その時代のために作品を書き、しかも作品の価値が時代を超えることの素晴らしさがある。「ベートーヴェン:第九」と並べることで傑作際立つ「久石譲:Orbis」しかり、「ライヒ:砂漠の音楽」と並べることで存在感膨れる「久石譲:The End of the World」しかり。時空でつながるリスペクトと境地への相乗効果だ。だからこそ今一番演奏されるべきは久石譲作品であると言いたい。いまの時代のために作品を書いているのだから。
[曲目]
スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽 *Chamber version with brass *日本初演
—-intermission—-
久石譲:祈りのうた(映画『君たちはどう生きるか』より)
久石譲:The End of the World
—-encore—-
Ask me why (Pf.Solo)(大阪・東京)
One Summer’s Day (Pf.Solo)(兵庫)
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra
[参考作品]
まずは会場で配られたプログラム冊子からご紹介します。
ご来場の皆さん、作曲家で指揮もする久石譲です。
「祈りのうた2025」と題した今回のツアーは戦後80年としてのメモリアルなものになっています。日本人である僕の”The End of the World”は2001年の9.11をテーマにしていて、アメリカ人であるSteve Reichの”The Desert Music”は日本に落とされた原爆の実験場の砂漠がタイトルの意味になっています。普段は論理的な構造を好む僕でも「縁」を強く感じます。他に”祈りのうた”も用意しています。
(「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・パンフレットより)
ここからはレビューになります。
会場で配布されたプログラムには「スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽」の楽曲解説2ページ/歌詞・日本語訳詞4ページ(サウンド&ヴィジュアル・ライター 前島秀国氏 筆)と、「久石譲:祈りのうた」~「久石譲:The End of the World」の楽曲解説2ページ/歌詞・日本語訳詞2ページ(サウンド&ヴィジュアル・ライター 前島秀国氏 筆)が収められた充実した内容になっています。最新アルバム『Joe Hisaishi Conducts』のフィジカル盤(2026年3月27日発売予定/デジタル:2025年8月8日発売)が出た時にはブックレットにそのまま掲載されてほしいくらいの超重要ナビゲーターです。
音楽監督就任1年目の2025/2026シーズンでは、全ての定期演奏会でベートーヴェン交響曲と現代の音楽を組み合わせるプログラムになっています。また親子で楽しめるファミリーコンサートや、小編成アンサンブルで最先端の音楽を届ける「Joe Hisaishi presents MUSIC FUTURE with JCSO」など多彩なコンサートが開催されます。
〈JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025〉プログラムは、戦後80年を迎えた今年、原爆をもテーマにした「スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽」、9.11に影響を受けた「久石譲:The End of the World」、太平洋戦争の中を生きた映画『君たちはどう生きるか』から「祈りのうた」の三作品です。ここからひとつの大きな〈祈り〉をテーマにしていると感じます。
〈JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025〉プログラムの「砂漠の音楽」と「The End of the World」は、今年8月BBCプロムスでもロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との共演で演奏されました。久石譲初出演です!それに関連して公開されたインタビュー動画では、「砂漠の音楽」についてスティーヴ・ライヒさんから「第二次世界大戦後80年に原爆を作った国の作曲家が書いた曲を、落とされた国の作曲家・指揮者が演奏する。これはとてもある種の縁があるというか意味のあることではないか。運命を感じる」とメッセージをもらったと語っています。
I. Collapse
II. Grace of the St.Paul
