Blog. ジブリフィルムコンサートを聴く(武道館/パリ/グラモフォン)《後編》

Posted on 2025/03/01

《前編》はジブリフィルムコンサートのプログラムや楽器編成そのほか参考作品までを見ていきました。《中編》《後編》は作品ごとに見ていきます。

 

 

▽プログラム
▽出演/楽器編成
▽歌
▽参考作品(DVD/TV/CD)
▽MUSIC VIDEO
▽INTERVIEW VIDEO
▽コンサート軌跡

▽ポイント

▽風の谷のナウシカ
▽魔女の宅急便
▽もののけ姫
▽風立ちぬ
▽崖の上のポニョ
▽天空の城ラピュタ
▽紅の豚
▽ハウルの動く城
▽千と千尋の神隠し
▽となりのトトロ

▽アンコール

 

6

天空の城ラピュタ
CASTLE IN THE SKY

武道館コンサート/パリ・コンサート

ハトと少年
君をのせて
大樹

編成特記:
マーチングバンド、合唱

グラモフォン・アルバム

ハトと少年
君をのせて

Doves and the Boy
Carrying You

編成特記:
管楽、合唱、バンダ

全体構成は武道館/パリと変わっていません。

世界ツアーは公演ごとにマーチングバンドあり・なしで演奏形態が異なり、それに合わせて構成曲も三曲目「大樹/The Eternal Tree of Life」あり・なしになります。グラモフォン・アルバムはマーチングバンドではないオーケストラの管楽セクションと合唱で演奏される二曲です。世界ツアー版と位置づけられています。

《ハトと少年》武道館コンサートとパリ・コンサートは、観客席通路にくまなく配置された大所帯のマーチングバンドが魅力的です。後半部のくり返しと転調とで曲尺は長くなっています。グラモフォン・アルバムは、トランペットのメロディとホルンによって導かれます。パーカッション群も加わっていくこのパートは交響組曲とほぼ同じ構成と曲尺になっています。

コンサートではバンダによって演奏されます。バンダとは舞台上の編成とは別に離れた位置で演奏する演奏手法のことで、ここではトランペットとホルンが会場二階席の前方左右に分かれています。まるで映画本編でパズーがスラッグ渓谷からトランペットを吹いているように会場にメロディが降ってきます。

《君をのせて》武道館コンサートとパリ・コンサートは、引き続き観客席通路にくまなく配置された大所帯のマーチングバンドとステージの合唱・児童合唱で演奏されます。グラモフォン・アルバムは、オーケストラの弦楽器を除いた木管・金管楽器そしてパーカッション+合唱・児童合唱で演奏されます。この曲は日本語で歌われます。歌に寄り添うようにずっと吹き続けるトランペットの旋律もエスコートヒーローのパズーらしい。威厳ある英国風の曲想に仕上がっています。

《大樹》武道館コンサートとパリ・コンサートそして世界ツアーのマーチングバンドあり公演では演奏されます。パリ・コンサートがTV放送された「久石譲 in パリ」ではカットされていますがしっかり本演では演奏されています。

この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。

 

 

オーケストラのためのプログラム構成と楽器編成について。世界ツアーを展開していくなかで当初は組み込まれていなかった休憩時間も入るようになります。それにより『天空の城ラピュタ』開始前にバンダへ移動準備する時間もとれるようになります。『天空の城ラピュタ』は弦楽セクションの出番はないため楽器調整など休憩時間にあてることができます。次のプログラム『紅の豚』は管楽セクションの出番はないため楽器調整など休憩時間にあてることができます。プログラムの流れは『天空の城ラピュタ』でも演奏していたトロンボーンやクラリネットらがステージ中央に移動してきます。

 

 

7

紅の豚
PORCO ROSSO

帰らざる日々

Bygone Days

編成特記(武道館コンサート):
トロンボーン3、バストロンボーン1、テューバ1、アルトサックス1、テナーサックス1、大太鼓(グランカッサ)、シンバル、スネア

編成特記(パリ・コンサート/グラモフォン・アルバム):
トロンボーン3、バストロンボーン1、テューバ1、クラリネット2、バスクラリネット1、大太鼓(グランカッサ)、シンバル、スネア

全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽器編成から変化を見てとれます。

《帰らざる日々》久石譲によるピアノと10~11名の奏者によるジャジーなアンサンブルです。武道館コンサートは5人の金管楽器と2人のサクソフォン、そして3人のパーカッションです。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムはサクソフォンからクラリネットへと切り替わっています。サックスのほうが雰囲気でる、武道館のその印象が強い、そう思う人も多いかもしれませんが、そこにはしっかりとした理由あります。

武道館コンサートはオーケストラ編成のなかにアルトサックス1、テナーサックス1も入っていました。これは久石譲の創作活動においてこの時代のひとつの特徴とも言えます。サクソフォンの音色パレットの効いた作品には「Oriental Wind for Orchestra」(2005/2010)、「MKWAJU 1981-2009」(2009)、「The End of the World」(2009/2015)などがあります。以降、クラシック音楽の指揮活動を本格化させるなかで合わせて自作品もオーケストラの楽器編成と編成規模は標準化の流れへと向かいます。一般的なオーケストラ編成にサクソフォンは入っていません。これにより従来サクソフォンも編成された作品が改訂される際にはクラリネットなど他の楽器へと切り替わっていきます。編成に残っている作品もあります。ジャズクラリネットも多くのスタンダード曲があります。落ち着いた雰囲気でくゆらすクラリネットと円熟したピアノと。

コンサートではフィンガースナップ(指パッチン)も演出で聴くことができます。その歴史は2018年9月ロサンゼルス公演まではない、2018年11月カーネギーホールで開催されたニューヨーク公演ではある、ここから始まっているようです。もしかしたらリハーサルまでもなかったのかも、本演中に管楽器奏者の粋な演出で自然発生的に起こったことかもしれません。そうならさすがジャズの街ニューヨークらしいエピソードです。以降の公演でも定着していくことになるパフォーマンスです。

 

 

武道館コンサートはこの後メッセージ動画が流れます。パリ・コンサートはこの後鈴木敏夫プロデューサーと宮崎駿監督のメッセージがスクリーンに映し出されています。映画『君たちはどう生きるか』公開後はどうなっているのでしょう。

 

 

8

ハウルの動く城
HOWL’S MOVING CASTLE

シンフォニック・ヴァリエーション「メリーゴーランド+ケイヴ・オブ・マインド」

Symphonic Variation “Merry-go-round + Cave of Mind”

編成特記:
バンダ(*武道館コンサートのみ)

全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽器編成から変化を見てとれます。

交響変奏曲は「人生のメリーゴーランド」の変幻自在する旋律と「星をのんだ少年」の美しいメロディが組み込まれた作品です。武道館コンサートは「ケイヴ・オブ・マインド」パートはバンダによって演奏されます。バンダとは舞台上の編成とは別に離れた位置で演奏する演奏手法のことで、ここではトランペットとトロンボーンが会場二階席の前方左右に分かれています。各4人ずつ左右で計8人です。会場全体にこだまして響き渡っています。こんな離れ業ができたのも大編成だったおかげです。もともとトランペット8、トロンボーン8いた大規模編成はバンダ要員に配置してもしっかりステージにトランペット4、トロンボーン4と残っています。

パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは一般的なオーケストラ編成でトランペット3、トロンボーン3、バストロンボーン1です。「ケイヴ・オブ・マインド」冒頭からのメロディはトランペット1とイングリッシュホルン(コーラングレ)で奏でられます。バンダではなくステージから聴こえてきます。ここでもまたオーケストラ編成の変化からオーケストレーションの修正が施されています。

うっかり目から鱗かもしれませんがこの作品も待望の音源です。オリジナルアルバム『WORKS III』に収録されているのは「Symphonic Variation “Merry-go-round”」で「ケイヴ・オブ・マインド」パートはありません。「ハウルの動く城 オーケストラのための -オリジナル・スコア-」(2014)スコアの完全音源化とも言えてしまいます。これまでは参考音源は『久石譲 in 武道館』(ライヴ映像)や『The Best of Cinema Music』(ライヴ音源)としていたところに、編成規模もオーケストレーションも同じに対向配置でセッション録音されたものになるからです。今では世界中のコンサートで演奏されている作品です。演奏団体の皆さん、ぜひグラモフォン・アルバムを由緒ある参考音源にしてください。スコアを手に聴きながら、もし異なる箇所に気づけたとすればあの半音和音で揺れ動く久石譲のピアノイントロの長さやメロディ装飾ぐらいだったかもしれません(パート番号25)。

うっかり勘違いしてしまうかもしれませんが「Symphonic Variation “Merry-go-round + Cave of Mind”」は単純に「ケイヴ・オブ・マインド」パートをプラスでくっつけたものではありません。「Symphonic Variation “Merry-go-round”」の楽曲構成からパートの短縮やカットを経て「ケイヴ・オブ・マインド」パートが組み込まれています。その証拠に「Symphonic Variation “Merry-go-round”」約14分、「Symphonic Variation “Merry-go-round + Cave of Mind”」は約12分と演奏時間は短くなる魔法です。またオリジナル・スコアには代替バージョン(Alternative Version)も並べて書き記されています。近年久石譲が指揮するクラシック演奏会などでアンコールに選ばれることもある曲名「Merry-go-round」、冒頭のピアノパートがハープやグロッケンシュピールらに切り替わっているそのバージョンです(パート番号25)。

この作品で「人生のメリーゴーランド」のメロディを一度も弾いていないオーケストラ楽器ってあるかな、というほどの秀逸さです。グラモフォン・アルバムのCD限定盤DISC2には後半部の「人生のメリーゴーランド」パートを抜粋したトラックが特別収録されています。単曲でもオリジナル・スコアと同じに演奏することができます。代替バージョンでも演奏することができます。

 

 

オーケストレーションも楽器もすべての修正は論理的である。ゆえに説明できる。(by …)

 

 

9

千と千尋の神隠し
SPIRITED AWAY

あの夏へ(いのちの名前)
ふたたび

One Summer’s Day (The Name of Life)
Reprise

編成特記:
ヴォーカル

全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。

《あの夏へ(いのちの名前)》武道館コンサートは《あの夏へ vocal version 「いのちの名前」》歌とピアノのコラボレーションです。パリ・コンサートは久石譲によるピアノソロで披露されていて近年コンサートで聴けるものと同じになります。世界ツアーを展開していくなかでピアノソロとピアノ&ヴォーカルの両方が候補にあった時期も経ながら現在はグラモフォン・アルバムに収録されている最新版が定着しています。ピアノと歌どちらも輝き溢れる結晶は世界ツアー版と位置づけることができます。前半はスキャットで後半は日本語で歌われます。

2022年10月フランス3都市公演から英語バージョンも登場するようになります。これにはゲストヴォーカルがグラモフォン・アルバムで歌唱しているグレース・デイヴッドソンさんその人だったこともありそうです(アルバム録音2022年6月/アルバム発売2023年6月)。2023年9月ロンドン公演、2024年4月パリ公演、2024年5月ドイツ2都市公演も同様です。この曲は公演ごとのゲストヴォーカルによって日本語ver.と英語ver.とが選ばれていくのかもしれません。グラモフォン・アルバムのCD限定盤DISC2には英語バージョンも特別収録されています。

《ふたたび》武道館コンサートからグラモフォン・アルバムまでDVD/TV/CDと三つの音源を並べてみてオーケストレーションも少しずつ変化しているように聴こえます。とりわけ歌の最後でピアノとハープだけの伴奏になるところなど、フレーズとしてもピアノが前面に出てきたグラモフォン・アルバムです。振り返ってみるとイメージアルバム「千尋のワルツ」だった頃からピアノは主役のひとつでした。《あの夏へ(いのちの名前)》から《ふたたび》まで世界ツアー版は千尋をより鮮明に表現したものになっているのかもしれません。この曲は日本語で歌われます。交響組曲とはまた別モノでどちらも存分に楽しむことができます。

 

 

世界ツアー版は交響組曲の抜粋や短縮にあらず。どちらも曇りなき眼で見定めよ。(by …)

 

 

10

となりのトトロ
MY NEIGHBOR TOTORO

風のとおり道
さんぽ
となりのトトロ

The Path of the Wind
Hey Let’s Go
My Neighbor Totoro

編成特記:
合唱

全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。

《風のとおり道》武道館コンサートは、チェレスタ、ハープ、グロッケンシュピール、ウィンドチャイム、ピアノらの打楽器・鍵盤打楽器による演奏でした。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ピアノは外れてそこにマリンバやビブラフォンが配置されているように聴こえます。神秘性に包まれた精緻な音世界です。

《さんぽ》武道館コンサートは合唱とゲストヴォーカル総出演で歌詞の1番から3番までを日本語で歌いつないでいきます。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは合唱によって英語で歌われます。この曲はオーケストラの楽器紹介もそなえた「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」ver.がベースになっています。それを承知したうえでパート構成はこのように変化しています。

 

武道館コンサート:日本語
1番 木管楽器/合唱 ー 2番 金管楽器/合唱 ー 3番 弦楽器/児童合唱 ー 1番 打楽器・ピッツィカート/ゲストヴォーカル ー 3番 オーケストラ/大合唱  5times

パリ・コンサート グラモフォン・アルバム:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器・打楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/児童合唱 ー 1番 オーケストラ/大合唱  4times

世界ツアー version A:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/児童合唱 ー 1番 打楽器・ピッツィカート/ゲストヴォーカル ー 1番 オーケストラ/大合唱  5times

世界ツアー version B:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器・打楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/ゲストヴォーカル ー 1番 オーケストラ/大合唱  4times

世界ツアー version C:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/ゲストヴォーカル ー 1番 オーケストラ/大合唱  4times

 

武道館コンサートは、オーケストラストーリーズver.をそのまま土台としてパート構成は進みます。加えて編成されていたサクソフォンも間奏でしっかりフィーチャーしていたことも特徴です。

パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ゲストヴォーカルの1コーラス分がなくオーケストラの金管楽器・打楽器パートが合体しています。もともとあったものをなるべく忠実に配置しながらピッツィカートは外れています。

世界ツアーはABCと3つのバージョンがあるのではないかと推察しています。正確性は探求の余地があります。それはゲストヴォーカル参加で児童合唱(ユースコーラス)の出演あり・なしによって1コーラス分異なっているバージョンです。金管楽器・打楽器パートの合体具合(B,C)がよく掴めていない。これからコンサートで聴けるときには、グラモフォン・アルバムで予習しながらも世界ツアーversion A,B,Cのいずれかになるのではと思っています。もう何回も聴いておなじみと思っていた《さんぽ》も世界ツアーでしっかりアップデートされていて複数のバージョンが用意されています。

《となりのトトロ》武道館コンサートからグラモフォン・アルバムまで変わらない名曲です。変わる必要のないパーフェクトさです。中間部には久石譲によるピアノ演奏も入ります。コンサートではソプラノとヴォーカルのパートも入りながら熱狂的なコーダを迎えます。この曲は日本語で歌われます。スタジオジブリのシンボル的キャラクターでロゴにもなっているトトロです。同じようにジブリの夢を音楽のかたちにしたら「となりのトトロ」この曲だと言えてしまう輝きがあります。オーケストラの魅力、ピアノの魅力、歌の魅力、トトロの魅力、パーフェクトです。

この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。

 

 

 

武道館コンサートでは《さんぽ》のあとに宮崎駿監督の短いVTRが流れます。歌を口ずさんでいる映像の余韻にフェードインするように《となりのトトロ》が始まります。そして演奏後には鑑賞していた客席からステージへ歩いて向かい宮崎駿監督から久石譲へ花束が渡されるシーンは何度見ても感動的です。Blu-ray/DVDはアンコールまで完全収録されています。パリ・コンサートのTV放送はここまでです。アンコールはカットされています。グラモフォン・アルバムはアンコールにあたる楽曲は収録されていません。

 

 

11

—–アンコール—–
Madness (「紅の豚」より)
アシタカとサン (「もののけ姫」より)

