Disc. 久石譲 『MAZDA BGM 〜Heart of Mazda〜』 *Unreleased

2011年6月1日~2012年5月31日 CM放送

 

MAZDAグローバルブランドキャンペーン
オリジナルCM音楽ならびにオリジナルムービー用音楽

MAZDA「SKYACTIVE TECHNOLOGY」ショート・フィルム音楽
監督:李相日
音楽:久石譲

レコーディング:2011年4月、Bunkamuraスタジオ

 

 

CM音楽は30秒程度、ピアノの軽快かつ綺麗なメロディーにストリングやマリンバなどが小刻みにリズムを刻んでいる。開発者、関係者、技術者のインタビュー・エピソードからなるオリジナルムービーは社内用・販促用だろうか。

オリジナルムービー内のBGMでは同曲をモチーフに展開されている。メロディーがチェロ、フルート、オーボエ、ピッチカートなどいろんなバリエーションで登場し、そしてピアノもCM版とは異なるしっとりと美しい調べとなっている。

一方でCM版よりもリズミカルなストリングの軽快なバリエーションもある。またテーマ曲に沿った別のBGMを聴くことができる。

CD化されていない未発売曲。

 

JASRAC登録 M1~M14

 

 

mazda heart of mazda マツダ

 

Disc. 久石譲 『明日の翼』 *Unreleased

久石譲 JALテーマ曲 『明日の翼』

2011年5月 TVCM放送

 

JALのテーマ曲として書かれた『明日(あした)の翼』。「明日の空へ、日本の翼」というキャッチコピーのもとTVCMでも流れる。JAL航空機の「ご搭乗時ウェルカムビデオ」という機内映像など、JAL機内でのBGMとして聴くことができる。

 

フルオーケストラ編成の壮大なアレンジとなっているヴァージョン(3分16秒)と、「ご搭乗時ウエルカムビデオ」BGMなどに使われている小編成ヴァージョン(3分30秒)がある。後者はピアノなどを基調としたヴァイオリンやフルートがメロディーを展開していくもので、ギターやエスニックパーカッションも加えられている。レコーディングもオーケストラ版とは分けて期間をあけて追加制作されている(2011年12月17日)。

 

こちらはJAL公式ホームページでも映像作品として視聴できる。 (※2013年5月現在)
こちら ⇒ JAL – 明日の空へ、日本の翼 (※2016年10月終了)

 

こちらはピアノを基調とした「ご搭乗時ウェルカムビデオ ver.」(※公開終了)

 

 

ワールド・ドリーム・オーケストラの『World Dreams』、NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」のメインテーマ『Stand Alone』、日清カップヌードルCM曲『Adventure of Dreams』などにも通じる、壮大な、格式高い、序曲のような、とても美しいメロディーの楽曲。

ぜひどのヴァージョンもふくめCD化してほしい作品。

 

 

2024.01.24 update

JAL国内線・国際線の全路線で降機時に上映する「降機用ビデオ」が12年ぶりにリニューアル!

新しいビデオには、日本各地で活躍する文化や技術の担い手を中心に起用。繊細な技術や所作といった“人”を核として捉えた構成で、日本らしさやJALらしさを表現したという。音楽は作曲家の久石譲さん作曲「明日の翼」をこれまでと同じく採用した。

 

images from JAL’s now 【公式】 X

 

 

久石譲 JALテーマ曲 『明日の翼』

 

Disc. 久石譲 『LIFE』 *Unreleased

2010年5月 TVCM放送

 

中部電力 CM音楽「LIFE」

2010年5月より、中部地区限定にて放送

「CO2を出さない」という事実篇
「安定供給できる」という事実篇

ピアノとオーケストラによる、格式ある上品な曲。

未発売曲であり、未CD化作品。

 

30秒CMのため、楽曲も30秒でフェイドアウトするが、実際は45秒程度作られている。またこのCM用には2バージョン用意されていた。違いはアタマの数小節、ひとつはピアノのメロディのみから始まるバージョンで、もうひとつはそのピアノにクラリネット音色も加えたバージョン。レコーディングの段階で、CM前半にナレーションを乗せるかどうかがまだ決まっていなかったため2タイプ用意される。最終的に選ばれたのはピアノとクラリネットのバージョンで、CMの前半約15秒は音楽を聴かせたいという中部電力の希望によるものである。

 

 

また、2011年5月1日「中部電力 創立60周年謝恩コンサート「LIFE」久石譲コンサートが企画され、ここでコンサート初お披露目の予定であったが、事情により公演中止となった。

 

 

Disc. 久石譲 『Another Piano Stories ~The End of the World~』

久石譲 『Another Piano Stories』

2009年2月18日 CD発売
CD+DVD(初回限定盤)UMCK-9260
CD(通常盤)UMCK-1294

 

あのPiano Storiesから新たな物語が生まれる。話題の楽曲から新曲までを全新録にて収録。久石譲のピアノはもとより、12名のチェリスト、2台のハープ、コントラバス、マリンバ、パーカッション編成で魅了したコンサートツアーを元に新たにレコーディングされたアルバム。

 

 

【楽曲解説】

1. Woman
婦人服ブランド「レリアン」のCMテーマ曲として作曲。今作品はヨーロピアンテイストをそのままに新たな作品に仕上げた。マリンバの軽快なリズムや、ピアノとハープの織り成す旋律によってますます華やかさと洗練された都会のイメージをまとい、凛とした力強さが加わった。”欧州の街並みを背に、颯爽と歩く現代の女性像”を想起させる楽曲である。

補足)
CMに使用されたオリジナルバージョンは、オリジナル・アルバム『Asian X.T.C.』(2008)のボーナストラックとして収録されている。オリジナル版「Woman ~Next Stage~」では旋律をバンドネオンが奏でている。

 

2. Love Theme of Taewangsashingi
韓国ドラマ『太王四神記』より、スジニのテーマを書き直した。若き聡明な王が真の王へと成長する一大叙事詩の愛のモティーフとして描かれている。前世の夫であった王に恋心を抱くスジニの切ない想いをのせ、恋の行方を暗示するがごとく、哀しくも美しいメロディーが印象的である。

補足)
同作品オリジナル・サウンドトラック(2007)では、フルオーケストラ・バージョンやピアノ・ソロ、そしてシンセサイザーを絡めた神秘的なバージョンまで、多彩なアレンジにてひたることができる。それだけこのドラマ作品において重要な役割を果たしている楽曲であることがわかる。

 

3. Les Aventuriers
男女3人の愛と友情の物語、アラン・ドロン出演の仏映画『冒険者たち』(1967年)にインスピレーションを受けて作られた楽曲。冒険ならではの昴揚感と緊張感を味わえるこの曲は、久石のお気に入りでもある。5拍子が生み出す攻撃的なビートと、メロディアスな主題が交錯しながらエンディングへとなだれ込む、スリル満載な楽曲。

補足)
オリジナル版は『Piano Stories II』(1996)に収録されている。サクソフォンによる旋律、隠し味としてシンセサイザーも効果的に使われている。ノンタイアップの楽曲にもかかわらずオリジナルから13年を経てリメイクされるという稀な楽曲。楽曲解説中の「久石譲お気に入り」というのもうなずける。

 

4-6. Departures
2008年秋に公開され、モントリオール世界映画祭グランプリにも輝いた映画『おくりびと』のサウンドトラックから複数のモティーフを抜粋し、約14分の組曲に再構築。元チェリストが主人公であるこの映画と、チェロ楽曲の構想を温めていた久石が運命的に出会った。チェロの音域の広さと表現力の豊かさを最大限に活かし、主人公の心の揺れ動くままに、激しく、やさしく、時にコミカルに様々な表情を見せる。ソロチェリストとしてサウンドトラック同様、東京都交響楽団首席チェロ奏者の古川展生氏が優しくも力強く奏でている。

 

7. Ponyo on the Cliff by the Sea
2008年、日本全国に”ポニョ旋風”を巻き起こした映画『崖の上のポニョ』より、弦楽器のピッチカートが特徴的な小品。”ポニョ”のテーマが次々と様相を変えて引き継がれていく。各々の楽器の特性を知り尽くした久石ならではの手法によって、可愛らしくも爽やかな余韻をもたらしてくれる。

 

8. Destiny of Us (from Musical Turandot)
祝祭音楽劇『トゥーランドット』から、二重唱「運命は遠い日の約束」をインストゥルメンタル作品へと書きかえた。トゥーランドットとカラフが愛を交わし合う場面で、物語のクライマックスを盛り上げる。本作品にはアコースティック・ギターが参加し、他トラックとは一味違う趣向を楽しめる。

補足)
同作品は舞台上演でのみ聴くことができた、サウンドトラックも発売されていない作品である。よってここに収録されたアレンジ版でこそあれ、貴重な収録となっている。舞台を収めたDVDは発売されている。

 

9-12. The End of the World
2007年秋、ニューヨークを訪れた久石が見たものは、グランド・ゼロに向けられた人々の悲しみと祈りであった。

全4楽章から成るこの組曲は、当初「After 9.11」と名付けられていた。アメリカ同時多発テロを契機に世界の秩序の崩壊と価値観の変遷に危惧を抱いた久石が、今の時代にこそ遺さねばならない作品として書き上げた渾身の一作。世界に拡がる不安と混沌をテーマに描いた、ミニマル作曲家・久石譲の真骨頂が味わえる。

