Disc. 『太王四神記 プレビューDVD 金盤』

2007年3月7日 DVD発売 AVBC-26243

 

韓国テレビドラマ「太王四神記」
監督:キム・ジョンハク 音楽:久石譲 出演:ペ・ヨンジュン 他
放送期間:2008年4月5日~2008年9月27日 (全24回) NHS総合
(韓国では2007年9~12月放送)

 

ドラマ放送に先がけて発売された公式DVD第1弾
「太王四神記 プレビューDVD 金盤」

 

撮影中のペ・ヨンジュンの様子やメッセージ、物語の時代背景・登場人物の紹介、予告編映像などが収録されている。

 

注目すべきは本作品に収録されてるBGM音楽。

久石譲がこの作品のために書き下ろした楽曲のデモ音源がふんだんに使われている。放送前に発売されたDVD作品だけあって、収録内容しかり音楽においても制作期間中にあたる。よってサウンド・トラック制作前の仮音源、シンセサイザーによるデモ音源版を聴くことができる。

メインテーマから主要楽曲のシンセデモ版、サウンド・トラックには収録されていない未使用バージョンや未使用楽曲までも。メインテーマですら、メロディの旋律が完成版とは異なっている箇所があるところもまた興味深い。

DVDクレジットにもあるとおり、正式に許諾し本作品に使用されることとなった久石譲デモ音源であるが、後にも先にも、このように完成楽曲前のデモ音源が市販商品にふんだんに使われることはなく、とても貴重な音源となる。

サウンド・トラックではこれらのデモ音源をベースし、フルオーケストラで再現、新たにレコーディングされており、楽曲の変化の過程を垣間見ることができる希少なパターンである。同時に久石譲のシンセサイザーによる仮音源・デモ音源が、完成版とほぼ遜色ないくらいに緻密にアレンジされ、その完成度を誇っているかも証明するものとなっている。

 

巨大セットが組まれた韓国撮影現場を訪れての久石譲インタビュー(前編)も収録されている。

 

 

太王四神記 プレビューDVD 金盤

DVD収録内容
・オープニング
・太王四神記予告編 *
・太王四神記とは?-キム・ジョンハク監督インタビュー- *
・最新メイキング映像 -ペ・ヨンジュンがタムドクになるまで-(武術編/乗馬編) *
・タムドクのビジュアルコンセプト(衣装編/ヘアメイク編) *
・撮影現場ハイライト 前編 *
・久石譲インタビュー 前編 *
・ワンポイント・ハングル講座 GOLD編
・ペ・ヨンジュンからのメッセージ
・チェジュ市選定飲食店 -外国人観光客ベスト店1・2-
・銀盤予告 *

* 久石譲作曲のデモ音源を使用

本編46分

 

Disc. 久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

2006年10月4日 CD発売 UPCI-1052

 

2005年公開 映画「トンマッコルへようこそ」
(原題:Welcome to Dongmakgol)
監督:PARK Kwang-hyun パク・クァンヒョン 音楽:久石譲

日本公開日:2006年10月28日

 

久石にとって初めて手がけた韓国映画となる本作で日本人として初となる第四回大韓民国映画大賞最優秀音楽賞を受賞。もちろん日本人としては史上初の快挙。さらに、韓国のアカデミー賞ともいわれている権威ある映画賞である大鐘賞でも最優秀音楽賞にノミネートされた。

 

 

対談:パク・クァンヒョン監督 × 久石譲

2005年の韓国映画界で最大の収穫になった『トンマッコルへようこそ』。神に祝福されたような成功ぶりだが、実は製作時点では問題が山積し、公開されるまでは”呪われたプロジェクト”とさえ陰で呼ばれていたという。監督自身、3年におよぶ製作のどの段階でも苦労が絶えず、何度も「もうあきらめたい」と思った、と語る。だが、それほどの難産だったデビュー作で、音楽監督を久石譲が引き受けてくれたことは、何よりの奇跡だった。2人のコラボレーションの成果は、完成作品が何よりも証明している。久しぶりに再会する2人の嬉しそうな笑顔、つきない話に、周囲の空気まで温かで穏やかなオーラに満たされた。

 

パク・クァンヒョン:
大学時代から久石先生の音楽の大ファンでした。『菊次郎の夏』の美しい旋律も、『ソナチネ』のエネルギーに満ちた音楽も、もちろん宮崎駿作品の音楽も、本当に心酔しています。最初にお会いしたときはファン丸出しで、持っているCDすべてにサインしてもらいました(笑)。すごく緊張して行ったのですが、とても優しい笑顔で迎えてくださって、そのことにまた感動しました。一瞬、目の前にいる人が本当の巨匠であることを忘れてしまうほど、心優しい笑顔だったんです。

久石譲:
僕がまず思ったのは、「俳優になってもいいぐらいかっこよくて若い人だ」でした(笑)。でも、いざこの作品のビジョンを話し出すと、止まらない。細部にいたるまで明快なアイディアを持っている。これぐらい強い思いを持っている作品なら絶対にいい映画になると確信しました。それに、監督も新人だし、スタッフもみんな若いと聞いて、それなら予定調和な作業ではなく、エネルギーに溢れた現場になるだろうというワクワクする期待感も持ちました。

パク・クァンヒョン:
今回一緒に作業してわかったんですが、どうやら私たちはどちらもビジネス感覚に欠けていて(笑)、確か事前の打ち合わせでは、「だいたい17曲ぐらいでしょう」ということだったはずですが、やっていくうちに曲数がどんどん増えていきました。久石先生が「ここにも曲をつけようか」とおっしゃって、私も「いいですね」と答える、そんなやりとりをしていくうち、結果的に34曲になりました。最初はオーケストラも小規模なものを考えていましたが、先生が70人編成にしたいと提案してくださったんです。以前に宮崎作品のDVDの特典映像で、久石先生がオーケストラを指揮していて、それを宮崎監督が後ろに座って見ている場面がありました。それを見て以来、「宮崎監督みたいに後ろに座って久石先生が僕の映画のために指揮するところを見る」というのが夢の一つになったんです。目の前で久石先生が汗をかかれて何度もTシャツを着替えながら指揮しているところを眺めていたら、「ああ自分の夢が今かなっているんだ」と思って、鳥肌が立つほど感激しました。

