Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『The End of the World』

2016年7月13日 CD発売
2016年7月27日 LP発売 (完全限定生産)

大迫力のコンサート「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2015」を完全収録!壮大な交響詩として生まれ変わった完全版「Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015」も初音源化!

戦後70周年の特別な年に開催された「久石譲&W.D.O.2015」。「The End of the World」(声楽と管弦楽のための)+(久石 譲リコンポーズド「The End of the World」-ヴォーカルナンバー 「この世の果てまで」)の壮大な交響作品をはじめ、日本への想いを込めて書き下ろした「祈りのうた」(ピアノ+弦楽合奏+チューブラー・ベルズ版)、そして長年の時を経て壮大な交響詩として生まれ変わった「Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015」(映画『風の谷のナウシカ』より)の完全版が満を持して音源化。

根強いファンをもつ「il porco rosso」「Madness」(映画『紅の豚』より)、「Dream More」(サントリー ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム CMテーマ曲)、さらにアンコール曲「Your Story 2015」(映画『悪人』主題歌より)、「World Dreams」(W.D.O.テーマ曲 合唱付き)まで約2時間を超える迫力のコンサートの模様を完全収録!

 

 

アルバム『The End of the World』に寄せて

鎮魂の鐘で始まり、希望の鐘で終わる──。2015年8月に開催された久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(以下、W.D.O.)の全国ツアー(以下、W.D.O.2015)と、その演奏曲を完全収録した本盤『The End of the World』の内容を要約するならば、ズバリその一言に尽きる。戦後70周年という特別な年にふさわしい、練りに練られたプログラム。ただし、そこにたどり着くまでは、約1年にも及ぶ準備期間と、絶え間ない試行錯誤の繰り返しを必要とした。

2014年、すなわちW.D.O.結成から10年目の節目の年、久石は3年ぶりのW.D.O.のコンサートを指揮した。「ジャンルにとらわれず魅力ある作品を多くの人々に聴いてもらう」という結成当初からのコンセプトはそのままに、10年の間に飛躍を遂げたW.D.O.はポップス・オーケストラというカテゴリーの枠を大きく越え、”本物の音楽”を志向するオーケストラに成長していた。しかもW.D.O.は、日本人にとって特別な意味をもつ夏-広島・長崎の原爆投下と8月15日の終戦記念日を含む夏-という季節に限定してコンサートを開催する。そこで久石は、W.D.O.2014のテーマを「鎮魂の時」と位置づけ、クシシュトフ・ペンデレツキ作曲《広島の犠牲者に捧げる哀歌》、J・Sバッハ作曲《G線上のアリア》、それに太平洋戦争に関連する久石の映画音楽作品-アルバム『WORKS IV』にも収録されている《ヴァイオリンとオーケストラのための「私は貝になりたい」》《「風立ちぬ」第2組曲》《小さいおうち》の3曲-を演奏した。このW.D.O.2014の演奏会は大きな反響を巻き起こし、演奏終了直後、久石は聴衆の前で翌年のW.D.O.ツアー開催を宣言した。久石とW.D.O.が提示したメッセージが見事に伝わり、これまでになかったようなシリアスなプログラムでも聴衆に受け入れてもらえる、という確信が得られたからである。

その翌月、久石は30年来の夢だった「現代のすぐれた音楽を紹介する演奏会」、すなわち「Joe Hisaishi presents MUSIC FUTURE」第1回演奏会(MF Vol.1)を開催し、かねてから彼が敬愛するホーリー・ミニマリズムの作曲家、ヘンリク・グレツキとアルヴォ・ペルトの作品を演奏・紹介した。祈りに満ちた彼らの音楽は、第2次世界大戦のホロコーストの悲劇や、冷戦時代の恐怖政治の抑圧と密接な関わりを持っている。ゴレツキとペルトの演奏は、来たる2015年にやってくる戦後70周年を久石に強く意識させることになった。