第1楽章の「Collapse」は、グランド・ゼロに着想を得て作られた。冒頭から絶えず打ち鳴らされるピアノのリズムは、後の全楽章に通ずる主要動機となり、強烈なメッセージを投げかけ続ける。チェロやハープ、マリンバのアンサンブルが主要動機と複雑に絡み合い、焦点の定まらない危うさを醸し出している。

グランド・ゼロに程近いセント・ポール教会の名を称した、第2楽章「Grace of the St. Paul」は、人々の嘆きや祈り、悲しみを題材としている。チェロソロのイスラム的なメロディーとティンパニの主要動機による対話から始まる。一転してコントラバス、ピアノ、ヴィブラフォンによるジャジーなメロディーは、調性の定まらない浮遊感を漂わせる。

第3楽章「Beyond the World」は、人々の不安や悲哀が極限まで膨張する様を描くが、同時に人間の持つ混沌としたエネルギーに対する肯定的ない見も含まれている。8分の11拍子の複雑かつ緻密に関わり合うパッセージは、常に緊迫感を持ち大きな渦となって膨らみ続ける。我々の住む世界の”向こう側”には何があるのだろうか…。コンサートツアーの後に、第4楽章「The End of The World」が付け加えられ組曲として完結。ジュリー・ロンドンの歌ったスタンダードナンバー「The end of the world」に深く感銘を受けた久石が、”あなたがいなければ世界は終わる”と歌ったラブソングを甦らせた。原詞の”you”を複数形の”あなたたち”と捉え、現代社会に強いメッセージを投げかけている。

人々の悲哀や嘆きを表しつつも、混沌とした世界の中で、力強く生きなければならない、と未来へ向けての祈りと明るいメッセージが込められている。

補足)
第4楽章にて同名スタンダードナンバーのボーカルは久石譲本人である。

この作品は間をおかずして、約半年後オリジナル・アルバム『ミニマリズム』(2009)にも収録されている。そこではオリジナルのアコースティック編成では表現できなかったと言わんばかりに、爆発するほどに解き放たけたフルオーケストラサウンドとして昇華されている。第1-3楽章までが再構築されている。ミニマルシンフォニーの大作であり、現代音楽家久石譲の芸術作品として少なくない部分を占めるエポック的作品である。

 

13. I’d rather be a Shellfish
映画『私は貝になりたい』のメインテーマ。戦争に翻弄される家族の悲劇を、ワルツの使用によって、格調高く荘厳さを持ち合わせた楽曲へと昇華させた。ドラマの壮絶な人生と絶望的な結末に相反して、音楽は人間的な優しさや愛に溢れた世界観を表現している。本作品唯一のピアノソロ。

 

14. I will be
日産スカイラインのCMテーマ曲「I will be」が、満を持して登場。娘である麻衣が作詞と歌唱で参加。その透き通った歌声は、明らかに独自の世界観を示している。16ビートによる心地よいグルーヴ感に、突如現れる8分の11拍子が絶妙な緊張感をもたらす。ミニマル作曲家久石ならではのポップスチューンだ。

(Wonder City : 本多哲子)

(【楽曲解説】 ~CDライナーノーツより)

 

補足)は追記するかたちで併記させてもらった。

 

 

 

「今回のツアーのように12人いる場合、弦4部と捉えて4パートに分けると1パートが3人ずつ。でも、この3人というのが鬼門で、8つの和音を各パートに2音ずつ振り分けると、どうしても1人ずつ余ってしまうんです。この通常の書き方が通用せずに、やはり難しくて、どうしよう!困った!……と(笑)。これでは、あまりにも難しい書き方になってしまうので、悩んだ挙句、自分の解決策として、4人1組のチェロ”カルテット”が3組あるという考え方に辿り着いたんです。要するに、第1カルテット、第2カルテット、第3カルテットという発想で書くことによって、全く違う動きをもたせることが出来るようになった。その上で、一人一人の奏者が更に独立したり共同したりという様々な動きを見せることによって、タペストリーのように非常に細かい動きを出していこうと思ったんです。」

「やはり、前回よりも更に進化している必要がありますよね。普通、大規模なオーケストラでないとハープ2台は使わないと思うんですが、そこを敢えてこの小さい編成で取り入れ、マリンバ、ティンパニまで入ったパーカッションが2人と、そしてコントラバスを付け加え、全く新しい編成で、世界にもないスタイルでの挑戦です。」

「この曲(「The End of the World」)は、もう本当に一言で表わせば、「After 9.11」ということなんです。「9.11(アメリカ同時多発テロ)」以降の世界の価値観の変遷と、その中で、政治も経済もそこで生きている人々も、今の時代は、どこを向いてどう頑張っていけばいいのか分からなくなってしまっているんじゃないかと、最近とみに考えるようになって。今年はたくさんの作品や映画音楽を書かせていただき、監督たちとコラボレーションすることで自分を発見する楽しい作業に数多く恵まれましたが、それとは対極の、ミニマル作曲家である本来の人という立場から、自身を見つめる時期も必要であると。そして、今回の限られたわずかな時間しかない中でも、どうしてもつくらなければならないと、個人的な使命感にも似た感覚を強く感じて、書いた作品なんです。」

「実は、直前まで決定するのに苦しんでいて、やっと「The End of the World」というタイトルに決まったんです。この「The End of the World」には同名のスタンダード曲も存在して、「あなたがいないと私の世界が終わる」というような意味のラブソングです。でも、この曲のあなたを複数形でとらえ、あなたたちが存在していなければ、世界は終わってしまうといった、もっと広い意味で捉えると、たぶん今、僕が考えている世界観にとても近いんじゃないかと感じて、敢えてこの同じタイトルを用いた理由です。楽曲は、1楽章は4分の6拍子から始まり、最終楽章が8分の11拍子という、大変難しい曲。おまけに、絶えずピアノが鳴らす基本リズムがあり、それに他の楽器が絡み合う、本当に”世界のカオス”、まさに”混沌”を表現するような、アンサンブル自体がカオスになってしまうんじゃないかというくらいの難曲になってしまいました。」

「これは(「Departures」)、映画「おくりびと」のために書いた楽曲を、今回、約14分の組曲風に仕立て上げました。どちらかというとこちらの新作は、精神的な癒し、あるいは究極の安らぎをテーマにした楽曲でもあるんです。」

Blog. 「久石譲 ~Piano Stories 2008~」 コンサート・パンフレット より

 

 

「このアルバムは、どちらかというと、自分のために作った。プロなので商業的視点も必要なんだが、ヒット作だけでまとめるのは苦痛を伴う」と久石。「『ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』を入れようと決心した時から、この作品は『アナザー(別物)』にしようと思った」

「『おくりびと』はもとより『ポニョ』も、実は死を描いているんですよ。『死』は僕にとっても最も大きなテーマ。人間にとっても最大の問題だと思う。そこを見つめないと、生きるってことがわからない」

Info. 2009/03/09 久石譲:アルバム「アナザー・ピアノ・ストーリーズ」発表 (毎日jpより) 抜粋)

 

 

 

 

本作品に先駆けて開催されたコンサート・ツアー『Joe Hisaishi Concert Tour ~Piano Stories 2008~』にて収録作品が多数披露されている。同コンサートから半年後にCD発売されたのが本作品である。コンサートとCDともに楽器編成も同じ。

同コンサート・ツアー期間中の空き日2008年10月21日、22日に東京の第一生命ホールにてレコーディングの一部が行われている。この時には「The End of The World」「Departures」「Woman」「Les Aventuriers」等が録音されている。また12月に追加レコーディング、ツアーでは演奏していなかった楽曲の録音が行われている。

本作品化に先駆けて行われたコンサートツアーのパンフレットにて、本作品を紐解く久石譲インタビューが収められている。なおその内容は、初回盤限定DVDに収録された久石譲インタビュー内容とも大きく関連している。

 

 

日産スカイランCM曲「I will be」については、本作収録バージョンよりも前の、2006年版がある。

 

 

 

 

久石譲 『Anoter Piano Stories』

1.Woman (「レリアン」CMソング~)
2.Love Theme of Taewangsashingi (韓国ドラマ「太王四神記」より)
3.Les Aventuriers

Departures (映画「おくりびと」より)
4.Prologue~Theme
5.Prayer
6.Theme of Departures

7.Ponyo on the Cliff by the Sea (映画「崖の上のポニョ」より)
8.Destiny of Us (from Musical Turandot) (舞台「祝典音楽劇 トゥーランドット」より)

The End of the World
9. I.Collapse
10. II.Grace of the St.Paul
11. III.Beyond the World
12. IV.The End of the World

Bonus Tracks
13.I’d rather be a Shellfish (映画「私は貝になりたい」より)
14.I will be (日産「スカイライン」CMソング)

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Piano by Joe Hisaishi

(M-12 Music Arranged and Produced by Joe Hisaishi)

Performed by
12 Special Violoncello / Contrabass / Marimba / Percussion / 2 Harp / A.Guitar

Recorded at
DAI-ICHI SEIMEI HALL , Victor Studio , Wonder Station

Mixed at ON AIR AZABU STUDIO

「I will be」
Vocal:Mai Piano:Joe Hisaishi
Lyrics:Mai

 

≪DVD≫ ※初回限定盤
Another Piano Stories ~The End of the World~
レコーディング風景
【収録曲】
・The End of the World ~I. Collapes~
・Woman
・Departures ~Theme of Departures~
・Ponyo on the Cliff by the Sea
・Oriental Wind  ※DVDのみ収録

・久石譲 Interview

 

 

The End of the World
Vocal: Joe Hisaishi
M-12 Music Arranged and Produced by Joe Hisaishi,
Words by Sylvia Dee, Music by Arthur Kent

