Disc. 久石譲 『A Symphonic Celebration』(Domestic / International)

2023年6月30日 CD発売
通常盤 UMCK-1731
限定盤 UMCK-7191/2

2023年9月29日 LP発売 UMJK-9119/20
*生産限定盤/日本盤

 

クラシック名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからの記念すべき第一弾アルバム!
宮崎駿監督映画作品への提供曲をロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共にロンドンにてオーケストラ録音。

(CD帯より)

 

クラシック名門のドイツ・グラモフォンとの契約を発表した久石譲のグラモフォンからの第一弾アルバムは、なんと全曲宮崎駿監督作品に提供した自作曲を、新たなアレンジでオーケストラ録音。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共にロンドンで録音されたこの作品は、クラシック/J-POPアニメのどのジャンルにも通用する普遍的なサウンド。アニメ映画界で特別な存在感を持ち愛され続けるジブリ映画と久石譲のコラボレーションの結晶となっている。

デラックス・エディションのボーナスディスクには、世界中でストリーミングヒットを記録している「人生のメリーゴーランド(「ハウルの動く城」より、そして「あの夏へ(「千と千尋の神隠し」より)英語ヴァージョン」の2曲を新規アレンジにて特別収録。

 

【通常盤】
1CD
日本語解説付き

【デラックス・エディション】【限定盤】
2CD
デジパック仕様
歌詞収録
日本語解説付き

【アナログ】【生産限定盤】
2LP
日本語解説付き

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

クラシック名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからの記念すべき第一弾アルバム、全世界発売開始。

今年3月にクラシック名門レーベルのドイツ・グラモフォンとの独占契約を発表した久石譲。『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『となりのトトロ』等、宮崎駿監督映画への提供曲をシンフォニック・アレンジで収録した待望の第一弾アルバムが全世界発売された。『A Symphonic Celebration』というタイトルにふさわしく、久石譲指揮によりロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とロンドンで制作されたこのアルバムは、アニメ映画界で特別な存在感を持ち愛され続けるジブリ映画と久石譲のコラボレーションが結実したものとなっており、ジャケット写真も、その宮崎駿監督の原画を使用したものになっている。

その先駆けとして、世界でストリーミング・ヒットを記録した「人生のメリーゴーランド」(映画『ハウルの動く城』より)の新バージョンが1stシングルとして配信されると同時にYouTubeにてMusic Videoも公開された。続いて映画『魔女の宅急便』の「かあさんのほうき」と「海の見える街」の美しい新ヴァージョンもスマッシュ・ヒットを記録しているが、映画『千と千尋の神隠し』の「あの夏へ(One Summer’s Day)」の英語ヴァージョンがYouTubeにて公開された。こちらは今アルバムの為に特別に英語詞により録音された「初英語ヴァージョン」となり、イギリスのソプラニスト、グレース・デヴィッドソンの透き通るヴォーカルと久石譲のピアノ演奏が、この有名曲に新たな息吹をもたらしている。

(メーカー・トピックスより 編)

 

 

 

A Symphonic Celebration
Music from the Studio Ghibli films of Hayao Miyazaki

ヒッチコックとハーマン、スピルバーグとウィリアムズ、ゼメキスとシルベストリ、バートンとエルフマン、フェリーニとロータ。長期間に渡り映画監督と作曲家が組んで仕事をすると、ある種の魔法がかかる。彼らの想像力は芸術的な感性によって火がつき、必然的に絡み合う。そして、このような二人のアーティストの深い理解により、記憶に残り、伝説的ですらある映画体験がもたらされる。だが、同様に名前を挙げ、称えるべき映画監督と作曲家のパートナーシップは他にも存在する。それは、宮崎駿監督と作曲家の久石譲である。

宮崎のスタジオジブリは、日本映画のみならず、世界中の映画界で愛される芸術的な存在となり、久石譲はその道のりの一歩一歩に寄り添ってきた。宮崎は長編アニメーションの最高傑作の数々を手作業で丹念に作り上げ、日本アニメを世界に知らしめたが、それに続き、久石譲も世界中から注目を集めるようになった。

宮崎の映画と久石の音楽には、大きな愛情が込められている。二人はまさに手を取り合い、お互いを燃え立たせている。実際のところ、久石が宮崎映画の音楽制作に着手する際には、まずスケッチ画と描写のみ、後に絵コンテを基に始める。タイムコードに縛られることもなく、登場人物の声が発されるずっと前から、この作曲家は宮崎が思い描く映画のアイデアそのものに触発された音楽を創り出す。生まれてくるその音楽は、宮崎監督の創作過程に反映され、彼の想像力を更に膨らませ、より大胆に発展していく。久石が映画のために手がけた初期の音楽案は「イメージ・アルバム」としてまとめられ、本質的には後に登場する映画スコアのコンセプト・アルバムであった。その後、これらのアイデアは磨き上げられ、完成した映画に使用された。それは、確かに風変りな仕事の進め方だが、1984年の『風の谷のナウシカ』以来、ほぼ40年に渡る共同製作で二人が培ってきた創造的な過程(プロセス)である。

宮崎は、幻想的でありながら、どこか親しみのある世界を創り出すことを好み、ストックホルムやサンフランシスコを彷彿とさせるような想像上の街を物語の舞台に設定している。また、時代設定はあるかもしれないし、ないのかもしれない。時には、私たちが既に知っていると思われる過去の別バージョンのようなものもある。このぼやけた曖昧さと融合性は、久石が自国文化から触発されたサウンドとメロディーにポップス、ほんの少量のミニマリズム、そして恐らく古典主義をひとつまみ加えることで、その音楽にも昇華されている。彼らの作品は、何故か理にかなっており、あたかも以前からそうであったかのように感じられる混成型(ハイブリット)であり輝かしい坩堝(メルティング・ポット)なのだ。

よって、このアルバムは、その比類なき芸術的コラボレーションの蒸留物であり、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団とソリストのために再創造された音楽である。彼が過去に発表した「イメージ・アルバム」のように、映画の枠から解き放たれた久石譲の音楽的ヴィジョンが打ち出されているが、同作品では更に自由な空間に、可能な限りの、更なる精魂が傾けられている。

風の谷のナウシカ(1984年)
宮崎と久石が初めて組んだ同映画では、二人が進むべき道を歩み始めた。『風の谷のナウシカ』は、宮崎自身が手掛けた漫画を原作とした大作で、近隣諸国が戦争に巻き込まれた終末的(ポスト・アポカリプス)な汚染された世界を舞台にしている。宮崎監督の意に反して、ニューワールド・ピクチャーズにより大幅にカットされた英語版が公開されたが、2005年にはディズニー社がアリソン・ローマン、パトリック・スチュワート、ユマ・サーマンを起用し、ようやく新たな英語版キャストによる完全版を再公開した。久石のオリジナル・スコアは、オーケストラの色彩、パーカッション、シンセ音の数々を織り交ぜており、彼の新しい組曲は、心を奪うようなストリングスの音色やおとぎ話のような雰囲気、そしてバッハ合唱団が歌う箇所で僅かに取り入れたヘンデル作品からのモチーフにより、大きな深みが増している。

