Disc. 久石譲 『毛虫のボロ』 *Unreleased

2018年3月21日 映画公開

 

『毛虫のボロ』 ジブリの森のえいが

公開日:2018年3月21日(水・祝)
原作・脚本・監督:宮崎駿
声と音:タモリ
音楽:久石譲
時間:14分20秒
会場:三鷹の森ジブリ美術館 映像展示室「土星座」

 

 

■宮崎駿監督のコメント(全文)

ごあいさつ

生まれたばかりのちっぽけな毛虫に世界はどう見えているのでしょう。
小学生のとき、植物の光合成について教えられて、光合成はどう見えるのかズーッと気になっていました。
毛虫には空気の粒は見えるのかなぁとか、葉っぱをかじった時はゼリーのような味がするのかなぁとか、狩人蜂は今の戦場で飛び回っている無人攻撃機みたいなものかなぁとか…。
それでこんな映画ができてしまいました。
さいごまでつきあってくれたスタッフと、ノボロギクを教えてくれた家内と、音をあててくれたタモリさんに感謝します。
タモリさんなくては、この映画は完成しませんでした。

ありがとう
宮崎駿

2018年3月11日

Info. 2018/03/14 宮崎駿監督最新短編アニメ『毛虫のボロ』完成 久石譲ピアノ曲 より)

 

 

 

映画本編はすべてタモリによる声と音のみで、エンディングに久石譲によるピアノ曲が1曲流れる作品になっている。

また映画パンフレットの制作クレジットにも「音楽:久石譲」とあるのみなので、シンプルなピアノ曲ということになる。曲名は記載がないため曲名不明の楽曲である。

スタジオジブリ小冊子「熱風 2018年3月号」の米津玄師コメントにて楽曲の印象が少しだけ触れてある。詳細は割愛するが、一連のジブリ美術館のための音楽(展示室用BGM他)の流れをくんだ楽曲であることが推測できる。

映画パンフレットには、約15ページにおよぶ映画シーンの絵紹介、2ページにわたる宮崎駿×養老孟司 対談、プロダクションノートとして奥井敦(撮影監督)・吉田昇(美術監督)・中村幸憲(CG作画監督)のインタビューが掲載されている。

 

 

 

レビュー記

本編はタモリによる声と音だけで、唯一エンドロールで久石譲によるピアノ小曲が約1分間ほど流れる。メランコリックで不思議な印象をのこす、はっきりとしたメロディというよりも静かなピアノの調べ。フェイドアウトするわけではないけれど、まだその先もつづきそうなゆったりとした旋律。ジブリ美術館展示室用オリジナルBGMなどの世界観に共通する雰囲気をもった幻想的で神秘的なピアノ曲。

また三鷹の森ジブリ美術館「土星座」で上映されているすべての短編アニメーション映画のオープニング用として久石譲が書き下ろした「ムゼオ虫」(ジブリの森のえいがサウンドロゴ)を聴くことができる。バグパイプで始まりススワタリのような声と特徴的な打楽器たち、「となりのトトロ」の音楽世界に通じる約10秒間の音づくりがされている。

未音源化作品。

 

 

2024.8 追記

映画『君たちはどう生きるか』の本編音楽としても使用されている。

 

 

 

 

Info. 2018/03/18 第12回 アジア・フィルム・アワード 最優秀作曲賞 久石譲 映画『Our Time Will Come』受賞

第12回アジア・フィルム・アワードにて、最優秀作曲賞 久石譲が受賞しました。映画『Our Time Will Come (明月几时有/明月幾時有)』での受賞になります。

 

中国・香港合作映画
『Our Time Will Come (明月几时有/明月幾時有)』 “Info. 2018/03/18 第12回 アジア・フィルム・アワード 最優秀作曲賞 久石譲 映画『Our Time Will Come』受賞” の続きを読む

Disc. 久石譲 『Oriental Wind』 2018 New version *Unreleased

2018年3月18日 TVCM放送

 

サントリー緑茶 伊右衛門「こころの茶屋 編」にて「Oriental Wind」のNewヴァージョン登場。2004年から2012年まで同CMシリーズにて様々なヴァージョンで使用されてきた「Oriental Wind」。2017年に5年ぶりに新ヴァージョンにて再登場して、翌2018年も新たなヴァージョンがうまれた。