I will be

Vocal: Mai Piano: Joe Hisaishi
Lyrics: Mai
Drums: Yuichi Tokashiki E.Bass: Yoshinobu Takeshita E.Guitar: Nozomi Furukawa
Piano: Ichiro Nagata Latin Percussion: Motoya Hamaguchi
A.Saxophone: Takahiro Nishio, Kazuyuki Hayashida Strings: Kimata Group

12 Special Violoncello

Ludovit Kanta (Solo Concertmaster)
Nobuo Furukawa (Departures Solo)
Yumiko Morooka (12 Vc Inspector)
Akina Karasawa
Mikio Unno
Eiichiro Nakada
Yutaka Hayashi (M-2, M-8)
Robin Dupuy
Mikiko Mimori
Shigeo Horiuchi
Eiko Onuki
Takayoshi Sakurai
Keiko Daito

Contrabass

Igor Spallati
Jun Saito (M-2, M-8)

Marimba, Percussion

Momoko Kamiya
Reiko Komatsu

Harp

Yuko Taguchi
Micol Picchioni

A. Guitar

Masayuki Chiyo (M-8)

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Piano by Joe Hisaishi (M-12 Music Arranged and Produced by Joe Hisaishi)

Directors:
Masayoshi Okawa (Bic-River)
Suminobu Hamada (Wonder Station)

Recording & Mixing Engineers:
Suminobu Hamada (Wonder Station)
Hiroyuki Akita (Wonder Station)
Recorded at
DAI-ICHI SEIMEI HALL,
Victor Studio, Wonder Station
Mixed at ON AIR AZABU STUDIO
Manipulator: Yasuhiro Maeda (Wonder City, Inc.)
Assistant Engineers:
Masashi Okada (SCI)
Takahiro Okubo (Victor Studio)
Masahito Komori (Bunkamura Studio)
Toshiyuki Takahashi, Akihiro Tabuchi (Wonder Station)
Hitomi Joko, Mari Shinohara (ON AIR AZABU STUDIO)
Mastering Engineer: Hiroyuki Hosaka (H2 Mastering)

 

Disc. 久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

2008年4月16日 CD発売 UPCI-1080
2018年4月25日 LP発売 UMJK-9075/6

 

’88年に第一弾をリリースして以来 Piano Stories シリーズの4枚から、久石譲が自らセレクトした本格ベストアルバム。

映画、CM、ジブリ作品等に使われた名曲の数々がピアノ&ストリングスによるアレンジでより美しく輝きを放つ。久石譲の入門編としても親しみやすく、ファンの間でも名盤として評価の高い作品。

 

 

久石譲 『PIANO STORIES BEST ’88-’08』 に寄せて

この『Piano Stories Best ’88-’08』に収録された楽曲は、久石が折に触れて発表してきたソロ・アルバム・シリーズ『PIANO STORIES』全4枚の中からセレクションされた楽曲と、ピアノ・ソロとしては今回が初収録となる未発表音源「人生のメリーゴーランド」を加えた構成となっている。1枚目のアルバム『Piano Stories』が発表されたのが1988年だから、今年でちょうど20年。その20年という時間の流れの中で、久石という音楽家が歩んできた「Histories=歴史」つまり「His Story=彼(久石)の物語」が語られてきたのであり、また、彼の音楽に接し続けてきた我々自身の「歴史=物語」が語られてきたわけである。

このアルバムに収録されている楽曲の多くは、これまで久石が手がけてきた映像音楽(映画音楽やCM、テレビ音楽)の代表作を中心に、久石自身がソロ・アルバム用にアレンジし直した=ピアノで語り直したものである。だからといって、これが単なる久石の「映像音楽集」というかというと、実はそうではない。いささか逆説めいた言い方になるが、久石の音楽は映像音楽であって、映像音楽ではないのである。このことを、少し細かく見てみたい。

宮崎作品での方法論が典型なのだが、久石は具体的な映像を見る前から音楽的構想を組み立てていく作曲家である。誤解を恐れずに書けば、久石は特定の”映像”に音楽を付けているわけではない。「僕の映画音楽の作り方というのは、監督の作りたい世界を根底に置いて、そこからイメージを組み立てていく」という久石の言葉に端的に表れているように、あくまでも久石は映画やテレビ番組の”世界観”に音楽を付けているのである。だからこそ、作品の世界観を出発点として生まれた音楽を、繰り返しアレンジする自由も生まれてくる。

久石にとって、映像作品の完成は、即、音楽の完成とはならない。現代音楽の用語を用いれば、久石の映像音楽は常に”ワーク・イン・プログレス”なのである。ソロ・アルバム『PIANO STORIES』のシリーズは、ある映像の世界観をきっかけにして生まれた久石の音楽を「ピアノで語り直した物語」なのだ。

言うまでもなく、ピアノは作曲家・久石譲のアイデンティティと密接に結びついている、きわめて特権的な楽器である。例えば『風の谷のナウシカ』のメインテーマとして知られる《風の伝説》、すなわち[04]「Fantasia (for NAUSICAÄ)」を聴いてみていただきたい。ここに収められたのはピアノ・ソロ・ヴァージョンによる演奏だが、映画本編のサウンドトラック盤の演奏でも、あるいは映画完成前に作られたイメージアルバムの演奏でも、《風の伝説》の主題は常にピアノで演奏されている。つまり、『ナウシカ』という作品の世界観-主人公ナウシカの凛とした面持ち、彼女の勇気ある姿勢など-の核心(ハート)を音楽で表現する時に、ピアノに自己を託す作曲家であることを意味する。ピアノという楽器は、久石自身の核心(ハート)でもあるのだ。

そのことを非常に象徴的に表した例として、もうひとつ、『ハウルの動く城』のメインテーマである[13]「人生のメリーゴーランド」を挙げてみよう。本編をご覧になったリスナーならご存知だと思うが、『ハウルの動く城』ではほぼ全編にわたり《人生のメリーゴーランド》の主題が繰り返し登場する(スコア全体が一種の変奏曲と言っても過言ではない)。本編の冒頭シーン、《人生のメリーゴーランド》は久石のピアノ・ソロで2回繰り返して演奏されるが、そのシーンの登場人物の会話から、我々観客はハウルが他人の心臓を取ってしまう魔法使いであること、すなわちハウルにとって心臓(ハート)が重要であることを知る。映画の中で最後にピアノ・ソロが登場するのは、ハウルが心臓(ハート)を取り戻す場面であり、そこで演奏される楽曲は本編冒頭の音楽と全く同じである(変奏曲の最後に主題が回帰する手法に似ている)。つまり《人生のメリーゴーランド》が流れる冒頭シーンは、物語的にも音楽的にも”主題提示部”の役割を果たしており、『ハウル』本編で展開される物語と音楽は、この主題を用いた”変奏曲”に他ならない。こうした作曲手法は、バッハやベートーヴェンがピアノ(鍵盤楽器)のために書いた変奏曲の方法論と、実は何ら変わるところがないのだ。さらに『ハウル』全体の音楽を注意深く聴いてみると、《人生のメリーゴーランド》の演奏にピアノが使用される箇所は、ヒロインのソフィーがハウルに抱く恋愛感情を表現した場面に限定されていることがわかる。《人生のメリーゴーランド》は、ピアノという楽器で演奏されることで”愛のテーマ”の役割も果たしているわけだ。ハウルがソフィーの恋愛感情によって心臓(ハート)を取り戻すこと。これこそが『ハウルの動く城』という作品の核心(ハート)的テーマに他ならない。その最も重要なテーマを、久石はピアノという楽器に託していたのである。

このような奇跡的な作曲を可能にしたのは、繰り返すまでもないが、ピアノという楽器が、久石のアイデンティティの根幹に関わる核心(ハート)的楽器だからである。そうしたことを頭の片隅に置きながら、この『Piano Stories Best ’88-’08』に耳を傾けていただきたい。久石譲という音楽家の核心(ハート)が、彼のピアノ演奏同様、いささかも曇ることのないタッチで、明確に語られていることに気づくはずだ。

2008年3月 前島秀国

(寄稿文 CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

01. The Wind of Life
『PIANO STORIES II』に収録。ポップス・メロディの作曲家としても、久石が第一線の才能を有していることを示した好例である。

02. Ikaros -2008 Remix-
『PIANO STORIES 4』に収録。ブラームスのピアノ音楽に通じる重厚さと、躍動感溢れるミニマルのパルスの対比が絶妙である。2008年再ミックス音源。

03. HANA-BI
『PIANO STORIES III』に収録。北野武監督『HANA-BI』メインテーマ。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞など、この作品と縁の深いイタリアで録音された演奏である。イタリアならではのストリングスの色合いが、楽曲の風格を高めることに貢献している。

04. Fantasia (for NAUSICAÄ)
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』のメインテーマ《風の伝説》に基づく。

05. Oriental Wind -2008 Remix-
『PIANO STORIES 4』に収録。サントリー緑茶「伊右衛門」CMソング。”和”のテイストを基調としながら、久石自身のルーツであるミニマル的な要素や新ウィーン楽派風のストリングス・アレンジも顔を覗かせる。2008年再ミックス音源。

06. Innocent
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『天空の城ラピュタ』のメインテーマ《空から降ってきた少女》のソロ・ピアノ・ヴァージョン。

07. Angel Springs
『PIANO STORIES II』に収録。サントリー「山崎」CMソング。冒頭のチェロとピアノの絡みが美しい。希望に満ち溢れた楽曲。

08. il porco rosso
『PIANO STORIES III』に収録。宮崎駿監督『紅の豚』メインテーマで、同映画のサウンドトラック盤に収録された《帰らざる日々》をさらにジャジーにアレンジしたもの。作品の舞台はアドリア海周辺という設定だったが、そのアドリア海に面したイタリアでの録音である。