—–encore—-
Madness from Porco Rosso
Ashitaka and San from Princess Mononoke

 

《Madness》武道館コンサートは久石譲によるピアノも冒頭メロディ、中間部の強打和音、終結部のメロディワンフレーズにと指揮とピアノを慌ただしく移動しています。アルバム『The End of the World』(2015)に最新の録音があります。世界ツアーはそれよりも少し短縮バージョンになります。そして終結部のメロディワンフレーズはフルートのみに切り替わっています。赤い照明演出も印象的です。

 

《アシタカとサン》武道館コンサートは日本語で、世界ツアーは英語で歌われます。久石譲によるピアノが1コーラスをオーケストラとともに奏で、間奏を挟んで合唱が1コーラスを歌います。コンサートでは間奏のところで今伝えたい久石譲のメッセージがスクリーンに映し出されています。2021年インタビューで「スタジオジブリフィルムコンサート世界ツアーで使用しているオーケストレーションを関連楽曲に導入した」(交響組曲もののけ姫について)と語っているとおり、歌われるキーの高さやオーケストレーションなど統一性もあります。そのうえで交響組曲はソロ・ヴァイオリンが1コーラスを奏で間奏を挟んでソプラノによって日本語で歌われます。

この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。

 

 

Joe Hisaishi said:

宮崎さんが「すべて破壊されたものが最後に再生していく時、画だけで全部表現出来るか心配だったけど、この音楽が相乗的にシンクロしたおかげで、言いたいことが全部表現できた」と話されていたことが、とても印象に残っています。

Blog. 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る 『久石譲 in 武道館』より 一部抜粋)

 

映画「もののけ姫」のラストで「ともに生きよう」というセリフがある。それはお互いの痛みを分かち合いながら、希望を持ってそれぞれの場所でしっかり行動せよという意味にも僕には取れる。

Blog. 「久石譲 3.11 チャリティーコンサート」(2011) コンサート・パンフレットより 一部抜粋)

 

 

ここまででコンサートの全てです。アンコールとはなっていますが切り離すことのできないプログラムです。それは映画エンドロールのあとに続くエピローグのようなもの大切なパートです。本演が終わって夢の時間を楽しんだで終わってしまっては…。今私たちが直面している世界を強く投影したかのような《Madness》、そして私たちの今と未来を問いかける《アシタカとサン》。現実と希望とをこの二曲が私たちに照り返しているようです。これから世界ツアーはどこまで羽ばたいていくでしょうか。アジアそして日本での凱旋公演も待ち望まれます。『君たちはどう生きるか』プログラムも加わってさらにパワーアップするのかどうなのか、夢はいつも膨らむばかりです。

 

 

グラモフォン・アルバム『A Symphonic Celebration』はジブリフィルムコンサートのマッチングアルバムとも言えます。けれど公式の商品情報では「世界ツアー中のジブリフィルムコンサートを最新録音で待望の音源化!」などと一切の関連ワード含めて使われていません。一番効果的かつインパクトのある宣伝で謳っていない。

そこには、アンコールまで完全収録されていないからとか、まだまだプログラムがバージョンアップするかもしれないとか、マーチングバンドあり・なしなど出演者によって演奏形態バージョンがあるとかいろいろあるのかもしれません。一番大切なことは「ジブリフィルムコンサート」は映像×音楽の対等で最高のパフォーマンスだということです。やっぱりコンサートで体感するしかないところが大いにある。もしこれからコンサートに行ける時が来たらチャンスを掴みとりましょう。スタジオジブリと久石譲が仕掛ける一大プロジェクト、その歴史の一ページにいたい。歴史の生き証人になって未来へ伝えたい。最高の瞬間を。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

 

 

Blog. ジブリフィルムコンサートを聴く(武道館/パリ/グラモフォン)《中編》

Posted on 2025/02/24

《前編》はジブリフィルムコンサートのプログラムや楽器編成そのほか参考作品までを見ていきました。《中編》《後編》は作品ごとに見ていきます。

 

 

▽プログラム
▽出演/楽器編成
▽歌
▽参考作品(DVD/TV/CD)
▽MUSIC VIDEO
▽INTERVIEW VIDEO
▽コンサート軌跡

▽ポイント

▽風の谷のナウシカ
▽魔女の宅急便
▽もののけ姫
▽風立ちぬ
▽崖の上のポニョ
▽天空の城ラピュタ
▽紅の豚
▽ハウルの動く城
▽千と千尋の神隠し
▽となりのトトロ

▽アンコール

 

 

ポイント

武道館コンサート(2008)、パリ・コンサート(2017)から始まった世界ツアー、その最新版を録音したグラモフォン・アルバム『A Symphonic Celebration』(2023)です。最新版のポイントは? まずは作品ごとに一言でズバリ!その前にちょっと確認です。全作品とも堂々と声を大にして初音源化となる内容やバージョンです。それではスタート!

『風の谷のナウシカ』世界ツアー版も遂に完全版、『魔女の宅急便』世界ツアー版のためのオーケストレーション、『もののけ姫』合唱付き&日本語は世界ツアー版だけ、『風立ちぬ』新プログラム、『崖の上のポニョ』グローバルにブラッシュアップ、『天空の城ラピュタ』世界ツアー版(管楽+合唱)初登場、『紅の豚』新しいアンサンブル編成、『ハウルの動く城』オフィシャルスコアと対向配置で完全音源化、『千と千尋の神隠し』ピアノと歌の結晶、『となりのトトロ』さんぽのバージョン注目、です!

これから作品ごとにぐぐっと迫っていきます。時に細かいところに注目してしまうこともあるかもしれません。今まで聴いてたものと何が違うの?どこが違うの?となったらここを思い出してみてください。

 

クラシック名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからのデビュー盤です。宮崎駿監督の輝かしい功績を称えるものであり、久石譲の音楽が世界に認められる瞬間です。前人未到の快挙を成し遂げてきたスタジオジブリと海外でも華々しい活躍をみせる久石譲。とは言っても前代未聞です。世界的クラシックレーベルからスタジオジブリにスポットライトを当てた作品が出ること、その第一弾に久石譲は自身の交響曲ら現代作品ではなく宮崎駿監督作品を選んだこと。映画音楽がクラシックになる日、私たちは今その道のうえを共に歩いています。

世界に聴かせたかったジブリがここにあります。久石譲のピアノでしか伝えることのできないジブリの世界があります。歌いたくなるメロディは空を翔けていく。海外オーケストラらしい空気と風の生まれる音。私たちは音楽を聴きながら自分なりのジブリ的情景を気の向くままに描くことができる。知っている曲たちの、知らなかった輝きをぜひ。

 

 

1

風の谷のナウシカ
NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF THE WIND

オープニング「風の伝説」
ナウシカ・レクイエム
メーヴェとコルベットの戦い
遠い日々
鳥の人

The Legend of the Wind
Nausicaä Requiem
The Battle between Mehve and Corvette
The Distant Days
The Bird Man

編成特記:
合唱

全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。

《オープニング「風の伝説」》武道館コンサートは大規模編成、ティンパニも2台だったことから連打する幕開けもこだまして轟いています。ここの木管の入りも異なります。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは一般的なオーケストラ編成になっていてティンパニは1台です。楽曲が進んでいくなかでも他の太鼓系が活躍しています。すべてはここから始まった、宮崎駿×久石譲ゴールデンコンビの歴史です。コンサートも久石譲によるピアノからメロディを奏ではじめることは象徴的です。

《ナウシカ・レクイエム》パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、盛り上がりのところでティンパニロールが追加されていたり管楽器の厚みやハープ、ピッツィカートの修正などを聴くことができます。合唱パートは、『ヴェルディ:レクイエム(鎮魂ミサ曲)より「怒りの日」』のラテン語歌詞が引用されています。

《メーヴェとコルベットの戦い》パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、最後にシンバルやティンパニロールが追加されています。

《遠い日々》最も改訂されている楽曲です。ひらひらとコードが展開する導入部は、パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは小節数が増えています。次にメロディに入ってからです。武道館コンサートは合唱です。オーケストラはストリングスが土台になっています。くり返しなしです。パリ・コンサートはスキャットで始まります。そのときチェレスタ、ハープ、グロッケンシュピールで静かに添いピッツィカートが加わっていきます。後半は合唱が入りオーケストラも広がりくり返しありになります。グラモフォン・アルバムは合唱ですがオーケストレーションは武道館/パリとも異なります。くり返しもありです。ここでの合唱声部は精緻に分かれて織りあがっています。たしかな聴きどころです。

パリ・コンサート(2017)とグラモフォン・アルバム(2023)だけを比べても大きく飛躍したようにも感じます。ここで見逃してはいけない作品があります。それは「Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015」完全版です。グラモフォン・アルバムの《遠い日々》パートはこれとほぼ同じ構成です。久石譲は2021年インタビューで「スタジオジブリフィルムコンサート世界ツアーで使用しているオーケストレーションを関連楽曲に導入した」(交響組曲もののけ姫について)と語っています。つまり、ナウシカでいうと2017年の時には2015年版の継承はまだ据え置かれいた。世界ツアーを展開していくなかで楽曲構成やオーケストレーションを出来得るところは統一させていった。これはほかの作品でも見ることができます。

《鳥の人》武道館コンサートにはありませんが、パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムには中間部に「風の伝説」冒頭のアルペジオが2小節入ります。ハープとピアノでグラモフォン・アルバムのほうがピアノに比重が寄って聴こえます。TV音源とCD音源の違いもあるため聴こえ方や判断は難しいところです。聴かせたかったのはもちろんCD音響のほうになるでしょう。

おまけ。エンディングのティンパニ最強音は何回鳴っているでしょうか?正解は武道館8回、パリ9回、グラモフォン8回です。交響組曲もまた8回です。2017年から2023年まで修正を重ねている小さい確かな証拠です。

最新版の風の谷のナウシカは見てきたとおり正真正銘の初音源化になります。さらにオーケストラの対向配置から混声合唱・児童合唱のステレオ配置まで完成度を極めた壮大なタペストリー、世界ツアー版も遂に完全版です。

この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。

 

 

一番目の作品ということもあって少し丁寧に長くなりました。あくまでも個人の耳で聴きとれた範囲のことを記しています。オーケストラ編成の違い、フォーメーションの違い(通常配置/対向配置)、録音環境や音質の違い(ライヴ/セッション、DVD/TV/CD)などもあって、フラットに聴き比べることは難しい面もあります。違って聴こえるようだけどスコアは同じかもしれない、ここも明らかに違うようだけど触れられていない、たくさん気づきもあると思います。以降の作品も武道館/パリ/グラモフォンの三つで進めていきます。交響組曲は突っ込んで触れていません。好きな作品をもっと楽しみたいときは合わせて聴き並べてみてください。

 

 

2

魔女の宅急便
KIKI’S DELIVERY SERVICE

海の見える街
傷心のキキ
かあさんのホウキ

A Town with an Ocean View
Heartbroken Kiki
Mother’s Broom

編成特記:
ヴァイオリン・ソロ

全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。

《海の見える街》サウンドトラックから「海の見える街」「大忙しのキキ」の2曲が再構成されていると言っていい楽曲です。時折コンサートでプログラム「魔女の宅急便/Kiki’s Delivery Service」として単曲演奏されることもある人気曲です。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ピッツィカートで始まるメロディの後フルートやストリングスで奏でられるメロディに装飾が付いています。クラシカルな旋律を奏でる中間部は武道館コンサートはオーボエでしたが、後者二つはフルートからオーボエへそして木管のアンサンブルも少し変化しています。終結部は武道館コンサートは金管楽器のみでしたが、後者二つはストリングスも入りオーケストラ全体でフォルテで終わります。この曲全体に言えることで「Kiki’s Delivery Service 2018 *改訂初演」(WDO2018/未音源化)をグラモフォン・アルバムは継承しています。とりわけ後半部はジャジーなホーンセクションをはじめ華やかにリズミカルに踊っています。

《傷心のキキ》武道館コンサートは、ハープ2台だったこともあり歌い出しのメロディと伴奏とを2奏者で分け合いながらメロディラインにビブラフォンの響きが重ねられているように聴こえます。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ハープ1台で歌い出しはハープ、ピアノらで紡がれています。さらに言うとグラモフォン・アルバムはシロフォンも加わっているようにも聴こえ、そのたった8~9小節のなかに繊細さがつまっています。

《かあさんのホウキ》武道館コンサートは、ヴァイオリン・ソロのメロディ歌い出しを久石譲によるピアノがエスコートしています。Aメロ一巡目はヴァイオリンとピアノだけにスポットが当たっている時間です。Aメロ二巡目から久石譲は指揮へ移りオーケストラも加わっていきます。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、久石譲は指揮者としてヴァイオリン・ソロを導いていきます。そのため歌い出しの伴奏は、ハープのアルペジオとピアノの伴奏音型が紡いでいます。二巡目もその流れを引き継いだままオーケストラが加わっていきます。

パリ・コンサートから新たに手を加えられたBメロのファゴットとホルンの織りなす内声がなんとも美しい。グラモフォン・アルバムはちょっと後ろに引いていますがしっかり聴こえます。そこからのカデンツァ風のヴァイオリン・ソロは奏者ごとの個性を楽しめるパートです。同じ楽器でも歌い方や響かせ方から艶感までを感じることができます。

交響組曲の《海の見える街》《傷心のキキ》《かあさんのホウキ》はいずれもオーケストレーションが異なります。比べられる箇所はいくつも挙げらると思いますが、大きくはサウンドトラックを基盤にしていること、そして何と言っても楽器編成にアコーディオンやマンドリンが入っていることです。世界ツアー版の魔女の宅急便は、一般的なオーケストラの音色パレットで最大限に描かれています。交響組曲とはまた別モノでどちらも存分に楽しむことができます。

 

 

3

もののけ姫
PRINCESS MONONOKE

アシタカせっ記
タタリ神
もののけ姫

The Legend of Ashitaka
The Demon God
Princess Mononoke

編成特記:
ソプラノ、合唱

全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。

《アシタカせっ記》《タタリ神》《もののけ姫》武道館コンサートの合唱付きは強烈に焼きついています。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムでもしっかり継承されました。その一方で交響組曲は2021年に完全版となりましたが、合唱編成は外れてあくまでもサウンドトラックに忠実にさらにダイナミックに再構築されています。合唱付き&日本語のもののけ姫が聴けるのは世界ツアー版だけです。また『The Best of Cinema Music』には全体構成は同じで合唱付き&英語で歌うもののけ姫がライヴ収録されています。

《もののけ姫》武道館コンサートは、イントロから久石譲によるピアノで一音一音降りていきます。ヴォーカルとピアノを主役にしながらオーケストラはそっと支える。1コーラスを経て最高潮に達する後半部から久石譲は指揮へ移ります。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、指揮に専念することになりオーケストレーションも修正されています。イントロの一音一音はハープとストリングスが美しい層をつくり、歌い出しからはハープとオーケストラのピアノ奏者などが伴奏フレーズを受け持っていきます。この曲はどの開催地/ソプラニストでも日本語で歌われます。作品の精神世界と日本語の美しさを伝える一曲です。ソプラノの歌唱を聴かせたい交響組曲と、ソプラノ+合唱に拮抗して絡み合ってくるホルンやトランペットの咆哮が前面に出ている世界ツアー版、この後半部の燃焼度もまたすごいです。

和太鼓・締め太鼓・チャンチキといった打楽器も登場する作品です。日本から持参されて業者も同行してなどして現地の気候で楽器メンテナンスを行い公演を迎えます。舞台裏でも多くの人が携わっている一大プロジェクトです。

 

 

ピアノと距離とオーケストレーションと。世界ツアーを展開していくなかで久石譲によるピアノパートは従来より少し減っています。指揮に重きを置くことでオーケストラの演奏やプログラム全体のコントロールもしやすくなります。映像とテンポやタイミングを合わせる演出面もあります。久石譲にとってはもう何回も重ねたプログラムであってもオーケストラはいつでも初共演でリハーサルも限られています。