久石譲:
映画は、どこに音楽を入れて、どこには入れないか、それを判断することも大事な作業です。この作品の場合、戦争の話ではありながらファンタジーの要素があるわけで、場面場面を引き立てたり雰囲気を伝えるために音楽を入れる場所を考えていったら、結果的に34曲になりました。オーケストラの規模にしても、作品の内容が要求したからですよ。これだけの話になるとスケール感も必要だし、より深い感情を表現するために二管編成は必然でした。重厚さ、弦の優しさがほしかったし、特殊な楽器を使うことで不思議感を出すことも狙いました。この作品の曲は、沖縄のスタジオに10日間ぐらいこもって集中してつくりました。毎日、海を眺めながら、真冬の戦闘シーンに曲をつけていたわけです(笑)。例えばチョウチョのシーンの旋律は、実は沖縄の音階を取り入れているんです。不思議な感じが出せて、いい効果になったと思います。

パク・クァンヒョン:
一方で、例えばイノシシのシーンは、原始的なリズムで力強いエネルギーを感じるとともに、胸が高鳴るような喜びの気持ちも表現されています。どの曲も大好きですが、どしゃ降りの雨の中ヨイルが自分の汚い靴下を脱いで少年兵の顔を拭う場面がひときわ好きです。胸に響くと同時に、気持ちがよくなります。本当に、音楽のおかげで作品全体に神秘性と深みが増しました。

久石譲:
イノシシのシーンは、実をいうとね、送られてきた映像を見たとき、てっきり未編集バージョンだろうって思ってたんですよ(笑)。スローモーションがずっと続く長いシーンだったから、きっと途中でノーマルスピードに変えて編集するんだろう、と。だけど、待てども待てども送られてこない。「送ったものが最終バージョンです」って言われて、正直なところぞっとしましたよ。これは大変だって。あそこが一番苦労しましたね。ところが、完成作品を見ると、監督の狙いがぴったり当たって、ものすごく力強いシーンになっていた。おかしかったのは、韓国での完成披露試写会で質問がイノシシのシーンに集中してしまって、俳優さんが「俺のことも聞いてくれよ」って(笑)。

パク・クァンヒョン:
チョン・ジェヨンさんですね。「自分は主役だと聞いていたのに、出来上がってみたら自分の場面は少なくて、イノシシやチョウチョのほうが目立ってるじゃないか」って、最初はちょっとスネてました(笑)。私が最後まで編集の判断に迷ったシーンが3つあって、イントロの部分とイノシシのシーン、それからラストの戦闘シーンでした。ずっと悩みつづけて、久石先生にもスケジュール的にずいぶんご迷惑をおかけしてしまいました。

久石譲:
確かに時間的にはきつかったけど、逆にいうと今回はそれ以外の部分での葛藤や摩擦がまったくなくて、心から気持ちよくできました。僕自身、韓国映画という初めての場にチャレンジして、自分の可能性を広げられたと思っています。監督やスタッフから、作る情熱がものすごく伝わってきて、気持ちが燃えました。

(取材・文 片岡真由美)

Blog. 映画『トンマッコルへようこそ』(2005) 久石譲インタビュー 劇場用パンフレットより

 

 

 

 

 

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

1. Welcome to Dongmakgol
2.Opening
3.Butterfly
4.トンマッコルの村
5.村への行進
6.N. Korea vs S. Korea
7.おばあちゃん
8.Love and Grande
9.対立
10.イノシシ
11.友情
12.ソリのワルツ
13.悲しい過去
14.バタフライの逆襲
15.アメリカ軍
16.Invasion
17.ヨイルの死
18.村人との別れと戦いへ
19.戦闘
20.男たちは…
21.Paradise

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
Vocal:麻衣 / Mitsuko

 

Disc. 久石譲 『THE BEST COLLECTION presented by Wonderland Records』

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

2006年6月7日 CD発売 UPCI-1048

 

久石譲が主宰するレーベル ワンダーランドレコードからのベスト・セレクション。レーベル・テーマ「EVERGREEN」を象徴した、本人自らの選曲、リマスタリング音源で構成されたセレクト・アルバム。

 

 

音楽の”WONDERLAND”の素晴しき城主、久石譲

日本を代表する、というより今や世界的にその名を知られている作曲家であり、ピアニストである久石譲は、その知名度と、多くの人に作品が愛されているのと対照的に意外なほど、その実像と本質が一般的には伝わっていないアーティストではないだろうか。

僕は久石譲がプロデュースするレーベル”Wonderland Records”からリリースされたアルバムのベスト盤『THE BEST COLLECTION』を聴いて、改めてそのことを思った。初のピアノ・ソロ・アルバムとして1988年にリリースされた『Piano Stories』でもオープニングを飾っていた「A Summer’s Day」からNHKドラマ「風の盆から」のテーマ曲「風の盆」までの見事なまでの音の連なり。”いい音楽”が時代や流行を超えて人々に愛され、存在していることは周知の事実だが、”EVERGREEN”をテーマに、久石譲の音楽観を投影させたレーベルとして、2000年に設立され、その年の12月6日に『Piano Stories』を第1弾としてリリースした”Wonderland Records”からリリースされた8枚のアルバムからの選曲に、今年リリースされる新曲3曲を加えて作られた『THE BEST COLLECTION』は単なるベスト盤というより、久石譲という稀有な才能と音楽的魅力を兼ね備えたアーティストの音楽の旅のドキュメントなのである。