MF Vol.1の演奏会が成功裏に終わったその夜、久石は早くもW.D.O.2015の実現に向けて構想を練り始め、プログラムのテーマを「祈り」とする基本方針を固めた。ツアー開催地には、久石の強い希望で広島と仙台が含まれることが決まった。言うまでもなく、2015年の原爆投下70周年と、2011年東日本大震災から立ち直りつつある東北地方を意識しての決定である(奇しくも広島公演は、8月6日の原爆の日に開催されることになった)。その際、久石が強調していたのは「単に”追悼”や”鎮魂”を掲げるのではなく、そこから先の未来に向けたメッセージも伝えなくてはならない」という点だった。それが出来なければ、W.D.O.は真の意味で「ワールド・ドリーム」を名乗る資格がない──そのような強い決意のもと、久石はW.D.O.2015のプログラミングに着手した。

プログラムの中で最初に決まったのは、《Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015》である。久石の映画音楽作品、特に宮崎駿監督作品のための音楽は、日本のみならず海外でも演奏頻度が飛躍的に高まり、ここ10年は久石以外の指揮者に演奏を委ねる機会も増えてきた。そこで久石は、宮崎作品のオーケストラ譜を完全版(Definitive Edition)の形で整え、W.D.O.で順次初演していくという計画を立てた。その先陣を切る作品としては、やはり『風の谷のナウシカ』がいちばんふさわしい。宮崎監督と久石が初めてタッグを組んだ記念すべき第1作という歴史的意義に加え、『ナウシカ』が描いている”破壊と再生”というテーマがW.D.O. 2015のプログラムにふさわしいと、久石は判断した。

では、他の曲をどうするか? どうしたら、戦後70周年にふさわしく、かつW.D.O.らしいプログラムを組み立てることが出来るか? ここから、久石の長い格闘が始まった。ある段階では、第2次世界大戦の戦没者や犠牲者のために書かれたクラシック曲、あるいはもっと広い意味で”追悼”をテーマにしたクラシック曲なども、演奏の可能性がかなり真剣に検討された。しかしながら、W.D.O.は既存の常設オーケストラと異なり、クラシックだけを演奏する団体ではあに。レクイエム(鎮魂ミサ曲)のような作品ばかり並べた”追悼演奏会”にしたのでは、W.D.O.らしさが失われてしまう。そうは言っても、W.D.O.2015はヒロシマと東北に向けたステートメントをきとんと伝えなくてはならない──。このような雁字搦めの状況の中、ありとあらゆる可能性が候補に挙がり、また破棄されていった。

そうした中から生まれてきたのが、久石が2008年に作曲した《The End of the World》を、W.D.O.2015のプログラムの中で演奏するというアイディアである。もともとこの作品は、久石が2001年同時多発テロ(9.11)に着想を得て作曲したといういきさつがある。そして、W.D.O.のテーマ曲である《World Dreams》も、久石が9.11を強く意識して作曲した作品だ。原爆投下70周年と東日本大震災、これだけでも非常に大きいテーマであるが、久石はそこに9.11を加えることで、戦後70年のあいだに我々日本人が何を体験し、何を感じてきたか、その重みを世界全体の普遍性の中で捉え、《The End of the World》に集約して表現しようと考えた。そのアイディアと軌を一にする形で、東北に向けた新作をW.D.O.2015で演奏するというプランも生まれてきた。久石が《祈りのうた》を作曲したのは、そのプランが生まれてからすぐのことである。

かくして、”祈り”をテーマにしたW.D.O.2015のプログラムは《祈りのうた》《The End of the World》《ナウシカ》の3曲を中心にして構成する、という全体の骨格が固まった。原爆投下70周年の2015年8月6日に広島で演奏しても、東日本大震災の記憶が残る仙台で演奏しても、全く恥ずかしくないプログラムである。まさに「世界の終わり」を垣間見るような重量級の内容だが、そこまで徹底的に突き詰めてこそ、W.D.O.が振り子を揺り戻すようにエンタテインメント性豊かな音楽を演奏することの意味が生まれてくる。その部分に関しては、2015年の久石の新作《Dream More》と、宮崎作品の《紅の豚》を演奏することで万全を期した。

