Overtone.第36回 オーロラ管弦楽団を聴く Listen to Aurora Orchestra

Posted on 2020/11/12

ふらいすとーんです。

好きなアーティストを日々追いかけていると、いろいろなものがくっついてくることがあります。そして、偶然か必然か、つながりと発見にびっくりすることがあります。

マックス・リヒターという作曲家を追っかけています。オリジナルアルバム、映画サウンドトラック、さまざまな企画やコラボレーション。そうしていくと、あるアーティストのために書き下ろした作品なんかは、マックス・リヒター名義ではないアルバムに収録されたりします。1曲のためにアルバム1枚買うのか!?、そんなささやかならぬ葛藤もありますが、買います。なぜ、マックス・リヒターは新曲を提供したのか。コラボレーションのコンセプトやアーティスト性は、全体から聴いていかないとつかめないこともあると思っています。

 

  • マックス・リヒター
  • モーツァルト交響曲の現代的アプローチ
  • ニコ・ミューリー
  • 久石譲FOCコンサート
  • 久石譲MFコンサート

 

こういったピースが、グルグルつながっていく流れを、なるべくサクサクご紹介していきます。

 

 

”2020年、マックス・リヒターが、とあるオーケストラのために、新曲を書き下ろした。”

これがすべてのきっかけです。

以下、引用します。

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世界で最もクリエイティヴなオーケストラのDGデビュー盤!

近年、急激に存在感を増しているオーロラ管弦楽団は、並外れた音楽家により構成された卓越した室内オーケストラであり、非常に高いクオリティで感動的な演奏をするばかりでなく、先駆的で斬新な様々な手法で豊かな音楽体験を提供している世界で最もクリエイティヴなオーケストラ。

『ミュージック・オブ・スフィアーズ(天球の音楽)』は、惑星の動きが、宇宙の調和(ハーモニー)を生み出すという古代ギリシャの数学的な概念に基づいています。当アルバムのために特別に委嘱されたマックス・リヒターの新作『ジャーニー(CP1919)』は、最初に発見されたパルサー「CP1919」に触発されて作曲されました(注:パルサーはパルス状の可視光線、電波、X線などを発生する天体で、超新星爆発後に残った中性子星と考えられています)。 この作品は、古代ギリシャの天文学者が惑星の軌道を説明するために使用した数学的な比率によって支配されたリズムを使用して、オーロラ管弦楽団が暗譜で演奏することも取り入れて作曲されています。

出典:HMV|コロン&オーロラ管/モーツァルト:交響曲第41番『ジュピター』、他
https://www.hmv.co.jp/news/article/2007271007/

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マックス・リヒター作曲「ジャーニー(CP1919)」の説明文は、なんとも難解な印象を受けますが、約9分半の作品、とっても神秘的で浮遊的、心とからだの瞑想っといった感じです。落ちつきます。弦楽合奏とシンセサイザー低音、複数のパターン・モチーフが交錯します。マックス・リヒター公式にティーザー動画が公開されています。

 

Max Richter – Journey (CP 1919) Teaser (約1分)

from Max Richter Music YouTube

 

ここまでなら、マックス・リヒターのコレクションとして終わりますが、このアルバムはそれだけではありませんでした。

 

 

メインとして収録された「モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551《ジュピター》」を聴いてびっくりしました。久石譲FOC(フューチャー・オーケストラ・クラシックス)が演奏してるのか!? と思うほど、キレッキレのモーツァルト。古典クラシック音楽の最高峰ともいわれる交響曲、こんなに現代的な演奏が聴けるなんて。堂々として風格のある往年の名盤たちとは一線を画する、風の吹き抜けるような響き。久石譲FOCのベートーヴェン交響曲やブラームス交響曲と同じような印象をうけます。

その後見つけた2つの公式動画で、さらに納得しました。

 

Mozart’s Jupiter Symphony from memory – Aurora Orchestra (約2分半)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

立奏スタイル、室内オーケストラ編成(規模の小さいオーケストラ)。さらに、彼らは交響曲を暗譜、アルバムはセッション録音です。

 

 

Aurora Orchestra – ‘Music of the Spheres’ Trailer (約5分半)

from ドイツ・グラモフォン公式YouTube

 

トレーラー動画のほうは、アルバム収録曲すべて紹介され、そこにはマックス・リヒターやニコ・ミューリーまでも登場します。ニコ・ミューリーという作曲家は、このオーロラ管弦楽団と深いつながりがあり、本作では一曲編曲を担当してます。

