第13回:「メッセージを乗せたいんだ」

連載 久石譲が挑む「ハウル」の動く音 (読売新聞)
第13回:「メッセージを乗せたいんだ」

「時代に流され、ささくれ立ってしまった人々の心が、人間本来の温かさを取り戻すために何ができるのか。その答えがここにあるかもしれない」──。

2004年4月6日。久石譲は新プロジェクトを発表した。新日本フィルハーモニー交響楽団と組むポップス・オーケストラ「ワールド・ドリーム・オーケストラ」だ。

コンサートや録音での共演を通じて、互いに「何か一緒にやろう」と盛り上がり、今回のプロジェクトが実現した。

新日本フィルは1972年、指揮者の小澤征爾のもと、楽員による自主運営のオーケストラとして創立。ロックバンドのディープ・パープルと共演するなど、企画力には定評がある。97年より東京・墨田区の「すみだトリフォニーホール」を活動の拠点とし、日本で初めて本格的なフランチャイズを導入したことでも話題となった。

宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」(2001年)では、サウンドトラックの演奏を担当。「ハウルの動く城」でも参加が決まり、久石の信頼も厚い。「ポップスに対するセンスがよく、心から尊敬できるオーケストラ。一緒にできるのは、嬉しいこと」

この新しいオーケストラを、どんなものにするか。

プロジェクトの準備を進める過程で、久石にある思いが浮かぶ。「単なるポップス・オーケストラにするのではなく、何か新しい働きかけをすべきではないか」

そんな思いを抱きながら、1つの曲が書き下ろされた。祝典序曲となった「WORLD DREAMS」だ。

「夢や希望をテーマにしたこの曲が生まれたことで、このオーケストラの活動そのものに社会的意義があると確信できた」と久石は語る。

「僕たちをポップス・オーケストラと呼んでもらって構わない。ただ、アイスクリームみたいに口当たりはいいが何も残らない音楽ではなく、そこにメッセージを乗せたいんだ」

久石は自ら音楽監督を務め、6月にアルバムを出すほか、7月から始まるツアーは指揮も担当する。「もちろん、音楽的な完成も大切な目標。任期が終わる3年後には、米のボストン・ポップスを超えたい」という熱の入れようだ。

クラシックでもポップスでもない、新たなオーケストラを生むことができるのか。そして、久石が託したメッセージは届くのか。その答えは、皆さんの耳が確かめることになる。(依田謙一)

(2004年4月8日 読売新聞)

 

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