09. The Wind Forest
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『となりのトトロ』の《風のとおり道》が原曲。冒頭のミニマル風の音型が小さき生命の存在をユーモラスに表現し、東洋的なメロディが森の大らかな生命を謳い上げる。

10. Cinema Nostalgia
『PIANO STORIES III』に収録。日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニングテーマ。久石の敬愛するニーノ・ロータにオマージュを捧げたような、クラシカルな佇まいが美しい。

11. Kids Return
『PIANO STORIES II』に収録。北野武監督『キッズ・リターン』メインテーマをピアノ+弦楽四重奏、すなわちピアノ五重奏曲の形で演奏したもの。

12. A Summer’s Day
『Piano Stories』に収録。ミニマル・ミュージックの先駆者的作曲家として知られる、エリック・サティの楽曲を彷彿とさせるピアノ曲。

13. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-
『PIANO STORIES 4』にオーケストラ伴奏のアレンジ版が収録されていたが、ここに聴かれるピアノ・ソロ・ヴァージョンはそれとは別に収録されたもので、本盤が初出となる。宮崎駿監督『ハウルの動く城』のメインテーマ。

text by 前島秀国

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

「Piano Stories」 ・・ (4) (6) (9) (12)
「Piano Stories II ~The Wind of Life」 ・・ (1) (7) (11)
「NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~」 ・・ (3) (8) (10)
「FREEDOM PIANO STORIES 4」 ・・ (2) (5)

 

 

 

2018年4月25日 LP発売 UMJK-9075/6
完全生産限定盤/重量盤レコード/初LP化

 

 

 

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

1. The Wind of Life
2. Ikaros -2008 Remix- (東ハト「キャラメルコーン」CMソング)
3. HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
4. Fantasia (for NAUSICAÄ) (映画『風の谷のナウシカ』より)
5. Oriental Wind -2008 Remix- (サントリー緑茶「伊右衛門」CMソング)
6. Innocent (映画『天空の城ラピュタ』より)
7. Angel Springs (サントリー「山崎」CMソング)
8. il porco rosso (映画『紅の豚』より)
9. The Wind Forest (映画『となりのトトロ』より)
10. Cinema Nostalgia (日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニングテーマ)
11. Kids Return (映画『キッズ・リターン』より)
12. A Summer’s Day
13. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (映画『ハウルの動く城』より) ※未発表音源

All Music Composed , Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi (except Track-08 Backing Piano by Masahiro Sayama)

 

Piano Stories Best ’88-’08

1.The Wind of Life
2.Ikaros -2008 Remix- 
3.HANA-BI
4.Fantasia (for NAUSICAÄ)
5.Oriental Wind -2008 Remix-
6.Innocent
7.Angel Springs
8.il porco rosso
9.The Wind Forest
10.Cinema Nostalgia
11.Kids Return
12.A Summer’s Day
13.Merry-Go-Round (Piano Solo Version)

 

Disc. 久石譲 『Asian X.T.C.』

久石譲 『 Asian X.T.C.』

2006年10月4日 CD発売 UPCI-1051

 

近年アジアでの活躍めざましい久石譲による”美しく官能的でポップなASIA”をテーマにした壮大なコンセプトのソロ・アルバム。

近年韓国・中国・香港に活動の幅を広げ特に韓国では日本人で初めて大韓民国映画大賞にて、最優秀音楽賞を受賞するなど活躍が目覚しい。演奏はイギリスのバラネスク・カルテットとの共演、ゲストで二胡奏者のジャン・ジェンホアが参加。

 

 

Asian X.T.C.

見事なまでの傑作!まずはこう断言してしまった方が久石譲のピアノをフィーチャーしたアルバムとしては『FREEDOM PIANO STORIES 4』以来1年9ヶ月ぶりになる最新作『Asian X.T.C.』の素晴しさを伝えるにはてっとり早い。

2005年に韓国でNo.1ヒットを記録し、久石譲が日本人初の最優秀音楽賞を受賞した韓国映画『トンマッコルへようこそ』をはじめとして、香港映画や中国映画の音楽を担当したことがきっかけで、アジアの中の日本を意識するようになった久石譲が「自分もアジアの人間として生きている現実を見つめ、自分の血の中にあるアジアとアジアへの気持ちを表現することから始めてみよう」と考えて作り上げた『Asian X.T.C.』。エレクトリック・シタールの音色が印象的なタイトル曲から、久石譲の作曲家・編曲家としての力量が遺憾なく発揮されている「Dawn of Asia」までの10曲は”アジアの官能”というアルバムのコンセプトを完璧に構築しているのである。

その全曲を作曲し、編曲し、ピアノを弾き、プロデュースしている久石譲という音楽家の恐るべき才能。ソロ・アルバムから映画音楽にCM音楽の制作、はたまた新日本フィルハーモニー交響楽団が結成した”新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ”の音楽監督としても仕事をし、自らのユニットでコンサート・ツアーも行うという旺盛な活動を続けている久石譲は、12年ぶりの著作『感動をつくれますか?』(角川書店 角川oneテーマ21)のはじめに、「僕は作曲家である。作曲家を、海外では”composer”と称する。音楽を構成する者という意味あいだ。この英語表現のほうが、僕のやっていることがわかりやすいと思う」と書いているが、まさに言い得て妙といった感じで『Asian X.T.C.』では見事に構成された音楽というものが何物にも勝る魅力があることを理屈抜きで実感できる。

と同時に、僕はプロフェッショナルな仕事の凄さというものをこのアルバムから多くの人に感じとって欲しいと思う。先の著作の中で「僕の根本的な考えは、より完成度の高い”良い音楽”を書くことだ」と言い切った久石譲は「優れたプロとは、継続して自分の表現をしていける人」とも書いているが、自分のスタンスをより明確にし、”様々な経験と知識を高度なテクニックを使って形にしたこのアルバムで久石譲は確実に新しい地平に達している。僕はそれを心から称賛した。

あとは、東京と横浜、そしてロンドンで国籍も様々な優れたミュージシャンがスタジオ入してレコーディングし、ミックスされたアルバムを聴いて自由にイマジネーションを飛翔させればいい。『Asian X.T.C.』には、このアルバムのために書き下ろされたオリジナル作品と、映画の主題曲やCM曲などが混在しているが、天賦の才を持った”composer”久石譲は、それらの作品を1本の映画のように完璧に構成している。

それは10のストーリーを持った、スクリーンのない映画とでも形容したらいいだろうか。その著作の中で「音楽も文学も映画なども、時間の経過のうえで成り立っているものは論理的構造を持っている」と書いている久石譲は、時空をも超えた、そんな音楽を作ることができる世界レベルの音楽家なのである。

 

陽side [Pop side]
001. Asian X.T.C.
アルバムのタイトル曲であり、オープニングを飾るにふさわしい曲。「僕は、この時代に生きている作曲家としての意味ある表現をしたい。ポップスもクラシックも、ジャズも民族音楽も、さまざまな音楽を踏まえ、ジャンルに捉われない中で、できるだけ今日性を表現していきたい」と著作の中で書いている久石譲ならではのメロディーと構造を持っており、心は確実にアジアのどこかに連れていかれる。その深さは美しい闇に続いている。

002. Welcome to Dongmakgol
敵対する兵士たちがトンマッコルの村人との交流を通して、戦うことをやめ、人種・国籍に関係なく笑顔になっていく様子を涙と笑い、そしてファンタジーの香りを豊かに描き、2005年の韓国映画界で最大のヒットになった『トンマッコルへようこそ』の主題曲が、DEPAPEPEをゲストに迎え、アコースティック・ギター2本とピアノの編成で編曲し直された。「舞台は韓国で、しかも冬のシーンにもかかわらず、あえて沖縄の音階を使ってみた」という久石譲の試みは見事に結実している。

003. Venuses
カネボウのシャンプー「いち髪」のCM曲。CMの15~30秒バージョンからこのバージョンに編曲し直される際にリトル・キャロルの民族風で無邪気な味のあるコーラスが加えられた。エレクトリック・シタールと中国楽器の古箏、それにピアノのフレーズがとても魅力のある不思議な綾を成している。分析不可能なアジアの美しい混沌…。

004. The Post Modern Life
世界的にその名を知られるアン・ホイ監督による今年公開予定の中国映画『叔母さんのポストモダン生活』の主題曲。久石譲は「老年期に差し掛かった女声の日常を描く、非常に現実的な話」が故に、「情緒を排除するために、わざと音域を広げたメロディーを書いた」と、その著作で明かしているが、メイン・テーマの最初で民族楽器を使い、それを後半でストリングスやピアノを絡めて融合させる方法論で、聴く者は夢の中にひきこまれていく。

005. A Chinese Tall Story
2005年の映画『A Chinese Tall Story』の主題曲で、基本的に人物に沿って音楽をつけるやり方をしない久石譲が「僕も必要に応じて人物につけることもある。例えば、香港映画『A Chinese Tall Story』のときは、西遊記をベースにしたCG満載の娯楽もので、ハリウッド映画のアジア版みたいなものだったから、あえてそうした。同時に”愛”というテーマがはっきりしていたので、全体をラブストーリーになるように音楽も構成した」と著作の中で書いているが、ピアノとジャン・ジェンホアの二胡、そしてストリングスが織り成すアンサンブルは涙が出そうになるほど美しく切ない。アジアの官能の闇につかまってしまいそうな感じになる。