この間、久石は2015年2月の台湾公演と4月のイタリア公演、5月の新日本フィル演奏会(ペルトの交響曲第3番など)、アルバム『Minima_Rhythm II』の準備とリリース、それらと並行して山田洋次監督作『家族はつらいよ』をはじめとする数々のエンタテインメント音楽の作曲など、凄まじいスケジュールをこなしながらW.D.O.2015の準備を進めていった。特に《The End of the World》に関しては、「祈り」というテーマにふさわしい演奏にすべく、作品の構成そのものが大幅に見直された。試行錯誤の結果、《The End of the World》はリハーサル開始まであとわずかというギリギリのタイミングで、ようやく最終的な楽章構成が確定した。

2015年8月5日の大阪公演を皮切りに、全国5都市計6回の公演がもたれたW.D.O.2015。筆者はそのうち、東京公演2回を聴いたが、プログラム第1曲の《祈りのうた》がチューブラー・ベルズで始まり、最後のアンコール曲《World Dreams》の最終和音がチューブラー・ベルズで閉じられるのを聴いて、言葉では表現しようのない感動に打ち震えた。鐘で始まり、鐘で終わるW.D.O.2015。2つの鐘は、同じではない。最初は鎮魂の鐘、最後は希望の鐘だ。この2つの鐘が象徴しているように、W.D.O.2015はプログラム全体にわたり、「鎮魂から希望へ」というトータル・コンセプトが見事に貫かれていた。これほど考え抜かれたコンサートは、久石と言えども、そうそう作り上げることが出来るものではない。だからこそ、本盤『The End of the World』のリリースに際しては、アンコールを含むW.D.O.2015の全演奏曲が1曲も割愛されることなく完全収録されることになった(収録フォーマットの関係上、CDとLPでは曲順が若干異なる)。戦後70周年にふさわしい、久石譲&W.D.O.の歴史的名盤がここに誕生した。

 

 

楽曲解説

祈りのうた -Homage to Henryk Górecki-

原曲は2015年1月、三鷹の森ジブリ美術館オリジナルBGMのピアノ独奏曲として書かれた。久石がホーリー・ミニマリズム(聖なるミニマリズム)の様式で初めて作曲した楽曲である。本盤に収録されているピアノ+弦楽合奏+チューブラー・ベルズ版はW.D.O.2015のプログラム第1番として演奏され、その際、「ヘンリク・グレツキへのオマージュ Homage to Henryk Górecki」という副題が付加された。グレツキは、アウシュヴィッツ強制収容所の悲劇-ヒロシマと共に第2次世界大戦を象徴する悲劇-をテーマにした《交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」》で知られるホーリー・ミニマリズムの作曲家である。冒頭、チューブラー・ベルズが弔鐘のように鳴り響くと、最初のセクションでピアノ独奏が透明感あふれる三和音のモティーフを導入し、中間部のセクションでピアノとヴァイオリンが悲しみに満ちた和音を演奏した後、嗚咽がこみ上げるような弦楽合奏が加わり、最初のセクションが再現されるという構成になっている。

 

The End of the World for Vocalists and Orchestra
 I. Collapse - II. Grace of the St. Paul -
III. D.e.a.d - IV. Beyond the World

原曲は、久石が2007年秋にニューヨークを訪れた時の印象を基に作曲された。当初《After 9.11》というタイトルが付けられていたように、2001年同時多発テロ(9.11)による世界秩序と価値観の崩壊が引き起こした「不安と混沌」をテーマにした作品である。この楽曲は2008年の初演から本盤のW.D.O.2015ヴァージョンまで、かなり複雑な変遷をたどっているので、以下にその過程を列挙する。

(A)コンサート・ツアー『Piano Stories 2008』初演ヴァージョン(12本のチェロ、コントラバス、ハープ、パーカッション、ピアノのための)
I. Collapse - II. Grace of the St. Paul - III. Beyond the World の3楽章からなる組曲。

(B)アルバム『Another Piano Stories~The End of the World』(2009年2月リリース)収録ヴァージョン
上記(A)に後述のヴォーカル・ナンバー《The End of the World》(ヴォーカルは久石)を加えた4楽章の組曲版。

(C)アルバム『Minima_Rhythm』(2009年8月リリース)収録バージョン(合唱と管弦楽のための)
3楽章版(A)を大幅に加筆してフル・オーケストラ化。併せて第3楽章〈Beyond the World〉では、(A)の構想段階で終わっていた合唱の導入が初めて実現した。