魔女の宅急便(1989年)
(宮崎と久石の)二人が手がけた4作目の映画は、10代の魔女が新しい町に溶け込むために空飛ぶ宅配業を開業するという、角野栄子による小説を原作として製作された。この作品で監督を務めるつもりはなかった宮崎は当初プロデューサーとして関わっていたが、製作中の展開に納得できず、このプロジェクトと引き継ぐことになった。オリジナル・キャストとして、キキを高山みなみが、猫のジジを佐久間レイが担当し、英語版ではキルスティン・ダンストと故フィル・ハートマンがこれらの役を担当した。ギターやアコーディオンに加え、オカリナやハンマー・ダルシマーが印象的な久石のオリジナル・スコアには、さり気ない魅力がある。この新たな組曲は、まるで魔法のように繊細なピチカート・ストリングス、官能的なワルツ調のテーマ、そして後にはバイオリン独奏とオーケストラのための完璧な幻想曲(ファンタジー)で構成されており、私たちを夢中にさせる。

もののけ姫(1997年)
この映画をきっかけに世界中の観客がスタジオジブリに注目するようになり、本国の日本ではスティーヴン・スピルバーグの『E.T』が記録した興行収入を塗り替えた(ジェームズ・キャメロンの『タイタニック』が登場するまで)。封建時代の日本を舞台にした宮崎による原作は、ニール・ゲイマンが英訳を監修している。あらすじは、自分が受けた呪いを解くために必死で旅をする少年が、自分の村の人々と森の神々との激しい戦いに巻き込まれるという内容。この映画の成功は、公開後に引退予定だった宮崎を驚かせた。日本アカデミー賞受賞は勿論のこと、興行的にも大きな成功を収めたお陰で彼は考えを改めた。オリジナル・キャストには石田ゆり子や松田洋治が含まれ、英語版にはミニー・ドライヴァー、ビリー・ボブ・ソーントン、ジリアン・アンダーソン等が出演。鳴り響く低音の弦楽器や打楽器の響きが印象的な原曲は、これまでに久石が手がけたジブリ作品の中では最もシンフォニックなスコアかもしれない。この組曲では、壮大なオーケストラの雰囲気、荘厳な合唱、渦巻く弦楽器、唸るような金管楽器が、ドラマをさらに盛り上げる。まさに音楽的大渦巻だ。

風立ちぬ(2013年)
漫画が原作の同作品は、伝記映画である点が宮崎作品としては恐らく珍しいだろう。堀越二郎は、とりわけ第二次世界大戦中の日本の航空に纏わる物語で重要な役割を果たし、尊敬を集めた航空機設計者。この映画は堀越の人生物語を描いており、日本史における重要な瞬間に触れている。英語版ではジョセフ・ゴードン=レヴィットが堀越の声を担当し(オリジナル版では庵野秀明)、その他キャストにはスタンリー・トゥッチ、ジョン・クラシンスキー、エミリー・ブラント等が含まれる。同作品はアカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートされ、アニー賞脚本賞を受賞し、宮崎と久石はまたもや極めて重要な成功を収めた。堀越が劇中の登場人物でもあるイタリアの航空機設計者ジョヴァンニ・カプローニに強い影響を受けているため、日本アカデミー賞を受賞した久石のスコアには、ヨーロッパ的音楽観が際立っている。マンドリン、アコーディオン、ギター、そして、ほんの僅かのヴィヴァルディ的な要素が、スコアに心に残る瞬間をもたらす。今回の組曲では、マンドリンが重要な役割を担っており、そのエネルギーは素晴らしくバレエ的だ。

崖の上のポニョ(2008年)
恐らく他の作品よりもずっと若い視聴者層をターゲットにしたと思われる『崖の上のポニョ』は、瓶の中に入った魚の女の子を見つけた男の子を描いた可愛らしい物語。実はその魚の正体はプリンセスで、自分を救出してくれた男の子と恋に落ち、人間に変身してしまう。だが、ポニョの逃亡を快く思わない魔法使いの父親は、娘を連れ戻すために海面を上昇させ、皆を危険にさらしてしまう。奇妙な友情という設定は、『崖の上のポニョ』の英語版を担当した脚本家、故メリッサ・マティソンにとって目新しいものではなかった。彼女が脚本を手がけた『E.T』や『ワイルド・ブラック/少年の黒い馬(原題:Black Stallion)』は多くの人々から愛され、彼女はディズニーの『リトル・マーメイド』に触発された本作に独自の魔法をかけた。英語版では、ケイト・ブランシュット、リーアム・ニーソン、マット・デイモンが、オリジナル版では天海祐希、所ジョージ、長嶋一茂が演じた役を引き継いでいる。久石は、『崖の上のポニョ』のために制作した同作品で6度目の日本アカデミー賞を受賞した。チェレスタとヴィオラ独奏のある本作品は、魔法と輝きに満ちており、新たなこの組曲には、海面下を冒険するような驚嘆すべき不思議な感覚がある。木管楽器と弦楽器は、軽快なオーボエに合わせた美しいソプラノ独唱へと誘う。その後、久石はオーケストラを大海原での音楽的冒険へと放ち、合唱団による可愛らしく遊び心のある歌で同曲はフィナーレを迎える。

天空の城ラピュタ(1986年)
スタジオジブリ設立直前に製作された『風の谷のナウシカ』に続くこの映画は、正式にはスタジオジブリによる第一作となった。前作同様、『天空の城ラピュタ』も激動の冒険物語で、空の海賊や怪しい政府特務機関から逃れようとする二人の孤児たちが、ラピュタ(作品名となった天空の城)を探す旅に出る。この映画は、ラピュタという空飛ぶ島が登場するジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』をモチーフにしており、シータ役をよこざわけい子、パズー役を田中真弓が、英語版ではアンナ・パキンとジェームズ・ヴァン・デル・ビークが声を担当した。『風の谷のナウシカ』同様に、宮崎との2作目となる本作でも、久石は馴染み深いピアノ、弦楽器、声楽の他に、電子音やシンセ音をふんだんに取り入れた。新たな組曲では、壮大なオーケストラのサウンドと、ある程度英国的な、感情を抑えた威厳のあるホーンをフィーチャーしている。また、大人と子供で構成された合唱団は、心に残るような哀愁を帯びた雰囲気を与えている。奮い立たせるような、英雄的な楽曲だ。

紅の豚(1992年)
紅の豚(クリムゾン・ピッグ)!『紅の豚』は、日本の航空会社のために製作された短編映画としてスタートしたが、今日私たちが大好きな、素晴らしく奇妙な作品に発展した。漫画『飛行艇時代』を原作としたこの映画は、1930年代のイタリアに住む元空軍のエース・パイロット、ポルコ・ロッソ(別名マルコ・パゴット)が、雇われヒーローとして飛行を請け負う物語。豚のようなその姿はある種の呪いであることは明らかだが、詳細はあまり説明されていない。だが、後半ではポルコがキスされた後に人間に戻る姿が示唆されている。典型的なドタバタした色彩豊かな物語で、映画のテーマはむしろ大人向けだが、間違いなく印象に残る作品である。豚の主人公の声を、英語版ではマイケル・キートン、フランス語版ではジャン・レノが、オリジナル版で森山周一郎が担当した役を引き継いだ。原曲には同映画にふさわしく冒険とスリルに満ちた遊び心があり、ジャズ・ピアノの切なさを感じる瞬間もある。久石はこの曲に切なげなジャズ・ピアノをリードとして使い、紅の豚(ポルコ・ロッソ)にぴったりな、威厳のある堂々たる雰囲気を醸し出している。