006. Zai-Jian
アナログ・レコードの時代だとここでA面が終わることになる。久石譲はメロディアスな曲を並べて”陽side [Pop side]”とし、ミニマル色を強く打ち出した4曲を”陰side [Minimal side]”として、全体を構成しているが、このアルバム唯一のピアノ・ソロは”陽side”をしめくくるには実にふさわしい。タイトルは中国語で別れの時に使われる「さよなら、また」という意味。いつの間にか書かれて、タイトルも決まっていたというが、それも天才たる所以か。

陰side [Minimal side]
007. Asian Crisis
NHKの世界遺産コンサートに合わせ、フルオーケストラ楽曲として書き下ろされたものを、このアルバムのために再編曲した曲。久石譲は著作の中でフィリップ・グラスとマイケル・ナイマンをひきあいに出し「日本でミニマル・ミュージックのスタンスを取っていた僕もまた、映画音楽をつくっている。にもかかわらず、僕は現代クラシックでの作品を作ってきていない。もちろん僕の作ってきた音楽に、ミニマル的テイストはあちこちに入っている。だが、作品といえるものはない。今、作曲家として僕がやらなければならないテーマは何だろうかと思ったとき、そこが気になりだした。これは、今の僕のそうした心境を反映させた新しいスタイルの曲だ」と書いているが、その思いはまぎれもなくひとつの形になっている。

008. Hurly-Burly
4歳の頃からヴァイオリンを学び、国立音楽大学作曲科に入学した久石譲が最初に感化されたのが”ミニマル・ミュージック”で、出発点が現代音楽の作曲家だったということは、久石譲というアーティストの本質を理解する上では非常に重要なポイントだが、ミニマルをこれだけポップに表現できるアーティストはそう多くないだろう。6月7日に久石譲自身が主宰するレーベル、ワンダーランドレコードのベスト・セレクション『THE BEST COLLECTION』のライナーノーツにも書いたが、アメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンと久石譲は確実に横位置に並んでいる。

009. Monkey Forest
バリ島のウブドにあるストリートの名前をタイトルにした曲で、芸術家村としても知られるウブドがガムランの発祥地であることを考えると、様々なアイデアが練り込まれていることがよくわかる。バラネスク・カルテットとレコーディングすることを念頭に作られた曲で、このアルバムの中で、ボーナス・トラックとして収録された「Woman ~Next Stage~」を除いて一番最後にできたものだという。

010. Dawn of Asia
アルバム『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』や久石譲自らが監督した映画『Quartet』のサウンドトラックにも参加していたバラネスク・カルテットのヴァイオリンと二胡が同じメロディーを繰り返す曲で、官能的でスピード感のある仕上がりは、このアルバムのラストを見事にしめくくっている。わかりやすいメロディーと複雑なアンサンブルの融合のさせ方は久石譲の最も得意とするところであり、それは「僕の作曲家としての原点はミニマルであり、一方で僕を有名にしてくれた映画音楽では叙情的なメロディー作家であることを基本にした。ただそのいずれも決して新しい方法論ではない。全く別物の両者を融合することで、本当の意味でも久石独自の音楽を確立できると思う。ミニマル的な、わずか数小節の短いフレーズの中で、人の心を捉える旋律を表現できないか…」という言葉がフラッシュバックしてきた。

2006年8月 立川直樹

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

Asian X.T.C.
亜細亜は矛盾する2つのものを受け入れる。それは僕たち一人一人の中にある2面性を肯定しているようだ。例えば善と悪、両方あるからこそ世界は成立する。そんな考え方が僕は好きだ。

●陽side (Pop side)

001. Asian X.T.C.
Piano:Joe Hisaishi / E.Stiar, Guzheng, Dizi, Pecussion, Bass, Strings
ヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」を読んだ。西洋人のフィルターを通したとしてもそこに描かれている東洋思想の世界は官能的ですらある。悟りはエクスタシーかもしれない。それを探しに?僕は亜細亜に旅立った。

002. Welcome to Dongmakgol
Piano:Joe Hisaishi / A.Guitar:DEPAPEPE / Percussion
ハングル文字の看板が立ち並ぶ路地裏の小さな店で50歳酒を飲んだ。焼酎の眞露と薬草酒の100歳酒を割ったものだが、これがいい。酩酊しながらふと考えた、ソウル(Seoul)というスペルはSoul(魂)ではないかと。

003. Venuses
Piano:Joe Hisaishi / E.Sitar, Guzheng, Percussion, Dizi, Bass, Chorus, Strings
バリ島の海岸を歩いていたとき乳房も露に波と戯れている若い女性たちを見た。夕日に照らされたそのシルエットは僕の脳裏に焼き付いた。

004. The Post Modern Life
Piano:Joe Hisaishi / Violin, Cello, A.Guitar, Guzheng, Erhu, Dizi, Percussion, Bass
紫禁城は大きすぎる。こんなところで暮らしたら寂しくて人恋しくなって死んでしまうと思いながら外の広場に出たら人、人、人で溢れていた。孤独なんて黄砂の中で霞んでしまった。

005. A Chinese Tall Story
Piano:Joe Hisaishi / Erhu, Strings
香港の渡し船(フェリー)から見る夕日は美しい。九龍の島影が波間に揺れる。哀しい昨日と希望の明日が一瞬交差した。でもそんな想いは強い海風がビールの泡とともにデッキから吹き飛ばしてしまった。

006. Zai-Jian
Piano:Joe Hisaishi
上海は亜細亜そのものだ。運河を挟んでモダンな高層ビルと混沌の旧市街が対峙する。でもその両方があるからこそ街は活きている。運河を渡る風に乗せて僕はピアノを弾いた。

●陰side (Minimal side)

007. Asian Crisis
Piano:Joe Hisaishi / Strings:The Balanescu Quartet / Sax, Marimba & Vibraphone, Percussion, Guzheng, Erhu, Oboe & Zurna, Bass
長い間封印していたことがある。青春の蹉跌の中で措いて来たものに立ち向かうほど僕は強くなれたのだろうか?

008. Hurly-Burly
Piano:Joe Hisaishi / Strings:The Balanescu Quartet / Sax, Percussion, Marimba, Bass
台北の雑踏はエナジーに満ち溢れている。富と貧、老若、病と健康、喜びや悲しみ、笑い泣き、怒鳴り合う人々の顔は生命そのものだ。目の前を50ccのバイクが通り過ぎた。そこにはX’masツリーのように6人の子供を乗せたお父さんの逞しい姿があった。

009. Monkey Forest
Piano:Joe Hisaishi / Strings:The Balanescue Quartet
モンキーフォレスト通りを歩いていたとき天が裂けたとしか思えないほどの雨が降り注いだ。軒先の濡れたみやげ品を何事もなかったかのように片付けている少女を見て僕は意味のない傘を捨てた。

010. Dawn of Asia
Piano:Joe Hisaishi / Strings:The Balanescu Quartet / Sax, Percussion, Marimba, Guzheng, Erhu, Bass
亜細亜の夜明けは神秘的だ。まるで山水画のようなモノトーンから赤や黄色や緑の剥き出しの陽中に変貌していく。その力の前に人間なんて小さいものだと気づく。いい日もあれば落ち込む日もある。善と悪もミジンコも宇宙もすべては僕の中にあり、外にある。また新しい夜明け(Dawn)が始まる。

注)アルバムでは昔のLPのようにA(陽)面、B(陰)面に分けてその2面性を表現した。

文・久石譲

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

アジア趣向の中にきらめく新たな「久石譲」のかたち
~New Album「Asian X.T.C.」をめぐって~

アジアをテーマに制作した最新アルバム「Asian X.T.C.」は、単にアジア風味が効いたポップス作品集に終わらず、そのままズバリ、久石譲という作曲家の現在を映す鏡となった。その一つの証左となるのがミニマル技法への回帰である。毅然と「今の僕は過渡期だ」と言い切るその表情には、作曲家として完成すること=巨匠への道を避け、新たな可能性を追い求める最前線の戦士としてのさわやかな野心がみなぎる。

「リセットしたというのかな。原点に戻るというよりも、らせんのように描いていって、その先でもう一回遭遇したような感じだね。ミニマルをベースにやってきた経験とポップスをやって培ったリズム感、単純にいうならノリ、グルーヴ感。それが両方きちんと息づいたところでの自分にしかできない曲。それを書いていこうと決心がついた最初のアルバムが『Asian X.T.C.』なんです」

アジアというテーマも伊達ではない。「美しく官能的でポップなアジア」と銘打たれたそこには、同時に深遠な東洋思想への共鳴があった。

「アジアって善と悪が共存していて、悪はダメっていう発想がない。人間が持っている二面性も決めなくていい、両方持っているのが自分なんだと。この考えにたどり着いたとき、やっとアルバムの方向が見えたんだね」

その「決心」はアルバム構成に具体的に集約された。映画やCM曲の楽曲群(陽サイド)と、ミニマル・ベースの楽曲群(陰サイド)がそれぞれ別個に固められて前後に並んでいる。まるでLPレコードの表裏を連想させる「二面性」をあえて1枚のディスクの中で訴えているのだ。統合性や平衡感覚に囚われず、はっきり違ったものがザクっと並んでいてもいいではないか。そんな力強い作曲者の声が、手に取るように伝わる。