(D)本盤収録のW.D.O.2015ヴァージョン(声楽と管弦楽のための)
(C)の〈Grace of the St.Paul〉と〈Beyond the World〉の合間に、新たな楽章〈D.e.a.d〉を追加。終楽章〈Beyond the World〉の後、ヴォーカル・ナンバー《The End of the World》が続き、全5楽章の組曲のように演奏される。

I. Collapse
グラウンド・ゼロの印象を基に書かれた楽章。冒頭、チューブラー・ベルズが打ち鳴らす”警鐘”のリズム動機が、全曲を統一する循環動機もしくは固定楽想(idéefixe)として、その後も繰り返し登場する。先の見えない不安を表現したような第1主題と、より軽快な楽章を持つ第2主題から構成される。

II. Grace of the St.Paul
楽章名はグラウンド・ゼロに近いセント・ポール教会(9.11発生時、多くの負傷者が担ぎ込まれた)に由来する。冒頭で演奏されるチェロ独奏の痛切な哀歌が中近東風の楽想に発展し、人々の苦しみや祈りを表現していく。このセクションが感情の高まりを見せた後、サクソフォン・ソロが一種のカデンツァのように鳴り響き、ニューヨークの都会を彷彿とさせるジャジーなセクションに移行する。そのセクションで繰り返し聴こえてくる不思議な信号音は、テロ現場やセント・ポール教会に駆けつける緊急車両のサイレンのドップラー効果を表現したものである。

III. D.e.a.d
原曲は、2005年に発表された4楽章の管弦楽組曲《DEAD》(曲名は”死”と、D(レ)E(ミ)A(ラ)D(レ)の音名のダブル・ミーニング)の第2楽章〈The Abyss~深淵を臨く者は・・・・~〉。原曲の楽章名は、ニーチェの哲学書『ツァラトゥストラはかく語りき』に登場する一節「怪物と闘う者は、その過程で自分が怪物にならぬよう注意せねばならない。深淵を臨くと、深淵がこちらを臨き返してくる」に由来する。今回、新たに声楽と弦楽合奏のために再構成され、久石のアイディアを基に麻衣が歌詞を書き下ろした。声楽パートをカウンターテナーが歌うことで、歌詞が特定の事件(すなわち9.11)や世俗そのものを超越し、ある種の箴言のように響いてくる。

IV. Beyond the World
「世界の終わり」の不安と混沌が極限に達し、同時にそれがビッグバンを起こすように、「生への意思」に転じていくさまを、8分の11拍子という複雑な変拍子と、絶えず変化を続ける浮遊感に満ちたハーモニーによって表現した壮大な楽章。アルバム『Minima_Rhythm』録音時に、久石自身の作詞によるラテン語の合唱パートが付加された。楽章の終わりには、チューブラー・ベルズの”警鐘”のリズム動機が回帰する。

Recomposed by Joe Hisaishi The End of the World
原曲は、ポップス歌手スキータ・デイヴィスが1962年にヒットさせたヴォーカル・ナンバー(邦題は《この世の果てまで》)。歌詞の内容は、作詞者のSylvia Deeが14歳で父親と死別した時の悲しみを綴ったものとされている。このヴォーカル・ナンバーは、上述の組曲《The End of the World》の作曲にも大きなインスピレーションを与えた。本楽曲のメロディーの美しさをかねてから高く評価していた久石は、アルバム『Another Piano Stories』の時と同様にヴォーカル・ナンバーをリコンポーズし、それを組曲のエピローグとして付加している。交響曲の中に世俗曲や民謡を引用した、グスタフ・マーラーの方法論にも近いと言えるだろう。〈D.e.a.d〉とは正反対に、愛する者を失った悲しみをエモーショナルに歌うカウンターテナーと、その嘆きを暖かく包み込む崇高な合唱。その背後で静かに鳴り響くチューブラー・ベルズのリズム動機は、もはや恐ろしい”警鐘”ではなく、祈りの弔鐘”へと優しく姿を変えている。かくして9.11の悲しみは、誰もが共感し得る私たち自身の悲しみに昇華して普遍化を遂げ、戦後70周年にふさわしい世界観を獲得することに成功している。

 