それはジョエル・マイヤーウィッツという知る人ぞ知る写真家の美しい写真をカバーにした『Piano Stories』からの2曲に、久石譲の映画音楽家としての評価を決定的なものにした「あの夏、いちばん静かな海」のメインテーマ曲が続いていくあたりで明らかになる。4歳の頃からヴァイオリンを学び、国立音楽大学作曲科に入学した久石譲が最初に感化されたのが”ミニマル・ミュージック”で、出発点が現代音楽の作曲家だったということは久石譲というアーティストの本質を理解する上では非常に重要なポイントであり、「僕の作曲家としての原点はミニマルであり、一方で僕を有名にしてくれた映画音楽では叙情的なメロディー作家であることを基本にした。ただそのいずれも決して新しい方法論ではない。全く別物の両者を融合することで、本当の意味での久石独自の音楽を確立できると思う。ミニマル的なわずか数小節の短いフレーズの中で、人の心を捕らえる旋律を表現できないか…」という言葉を聞くと、「風の谷のナウシカ」から始まった宮崎アニメの一般的なファンが例外なく口にする”美しく優しいメロディー”の深みが理解できるだろうし、久石譲が作曲家としてだけでなく、アレンジャー、プロデューサーとしての才能も傑出していることがよくわかる。映像と音楽のコラボレーションの素晴しさが公開当時、評判をとった北野武監督の映画「あの夏、いちばん静かな海」から、久石譲とは何作もタッグを組んでいる大林宣彦監督の映画「ふたり」からの曲への切り返しの見事さはもはや魔術的領域にすら達している。

そう、本当にいろいろなところに連れていかれてしまうのだ。1984年の「風の谷のナウシカ」を始まりに、20年と少しの間に何と43本もの映画音楽を手がけてきた久石譲は「僕にとって、音楽は生きている上で一番好きなことで、映画は2番目に好き。その両方をいっぺんにできるのが映画音楽。映画音楽を作る場合、映像と音楽は必ず対等であるように心がけている。映画には大もとには脚本があって、そこからイマジネーションを膨らませて、片方は映像に、もう片方は音楽になる。勿論、音楽は映像に関連しているわけだけど、たいがいの場合、追随し過ぎてしまう。泣くシーンでは悲しいメロディーとかね。逆に映画のコンセプトから考えたら、音楽はそうする必要がなかったりもする。映像と音楽をもっと戦わせてもいいのではないかと…」と語っているが、その音楽のイマジネイティブな広がりとスケールの大きさは、間違いなくこのクリエイティブな視点と姿勢が反映されたものといえるのではないだろうか。

そして、Wonderland Recordsからリリースされている大林宣彦監督の映画「はるか、ノスタルジィ」のサントラ盤に添付されたブックレットに久石譲が書いた文章の一節が、映像と音楽の世界を、また音楽の多くのジャンルの世界を、自由奔放に往き来している久石譲というアーティストの思考回路の深さを僕に教えてくれた。

「この映画に音楽を付けるに当たって色々と悩み、最初はロマンティックな曲を色々考えたりしましたが、結果的にテーマ的には”過去に対面して行くサスペンス”という括りでの音楽にしようと考えました。これはある時ヒッチコックの「めまい」(1958年)をレンタルビデオでたまたま見た時に、出だしがサスペンス調に作られているという事に気がつき、「はるか、ノスタルジィ」も自分の過去に対面するサスペンスなのだという共通項の発見から考えついた事です。このようにすることで最終的に出会った所に本当のロマンがあるというような作りにすればこの映画は行けると考え、大林監督にこの話をし”それは最高にいい”という事になり、テーマのメロディーをロマンにもサスペンスにも取れるような複雑なものにして、短いモチーフ風な扱いをすると完全にサスペンス音楽になってしまうようなものに仕上げました。その後この「追憶のX.T.C.」というテーマ曲は「MY LOST CITY」の「Tango X.T.C.」という曲に発展していくことになりました」

やや長い引用になったが、久石譲の物作りに対する考え方やアプローチを知るには非常に興味深い文章であり、このアルバムの中盤からエンディングに至るまでの流れとどこかで通底しているようにも僕には思える。日本映画界に大きく貢献してきた今までの実績とその功績が評価され、久石譲は2002年淀川長治賞を受賞しているが、先にも書いたように多くの人の記憶に残っている美しいメロディーと壮麗なサウンドは驚くべき計算と準備とテクニックがあって初めて成立しているのである。

だが、それにしても、1989年に6枚目のソロ・アルバムとしてリリースされた『PRETENDER』の中から選び出された「VIEW OF SILENCE」のアレンジの見事さはどんな言葉を使って形容すればいいのだろうか。どの曲を聴いても、久石譲の楽器の鳴らし方のうまさには改めて唸らされ、今回のアルバムでいくつもの新しい発見をしたのはうれしい驚きだったが、ふるえるようなストリングスがピアノと絡み合い、ひとつずつの楽器が知的な会話をして、全体としては官能的に匂いが漂う「VIEW OF SILENCE」はアレンジャーとしてもその時代に既に久石譲が世界的レベルに達していたことの証であり、続く『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』から選ばれた「千と千尋の神隠し」組曲の2曲も、自身の作品をオーケストラ用にアレンジしてここまで昇華できるということに素直に脱帽させられてしまう。久石譲が、”戦友”と呼び、”Wonderland Records”に初のオリジナル・アルバム・アーティストとして迎え入れたチェリスト、近藤浩志のソロ・アルバム『Arcant』から選び出された「風の谷のナウシカ」組曲(改訂版)「風の伝説」の素晴しさも特筆すべきものがあるし、続く2曲と合わせて絶妙なレーベルのプロモーションになっている。

あとは全16曲の収録曲のうち、唯一のヴォーカル・ナンバーである「さくらが咲いたよ」と、久石譲を”楽界の魔王”と形容して讃えている脚本家、市川森一の依頼による仕事となったNHKドラマ「風の盆から」のサントラ盤から選び出された2曲について書いておけばいい。

久石譲が坂口安吾の名作「桜の森の満開の下」にインスピレーションを受けて書き下ろし、1994年のソロ・アルバム『地上の楽園』に収録した曲を、久石譲の愛娘、麻衣が全く新しい楽曲としてリメイクした「さくらが咲いたよ」は、ただ桜の表面的な美しさだけではなく、桜が持つ妖しさや狂おしさ、儚さが見事なまでに表現されているところが実に久石譲らしいし、続く「彷徨」は本人がニヤリと笑いながら原点回帰をしているようなところにある種の凄みすら感じられる。