「曲を書き終えたあとに初めて構成が決められたんです。とりあえず今、自分がやれることはこれなんだと。その決断ですね」

アルバムの詳細に今少し踏み込むなら、全11曲を収めたアルバムには、韓国映画「トンマッコルへようこそ」、中国映画「叔母さんのポストモダン生活」、香港映画「A Chinese Tall Story」の主題曲が盛り込まれており、最近目覚ましいアジア圏での作曲者の活動が簡潔に伝えられている。ピアノは久石自身が担当し、ゲストにバラネスク・カルテット、ギター・デュオのDEPAPEPEが連なり、二胡、古箏などの中国楽器も加わる。テーマに掲げられた「ポップ」とは要は「かっこいいこと」に通じ、「官能的」とはバリ島で刺激を受けたという闇、その体験談に顕著な「神秘性=ゾクゾク感」という表現に換言することができるだろう。音色といい、発想といい、整然とした世界がそこに広がる。

「僕は論理性を重んじて曲を書いています。でも、音楽ってそれだけでは通じない。直接脳に行っちゃう良さが歴然とあるわけだし、それは大事にしないといけない。そこまで行かないと作品にはならないね」

これまた今回のテーマを地でいく声として注目してよく、要するに感性と論理性の拮抗こそが作曲家・久石譲の本質であり、この二面性を正面から引き受けなければいけないという意識において、実のところ従来と変わらぬ野心と探究心の表れでもあろう。

アジアへの展望を通して、久石譲は新たな出発ちのときを迎えた。

取材・文=賀来タクト

「Piano Stories 2006 Joe Hisaishi Asian X.T.C.」コンサート・パンフレット より)

 

 

 

「一つは、最近、韓国、中国、香港から映画音楽の依頼が続いていて、自然とアジアを感じる機会が増えたこと。もう一つは、作曲家として今後、何を書いていこうかと考えているなかで、原点に戻ろうという気持ちが高まってきたことにある。僕にとっての原点は、現代音楽の一つであるミニマル・ミュージック。フィリップ・グラスやマイケル・ナイマンといったミニマル音楽家は、映画音楽も手がけながら、自分の作品を作り続けているが、僕は彼らと違って、ミニマルの作品をほとんど作ってこなかった。だけど、そろそろ原点に戻って、ミニマルの作品を書きたいという思いが強くなってきた。そこで、グラスともナイマンとも違う僕の世界は何かと考えているうちに、自分がアジア人だということに行き着いた。」

「30歳の時、もはやクラシックとなってしまった現代音楽に限界を感じて、ポップスの分野でやっていこうと決意した時から、ずっと距離を置いてきた。もちろん、自分の中に脈々とあるものだから、これまでも映画音楽などにはミニマル的な要素は入ってきたけど、作品として取り組もうとは思わなかった。それが昨年、「WORKSIII」というアルバムで、ミニマル色の強い「DEAD」という組曲を作ったあたりから、押さえきれないものが沸いてきていることに気がついた。」

Info. 2006/09/12 ヨミウリオンライン「ミニマルとアジアで原点回帰 久石譲に聞く」掲載 より抜粋)

 

 

「それはね、一つ正しい。そのとおりだと思う。たぶん、いちばんつらかった時期は、4、5年前くらいから一昨年くらいの間かな。あのまま行ったら巨匠の道を歩んでいたと思うし、実際歩みつつあった。特に『FREEDOM PIANO STORIES 4』というアルバムの頃はそっちに行きそうな悪い予感がしてた。それが『WORKS III』っていうアルバムを作ったときに組曲の『DEAD』を完成させたでしょう。あのときに自分が何をやりたいのか、非常に明快に思ったことが一個あって、それは要するに”作品を書きたい”ってこと。もうすごく単純に。アメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマン、どちらもミニマルの作家で、映画の音楽も書いているでしょう。そんな彼らと僕の大きな違いって何かというと”作品”を書いていないことなんですね。作家としていい曲を書いて売れることはもちろん大事。でも、それだけでは生きていたくない自分というのも確かにいる。やっぱり”作品”を書くことなんだね。それを考えたときに、いわゆる巨匠の道はやめたんです」

Blog. 「キネマ旬報 2006年10月下旬号 No.1469」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「アジア人のミニマリストっていないとマズイんですよ。いるべきだと僕は思う。それを誰がこの時代で担うのかといったら、僕しかいないだろうと。グラスって東洋思想に刺激を受けてやっていたけれど、それって形式からの脱却を考えてあがいた結果、東洋に目を向けたわけだよね。でも、そういうふうに目を向けられている肝心のアジアから誰も育たないというのは変ですよ。で、考えてみたら、僕のベースはアジアで、端からそういうものが血の中にある。ミニマルが原点だった自分がやっぱりきちんとやらないといけないだろうと。アジアをテーマにするというのも、その意味で必然性があったわけ。ミニマルに戻るってことと、アジアに目を向けることは同じ延長線上にあるんです」

Blog. 「キネマ旬報 2006年11月上旬号 No.1470」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「例えばフィリップ・グラスは東洋思想に刺激を受けて作品を作っていましたが、その対象となったアジアから誰も育たないというのは変でしょ。アジア人のミニマリストが、ちゃんといるべきじゃないか。じゃ、それを誰が担うのかといえば、アジアがベースにあって、そのうえミニマルを原点に持っている僕しかいないだろうと」

「ミニマルをベースにやってきた経験と、ポップスで培ったリズム感、単純に言えばノリ、グルーヴ。それが両方きちんと息づいたところでの、自分にしかできない曲。それを書いていこうと決心がついた最初のアルバムです」

Blog. 「Invitation インビテーション 2006年11月号 No.45」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「ガムラン、ケチャの発祥の地、バリ島のウブドゥは世界で最も好きな場所の一つである。だから《モンキー・フォレスト》という曲まで作っている(ケチャのことをモンキーダンスともいうことがある)。突然降りだす激しい雨は文字通りバケツをひっくり返したようであり、夜の闇は本当に漆黒なのである。食べ物はおいしく、人々の笑みには謎があり……まさにストレンジャー・ザン・ウブドゥなのだ。」

Blog. 「クラシック プレミアム 15 ~ベートーヴェン3~」(CDマガジン) レビュー より抜粋)

 

 

「(笑)最後に入っている「Dawn of Asia」ができた時に、「このアルバムがつくれるぞ」という確信がもてたんですね。で、結果的にこのアルバムのなかでいちばん実験して、最も大切にしているのが「Monkey Forest」という曲かな。」

「「Dawn of Asia」が最初にできて、「Monkey Forest」が…最後のほうかな。」

Blog. 「LUCi ルーシィ 2007年4月号」久石譲×SHIHO 対談内容 より抜粋)

 

 

 

 

「Venuses」(カネボウ「いち髪」CMソング)は、CM Original versionはすべてシンセサイザーによる音色となっている。本作品に収録版はバラネスク・カルテットによる弦楽合奏となっており、大きくアレンジが異なるわけではないが、CM版と響きは異なる。その他リズムパーカッションもCM版のほうが前面に出ており、CMという短い時間でのインパクトに一役かっている。

 

 

 

久石譲 『 Asina X.T.C.』

●陽side (Pop side)
1. Asian X.T.C.
2. Welcome to Dongmakgol (韓国映画「トンマッコルへようこそ」主題曲)
3. Venuses (カネボウ「いち髪」CMソング)
4. The Post Modern Life (中国映画「おばさんのポストモダン生活」主題曲)
5. A Chinese Tall Story (香港映画「A Chinese Tall Story」主題曲)
6. Zai-Jian
●陽side (Pop side)
7. Asian Crisis (NHK「名曲の旅・世界遺産コンサート」書き下ろし曲)
8. Hurly-Burly
9. Monkey Forest
10. Dawn of Asia
Bonus Track
11. Woman 〜Next Stage〜 (レリアンCMソング)

All Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Performed by The Balanescu Quartet , Jiang Jianhua , DEPAPEPE

M-11 Piano:Takehiko Yamada / Bandoneon:Koji Kyotani / Strings:Supeciosa Strings

Recorded at
Wonder Station (Tokyo)
Angel Studios (UK)
Landmark Studio (Yokohama)
Victor Studio (Tokyo)
Sony Music Studios Tokyo

Mixed at Lansdowne Studios (UK)

in BEIJIN アジアを探しに… 3.24~3.27
in LONDON レコーディング&TD 7.28~7.31 & 8.18~8.23

 

Disc. 久石譲 『THE BEST COLLECTION presented by Wonderland Records』

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

2006年6月7日 CD発売 UPCI-1048

 

久石譲が主宰するレーベル ワンダーランドレコードからのベスト・セレクション。レーベル・テーマ「EVERGREEN」を象徴した、本人自らの選曲、リマスタリング音源で構成されたセレクト・アルバム。

 

 

音楽の”WONDERLAND”の素晴しき城主、久石譲

日本を代表する、というより今や世界的にその名を知られている作曲家であり、ピアニストである久石譲は、その知名度と、多くの人に作品が愛されているのと対照的に意外なほど、その実像と本質が一般的には伝わっていないアーティストではないだろうか。

僕は久石譲がプロデュースするレーベル”Wonderland Records”からリリースされたアルバムのベスト盤『THE BEST COLLECTION』を聴いて、改めてそのことを思った。初のピアノ・ソロ・アルバムとして1988年にリリースされた『Piano Stories』でもオープニングを飾っていた「A Summer’s Day」からNHKドラマ「風の盆から」のテーマ曲「風の盆」までの見事なまでの音の連なり。”いい音楽”が時代や流行を超えて人々に愛され、存在していることは周知の事実だが、”EVERGREEN”をテーマに、久石譲の音楽観を投影させたレーベルとして、2000年に設立され、その年の12月6日に『Piano Stories』を第1弾としてリリースした”Wonderland Records”からリリースされた8枚のアルバムからの選曲に、今年リリースされる新曲3曲を加えて作られた『THE BEST COLLECTION』は単なるベスト盤というより、久石譲という稀有な才能と音楽的魅力を兼ね備えたアーティストの音楽の旅のドキュメントなのである。