 

商品名:サントリー緑茶 伊右衛門
出演者:本木雅弘/宮沢りえ/草彅剛
Web公開日:2018年3月16日
オンエア開始日:2018年3月18日
ナレーター:松川信
使用楽曲:Oriental Wind
作曲家:久石譲

 

3月18日CMオンエア開始

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 ティザー』篇 30秒 草彅剛 サントリー CM
  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 ティザー/歌』篇 60秒 本木雅弘 宮沢りえ 草彅剛 サントリー CM
  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 歌』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 草彅剛 サントリー CM
  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 歌 特別』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 草彅剛 サントリー CM
  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 足しびれ』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 草彅剛 サントリー CM

 

4月9日 CMオンエア開始

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 地図』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 草彅剛 サントリー CM
  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 自撮り』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 草彅剛 サントリー CM

 

4月9日 Web公開

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋』 草彅剛篇 メイキングムービー 1分28秒 本木雅弘 宮沢りえ 草彅剛 サントリー

 

4月9日 ラジオCM

  • 草彅剛 挑戦篇 40秒
  • 草彅剛 春の風編 40秒
  • 草彅剛 ジーンズ篇 40秒

 

 

 

4月19日「たらい篇」が追加公開。4月23日からTVCMもオンエア開始。

 

商品名:サントリー緑茶 伊右衛門
出演者:本木雅弘/宮沢りえ/加藤茶/高木ブー/仲本工事
Web公開日:2018年4月19日
オンエア開始日:2018年4月23日
ナレーター:松川信
使用楽曲:Oriental Wind
作曲家:久石譲

 

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 たらい』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 加藤茶 高木ブー 仲本工事 サントリーCM

 

 

5月14日ラジオCM

  • 加藤茶・高木ブー・仲本工事シリーズ 前を向く言葉篇 40秒
  • 加藤茶・高木ブー・仲本工事シリーズ ひと息編 40秒
  • 加藤茶・高木ブー・仲本工事シリーズ お茶の間に必要なもの篇 40秒

 

7月1日Web公開

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋』 ザ・ドリフターズ篇 メイキングムービー 1分28秒 本木雅弘 宮沢りえ 加藤茶 高木ブー 仲本工事 サントリー CM

 

7月2日CMオンエア開始

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 ずっこけ』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 加藤茶 高木ブー 仲本工事 サントリーCM

 

 

 

2019年

2月28日CM動画・メイキングムービー 公開
3月2日CMオンエア開始

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 怪物』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 松坂大輔 村田修一 サントリー CM
  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 怪物』篇 メイキングムービー 1分1秒 本木雅弘 宮沢りえ 松坂大輔 村田修一 サントリー CM

 

2月28日ラジオCM

  • 平成の怪物編 40秒

 

5月3日CM動画公開
5月4日CMオンエア開始

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 記念』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ 松坂大 サントリー CM

 

6月30日CM動画・メイキングムービー公開
7月1日CMオンエア開始

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 太眉』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ イモトアヤコ サントリー CM
  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 太眉』篇 メイキングムービー 1分4秒 本木雅弘 宮沢りえ イモトアヤコ サントリー CM

 

8月19日CM動画公開
8月20日オンエア開始

  • サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 コケ』篇 30秒 本木雅弘 宮沢りえ イモトアヤコ サントリー CM

 

 

サントリー公式サイトにおいてCM動画/メイキング動画/ラジオCM視聴可能 (※2018年7月現在)
https://www.suntory.co.jp/softdrink/iyemon/green_tea/pr/

 

 

 

2017年版を継承したようなひっかかりのあるメロディがピアノで奏でられる。その後盛り上がる旋律は弦楽3拍子に変化したりと、おなじみのメロディを変拍子を巧みに交錯させ、新鮮味を与えている。小編成アンサンブルを基調としたシンプルな構成。

