の祭典」では60人くらいの弦楽奏者。ティンパニも二人いるなんてそうそうお目にかかれない。このあたりのことは下のレポートにも書いています。人間のもつ原始的で本能的なエネルギーの爆発をむき出しの指揮さばきで。伝わったり伝わらなかったりする感想もぜひご覧ください。

 

 

 

「すみだクラシックの扉」シリーズは、週末の金土開催が多いようです。どちらもお昼間、なのに、どちらも完売。海外からの観客もすでにおなじみ、終演カーテンコールまで湧いていた会場でした。

新しいファンの人とお会いできたり、それぞれありったけの情報や思い出を持ち寄って(つまり久石譲愛をたっぷり抱えて)語らいながら楽しいコンサートの一日を過ごしました。

 

 

 

故・小澤征爾氏を偲ぶコーナーをすみだトリフォニーホールに設置いたします

小澤征爾氏(新日本フィルハーモニー交響楽団 桂冠名誉指揮者)のご逝去に伴い、2024年2月15日(木)から2月18日(日)までの4日間、新日本フィルハーモニー交響楽団の本拠地であるすみだトリフォニーホール(東京都墨田区) 小ホール入口に、小澤征爾氏を偲ぶコーナーを設置いたします。

1997年10月26日のすみだトリフォニーホール開館以来、小澤征爾率いる新日本フィルハーモニー交響楽団を支えてくだった墨田区の皆様をはじめ、どなたでもご入場いただけます。
開場時間:10:00~17:00(4日とも)

思い出や感謝の言葉を書き残すことができるノートもご用意しておりますので、ぜひご自由にご記入ください。
写真や新日本フィル、すみだトリフォニーホールとの歩みの記録もご覧ください。

公式サイト:新日本フィルハーモニー交響楽団|News
https://www.njp.or.jp/news/8091/

 

same video

指揮・久石譲/J.S.バッハの管弦楽組曲第3番より第2曲アリア(小澤征爾氏への献奏として)

from 新日本フィルハーモニー交響楽団YouTube

 

from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/

 

from 新日本フィルハーモニー交響楽団公式X
https://twitter.com/newjapanphil

 

 

「第51回アニー賞 ウィンザー・マッケイ賞」を受賞した久石譲です。コンサートと同日になったアメリカでの授賞式は欠席となったため、ビデオメッセージで受賞あいさつが行われました。久石さん自身も世界各地を行ったり来たりで忙しい。賑わう周囲も世界各地で忙しい。久石さんが足りていません。このたびの受賞心よりおめでとうございます!

 

 

 

 

次回からの新しい〈2024/2025シーズン〉は、2024年9月に「ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲」や「ブラームス:交響曲 第1番」を、2025年3月に「メシアン:トゥーランガリラ交響曲」とすでに決定しています。ぜひチケット発売までお見逃しなく。

 

 

 

 

 

 

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『君たちはどう生きるか』 アニー賞作品賞の候補に選出 『千と千尋の神隠し』に続くか

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Info. 2024/01/22 《速報》 「Joe Hisaishi Returns」久石譲コンサート(シアトル)プログラム 【2/14 update!!】

Posted on 2024/01/22

2024年1月10-14日、久石譲コンサートがアメリカ・シアトルで開催されました。2023年3月、シアトル交響楽団の2023/2024シーズンプログラムが発表され「Subscriber Exclusives」シリーズのラインナップにて久石譲登場は発表されていました。

「Residency(レジデンシー)」と呼ばれることの多い、一つの場所で行われる一連のコンサート・イベントです。「Joe Hisaishi Residency」と題されたとおり、2つのプログラム、作曲家ワークショップ、ユース・オーケストラ・リハーサルなど1月9日-14日の約1週間にわたって充実のイベント開催されました。シアトル交響楽団とは2022年「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」以来の再共演です。MUSIC FUTUREふくむ久石譲リターンズ! “Info. 2024/01/22 《速報》 「Joe Hisaishi Returns」久石譲コンサート(シアトル)プログラム 【2/14 update!!】” の続きを読む