それはジョエル・マイヤーウィッツという知る人ぞ知る写真家の美しい写真をカバーにした『Piano Stories』からの2曲に、久石譲の映画音楽家としての評価を決定的なものにした「あの夏、いちばん静かな海」のメインテーマ曲が続いていくあたりで明らかになる。4歳の頃からヴァイオリンを学び、国立音楽大学作曲科に入学した久石譲が最初に感化されたのが”ミニマル・ミュージック”で、出発点が現代音楽の作曲家だったということは久石譲というアーティストの本質を理解する上では非常に重要なポイントであり、「僕の作曲家としての原点はミニマルであり、一方で僕を有名にしてくれた映画音楽では叙情的なメロディー作家であることを基本にした。ただそのいずれも決して新しい方法論ではない。全く別物の両者を融合することで、本当の意味での久石独自の音楽を確立できると思う。ミニマル的なわずか数小節の短いフレーズの中で、人の心を捕らえる旋律を表現できないか…」という言葉を聞くと、「風の谷のナウシカ」から始まった宮崎アニメの一般的なファンが例外なく口にする”美しく優しいメロディー”の深みが理解できるだろうし、久石譲が作曲家としてだけでなく、アレンジャー、プロデューサーとしての才能も傑出していることがよくわかる。映像と音楽のコラボレーションの素晴しさが公開当時、評判をとった北野武監督の映画「あの夏、いちばん静かな海」から、久石譲とは何作もタッグを組んでいる大林宣彦監督の映画「ふたり」からの曲への切り返しの見事さはもはや魔術的領域にすら達している。

そう、本当にいろいろなところに連れていかれてしまうのだ。1984年の「風の谷のナウシカ」を始まりに、20年と少しの間に何と43本もの映画音楽を手がけてきた久石譲は「僕にとって、音楽は生きている上で一番好きなことで、映画は2番目に好き。その両方をいっぺんにできるのが映画音楽。映画音楽を作る場合、映像と音楽は必ず対等であるように心がけている。映画には大もとには脚本があって、そこからイマジネーションを膨らませて、片方は映像に、もう片方は音楽になる。勿論、音楽は映像に関連しているわけだけど、たいがいの場合、追随し過ぎてしまう。泣くシーンでは悲しいメロディーとかね。逆に映画のコンセプトから考えたら、音楽はそうする必要がなかったりもする。映像と音楽をもっと戦わせてもいいのではないかと…」と語っているが、その音楽のイマジネイティブな広がりとスケールの大きさは、間違いなくこのクリエイティブな視点と姿勢が反映されたものといえるのではないだろうか。

そして、Wonderland Recordsからリリースされている大林宣彦監督の映画「はるか、ノスタルジィ」のサントラ盤に添付されたブックレットに久石譲が書いた文章の一節が、映像と音楽の世界を、また音楽の多くのジャンルの世界を、自由奔放に往き来している久石譲というアーティストの思考回路の深さを僕に教えてくれた。

「この映画に音楽を付けるに当たって色々と悩み、最初はロマンティックな曲を色々考えたりしましたが、結果的にテーマ的には”過去に対面して行くサスペンス”という括りでの音楽にしようと考えました。これはある時ヒッチコックの「めまい」(1958年)をレンタルビデオでたまたま見た時に、出だしがサスペンス調に作られているという事に気がつき、「はるか、ノスタルジィ」も自分の過去に対面するサスペンスなのだという共通項の発見から考えついた事です。このようにすることで最終的に出会った所に本当のロマンがあるというような作りにすればこの映画は行けると考え、大林監督にこの話をし”それは最高にいい”という事になり、テーマのメロディーをロマンにもサスペンスにも取れるような複雑なものにして、短いモチーフ風な扱いをすると完全にサスペンス音楽になってしまうようなものに仕上げました。その後この「追憶のX.T.C.」というテーマ曲は「MY LOST CITY」の「Tango X.T.C.」という曲に発展していくことになりました」

やや長い引用になったが、久石譲の物作りに対する考え方やアプローチを知るには非常に興味深い文章であり、このアルバムの中盤からエンディングに至るまでの流れとどこかで通底しているようにも僕には思える。日本映画界に大きく貢献してきた今までの実績とその功績が評価され、久石譲は2002年淀川長治賞を受賞しているが、先にも書いたように多くの人の記憶に残っている美しいメロディーと壮麗なサウンドは驚くべき計算と準備とテクニックがあって初めて成立しているのである。

だが、それにしても、1989年に6枚目のソロ・アルバムとしてリリースされた『PRETENDER』の中から選び出された「VIEW OF SILENCE」のアレンジの見事さはどんな言葉を使って形容すればいいのだろうか。どの曲を聴いても、久石譲の楽器の鳴らし方のうまさには改めて唸らされ、今回のアルバムでいくつもの新しい発見をしたのはうれしい驚きだったが、ふるえるようなストリングスがピアノと絡み合い、ひとつずつの楽器が知的な会話をして、全体としては官能的に匂いが漂う「VIEW OF SILENCE」はアレンジャーとしてもその時代に既に久石譲が世界的レベルに達していたことの証であり、続く『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』から選ばれた「千と千尋の神隠し」組曲の2曲も、自身の作品をオーケストラ用にアレンジしてここまで昇華できるということに素直に脱帽させられてしまう。久石譲が、”戦友”と呼び、”Wonderland Records”に初のオリジナル・アルバム・アーティストとして迎え入れたチェリスト、近藤浩志のソロ・アルバム『Arcant』から選び出された「風の谷のナウシカ」組曲(改訂版)「風の伝説」の素晴しさも特筆すべきものがあるし、続く2曲と合わせて絶妙なレーベルのプロモーションになっている。

あとは全16曲の収録曲のうち、唯一のヴォーカル・ナンバーである「さくらが咲いたよ」と、久石譲を”楽界の魔王”と形容して讃えている脚本家、市川森一の依頼による仕事となったNHKドラマ「風の盆から」のサントラ盤から選び出された2曲について書いておけばいい。

久石譲が坂口安吾の名作「桜の森の満開の下」にインスピレーションを受けて書き下ろし、1994年のソロ・アルバム『地上の楽園』に収録した曲を、久石譲の愛娘、麻衣が全く新しい楽曲としてリメイクした「さくらが咲いたよ」は、ただ桜の表面的な美しさだけではなく、桜が持つ妖しさや狂おしさ、儚さが見事なまでに表現されているところが実に久石譲らしいし、続く「彷徨」は本人がニヤリと笑いながら原点回帰をしているようなところにある種の凄みすら感じられる。

でも、それが久石譲というアーティストの唯一無二なところだろう。例えば「ポップスの分野に入ったけれど、音楽の可能性を追求する精神は前衛音楽と同じ。常に新たな音楽につながるものをと考えながら作曲している」という言葉ひとつとっても、久石譲がかつて”ニューエイジ・ミュージック”という言葉つきで紹介され、ちょっと耳ざわりのいい音楽を聴かせたものの気がついたら姿を消してしまったような人たちとは全く違うレベルのところに存在していることがわかるだろうし、しばらく前に久々に久石譲本人と会話を交わした時に、僕は彼がアメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンときて、日本の久石譲というような関係性をみてとったのである。

そして、この『THE BEST COLLECTION』を聴いて、それを確信した。また、こうして自分自身の音楽作品をきちんと整理し、世に送り出していこうという姿勢に心からの拍手を贈りたい。映画音楽から自身のソロ・アルバム、さまざまなアプローチによるコンサート活動、はたまたイベント・プロデュースに至るまで、久石譲の旺盛なまでの創作意欲は全くとどまるところを知らないが、「ピアノは、僕にとってはとても大事な楽器。以前は作曲の道具でしたが、コンサートを行うようになって、表現の道具にもなりました。ピアノとの対話が、自分の別の可能性を引き出してくれる。作曲においては極めて理性的である自分がピアノを通してメンタルな面で人に訴えかけることができる」と語る純粋さが僕はまた好きだ。

立川直樹

(CDライナーノーツより)

 

 

誰もが耳にしたことのある、久石譲の旋律が集約されてはいるが、同レーベルから発表された8枚のアルバムの中からセレクトという趣向のため、オールタイムベストではない。

1980年代後半~1990年代前半の廃盤作品を自身レーベルより再発売した作品から、そして2000年以降の作品からという構成になっている。そういった意味では時代や流行を超えた色褪せることのない、音楽の旅。

それでも、(2)はアニメ「アリオン」からの美しい叙情的なピアノ曲だし、(3)~(7)は北野武監督作品や大林宣彦監督作品から、(9)~(10)は宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」より、コンサートライブ音源から、(14)は1994年CD作品「地上の楽園」に収録されていた同曲を、麻衣のヴォーカルによって新しくリメイク、本作だけに収録された楽曲となっている。

 

以下のオリジナル収録作品のリストもご参考。

 

「Piano Stories」(1988年) ・・ (1) (2)
「あの夏、いちばん静かな海」(1991年) ・・ (3) (4)
「ふたり」(1991年) ・・ (5) (6)
「はるか、ノスタルジィ」(1993年) ・・ (7)
「PRETENDER」(1989年) ・・ (8)
「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」(2002年) ・・ (9) (10)
「Arcant / 近藤浩志」(2003年) ・・ (11)
「Winter Garden / 鈴木理恵子」(2006年) ・・ (12)
「FREEDOM PIANO STORIES 4」(2005年) ・・ (13)
※本作品初収録 ・・ (14)
「風の盆」(2002年) ・・ (15) (16)

 

 

 

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

1.A Summer’s Day
2.Resphoina
3.Silent Love
4.Clifside Waltz
5.風の時間
6.少女のままで
7.出会い ~追憶のX.T.C.~
8.VIEW OF SILENCE
9.あの夏へ
10.6番目の駅
11.風の伝説 「風の谷のナウシカ」組曲 (改訂版)から
12.For You
13.Fragile Dream
14.さくらが咲いたよ Vocal:麻衣
15.彷徨
16.風の盆

 

Disc. 久石譲 『FREEDOM PIANO STORIES 4』

久石譲 『PIANO STORIES 4 FREEDOM』

2005年1月26日 CD発売 UPCI-1014

 

日常に追われ、がんじがらめの生活。
息苦しい、閉塞感。
人は少なからずそんな思いを心に宿しているのでは?