ハウルの動く城(2004年)
この映画は、美しい圧巻の叙事詩であり、今もなお愛され続けている名作。原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説で、魔女に呪われて老婆になった若い女性ソフィの物語が描かれている。彼女は、忘れ難き足のついた家であちこち移動する気まぐれな若き魔法使いを探しに出かけ、ようやく辿り着くと、呪いを解くためにその家に住む火の悪魔と契約をする。だが、その代償は? 英語版では、同作が最後の映画出演となったジーン・シモンズの他、クリスチャン・ベイルやブライス・ダナーも素晴らしい声の出演を披露した。久石によるこのオリジナル・スコアは、彼の作品の中でも最も壮大かつ親しみやすい一つであり、彼が最も大切にしていると思われるテーマを使用している。そのワルツは、主にピアノで演奏されているが、スコア全体を通して登場する。この新しい組曲は、すでに交響的なスペクタクルのようなものが先導し、聴き手の心をまるでバレエのように跳ねさせ、踊らせる。久石は、まさに息を呑むような、喜劇的かつ色彩豊かな音詩(トーン・ポエム)を創り上げた。

千と千尋の神隠し(2001年)
『ハウルの動く城』に圧巻される前に、観客たちは『千と千尋の神隠し』に心を奪われた。この輝かしい芸術作品は、2001年の公開時に日本映画史上最高の興行収入を記録。アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した同作品は世界中に影響を及ぼし、観客はその物語に魅了された。同作品は、家族が郊外での新生活に向かう途中で道を間違えたために少女が異世界に閉じ込められてしまう話で、久石の華麗なピアノとストリングスのスコアもさることながら、印象的なキャラクターと驚くべきビジュアルに満ちた世界が登場する。この組曲のために、彼は色彩のパレットを拡大しており、『ハウルの動く城』の組曲と同様に、これは音楽で紡ぐストーリーテリングのレッスンである。久石は、ピアノ独奏、美しい夢のような歌唱、素晴らしいシンフォニックな華麗さとペーソス的瞬間で、鮮やかな絵を描いている。

となりのトトロ(1988年)
アルバムの最終曲は、ファンの間で人気が高く、恐らく宮崎作品の中で初めて多数の支持者を得るきっかけとなった作品であり、それは少なからず、入院中の母親の近くに住むために引っ越したばかりの姉妹が好奇心を抱いた、非常に愛らしい森の精霊、トトロのお陰だろう。だが、メイとサツキが見続けるこの奇妙な生き物たちは何だろう? 同作品は、甘美でエモーショナルな冒険であり、脚本家兼監督の宮崎にとっても、実の母親が病気で長い間家を離れていたこともあり、個人的な物語でもある。この映画と登場人物は、スタジオジブリの象徴的な存在となっており、特に「大トトロ」(キング・トトロ)は、現在まさにスタジオジブリの顔。サツキとメイの声は、オリジナル版では日高のり子と坂本千夏、英語版では実の姉妹であるダコタとエル・ファニングが吹き替えを担当した。久石の音楽は、快活なシンセ音をふんだんに使っており、非常に当時らしいサウンドだ。フィナーレを飾るこの組曲では、「Hey Let’s Go(邦題:さんぽ)」という曲中の冒険への楽しい呼びかけは勿論のこと、素晴らしい祝祭的雰囲気を醸し出している。また、後半部分では、木管、金管、弦楽器がワイルドかつ活気ある威勢(スワッガー)で盛り上げ、歓喜に満ちた高揚感で締めくくる。

ーマイケル・ビーク(BBC Music Magazine)

(翻訳:湯山恵子)

(CD封入 日本語解説より)

 

 

世界共通盤ブックレットには、上記解説の英文オリジナル・テキストと共に久石譲バイオグラフィ”JOE HISAISHI Composer, Conductor, Dreamer”(3ページ)が英文で収められている。

歌詞収録は、楽曲ごとに本盤で歌われた言語による掲載となっている。「03. PRINCESS MONONOKE」日本詞、「05.PONYO ON THE CLIFF BY THE SEA」日本詞/英詞、「09. SPIRITED AWAY」日本詞/英詞(Bonus Track)、「10.MY NEIGHBOR TOTORO」英詞/日本詞 である。

各国流通仕様盤の封入解説(日本語解説など)には歌詞かつ訳詞は載っていない。つまりは、世界共通盤ブックレットのほうに多くの楽曲で歌われている日本語がそのまま収録されている。宮崎駿監督はじめ作詞者へのリスペクト、日本語へのリスペスト、ドメスティックなものをそのままインターナショナルに届けたいこの扱い方の意義は大きいと思われる。

 

 

 

 

リリースを迎えるまでの時系列インフォメーション、先行配信リリース、Music Video、久石譲インタビュー動画、アナログ盤などについてはこちらにまとめている。

 

 

 

フィジカル(CD/LP)は作品ごとにワントラックにまとめられている。デジタル(ダウンロード/ストリーミング)は作品ごとに構成楽曲で区切った複数トラックになっている。トラックリストは下記ご参照。

 

 

久石譲
A Symphonic Celebration – Music from the Studio Ghibli Films of Hayao Miyazaki

JOE HISAISHI
Royal Philharmonic Orchestra

Disc1
01. NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF THE WIND (映画『風の谷のナウシカ』より)
02. KIKI’S DELIVERY SERVICE (映画『魔女の宅急便』より)
03. PRINCESS MONONOKE (映画『もののけ姫』より)
04. THE WIND RISES (映画『風立ちぬ』より)
05. PONYO ON THE CLIFF BY THE SEA (映画『崖の上のポニョ』より)
06. CASTLE IN THE SKY (映画『天空の城ラピュタ』より)
07. PORCO ROSSO (映画『紅の豚』より)
08. HOWL’S MOVING CASTLE (映画『ハウルの動く城』より)
09. SPIRITED AWAY (映画『千と千尋の神隠し』より)
10. MY NEIGHBOR TOTORO (映画『となりのトトロ』より)

Disc2 – Bonus Tracks
01. MERRY-GO-ROUND OF LIFE (映画『ハウルの動く城』より)
02. ONE SUMMER’S DAY (THE NAME OF LIFE) (ENGLISH VERSION) (映画『千と千尋の神隠し』より)

レーベル Universal Music LLC
収録曲数 全12曲
収録時間 1:27:15

 

DIGITAL

01. Merry-Go-Round of Life (from ‘Howl’s Moving Castle’)
02. One Summer’s Day (The Name of Life) (English Version / from ‘Spirited Away’)
03. The Legend of the Wind (from ‘Nausicaä of the Valley of the Wind’)
04. Nausicaä Requiem (from ‘Nausicaä of the Valley of the Wind’)
05. The Battle between Mehve and Corvette (from ‘Nausicaä of the Valley of the Wind’)
06. The Distant Days (from ‘Nausicaä of the Valley of the Wind’)
07. The Bird Man (from ‘Nausicaä of the Valley of the Wind’)
08. A Town with an Ocean View (from ‘Kiki’s Delivery Service’)
09. Heartbroken Kiki (from ‘Kiki’s Delivery Service’)
10. Mother’s Broom (from ‘Kiki’s Delivery Service’)
11. The Legend of Ashitaka (from ‘Princess Mononoke’)
12. The Demon God (from ‘Princess Mononoke’)
13. Princess Mononoke (from ‘Princess Mononoke’)
14. A Journey (A Dream of Flight) (from ‘The Wind Rises’)
15. Nahoko (The Encounter) (from ‘The Wind Rises’)
16. A Journey (A Kingdom of Dreams) (from ‘The Wind Rises’)
17. Deep Sea Pastures (from ‘Ponyo on the Cliff by the Sea’)
18. Mother Sea (from ‘Ponyo on the Cliff by the Sea’)
19. Ponyo’s Sisters Lend a Hand – A Song for Mothers and the Sea (from ‘Ponyo on the Cliff by the Sea’)
20. Ponyo on the Cliff by the Sea (from ‘Ponyo on the Cliff by the Sea’)
21. Doves and the Boy (from ‘Castle in the Sky’)
22. Carrying You (from ‘Castle in the Sky’)
23. Bygone Days (from ‘Porco Rosso’)
24. Symphonic Variation “Merry-Go-Round + Cave of Mind” (from ‘Howl’s Moving Castle’)
25. One Summer’s Day (The Name of Life) (Japanese Version / from ‘Spirited Away’)
26. Reprise (from ‘Spirited Away’)
27. The Path of the Wind (from ‘My Neighbor Totoro’)
28. Hey Let’s Go (from ‘My Neighbor Totoro’)
29. My Neighbor Totoro (from ‘My Neighbor Totoro’)