紅の豚
il porco rosso - Madness

世界大恐慌のイタリアを舞台に、豚の姿に変わった伝説のパイロット、ポルコ・ロッソの活躍を描いた宮崎駿監督の冒険ロマン。物語の時代が1920年代後半に設定されていたため、久石の音楽も1920年台のジャズ・エイジを強く意識したスコアとなった。本盤収録の2曲のうち、前半の〈il porco rosso〉はイメージ・アルバムで《マルコとジーナのテーマ》と名付けられていた、《帰らざる日々》のテーマ。ジャージーなピアノが、マルコ(ポルコの本名)と美女ジーナの”ロマンス”をノスタルジックに演出する。後半の〈Madness〉は、ポルコがファシストたちの追手を逃れ、飛行艇を飛び立たせるアクション・シーンの音楽。もともとこの楽曲は、小説家フィッツジェラルドをテーマにした久石の1992年のソロ・アルバム『My Lost City』(アルバム名はフィッツジェラルドのエッセイ集のタイトルに由来)に収録されていたが、宮崎監督の強い要望で本編使用曲に決まった、という逸話がある。大恐慌直前のジャズ・エイジの”狂騒”と、1980年代後半のバブルの”狂騒”を重ね合わせて久石が表現した〈Madness〉。その警鐘に耳を傾けることもなく、日本のバブルは『My Lost City』リリースと『紅の豚』公開の直後、崩壊した。

 

Dream More

サントリー「ザ・プレミアム・モルツ・マスターズドリーム」のCMテーマとして作曲された、2015年の久石の新作のひとつ。CM発表会見にて、久石は「ノスタルジックで感傷的なメロディー」を「いろいろな味わいのする多重奏」に仕上げたと語っている。本盤に収録されているのは、W.D.O.2015で世界初演されたフル・ヴァージョン。《Dream More》という曲名には、現状に満足せず、さらなる夢(ドリーム)を追い求めていこうとする久石とW.D.O.の飽くなきチャレンジ精神が込められているように思われる。

 

Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015
(a)風の伝説 – (b)遠い日々 – (c)ナウシカ・レクイエム – (d)メーヴェとコルベットの戦い –
(e)谷への道 – (f)蘇る巨神兵 – (g)遠い日々 – (h)鳥の人 – (i)風の伝説

最終戦争「火の七日間」が勃発し、巨神兵が破壊の限りを尽くして崩壊した巨大産業文明。それから1000年後、荒廃した世界の中で暮らす少女ナウシカは、戦乱の中で自然との共生を強く訴えかけ、自ら命を投げ出すことで世界に奇跡を起こす。久石と宮崎監督がタッグを組んだ記念すべき第1作にして、久石の代表作のひとつでもある『風の谷のナウシカ』の音楽は、久石自身のコンサートに限っても、これまでさまざまな編成によって演奏されてきた。演奏会用の管弦楽曲に関しては、メインテーマ〈風の伝説〉の単独演奏ほか、すでに2つの組曲が交響詩の形で演奏されている。すなわち、アルバム『WORKS I』収録の1997年ヴァージョン(a, b, c, d, e, g, h, i)と、BD&DVD『久石譲 in 武道館』およびアルバム『The Best of Cinema Music』収録の2008年ヴァージョン(a, b, c, d, g, h, i)である。今回の演奏に際しては、久石は『ナウシカ』のために作曲した素材をすべて検討し直し、完全版となる新たなヴァージョンを作り上げた。この完全版は、近く楽譜出版が予定されている。

(a)風の伝説
本編オープニングタイトルの音楽。衝撃的なティンパニで始まる導入部の後、久石のソロ・ピアノが万感の想いを込めてメインテーマを演奏する。そのメロディーの冒頭部分は、あたかも1980年代の映画音楽のトレンドに真っ向から抵抗するかのように、コード進行をほとんど変えない形で作曲されている。ミニマル・ミュージックの作曲家ならではのストイックな音楽的姿勢と、文字通り身を削るようなナウシカの壮絶な生きざまが重なって聴こえてくるのは、筆者ひとりだけではないだろう。