武道館コンサートでの「もののけ姫」ヴォーカルとピアノのパート、「かあさんのホウキ」ソロ・ヴァイオリンとピアノのパートなど印象に残っているシーンです。ピアノはポロロンとテンポを揺らしても情感を込めてニュアンスをつけても、ステージ中央で距離も近い二者間は気配や息遣いを感じながら阿吽の呼吸でパフォーマンスできます。

世界ツアーでピアノから切り替えられるときハープやオーケストラのピアノ奏者などを絡めながらオーケストレーションの修正が施されています。このときピアノのパートは久石譲によるニュアンスを必要としない、誰が弾いてもその表現は担保される、あるいはリズムもしっかりとりやすい伴奏フレーズになっていたりもしそうです。半径3メートル内の二者間とは異なり、15メートル以上離れたオーケストラのピアノ奏者とステージ中央のソリストと、呼吸やタイミングを合わせたり音の伝達スピードも出てきたり。ピアノにハープなど他の楽器を組み合わせていることも意図や効果がありそうです。この視点から見ていくと、久石譲本人が弾いている曲やピアノパートもまた必然性がありそうです。

交響組曲も久石譲本人がピアノを弾いているパートとそうじゃないパートがあります。加えて言うなら交響組曲は音源化とスコア化とが並行して進められています。久石譲が出演しないコンサートでもスタジオジブリ交響組曲は人気プログラムです。ステージ中央にピアノの置かれない、オーケストラの後方にあることを想定して交響組曲も再構築されているのかもしれません。交響組曲の「もののけ姫」パートや「かあさんのホウキ」パートもピアノの役割や伴奏フレーズは変わっています。

 

 

4

風立ちぬ
THE WIND RISES

旅路(夢中飛行)
菜穂子(出会い)
旅路(夢の王国)

A Journey (A Dream of Flight)
Nahoko (The Encounter)
A Journey (A Kingdom of Dreams)

編成特記:
マンドリン

パリ・コンサートから加わった新プログラムです。

《旅路(夢中飛行)》マンドリンと久石譲のピアノで始まります。マンドリンのトレモロによるブリッジから久石譲は指揮へ移り曲想はオーケストラで大きく膨れあがります。

《菜穂子(出会い)》パリ・コンサートはピアノメロディでした。久石譲は前曲が終わってすぐにピアノに戻り、またこの曲が終わってすぐに指揮へ移りと忙しいパートでした。世界ツアーの途中からこの曲は指揮に専念することになり、そのメロディはマンドリンに託されます。

《旅路(夢の王国)》こちらも公演を重ねていくなかでオーケストレーションが修正されています。グラモフォン・アルバムは、細かいところではリズム系パーカッションが鳴ってる鳴ってないパートが変わっていたりします。それよりも注目したいところがあります。曲はトランペットで奏でられる美しい中間部の後クライマックスへと盛り上がっていきます。そこでトランペットは俊敏にミュート(音を抑える役割や音色を変化させる機能)を付けて伴奏のリズムを刻みそしてメロディへと加わっていきます。この音像がバヤンを模してその狙いがあるように感じてきます。バヤンはロシアあるいはウクライナの民族楽器でアコーディオンの仲間です。「風立ちぬ第2組曲」は、バラライカ、バヤン、ギターといった特殊楽器が色彩を添えています。世界ツアー版はトランペットがメロディを響かせることで気高さや力強さもまた引き立っていると感じます。

 

 

5

崖の上のポニョ
PONYO

武道館コンサート

深海牧場
海のおかあさん
波の魚のポニョ
フジモトのテーマ
ひまわりの家の輪舞曲(ロンド)
母の愛
いもうと達の活躍〜母と海の讃歌
崖の上のポニョ

パリ・コンサート
グラモフォン・アルバム

深海牧場
海のおかあさん
いもうと達の活躍~母と海の讃歌
崖の上のポニョ

Deep Sea Pastures
Mother Sea
Ponyo’s Sisters Lend a Hand – A Song for Mothers and the Sea
Ponyo on the Cliff by the Sea

編成特記:
ソプラノ、合唱

全体構成は武道館コンサートから大きく変わっています。

『もののけ姫』と同じようにすべての構成曲で合唱付きです。

《深海牧場》合唱パートは、物語に関連する単語(海、水、愛、母 etc)をラテン語で組み合わせてはめ込まれています。パリ・コンサートがTV放送された「久石譲 in パリ」ではカットされていますがしっかり本演では演奏されています。

《海のおかあさん》ソプラノによって日本語で歌われます。後半には合唱も加わっていきます。

《いもうと達の活躍~母と海の讃歌》ここまでの曲に言えることですが武道館/パリ/グラモフォンとすぐに見つけられるほどの変更点もなく引き継がれているように聴こえます。それだけ当初からオーケストレーション含めて完成されていたとも言えます。

《崖の上のポニョ》武道館コンサートは大橋のぞみほかゲストヴォーカル総出演で大合唱です。主題歌オリジナルバージョンを基調としてオーケストラサウンドでダイナミックに。当時大ヒットした主題歌は振り付けも話題になり大橋のぞみと児童合唱も一緒に振り付きで披露されました。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは合唱です。児童合唱は編成されていません。ピッツィカートが奏でるAメロは弾(はじ)ける音で泡から生まれ溢れるようです。オーケストラ楽器がBメロと奏でていきサビは英語で歌われます。独特なリズミックを生む単語と弾ける発音(子音,破裂音)の英語で大合唱は相性抜群です。たくさんの泡たちが弾ける生命の力です。静かになる中間部ではピアノがメロディを奏でていますが、パリ・コンサートの時からオーケストラのピアノ奏者が担っています。

この作品は交響組曲(2023・未音源化)と比較しても断然おもしろい作品です。交響組曲は《深海牧場》も《海のおかあさん》も曲尺は長くオーケストレーションもさらに精緻です。《崖の上のポニョ》も英語で大合唱は共通していますが終盤に聴かれる海から空まで高く昇っていくごとく讃歌する大転調は圧巻です。そうは言っても今はまだ音源がない。武道館コンサートからの進化で披露された「久石譲 3.11 東日本大震災チャリティー・コンサート」で世界ツアー版の基盤は出来上がっています。残念ながらコンサートを収めたライブアルバム『The Best of Cinema Music』には収録されていません。このたびグローバルにブラッシュアップされて初音源化です。

 

 

—-intermission—-

 

 

次回《後編》につづく

 

 

 

 

Blog. ジブリフィルムコンサートを聴く(武道館/パリ/グラモフォン)《前編》

Posted on 2025/2/20

ジブリフィルムコンサートの歴史をみていきます。2008年開催『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』コンサート、2017年から世界ツアーが始まった『JOE HISAISHI SYMPHONIC CONCERT:Music from the Studio Ghibli Films of Hayao Miyazaki』コンサート、その第1回パリ公演の模様がTV放送された『久石譲 in パリ -「風の谷のナウシカ」から「風立ちぬ」まで 宮崎駿監督作品演奏会-』、これらを総評してここではジブリフィルムコンサートとしています。また同コンサートをほぼ完全コンパイルしたドイツ・グラモフォンからのアルバム『A Symphonic Celebration』もとなりに並べます。スタジオジブリと久石譲が仕掛ける一大プロジェクトに迫ります。

 

 

▽プログラム
▽出演/楽器編成
▽歌
▽参考作品(DVD/TV/CD)
▽MUSIC VIDEO
▽INTERVIEW VIDEO
▽コンサート軌跡

▽ポイント

▽風の谷のナウシカ
▽魔女の宅急便
▽もののけ姫
▽風立ちぬ
▽崖の上のポニョ
▽天空の城ラピュタ
▽紅の豚
▽ハウルの動く城
▽千と千尋の神隠し
▽となりのトトロ

▽アンコール

 

 

プログラム

久石譲 in 武道館(2008)

1. 風の谷のナウシカ
2. もののけ姫
3. 魔女の宅急便
4. 崖の上のポニョ
5. 天空の城ラピュタ
6. 紅の豚
7. ハウルの動く城
8. 千と千尋の神隠し
9. となりのトトロ
ーアンコールー

初のオール・ジブリ・プログラムは夢の一大イベントでした。キャッチコピーに【『崖の上のポニョ』公開記念】ともあり同作品から多くの楽曲が選ばれたこともまた特徴です。多彩なゲストヴォーカルも話題を集めました。ケタ違いの楽器編成は追って見ていきます。

 

 

久石譲 in パリ(2017)

1. 風の谷のナウシカ
2. もののけ姫
3. 魔女の宅急便
4. 風立ちぬ
5. 崖の上のポニョ
6. 天空の城ラピュタ
7. 紅の豚
8. ハウルの動く城
9. 千と千尋の神隠し
10. となりのトトロ
ーアンコールー

あの感動ふたたび。待望の再公演は日本でなくパリで開催されたことも驚き駆け巡りました。バージョンアップしたプログラムは2013年公開作品『風立ちぬ』が新しく加わり『崖の上のポニョ』はバランスよく短縮されました。そして予想もしていなかった世界ツアーへと広がっていきます。公演ごとにますます磨きがかかり出演者によってそのパフォーマンスを変えるものもあります。『天空の城ラピュタ』はマーチングバンドあり・なしでは演奏形態も構成曲も異なります。『千と千尋の神隠し』は当初「あの夏へ(いのちの名前)」がピアノソロ版かピアノ&ヴォーカル版かの候補がありました。また作品ごとに見ていきます。

 

 

A Symphonic Celebration(2023)

1. 風の谷のナウシカ
2. 魔女の宅急便
3. もののけ姫
4. 風立ちぬ
5. 崖の上のポニョ
6. 天空の城ラピュタ
7. 紅の豚
8. ハウルの動く城
9. 千と千尋の神隠し
10. となりのトトロ

2008年武道館コンサートから15年、色褪せることなくさらに輝き放つ未来で待ってた音源化です。2017年パリ・コンサート(久石譲 in パリ)を経て第2回開催となった2018年メルボルン公演から『魔女の宅急便』と『もののけ姫』の順番は入れ替わります。『天空の城ラピュタ』はマーチングバンドではない管楽+合唱が収録されています。『千と千尋の神隠し』は公演を重ねて定着していったピアノ&ヴォーカル版が収録されています。コンサートのアンコールにあたる楽曲は残念ながら収録されていません。詳細はこれからたっぷりと見ていきます。

 

 

 

出演/楽器編成

久石譲 in 武道館(2008)

指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
合唱:栗友会合唱団、東京少年少女合唱隊、一般公募コーラス隊
マーチングバンド:京華女子中学高等学校マーチングバンド部、中央区立日本橋中学校吹奏楽部、川崎市立橘高等学校吹奏楽部、川崎市立高津高等学校吹奏楽部
ゲストヴォーカリスト:藤岡藤巻と大橋のぞみ、林正子、平原綾香、麻衣

フルート5(バスフルート持替)、ピッコロ1、オーボエ4、イングリッシュホルン1、クラリネット5、バスクラリネット1、ファゴット4、コントラファゴット1、ホルン8、トランペット8、トロンボーン(バストロンボーン)8、テューバ1、アルトサックス1、テナーサックス1、ティンパニ2、パーカッション群、ハープ2、ピアノ(チェレスタ)2、弦楽5部 [通常配置]

(*楽器編成はDVD映像目視による)

 

【200名の大オーケストラ、800人の大合唱団、160人のマーチングバンド、そして素晴らしいゲストヴォーカリストと、総勢1160人もの超大規模編成による演奏】(メーカー・インフォメーションより)とあるとおり、とにかく夢の巨大編成です。弦楽5部は弦24型で第1ヴァイオリン24、第2ヴァイオリン22、ヴィオラ20、チェロ18、コントラバス16です。木管も6管編成、ほかにはホルン8、トランペット8、トロンボーン8などとケタ違いです。ピンとこないですよね。

『マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」』の初演は1030人(演奏可能は850人)です。また大編成で有名な『ストラヴィンスキー:春の祭典』は弦16型5管編成です。これらを超えるスケールになります。例えば弦楽器だけをみても弦24型100人vs弦16型60人とその差は歴然です。

多彩なパーカッション群その全てを書き出すことはできませんでしたが、太鼓・シンバルなどのリズム系に、グロッケンシュピールやマリンバなどの鍵盤打楽器です。作品ごとに様々なパーカッションを6人で慌ただしく複数楽器を担当しています。それに加えてダブル・ティンパニ、ハープ2、ピアノ(チェレスタ)2などとこちらも大所帯です。

「久石譲 in 武道館」は再現不可能!? 一度きりのメモリアル開催と言われてもしょうがない!? それほど奇跡的な歴史的な大規模編成コンサートです。特注で作られた88メートル×約162メートルの巨大スクリーンも音楽と映像の絶妙なバランスを演出しています。

 

 

久石譲 in パリ(2017)

指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:ラムルー管弦楽団
合唱:ラムルー合唱団、ラ・メトリーズ・デ・オー・ドゥ・セーヌ
ソプラノ:エレーヌ・ベルナルディー
ヴォーカル:麻衣
マンドリン:マチュー・サルテ・モロー
マーチングバンド:(5団体による合同演奏)

フルート3(ピッコロ持替)、オーボエ3(イングリッシュホルン持替)、クラリネット3(バスクラリネット持替)、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、バストロンボーン1、テューバ1、ティンパニ1、パーカッション群、ハープ1、ピアノ(チェレスタ)1、弦楽5部 [対向配置]

(*楽器編成はTV映像目視による)

 

弦楽5部は弦14型で第1ヴァイオリン14、第2ヴァイオリン12、ヴィオラ10、チェロ8、コントラバス6です。木管も3管編成になります。ここで大きく注目したいのは、一般的なオーケストラの編成規模にあたるということです。多くのオーケストラ団体が所属団員だけでやれる。客演はパーカッション群やピアノ奏者などを招聘してぐっと実現可能になる。それでもパリ・コンサートもパーカッション群6人いたりはします。

合唱は約70名に児童合唱(ユースコーラス)の約30名です。マーチングバンドはおそらく5団体ほどが合同演奏しています。ソプラノ、ヴォーカル、マンドリンと作品に華を添えるゲストを迎えています。世界ツアーを展開できる編成規模が確立されたと言えます。

さらに深堀りして見ていくと、出演者に左右されないプログラム構成を目指していくことになります。これだけ多くのオーケストラ奏者やゲスト出演のスケジュールを交渉していくだけでも大変です。輪をかけてマーチングバンドや児童合唱(ユースコーラス)の出演スケジュールや事前練習・合同リハーサルまで入れると一つ一つのコンサートが一大イベントであることがわかります。そこでマーチングバンドあり・なし、児童合唱あり・なし、公演によって演奏形態を変えられるパターンもまた練り上げられていきました。こうやって世界ツアーの盤石なパッケージが築き上げられていった。出演/楽器編成の変遷から浮き上がってくる重要なポイントです。世界ツアーを可能にしたのは巨大編成から一般編成への大きな転換、そこから必要になる作品オーケストレーションの修正、こうなると作品の聴き方がぐっと面白くなってきます。

 

巨大スクリーンもグレードアップしています。2020年3月メルボルン公演は初の野外開催となりました。その時登場した巨大スクリーンの数は5基?5台?とにかく5つです。ステージに3つと会場中部に2つ、どこからでも映像と音楽そのどちらも楽めるように。世界ツアーはいつでもどこでも熱狂と安定のSOLD OUT、さらに応えるように会場も選択肢が広がっていきます。以降、大ホール・多目的アリーナ・スタジアム・屋外といった大規模会場では巨大スクリーンが3つ設置される公演も出てきます。常に空気を感じとりながら進化しているジブリフィルムコンサートです。

 

 

A Symphonic Celebration(2023)

指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン・ソロ:スティーブン・モリス
合唱:バッハ合唱団、ティフィン少年合唱団
ソプラノ:グレース・デイヴィッドソン
ヴォーカル:麻衣
マンドリン:アヴィ・アヴィタル

弦14型3管編成 [対向配置]

(*楽器編成はMV映像目視による)

 

パリ・コンサートと同じ編成規模になります。世界ツアーを展開するパッケージ(プログラム/出演/楽器編成)をスペックしています。『天空の城ラピュタ』はマーチングバンドではない管楽+合唱が収録されています。

映画『007』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』の録音や大物ポップミュージシャンらと共演歴のあるスティーブン・モリスさんをゲスト・コンサートマスターに迎え、グラモフォン専属アーティストのアヴィ・アヴィタルさん、マックス・リヒターのアルバム『SLEEP』『VOICES』などにも参加、ジブリフィルムコンサートはじめ数々の久石譲コンサートでも共演を重ねているグレース・デイヴッドソンさん、そして武道館コンサートはじめ久石譲コンサートやアルバムで多数共演している麻衣さんです。

 

 

 

日本語ver.