June 30, 2023
29 Songs, 1 hour, 27 minutes
℗ 2023 UNIVERSAL MUSIC LLC, in collaboration with Deutsche Grammophon

 

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Orchestra Contractor: Joe Hisaishi
Orchestra: Royal Philharmonic Orchestra
Recording Producer: Anna Barry
Recorded and Mixed by Mike Hatch
Mixed by Takeshi Muramatsu (Octavia Records Inc.)
Mastering Engineer: Shigeki Fujino (Universal Music Japan)
Recorded at St Giles Cripplegate Church

Disc 1

1. NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF THE WIND
Choir: The Bach Choir / The Tiffin Choirs
Conductor of The Bach Choir: Mark Austin
Music Director of the Tiffin Choirs: James Day
Japanese Language Coach: Satoshi Kudo

2. KIKI’S DELIVERY SERVICE
Violin Solo: Stephen Morris

3. PRINCESS MONONOKE
Soprano Solo: Grace Davidson
Choir: The Bach Choir
Conductor of The Bach Choir: Mark Austin

4. THE WIND RISES
Mandolin Solo: Avi Avital

5. PONYO ON THE CLIFF BY THE SEA
Soprano Solo: Grace Davidson
Choir: The Bach Choir
Conductor of The Bach Choir: Mark Austin

6. CASTLE IN THE SKY
Choir: The Bach Choir / The Tiffin Choirs
Conductor of The Bach Choir: Mark Austin
Music Director of the Tiffin Choirs: James Day
Japanese Language Coach: Satoshi Kudo

7. PORCO ROSSO

8. HOWL’S MOVING CASTLE
Trumpet Solo: Phil Cobb

9. SPIRITED AWAY
Vocal Solo: Mai Fujisawa

10. MY NEIGHBOR TOTORO
Choir: The Bach Choir / The Tiffin Choirs
Conductor of The Bach Choir: Mark Austin
Music Director of the Tiffin Choirs: James Day
Japanese Language Coach: Satoshi Kudo

Disc2 – Bonus Tracks

1. MERRY-GO-ROUND OF LIFE
Trumpet Solo: Phil Cobb

2. ONE SUMMER’S DAY (THE NAME OF LIFE) (ENGLISH VERSION)
Soprano Solo: Grace Davidson

Marketing Management: Murray Rose
Product Coordination Management: Lina Matschinko
Executive Producer: Kleopatra Sofronius
Recording Producer: Anna Barry
A&R Management: Anusch Alimirzaie

Balance Engineer: Floating Earth – Mike Hatch
Recording Engineer: Floating Earth – Sophie Watson
Editors: Ian Watson and Tom Lewington
Photography: Nick Rutter
Design: Yuka Araki (T&M Creative)

Special Thanks to
PRO – Ian Maclay and Eleanor Clements
Hajime Isogai, Naohiro Fukao, Spike Sugiyama

Cover illustration © 2004 Studio Ghibli・NDDMT

 

Info. 2023/06/26 《速報》 「JOE HISAISHI IN CONCERT」久石譲コンサート(香港)プログラム 【6/29 update!!】

Posted on 2023/06/26

2023年6月22-24日、久石譲コンサートが香港で開催されました。当初本公演は2020年12月予定から2021年6月延期を経て開催中止となっていました。新型コロナウィルスの影響です。2018年公演以来5年ぶり、ふたたび共演オーケストラは香港フィルハーモニー管弦楽団です。 “Info. 2023/06/26 《速報》 「JOE HISAISHI IN CONCERT」久石譲コンサート(香港)プログラム 【6/29 update!!】” の続きを読む

Info. 2023/09/22 キングズ・シンガーズ「WONDERLAND」CD発売決定!! 久石譲「I was there」収録

Posted on 2023/06/22

キングズ・シンガーズ新録音!
リゲティ生誕100周年記念&委嘱作品集!

男声ア・カペラのレジェンド、キングズ・シンガーズ!リゲティ生誕100周年記念と55年の歴史の中で委嘱した作品を厳選!2022年12月の来日公演でも取り上げた、久石譲の《 I was there 》、木下牧子の《あしたのうた》も収録! “Info. 2023/09/22 キングズ・シンガーズ「WONDERLAND」CD発売決定!! 久石譲「I was there」収録” の続きを読む

Info. 2023/06/18 「久石譲 in ウィーン」(3月開催) グラモフォン「STAGE+」配信決定!! 【6/20 update!!】

Posted on 2023/05/20

2023年3月30日開催「CINEMA:SOUND JOE HISAISHI IN CONCERT」久石譲コンサート(ウィーン)の動画配信が決定しました。この公演は、ウィーン交響楽団との共演でウィーン楽友協会で開催されました。

このたびドイツ・グラモフォン(DG)のオーディオ・ビデオ・ストリーミングサービスである「STAGE+」で放送されます。当初4月15日予定と発表されていましたが、いよいよめでたくです。視聴環境や視聴料金などについては事前にご確認ください。

 

 

2023.06.20 update
アーカイブ動画公開されました。

久石譲:交響曲 第2番
久石譲:【mládí】for Piano and Strings
I. Summer / II. HANA-BI / III. Kid’s Return
久石譲:One Summer’s Day (Pf.solo)
久石譲:交響組曲「もののけ姫」
久石譲:となりのトトロ

収録時間:98分

公式サイト:STAGE+|久石譲 in ウィーンを観る(配信URL)
https://www.stage-plus.com/ja/video/vod_concert_APNM8GRFDPHMASJKBSPJ6CO

公式サイト:STAGE+|久石譲 ウィーンでの演奏会について(配信URL)
https://www.stage-plus.com/ja/video/video_APKM8PBFBSP3GCO

 

先に放送されたLIVE放送よりも4K ULTRAHDフォーマットで高画質になっています。再生チャプターも選択可能です。またLIVE放送時の冒頭収録された久石譲インタビュー(14分/4K ULTRAHD)も合わせて公開されました。

*7日無料お試し期間付き なども有効にご活用ください。インタビューは会員登録のみ(新規登録)で無料視聴できます。コンサートは「無料お試しを利用する」で再生できます。「常時解約可能」となっているので7日間以内に手続きをすれば課金は発生しません。次回からの久石譲コンテンツ(ライブ配信/音楽アルバムストリーミング)などは無料対象外となると思います。

ジョン・ウィリアムズのコンサートもアーカイブされてます。そのなかのウィーンフィル共演はCD/DVD/Blu-ray化、ベルリンフィル共演はWOWOWでも放送されています。久石譲コンサートもパッケージ化やチャンネルの広がりなど期待したいです。グラモフォンとの活動はこれからも継続されると思います。ゆっくり視聴できるタイミングでお楽しみください。