でも、それが久石譲というアーティストの唯一無二なところだろう。例えば「ポップスの分野に入ったけれど、音楽の可能性を追求する精神は前衛音楽と同じ。常に新たな音楽につながるものをと考えながら作曲している」という言葉ひとつとっても、久石譲がかつて”ニューエイジ・ミュージック”という言葉つきで紹介され、ちょっと耳ざわりのいい音楽を聴かせたものの気がついたら姿を消してしまったような人たちとは全く違うレベルのところに存在していることがわかるだろうし、しばらく前に久々に久石譲本人と会話を交わした時に、僕は彼がアメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンときて、日本の久石譲というような関係性をみてとったのである。

そして、この『THE BEST COLLECTION』を聴いて、それを確信した。また、こうして自分自身の音楽作品をきちんと整理し、世に送り出していこうという姿勢に心からの拍手を贈りたい。映画音楽から自身のソロ・アルバム、さまざまなアプローチによるコンサート活動、はたまたイベント・プロデュースに至るまで、久石譲の旺盛なまでの創作意欲は全くとどまるところを知らないが、「ピアノは、僕にとってはとても大事な楽器。以前は作曲の道具でしたが、コンサートを行うようになって、表現の道具にもなりました。ピアノとの対話が、自分の別の可能性を引き出してくれる。作曲においては極めて理性的である自分がピアノを通してメンタルな面で人に訴えかけることができる」と語る純粋さが僕はまた好きだ。

立川直樹

(CDライナーノーツより)

 

 

誰もが耳にしたことのある、久石譲の旋律が集約されてはいるが、同レーベルから発表された8枚のアルバムの中からセレクトという趣向のため、オールタイムベストではない。

1980年代後半~1990年代前半の廃盤作品を自身レーベルより再発売した作品から、そして2000年以降の作品からという構成になっている。そういった意味では時代や流行を超えた色褪せることのない、音楽の旅。

それでも、(2)はアニメ「アリオン」からの美しい叙情的なピアノ曲だし、(3)~(7)は北野武監督作品や大林宣彦監督作品から、(9)~(10)は宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」より、コンサートライブ音源から、(14)は1994年CD作品「地上の楽園」に収録されていた同曲を、麻衣のヴォーカルによって新しくリメイク、本作だけに収録された楽曲となっている。

 

以下のオリジナル収録作品のリストもご参考。

 

「Piano Stories」(1988年) ・・ (1) (2)
「あの夏、いちばん静かな海」(1991年) ・・ (3) (4)
「ふたり」(1991年) ・・ (5) (6)
「はるか、ノスタルジィ」(1993年) ・・ (7)
「PRETENDER」(1989年) ・・ (8)
「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」(2002年) ・・ (9) (10)
「Arcant / 近藤浩志」(2003年) ・・ (11)
「Winter Garden / 鈴木理恵子」(2006年) ・・ (12)
「FREEDOM PIANO STORIES 4」(2005年) ・・ (13)
※本作品初収録 ・・ (14)
「風の盆」(2002年) ・・ (15) (16)

 

 

 

久石譲 『THE BEST COLLECTION』

1.A Summer’s Day
2.Resphoina
3.Silent Love
4.Clifside Waltz
5.風の時間
6.少女のままで
7.出会い ~追憶のX.T.C.~
8.VIEW OF SILENCE
9.あの夏へ
10.6番目の駅
11.風の伝説 「風の谷のナウシカ」組曲 (改訂版)から
12.For You
13.Fragile Dream
14.さくらが咲いたよ Vocal:麻衣
15.彷徨
16.風の盆

 

Disc. 久石譲 『RAKUEN / MALDIVES』

久石譲 『RAKUEN』

2006年4月26日 CD発売 WRCT-1010

 

 

コメント

ミニマルアーティストを止めて映画を何本か録った後、僕はこの「楽園 モルディブ」の音楽を作った。きわめてシンプルでありながら明るい透明な世界観ができたのは、三好さんと行ったモルディブでの体験と美しい写真がなければ書かなかった、あるいは書けなかった。

そして長い年月を経て今聞いてみると、それが何よりもミニマルミュージック的であったことに僕はある種の感慨を抱く。「心の中のMistral(季節風)」そんな体験をこのアルバムで一緒にできれば僕らの「楽園」は幸せだ。

久石譲

 

昔、久石さんと一緒にモルディブの島々をあちこち旅をしました。20年以上も前です。久石さんにつくっていただいたこの音楽によって、僕の楽園へのイメージがしっかりと形になりました。僕の「RAKUEN」の源がこの音楽です。

三好和義

(コメント ~CDライナーノートより)

 

 

 

4月26日(水)~5月7日(日)新宿タカシマヤにて三好和義写真展「南国の楽園 ON THE BEACH」がありました。なぜ三好和義さんの写真展が関係あるの?と疑問をもたれる方のために説明いたしますと、4月26日にWonderland Recordsからリリースされた『RAKUEN / MALDIVES』は1985年に発売されたビデオ『RAKUEN』に久石が音楽をつけたサウンドトラックで、その映像ビデオを撮影したのが写真家の三好和義さんです。今回『RAKUEN / MALDIVES』を発売するにあたり三好さんの事務所へ連絡すると、偶然にも三好さんの方でも新宿タカシマヤで写真展を催すとのこと。そういった経緯からCDの発売を写真展に合わせることになったのです。

タカシマヤ10階の展示場にて三好和義さんがこれまで撮影した地球にいちばん美しい場所”楽園”をテーマにした写真約200点がところ狭しと展示され、南国の風景やそこに住む人たちの日常などを映し出していました。ゴールデンウィークということもあって写真展には多くの人だかりができており、会場のBGMとして流れていた『RAKUEN / MALDIVES』のおかげもあって気分はまさに楽園でした。会場には三好さんもおいでになり、サイン会やギャラリートークショーなども開催され展示会は大盛況のうちに幕を閉じました。

(三好和義写真展『南国の楽園 ON THE BEACH』レポート ファンクラブ会報 JOE CLUB vol.2 2006.06 より)

 

 

(VHS CSMV0062)

 