  • もののけ姫
  • 海のおかあさん
  • 君をのせて
  • あの夏へ(いのちの名前) **
  • ふたたび
  • となりのトトロ

英語ver.

  • 崖の上のポニョ
  • あの夏へ(いのちの名前) **
  • さんぽ
  • アシタカとサン

 

ジブリフィルムコンサートで歌われる曲は9曲ほどあります。武道館コンサートは全て日本語で歌われます。パリ・コンサートから始まった世界ツアーは日本語と英語とに振り分けられています。作品の精神世界を表現したいものや日本語の美しさを伝えたいもの、一緒に口ずさんでほしいものやダイレクトに伝えたいもの、など様々な意図で選ばれているのだろうと思います。またここにある中で作詞:宮崎駿の曲「もののけ姫」「君をのせて」「となりのトトロ」は日本語で歌われています。今日まで引き継がれています。

2022年頃から「あの夏へ(いのちの名前)」は公演ごとの出演ヴォーカリストによって日本語ver.と英語ver.が候補になっていきます。グラモフォン・アルバムはそのどちらも特別収録されています。また作品のところで見ていきます。

 

 

 

参考作品

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD

コンサートの本編からアンコールまでその全てを完全収録した映像作品です。音響も素晴らしくこれだけの大規模編成とりわけ豊潤なストリングスを堪能できるのは大変貴重です。映像特典には、メイキングのほか巨大スクリーンに映し出されたスクリーン・アニメも収録されています。同コンサートのポスターは宮崎駿監督が描き下ろし、それはコンサートグッズやBlu-ray/DVDジャケットにも使われています。映画たちと一緒で長く愛され楽しまれているジブリがいっぱいコレクションのひとつ、永久保存盤です。

 

 

2017年6月9,10日開催「JOE HISAISHI SYMPHONIC CONCERT:Music from the Studio Ghibli Films of Hayao Miyazaki」コンサートの模様をTV放送した番組『久石譲 in パリ -「風の谷のナウシカ」から「風立ちぬ」まで 宮崎駿監督作品演奏会-』(初回放送:2017年9月6日)です。大好評を博した同番組はその後もNHK BSプレミアム/NHS BS4K(当時のチャンネル名)で再放送、2020年にはNHK総合で地上波放送されたことでさらに大反響を呼びました。2022年、2023年にもNHK BSプレミアムで再放送されたのが現時点の最新です。

2008年『久石譲 in 武道館』からバージョンアップしています。しかもこの時はまだ世界ツアーの記念すべき第1回として刻まれるとも翌2018年に第2回・第3回と開催されていくとも夢にも思っていない。TV放送では『崖の上のポニョ』より「深海牧場」、『天空の城ラピュタ』より「大樹」、そしてアンコールがカットされた約1時間半の番組構成になっています。

 

 

ドイツ・グラモフォンからのデビュー盤にして「ジブリフィルムコンサート」をほぼ完全コンパイルした企画盤です。世界ツアーの最新版がコンサートのライヴ録音ではなく教会でセッション録音されています。フィジカル/デジタルで世界同日発売されました。米国ビルボード2部門で1位を獲得したほか世界のクラシック・チャートを席巻し話題を呼んでいます。全作品とも堂々と声を大にして初音源化となる内容やバージョンです。詳細はこれからたっぷりと見ていきます。

アルバムジャケットは映画『ハウルの動く城』からの背景画が選ばれています。発売当時この絵についてSNS上で質問したところ豊富に精通したジブリファンの方から丁寧ピンポイントな回答をいただきました。ありがとうございます。それは「映画本編の約14:50あたり、ソフィーが荒地を登っていくカットの足元」「このカットの2カット後」とスタジオジブリ提供の場面写真付きでした。まさにでした。

 

 

アルバムジャケットに荒地を選んだ真意は何か?これもまた好奇心をそそられるお題です。ハウルや荒地の魔女と同じように久石譲もまた荒地に棲む音楽の魔法使いなのか。はたまた、映画終盤の荒地でのシーン、バラバラな人たちが家族になっていくように、この音楽で世界中のバラバラな人たちがつながることを夢見ているのか、お互いに手を取り合う未来へと希望を抱いているのか。はたまた、誰も足を踏み入れなかった荒地から新しい一歩を切り拓いていこうとする音楽家久石譲の意志の表れか。ここから始まる場所なのか、いよいよ到達した場所なのか。アルバムを受け取った一人一人がジャケットを眺めながら想いを描くことができそうですね。

 

 

 

またアルバムに先駆けて先行リリースされた「人生のメリーゴーランド」のジャケットには『風立ちぬ』からの背景画が使われています。

 

 

 

 

MUSIC VIDEO

アルバムリリースを記念してミュージックビデオも公開されました。

 

Joe Hisaishi – Merry-Go-Round of Life (from “Howl’s Moving Castle”)

Joe Hisaishi – Merry-Go-Round of Life (Visualizer)

Joe Hisaishi – Mother’s Broom (from Kiki’s Delivery Service)

Joe Hisaishi – Mother’s Broom (Visualizer)

Joe Hisaishi – A Town with an Ocean View

Joe Hisaishi – A Town with an Ocean View (Visualizer)

Joe Hisaishi – One Summer’s Day (English Version) featuring Grace Davidson

Joe Hisaishi – One Summer’s Day (English Version) featuring Grace Davidson (Visualizer)

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

 

INTERVIEW VIDEO

Joe Hisaishi – A Symphonic Celebration Interview

Joe Hisaishi – Interview (Steve Quigley)

Joe Hisaishi – Interview (Grace Davidson)

Joe Hisaishi – Interview (Avi Avital)

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

 

コンサート軌跡

 

 

次回《中編》につづく

 

 

 

 

Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

osted on 2024/10/22

つづけて、第3部(第十回~第十三回)使用楽曲をみていきましょう。

 

 

 

*間違いがあったら修正お願いします

*<89分版>オリジナル版をもとにしています

*<44分版>は編集に伴い音楽の追加・削除・差し替えなど一部異なる放送回があります(第十回/第十二回/第十三回)

*<44分版>第3部のエンディング曲は「Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲」 [1] [総] へ変更になっています

 

 

第3部

第十回 旅順総攻撃

  • 第三部 序章 [3] [総]
  • 00:04:55- 未収録楽曲(オーケストラ)*第六回/第七回/第十三回
  • 獣たちの宴 [3]
  • 二人の将 [3]
  • 00:18:05- 強国ロシア [2] 未収録ver.(コーラスなし、オーケストレーション)*第六回/第七回/第八回/第九回
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 海と命と [3]
  • 狼煙 [2]
  • 煉獄と浄罪 [3]
  • 00:37:55- 強国ロシア [2] 未収録ver.(コーラスなし、オーケストレーション)*第六回/第七回/第八回/第九回
  • 疵 [2]
  • 00:46:00- 二人の将 [3] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)
  • 00:50:45- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.3(冒頭ホルン独奏、オーケストレーション)*第十一回/第十二回/第十三回
  • 00:54:30- 終曲 [3] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)
  • 破局の始まり [2]
  • 00:59:20- 戦争の悲劇 [1] 未収録ver.(調性、オーケストレーション)
  • 01:04:20 蹉跌 [1] 未収録ver.2(後半部調性、オーケストレーション)
  • 01:07:05- 未収録楽曲(パーカッションのみ)
  • 疵 [2]
  • 二人の将 [3]
  • 偵察 [2]
  • 開戦への決意 [2]
  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

 

 

第十一回 二〇三高地

  • 00:00:00- 旅立ち [1] 未収録ver.1(Piano & Strings)*第一回/第二回/第四回/第七回/第八回/第十三回
  • 蹉跌 [1]
  • 偵察 [2]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 時代の風 [1] [総]
  • 海と命と [3]
  • 疵 [2]
  • 開戦への決意 [2]
  • 二人の将 [3]
  • 獣たちの宴 [3]
  • 激動 [1]
  • 00:37:00- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.3(冒頭ホルン独奏、オーケストレーション)*第十回/第十二回/第十三回
  • 偵察 [2]
  • 狼煙 [2]
  • 蹉跌 [1]
  • 二人の将 [3]
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • 絶望の砦 ~二〇三高地二起ツ~ [3] [総]
  • 01:15:00- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.2(調性、オーケストレーション)*第十三回
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • 01:21:55- 二人の将 [3] 未収録ver.2 (調性、オーケストレーション)
  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

 

 

第十二回 敵艦見ゆ

  • 00:00:00- 開戦への決意 [2] 未収録ver.(調性、オーケストレーション)
  • 00:00:50- 蹉跌 [1] 未収録ver.3(調性、オーケストレーション)
  • 獣たちの宴 [3]
  • Human Love [1] [総]
  • 偵察 [2]
  • 旅立ち [1] [総]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 煉獄と浄罪 [3]
  • 孤影悄然 [3]
  • 二人の将 [3]
  • 疵 [2]
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • 00:33:40- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.3(冒頭ホルン独奏、オーケストレーション)*第十回/第十一回/十三回
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • 絶望の砦 ~二〇三高地二起ツ~ [3] [総]
  • 獣たちの宴 [3]
  • 少年の国 [2] [総]
  • 海と命と [3]
  • 二人の将 [3]
  • 列強と日本 [2]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 終曲 [3]
  • 破局の始まり [2]
  • ガキ大将!真之 [2]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]
  • 狼煙 [2]
  • 天気晴朗ナレドモ波高シ [3] [総]
  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

 

 

第十三回 日本海海戦

  • 広瀬の最期 [2] [総]
  • 激動 [1]
  • 破局の始まり [2]
  • 偵察 [2]
  • 日本海海戦 [3] [総]
  • 列強と日本 [2]
  • 00:22:15- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.3(オーケストレーション)*第十回/第十一回/第十二回
  • 開戦への決意 [2]
  • 絶望の砦 ~二〇三高地二起ツ~ [3] [総]
  • 獣たちの宴 [3]
  • 00:37:10- 未収録楽曲(オーケストラ)*第六回/第七回/第十回
  • Human Love [1] [総]
  • 若き精鋭たち [2]
  • 00:47:00- 旅立ち [1] 未収録ver.1(Piano & Strings)*第一回/第二回/第四回/第七回/第八回/第十一回
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • AIR [3]
  • 蹉跌 [1]
  • Human Love [1] [総]
  • 赤い花 [3]
  • 01:14:05- 広瀬 ~快活な人物~ [2] 未収録ver.(調性、オーケストレーション)*第六回/第七回/第九回
  • 旅立ち [1] [総]
  • 01:22:00- 終曲 [3] 未収録ver.2(調性、オーケストレーション)
  • 01:23:10- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.2(調性、オーケストレーション)*第十一回
  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

 

 

 

一口コメント

第3部で一番使われたサントラ楽曲は「偵察」(5回)です。もっと広げて、アレンジ・ヴァージョンや未収録ver.も含めたテーマからみると「Stand Alone」(11回)「蹉跌」「戦争の悲劇」「若き精鋭たち」「二人の将」「獣たちの宴」(各5回)「旅立ち」「疵」(各4回)などになります。

「二人の将」はサントラver.とサントラ未収録ver.1,2の三つがあります。各半音ずつキー(調性)が異なります。どの場面では半音下がったものが、どの場面では半音上がったものが使われているのか、それぞれにしっかりと意図がありそうです。「終曲」もまた同様にサントラver.とサントラ未収録ver.1,2の三つがあります。各半音ずつキー(調性)が異なります。「Stand Alone for Orchestra」もまた同様です。

「大地と命と」「運命の死地」は本編では使われていません。(4)サウンドトラック 頁をご覧ください

 

 

『坂の上の雲』それは音楽:久石譲もスペシャルだった作品です。第1部から第3部まで3枚のサウンドトラックと総集編アルバムがリリースされました。ひとつの作品での楽曲の多さは手がけた映画・ドラマと見渡しても歴代指折りです。その世界観を彩る主要楽曲たちは全3部を連なって流れることで物語を大きく有機的に結びつけています。また、映画ワンシーンのために書かれたような特別なシーンにしか流れない楽曲ももったいないほどに充実しています。余すところなく曲尺も長く見ごたえ聴きごたえたっぷりです。久石譲が音楽担当した作品において、ぶれることのない作品世界観から音楽を書くアプローチと、そこへ映画的手法とドラマ的手法を合わせるという、音楽:久石譲の醍醐味を高い次元で昇華させた記念碑作品です。もっと注目されるべき聴かれるべきはもちろんのこと、もっと演奏されてしかり、いまの時代が現代社会が強く求めていると感じています。

 

 

久石譲はこう語っています。

「約80曲つくった。今回の作品は現代音楽からメロディアスな音楽まで、自分が作ってきたすべてを総動員して力を入れて作った」

 

 

一番使用されたサントラ曲

Track.

  • 9. Human Love [1] [総] 12回
  • 11. 戦争の悲劇 [1] 12回
  • 6. 疵 [2] 12回
  • 8. 狼煙 [2] 12回
  • 7. 偵察 [2] 11回

 

 

一番使用されたテーマ

(メロディ/モチーフ/アレンジver./未収録ver. 含む)

  • Stand Alone 44回
  • 時代の風 25回
  • 旅立ち 24回
  • 少年の国 18回
  • 若き精鋭たち 13回

 

 

全3部を通して一回だけ使用された曲

Track.