 

クラシックのライブ配信やアルバムも充実しています。現代作曲家ではジョン・ウィリアムズやマックス・リヒターも多数ラインナップされています。また、6/30new『a Symphonic Celebration』の「風立ちぬ」でマンドリンを演奏しているアヴィ・アヴィタルさんもグラモフォン専属アーティストです。アーカイブ動画やアルバムカタログを楽しむことできます。たくさんの音楽広がっていくコンテンツSTAGE+です。たっぷり視聴できる方法でお楽しみください。

 

 

 

Joe Hisaishi Interview

久石譲に聞く IN ウィーン

作曲するときにいつも大事にしているのは、映画の音楽を書くエンターテインメントの音楽を書く、それから作品を書くと、この二つともとても大事にしています。その大事にしているものを一つのコンサートで一緒にやることで、違ったサイドを二つ見てもらう。それがいつもコンセプトにしています。

今回は前半がミニマル・ミュージック、自分はミニマリストなのでそういうミニマル・スタイル同じフレーズをくり返す音楽を主体にした自分の作品。これは約35分かかるシンフォニーです。後半は、北野武監督に書いた映画音楽を僕のピアノとストリングスでやると、そういうものを作りました。それから一番最後にフル・オーケストラで宮崎駿さんの映画『もののけ姫』を交響組曲にしたものを演奏する。という自分にとって一番気に入ったプログラムを作りました。

 

ウィーン学友協会について

コンサートの前日にムジークフェライン(ウィーン学友協会)のホールに行きました。正直言って日本のNHKテレビなどで新年の新春ワルツコンサートをよく見ていましたので、あっここなんだと思いました。すごくきれいないいホールだなとは思いましたが、舞台が意外と狭いのでほんとに狭いんだと、僕の編成は結構大きいから入るのかなってそれをすごく心配しました。一番印象に残ったのは、サイドにある窓ガラスがあってそれが外から光がいっぱい入っていたので、ああこういうふうに作られてるんだっていうホールの感じをすごく感じましたね。二日目になって、ふっと考えたら、この指揮台にあるいはこの楽屋のコンダクターズ・ルーム、あっここにマーラーとかブラームスがきっといたんだな、あるいはここで指揮したんだなとか思ったら、急にああここでクラシック音楽の歴史が作られたんだ、そう思ったときに今自分がここにいることのすごさというか重みをすごく感じました。

 

ウィーン交響楽団の反応

我々僕もやっているクラシック音楽の中心はもともと歴史としてはどうしてもウィーンで作られてきてました。あまり現代的なものに対するアプローチってたくさんされてないと思ったんですね。現実に僕のようなミニマル・ミュージックのスタイルはおそらくやったことがない、実際に彼らも初めてだと言っていました。なのでこれは大変だなと実は思ったんですけれども。いい意味で本当に彼らは一生懸命やってくれて、そしてそのアプローチに一生懸命挑戦してくれました。結果的にいうと、非常に伝統的なものを持っていないと出ない深い大きな音と、僕の音楽が持っているミニマル・ミュージックのような非常に今日的なリズムの音楽、それが良いように作用して。通常ミニマル・ミュージックを演奏しているとわりとパキパキとしたまるで刻んだような音楽になりがちなんですが、そこにとても大きいフレーズで歌うトラディショナルな方法とミニマルが融合して、今まで僕も聴いたことないようなサウンドになったと思います。だからほんとに素晴らしかった。ウィーン交響楽団ほんとに素晴らしいオーケストラです。またぜひやりたいなと思います。

 

オーケストラメンバーとのコミュニケーション

譜面を読んで音楽でコミュニケーションしちゃうから、その段階で例えば、あっこの人たちは初めてなんだなとか、だいたいヨーロッパのオーケストラというのはどことやってもそうなんですけども、例えばこうやってダウンビートしますね、そうするとザァーンぐらいにとても遅く反応する、クラシックなオーケストラほど遅いんです。ミニマル・ミュージックは必ずタンタンとここで音が出ないといけないんですけど、あっもう遅れるなというのがあって、それはもうみんなが気づいててちょっと早くしなきゃいけない、みんながそれぞれ調節していく過程、だから質問やなんかで変なのはないです。

 

交響曲第2番について

交響曲第2番に関しては、コロナが始まって海外コンサートがすべて延期されたので、その分時間ができたとそれでちょうどいい機会だと思ってシンフォニーを書きました。スケッチからだいたいラフなオーケストレーションまで3,4か月で出来たんですね。その後はまたいろいろな映画音楽とか作っていたので、わりと気にしてなかったんです。ただあんまり先になっちゃうと嫌だから、そうですねちょうど1年後ぐらいにいいチャンスがあったのでそこで翌年もう一回最後の仕上げをしたんですけれども、そんなに苦しくはなかったです。あまり気にはしてなかった、待つことがね。この第2番で自分にとって一番重要だったことは、コロナ禍でみんなが動けなくなってしまった、人と人と会うことも出来なくなってた。そうすると僕も例えば作曲はいつも新しいものを書こうと努力します。それはわりと革新的なアイディアだとかわりとそういう曲を書こうとするんですが、その状況下で聴くのが疲れるような、あるいはメッセージ性の強いようなものを書こうとは思わなかったんです。どちらかというとバッハの対位法の音楽といいますかね、バッハのフーガのように、わりと音と音がちゃんと絡んだ音楽といいますか、変なメッセージ性のない非常に音楽的な、音楽だけで完結する世界、そういうものを書きたいとその時思いました。それはかえってコロナ禍であったからこそ思えたので、前衛的であることよりも音の運動性を書こう、それがすごく出来たことはうれしかったです。この第2番は3つの楽章ありますけれども、おそらくこれはそれぞれ独立して例えば序曲のような扱いで3曲まとめて演奏する必要がない、それぞれ独立して演奏してもいいように個別のタイトルを付けました。そう、第3楽章のそれは日本のわらべ唄という子供たちが遊びながら歌うメロディなんですね。それはとてもシンプルなメロディラインなので、これをくり返しあるいは1小節とかズレながらやっていくことでミニマル的なアプローチができるんじゃないかなと思ってそれで作った曲です。それともう一つ、早く出来たんですねあの曲は。なんで、なんかね神様が降りてきて作らせた、そういう感じがします。「かーごめ、かごめ、籠の中の鳥は~」もう非常にどこにでもあるようなフレーズなんですね。特別であったわけではない。ただこれをミニマルとして作るにはちょうどいい、そういうふうに感じました。マーラーの「交響曲第1番」とか演奏したことがあって、やっぱりあの時の第3楽章とかの感覚があって、こういうシンプルなメロディを組み立てていくことがミニマルになるんじゃないかっていう気持ちとか、あるいはヘンリク・グレツキの「交響曲第3番 悲歌の交響曲」やアルヴォ・ペルトだとかね、いろいろな音楽を聴いていて、こういう静かなくり返しのアプローチはいつかやりたいなっというのもありました。

 

北野武の映画音楽について

北野武監督に作った曲をたまたまチェコ・プラハで演奏することがあって、3曲を組み合わせてひとつのコーナーを作ろうと思った。場所がチェコだったんで、チェコ語にちょうど「mládí」という言葉が辞書で引いてたら出てきて「青春」という意味があったので、これが一番ちょうどいいなと思って付けました。

 

