Blog. 「新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 すみだクラシックの扉 #20」コンサート・レポート

Posted on 2024/02/24

2月16,17日開催「新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 すみだクラシックの扉 #20」です。同楽団のMusic Partnerにも就任している久石譲は、シーズンプログラムとして企画される定期演奏会にも指揮者として登場しています。年間スケジュールで発表されるから早々と楽しみを見つけておくことができる。〈2023/2024シーズン〉は2023年9月「定期演奏会 #651」開催で「久石譲:Adagio for 2 Harps and Strings(世界初演)」と「マーラー:交響曲 第5番」を。そして趣向を凝らしまた新しい一面を魅せてくれる本公演です。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだクラシックへの扉 #20

[公演期間]  
2024/02/16,17

[公演回数]
2公演
東京・すみだトリフォニーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:崔文洙、ビルマン聡平 **
ヴィオラ:中恵菜 **
チェロ:向井航 **
コンサートマスター:崔文洙、伝田正秀

[曲目]
J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番より第2曲アリア (小澤征爾氏への献奏として)

久石譲:I Want to Talk to You – for string quartet, percussion and strings – **
モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

—-intermission—-

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』

[参考作品]

久石譲指揮 東京交響楽団 『ストラヴィンスキー:「春の祭典」』

 

 

 

会場でも配られたプログラム・ノート(小冊子)は、コンサート数日前にウェブ閲覧できるこまやかさでした。ゆっくり読めて、ゆっくり聴けて、楽しみふくらんで。そんな心配りうれしいですね。対象期間中しか公開されていないと思います。早めにPDFはこちらへ。

 

 

第653回定期演奏会(2024年1月)とすみだクラシックへの扉第20回(2月)のプログラムノートを公開

公式サイト:新日本フィルメディア(PDF閲覧/ダウンロード)
https://www.njp.or.jp/magazine/?p=2038

 

 

Program Notes

あらゆる音楽においてリズムは、メロディと同じぐらい根源的な要素である。ダンスがあれば多くの場合、リズムを生み出す打楽器が欠かせないし、なんらかの言語を発した時点で、そこには韻律としてのメロディやリズムの芽吹きがあるからだ。

ミニマル・ミュージックにも影響を与えたインド音楽などのように、世界の伝統音楽には非常に複雑なリズムが存在している。だがクラシック音楽(西洋音楽)においてリズムの可能性が追求されるようになるのはメロディやハーモニーに比べると遅く、20世紀になってからなのだ。作曲家としてのみならず指揮者としてもリズムの秘められた可能性に着目し、古典的な名作からも新たなリズムを引き出す久石譲の手腕が、本公演の聴きどころとなるだろう。

■久石譲:I Want to Talk to You -for String quartet, percussion and strings-

2023年3月30日、音楽レーベルの名門ドイツ・グラモフォンは久石譲(1950~)との契約を発表。同年6月30日に英国のロイヤル・フィルを指揮した作品が世界にむけてリリースされたことで、改めて久石の世界的な人気に注目が集まっている。現在73歳だが、映画音楽のみならず長年追求してきたミニマル・ミュージックを通して、これから更に世界的な名声を高めてゆくに違いない。

そんな久石が、意外にも初めて書き下ろした合唱曲から派生して生まれたのが本作である。きっかけになったのは山形県合唱連盟から委嘱された創立70周年を記念する合唱曲であった。直訳すれば「あなたと話したい」という意味になるこのタイトルについて、久石は「街中を歩いていても、店の中でも人々は携帯電話しか見ていない。人と人とのコミュニケーションが希薄になっていくこの現状に警鐘を鳴らすつもりでこのテーマを選んだ」と語っている。

2020年3月にまず合唱曲(全2楽章)として完成。だがパンデミックの拡大により初演の見通しがたたなくなってしまう(久石自身も語っているように、こうなると携帯電話のお陰でコミュニケーションが出来るという、まるで逆の状況になってしまったのが興味深い)。そこで作曲中に考えていた、第1楽章を弦楽四重奏と弦楽オーケストラ(最終的には打楽器も加わった)に置き直すというアイデアを実行。こうして誕生した弦楽版は2021年3月に、オリジナルの合唱版は2022年4月に初演されている。

[楽器編成] 弦楽四重奏、ヴィブラフォン、マリンバ、大太鼓、弦楽5部。

小室敬幸(音楽ライター)

 

■モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

■ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』ー2部によるロシアの異教徒の情景

(*解説あり 割愛)

(新日本フィルハーモニー交響楽団 2024年1月,2月 プログラムノート より)

 

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

久石譲:I Want to Talk to You -for String quartet, percussion and strings-

弦楽四重奏と弦楽合奏を融合させた作品です。グローバルに見渡して現代作品たちにも特徴的な編成です。アルヴォ・ペルトらの文脈をも飲み込んで久石譲色を強く滲ませた作品です。