  • 8. 最後のサムライ [1](第1部 第三回)
  • 4. ふるさと ~松山~ [1](第1部 第四回)
  • 17. 大英帝国のテーマ [3](第2部 第六回)
  • 20. 奸計 [2](第2部 第九回)
  • 1. 第三部 序章 [3] (第3部 第十回)
  • 2. 孤影悄然 [3](第3部 第十二回)
  • 8. 天気晴朗ナレドモ波高シ [3](第3部 第十二回)
  • 11. 日本海海戦 [3](第3部 第十三回)
  • 9. AIR [3](第3部 第十三回)

 

 

サントラ未収録ver.一覧(全3部)

  • Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲 未収録ver.(以下同)
  • 時代の風 ver.1,2
  • 旅立ち ver.1,2,3
  • 青春
  • 蹉跌 ver.1,2,3
  • 戦争の悲劇
  • Stand Alone for Orchestra ver.1,2
  • 少年の国
  • 奇跡の時 ver.1,2
  • 偵察
  • 終の住処
  • 広瀬 ~快活な人物~
  • 若き精鋭たち ver.1,2,3
  • 真之と季子
  • 強国ロシア
  • 開戦への決意
  • 二人の将 ver.1,2
  • 終曲 ver.1,2
  • 獣たちの宴

(ふらいすとーん調べ)

 

 

*サントラ未使用曲/サントラver.未使用曲は(4)サウンドトラック 頁をご覧ください

 

 

 

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2024年テレビ一挙再放送に連動するように、これまで『サウンドトラック 総集編』のみサブスク解禁となっていたりの音楽ストリーミング・サービスも、2024年9月3日『サウンドトラック 1・2・3』を加えた全4アルバムが一挙ラインナップ!この作品に触れる視聴者からリスナーまで広くグローバルに聴き楽しめるようになりました。

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

 

 

Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲

Posted on 2024/10/20

つづけて、第2部(第六回~第九回)使用楽曲をみていきましょう。

 

 

 

*間違いがあったら修正お願いします

*<89分版>オリジナル版をもとにしています

*<44分版>は編集に伴い音楽の追加・削除・差し替えなど一部異なる放送回があります(第九回)

 

 

第2部

第六回 日英同盟

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 00:02:30- 旅立ち [1] 未収録ver.2 (調性、オーケストレーション)
  • 00:06:00- 未収録楽曲(オーケストラ)*第七回/第十回/第十三回
  • 00:08:20- 広瀬 ~快活な人物~ [2] 未収録ver.(調性、オーケストレーション)*第七回/第九回/第十三回
  • 偵察 [2]
  • 列強と日本 [2]
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • Human Love [1] [総]
  • 少年の国 III [3]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • アリアズナ [2] [総]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 狼煙 [2]
  • 獣たちの宴 [3]
  • 疵 [2]
  • 大英帝国のテーマ [3]
  • 蹉跌 [1]
  • 01:04:20- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.1(冒頭ホルン独奏、パーカッションなし、オーケストレーション)*第七回/第八回
  • 01:09:20- 強国ロシア [2] 未収録ver.(コーラスなし、オーケストレーション)*第七回/第八回/第九回/第十回
  • 慕情 [2]
  • 若き精鋭たち [2]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

 

 

第七回 子規、逝く

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 奇跡の時 [2]
  • 00:07:25- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.1(冒頭ホルン独奏、パーカッションなし、オーケストレーション)*第六回/第八回
  • 00:10:00- 真之と季子 [2] 未収録ver.(チェレスタ、オーケストレーション)*第八回
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 赤い花 [3]
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • 偵察 [2]
  • 00:27:25- 広瀬 ~快活な人物~ [2] 未収録ver.(調性、オーケストレーション)*第六回/第九回/第十三回
  • 00:30:30- 時代の風 [1] 未収録ver.1(主旋律の入れ出し、オーケストレーション)*第二回/第五回
  • 00:32:45- 強国ロシア [2] 未収録ver.(コーラスなし、オーケストレーション)*第六回/第八回/第九回/第十回
  • 蹉跌 [1]
  • 開戦への決意 [2]
  • 赤い花 [3]
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • 00:52:25- 終の住処 [2]  未収録ver.(オーケストレーション)*第三回/第五回
  • Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [2] [3]
  • 01:02:05- 未収録楽曲(オーケストラ)*第六回/第十回/第十三回
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • 01:13:45- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.1(冒頭ホルン独奏、パーカッションなし、オーケストレーション)*第六回/第八回
  • 01:19:05- 真之と季子 [2] 未収録ver.(チェレスタ、オーケストレーション)*第八回
  • 01:21:50- 旅立ち [1] 未収録ver.1(Piano & Strings)*第一回/第二回/第四回/第八回/第十一回/第十三回
  • 激動 [1]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

 

 

第八回 日露開戦

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 00:02:00- 獣たちの宴 [3] 未収録ver.(コーラスなし)
  • 00:05:55- 真之と季子 [2] 未収録ver.(チェレスタ、オーケストレーション)*第七回
  • 00:08:35- 旅立ち [1] 未収録ver.1(Piano & Strings)*第一回/第二回/第四回/第七回/第十一回/第十三回
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 蹉跌 [1]
  • 獣たちの宴 [3]
  • 広瀬 ~快活な人物~ [2]
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • 00:31:00- 未収録楽曲(オーケストラ)*第二回/第三回/第五回
  • 偵察 [2]
  • 00:37:10- 時代の風 [1] 未収録ver.2(オーケストレーション)*第三回/第四回/第五回
  • 疵 [2]
  • 00:44:10- 若き精鋭たち [3] 未収録ver.2(中間部オーケストレーション)
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 旅立ち [1] [総]
  • 狼煙 [2]
  • 01:08:00- 疵 [2] 未収録ver.(トランペットなし、オーケストレーション)
  • 01:12:20- 強国ロシア [2] 未収録ver.(コーラスなし、オーケストレーション)*第六回/第七回/第九回/第十回
  • 狼煙 [2]
  • 01:19:55- 若き精鋭たち [2] 未収録ver.1(冒頭ホルン独奏、パーカッションなし、オーケストレーション)*第六回/第七回
  • 開戦への決意 [2]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

 

 

第九回 広瀬、死す

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 開戦への決意 [2]
  • 00:06:55- 旅立ち [1] 未収録ver.3(後半部調性、オーケストレーション)
  • 00:09:00- 未収録楽曲(ピアノ、パーカッション)
  • 獣たちの宴 [3]
  • 列強と日本 [2]
  • アリアズナ [2] [総]
  • 00:20:20- 強国ロシア [2] 未収録ver.(コーラスなし、オーケストレーション)*第六回/第七回/第八回/第十回
  • 時代の風 [1] [総]
  • 偵察 [2]
  • 奸計 [2]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 疵 [2]
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • 若き精鋭たち [2]
  • 00:53:00- 広瀬 ~快活な人物~ [2] 未収録ver.(調性、オーケストレーション)*第六回/第七回/第十三回
  • 慕情 [2]
  • 律 ~愛と悲しみ~ [2]
  • 列強と日本 [2]
  • 破局の始まり [2]
  • 時代の風 [1] [総]
  • 狼煙 [2]
  • 広瀬の最期 [2] [総]
  • Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [2] [3]
  • 若き精鋭たち [2]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

 

 

 

一口コメント

第2部で一番使われたサントラ楽曲は「律 ~愛と悲しみ~」(5回)です。第2,3部と正岡律の登場しない場面でも流れています。登場人物ごとにテーマをつけるのではなく、その時代の若者達を群像としてとらえてテーマを書いていることがわかります。ここでは「愛と悲しみ」のテーマ、作品のなかで哀歌(エレジー)として幾度響いています。

もっと広げて、アレンジ・ヴァージョンや未収録ver.も含めたテーマからみると「Stand Alone」(13回)「若き精鋭たち」(8回)「旅立ち」(6回)などになります。また第1部と同じく「疵」(5回)です。全編をとおして鎮魂(レクイエム)のように響く楽曲です。

『サウンドトラック 2』はロシアが色濃く反映された楽曲が並んでいます。第1部未収録楽曲も合わせて、時代の渦の重厚さに覆われています。『同 1』とはまた違った世界観を堪能できるアルバムです。「アリアズナ」で使われているバラライカはロシアの楽器です。映画『風立ちぬ』(2013)でも登場することになります。

「真之と季子」「強国ロシア」は本編ではサントラ未収録ver.のみが使われています。(4)サウンドトラック 頁をご覧ください

 

 

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2024年テレビ一挙再放送に連動するように、これまで『サウンドトラック 総集編』のみサブスク解禁となっていたりの音楽ストリーミング・サービスも、2024年9月3日『サウンドトラック 1・2・3』を加えた全4アルバムが一挙ラインナップ!この作品に触れる視聴者からリスナーまで広くグローバルに聴き楽しめるようになりました。

 

 

次回は、第3部使用楽曲です。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

 

 

Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲

Posted on 2024/10/17

つづけて、第1部(第一回~第五回)使用楽曲をみていきましょう。

 

 

 

*間違いがあったら修正お願いします

*<89分版>オリジナル版をもとにしています

*<44分版>は編集に伴い音楽の追加・削除・差し替えなど一部異なる放送回があります(第二回/第三回/第四回/第五回)

 

 

第1部

第一回 少年の国

  • (オープニング) Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)*第二回/第四回
  • Human Love [1] [総]
  • 00:10:40- 旅立ち [1] 未収録ver.1(Piano & Strings)*第二回/第四回/第七回/第八回/第十一回/第十三回
  • 00:12:35- 未収録楽曲(オーケストラ、マリンバ)
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2] (= 少年の国 III [3] 後半部)
  • 夢 [3]
  • 00:29:40- Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲 [1] 未収録ver.(ヴォーカルなし、ピアノなし、終結部調性とピアノ)
  • 夢 [3]
  • 蹉跌 [1]
  • ガキ大将!真之 [2]
  • Human Love [1] [総]
  • 少年の国 III [3]
  • 旅立ち [1] [総]
  • 青春 [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 広瀬 ~快活な人物~ [2]
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2] (= 少年の国 III [3] 後半部)
  • 狼煙 [2]
  • 奇跡の時 [2]
  • 少年の国 [2] [総]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

 

 

第二回 青雲

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 悪ガキ行進曲 [2]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 夢 [3]
  • 00:11:05- 未収録楽曲(バスクラリネット、パーカッションほか)
  • 青春 [1] [総]
  • 奇跡の時 [2]
  • 00:21:35- 時代の風 [1] 未収録ver.1(主旋律の入れ出し、オーケストレーション)*第五回/第七回
  • Human Love [1] [総]
  • 青春 [1] [総]
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • 少年の国 [2] [総]
  • 00:47:50- 旅立ち [1] 未収録ver.1(Piano & Strings)*第一回/第四回/第七回/第八回/第十一回/第十三回
  • 00:53:55- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)*第一回/第四回
  • 00:56:20- 未収録楽曲(パーカッションのみ、トランペットは状況内音楽)
  • 00:58:30- 未収録楽曲(トロンボーン、テューバ、オーケストラ)*第三回/第五回/第八回
  • 01:07:30- 奇跡の時 [2] 未収録ver.1(ホルン調性、後半は同じ)
  • Human Love [1] [総]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]
  • 01:20:30- 少年の国 [2] 未収録ver.(冒頭ハープ伴奏、後半は同じ)
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

 

 

第三回 国家鳴動

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 00:03:35- 蹉跌 [1] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • Human Love [1] [総]
  • 最後のサムライ [1]
  • 00:17:50- 青春 [1] 未収録ver.(オーケストレーション)
  • 夢 [3]
  • Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [2] [3]
  • Human Love [1] [総]
  • 偵察 [2]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 疵 [2]
  • 00:46:10- 奇跡の時 [2] 未収録ver.2(パーカッションなし、オーケストレーション)
  • 悪ガキ行進曲 [2]
  • 00:53:45- 未収録楽曲(トロンボーン、フルート、オーケストラ) *第二回/第五回/第八回
  • 広瀬 ~快活な人物~ [2]
  • 00:58:55- 時代の風 [1] 未収録ver.2(テンポ、オーケストレーション)*第四回/第五回/第八回
  • 狼煙 [2]
  • 蹉跌 [1]
  • 疵 [2]
  • 01:16:30- 終の住処 [2] 未収録ver.(オーケストレーション)*第五回/第七回
  • 少年の国 [2] [総]
  • 激動 [1]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

 

 

第四回 日清開戦

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 狼煙 [2]
  • 時代の風 [1] [総]
  • 00:14:30- 偵察 [2] 未収録ver.(ピアノ、オーケストレーション)
  • 激動 [1]
  • 疵 [2]
  • 蹉跌 [1]
  • ふるさと ~松山~ [1]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 激動 [1]
  • 疵 [2]
  • Human Love [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 少年の国 for Woodwinds & Strings [2]
  • 01:05:50- 時代の風 [1] 未収録ver.2(テンポ、オーケストレーション)**第三回/第五回/第八回
  • 01:09:30- 旅立ち [1] 未収録ver.1(Piano & Strings)*第一回/第二回/第七回/第八回/第十一回/第十三回
  • 終の住処 [2] [総]
  • 01:23:05- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)*第一回/第二回
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

 

 

第五回 留学生

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • 00:02:35- 未収録楽曲(オーケストラ)*第二回/第三回/第八回
  • 疵 [2]
  • 悪ガキ行進曲 [2]
  • Human Love [1] [総]
  • 偵察 [2]
  • 狼煙 [2]
  • 00:25:25- 未収録楽曲(木管、オーケストラ)
  • 奇跡の時 [2]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 広瀬 ~快活な人物~ [2]
  • 蹉跌 [1]
  • 00:45:25- 未収録楽曲(パーカッションのみ)
  • 狼煙 [2]
  • 戦争の悲劇 [1]
  • 00:57:25- 未収録楽曲(オーケストラ)
  • 激動 [1]
  • 01:03:45- 終の住処 [2]  未収録ver.(オーケストレーション)*第三回/第七回
  • 01:09:05- 時代の風 [1] 未収録ver.2(テンポ、オーケストレーション)*第三回/第四回/第八回
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 01:18:30- 時代の風 [1] 未収録ver.1(主旋律の入れ出し、オーケストレーション)*第二回/第七回
  • 少年の国 [2] [総]
  • (第2部予告)破局の始まり [2]
  • (エンディング)Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

 

 

 

一口コメント

記念すべき第一回放送は『サウンドトラック 1』収録楽曲のほか、『サウンドトラック 2』より「少年の国」「Stand Alone for Violin & Violoncello」、『サウンドトラック 3』より「夢」「少年の国 III」などがすでに流れています。テレビ放送と同じく3年間にわたってリリースされたサウンドトラックです。各話とも『同 1・2・3』を並べてみていきます。

第一回だけ長めのオープニングは「Stand Alone」も映像にあてて作られています。全3部を通して未収録ver.1,2とありますが、キー(調性)がそれぞれ半音ずつ異なる/オーケストレーションが異なると微細な変化になっています。「旅立ち 未収録ver.1(Piano & Strings)」は全十三話中で7回も登場している殊勲賞ものです。ぜひともサウンドトラック収録してほしかった。

第1部で一番使われたサントラ楽曲は「Human Love」(8回)です。もっと広げて、アレンジ・ヴァージョンや未収録ver.も含めたテーマからみると「Stand Alone」(20回)「旅立ち」(13回)「少年の国」(11回)などになります。第1部の視聴者としてもぴったりの印象になりますね。その中で「疵」(5回)は注目です。全編をとおして鎮魂(レクイエム)のように響く楽曲です。

「Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲」(日本語歌唱)は本編では使われていません。(4)サウンドトラック 頁をご覧ください

 

 

二口コメント

久石譲コメントより

ーーーー

「でも、司馬さんがこの作品で表現したかった精神世界や明治という時代の空気感を描くためには、個々の人間をクローズアップする手法ではニュアンスは伝わらない。それよりは時代に衝き動かされた若者達を群像としてとらえて、それをテーマに曲を書く方がいいと考えました。」

「『坂の上の雲』の音楽を制作するにあたり、その時代の高揚感を日本の五音階の世界観と西洋のモダンな和音の感覚を融合させながら描き出したいと考えました。そして敢えて協和音と不協和音がせめぎあう大人の音楽を目指しました。さらに音楽の手法として、僕の原点であるミニマル・ミュージックを随所で取り入れ、「激動」や「蹉跌」などでそれを前面に打ち出しています。」

ーーーー

 

第1部は青春期であり西洋への憧れです。実は、第1部は未収録楽曲も一番多く土着的な曲想をもっていたりもします。物語の年代や舞台とリンクしているところもありますが、サウンドトラックにはあえて収録しなかったという見方もできそうです。「ふるさと ~松山~」「最後のサムライ」といった楽曲も1回しか使われていません。日本的すぎるものよりも、西洋との融合にバランスを合わせることで未来につながっていく若者達の姿、サウンドトラックもその世界観に統一されています。

「広瀬 ~快活な人物~」は第一回放送から流れています。もちろんまだ広瀬武夫は登場していません。全3部を通して登場人物ごとにテーマをつけるのではなく、その時代の若者達を群像としてとらえてテーマを書いていることがわかるひと場面です。言うなればここでは「快活な人物」のテーマということになるのかもしれませんね。

『サウンドトラック 1』は時代の変化を感じながら生き生きと進む若者達、力強く活力に満ちた楽曲たちが並んでいます。一方では、全編で繰り返し使われることになる「蹉跌」「激動」「戦争の悲劇」といった楽曲も聴き逃せません。「戦争の悲劇」には、『ストラヴィンスキー:春の祭典』にも聴けるモチーフが登場しています。そこに共鳴するキーワードは、戦争・生贄・犠牲者です。ロシア民謡からいくつかの素材が使われているとも言われる『春の祭典』です。坂の上の雲の世界もまたロシアは大きな舞台のひとつです。

 

 