清涼感もあり、懐かしさもあり、新しさもある。メロディ配置や楽器配置ふくめて現代的なアプローチである。

1コーラス目はピアノに始まり、2コーラス目はフルートが奏でる。CMでは1コーラス目(3月18日~O.A.)と2コーラス目(4月23日~O.A.)がそれぞれ使用されている。また2コーラス(1分15秒)をフルで聴くことができるのはメイキング動画から。

 

 

久石譲の代表曲のひとつともいえるこの曲「Oriental Wind」。サントリー緑茶 伊右衛門 CM曲として四季折々なバリエーションでお茶の間に響いてきた楽曲。実は2004年から現在にいたるまでCMバージョンは音源化されていない。十数バージョンに及ぶ全バージョンがいずれもCDにはなっていないという信じられない作品。

また2012年からの「新テーマ」もCD化されていない。今回のNewヴァージョンをきっかけに全CMヴァージョンのパッケージ化の機運が高まってくれればと心から願っている。

 

 

 

 

2018.9 追記

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ」コンサートツアーにて「Oriental Wind 2018」が披露される。

Oriental Wind 2018 【A】
「サントリー緑茶 伊右衛門」CM曲としておなじみの楽曲。久石譲代名詞のひとつ。余談ですが、「伊右衛門も久石譲だったのか」という声を耳にすることも少しだけ増えたように思います。時間の流れを感じると同時に、それは今でも現役バリバリに多くの曲を送り出しているからでもあります。ということでここらで一発!この楽曲も映像化・音源化してほしかった(過去形ではないんですが…)。2004年発表当時から一貫したそのメロディは、2018年CM版では旋律配置や変拍子を巧みに交錯させ、安心する懐かしさにみずみずしい新鮮味を与えてくれます。爽やかなCMヴァージョンが2コーラス奏され(1コーラス目ピアノメロディ~2コーラス目フルートメロディ)、「WORKS III」オーケストラ版イントロへ。中間部のサクソフォンパートはカットし、転調してクライマックスへ。現代的なアプローチで進化した2018版。そのCMヴァージョンが聴けたのもうれしいですが、中間部をカットしたこともあり「タリラリラ~ン」のメロディが始まりから終わりまで怒涛のようにたたみかけてきます。美味しいヴァージョンです。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2018」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

日本を代表する曲「Oriental Wind」の歴史は下記に

 

 

 

Info. 2018/03/16 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」ファイナルトレーラー 公開

レベルファイブは、PS4/PC用ソフト『二ノ国II レヴァナントキングダム』の公式サイトで、ファイナルトレーラーを公開しました。

 

【二ノ国II レヴァナントキングダム】ファイナルトレーラー 約1分半 “Info. 2018/03/16 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」ファイナルトレーラー 公開” の続きを読む

Info. 2018/03/16 音楽祭で久石氏が市民と“第九” (NHK 信州 NEWS WEBより) ニュース動画あり

長野市芸術館の芸術監督を務める作曲家の久石譲氏が会見し、ことし7月に長野市で行われる音楽祭「アートメントNAGANO」で公募する市民らと共に、ベートーヴェンの「第九」を演奏することを明らかにしました。

長野市芸術館ではおととしの会館以来、「アートメントNAGANO」という音楽祭を7月に開催していて、16日、久石氏が会見してことしの音楽祭のプログラムについて発表しました。 “Info. 2018/03/16 音楽祭で久石氏が市民と“第九” (NHK 信州 NEWS WEBより) ニュース動画あり” の続きを読む

Info. 2018/02/20 [雑誌] レコード芸術「青春18ディスク」2018年3月号・4月号 久石譲掲載 【3/16 Update!!】

Posted on 2018/02/14

『レコード芸術』2018年3月号(2月20日発売)の
巻頭カラー連載「青春18ディスク」に久石が登場いたします。

幼少期からオトナになるまで、青春時代の音楽体験を
思い出にまつわるディスクとともに振り返る貴重なインタビューです。
3月号では前篇、3月20日発売予定の4月号には後篇と、
2回にわたり掲載されます。ぜひお楽しみに。 “Info. 2018/02/20 [雑誌] レコード芸術「青春18ディスク」2018年3月号・4月号 久石譲掲載 【3/16 Update!!】” の続きを読む