III. D.e.a.d *
IV. Beyond the World ◇
Recomposed by Joe Hisaishi: The End of the World *◇
*ヴォーカル ◇合唱
2007年にニューヨークの9.11跡地を訪問したことがきっかけとなって作曲された作品です。2008年に全3楽章の組曲が誕生し、その後スタンダードナンバー「The End of the World」と自作品『DEAD』の第2楽章〈The Abyss~深淵を臨く者は・・・・~〉を組み込みながら、こちらも戦後70年にあたる2015年に全5楽章が初演されました。約40分からなる交響作品です。
2025年8月BBCプロムスでも演奏された作品です。久石譲はそのインタビュー動画でスタンダードナンバー「The End of the World」について「”あなたに愛されてなかったら世界は終わる”というラブソングだったんですが、この場合の一人称のラブソングの”あなたに”を”あなたがたに”とかそう捉えていったときに、これってとても大きい人類の曲になるんじゃないかと思って」と語っています。
さらに言うと、本公演および直前にBBCプロムスで演奏された『The End of the World』は、これまた「Recomposed by Joe Hisaishi: The End of the World」で新たな修正を聴くことができました。『Joe Hisaishi Conducts』収録の2024年ライヴ版までは、歌詞を歌う後半パートから合唱が登場しますが、今回は前半からコーラスのハーモニーが書き加えられていました。まだまだ底の知れない進化をつづける作品です。
「あの夏へ/One Summer’s Day」は、過去のあの夏へ想いを馳せることもできる。そして未来のあの夏へと強く思い描くこともできる。そこへ向かって行く意志や引き寄せる努力、つまり未来へ祈ることもできる曲だと思うのです。久石譲がこの曲をとりわけ好んでいることには、そういった時空を超えたテーマもあるのではないか(My one answer)と思っています。
組曲「World Dreams」第一楽章
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra
アンコールの会場掲示も注目すべきかもしれません。「Ask me why」ではなく「君たちはどう生きるか」とまさに言葉とおりに聴衆に投げかけています。「World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra」ではなく「組曲 第一楽章」とまたここから始まるんだということを強く示唆しているようにも感じました。(本来の組曲版は合唱編成はありません)
2025年夏、久石譲3大コンサート〈スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル〉〈オーケストラ・コンサート〉〈祈りのうた2025〉その全てのプログラムで演奏されたのは『君たちはどう生きるか』(Ask me why/祈りのうた)です。久石譲は音楽をとおして、多彩なプログラムをとおして自分はこう思うけどあなたはどう思う?と問いかけたのだと思います。そうして、これから”君たちはどう生きるか”と返された大切な夏でした。「Ask me why(〇〇の決意)」、〇〇に久石譲コンサート2025に足を運んだ人数分一人一人の名前が入ったら、それはきっととてつもない祈りのエネルギーになる。音楽は無力じゃないし、音楽家に「音楽は無力だ」とは言わせたくはない。音楽に力を持たせられるのもまた聴く人だ、と前向きな希望も持ちました。祈り、そしてさらに一歩踏み出して決意、心震える夏でした。
久石譲夏の3大コンサート完全制覇のふじかさんです。最後まで気迫と充実の漲るレポートはさすがです。作品ごとに僕もそう思う!と共感するところがあったり、The End of the World第2楽章は、まさに自分も今回改めてそのカオス感や末恐ろしさを感じたりしたから、こうやって言葉にしてくれて感謝!と思ったり。コンサートから受け取ったメッセージも同じように感じた人はいると思いますが、ちょっとしたニュアンスはやっぱり一人一人のものだから一言でも二言でも言葉にするとすっと入ってきます。
The Circlesというタイトルは、楽曲が途中から冒頭に向かって短いフレーズごとに逆行していき最後は一つの大きなリングになるためそれを表したものである。
久石譲
Joe Hisaishi:Piano Sonata