RAKUEN/MALDIVESは、”水平線のフォトグラファー”の異名をとる三好和義氏の”RAKUEN”シリーズ第3弾目の作品である。いい画面でフィックスしたまま長い時間見せるという、第1弾からの基本姿勢をふまえながらモルディブを舞台に撮影している。今回の作品を制作するにあたり、三好氏は1984年から時間の許す限りモルディブを訪れている。その時の体験について三好氏は、こう語っている。──『ある日、どこからともなく僕の心の奥をくすぐる様な香りが、プーンとしてきた。これだ!僕のRAKUENの香りがしたんだ。目に入ってきたのは、巨大な房のバナナだった。僕のRAKUENを見つけた気がした。僕の祖先はきっと、いつもバナナと一緒に暮らしていたんだと思う。また、モルディブでは島が不思議な見え方をするんだ。ボートで走っていると、水変遷に椰子の木が2、3本霞んで見える。そのうち5本、10本と見えてきて、近づくにつれて白い砂が浮いたり沈んだり見えてくるだ。地球が丸いことをその時、感じたんだ』──三好氏はまったく感性の人なのだ。今回のビデオの撮影期間は1985年2月から3月にかけての約1カ月間。むろん三好氏本業の写真を撮る時間を含めてである。今回の作品では特に長望遠(35mmカメラで24mm相当)と広角(35mmカメラで24mm相当)のレンズを多用し、三好氏独特の世界を創り出している。また、音楽では「風の谷のナウシカ」、「Wの悲劇」の音楽を担当した久石譲氏が、三好氏とモルディブへ同行し、フェアライトとシンセサイザーを駆使した曲を創りあげている。三好和義のRAKUEN/MALDIVES。鳥になって、モルディブの空を飛んでいるような気分。自分の部屋がモルディブの砂浜になった気分。海辺で音楽でも聴いているような気軽な感じで、見てほしい。

(VHS封入カード より) 

 

 

 

1985年にリリースされた、写真家 三好和義氏の人気シリーズ「楽園」モルディブ版、そのビデオに収録されていた音源をリマスタリングして収録したアルバム。自身のレーベル、WANDER LAND RECORDS 設立によって約20年を経て作品化された貴重な音源。

究極の楽園ヒーリング・ミュージック。タイトルの通り安らげる楽園のような一枚。トロピカルなサウンド 楽器によるミニマルミュージック。永遠に終わることのないようなくり返すミニマル音楽が、時が止まったような時間を忘れさせてくれる楽園へと誘ってくれる。

多くのピアノやオーケストラ作品とは一線を画した心地のよいやわらかなシンセサイザーサウンド・アルバムとなっている。

 

 

久石譲 『RAKUEN』

1.RAKUEN
2.MALÉ ATOLL
3.TROPICAL WIND -a palm-
4.SILENT FISH
5.WALKIN’ TO THE MALDIVES
6.MIRAGE
7.TROPICAL WIND
8.EVENING SERENADE
9.RAKUEN SUNSET

All composed, Arranged, Produced by JOE HISAISHI
Photograph: KAZUYOSHI MIYOSHI

Remastered by TOSHIYUKI TAKAHASHI (WonderStation)

 

Disc. 久石譲 『A Chinese Tall Story 情癲大聖 Original Film Soundtrack』

久石譲 『chinese tall story』

2005年12月20日 CD+iVCD発売 CGM0169 ※輸入盤のみ

 

2006年香港公開 映画「情癲大聖」
(英題:A Chinese Tall Story 邦題:西遊記リローデッド)
監督:Jeff Lau Chun Wai ジェフ・ラウ 音楽:久石譲

 

 

西遊記を題材にしたSFファンタジー。音楽的にもアジアンテイストあり、ハリウッド映画を彷彿とさせるダイナミックさ、とりわけハリー・ポッターの世界観を思わせるファンタジーさなどバラエティーに富んだ内容になっている。

それは編成やアレンジにも現れていて、フルオーケストラ、シンセサイザー、民族楽器など多数混在するなか、うまく融合した独特な異次元、SFファンタジーの世界へ連れて行ってくれる。

主題歌(1)は、アジアの響きのするメロディアスな旋律。デュエットにより歌われ、民族楽器も絡みあう壮大な世界観を演出している。その主題歌でもありメインテーマをモチーフとしたものは、(6) (7) (11) (18) (20) などでも聴くことができる。美しい旋律をピアノや胡弓が悠々と奏でている。

 

日本では映画「西遊記リローデッド」として、DVDなどで鑑賞することができる。

 

また、主題歌/メインテーマ曲は、オリジナル・ソロアルバム「Asian X.T.C.」にて「A Chinese Tall Story」として収録。サウンドトラック用とは別に、原曲の持ち味をそのままに、ピアノと二胡、そしてストリングが叙情的に流れる、完成された1曲として聴くことができる。

 

 

 

久石譲 『chinese tall story』

1.情聖 Sacred Love – 謝霆鋒/ 蔡卓妍 (情癲大聖主題曲)
2.佛光初現 Prologue / The Triumphant Entrance
3.妖夜 Dogfight Over Shache
4.奪命煩音 Words Are Lethal
5.天王有難 Rout Of The Four Heavenly Knights
6.你跳我跳/ 愛情笨豬跳 Lover’s Gambit
7.“等” Longing For You
8.在下唐三藏 Yours Truly, Tripitaka
9.大陰謀 The Conspiracy
10.棄明投暗 Capitulation
11.雪中送外 Twirling Snow
12.君臨天下 Alien Invasion
13.美-艷 I Can Fly!
14.戰役愛你萬年 Help is On The Way
15.世界的終末 Annihilation of The Tree Spirit
16.秘密 The Princess’s Secret
17.再鬧大宮 Storming of The Celestial Court
18.我知道I Know
19.回頭是岸 Divine Manifestation
20.無限的愛 A Journey West

iVCD
1. 唐僧取情经
2. 莎车城大影院 (I)情圣 MV (II)爱 MV (III)情癫大圣 制作特辑 (IV)情癫大圣 剧场版第一版预告片 (V)情癫大圣 剧场版第二版预告片
3. 一切从癫开始
4. 造妖者
5. 免费唐僧肉尽情下载
6. 唐僧棒打妖精游戏
7. 西域圣诞 e Card

Music Composed and Produced by Joe Hisaishi

Piano:Joe Hisaishi

Performed by The China Philharmonic Orchestra
Conducted by Joe Hisaishi

二胡 Er-hu:Chen Jun
Kena:Takashi Asahi

Recorded at 北京電影廠録音室(中国), Wonder Station(日本)