 

 

『ミュージック・オブ・スフィアーズ(天球の音楽)』/オーロラ管弦楽団 (2020)

【収録情報】
1. モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551『ジュピター』
2. マックス・リヒター: ジャーニー(CP1919)
3. ダウランド/ニコ・ミューリー編:時は立ち止まり
4. アデス:ヴァイオリン協奏曲 Op.24『同心の道』
5. デヴィッド・ボウイ/ジョン・バーバー編:火星の生活

 ペッカ・クーシスト(ヴァイオリン:4)
 イェスティン・デイヴィス(カウンターテナー:3)
 サム・スワロー(ピアノ、ヴォーカル:5)
 オーロラ管弦楽団
 ニコラス・コロン(指揮)

 

Music of the Spheres / Aurora Orchestra (2020)

1 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 1. Allegro vivace 11:29
2 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 2. Andante cantabile 10:17
3 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 3. Menuetto. Allegretto. Trio 4:10
4 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 4. Molto allegro 8:21
5 Richter: Journey (CP1919) 9:31
6 Dowland: Third Booke of Songs, 1603 – 2. Time Stands Still (Arr. Muhly) 3:42
7 Adès: Violin Concerto “Concentric Paths” – 1. Rings 3:53
8 Adès: Violin Concerto “Concentric Paths” – 2. Paths 9:57
9 Adès: Violin Concerto “Concentric Paths” – 3. Rounds 4:39
10 Bowie: Life on Mars? (Arr. Barber) 3:41

Deutsche Grammophon (DG)

 

 

久石譲は、2016年から新しい取り組みとして、ベートーヴェン交響曲を演奏・録音し、2019年度第57回レコード・アカデミー賞特別部門特別賞を受賞するなど、指揮者としてもさらなる注目を集めています。そして2019年からはブラームス交響曲を演奏・録音するプロジェクトがスタートしています。ブラームスからは、立奏スタイルを採用しています。それぞれ詳しいことは、紐解いてみてください。

 

 

 

 

オーロラ管弦楽団の過去作を見てみると、ニコ・ミューリー名義のアルバムで録音を残しています。マックス・リヒター同様、オーロラ管弦楽団が作曲家に委嘱したその作品は「Seeing Is Believing」。

実はこの曲、久石譲の新しいコンサートシリーズ「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.1」コンサート(2014)で披露された、エレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーした約25分の作品です。

さらには、翌年「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.2」コンサートで、久石譲は触発されたようにエレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーした作品を新たに書き下ろし初演しました。また同プログラムでは「ジョン・アダムズ:室内交響曲」も披露していますが、オーロラ管弦楽団も同作を録音・演奏しています。

 

すごいつながりかたですね!

ちょっと整理しますね。

 

Seeing Is Believing / Nico Muhly (2011)

 

「ニコ・ミューリー:Seeing Is Believing」や「ジョン・アダムズ:室内交響曲」をプログラムした2011年コンサート公式動画。

Nico Muhly: Seeing is Believing (約1時間)

from Aurora Orchestra YouTube

 

「久石譲:エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための 室内交響曲」、「ジョン・アダムズ:室内交響曲」収録

 

「久石譲:エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための 室内交響曲」抜粋、2015年コンサート公式動画。

Joe Hisaishi : Chamber Symphony (selections) (約8分)

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

 

すごいつながりかたですね!

久石譲がオーロラ管弦楽団の音楽活動をなぞっている、もちろんそんなことではありません。大切なのは、《現代(いま)の音楽》を発信する、演奏する、というスタンスが共鳴していることです。だからこそ、偶然か必然か、つながってくるものがある。

もうひとつ大きなポイントは、久石譲もオーロラ管弦楽団も、古典クラシック音楽も現代音楽も、どちらも並べて演奏・録音しているというところです。言い換えれば、現代的アプローチで古典作品も現代作品も演奏している。この共通点からくる、音楽的表現や響きは大きいと思います。

だから、オーロラ管弦楽団のモーツァルト交響曲を聴いて、久石譲FOCが演奏しているのかと思うくらいな印象をうけ、それは同時に、もし久石譲FOCがモーツァルト交響曲を演奏したらこうなるんだろうなあという、想像する楽しみ方すらあります。

 

  • マックス・リヒター
  • モーツァルト交響曲の現代的アプローチ
  • ニコ・ミューリー
  • 久石譲FOCコンサート
  • 久石譲MFコンサート

 