Piano Sonataはピアニストの滑川真希さん、フィルハーモニー・ド・パリ、Festival Ars Electronica、MIT Center for Art, Science & Technologyの共同委嘱で2020年の秋にフィルハーモニー・ド・パリで予定されていたコンサートのために作曲した。
Piano Sonataは1. Heavy Metal、2. Blues Invention、3. Toccataの3楽章で構成した。タイトルが示す通りリズムを重視した作曲を目指し、メインモチーフを単に繰り返すのではなく様々に変容していく構成を取った。そのため機械的な演奏になりがちなのだが、真希さんはとても情熱的でヒューマンな演奏をすることで楽曲の内在するパワーをGroove(グルーヴ)を表現した。またハーモニーではなくポリフォニックな方法をとっているためバロック音楽に近いと僕は思っている。言わば現代バロック音楽(Contemporary Baroque Music)である。
”Piano Sonataは1. Heavy Metal、2. Blues Invention、3. Toccataの3楽章で構成した。タイトルが示す通りリズムを重視した作曲を目指し、メインモチーフを単に繰り返すのではなく様々に変容していく構成を取った。そのため機械的な演奏になりがちなのだが、真希さんはとても情熱的でヒューマンな演奏をすることで楽曲の内在するパワーをGroove(グルーヴ)を表現した。またハーモニーではなくポリフォニックな方法をとっているためバロック音楽に近いと僕は思っている。言わば現代バロック音楽(Contemporary Baroque Music)である。”
The Chamber Symphony No.3
I. Symphonia
II. Invention for two voices
III. Toccata
Piano Sonata
I. Heavy Metal
II. Blues Invention
III. Toccata
第1,2楽章のタイトルがそれぞれ変わっています。バッハの有名なピアノ曲に「インヴェンションとシンフォニア」という曲集があります。インヴェンションは2声、シンフォニアは3声です。Piano Sonataだけを見ると、おそらく第1,3楽章は3声、第2楽章は2声で構成されているように聴こえました。ひとつのモチーフ(メロディ)を右手で弾き、そのあとに左手で追いかけたり(カノン)、曲が進むにつれて右と左の2声でモチーフが変容していくのがバッハのインヴェンションです。同じ構造をもっているのがII. Blues Inventionと言えるのかもしれません。そして印象的なメインモチーフがブルースのそれを連想させたりもする。全体を通してわかりやすく言うと、右手も左手もフレーズをバリバリに弾きまくり縦横無尽に手がクロスしている。一方で一般的に右手でメロディ弾いて、左手で和音を弾くのがホモフォニー(ハーモニー)です。
もう一度、久石譲の楽曲解説に戻ってみてください。”現代バロック音楽(Contemporary Baroque Music)である”とはっきり書かれていますね。曲はバッハの時代の人たちがびっくりするくらい難しいです。I. Heavy Metal ヘビメタの概念もまだないから髪の毛逆立つかもしれません。トッカータ(伊: toccata)は、【主に鍵盤楽器による、速い走句(パッセージ)や細かな音形の変化などを伴った即興的な楽曲で、技巧的な表現が特徴。(Wikipediaより)】です。
Piano Sonataの姉妹作品にあたるThe Chamber Symphony No.3は、久石譲が提唱するSingle Track Music(単旋律)の手法が使われています。その説明は「ここ数年僕は単旋律の音楽を追求しています。一つのモチーフの変化だけで楽曲を構成する方法なので、様々な楽器が演奏していたとしても、どのパートであっても同時に鳴る音は全て同じ音です(オクターヴの違いはありますが)」(久石譲)とあるとおりです。
The Chamber Symphony No.3の第2楽章は「II. Invention for two voices」です。つまりタイトルそのまま2声のインヴェンションで作られている。そこに単旋律の手法が加わることで、ある音だけ同時に複数の楽器で鳴っていたり、ドとかレとか同じ音だけどオクターヴ高いまたは低い音でこれもまた必ず同時に鳴っていたり。
バッハのインヴェンションで例えるならこういうイメージです。
単旋律の手法を使うと