 

Disc. 久石譲 『Welcome to Dongmakgol』

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

2005年9月14日 CD発売 DK0471 ※輸入盤

 

2005年公開 映画「Welcome to Dongmakgol」
(邦題:トンマッコルへようこそ)
監督:PARK Kwang-hyun パク・クァンヒョン 音楽:久石譲

 

日本国内盤サウンドトラック「トンマッコルへようこそ」と一部選曲および曲数が異なる

 

 

確かに、韓国にて発売された『Welcome to Dongmakgol』のサントラよりも、10月4日にユニバーサルより発売される『トンマッコルへようこそ』のサントラの方が3曲少なくなっています。この理由は、映画に使用されているすべての楽曲からサントラにいれるにふさわしい楽曲を厳選した結果です。曲目、曲順等を含め一枚のサントラアルバムとして、よりまとまりのあるものになっていると思います。

韓国にて発売された『Welcome to Dongmakgol』のサウンドトラックは当事務所の許諾無くして韓国側が発売し、音質に問題のあるものでした。しかし、日本で発売する『トンマッコルへようこそ』のサウンドトラックは日本でリマスタリングをし、音質には全く問題ありません。

・韓国映画のサントラの評判について
韓国と日本の技術、文化に対する意識の差や制作過程のシステムの違いなどから、こういった事態に至ってしまいました。もちろんこの件に関しましては、昨年中に韓国と話し合いを行い、韓国国内のサントラを回収することで双方合意しております。ただし、韓国から既に輸入されてしまったものに関しては、回収等の手段をとることが非常に困難な状況で、私どもといたしましても大変遺憾に思っております。秋に映画が公開される際にユニバーサルレコードからサントラが発売されますが、新たにマスタリングを行い、良質の音を必ずお届け致します。

(Wonder City 公式発表)

 

 

 

久石譲 『トンマッコルへようこそ オリジナル・サウンドトラック』

1.a waltz of sleigh
2.welcome to Dongmakgol
3.Opening
4.The battle
5.American Army
6.a wild boar
7.N.Korea
8.no title
9.N.Korea vs S.Korea
10.Love and Grenage
11.Leaving Dongmakgol for the battle
12.falls of the popcorn
13.Dongmakgol Village
14.to the village
15.paradise
16.friendship song
17.after the battle
18.an old lady
19.Death of Yeoil
20.buried past
21.Confrontation
22.Butterfly
23.attack of butterflies
24.Resolution of Hyunchul

 

Disc. 久石譲 『NHK シリーズ世界遺産100テーマ』 *Unreleased

2004年 TV放送開始

 

NHK 「シリーズ世界遺産100」
音楽:久石譲

 

オープニング用とエンディング用の2バージョン。どちらも30秒程度の楽曲。

※未CD化
※itunesにて「オープニング・テーマ曲」は購入可能

 

2006年開催「「名曲の旅・世界遺産コンサート」〜伝えよう地球の宝〜」にて唯一コンサート披露されている。この模様は当時TV放送もされた。それによると同楽曲のオーケストラ編曲は他者によるものである。

フルオーケストラによるシンフォニー・バージョン(約2分)、ピアノによるピアノソロ・バージョン(約1分)も存在する。いずれも期間限定配信などによるもので、計4バージョンのバリエーションがある。

 

 

NHK 世界遺産100 サムネイル

 

Disc. 久石譲 『PRIVATE プライベート』

久石譲 『PRIVATE プライベート』

2004年1月21日 CD発売 WRCT-1007

 

久石譲はボーカリストだった!~本人セレクトによる初のボーカルベスト~

 

 

寄稿

映画を見ていると、ひとつやふたつ必ずや印象的なシーンがあります。特に一流の映画ともなれば、人間の視覚だけではなく、聴覚をも刺激して、音楽や効果音を含めた、ひとつのシーンを鮮明に心に刻み込むものです。また、逆に映像と音楽がミックスされることで、より印象に残るシーンが生まれます。たとえばホラー映画の代表作『エクソシスト』は、あの名曲「チューブラー・ベルズ」がなければ、怖さも半減してしまうでしょう。

日本映画を見ていて、あの名曲と言えば必ず”久石譲”という名前が浮かぶようになったのは、いつ頃からでしょうか?彼は誰もが知っている『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』などの宮崎駿作品、『ソナチネ』『菊次郎の夏』『BROTHER』などの北野武作品、『ふたり』『はるか、ノスタルジィ』などの大林宣彦作品の音楽を担当し、日本アカデミー賞最優秀音楽賞を5回も受賞している、日本映画音楽の”ヒットメーカー”です。久石譲作品はなぜたくさんの人たちのハートを捕らえて離さないんでしょうか?それは彼の作るメロディーが聴き手の心のひだにまで染み込んできて”心の琴線”を震わせる力があるからだ、と思います。

地震のエネルギーの大きさは”マグニチュード”で表します。だとしたら、名曲のエネルギーの大きさは”曲力”で表せるのではないでしょうか?すなわち、この曲は”曲力10”のすごい名曲である、云々。おそらく久石譲の作る曲は全て”曲力10以上”のすごい”名曲”に違いありません。だからこそ、たくさんの人たちのハートを侵食して、気づかないうちに心を奪ってしまっているのです。

ニューアルバム「プライベート」は、1987年『となりのトトロ・イメージソング集』から1993年のNHKスペシャル『人体II・脳と心』までのカタログから選りすぐられた久石譲本人によるボーカル曲のみで構成されています。今となってはピアニストのイメージが強い彼の作品の中でも、貴重な一枚になる事は間違いないでしょう。

このアルバムを聴いていると、自分の”脳裏のスクリーン”に自然と映像が浮かんできます。そして、いつしか心のひだから素直な感情が溶け出して、心が癒やされます。久石譲の作る曲はまさに”名曲”という”良薬”なのです。

宮澤一誠

(寄稿 ~CDライナーノーツより)

 

 

This album made by selection old following albums
M-3:NHKスペシャル 驚異の小宇宙「人体II 脳と心」サウンドトラック Vol.1 (1993)
M-12:「となりのトトロ」イメージソング集 (1987)
M-11:「ふたり」オリジナルサウンドトラック (1990)
M-4,5,6,9,10:illusion (1988)
M-2,7,8:PRETENDER (1989)