(b)遠い日々
「ラン・ランララ・ランランラン」の歌詞で知られるモティーフを、オーケストラのみで扱った部分。軽やかな木管がモティーフを提示した後、バロック風のフーガが続く。このフーガは、チェロとピアノのために書かれた《「風の谷のナウシカ」より組曲5つのメロディー》第4曲のフゲッタを発展させたものである(蛇足だが、曲のイメージと本編の印象から、「ラン・ランララ・ランランラン」のモティーフを〈ナウシカ・レクイエム〉と表記する解説がしばしば見受けられるが、それらはすべて誤り。正しくは〈遠い日々〉のモティーフである)。

(c)ナウシカ・レクイエム
自らの命を犠牲にして、虫たちの暴走を止めたナウシカを人々が嘆き悲しむシーンの音楽。バロックの作曲家ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルにも通じる力強い楽想が、聴く者に強い印象を与える。日本武道館で演奏された2008年ヴァージョンより、この部分の音楽には合唱パートが付加され、レクイエム(鎮魂ミサ曲)の〈怒りの日〉のラテン語歌詞を歌う。歌詞と訳は次の通り。「Dies iræ, dies illa 怒りの日が到来する時/solvet sæclum in favilla この世は灰燼に帰すだろう/teste David cum Sibylla ダビデとシビラの予言のように/Quantus tremor est futurus その恐ろしさは如何ばかりか」。

(d)メーヴェとコルベットの戦い
小型飛行機メーヴェを操るナウシカがトルメキア軍の大型戦闘機コルベットの追撃をかわすシーンの、ダイナミックな音楽。

(e)谷への道
サントラ録音に先立ち、久石が宮崎監督の絵コンテを基に作曲・録音した『イメージアルバム 鳥の人・・・』および『シンフォニー 風の伝説』に収録されていた楽曲。本編では未使用に終わったが、『ナウシカ』の世界観を表現するのに欠かせない重要な音楽のひとつである。当初からチェロの音色を意識して作曲されたという経緯もあり、本盤に聴かれる演奏でも、チェロがモティーフに豊かな膨らみを与えている。

(f)蘇る巨神兵
今回、初めて交響詩の中に組み込まれたモティーフ。不気味なグリッサンドを歌う合唱パートが新たに付加され、巨神兵の恐怖を強調する。

(g)遠い日々
本編のクライマックス、絶命したはずのナウシカが蘇る感動的なシーンの音楽。サントラ録音時、まだ4歳だった久石の娘・麻衣が「ラン・ランララ・ランランラン」を歌い、絶大な効果を上げた逸話はあまりにも有名である。W.D.O.2015の演奏に先立つリハーサルでは、「オペラ歌手のように朗々と歌わず、あくまでも気負わないで」と久石が指示を与えていたのが印象的だった。

(h)鳥の人
上の(g)に続き、人々がナウシカの再生と平和の到来を喜ぶラストの音楽。壮大な合唱が「ラララン・ランランラン」と歌い、音楽は歓喜の頂点に達する。

(i)風の伝説
オーボエが〈風の伝説〉のモティーフをしみじみと回想した後、本編エンドロールの音楽を凝縮したエピソードで全曲が閉じられる。

 

Your Story 2015

原曲は、第34回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀音楽賞ほか5部門に輝いた李相日監督『悪人』の主題歌。W.D.O.2015のアンコールで、テナーとカウンターテナーのための新ヴァージョンが披露された(本盤の演奏では、高橋淳が両方の声域にまたがる形で歌唱を披露している)。2011年、東日本大震災の3ヶ月後に開催されたチャリティ・コンサートでは、久石が撮影してきた被災地のスチール写真の投影と共に《Your Story》が演奏され、聴衆に深い感銘を与えた。そこには「Your Storyとはあなたたち、わたしたち日本人のストーリー」という言外の意味が込められていたように思われる。以上のような文脈を考慮し、別掲の歌詞日本語訳は、サントラ盤所収の日本語訳とは異なる形で訳出した。

 