Piano SonataもThe Chamber Symphony No.3も第2楽章は2声で書かれていると思います。単旋律の手法を取り入れることで複数のモチーフ(声部)があるような錯覚効果もありながら、実は上のように同じ音が重なっていてモチーフ自体は2声になることをタイトル「II. Invention for two voices」が示しています。また楽器の出し入れで楽想がカラフルになることもあってPiano Sonataの「II. Blues Invention」からくるブルースの雰囲気はなくなっていると感じました。いろいろな意図やコンセプトでタイトルが変わっているのかもしれません。
Joe Hisaishi: Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra 約20分
Joe Hisaishi: Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra (2019)
1. (00:03)
2. (07:30)
3. (10:05)
“JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE Vol.6”
October 25, 2019 at Kioi Hall, Tokyo
[world premiere]
Joe Hisaishi (condoctor)
Maki Namekawa & Dennis Russel Davies (piano duo)
Future Band (concertmaster: Tatsuo Nishie)
「Sinfonia for Chamber Orchestra」は、音楽的な意味での、例えば複合的なリズムの組み合わせであるとか、冒頭に出てくる四度、五度の要素をどこまで発展させて音楽的な建築物を作るか、ということを純粋に突き詰めた。三和音などの古典的な要素をきちんと取り入れてミニマル・ミュージックの作品にした。今回演奏する第三楽章「Divertimento」は、2009年の「久石譲Classics vol.1」で初演した曲。そのときは弦楽オーケストラだったが、その後アルバム「Minima_Rhythm」のために管楽器などを加えて再構築した。ティンパニやホルンなどが入ったので、より一層シンフォニックなニュアンスが強調された。(久石譲)
そして2025年4月、ドイツ・グラモフォンからリリースするため、ロンドンのエア・スタジオとアビー・ロード・スタジオでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と自作のSymphony No.3、そしてこのThe Boy and the Heronを組曲としてレコーディングした。その演奏やレコーディングは素晴らしく我々のチームが機能した成果である!と思っている。
「Ask me why」光の綾のようなストリングスに美しい反射光を照らす木管金管は至芸です。そしてサントラでは叶わなかったAsk me whyフルバージョンです。コンサートではピアノソロで披露された機会もありました。これまたサントラにはないピアノ&オーケストラの珠玉ピースで完成をみました。つい先日の久石譲スタジオジブリフィルムコンサートでアンコール披露された特別バージョンとおそらく同じか限りなく近いか、かな。
ジブリ交響組曲シリーズのなかで、久石譲ピアノに始まり久石譲ピアノに終わるのは「One Summer’s Day」の『千と千尋の神隠し』、「Bygone Days / il Porco Rosso」の『紅の豚』に続くものです。
tendoさんのソウル公演レポート(下に紹介)にもありましたけれど、別でシンガポール公演時の観客SNSだったかもしれませんが「The Boy and The Heron」のパート譜表紙に「Short ver.」と見つけることができました。Long ver.を聴ける日は訪れるのか?アルバムはどちらのバージョンなのか?またひとつ謎と楽しみができました。
JOE HISAISHIです。作曲・指揮・ピアノ・プロデュース。どれをとっても特別です。久石譲から生まれるメロディそしてオーケストラサウンドは格別です。流麗なストリングス、煌びやかなヴァイオリンにここぞと聴かせどころのあるヴィオラ・チェロ・コントラバス、飛び跳ねるピッツィカート、軽やかに戯れる木管、咆哮する金管に豊潤なホルン、躍動するパーカッション、メロディだじゃないキャラの立ったフレーズたち。これら全てが絡み合う音色と旋律は、鳴ってほしい音が一番ふさわしい楽器と旋律で奏でられる。こぼれそうな気品と美しさ、圧倒される絢爛な色彩効果に耳をうばわれてしまいます。これぞ久石譲の魔法です。