Disc. 久石譲 『Silent Love サイレントラブ オリジナル・サウンドトラック』

2024年1月24日 CD発売 UMCK-1760

 

2024年1月26日公開映画『サイレントラブ』
原案・脚本・監督:内田英治
共同脚本:まなべゆきこ
音楽:久石譲
出演:山田涼介、浜辺美波 ほか

 

 

ただ愛する。この複雑に濁った時代に、透明な純愛をそっとかざす、この冬いちばん切ないラブストーリー。

『ミッドナイトスワン』で世界中の人々の魂を、今も激しく揺さぶり続ける内田英治監督最新作。蒼には新作ごとに全く異なる顔を見せ、その実力をスクリーンに刻みつける山田涼介。今回がラブストーリー映画初主演となる。美夏には他に並ぶ者のない圧倒的な透明感で人々を魅了する浜辺美波。ピアノとガムランボールの音色に導かれ、声を捨てた青年と、光を失った音大生の密やかな情熱が交差する、世界でいちばん静かなラブストーリー。

内田監督が熱望し念願成就した久石譲が、本作のためにオリジナル楽曲を手掛けた。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

 

発売中のオリジナル・サウンドトラック盤には、ほぼストーリーに沿った順番で収録されているので、映画を観終わった後に(脚本も担当した内田英治監督書き下ろしのノベライズ文庫本などを片手に……)聴くと劇場での感動が鮮やかに甦るはずだ。例えば、[03]“静かな二人”……ステッキを手に独りで歩いてキャンパスに向かう美夏を、初めて蒼が静かに見守りながら密かにガードしつつ送り届ける場面の音楽、[04]“救いの音”…交差点でパニック発作に襲われ立ち尽くす美夏を、蒼がガムランボールの音色で導く場面、[05]“神の手”……美夏が両手で蒼の右手を包みこんで「私にとってあなたの手は神の手、いつもこの手が助けてくれた」と感謝の言葉を口にした時の、[07]“やさしい風の中”……3人で山中湖へドライブに行く車内で、[08]“歪み”……悠真に「君はあいつがどんな奴か知ってるのか? あいつはピアノ科の学生なんかじゃないんだぞ」と迫られ「どんな人でも関係ない、だって彼は神の手を持つ人だから……」と美夏、[09]“雨の中の激情”……美夏「待って! お願い、あおいさん待って……」、[12]“よごれた手”……警察による現場検証シーン、[13]“アクリル越しの二人”……収監場所での面会シーン、[14]“傷だらけの手”……蒼「本当の俺の手はずっと前から汚れていた……」と、どの楽曲もピアノレスなのが印象的。それだけに美夏の鼻歌をモティーフにしたピアノ演奏によるテーマ曲[18]“Silent”が鮮烈に響く。しかも演奏しているのが、今やシーンを超えて人気のピアニスト〈かてぃん〉こと角野隼斗なのも嬉しいサプライズだ。

出典:久石譲が手がけた楽曲で映画「サイレントラブ」の感動が甦る――角野隼斗も参加したサントラ盤 | Mikiki by TOWER RECORDS より抜粋
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/37062

 

 

 

上映時間約116分、サウンドトラック約31分、久石譲が作曲した劇中音楽は映像の1/4程度となっている。これは、実写映画など現実世界を描いた作品の場合によくにみられる久石譲の傾向のひとつだ。リアリティ重視のものはあえて音楽を少なくしている。また、本作はクラシックのピアノ曲が彩っている。そのため、久石譲はピアノを重要なシーンのその一曲でしか使っていない。またクラシックのメロディと対比するように、メロディを抑えたミニマルの手法に比重を置いている。