New!
2024年テレビ一挙再放送に連動するように、これまで『サウンドトラック 総集編』のみサブスク解禁となっていたりの音楽ストリーミング・サービスも、2024年9月3日『サウンドトラック 1・2・3』を加えた全4アルバムが一挙ラインナップ!この作品に触れる視聴者からリスナーまで広くグローバルに聴き楽しめるようになりました。

 

 

次回は、第2部使用楽曲です。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

 

 

Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(5)組曲

Posted on 2024/10/14

つづけて、「坂の上の雲」組曲をみていきましょう。現在、三つの組曲があります。

 

 

CD発売日

 

 

(A)Saka No Ue No Kumo(2010)

『Melodyphony』に収録されました。構成楽曲は順番に「Stand Alone」「時代の風」「蹉跌」「戦争の悲劇」「Stand Alone」です。演奏は久石譲指揮・ロンドン交響楽団で、オーケストラ通常配置で録音されています。『サウンドトラック 1』と『サウンドトラック 2』の間ということもあり第1部楽曲から中心に構成されています。とはいえ全3部を通して数多く使用された楽曲です。一方では、「青春」「少年の国」「旅立ち」といった快活な楽曲は選ばれていません。「坂の上の雲」の重厚で厳しい時代を描いた一つのかたちとなる音楽作品です。「Stand Alone」もまた組曲のためのオーケストレーションです。さらなる高揚感と壮大なスケールを味わうことができます。

『サウンドトラック 3』に収録されました。構成楽曲は同じ、演奏は外山雄三指揮・NHK交響楽団で、オーケストラ通常配置で新録音されています。こちらの同音源は『総集編』にも収録されています。

メロディフォニー版は約10分半、サントラ版は約11分半、同じ組曲で約1分の違いがあります。クラシック音楽の交響曲約40分の作品でも約4~6分違うだけで聴いている体感は大きく異なってきます。そこからするとこの組曲の約1分の差異は大きい。

 

ラップタイムをみてみましょう。

「Stand Alone」がオープニングを飾る組曲は、次の「時代の風」に移る時にメロディフォニー版(M版)3:30/サントラ版(S版)3:40とここで10秒の差が開きました。次の「蹉跌」に移る時にはM版5:07/S版5:20と15秒の差に少しだけ進んでいます。次の「戦争の悲劇」に移る時にはM版6:19/S版6:44とさらに25秒に広がっています。最後の「Stand Alone」に移るときにはM版8:44/S版9:14と30秒の差に少しだけ進んでいます。そしてラストスパートを駆け抜けゴールを迎えたときは一気に約1分の差が生まれています。

つまりは各パートの演奏時間でみると、エンディング「Stand Alone」で30秒、オープニング「Stand Alone」と「蹉跌」で各10秒、それぞれ演奏時間が異なっています。ピックアップして聴き比べてみるとテンポ感を如実に体感できます。こうして実は2つの「Saka No Ue No Kumo」を楽しむことができます。緩急自在に躍動感のあるM版、丁寧に整然感のあるS版、あなたの好みはどちらでしょうか。

 

 

 

(B)「坂の上の雲」組曲(2009)

(C)「坂の上の雲」第二組曲(2011)

コンサートのみで披露された組曲で音源化はされていません。(B)は『Melodyphony』よりも前で一番最初の組曲にあたります。『サウンドトラック 1』発売直後でありエンターテインメントらしいコンサートに映える楽曲が選ばれています。(C)は『サウンドトラック 3』発売後で遂にTV放送も第3部完結を迎えたタイミングです。そういったことも踏まえながらここでは時系列にみてみましょう。

 

コンサート・プログラム歴

  • 久石譲 ジルベスターコンサート 2009
  • 久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ ニューイヤーコンサート (2010)

「坂の上の雲」組曲
時代の風
旅立ち
青春
戦争の悲劇
Stand Alone

司馬遼太郎の長編小説『坂の上の雲』が初の映像化。同名のNHKスペシャルドラマとして2009年11月から放送を開始した。音楽を担当した久石は、「史実・そこに立ち向かう人々の”凛とした”生き様を描きたかった」という。今回はその作品群の中から『時代の風』『旅立ち』『青春』『戦争の悲劇』『Stand Alone』と5つのテーマを選りすぐり、組曲形式に再構築した。あえて日本の五音階と西洋のモダンな音階を融合させることにより、独特の世界観を引き立たせている。明治時代、近代国家として新しく生まれ変わろうとする「日本」。純粋さやひたむきさだけでなく、高み=”坂の上”を目指そうとする人々の強い志と貪欲さが時代を動かす風となっていく。世界の歌姫サラ・ブライトマンが歌う『Stand Alone』は、明治の人々の”凛として立つ”美しき姿をイメージしたというメインテーマ。今回はオーケストラとピアノのバージョンで演奏する。自然と口ずさんでしまいような普遍的なメロディと壮大なオーケストレーションが秀逸。
*NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』オリジナル・サウンドトラック収録

(久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ ニューイヤーコンサート コンサート・パンフレット より)

 

  • 西本願寺音舞台 2011

Saka No Ue No Kumo

 

  • アルモニーサンク北九州ソレイユホール 1周年記念「久石譲コンサート」(2011)
  • 久石譲 ジルベスタ―コンサート 2011

「坂の上の雲」第二組曲
第3部序幕
少年の国
真之と季子
煉獄と浄罪
絶望の砦〜二○三高地ニ起ツ〜
日本海海戦
終曲
Stand Alone

司馬遼太郎の長編小説『坂の上の雲』が映像化。NHKスペシャルドラマとして2009年11月~12月に第1部。2010年12月に第2部、今年12月に完結編となる第3部が放送されたばかり。明治時代、近代国家として新しく生まれ変わろうとする「日本」。純粋さやひたむきさだけでなく、高み=”坂の上”を目指そうとする人々の強い志と貪欲さが時代を動かす風となっていく。ドラマの枠を超え、壮大なスケールで描かれた作品は日本中に感動と衝撃を与えた。

音楽を担当した久石は、「史実・そこに立ち向かう人々の”凛とした”生き様を描きたかった」という。今回はその作品群の中から第3部を中心に「第3部序幕」「少年の国」「真之と季子」「煉獄と浄罪」「絶望の砦~ニ◯三高地ニ起ツ~」「日本海海戦」「終曲」「Stand Alone」の8曲を選りすぐり、組曲形式に再構築した。第3部のメインテーマ「Stand Alone」を歌うのはヴォーカリスト、麻衣。彼女の透きとおった歌声は、番組プロデューサーの耳に留まり3年目を迎える今年、第3部の歌手として抜擢された。2011年の締めくくりにふさわしい重厚且つ壮大なオーケストレーションが秀逸。
*「NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」オリジナル・サウンドトラック2・3」「Melodyphony」 収録

(ジルベスター・コンサート 2011 コンサート・パンフレット より)

 

  • クラブツーリズムスペシャルコンサート 久石譲 オーケストラの世界 (2013)

久石譲:組曲「坂の上の雲」

 

 

「坂の上の雲」組曲は、TVドラマから音楽作品へと再構成され録音された(A)Saka No Ue No Kumo(2010)、演奏会作品へと再構成され披露された(B)「坂の上の雲」組曲(2009)と(C)「坂の上の雲」第二組曲(2011)、三つの組曲があります。これから先、コンサート演奏されたり録音されたりするといいですね。

 

 

次回は、第1部使用楽曲です。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

 

 

Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(4)サウンドトラック

Posted on 2024/10/10

つづけて、サウンドトラックをみていきましょう。

 

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック』(2009)

1. Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲
2. 時代の風
3. 旅立ち
4. ふるさと ~松山~
5. 青春
6. 蹉跌
7. Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲
8. 最後のサムライ
9. Human Love
10. 激動
11. 戦争の悲劇
12. Stand Alone for Orchestra

Bonus Track
13. Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲

Total Time:約53分

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

演奏:NHK交響楽団
指揮:外山雄三

歌:サラ・ブライトマン (M1, M7, Bonus Track)
ピアノ:久石譲 (M1, M7, Bonus Track)

 

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 2 』(2010)

第1部:未収録楽曲より
1. 少年の国
2. ガキ大将!真之
3. 奇跡の時
4. 悪ガキ行進曲
5. Stand Alone for Violin & Violoncello
6. 疵
7. 偵察
8. 狼煙
9. 破局の始まり
10. 終の住処
11. 少年の国 for Woodwinds & Strings
12. 広瀬 ~快活な人物~
13. Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲(Bonus track)

第2部:新録音楽曲より
14. 若き精鋭たち
15. 真之と季子
16. 律 ~愛と悲しみ~
17. 強国ロシア
18. アリアズナ
19. 列強と日本
20. 奸計
21. 慕情
22. 開戦への決意
23. 広瀬の最期
24. Stand Alone 歌/森麻季(ソプラノ)

Total Time:約76分

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

指揮:久石譲
演奏:東京ニューシティ管弦楽団

指揮:外山雄三
演奏:NHK交響楽団 (第2部メインテーマ:M24)

ピアノ:久石譲 (M13, M24)

 

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 』(2011)

第3部:新録音楽曲より
1. 第三部 序章
2. 孤影悄然
3. 大地と命と
4. 煉獄と浄罪
5. 二人の将
6. 絶望の砦 ~二〇三高地二起ツ~
7. 海と命と
8. 天気晴朗ナレドモ波高シ
9. AIR
10. 運命の死地
11. 日本海海戦
12. 終曲
13. Stand Alone 久石譲×麻衣

第1部:未収録楽曲より
14. 少年の国 III
15. 夢
16. Stand Alone for Clarinet & Glockenspiel

第2部:未収録楽曲より
17. 大英帝国のテーマ
18. 獣たちの宴
19. 赤い花

ボーナス・トラック
20. Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲
21. Saka No Ue No Kumo

Total Time:約72分

All Music Composed and Produced by Joe Hisaishi
Orchestrated by 山下康介 宮野幸子 久石譲

指揮:久石譲
演奏:東京ニューシティ管弦楽団

指揮:外山雄三
演奏:NHK交響楽団 (M11, 第3部メインテーマ:M13, M21)

ピアノ:久石譲 (M20)
ヴォーカル:麻衣 (M9, M13)
コーラス:栗友会合唱団 (M13, M18)

 

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 総集編』(2012)

1. Stand Alone for Orchestra
2. 時代の風
3. 旅立ち
4. 青春
5. Human Love
6. Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石 譲
7. 少年の国
8. アリアズナ
9. 終の住処
10. 広瀬の最期
11. Stand Alone 歌/森麻季(ソプラノ)
12. 第三部 序章
13. 絶望の砦 ~二〇三高地ニ起ツ~
14. 天気晴朗ナレドモ波高シ
15. 日本海海戦
16. Stand Alone 久石譲×麻衣

ボーナス・トラック
17. Saka No Ue No Kumo

Total Time:約83分

All Music Composed and Produced by Joe Hisaishi
Orchestrated by 山下康介 宮野幸子 久石譲

指揮:久石譲
演奏:東京ニューシティ管弦楽団 (M7-10, M12-14)

指揮:外山雄三
演奏:NHK交響楽団 (M1-6, M11, M15-17)

 

 

 

 

アレンジ・ヴァージョン

Track.

  • 2.時代の風(サウンドトラック 1, 総集編)
  • 19. 列強と日本(サウンドトラック 2)

Track.

  • 3. 旅立ち(サウンドトラック 1, 総集編)
  • 3. 奇跡の時(サウンドトラック 2)
  • 15. 夢(サウンドトラック 3)

Track.

  • 5. 青春(サウンドトラック 1, 総集編)
  • 4. 悪ガキ行進曲(サウンドトラック 2)

Track.

  • 1.少年の国(サウンドトラック 2, 総集編)
  • 11. 少年の国 for Woodwinds & Strings(サウンドトラック 2)
  • 14. 少年の国 III(サウンドトラック 3)

Track.

  • 10. 終の住処(サウンドトラック 2, 総集編)
  • 19. 赤い花(サウンドトラック 3)

 

*「Stand Alone」はサントラ収録9ヴァージョン(3)Stand Alone 頁をご覧ください

 

 

 

モチーフ

ひとつの曲のなかにいくつかのテーマやモチーフが織りこまれています。

Track.

  • 22. 開戦への決意(サウンドトラック 2)
  • 2. 孤影悄然 (サウンドトラック 3)

「時代の風」のテーマが後半部/終結部に織りこまれています。

Track.

  • 10. 広瀬の最期(サウンドトラック 2)

「広瀬 ~快活な人物~」のモチーフが短調のハーモニーで包まれるほか「アリアズナ」のモチーフも奏でられています。

Track.

  • 1. 第三部 序章(サウンドトラック 3, 総集編)

「開戦への決意」「激動」「Stand Alone」「激動」のパートが順に奏でられています。

Track.

  • 10. 運命の死地(サウンドトラック 3)

「海と命と」のテーマが後半部に織りこまれています。

Track.

  • 12. 終曲(サウンドトラック 3)

「Stand Alone」のメロディが織りこまれています。

 

 

 

サントラ未使用曲

Track.

  • 1. Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲(サウンドトラック 1)
  • 3. 大地と命と(サウンドトラック 3)
  • 10. 運命の死地(サウンドトラック 3)
  • 21. Saka No Ue No Kumo(サウンドトラック 3, 総集編)*組曲化

 

 

サントラver.未使用曲

Track.

  • 15. 真之と季子(サウンドトラック 2)

本編ではチェレスタに始まりオーケストレーションも異なるサントラ未収録ver.のみが使われています。

 

Track.

  • 17. 強国ロシア(サウンドトラック 2)

本編ではコーラスなしのサントラ未収録ver.のみが使われています。

 

 

*詳しくは(6~8)使用楽曲 頁をご覧ください

 

*一番使用されたサントラ曲/一回だけ使用されたサントラ曲/一番使用されたテーマ/サントラ未収録ver.一覧は(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲 頁末をご覧ください

 

 

 

一口コメント

『サウンドトラック1・2・3』は、それぞれ第1部・第2部・第3部のTV放送開始前にCD発売されています。しかし、ご覧のとおりアルバムを飛び交って使用楽曲が収録されています。わかりやすいところでは、たとえば記念すべき第一回放送は『サウンドトラック 1』収録楽曲のほか、『サウンドトラック 2』より「少年の国」「Stand Alone for Violin & Violoncello」、『サウンドトラック 3』より「夢」「少年の国 III」などがすでに流れています。第一回使用楽曲がほぼ出揃うのは3年待たなければいけなかったわけですね。3年待って収録されてよかったですね。

 

 

演奏

近年のNHK大河ドラマでは、オープニング主題曲のみNHK交響楽団による演奏、そのほかの楽曲は作曲家の創作活動や演奏活動に即した演奏者によることが主流です。この作品はほぼ全てオーケストラ楽曲ながら、NHK交響楽団と東京ニューシティ管弦楽団の二つのオーケストラ団体で録音されている理由のひとつです。NHK交響楽団を指揮するのは正指揮者等になります。

『サウンドトラック 1』は全曲NHK交響楽団による演奏で録音されていることは特記です。まさにNHKあげての一大プロジェクト、スペシャルドラマにふわさわいスペシャルな音楽収録になっています。

一方では、『サウンドトラック 2』に収録された『サウンドトラック 1』からもれた第1部未収録楽曲は東京ニューシティ管弦楽団です。ここでひとつの仮説です。もしかしたら、『同1』はスタジオジブリ作品のイメージアルバムのように、早い段階で出来上がっていたテーマごとの楽曲群だった?! そして撮影が続いていくなかで追加で書き足されていった楽曲たち、あるいは主要曲のアレンジ・ヴァージョンらが、東京ニューシティ管弦楽団で時期を追って録音された(録音日クレジットなし・不明)のかもしれませんね。いや、他の諸事情でアルバム分かれたのかもしれませんね。

『サウンドトラック 2・3』も主題歌はNHK交響楽団による演奏です。注目1は、『サウンドトラック 3』「日本海海戦」だけぽつんとNHK交響楽団になっていることです。上の仮説の流れからみると、「日本海海戦」もまた早い段階から出来上がっていた楽曲のひとつかもしれない。『同1』音楽収録の時に一緒に録音していたものかもしれない。はたまた、『Saka No Ue No Kumo』新録音の時かもしれない。いろいろな想像ができそうですね。