『A Symphonic Celebration – Music from the Studio Ghibli Films of Hayao Miyazaki』はクラシック名門のドイツ・グラモフォンからの記念すべき第一弾アルバムです。ツアーファイナルと同じ久石譲×ロイヤルフィルのロンドン録音です。アルバムジャケットには宮崎駿監督作品からの原画が使われています。
この声好きだ、素晴らしい歌唱だ、そう思った人きっといますね。パンチの効いた声量やインパクトを武器としないタイプの確かな表現力と秘めたる奥ゆかしさを感じる歌唱に惹かれます。世界ツアーなどで共演を重ね、FOC Vol.7(2024)を音源化した『Joe Hisaishi Conducts』(2025.8.8)もいよいよリリースされます。「久石譲:The End of The World」を収録しています。欲しがる相性の良さにどんなアルバムを出しているか探したほどです。これからどんどん久石譲作品と共演してほしいです。
開演10分前から会場BGMが流れはじめました。1曲目は三鷹の森美術館オリジナルBGM1「Musica del Museo」です。2001年開館に合わせて久石譲から贈られた楽曲で展示室「動きはじめの部屋」BGMにもなっています。ほか1,2曲ほど続けて流れましたが初めて聴く曲でした。いずれも慣例的に宮崎駿監督へ誕生日プレゼントした曲だと思います。勝手な想像にはなりますが、もし初めて渡した1曲目と一番新しく渡した曲という粋な演出だったら、すごいですよね。
幾度聴いても初めて聴いた時の衝動が迫ってくるもののけ姫です。まず最初に書いたという「The Demon God」(タタリ神)、一ヶ月半かけて書き下ろしたという「The Legend of Ashitaka」(アシタカせっ記)、宮崎監督の詩がふとメロディを書かせた「Princess Mononoke」(もののけ姫)、宮崎駿×久石譲凄まじい二人の鬼才を鮮やかに封じ込めています。見る者を圧倒する歴史的遺産のように聴く者を圧倒し続ける音楽です。
風立ちぬ
世界ツアーから新たに加わったプログラムです。感無量です。ピアノを弾く久石譲の後ろ姿に笑顔で視線を送りながら息を合わせた演奏をし、指揮をする久石譲に笑顔でアイコンタクトを絶やすことなく粒のきれいなマンドリンを聴かせてくれました。ジブリのヒロイン像を見ているようで、ラブでした。「A Journey (A Kingdom of Dreams)」(旅路(夢の王国))は久石譲コンサートのアンコールピースになってほしいくらい。起伏に富んだ楽想と聴き終わった後すっと心に沁み入る深い感動があります。
「Doves and the Boy」(ハトと少年)「Carrying You」(君をのせて)「The Eternal Tree of Life」(大樹)まで世界ツアー完全版を聴くことができました。ツアーファイナルのための陸・海・空の自衛隊音楽隊は最高の勲章です。巨大空間の音速すらもコントロールする鍛え抜かれたチームは誇りと威厳にまぶしすぎます。ユースコーラスと合唱もふくめて、想いを込めてたっぷりと演奏されるラピュタ、心からありがとう。オーケストラのラピュタはまたコンサートで聴けるかもしれない。このスペシャルギフトは一生に一度きり。円盤化されたときにはこの曲を抱いて眠ろう。万感の思いです。
本編全プログラムのなかで唯一フルオーケストラ・オンリーです。「Merry-go-round of Life」(人生のメリーゴーランド)のメロディが10以上のバリエーションで奏でられ心ゆくまで陶酔します。あまりに気を許してしまうと心臓まで取られかねません。映画の名シーンとリアルタイムなライブ映像も交えながら臨場感いっぱいです。ため息が出るほど美麗なオーケストラサウンドにしっかり胸に手をあて鼓動をたしかめます。
新しい世代の人たちは、学校の合唱定番曲として育ってきた人も多いと思います。また2016年フィギュアスケート羽生結弦選手が《Hope&Legacy》として久石譲の「View of Silence」と「Asian Dream Song」を合わせた曲を使用したことで輝き甦り、瞬く間に世界中のトレンドを席巻しました。新たな生命とファンを獲得した幸福な曲。
例えば、ワールドベスト盤に収録されている「Innocent」も「My Neighbour TOTORO」も「Ponyo on the Cliff by the Sea」も。それから「FOR YOU」「TWO OF US」「Tango X.T.C.」も。映画主題歌の器楽曲版とも言えますが、初めのサウンドトラックからインストゥルメンタルver.があります。ワールドベスト盤にあるのは、映画のための曲想や曲尺といった制約から解放された自身の音楽作品(ソロアルバム)や演奏会用作品へと昇華させたものたちです。