交響組曲《もののけ姫》について

『もののけ姫』を交響組曲にする段階で、だいたいストーリーに沿って全体の内容を25~27分の組曲にしたわけですね。もともとその中の「もののけ姫」のテーマ曲、これは映画のために書いた曲なのでそれを必ず入れたい。それから一番最後のシーンで、世界が崩壊していった最後に緑が野原に復活するシーンがあって、これはやっぱり映画のエンディングとして非常にふさわしいし宮崎さんもすごく喜んでくれた。だからそれに書いたメロディをとても自分でも気に入っていたんですが、最終的には歌のメロディになるんじゃないかっていうことで歌にしました。映画にも入っていた曲なので組曲の中でもちゃんと使ったわけですね。

 

(「久石譲 ウィーンでの演奏会について」インタビュー動画より 書き起こし)

 

(up to here, updated on 2023.06.20)

 

 

2023.06.13 update
「アシタカとサン」のライブ動画が先行公開されました。

Joe Hisaishi – Ashitaka and San (from ‘Princess Mononoke’) Live in Vienna

from  Deutsche Grammophon – DG Official

(up to here, updated on 2023.6.13)

 

 

 

収録配信

久石譲 in ウイーン
ウィーン交響楽団

2023年6月18日 3:00

1. 再配信 – 2023年6月18日 9:00

2. 再配信 – 2023年6月18日 20:00

収録時間 120分

 

宮崎駿監督のスタジオジブリ作品をはじめ、100本以上の映画音楽を手がけた久石譲。彼は映画音楽のレジェンドともいうべき存在ですが、もともとはミニマル・ミュージックの旗手として活動を開始しており、ミニマリズムにエレクトロニクス、西洋と日本のクラシックなど、多様なスタイルを融合させ、クラシック音楽でも様々な作品を書いています。本映像では彼の交響曲第2番をはじめ、映画『もののけ姫』の音楽などの代表作が久石本人の指揮、ウィーン交響楽団の演奏でお楽しみ頂けます。

久石譲:交響曲 第2番
久石譲:ピアノと弦楽器のためのムラーディ (Mládí for Piano and Strings)
久石譲:交響組曲《もののけ姫》

 

Joe Hisaishi in Vienna
Wiener Symphoniker

Joe Hisaishi: Symphony No. 2
Joe Hisaishi: Mládí for Piano and Strings
Joe Hisaishi: Symphonic Suite from “Princess Mononoke”

 

公式サイト:STAGE+|久石譲 in ウィーンを観る(配信URL)
https://www.stage-plus.com/ja/video/live_concert_9HKNCPA3DTN66PBIEHFJ6CPJ

WEBページは英語・ドイツ語・日本語に切り替えできます。

 

公式サイト:クラシックの映像&音楽配信「ステージプラス」
https://www.stage-plus.com/ja

 

 

なお、現時点のアナウンスからは、初回放送後に2回の再放送予定となっています。アーカイブでいつでも視聴できるタイプのものなのか否か不明です。できることならまずは6月18日放送を視聴できるようにご予定ご確認ください。

 

 

公演プログラムや公演風景についてはこちらにまとめています。

 

 

 

Info. 2023/07/07,14,21 [TV] 金曜ロードショー 3週連続スタジオジブリ『風の谷のナウシカ』『コクリコ坂から』『もののけ姫』放送

Posted on 2023/06/16

スタジオジブリ最新作公開記念!3週連続 夏はジブリ!! 7月7日『風の谷のナウシカ』/7月14日『コクリコ坂から』/7月21日『もののけ姫』

いよいよ7月14日に公開となる宮﨑駿監督作品『君たちはどう生きるか』。その公開を記念して、この夏3週連続でスタジオジブリ作品を放送! “Info. 2023/07/07,14,21 [TV] 金曜ロードショー 3週連続スタジオジブリ『風の谷のナウシカ』『コクリコ坂から』『もののけ姫』放送” の続きを読む

Info. 2023/06/08 久石譲「A Town with an Ocean View」 (Visualizer) Music Video公開

Posted on 2023/06/08

久石譲オフィシャルYouTubeチャンネルに、新しいミュージックビデオ「A Town with an Ocean View (Visualizer)」が公開されました。

この楽曲は5月19日に先行配信「海の見える街」(映画『魔女の宅急便』より)の新バージョンです。レコーディング風景バージョンのミュージックビデオも同日公開されています。 “Info. 2023/06/08 久石譲「A Town with an Ocean View」 (Visualizer) Music Video公開” の続きを読む

Disc. 久石譲 『I Want to Talk to You』(合唱版/弦楽版) *Unreleased

2021年3月24日 弦楽版 初演
2022年4月30日 合唱版 初演

 

作品について

合唱版
I Want to Talk to You 〜for Piano and Percussion〜
作曲:久石譲
1. I Want to Talk to You 作詞:麻衣、久石譲
2. Cellphone 作詞:久石譲

弦楽版
I Want to Talk to You ~ for string quartet, percussion and strings ~
作曲:久石譲

 

楽曲解説

「I Want to Talk to You」は、2020年5月に山形県山形市で行われる予定だった合唱の祭典コンサートで演奏するために山形県から委嘱されて作曲した。僕の作品としては初めての書き下ろし合唱作品になるはずだったがCovid-19の世界的パンデミックのため何度か順延され、2年後の2022年4月にやっと初演される運びになった。

当初は街を歩いていても、店に入っても電車の中でも人々は携帯電話しか見ていない。人と人とのコミュニケーションが希薄になっていくこの現状に警鐘を鳴らすつもりでこのテーマを選んで作曲したが、その後の人と人との接触を控えるこの状況では、携帯電話がむしろコミュニケーションの重要なツールになった。別の言い方をすると世間という煩わし い人との関係性から逃れる便利なアイテムが最小限の人との接触のアイテムになった。なんとも皮肉なことだが、それだけ携帯電話が人々にとって必須なものになったということだろう。

2019年12月から作曲を開始し、2020年3月に一応の完成を見たが、合唱が行われる状況にはほど遠くしばらく放置せざるを得ないと思ったが、作曲の過程で思いついた弦楽四重奏と弦楽オーケストラの作品にするアイデアが現実味を帯び、2021年3月の日本センチュリー交響楽団とのコンサートで弦楽バージョンとして演奏した。

作詞はいくつかのキーワード、例えば「Talk to you」をコンピューターで検索し関連用語やセンテンスを抜き出し、音のイメージに合う言葉を選んでいった。最終的には1.I want to talk to youは娘の麻衣が詩としてまとめ、2. Cellphoneは僕がまとめた。約20分の作品になり、小合唱グループと大合唱グループ、それに2台のピアノとパーカッションという編成となった。

作品としてはこれで完成しているが、僕としては日本語で聞きたいと思っている。つまり日本語バージョンであり、そこには弦楽オーケストラが演奏していることも想定できる。山形の皆さんにはこれが終わりではなく、これからも機会があるたびに進化していくこの 作品を聞いていっていただきたいと思っている。

2022年3月31日 久石譲

(2022年3月 山形・やまぎん県⺠ホール「合唱の祭典」プログラムノートより)

 

 

プログラム歴

合唱版
2022年4月 「合唱の祭典」(山形) *初演
2022年10月 「リトルキャロル26周年コンサート」(東京)**映像

2021年3月 日本センチュリー交響楽団(大阪)*初演 **映像
2021年7月 Future Orchestra Classics(東京、長野)**映像
2023年4月 シンガポール交響楽団(シンガポール)

 