注目2は、その「Saka No Ue No Kumo」です。『Melodyphony』(2010)のときに組曲になって久石譲指揮(ロンドン交響楽団)で録音されています。ここではNHK交響楽団で新録音されています。あえて久石譲指揮(東京ニューシティ管弦楽団)にならなかったところに注目しています。「Stand Alone」がオープニングとクライマックスを飾る組曲です。坂の上の雲サウンドトラックに収録するのであれば、主題曲/主題歌と同じ扱いを受けた!? ということでしょうか。いろいろな想像ができそうですね。

 

*「Saka No Ue No Kumo」の聴き比べは(5)組曲 頁をご覧ください

 

 

録音

外山雄三(指揮)NHK交響楽団、久石譲(指揮)東京ニューシティ管弦楽団、いずれもオーケストラ楽器配置は通常配置です。クラシック音楽活動を本格化させていく2010年代前半から、久石譲は演奏会・音楽収録ともに対向配置を採用していきます。『Melodyphony』(2010)はまだ通常配置です。CD作品では『The End of the World』(2016)あたりから、サウンドトラックでいうと『花戦さ』(2017)あたりから対向配置の響きになっています。『坂の上の雲』の音楽は通常配置で聴く、将来コンサートでプログラムされるときは対向配置で聴ける、さらに新しい響きを届けてくれそうです。

 

 

総集編

第1部からだ第3部までの主要曲が公平に順番に収録されています。各部主題歌も収録されています。組曲も入って約83分のボリュームです。これは入っててほしい曲がわりときれいに入っている総集編です。Track.1-6『サウンドトラック 1』収録、Track.7-11『サウンドトラック 2』収録、Track.12-16, Bonus Track.17『サウンドトラック 3』収録。

 

 

New!
2024年テレビ一挙再放送に連動するように、これまで『サウンドトラック 総集編』のみサブスク解禁となっていたりの音楽ストリーミング・サービスも、2024年9月3日『サウンドトラック 1・2・3』を加えた全4アルバムが一挙ラインナップ!この作品に触れる視聴者からリスナーまで広くグローバルに聴き楽しめるようになりました。

 

 

次回は、組曲です。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

 

 

Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(3)Stand Alone

Posted on 2024/10/06

つづけて、主題歌「Stand Alone」をみていきましょう。

 

 

Stand Alone

作詞:小山薫堂 作曲:久石譲
歌:サラ・ブライトマン(第1部)・森麻季(第2部)・麻衣(第3部)

ちいさな光が 歩んだ道を照らす
希望のつぼみが 遠くを見つめていた
迷い悩むほどに 人は強さを掴むから 夢をみる
凛として旅立つ 一朶の雲を目指し

あなたと歩んだ あの日の道を探す
ひとりの祈りが 心をつないでゆく
空に 手を広げ ふりそそぐ光あつめて
友に 届けと放てば 夢叶う
はてなき想いを 明日の風に乗せて

わたしは信じる 新たな時がめぐる
凛として旅立つ 一朶の雲を目指し

 

 

 

楽曲について語られたこと

久石譲

「シンプルであり品格のある音楽にしたい。そして皆さんにぜひ歌っていただきたい。江戸から明治に時代が変わるとき、イギリス文化が取り入れられました。そして音楽教育のベースにもそういった音楽があったんです。小学校の教科書にはスコットランドやアイルランドの民謡が載っています。素朴でどこか懐かしい。いつまでも心に残るような。そんなテーマ曲が書けないかと思いました。キーワードにしたのは”凛として立つ”ということ。明日に向かって”凛として立つ”明治の人々の美しき姿を壮大なオーケストラの演奏だけではなく、普遍性のあるメロディの歌で伝えたいと思ったのです。第1部はサラ・ブライトマンのスキャット、第2部は森麻季さんの歌、第3部はコーラスを入れました。「Stand Alone」がスタンダードとして長く歌い継がれていくことを望んでいます。」(オリジナル・テキスト集より要約 編)

 

小山薫堂

「実はこのタイトルは僕がつけたものではない。作曲者の久石譲から曲をいただいたとき、すでに「Stand Alone」という素敵なタイトルがつけられていた。」

「そう、「Stand Alone」とは、音の光。もしこの楽曲が、あなたの心を照らすささやかな光になっているとするならば、僕がこれ以上語ることは何もない。」

 

藤澤浩一

「新しい「Stand Alone」を聴いたとき、「鎮魂の祈り」と「未来への希望」という言葉が浮かんだ。このドラマの締め括りにふさわしい音楽になった。ひとつの曲がドラマの各部ごとに変貌を遂げたというだけでなく、この3年間の社会の変化を敏感に反映しているように感じる。久石さんのマジックである。」

 

*テキスト集は(2)語られたこと 頁をご覧ください

 

 

 

サウンドトラック

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 サウンドトラック』1・2・3 にわたって全9ヴァージョンの「Stand Alone」が収録されています。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック』

  • Track.1 Stand Alone/サラ・ブライトマン×久石譲 
  • Track.7 Stand Alone (Vocalise)/サラ・ブライトマン×久石譲 **
  • Track.12 Stand Alone for Orchestra **
  • Track.13 Stand Alone with Piano/サラ・ブライトマン×久石譲(Bonus track)””

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 2』

  • Track.5 Stand Alone for Violin & Violoncello
  • Track.13 Stand Alone with Piano/サラ・ブライトマン×久石 譲(Bonus track)””
  • Track.24 Stand Alone/森麻季(ソプラノ)**

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3』

  • Track.13 Stand Alone/久石譲×麻衣 **
  • Track.16 Stand Alone for Clarinet & Glockenspiel
  • Track.20 Stand Alone with Piano/サラ・ブライトマン×久石譲(Bonus track)””
  • Track.21 Saka No Ue No Kumo(Bonus track)**

**総集編収録 ””重複

以上9ヴァージョン

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 総集編』

  • Track.1 Stand Alone for Orchestra  [サントラ1]
  • Track.6 Stand Alone (Vocalise)/サラ・ブライトマン×久石譲  [サントラ1]
  • Track.11 Stand Alone/森麻季(ソプラノ) [サントラ2]
  • Track.16 Stand Alone/久石譲×麻衣  [サントラ3]
  • Track.21 Saka No Ue No Kumo(Bonus track)  [サントラ3]

 

 

 

モチーフ

ひとつの曲のなかにStand Aloneのメロディが織りこまれています。「第三部 序章」「終曲」(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3』収録)があります。

 

 

サントラ未収録ver.

本編では「Stand Alone for Orchestra」の調性(キー)やオーケストレーションが異なる2つのヴァージョン、「Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲」のヴォーカルとピアノを抜いたヴァージョン、これら3つのサントラ未収録ver.が使われています。サウンドトラック収録の計9ヴァージョンと合わせても「Stand Alone」は確認できるだけでも計12ヴァージョンあります。さらにモチーフで織りこまれた楽曲を合わせると本当にドラマの象徴として流れるStand Aloneです。

 

 

使用放送回

第一回

  • (オープニング) Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)*第二回/第四回
  • 00:29:40- Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲 [1] 未収録ver.(ヴォーカルなし、ピアノなし、終結部調性とピアノ)
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

第二回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 00:53:55- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)*第一回/第四回
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

第三回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [2] [3]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

第四回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • 01:23:05- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.1(調性、オーケストレーション)*第一回/第二回
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

第五回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]

第六回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

第七回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [2] [3]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

第八回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

第九回

  • Stand Alone for Orchestra [1] [総]
  • Stand Alone for Violin & Violoncello [2]
  • Stand Alone with Piano サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [2] [3]
  • Stand Alone 歌/森麻季 [2] [総]

第十回

  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

第十一回

  • 01:15:00- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.2(調性、オーケストレーション)*第十三回
  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

第十二回

  • Stand Alone (Vocalise) サラ・ブライトマン×久石譲 [1] [総]
  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

第十三回

  • 01:23:10- Stand Alone for Orchestra [1] 未収録ver.2(調性、オーケストレーション)*第十一回
  • Stand Alone 久石譲×麻衣 [3] [総]

 

 

*「Stand Alone サラ・ブライトマン×久石譲」(日本語歌唱)は未使用楽曲です

*「Saka No Ue No Kumo」は未使用楽曲です。ドラマを越えて音楽作品として組曲化されたものです

*「第三部 序章」「終曲」も含めたStand Aloneメロディ使用放送回は(6~8)使用楽曲 頁をご覧ください

 

 

 

New!
2024年テレビ一挙再放送に連動するように、これまで『サウンドトラック 総集編』のみサブスク解禁となっていたりの音楽ストリーミング・サービスも、2024年9月3日『サウンドトラック 1・2・3』を加えた全4アルバムが一挙ラインナップ!この作品に触れる視聴者からリスナーまで広くグローバルに聴き楽しめるようになりました。

 

 

 

スコア

 

 

カバー曲

セルフカバー

森麻季(ピアノ・アレンジ)
アルバム『日本の歌~花は咲く』(2012)

麻衣 with リトルキャロル
アルバム『BEAUTIFUL HARMONY』(2022)

 

カバー

歌曲版・合唱版・吹奏楽版などがあります。詳しくは【Stand Alone(ウィキペディア)】をご参照ください。紹介されていないもので器楽版もあります。アルバム『MY JAPANESE FRIENDS / Jouko Harjanne』はトランペット&ピアノ版です。ほかにも国内外の音源化されている演奏あったらぜひ教えてください。全ては把握しきれていない多くの歌声や楽器でカバーされています。

 

 

一口コメント

名曲です。数ある久石メロディ・久石譲ソングのなかでもたしかな名曲のひとつです。2オクターヴに広がる美しい器楽的なメロディは、坂を登っていくように音符も駆けあがっていく力強さと羽ばたきに満ち溢れています。鮮やかに光を感じる稀有な楽曲です。第1部から第3部へと歌いつないでいくこともまた運命的です。社会や時代はめまぐるしく変化していく中でこれからもそのときの現在(いま)で歌い継がれてほしい一曲です。

思えば、久石譲においてヴィオラが歌う曲は名曲が多い。「World Dreams」も「組曲 Word Dreams より III.Diary」も「JAL 明日の翼」もそうです。ヴィオラからメロディを歌いはじめる曲はたしかに名曲が多い。「Oriental Wind for Orchestra」にもそういったところがあります。ヴィオラに旋律をたくすとき、そこには久石譲の揺るがない想いがあるのかもしれませんね。

 

 

次回は、サウンドトラックです。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲

 

 

Blog. 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説(2)語られたこと

Posted on 2024/10/04

つづけて、「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲」語られたエピソードをみていきましょう。久石譲(音楽)、小山薫堂(作詞)、麻衣(歌)、本木雅弘(出演)、藤澤浩一(チーフ・プロデューサー)の順になっています。

 

 

久石譲

明治を生きた若者達の群像。坂の上を目指し、”凛として立つ”彼らを音楽で描く。

今から十数年前に司馬遼太郎さんの著書を夢中で読み漁ったことがあります。いずれも名作でしたが、なかでも明治以降の日本を描いた『坂の上の雲』は、特に興味深く、この時代を生きた人々の純粋なエネルギーに心惹かれました。ドラマ化の話を聞いた時はすごく嬉しかったです。

映像のための音楽を制作する場合、いくつか方法があります。たとえば、エンターテイメント性の高いアクション映画だと、登場人物ごとにテーマ曲を作ることがあります。でも、司馬さんがこの作品で表現したかった精神世界や明治という時代の空気感を描くためには、個々の人間をクローズアップする手法ではニュアンスは伝わらない。それよりは時代に衝き動かされた若者達を群像としてとらえて、それをテーマに曲を書く方がいいと考えました。

明治は、近代日本において重要な時代です。若者を中心に長い鎖国から開放された人々は、驚くほど純粋で、素直に西洋に目を向けて世界の強国に追いつくためにひたむきに”坂の上”を目指していました。そのために西洋の文化も貪欲に取り入れようとしました。

音楽でいうと、当時はイギリスの教育を模倣し、教科書にはスコットランドやアイルランド民謡が多く載っています。その時に日本古来の文化を切り離そうとしたのは反省すべき点だとは思いますが、いずれにしても日本人が初めて西洋の音楽に触れた時代です。

『坂の上の雲』の音楽を制作するにあたり、その時代の高揚感を日本の五音階の世界観と西洋のモダンな和音の感覚を融合させながら描き出したいと考えました。そして敢えて協和音と不協和音がせめぎあう大人の音楽を目指しました。さらに音楽の手法として、僕の原点であるミニマル・ミュージックを随所で取り入れ、「激動」や「蹉跌」などでそれを前面に打ち出しています。

また、構想を練る段階でこれまでの「NHKスペシャルドラマ」の音楽にはない新しいチャレンジをしたいと考えました。そこから生まれたのが「Stand Alone」です。明日に向かって”凛として立つ”明治の人々の美しき姿を壮大なオーケストラの演奏だけではなく、普遍性のあるメロディの歌で伝えたいと思ったのです。そして、この歌を歌う最高のシンガーとしてクラシックとポップス両方の組成を持つサラ・ブライトマンさんに歌っていただきました。

このサウンドトラックには「Stand Alone」の4ヴァージョンが収録されています。サラさんの日本語の歌とヴォカリーズ、僕がピアノを弾いたボーナス・トラック、さらにオーケストラのインストゥルメンタル・ヴァージョンです。それぞれ違いを楽しんでいただけるかと思います。

今はさわやかな達成感とともに、「Stand Alone」がスタンダードとして長く歌い継がれていくことを望んでいます。

(2009年9月25日都内にて/取材・構成:服部のり子)

(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック』CDライナーノーツより)

 

 

『坂の上の雲』の音楽

スペシャルドラマ『坂の上の雲』の音楽担当の話が来たのはもう7、8年前になります。司馬遼太郎さんの原作が大好きでしたから、ぜひ担当したいとお引き受けしました。

『坂の上の雲』についてはトータルで約80曲作りました。自分ではテレビドラマというより映画音楽として考えて作りました。通常のテレビドラマの音楽は1分とか1分半などの短い曲をたくさん作るようですが、僕は3分前後の曲を多く書いたので、実質膨大な量になりました。今回の作品は現代音楽からメロディアスな音楽まで、自分が作ってきたすべてを総動員して力を入れて作りました。今は3年間の放送を終えてとても嬉しい気持ちです。

最も重要だったのはやはりメインテーマです。番組の顔に相当するメインテーマをどう作るのか一番時間をかけて悩みました。

明治という時代には前体制が壊れて新しい体制に向かっていく楽天主義的な夢がたくさんある。そういう世界観を描きたい。最初にスコットランドやアイルランドの民謡が頭に浮かびました。素朴でどこか懐かしい。いつまでも心に残るような。そんなテーマ曲が書けないかと思いました。

そしてこれだけスケール感あるドラマなら音楽はシンプルにしたい。特にメインになる曲はどこまでシンプルにできるかにこだわりました。また、この物語は「英雄物語」ではなく、一生懸命生きた人間が巨大な戦争に巻き込まれていく話です。歴史の重要な1ページを描くには品格のある音楽を、しかもドラマティックすぎずに描かなくてはいけない。結果として誕生した曲がメインテーマ「Stand Alone」でした。そしてこれだけシンプルだったら、ぜひ皆さんに歌っていただきたいと思い、映画『おくりびと』の脚本家、小山薫堂さんの詞を得て”歌”にしました。

考えてみると、小学校の教科書には「蛍の光」「ロンドンデリーの歌」といったスコットランドやアイルランドの民謡が載っています。江戸から明治に時代が変わるとき、イギリス文化が取り入れられました。そして音楽教育のベースにもそういった音楽があったんです。僕たちは小さい頃からそういった音楽で育っているんですね。意識していなかったのですが、スコットランド民謡のような曲を書こうと思ったこと、最初にイギリス人歌手であるサラ・ブライトマンを起用しようと思ったこと、『坂の上の雲』の音楽を作るにあたってすべてが”イギリス”に向いていました。自分の中にある”イギリス”は『坂の上の雲』の音楽を作らせた大きな要因の一つでした。