Info. 2018/03/14 宮崎駿監督最新短編アニメ『毛虫のボロ』完成 久石譲ピアノ曲

スタジオジブリの宮崎駿監督が映画『風立ちぬ』(2013年)以降、初めて手掛けた映像作品『毛虫のボロ』(原作・脚本・監督)の完成披露試写会が3月14日、東京・三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で行われた。

「毛虫のボロ」は、長年“虫の目から見た世界”を描く企画を温めていた宮崎が原作、脚本、監督を担当した14分20秒の作品。劇中の音声は、ラストに流れる久石譲のピアノ曲以外、ボロの声や効果音などすべてをタモリが担当している。 “Info. 2018/03/14 宮崎駿監督最新短編アニメ『毛虫のボロ』完成 久石譲ピアノ曲” の続きを読む

Info. 2018/03/14 久石譲 団長のジュニア合唱団設立へ 長野市芸術館に付属

長野市芸術館を運営する市文化芸術振興財団は今春、市内の小学3年生〜高校生でつくる同館の付属合唱団「ナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)ジュニア合唱団」を設立する。同館芸術監督の久石譲さん(67)が「長野市民と近い距離で活動したい」と提案、自ら団長に就任し、指導にも当たる。

 同館を拠点にする音楽活動団体としては、久石さんが指揮する室内管弦楽団「ナガノ・チェンバー・オーケストラ」に続き二つ目。同財団によると、久石さんの提案を受けて昨年から運営態勢を検討してきた。市教育委員会や市校長会、県合唱連盟などと連携し、毎年3月に同館で定期公演を開くほか、市内を中心とした民間のイベントにも参加する方針だ。 “Info. 2018/03/14 久石譲 団長のジュニア合唱団設立へ 長野市芸術館に付属” の続きを読む

Info. 2018/03/13 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」特別インタビュー映像 第5弾「アート編」公開

レベルファイブは、PS4/PC用ソフト『二ノ国II レヴァナントキングダム』の公式サイトで、コアスタッフによる特別インタビュー映像を公開しました。

今回公開されたのは第5弾「アート編」です。

第1弾「アニメーション編」(2017年12月公開)、第2弾「キャラクター編」(2018年1月公開)、第3弾「音楽編」(2018年2月公開)、第4弾「ゲームシステム編」(2018年2月公開)とあわせて5つの特別インタビューすべてが公開されました。 “Info. 2018/03/13 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」特別インタビュー映像 第5弾「アート編」公開” の続きを読む

Blog. 「キネマ旬報増刊 1998年2月3日号 No.1247」北野武映画 久石譲インタビュー内容

Posted on 2018/03/08

「キネマ旬報増刊 1998年2月3日号 No.1247」に掲載された久石譲インタビュー内容です。「フィルムメーカーズ 2 北野武 Filmmakers 2 TAKESHI KITANO」と題されたこの本は、北野映画総特集になっています。

北野武監督と久石譲の初タッグとなった『あの夏、いちばん静かな海。』から『ソナチネ』『キッズ・リターン』『HANA-BI』までの作品について、それぞれの作品とその音楽について振り返るように語られている貴重なインタビューです。

 

 

久石譲インタビュー

「『今回、どうします?』って聞くと、『今までうまくいってるからいいんじゃない?』としか答えてくれないんです(笑)」

-『HANA-BI』がベネチア国際映画祭グランプリを受賞、『もののけ姫』(宮崎駿監督)が空前の大ヒット。97年はこの2作の音楽を担当された久石さんの当たり年だったですね。

久石:
「うれしい1年でしたね。大変だったけど(笑)。『もののけ姫』が夜中の1時半に終わって、翌日の朝から『HANA-BI』というとんでもないスケジュールだったんですよ。ただ、『もののけ姫』は3年がかりの作品で、『HANA-BI』も去年に話しをいただいていたんです。だから事前に、いろいろ考える時間もあったので、あまり苦にはなりませんでしたね。逆に、全く世界観が違う作品だったからガラッと切り替えがきいたんですね。」

-『HANA-BI』ではどんな点に苦心されたんでしょうか?