 

 

『I Want to Talk to You』作品についてはまとめている。上記演奏会の詳細やコンサート・レポート、ライブ動画の紹介もしている。

 

合唱版を聴く機会に恵まれず、このたび2023年5月に公開されたライブ動画によって全貌に触れることができた。本来であれば作品レビューとしてDisc.ひとつにまとめたいところだが分けることにした。合唱版と弦楽版を比較しながらその魅力に迫りたいと新しいページに記した。それぞれの映像と音源は下を参考にしている。

初めてこの作品に触れる人にはとても親切じゃないレビューになっている。そこは映像や音源を何回も聴くことをおすすめする。また上記Discページにリンクのある初めて聴いたときのコンサート・レポートなどで入口の感想に触れてほしい。

 

 

 

 

I Want to Talk to You 合唱版/弦楽版 について

『I Want to Talk to You』は2楽章からなる約25分の作品。そのうち「I. I Want to Talk to You」は合唱版のちに弦楽版の二つが存在する。「II.Cellphone」は現時点において合唱版のみが存在する。

I. I Want to Talk to You
楽曲の骨格(全体構成、時間)はほぼ同じになっている。

楽器編成について
合唱版:小合唱(女声、男声ソリスト2人)、大合唱(女声、男声)、ピアノ2台、ビブラフォン、グランカッサ(大太鼓)

弦楽版:弦楽四重奏、弦楽合奏、ビブラフォン、マリンバ、グランカッサ(大太鼓)*弦楽版は弦10-12型を規模とし弦楽四重奏は立奏(チェロ除く)

ここからライブ動画の映像と音源で比較していくと、まずとても大きな枠組みで言うと、小合唱(女声)=弦楽四重奏(第1,第2ヴァイオリン)、小合唱(男声ソリスト2人)=弦楽四重奏(ヴィオラ、チェロ)、大合唱(女声)=弦楽合奏(第1,第2ヴァイオリン)、大合唱(男声)=弦楽合奏(チェロ、コントラバス)と同じパートを受け持っているようにみえる。ヴィオラ合奏は大合唱(女声or男声)どのパートに属しているのか、または時々で役割を行き来しているのかくっきり判別できるほどはわからなかった。

この全体的な見取図からしても楽曲の骨格はほぼ同じと言える。しかし、実際にはもっと緻密に声部の配置替えがされているように思う。男声ソリスト2人=弦楽四重奏のヴィオラ・チェロとするなら、楽曲開始3分半くらいからしかソリストは登場しない。合唱版ではそうだが弦楽版ではその前すでに弦楽四重奏の第1,第2ヴァイオリンの奏しているときに色合いを追加するように一緒に奏している。楽曲開始から2分あたりまでの弦楽四重奏パートは小合唱(女声)が歌い分けている、という感じになっている。

ピアノ2台は、合唱版では至難な16分音符の細かい動きを加味し、弦楽版では同じフレーズではないが16音符の粒の細かさは弦楽器が発揮している。また舞台配置から見て2台ピアノはそれぞれ大合唱(女声、男声)の音程を支えている役割もあるのかもしれない。ビブラフォンは特殊奏法含めて共通だが、弦楽版は後半マリンバに移行している。これにもいくつかの理由がありそうだ。ひとつは、合唱版の音像の豊かさ(混声)と対比して同系の音像に統一される弦楽版に色彩を加える効果。もうひとつは、弦楽版にはピアノがないのでピアノ的なアタックの強いパートを加える効果。特に転調時の瞬間的にハーモニーを切り替えるピアノとマリンバの役割は大きい。そう解釈した。

ここまで、楽器編成を起点に映像と音源を確認しただけでも、2つの作品には独立性がある。同じスコアを使って楽器や声のパートをただスライドさせたのとは違う、合唱のための/弦楽のための作品として堂々たる姉妹作品になっている。

合唱版の効果
歌詞をもった作品であるということ。言葉が旋律にのる、グループの大小・高低のバリエーションで迫ってくる。それだけでもう充分なアイデンティティを持った楽曲である。人の声にはそれぞれの声質・表情がある。ゆえにソリストもそれぞれの性格を持ったものとして声部も浮かびあがってくるし、大合唱も女声と男声とでくっきり分かれた音像になる。ドラマティックという表現が曖昧になるなら、合唱版は劇的、生身の音(声)としてのリアリティがある。

躍動するパートの転調による切り替わりが曖昧だとも感じた。かなり近いキーの転調なので声だとすぱっと頭から安定した音程が出にくいのか、基音となっている声部がたまたま映像からは聴こえにくかったのか。転調で一瞬にしてトーンが変化する持ち味もあるこの作品、弦楽のほうが切り替わりが明瞭に感じた。もちろん微細に移り変わっていく転調箇所もあるのだが。

弦楽版の効果
合唱版に比べて単色である、とは言いたくないけれど、弦楽器で覆われた統一感がある。また合唱に比べても強いアクセントを与えることができる。鋭く刻む弦は中間部で展開するところなど聴きどころになっている。ピアノ箇所でも書いたが、合唱は8分音符まで、弦楽器ではより細かい16分音符の躍動を与えることができる。弦楽四重奏パートでもメロディがズレて奏される妙、あるいはメロディを受け渡したり少し重なったりで奏される妙。男声ソリストだと各単独で聴こえるところも、弦楽四重奏は一体感で溶け合っている。スタイリッシュという表現が曖昧になるなら、弦楽版は多重奏、耳を研ぎ澄ませる機微がある。

合唱版/弦楽版の融合(可能性)
久石譲の楽曲解説にこうある。「作品としてはこれで完成しているが、僕としては日本語で聞きたいと思っている。つまり日本語バージョンであり、そこには弦楽オーケストラが演奏していることも想定できる。」

いま2つの作品をようやく聴くことができて、そうかもしれないと思った。単純に合体できそうな気もするなというのが最初の印象だ。でも聴き続けていくうちに、どうだろう?と思いだした。合体したらごちゃごちゃになるんじゃないかと。そんな勝手な素人不安は気にしなくていいこと。キーファクターになっているのは「日本語で」じゃないだろうか。日本語にするなら音符ひとつに言葉ひとつの手法をとるだろうからかなり言数が減ると想像できる。楽曲はじまりの「I Want to Talk to You」(仮に言数14つ)を歌うのに音符7つ、日本語にしたら7つきれにはまる言葉を選ぶだろう。そうすると旋律的にも言葉的にも動きが減る、メロディを紡いでいく抑揚や高揚のようなものが減る。動的な動きの補助や合唱とユニゾンさせ厚み的な補助を弦楽が担う、、、そうなるともうそれはクラシックでいう合唱編成したオーケストラ作品と同じ密度高い構築物になっていく、、、第九やカルミナ・ブラーナのように。合唱版では歌詞をともなわないスキャットでハーモニーやリズムを担っているパートもある。融合版のときには、歌われる言葉、多重奏、合唱と弦楽とで役割が分担されたり補完しあったりするのかもしれない。ここでは「I. I Want to Talk to You」に関してのみ記したので「II. Cellphone」のところでもっと可能性は膨張していくことになる。

 

 

II. Cellphone
合唱版のみが存在するかたちになっている。楽曲レビューと融合版への可能性について記していく。

楽器編成について
合唱版:小合唱(女声、男声ソリスト2人)、大合唱(女声、男声)、ピアノ2台、グロッケンシュピール、ドラムセット、タブラ

「I. I Want to Talk to You」に比べて小合唱と大合唱の独立した役割が判別できなかった。それは弦楽版として聴き分けれていたものがあるか否かの経験もあるのかもしれない。