サウンドトラックはほぼ本編に沿って収録されている。差異を2点挙げると、「18.Silent」のピアノ曲は、本編では「14.傷だらけの手」「15.蒼」の間で使われている。物語の展開上この位置にあるが、挿入歌に甘んじるのはもったいない、たしかにサウンドトラックではエンディングを飾るにふさわしい。自由に弾いてほしいという久石譲の希望とおり、遊べる中間部では角野隼斗らしい音運びがクラシックとポップスのセンスを行き来して魅了される。もうひとつは、「16.サイレントラブ」は映画本編には使用されていないメインテーマのオーケストラバージョンだ。使用プランがあったかは定かではないが結果的にボーラストラックとして収録が叶った一曲だ。

本作で特徴的なのは2台のハープを使用していることと、久石譲には珍しいエレキギターの音を選んでいることである。エレキギターは、主人公の一人蒼(あおい)を表現している。「1.オープニング」は蒼のテーマをエレキギターで奏している。そして、「2.ふれる」は蒼ともう一人の主人公美夏の出会いのシーンからタイトルバックまで流れている。この曲は、美夏のテーマが流れながら、同時に蒼のテーマが交錯している。どちらもハープの音色だ。注目したいのは、この2つの曲を聴き比べることで見えてくることがある。それは、「2.ふれる」の蒼のテーマはきれいな分散和音になって協和していることだ。美夏を想うときの純粋な人物像が現れている。一方で「1.オープニング」の蒼のテーマはモチーフの一音が不協しているためきれない分散和音になっていないと気づく。蒼の持つ影の部分を現わしている。「4.救いの音」「14.傷だらけの手」などでも二人のテーマの交錯は聴くことができる。

「3.静かな二人」「5.神の手」などは、また違った二人の交流を表現している。4度の心地よいハモリで奏でられるメロディは、二人の静かで親密なやりとりを描いている。上述の二人のテーマの交錯と対比すると、より心も距離も近づいて穏やかで安らいだ二人の心情が伝わってくるようだ。

サウンドトラックだけを聴くとエレキギターの音色が奇異に聴こえるかもしれない。映画を観るといろいろな自然音とも混ざっているのもあり、映像と音楽はうまく馴染んでいるように聴こえる。あるいは、サウンドトラック用のミキシングに際して、あえて違和感を強調するようなボリュームに微調整されているのかもしれない。

 

 

 

 

 

01. オープニング
02. ふれる
03. 静かな二人
04. 救いの音
05. 神の手
06. 戸惑い
07. やさしい風の中
08. 歪み
09. 雨の中の激情
10. 怒り
11. 事件
12. よごれた手
13. アクリル越しの二人
14. 傷だらけの手
15. 蒼
16. サイレントラブ
17. ふれる(再会)
18. Silent

 

Silent Love (Original Motion Picture Soundtrack)

1. Opening
2. Touch
3. The Quiet Two
4. Sound of Salvation
5. Hand of God
6. Confusion
7. In the Gentle Wind
8. Distortion
9. Intense Passion in the Rain
10. Anger
11. Incident
12. Dirty Hands
13. Two People Through Acrylic
14. Scarred Hands
15. Blue
16. Silent Love
17. Touch – Again
18. Silent

 

 

作曲・編曲・プロデュース:久石譲

指揮:久石譲
演奏:Future Film Orchestra
ピアノ:角野隼斗 (Tr.18)

レコーディング・エンジニア:浜田純伸
アシスタント・エンジニア:川村優日、佐藤千恵
マスタリング・エンジニア:藤野成喜(ユニバーサル ミュージック)
オーケストラ・インスペクター:向井航
アーティスト・マネージメント:川本伸治、宮國力
音楽制作:前田泰弘、佐藤蓉子
マネージメント・オフィス:ワンダーシティ
スタジオ・サウンド・シティ、サウンドインスタジオ
A&R:大里和生、松田芳明、笠神摩由子(フジパシフィックミュージック)
Executive Producer:丹羽浩之(フジパシフィックミュージック)