久石譲といえばオーケストラは対向配置、そんななかフォーメーションも現代的に変化を続けています。直近コンサートや録音風景でも見られることがありました、本公演は低弦が下手側から上手側へ。シンプルに言うと、久石譲対向配置の特徴だったコントラバス(下手)とテューバ(上手)が左右で拮抗する低音部から、コントラバスとテューバどちらも上手側となり、そのコントラバスの前にチェロも移動しています。(細かく言うとチェロとヴィオラが従来配置から入れ替わっていることになります。)これは本公演で作品ごとにオーケストラが拡大していく全てのプログラムでそうなっています。

弦10型です。静謐に厳かに幕を開けます。2021年の初演から国内外のコンサートと楽団とで演奏を広げている作品です。詳しかったり詳しくなかったりする感想もぜひご覧ください。

 

 

モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

弦12型です。前作品から見ると、管楽器も加わったフルオーケストラになったうえに弦楽器の人数も増えています。モーツァルトら古典時代の定番オーケストラサイズ感のようです。この作品だけの演奏特徴というと、時代のバロックティンパニが使用され、トランペットもコルネットに替えて演奏されています。さもありなん久石節。かくあるべし久石節。久石譲が振ったらこうなるというキビキビと小気味よい快速&快感です。よくわかったりよくわからなかったりする感想もぜひご覧ください。

 

 

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『春の祭典』

弦16型です。ステージに収まりきれないくらいのラージ・オーケストラは一目で多い増えたとわかります。視覚的にも圧巻ですが、さらに上回るリズム重視の大迫力な響きがダイレクトに迫ってきます。こんなに大音響を味わえる機会も実はなかなかないかもです。

プログラム順に弦10型、弦12型、弦16型とオーケストラは拡大しています。なんとなく少し増えたのかな、みたいな数字の変化に感じますけれど、実際には弦10型と弦16型、ストリングスで2倍近く増えています。「I Want to Talk to You」で30人くらいだったのが「春の祭典」では60人くらいの弦楽奏者。ティンパニも二人いるなんてそうそうお目にかかれない。このあたりのことは下のレポートにも書いています。人間のもつ原始的で本能的なエネルギーの爆発をむき出しの指揮さばきで。伝わったり伝わらなかったりする感想もぜひご覧ください。

 

 

 

「すみだクラシックの扉」シリーズは、週末の金土開催が多いようです。どちらもお昼間、なのに、どちらも完売。海外からの観客もすでにおなじみ、終演カーテンコールまで湧いていた会場でした。

新しいファンの人とお会いできたり、それぞれありったけの情報や思い出を持ち寄って(つまり久石譲愛をたっぷり抱えて)語らいながら楽しいコンサートの一日を過ごしました。

 

 

 

故・小澤征爾氏を偲ぶコーナーをすみだトリフォニーホールに設置いたします

小澤征爾氏(新日本フィルハーモニー交響楽団 桂冠名誉指揮者)のご逝去に伴い、2024年2月15日(木)から2月18日(日)までの4日間、新日本フィルハーモニー交響楽団の本拠地であるすみだトリフォニーホール(東京都墨田区) 小ホール入口に、小澤征爾氏を偲ぶコーナーを設置いたします。

1997年10月26日のすみだトリフォニーホール開館以来、小澤征爾率いる新日本フィルハーモニー交響楽団を支えてくだった墨田区の皆様をはじめ、どなたでもご入場いただけます。
開場時間:10:00~17:00(4日とも)

思い出や感謝の言葉を書き残すことができるノートもご用意しておりますので、ぜひご自由にご記入ください。
写真や新日本フィル、すみだトリフォニーホールとの歩みの記録もご覧ください。

公式サイト:新日本フィルハーモニー交響楽団|News
https://www.njp.or.jp/news/8091/

 

same video

指揮・久石譲/J.S.バッハの管弦楽組曲第3番より第2曲アリア(小澤征爾氏への献奏として)

from 新日本フィルハーモニー交響楽団YouTube

 

from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/

 

from 新日本フィルハーモニー交響楽団公式X
https://twitter.com/newjapanphil

 

 

「第51回アニー賞 ウィンザー・マッケイ賞」を受賞した久石譲です。コンサートと同日になったアメリカでの授賞式は欠席となったため、ビデオメッセージで受賞あいさつが行われました。久石さん自身も世界各地を行ったり来たりで忙しい。賑わう周囲も世界各地で忙しい。久石さんが足りていません。このたびの受賞心よりおめでとうございます!

 

 

 

 

次回からの新しい〈2024/2025シーズン〉は、2024年9月に「ドヴォルジャーク:チェロ協奏曲」や「ブラームス:交響曲 第1番」を、2025年3月に「メシアン:トゥーランガリラ交響曲」とすでに決定しています。ぜひチケット発売までお見逃しなく。

 

 

 

 

 

 

カテゴリーBlog

コメントする/To Comment