 

 

久石譲 『PRIVATE プライベート』

1.Nightmoves
2.MEET ME TONIGHT
3.Brain & Mind
4.風のHighway
5.Night City
6.冬の旅人
7.MARIA
8.WONDER CITY
9.ブレードランナーの彷徨
10. 少年の日の夕暮れ
11.草の想い
12.小さな写真

All Composed, Arranged, Produced and SUng by Joe Hisaishi

Original Tracks Recorded at Roppongi, Kannonzaki, New York and London

Remixed by Suminobu Hamada (M-7), Teruaki Ise (M-9)
Remixed at WonderStation
Mastering at WonderStation

 

1.Nightmoves
Lyric:Michael Franks
Composition:Michael Lewis Small
Arrangement:久石譲
Volcal:久石譲

2.MEET ME TONIGHT
Lyric:宇多田照實
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

3.Brain & Mind
Lyric:久石譲
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲・Jackie Sheridan

4.風のHighway
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

5.Night City
Lyric:三浦徳子
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

6.冬の旅人
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

7.MARIA
Lyric:BANDIT・KYSIA BOSTICK
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

8.WONDER CITY
Lyric:宇多田照實
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

9.ブレードランナーの彷徨
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

10.少年の日の夕暮れ
Lyric:松本一起
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲・藤澤麻衣

11.草の想い
Lyric:大林宣彦
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:大林宣彦・久石譲

12.小さな写真
Lyric:宮崎駿
Composition&Arrangement:久石譲
Vocal:久石譲

 

Disc. 久石譲 『4MOVEMENT』

久石譲 『4 MOVEMENT』

2003年3月19日 DVD/CD発売 PCBE-50470

 

2001年「うつくしま未来博」ナイトファンタジア上映作品 『4 MOVEMENT』
監督:久石譲 音楽:久石譲

久石譲 第二回監督作品

 

日本映画音楽の第一人者、久石譲が奏でる
音楽と映像のシンフォニー、「QUARTET」に続き、
自ら監督を務めた待望の映像ファンタジー!

人は心の中にいくつもの顔を持っている。
優しさと人には言えない暗い部分を…。
ミオは成長していく中で心の中の闇に生まれた
もう一人の自分とどう向き合っていくか?
音楽の精ポコとともに巨大な怪物、
黒鳥と闘いながら見つけ出していく…

【STAFF】
監督・音楽:久石譲
プロデューサー:石原真
原案:ドリアン助川
脚本:小川智子
撮影:阪本善尚
音響:橋本文雄

【CAST】
Pace Wu、黄川田将也、浅野優梨愛、山本小百合、相ヶ瀬龍史、若林淳

 

 

【ストーリー】

MOVEMENT 1
殺伐とした大都会。雑然とした風景が闇に転じると少しずつ鼓動が聞こえ、閉ざされた空間(CUBE)から一人の少女・ミオが現れる。暗闇の中で戸惑うミオが目にする1台のピアノ。彼女が鍵盤をたたくと光りが現れ、その中から可愛らしい音楽の精・ポコが誕生する。ミオの良心の象徴であるポコは、彼女の奏でるフレーズを歓喜に満ちたメロディーに導き、それはやがて大きな光とともに新たな世界へと広がっていく…

MOVEMENT 2
大自然に包まれた世界。10才になったミオはポコとともに鬱蒼と生い茂る森を進み、そこでアルトという名の少年に出会う。彼がミオ自身の心の闇であるとも知らず、その不思議な魅力に惹かれ後をついていくが、突然豹変したアルトに翻弄され、自然の脅威にもまれながら闇へと流されていく…

MOVEMENT 3
無機質な人々の流れの中にいるミオは、黒衣をまとった男と出会う。彼に導かれるまま進む道は、人間の愚かさを具現化した殺伐と狂気の世界であった。ミオは怯えと哀しみにもまれながら傷つく人々の間をさまよい歩いていく。全てが焼き尽くされた大地に辿り着いたミオは、そこで朽ち果てた1台のピアノを見つける。ピアノを弾くミオ、幼い頃の思い出が蘇る。が…

MOVEMENT 4
アルトと再会するミオ。20才に成長した二人は思い出の森へと向かい、お互いの想いに気付く。一瞬の安らぎを得たミオだったが、ふと気づくと巨大な黒鳥に変貌したアルトが、邪悪な牙でミオに襲いかかる。ポコとの必死の戦いも空しく、湖畔へ追い詰められていくミオ。しかし、そこで意外な真実が明らかにされていくのであった…

 

 

【メッセージ】

この物語は、主人公のミオが5歳、10歳、20歳と成長していく、4つの楽章(MOVEMENT)から成り立っている。ひとりの人間の心の中には様々な顔があり、とてもやさしい部分と、人にはいえない暗い部分とを皆んなが持っている。ひとりひとりの中にあるものは小さくても、世界中の人間の、つまり60億分ものエネルギーとなると、それが戦争や、憎しみといった世の中の様々な問題を起こしているのではないか。ひとりひとりの中にある問題が連鎖拡大されて戦争が起こったりする。それを解決するのは、自分自身であって、問題は自分の外にあるのではなくて、自分の中にある。「心の中の闇に生まれたもうひとりの自分とどう向き合っていくか」がこの作品の大きなテーマである。  -久石譲

 

 

 

「『4 MOVEMENT』というんですけど、これは1本目の反省から、最新テクノロジーを駆使する方法でやってるんですよ。やっぱり100パーセント満足することって、ないじゃないですか。『カルテット』を撮りおえたあとも、あのシーン、なんでもうひとつ顔のアップを撮っておかなかったんだとか、そんなことばかり考えてたら、もう1本撮りたくなっちゃんたんですよね。『4 MOVEMENT』はね、すごくいい映像が何カットか撮れてるんです」

「あっ、そういうこと言っちゃいけないか(笑)。でも、実はこれが映画のピンポイントなんですよ。北野監督もみんなおっしゃるんですけど、このシーンを撮りたくてストーリーを作ったということはあるんです。それが5つか6つ、その監督が命がけで、どうしてもこれを撮りたかったというシーンを持っている映画は、すべていい映画ですよ」