久石:
「今までの3作はどちらかというと、シンセサイザーやサンプリング楽器を多用していましたが、今回、監督からは、ストリングスや何かを使った「アコースティックな世界で、きれいな音楽があるといいね」と事前にオファーされたんです。ただ、それだと情緒的に流れすぎる可能性があるので、そうならないために、どういうスタンスをとるかということを一番考えました。今回は北野作品ではいちばんメロディを前面に出したんですよ。今までの作品はミニマル的な、音型の繰り返しみたいなのが多かったんだけれども。ただ、画面に音楽が寄り添わないで、外して、どこでどう「すき間」をつくるか、どうやって抜くかということに気をつかいました。『もののけ姫』もそうですが、97年の僕のテーマだったんですよ。」

-北野作品の第1作は『あの夏、いちばん静かな海。』からですね。

久石:
「あのときは、ニューヨークでレコーディングをしていたときにプロデューサーから電話がかかってきて。「ビートたけしさんの映画をお願いしたいんですが」って言われて、「あ、なにかの間違いです」って思わず言っちゃったという(笑)。基本的には好きな監督だったんですよ。ただ、『その男、凶暴につき』とか『3-4×10月』をみると、僕のところに話が来ると思わなかったんですね。でも帰国してから、『あの夏、いちばん静かな海。』のラッシュをみたら、「これなら分かる」と。もっときちんとみていたら見落とさずに済んだんだけど、北野さんの作品というのはすごくピュアなんですよ。表面的には暴力があったりとかいろいろあるんだけれども、その奥の精神とか出てくる人間たちって、中途半端な屈折をしていないんですね。だからその一点で考えると、自分の音楽がなぜ必要とされるかというのがよく分かったんです。

ただ、やっぱり最初はね、台詞が極端に少ないし、劇的な要素もないし、どうしようかなと思ったんです。そしたら、北野さんが、「通常、音楽が入る場面から全部、音楽を抜きましょうか」というので、「そうですね。面白いですね」って僕も答えちゃって(笑)。それで通常音楽が入るところを極力音楽を抜いたんですよ。それがすごくうまくいったと思うんですよね。あとね、「朗々とした大きな感じじゃなくて、シンプルな、寄せてはかえすようなメロディ」と言われていて、僕としては「それはミニマルの精神と同じだから」と理解しましたね。」

-ミニマルな旋律の方が印象に残るというのは、北野作品の作風の影響なんですね。

久石:
「北野さんの場合はそうでしょうね。本人の映画も要素を多くしない世界ですから、そこで音楽が過剰にものを言い出すと、すごく浮いちゃうんでね。今まで、ミニマル的な、できるだけ短いフレーズをくり返したりとかっていう方法論をとってきたのは北野監督の作風には合うんでしょうね。」

-次に『ソナチネ』なんですが、実は個人的に大好きな作品なんです。

久石:
「僕も大好きです。フェイバリットなんですよ、実は。」

-サウンドトラックを改めて聴きますと、非常にノッてつくられている印象を受けます。

久石:
「それは鋭いですね。あの頃ちょうど僕はロンドンに住みだしたばかりで、こっち(日本)に帰ってきて録った最初の仕事なんですね。しかも、あれは石垣島のロケにも付き合ったし。石垣島の持っているなにか異様な雰囲気にひかれて……その空気感を出したいとすごく思って。そういう気持ちとロンドンでの新生活によるテンションの高さが一緒に吐き出された感じで、つくっている最中も、不思議な熱気がありましたね。

映画とか音楽ですごく大事なのは空気感だと思うんです。あの時の石垣島の空気感というのがばっちり自分の中で理解できていたんで、それをどう出すかという、それに見合う音楽をすごく考えました。単に沖縄とか石垣の雰囲気を出すために、沖縄音楽を普通に取り込むのではなく、その音楽をこっち側までひっぱりこんでつくれたから、すごくうまくいきましたね。あと、石垣島に行ったとき、貝をずいぶん拾ってきたんで、貝をぶつける音をパーカッション代わりに使いましたね。別に石垣島の貝じゃなくてもよかったんだけど、気持ちの問題で(笑)。ただ、問題なのが、あの『ソナチネ』が自分の中でうまくいきすぎたために、それ以降北野映画をやるたびに、みんな頭の中で『ソナチネ』になっちゃうんです(笑)。今回の『HANA-BI』をやる時も「ああいうのが合うのかな?」って相当悩んだんです(笑)。」