World Dreams  for Mixed Chorus and Orchestra

2004年、久石と新日本フィルがW.D.O.を立ち上げた歳に書き下ろした、W.D.O.テーマ曲。「作曲している時、僕の頭を過っていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。『何で・・・・』そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国家のような格調のあるメロディーが頭を過った」。本盤では、2011年に麻衣が作詞した歌詞を合唱が歌うヴァージョンが演奏されている。久石とW.D.O.が奏で続ける”世界の夢”(ワールド・ドリーム)を象徴した、崇高なメロディー。そこに込められた”希望の力”を、チューブラー・ベルズが心に刻みこむよういして静かに鳴り響き、W.D.O.2015の幕となる。

2016年5月27日、オバマ大統領広島訪問の日に
前島秀国 Hidekuni Maejima
サウンド&ヴィジュアル・ライター

(寄稿・楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

Word Dreams
作曲:久石譲 歌詞:麻衣

遙かなるこの大地 朝日を浴び
澄み渡る青い空 時の歩みをうつす
世界の声は 希望の力
時を越え響き渡れ 愛を歌おう

哀しみにつまずけば 自由がみえる
歓びの灯が消えても 共に歩き続けよう
世界の夢よ 全ての人に
届けようこの歌声 愛を信じて

夢をみるひとすじの小さな光
千年の時を経て 明日を照らし続ける
愛を歌おう

遙かなるこの大地 朝日を浴び
澄み渡る青い空 時の歩みをうつす
世界の夢よ すべての人よ
誇り高きこの夢に 愛を誓おう
永久(とわ)に誓おう

(「World Dreams」歌詞 ~CDライナーノーツより)

※他作品歌詞もすべてライナーノーツ掲載あり

 

 

これより参考文献。

「The end of the World」について

-《The End of the World》は2008年に初めて発表したものを進化させ、楽章を増やしていますね。

久石:
この曲を作った直接的なきっかけは2001年に起こったアメリカ同時多発テロです。ニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んだ映像をずっと自分の中で引きずっていて、グラウンド・ゼロを訪れたりする中で確実に世界の有り様が変わったのを感じていました。それが今に通じているところがあると思い、今回のツアーで演奏しようと思ったわけですが、もともとの3楽章に加え、さらに深いところに入っていけるような《D.e.a.d》という楽章を加えました。以前書いた《DEAD for Strings , Perc. , Harp and Piano》という組曲が《The End of the World》と通じる部分があったので、《DEAD》の第2楽章の弦楽曲をもとに新たに楽章を加え、全体を再構築しました。

-《The End of the World》は冒頭から鳴る鐘の音が印象的です。

久石:
鐘の音はまさに警鐘を意味しています。全楽章であのフレーズを通奏していますが、象徴しているのはいわば”地上の音”。それに対して入ってくる声は、人間を俯瞰で見るような目線です。地上にいる人間の業に対し、遠くから「どうなっていくんだろう」という問いかけをしているんです。

-前半の最後にはスキータ・デイヴィスのヒット曲でもある同名曲《The End of the World》も登場します。

久石:
この曲が最後にくることによって《The End of the World》を全部で5楽章と捉えられるような構成にしたいと思いました。”あなたがいなければ世界が終わる”というラブソングですが、”あなた”を”あなたたち”と解釈することもできて、そう考えるとこれは人類に対するラブソングでもある。だからといってそこにあるのは救いじゃないかもしれない。冒頭で示した鐘の音による旋律も入ってくるし、不協和音も漂っている。それをどう感じてもらえるかがポイントになってくると思います。

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」公式パンフレット インタビュー より)

 

「実は、直前まで決定するのに苦しんでいて、やっと「The End of the World」というタイトルに決まったんです。この「The End of the World」には同名のスタンダード曲も存在して、「あなたがいないと私の世界が終わる」というような意味のラブソングです。でも、この曲のあなたを複数形でとらえ、あなたたちが存在していなければ、世界は終わってしまうといった、もっと広い意味で捉えると、たぶん今、僕が考えている世界観にとても近いんじゃないかと感じて、敢えてこの同じタイトルを用いた理由です。楽曲は、1楽章は4分の6拍子から始まり、最終楽章が8分の11拍子という、大変難しい曲。おまけに、絶えずピアノが鳴らす基本リズムがあり、それに他の楽器が絡み合う、本当に”世界のカオス”、まさに”混沌”を表現するような、アンサンブル自体がカオスになってしまうんじゃないかというくらいの難曲になってしまいました。」