昨年震災が起こりました。モノを創る人間として大変大きな衝撃がありました。何を目指して作っていけばよいのか、みんな分からなくなってきています。また、21世紀に入ってから今までの価値観ではやっていけないという事実に直面しています。そんな中、今回の音楽にかけて言うなら大事なのは”Stand Alone”という境地ではないかと感じています。

”Stand Alone”とは独りで立つということ。個人主義ではなく、自分は孤独で独りである、と認識すること。そうすれば人にやさしくすることも、人と力を合わせることも喜びに感じる。僕は最近、「目ざせ、Stand Alone」ということを懸命に考えています。

久石譲

(本原稿は2011年12月3日大阪府東大阪市:司馬遼太郎記念館/特別講演会「坂の上の雲と音楽」より談話を一部抜粋・加筆して再構成したものです)

(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 総集編』CDライナーノーツより)

 

 

作品にある純朴さを表現

宮崎駿監督の『もののけ姫』の音楽を担当すると決まったころ、宮崎さんと司馬遼太郎さんの対談が行われることになったんです。それで「宮崎さんが傾倒する司馬さんの作品って、どんなものなんだろう」と思い、1年くらいかけて司馬さんの全集を読みました。そのとき、いちばん自分の中に響いた作品が『坂の上の雲』だったんです。「いつか、この音楽を作ってみたい」と思っていたところ、今回、依頼をいただいたので、すごくうれしかったですね。

ドラマの脚本を読んで感じたのは、とにかく”ピュア”ということでした。長かった鎖国が解かれて、近代的な体制の諸外国に「追いつけ、追い越せ」という目標をもって生きる純粋な情熱。自分の人生を世の中を変えることに向ける姿が、とても印象に残りました。今の日本が先進国になって、もう失ってしまっている純朴さ、いちずさみたいなものがあるんですね。それを音楽でどう表現するのかを、すごく考えました。

メインテーマの「Stand Alone」は、第1回から4回までの演出を担当した柴田岳志ディレクターと打ち合わせをしているとき、「スコットランド民謡みたいな、シンプルな曲が1曲あるといいよね」という話が出て、そこから誕生した曲です。キーワードにしたのは”凛として立つ”ということ。人と人が寄り添いながら生きているのもすばらしいことなのですが、最後は1人ですくっと立つことができる、それが人間としてすごく大事なことではないかと思ったのです。それは〈坂の上の雲〉の時代だけじゃなく、今の時代にも共通して言えることではないでしょうか。

明治の人たちと重なるような音楽をイメージしたとき、明治時代に日本がイギリスから学んだものを考えました。実は私たちが学校で習う西洋音楽は、イギリス民謡から始まっているものが多いんです。たとえば、「蛍の光」や「ロンドンデリーの歌」。だから僕の音楽にも、スコットランド民謡やアイルランド民謡といったものがベースにある。個人的なことですが『風の谷のナウシカ』の音楽も、海外では「イギリス的なにおいがする」とすごく言われたので。その根底にあるのは、やはり明治からの音楽教育なんですよ。そういう自分の思いと、東洋的な5音階のやり方と、イギリス民謡のような素朴な音と、そういうものを自分の中でミックスしていく……。その過程を音楽でやりたいと思いました。

ですから、いわゆる劇音楽という使い方はしないで、僕が手がけていたミニマルミュージックをベースにした音楽で。泣かせようとか、盛り上げようとかではなく、役者さんたちの演技を信じて、ちょっと引いた感じで、そのうえで、できるだけシンフォニックに作りました。

Blog. 「NHKウィークリーステラ 2009年12/5~12/11号」久石譲インタビュー内容 より)

 

 

「大型ドラマというと通常はオーケストラ作品。でも今回ちょっと違うものをやりたかった。そこでヴォーカルを入れようと。大きなドラマに対して誰が一番合うのか。国際的世界的スケール、そして日本が明治と変わっていく、それをアピールできる歌手を探していてサラ・ブライトマンさんになりました。」実際にサラが歌ったメインテーマを聴いての感想については「声が若々しく、こちらが思っていたスケール感が出ていたので、個人的に満足しています」と笑顔を見せた。

Info. 2009/10/22 NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』で、久石譲とサラ・ブライトマンがコラボ より抜粋)

 

 

「私がNHKの知り合いのディレクターから「坂の上の雲」の音楽担当を依頼されたのは、もうずいぶん前のことです。大好きな作品だし、ぜひやりたいと思った。2011年で放映3年目。司馬さんは他の作品にも通じますが、秋山好古、真之兄弟のように、本当のエリートではなく2番手3番手に光を当てるのがとてもうまいですね。最初の第1部は青春期、第3部は二◯三高地の戦いと日本海海戦と決まっていましたから、第2部は少し心配していたんですが、子規の死にポイントをあててうまくいった。渡辺謙さんのナレーションと、よく合っていました。番組の最後に流れるテーマ曲「スタンドアローン」は、第1部はサラ・ブライトマンのスキャット、第2部は森麻季さんの歌、第3部はコーラスを入れました。第3部は「救済の音楽」。希望の見える音楽をテーマにしています。」

Blog. 「週刊 司馬遼太郎 8」(2011) 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「それはすごく嬉しいです。ああいう大型のドラマになると、大河ドラマのオープニングみたいに、「ジャジャジャ~ン!」という派手な音楽で出るのがふつうなんでしょうけれども、僕、そうはしたくなかったんです。あれだけの大作なんだから、その精神を受け止めるような、バラード的なもののほうがあの世界観が出るんじゃないかと思ったんです。」

Blog. 「週刊朝日 5000号記念 2010年3月26日増大号」久石譲×林真理子 対談内容 より抜粋)

 

 

 

小山薫堂

「音の光」

知人から、時々こんなことを言われる。
「Stand Aloneというタイトルが、まず素晴らしいですね」

実はこのタイトルは僕がつけたものではない。作曲者の久石譲から曲をいただいたとき、すでに「Stand Alone」という素敵なタイトルがつけられていた。

久石さんの曲を聴く前に、まず脚本を読むことにした。イメージを膨らませて、言葉の欠片をできるだけたくさん頭の中に並べ、すでに出来上がっている曲とお見合いさせようと思ったからだ。

しかし、物語は壮大過ぎた。人間の尺度で話は紡がれるが、それは国、やがては時代のスケールで語られる。この世界観をそのまま歌にするのはとても難しい。それでも、時を経ても色褪せることのない普遍的な楽曲にしたい、と思った。

言葉に行き詰まってしまった時、初めて楽曲を聴いた。背筋をピンと伸ばし、誰もいない仕事場で大きく深呼吸して、CDプレイヤーのプレイボタンを押したのを覚えている。

それから先、どういう想いのもとにこの詞が完成したかは、あえて伏せておくことにしよう。ドラマの主題歌として皆さんがそれぞれのイメージを抱いている今、その誕生秘話を語るなんて野暮な話だ。

ただ…、ひとつだけ明かすとするならば、僕の頭の中にはずっと「光」のイメージがあった。闇の中にいる人たちにとって、この歌が「光のような存在」になればいいと思った。

光を一方的に求めているだけでは何も始まらない。人間ひとりひとりが自分なりの光を見つけ出し、それを仲間と共有したときはじめて、私たちは大きな光に照らされるのである。

そう、「Stand Alone」とは、音の光。もしこの楽曲が、あなたの心を照らすささやかな光になっているとするならば、僕がこれ以上語ることは何もない。

(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 総集編』CDライナーノーツより)

 

 

麻衣

「はじめて「Stand Alone」を聴いたのは、3年前にデモが完成したときでした。私自身『坂の上の雲』は原作も大好きだったので、楽曲を聴いた瞬間の感動は、今でも忘れられません。何より、まさか自分が歌えることになるとは思っていなかったので、とても光栄です。父から制作現場の話を聞く機会などもあり、個人的にもこの楽曲には3年間向き合ってきましたので、強い想いがあります。自分らしい「Stand Alone」を歌うことができたと思っています。「Stand Alone」は、「凛として立つ」という意味だそうです。それぞれが強い意思をもって生きた明治時代の人そのものだと感じています。この時代に生きた人々が築いた「日本」という国を、私は心から誇りに思います。なにがあっても後ろを振り向かない「前をのみ見つめながら歩く」という姿勢は、今の私たちに最も必要なことだと思っています。最大の敬意と感謝を込めて歌っていきたいと思います。」

「父は、私がこの曲を歌うことになるなんて、全く想定していなかったと思います。大好きなこの作品に、父と一緒に参加できたことは、自分の中でとても嬉しい出来事でした。」

Info. 2011/12/18 麻衣の歌う『坂の上の雲』メインテーマ「Stand Alone」に注目 より抜粋)

 

 

本木雅弘

寄稿

曲が自分を追い越していきました。

身体を通過して、物語を通過して、知らないうちに久石さんの音楽が物語の高揚感とか、もしくは後味みたいなものを先導している形になっていました。

一言でいえば頼もしいというか、守られているというか。ドラマの撮影中「Stand Alone」にそんな不思議な力を感じていました。

(NHK BS「ザ☆スター」インタビューより談話抜粋・一部加筆修正)

(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 』CDライナーノーツより)

 

 

NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」
チーフ・プロデューサー 藤澤浩一

風が吹いた瞬間

もう正確な日付は覚えていないのだが、NHK交響楽団の演奏による録音を控えたある日のこと。久石譲さんから、何曲か音楽のデモが出来たとの連絡があり、演出家と音響効果のディレクターそして私の3人で、いささか緊張しながら久石さんの事務所へ向かった。そこは西麻布の一角にあり、六本木通りという日本でも有数の繁華な場所の近くにしては非常に閑静な住宅街の中で、もう日も暮れようとしている頃だった。

緊張していたというのは、映画音楽の第一人者のデモをその本人を前にして聞くということもあったのだが、事前の打ち合わせで、ドラマの登場人物に即した音楽は作らないと決めていたこともあって、一体どのようなプレゼンテーションになるのか予測がつかなかったからだ。例えばこのドラマで言えば、秋山真之のテーマだとか好古のテーマといったものは出来るだけ作らない。「坂の上の雲」の世界を構成するテーマを大掴みにして、そこからイメージする曲をひとつの作品として作ってゆく。打ち合わせで久石さんが提示したコンセプトはそういうことだったと思う。

予測がつかないまでも、「明治の青春」を感じさせる曲をいくつか聞けるのではないかという予想はあった。久石さんの周辺からもそんな情報が入っていたと思う。ドラマ全13本のうち初年度に放送する5本は、まさに「坂の上の雲」の「青春篇」というべきもので、生まれたばかりの「明治日本」という若い国の姿を主人公たちの青春像とが、折り重なるように描かれてゆく。その意味で青春をモチーフとした曲は重要だったし、久石さんもそういう曲から作るのではないかと想像した。

果たして、久石さんのワーキングスペースに通された私たちに渡されたリストには、「青春」や「旅立ち」といった曲名がある。そして、リストの最後には”Stand Alone”と記されていた。「???」。曲名からは何をモチーフとした曲なのかわからなかった。

その曲は美しい旋律で、デモの段階では英語の歌詞が乗っていた。大地に颯爽と立つ少年が風に吹かれている。その風は時に優しく、時に厳しく吹いているが、少年は空に輝く雲を見つめ、そこに向かって歩みを進めてゆく。そんなイメージが頭に浮かんだ。

聞き終わった瞬間、部屋の中に風が吹いた、本当に。そう感じるほど、感動していた。打ち合わせに来たはずが、最後には「久石譲コンサート」の聴衆になっていた。

そうした作品の数々が、外山雄三さん指揮によるNHK交響楽団の演奏や小山薫堂さんの歌詞、サラ・ブライトマンさんのヴォーカルという素晴しい援軍を得た。

みなさんの所にも、きっと気持ちの良い風が届けられることと思います。

(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック』CDライナーノーツより)

 

生みの苦しみ、生みの喜び

ドラマの第1部はいわば「青春編」だった。日本が国際社会という舞台に初めて立ち、主人公たちがそれぞれの道を歩き始めるというストーリーだった。第2部は「友情編」である。ロシアとの関係が緊張を増し、ついに開戦となるなか、秋山真之の二人の親友、正岡子規と広瀬武夫が壮絶な最期を遂げる。兄の好古はロシアや清国の、本来は対決するはずの人々と親交を結んでゆく。子規や広瀬の死は音楽的にも大きなテーマだし、ロシアを音楽でどう表現するのかなど、久石さんのマラソンコースの上で、難所だったに違いない。

そしてメインテーマだ。ドラマは3部構成であり、しかも3年に亘って放送する。物語は激しく展開し、時代は変わり、見ている人たちも作っている私たちも変わってゆく。ならばメインテーマも変わっていったらどうだろうか。そう思っていたのは私だけではなく、久石さんも同じだったようだ。しかし、英国の歌姫のイメージを踏襲しながら、違和感なく新しいヴァージョンを創り出すのはかなりの難産だった。けれど、森麻季さんの歌声と久石さんの手腕で素晴しい曲に仕上がった。

(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 2 』CDライナーノーツより)

 

久石譲さんのマジック

スペシャルドラマ「坂の上の雲」第3部は戦争を描いている。映像では砲煙が立ち込め、激しく土煙が舞い上がる。銃口からは火花が散り、何隻もの軍艦が波しぶきを立てながらターンしてゆく。戦争の映像を作るために、制作現場も戦争のようになっている。最新の映像合成技術は凄まじく、リアルな戦場の映像を作り出してゆく。しかしドラマ制作の手間が減った訳ではない。コンピューターのキーを叩けば映像が生み出されるものではなく、結局は手作業だ。多くのスタッフが精魂込めて作業している。職人仕事の積み重ねで映像ができてゆく。この10年間で、撮影から放送にいたるドラマの制作環境はデジタルへと変わったが、やることは変わらない。デジタルを使ったアナログな作業だ。議論と試行と失敗とを積み重ね、現場から番組が生まれる。

音楽も同じであると思う。久石譲さんとわれわれスタッフが議論を積み重ね、できるだけ音楽イメージを共有しようとする。音楽という言葉にならないものについて話し合っている現場は、傍からはかなり滑稽に見えるかもしれない。しかし、音楽が生まれる端緒はそういう現場である。

議論の場における、われわれのある種滑稽な言葉と未完成の映像が、久石さんのもとに残される。そこからは久石さんの作曲家としての孤独な作業だ。ドラマは大勢のスタッフと出演者の共同作業によって作られるが、その中でも孤独な仕事を強いられるのが脚本家と作曲家である。しかし、その孤独な仕事から生み出されるものは素晴らしい。脚本家の原稿の一行が迫真の映像となり、作曲家のスコアは大編成のオーケストラが奏でる美しい音響となる。

第3部の音楽では、ひとつだけわがままを言った。メインテーマである「Stand Alone」を麻衣さんに歌ってほしいということである。麻衣さんは久石さんの娘さんで、3年前に「Stand Alone」のデモを聴いたときに歌っていたのが麻衣さんだった。そのときの鮮烈な印象が忘れられず、是非にとお願いした。

新しい「Stand Alone」を聴いたとき、「鎮魂の祈り」と「未来への希望」という言葉が浮かんだ。このドラマの締め括りにふさわしい音楽になった。ひとつの曲がドラマの各部ごとに変貌を遂げたというだけでなく、この3年間の社会の変化を敏感に反映しているように感じる。久石さんのマジックである。

(『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 』CDライナーノーツより)

 

 

次回は、主題歌「Stand Alone」です。

 

『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲』楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)語られたこと
(3)Stand Alone
(4)サウンドトラック
(5)組曲
(6)第1部(第一回~第五回)使用楽曲
(7)第2部(第六回~第九回)使用楽曲
(8)第3部(第十回~第十三回)使用楽曲