-その次が96年の『キッズ・リターン』になるわけですが、北野監督の交通事故後の復帰作ということもあってか、もっともポジティヴな印象を受けますね。

久石:
「音楽的にいうと、僕は10代・20代の子が主人公だから、音楽は元気なものでやる必要性を感じていたんで、相当リズミックにしましたね。底辺のベースにあるのはユーロビート、もっというとディスコビートみたいなもの、その上に来るのが印象に非常に残るのに、歌おうと思うと歌えないくらい、拒否しているメロディなんですよ。北野さんもあのメロディをすごく気に入ってくれて、「いや~、メロディ残るなあ。いいよこれは」っておっしゃって、すごくうれしかったですね。特にラストシーンがね、「まだ始まっちゃいねえよ」って言った瞬間に、ピストルの音をサンプリングしたんですけど、ドヒューンといって、エンドロールになりますよね。もう「この効果狙ったね」って言われるくらいハマっちゃったんでね。あそこは北野さんも喜んじゃって「あのエンドロールのために映画があったなあ」なんてね。

あれはね、不思議な話、北野さんの事故後の復帰の映画であると同時に、僕にとっても復帰作だったんですよ、こんなこと話すのは初めてなんだけど。映画音楽から離れて、自分のソロアルバムをつくったり、他人のプロデュースをしたりしていて、1年半か2年のブランクがあった。そこへちょうど偶然にも、日本を代表する二人の監督に同時に頼まれたんで、「これはもう復帰しなきゃな」と。先にできたのが『キッズ・リターン』で、その次に『もののけ姫』の準備にかかった。そういう意味で『キッズ・リターン』は相当大事にしてつくった作品です。」

-北野監督はいつも音楽については、どういう指示を出されるのでしょう?

久石:
「全然ないんです。本当に、「今回、どうします?」って聞くと、「今までうまくいってるからいいんじゃない?」って答えしか返ってこないですから(笑)。逆に言うと、すごく怖い監督ですよね。こちらがよりどころにしておくことが欲しいなと思っても、ぽーんと「はい、映像は撮ったから、後は久石さんヨロシク!」みたいな感じであずけられるから、それはすごいプレッシャーですよね。

僕は各シーンの音楽よりも、「この映画にはこの音楽だ」という確信の部分がどう決まるかだけが大事なんですね。『ソナチネ』『キッズ・リターン』だったらどの音楽かということが確信としてあること。それは音楽もきちんと主張するということですよね。そういうつくり方をして、作品にきちんとなっているから、僕の音楽は通常の劇映画のサウンドトラックよりも、多くの方に聴いていただけるんだと思います。ほかの映画でも同じなんですが、きれいなメロディを書こうという気はないんですよ。メロディがシンプルに単音で弾いても、その映画の世界観が出るくらいのものというのが自分の理想なんでね。監督が意図した世界にぴったりしたものをどう探しあてるか、どういう世界観をもってつくるかということですね。注文に応じるだけではダメで、(音楽だけで)きちんと独立してその世界が成り立たなきゃいけないんです。」

 

追記-
久石譲氏のソロ作品の集大成ともいうべきシリーズ『WORKS I』では、『あの夏、いちばん静かな海。』と『ソナチネ』のテーマ曲が、ロンドン・フィルの力強い演奏による装いも新たなヴァージョンで聴ける。ベネチアで北野監督も「いや~壮大になったねえ」と喜んで聴いていたそうだ。98年3月に開催される長野パラリンピックで総合プロデューサーを務め、北野監督の次回作にも参加が決定している。「スティーヴ・ライヒの『ザ・ケイブ』じゃないけれども、ヴィジュアルを取り入れたシアターピースのような作品にチャレンジしたい」と、語られた久石さん。映画音楽にとどまらない、さらなる躍進が期待できそうだ。

[1997年12月3日東京・代々木にて]

(「キネマ旬報増刊 1998年2月3日号 No.1247」より)