Blog. 「月刊ピアノ 2001年7月号」映画『Quartet』 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

当時博覧会会場中央の池にて、夜間開催期間中、野外特設ステージとしてウォータースクリーンにて上映された。噴水などの演出とスクリーンによる映像と音楽である。

 

音楽について。

本編でも登場する(登場人物が奏でる)ピアノやフルート、そしてシンセサイザーを基調としたサウンド構成となっている。シンプルで可愛らしい無邪気なアコースティックサウンド、反面ダークな部分を描いたシンセサイザーサウンドなどである。

主人公がピアノの鍵盤に触れるなにげない音は、同博覧会イメージソング「永遠の心」のモティーフにもなっている。その他の場面にも同メロディーの変奏が、バリエーションとして登場している。

「Crossing」にみられるミニマル的音楽要素も盛り込まれている。

同時期公開(および制作期間においても)であった映画『千と千尋の神隠し』(2001)のエッセンスを思わせるような楽曲もあり、そういった久石譲の音楽時代として聴くこともまたおもしろい。

映像音楽とはいえ、監督・音楽の両方を担っていることから、サウンドトラックという枠にはおさまらない、オリジナル・ソロ作品という捉えかたもできる作品である。

自身が監督を務める作品だけあって、映像と音楽がほぼシンクロするような緻密に練られたサウンド構成となっている。それぞれの楽曲は短いが(1-2分程度)、本編30分、サウンドトラック27分ということからも、ほぼ本編全体で音楽が流れているということでもある。

本編エンドロールにて流れる「VIEW OF SILENCE」は、オリジナル・ソロアルバム『PRETENDER』(1989)に収録されていた楽曲である。メロディーメイカーとして久石譲が存分に堪能できる、ピアノとストリングスの美しい旋律と洗練されたアレンジである。なぜこの楽曲がこの作品に取り上げられたかは、メイキングでのインタビューなどでも語られてはいない。

欲をいえば、イメージソング「永遠の心」のインストゥルメンタル・バージョンを、サウンドトラックのボーナス・トラックとしてでも収録してほしかった。DVDメイキング映像の冒頭と最後のエンドクレジットにて、「永遠の心」オーケストラ・インストゥルメンタル・バージョンが流れる。ピアノとシンフォニーによる美しい構成となっている。フェードイン・フェードアウトのため、1曲全体をとおしてこのシンフォニー版を聴くことはできない。

 

メイキング映像は、撮影記録と久石譲インタビューによって構成されている。森の撮影は屋久島で行われていることや、その他撮影場所、特殊撮影などの様子が記録されている。

音楽の精・ポコは、音符をイメージしてキャラクター化されている。

 

 

 

久石譲 『4 MOVEMENT』

【セル収録内容】
DVD ~ 本編30分 / メイキング(映像)42分
CD ~ オリジナル・サウンドトラック

初回封入特典:オリジナルポストカード

4 MOVEMENT
SOUND TRACK CD

1. Nobody
2. Poco Dance
3. Mio’s Forest
4. Alto ~もう1人の私~
5. Escape
6. Crossing
7. Darkness
8. Sand Piano
9. Refrain
10. Crisis
11. You are …
12. VIEW OF SILENCE

All Music Composed , Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Recording Studios : Wonder Station , Avaco Creative Stuidios

 

Disc. 久石譲 『風の盆 NHKドラマ「風の盆から」サウンドトラック』

久石譲 『風の盆』

2002年11月23日 CD発売 WRCT-1006

 

NHKドラマ「風の盆から」サウンドトラック

 

 

樂界の魔王

地上では聴くことの叶わない旋律。たまに夢の中で流れることはあっても、目覚めれば記憶の外へ消えてしまっている謎の旋律。そんな天界の音楽を地上にもたらしてくれる天才を私はひとり知っている。その名は久石譲。

彼と私の関わりは1987年の銀座セゾン劇場公演「楽劇・あづち」にまでさかのぼる。信長時代に渡来したイエズス会宣教師(役所広司)の霊操の世界を彷徨うこの劇は、詩と音楽の完璧な調和を必要とした。公演結果は、久石氏が天界から導いてきた、かつて聴いたこともないさまざまな調べによって奇跡のごとき成功をみた。以後、私は彼を「樂界の魔王」として畏れるに至る。仕事も、また組みたいとは願いながら滅多なことでは頼めないと思うようになった。その間にも、彼はますます高みへと昇華していき、私はといえば相も変わらず地上を這いずりまわるだけの凡夫になり果てて、とても再度の邂逅などは有り得ぬものと諦めかけていたところ、今回、ふとした思いつきから、越中おわらの「風の盆」の祭りを背景にしながら、主人公(松本幸四郎)はクラシックの指揮者という、和洋折衷のドラマを書いてしまって、さて、「これは音楽が大変」と、ディレクター。私は思わず、「久石譲なら大丈夫」。ディレクターが「引き受けてもらえますかねェ」と弱気になるのを、「当たって砕けろ」とけしかける。数日後、NHK側から「オーケーでした」の連絡を受けたときは正直なところホッとした。このドラマの成否は音楽で決まると分かっていたからだ。これでまた、ドラマが消えたのちも音楽が残ってくれる。久石氏には感謝の言葉しかない。

脚本家 市川森一

(CDライナーノーツより)

 

 

参加ミュージシャン
二胡:ジャー・パンファン チェロ:諸岡由美子

 

 

久石譲 『風の盆』

1. 風の盆
2. 彷徨(ほうこう)
3. 邂逅(かいこう)
4. 風の盆・弐
5. 彷徨・弐
6. 追憶
7. 風の盆・参

All songs are written, arranged, produced by JOE HISAISHI

additional musicians
Erhu : JIA PENG FANG appears by the courtesy of PACIFIC MOON
Violoncello : YUMIKO MOROOKA

Recording & Mixing Engineer : SUMINOBU HAMADA (Wonder Station Inc.)
Assistant engineer : HIROYUKI AKITA (Wonder Station Inc.)
Mastering engineer : SHIGEKI FUJINO (Universal Music)
Recording & Mixing at WONDER STATION
Mastering at UNIVERSAL MUSIC