楽曲について
音楽は前楽章と切れ目なく演奏される。冒頭いろいろな着信音が舞台設置スピーカーから会場中に鳴り響く。団員たちはどこで鳴っているのと互いをきょろきょろ見合う。そして一斉に口元に人差し指を立て、静かにのポーズをとると着信音は一旦鳴りやむ。が、また違う種類の着信音たちが鳴り始める。止める。そのやり取りを数度繰り返すうち客席からは笑いも起こる。といった演出が1分間ほど続いたあと楽器は始まる。

スネアとピアノによるリズミックなイントロのあと歌が始まる。歌詞は「Cellphone」という単語を基調にくり返される。バックに鳴るピアノやグロッケンシュピールの速いパッセージの粒たちはまるで着信音を模しているようにもとれる。その一方で、ドラムセットを使ったパーカッション群、団員たちは足の踏み鳴らしや手で太股あたりを叩いてリズムを刻むボディーパーカッション、そこへハンドクラップも加わりとても大地的な躍動感を感じる。視覚的にも迫力が伝わりやすくおもしろい。ここでひとつイマジネーションを広げてみる。前者のピアノやグロッケンシュピールが着信音とするならば、後者の打楽器やボディーパーカッションは原始的コミュニケーションともとれるのではないか。なんとも風刺が効いているとは個人の解釈だ。

けたたましく鳴るピアノとグロッケンシュピールに幾重にもスキャットするパートなどは、電波の混線やコミュニケーションの飽和、ボーダレスの膨らみを感じさせる。それを経て、「Hello」「Good Morning」「Good Evening」「チャオ」「ニーハオ」など世界のあいさつ語が一斉に交錯する。声部ごとにジェスチャーを伴いながら各あいさつ語を発する。そのうちの「チャオ」「ニーハオ」は大合唱(女声)が担っていたが、大合唱(男声)のあいさつ語を聴きとることができなかった。

その後展開部に入り、「I. I Want to Talk to You」のハーモニーが導入される。雰囲気でそうかなと気づける印象かもしれない。その土台のうえに「I want to touch you」「I want to see you other time」と歌いだされる。リアルに触れたい会いたいというメッセージは、体全身を使ったボディーパーカッションやボディーランゲージの演出を経てきた今、切実に迫ってくるようだ。声だけじゃない、人の身振り手振り表情から伝わることも多いのだ。そうしてはっきり前楽章「I Want to Talk to You」と同じ旋律と歌詞が登場してくることになる。私はあなたと話したいから、私はあなたと対面して話したいへの強い変化が込められているように思う。終盤は、「Cellphone」の反復とボディーパーカッションとドラムとで力強く歌いあげられる。締まった!

、、と思ったら、会場からも拍手が起こり出すなか、間髪入れずに着信音が鳴り響き男声ソリストが応答し会話を始めてしまう。スピーカーもヘッドセットマイクもあるので拍手にかき消されて着信音に気づかないということはないし、会話も明瞭に聞こえる演出になっている。そして歩きスマホしながら舞台袖にはけていく。つづけてもう一人の男声ソリストも同じように着信に応答し会話しながら退場していく。それを見ていた残された団員たちは一斉にはぁっとため息交じりに大きく肩を落とす。この演出までで作品は終演となる。当公演においてはこのような演出だったが、別公演(山形)では指揮者がそうだったようで演出パターンはバリエーションを持っているようだ。会話の内容も決まった設定ではない、公演ごとに新鮮でタイムリーなものが考案されているのだと思う。そこには一気に日常生活感に引き戻させるシークエンスが必要だと言いたげに。大きなメッセージを帯びた楽曲の直後に起こる下世話さ、その風刺までを作品に内包させているような気がする。

合唱版/弦楽版の融合(可能性)
久石譲の楽曲解説にこうある。「作品としてはこれで完成しているが、僕としては日本語で聞きたいと思っている。つまり日本語バージョンであり、そこには弦楽オーケストラが演奏していることも想定できる。」

いま2つの作品をようやく聴くことができて、疑問も生まれる。久石譲はどこまでを指して言ったのだろうか。「I. I Want to Talk to You」についての構想なのか、全2楽章をふまえた構想なのか。だから、ここから書くことは根拠をもった可能性ではない、個人の願望でしかない。

創作時の久石譲の警鐘と、別軸で起こった実社会でのパンデミック、考えさせられる文明の表裏一体。込められた風刺と込められた希望、ツールに侵されることとツールを豊かに使いこなすこと。もし現代社会や世界の中でこの作品を考えるなら、それはもう管弦楽作品に昇華してほしいというひとつの願望にたどり着く。『THE EAST LAND SYMPHONY』(交響曲第1番に相する)にも風刺の効いた楽章が歌詞とともに盛り込まれてもいる。

第九プログラムと並列させてはどうだろうとも想像した。歌詞と旋律をはっきりと持たせたソプラノからバスまでのソリスト4人に合唱と管弦楽、そういった発展もあるのではないか。現時点では小合唱グループ(女声・男声ソリスト)はともに歌詞をのせる役割と器楽的な役割とその両方を果たしている。だから今のままで第九第4楽章のような作品構成にできる話でもない。それはわかっているつもり、でも魅力的な可能性だとは感じてしまう。

合唱版の全2楽章を聴きながら、久石譲が本格的にオペラを書いたらこんな感じになるのかなと思うところもあった。ミュージカルではないから団員による演出のことを言っているわけではない。オペラは役者のような演技はしない。台詞・歌・演技が同居しているのがミュージカルだ。高らかに歌いあげる独唱、かけあうソリストたち、そこに広がる合唱たち、そして管弦楽。久石譲はこの作品『I Want to Talk to You』のあと『I was there』という合唱作品第2弾も発表している。今後、合唱作品が増えていくという予測よりも、将来的なオペラ作品へいくための布石となってくる、そんな作品群と位置づけられるのかもしれないと想像している。

 

最後に、ひとつの願望は「I Want to Talk to you ~ for Vocalists, Chorus and Orchestra」に結ばれる。ソリストと合唱をもった管弦楽作品として聴いてみたい。あるいは合唱と管弦楽そう『Orbis』などのように。もちろん合唱版/弦楽版の融合でもいいけれど。今回2023年5月に合唱版の全貌を聴くことができた。これを予習としてWDO2023でバージョンアップという伏線的な未来予想図はないだろうか。今年の交響組曲は『崖の上のポニョ』とある。そこへもし合唱が編成されるのなら。ソリストはいないが『The End of the World』のようにオーケストラと合唱で高らかに響きわたるこの作品を、いつか聴いてみたい。

 

 

Info. 2023/05/26 中国映画『川流不“熄”(A Summer Trip)』音楽:久石譲 中国公開 【5/26 update!!】

Posted on 2021/03/03

中国映画『川流不“熄”(A Summer Trip)』の音楽を担当しました。

中国映画『川流不“熄”』
(英題:A Summer Trip / 邦題:A SUMMER TRIP ~僕とじいじ、1300キロの旅)

中国公開:2021年7月(予定)
監督:フォン・クーユー(FENG Keyu)
出演:ヤン・シンミン、フー・チャンリン、トゥ・ソンイェン、ダイ・ロロ、ヤン・トンス “Info. 2023/05/26 中国映画『川流不“熄”(A Summer Trip)』音楽:久石譲 中国公開 【5/26 update!!】” の続きを読む