グルグルつながることが、サクサク伝わったならうれしいです。

 

 

オーロラ管弦楽団は、コロナ禍の今、2020年9月に再開されたイギリスBBCプロムスでの無観客演奏で「ベートーヴェン 交響曲 第7番」を披露。少数精鋭な室内オーケストラ編成と立奏スタイル、さらに距離を大きくとったステージながら、躍動した大迫力な演奏に驚きます。

 

Aurora Orchestra performs Beethoven 7 at the BBC Proms (約1分半)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

 

また、ロンドンのキングス・クロス駅での屋外演奏も。日本でも、少しずつオーケストラの演奏活動がいろんな場所で増えていったらいいですね。

 

First symphony since lockdown at Kings Cross (約2分)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

 

なんでイギリス音楽って、聴いてすぐイギリスってわかっちゃうんだろう。気品漂い、はたまた、牧歌的な香り。1枚とおして心地よい。けっこうお気に入りの、とっておきのアルバムです。オーロラ管弦楽団を紐解いているなかで、みつけた宝物です。

 

Introit: The Music of Gerald Finzi / Aurora Orchestra (2016)

 

 

久石さんの音楽も、どこかアイルランド的だったりしますよね。久石メロディを感じさせるというよりは、なんだかDNA的におちつくような安心感。

たとえば1曲目♪

Finzi: Lo, the full, final sacrifice, Op.26 – Amen (Instrumental) (約2分半)

 

フィンジというイギリス作曲家の楽曲を集めているアルバムです。おそらく合唱曲などを器楽版にしたものもあるのかな、きれいで親しみやすい旋律にうっとりします。もし気に入ったら1枚とおして聴いてみてください。おすすめです。

 

・・・

いろいろとフィンジを聴きあさっていったら。この曲、なんと14分近くある合唱曲のエンディングにだけ聴けるひと旋律を器楽版にアレンジしたものだったんです。オーロラ管弦楽団の選曲とセンスが光ります。原曲は下、13:10-。

 

Lo, the Full, Final Sacrifice, Op. 26 (約14分)

 

ほかにも。

オーロラ管弦楽団のインストゥルメンタル版。

Finzi: Clear and gentle stream, Op.17, No.4 (Instrumental) (約4分半)

 

原曲の合唱版。

7 Partsongs, Op. 17: 7 Unaccompanied Partsongs, Op. 17: No. 4. Clear and gentle stream (約4分)

 

とまらなくなるので、フィンジについては、またいつか。原曲2曲と少し聴き比べてもらっただけでも、オーロラ管弦楽団のこのフィンジアルバム「Introit: The Music of Gerald Finzi / Aurora Orchestra (2016)」のおすすめ度が伝わるなら、うれしいです。

 

 

最後に。

2020年12月23日開催予定「久石譲コンサート 2020 in ザ・シンフォニーホール」では、モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」がプログラムされています。日本センチュリー交響楽団との共演です。久石譲FOCの編成とは異なりますが、指揮者久石譲のアプローチは、オーロラ管弦楽団に近いものではないかと期待できます。

ぜひ楽しく予習したい人は、『ミュージック・オブ・スフィアーズ(天球の音楽)』/オーロラ管弦楽団 (2020)を手にとってみてください。

ぜひ楽しく予習したい人は、オーロラ管弦楽団のステージ動画もどうぞ。約1時間におよぶこの動画では、楽しいレクチャーコーナーが演奏前にあって(11:00-)、第4楽章のモーツァルトの天才的な交錯するモチーフたち、その聴きどころをわかりやすく分解して、やさしく紹介してくれます(13:00-23:00)。こんなふうになってるんだあ、楽しいです。2016年のパフォーマンスですが、2020年10月つい先日に公式公開されたホヤホヤです。

 

Mozart’s Jupiter from memory at the BBC Proms – Aurora Orchestra – Complete performance (約1時間)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

 

 

 

それではまた。

 

reverb.
今回紹介したのは、オーロラ管弦楽団のアルバム2枚です♪

 

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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“Overtone.第36回 オーロラ管弦楽団を聴く Listen to Aurora Orchestra” への2件の返信

  1. 악보 없이 연주를 한다니 놀랍네요. 연습할 때 남긴 메모까지 모두 외워 연주해야할테니까요. 히사이시조의 프로그램과도 많이 겹치고 고전과 현대음악을 함께 연주한다는 점도 비슷하니 신기하네요.

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