いつの日だったろう? 夢をあきらめ自分の手の届く範囲で納得しようと言い聞かせてしまったのは。
その大きな壁を作っているのは自分なのでは?
でも、それも自分自身の人生。

それを受け入れた上で、自由に、そして心を解き放てたら。
自分の中で自由な気持ちを取り戻せたら、きっと楽になれるのでは。

Freedom

久石譲

(「Joe Hisaishi Freedom Piano Stories 2004」コンサート・パンフレット より)

 

 

「実は、サブタイトルに”心の自由を求めて”ってつけようかなって思ってたくらい、最近、なんとなく世の中に閉塞感があって生きづらくなってると思うんです。たとえば”なにかやろう”って思っても、結果がなんとなくわかっちゃうんですよね。そうすると”これやっても仕方がない””これもやっても先が見えてる”みたいな感じで自分のほうで壁を作っちゃってなにもやらなくなってきてる気がしてて。僕自身もそうだし、周りの人たちなんかを見ててもすごくそういうのを感じていて。だから、自分の中のそういうバリアをはずしてやったらもっと生きやすくなるんじゃないかなぁって。そんな思いからこういうコンセプトになったんです」

「そうですね。僕にとってこの”FREEDOM”は過渡期だったと思うんですよ。いまの世の中みたいに価値観がボロボロに崩れだした時代は、作家ってどうしても発言をきちっとしたいんですよ。自分が感じる世の中だったりとか、僕もそうしたくなってたんですけど、でもなんかそれは違うなっていう予感だけがあって。それで悩んだんです。でも、結果的に宮崎さんの『ハウルの動く城』も、たとえば『もののけ姫』のときのような壮大な、”人間とは?”っていう問いかけはしていないですよね。決して重い作品ではないし。きっとこの時代に、シリアスな発言しても疲れきってる人間にそれ言ってなんになる? っていうことなんです。それだったら、隣の人とつながってるんだとか、一日一日の思いを大切にするんだとか、もっと身近なことを言うくらいがせいぜいかなって。だから僕にとっても、宮崎さんにとっても次のための準備期間でありオアシス的作品になったんじゃないかな」

「あのね、僕にとって2004年はワルツの年だったんですよ。実は『ハウル~』だけじゃなくて、バスター・キートンもテーマがワルツだったし、ワールド・ドリーム・オーケストラでもショスタコーヴィチのワルツを演奏したし。すごくワルツに凝った1年だったなぁって。なんかね、ワルツのあのリズムっていうのが、前作の『ETUDE』なんかでちょっと行き過ぎちゃった自分をもう一回戻してくれたんだよね。それが『ハウル~』の映像にも不思議とハマったんだよね」

Blog. 「月刊ピアノ 2005年2月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

2003年9月6日CM放送開始「東ハト キャラメルコーン」では、本作収録曲「Ikaros」が使用されているが、CM original versionとは少し異なる。CMでは伴奏にアコスティックギターも使われ、メロディーから最後のサウンドロゴまでの流れを手がけている。

2003年11月25日CM放送開始「ベネッセコーポレーション 進研ゼミ」では、本作収録曲「Spring」が使用されているが、CM original versionとは少し異なる。CMでは、伴奏のピアノに加えてアコースティックギターも重なり16分音符粒が細かく、より爽快で軽快な印象になっている。

2004年3月6日CM放送開始「サントリー 京都福寿園 伊右衛門」では、本作収録曲「Oriental Wind」がしようされているが、CM original versionとは異なる。

 

 

久石譲 『PIANO STORIES 4 FREEDOM』

1.人生のメリーゴーランド (映画「ハウルの動く城」メインテーマ リアレンジヴァージョン)
2.Ikaros (Tohato「キャラメルコーン」CFソング)
3.Spring (Benesse「進研ゼミ」CFソング)
4.Fragile Dream
5.Oriental Wind (サントリー緑茶「伊右衛門」CFソング)
6.Legend (MBS「美の京都遺産」テーマソング)
7.Lost Sheep on the bed
8.Constriction
9.Birthday

初回盤:「人生のメリーゴーランド」ピアノ譜 封入

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano:Joe Hisaishi

Strings:Angèle Dubeau & La Pietà (except Track-9)
Solo Violin:Angèle Dubeau
Percussion:Sawako Yasue
Bandoneon:Koji Kyotani
Guitar:Masayoshi Furukawa
Pianica:Joe Hisaishi
Strings:Koike Hiroyuki Strings (Track-9)
Interpreter:Iris Germain

Recorded at
Wonder Station
Victor Studio
HAKUJU HALL

 

FREEDOM PIANO STORIES 4

1.Merry-Go-Round of Life (from ‘Howl’s Moving Castle’)
2.Ikaros
3.Spring
4.Fragile Dream
5.Oriental Wind
6.Legend
7.Lost Sheep on the bed
8.Constriction
9.Birthday

 

Disc. 久石譲 『七子と七生 ~姉と弟になれる日~』 *Unreleased

2004年10月4日 TV放送

 

NHS BSハイビジョンドラマ 『七子と七生~姉と弟になれる日~』
原作:瀬尾まいこ 音楽:久石譲 出演:蒼井優 / 知念侑李 他

 

第59回芸術祭優秀賞受賞作品。上海テレビ祭審査員特別賞受賞作品。

人と交わることを拒み続けている多感な高校生の少女・七子が、父の違う弟との出会いと葛藤、そして母親との永遠の別れを通して、大人へと成長していく姿を詩情豊に描く。

 

2005年5月25日 DVD発売

2005年8月11日 NHK総合にて地上波初放送

 

 

本作品のサウンドトラックは未発売である。

全編をとおして印象的に流れるピアノによるメインテーマ。一度聴くと忘れられないとても印象的な切ないメロディである。他にもBGMとしていくつかメロディのある楽曲がピアノや弦楽器によって奏でられるものもあるが、多くはメロディをもたない楽曲が多い。ピアノ、ギター、シンセサイザーといった、アコースティックでシンプルな音楽構成となっている。

メインテーマはオープニングから流れ、物語の印象的なシーン、重要なシーンで繰り返される。またピッツィカートによる変奏など、メインテーマをモチーフとした楽曲も登場する。ピアノによるメインテーマが4-5回、ピッツィカートによるメインテーマ変奏が3-4回、これだけをとっても、いかにこの作品がメインテーマ1本おしなのかがわかる。それだけ繰り返させる旋律だけあって、観終わったあとに強烈に印象に残るのだ。

物語エンディング~エンドロールでは、ピアノによるメインテーマに、アコスティックギターが加わったバージョンが流れる。シンセサイザーも隠し味として使われているがリズム系はなくしっとりと聴かせている。

 

ピアノによるベスト・アルバム『ENCORE』に収録されていてもおかしくないそれほどの隠れた名曲である。※「ENCORE」(2002)なので、時系列上これは無理である

余談だが、雰囲気が近い楽曲といえば、「ENCORE」に収録された「はつ恋」メインテーマだろうか。もちろんメロディーも曲想も違うのだけれど、個人的には「はつ恋」よりもインパクトと切ない余韻が強い。

サウンドトラックも発売されていない、かつメインテーマ1曲としてもどのアルバムにも収録されていない、よって要望も多いピアノ譜なども発売されていない、そんな知る人ぞ知る名曲である。

いつかなにかのかたちで作品化されることを祈るばかりである。

 

 

七子と七生~姉と弟になれる日~

 

Disc. 久石譲 『NHK シリーズ世界遺産100テーマ』 *Unreleased

2004年 TV放送開始

 

NHK 「シリーズ世界遺産100」
音楽:久石譲

 

オープニング用とエンディング用の2バージョン。どちらも30秒程度の楽曲。

※未CD化
※itunesにて「オープニング・テーマ曲」は購入可能

 

2006年開催「「名曲の旅・世界遺産コンサート」〜伝えよう地球の宝〜」にて唯一コンサート披露されている。この模様は当時TV放送もされた。それによると同楽曲のオーケストラ編曲は他者によるものである。

フルオーケストラによるシンフォニー・バージョン(約2分)、ピアノによるピアノソロ・バージョン(約1分)も存在する。いずれも期間限定配信などによるもので、計4バージョンのバリエーションがある。

 

 

NHK 世界遺産100 サムネイル