Blog. 「久石譲 ~Piano Stories 2008~」 コンサート・パンフレット より

 

 

「Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015」について

久石譲インタビュー:
オーケストラでのコンサートをずいぶんやってきましたが、映画音楽を演奏しようとすると一部分になってしまうことが多かったので、大きな作品として聴いてもらえるものを作りたいという思いがずっとありました。「風の谷のナウシカ」の組曲は以前に「WORKS I」というアルバムを作った時に、ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団の演奏で録音したバージョンがあったのですが、それをベースに映画で使われているものを継承しながらさらにスケールアップさせようと思って取り組みました。ただ、いざやり始めてみると大変。映画自体が破壊と再生というテーマを持っていて、前半のプログラムと通じているところが多く、精神的に苦労しました。

これを機会に宮崎さんの作品を交響組曲として表現していくプロジェクトを始められたらと思っています。世界中のオーケストラから演奏したいという要望もありますし、今後続けられれば嬉しい。ただ、僕は毎回のコンサートを「これが最後」という気持ちで臨んでいるので、今回きちんと成功してやっと次が見えてくるんだと思います。

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」公式パンフレット インタビュー より)

 

 

その他参考文献および所感文献。

 

 

The End of The World LP o

◆CD「The End of the World」
【DISC_1】
1. 祈りのうた -Homage to Henryk Górecki-
The End of the World for Vocalists and Orchestra
2. I. Collapse
3. II. Grace of the St. Paul
4. III. D.e.a.d
5. IV. Beyond the World
6. Recomposed by Joe Hisaishi  The End of the World
【DISC_2】
1. il porco rosso
2. Madness
3. Dream More
4. Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015
5. Your Story 2015
6. World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

※初回生産限定スペシャルパッケージ(スリーブ付仕様)

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
(DISC 1 Track-6 Music Recomposed and Produced by Joe Hisaishi)

Conducted:Joe Hisaishi
Performed:New Japan Philharmonic World Dream Orchestra
Concert Master:Yasushi Toyoshima

Piano:Joe Hisaishi (DISC 1 Track-1 / DISC 2 Track-1,2,4,5)
Countertenor / Tenor:Jun Takahashi (DISC 1 Track-4,6 / DISC 2 Track-5)
Chorus:Ritsuyukai Choir (DISC 1 Track-5,6 / DISC 2 Track-4,6)
Chorus Master:Takuya Yokoyama (Ritsuyukai Choir)

Live Recorded at The
Symphony Hall, Osaka (5th August, 2015)
Suntory Hall, Tokyo (8th August, 2015)
Sumida Triphony Hall, Tokyo (9th August, 2015)

Mixed at Bunkamura Studio

Recording & Mixing Engineer:Suminobu Hamada (Sound Inn)

Photograph:Ryoichi Saito

and more…

 

◆LP「The End of the World」
【Side_A】
1. 祈りのうた -Homage to Henryk Górecki-
The End of the World for Vocalists and Orchestra
2. I. Collapse
3. II. Grace of the St. Paul
【Side_B】
The End of the World for Vocalists and Orchestra
4. III. D.e.a.d
5. IV. Beyond the World
6. Recomposed by Joe Hisaishi  The End of the World
【Side_C】
1. Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015
【Side_D】
1. il porco rosso
2. Madness
3. Dream More
4. Your Story 2015
5. World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『W.D.O. BEST』

久石譲 WDO 『BEST』

2007年6月20日 CD発売

新しいポップス・オーケストラとして誕生したニュープロジェクト「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」 3年間の活動集大成。

 

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような拡張あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら・・・。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

 

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

 

The Pink Panther
ヘンリー・マンシーニのこの作品は、ワンフレーズ聴いただけで何の曲かはっきりわかる、とても個性的な曲。これほどユーモアがあって、しかもしっかり創られている曲は少ないので、これはのちのち、我々にとっても大事な曲になっていくと思う。だからぜひやりたかった。ところで、この曲はたいがい、ブラス・サウンドが中心になる。しかし今回は、「隠し味」とも言える、弦のちょっと色っぽい音がすごく重要な要素。それがたぶん、僕のアレンジの特色になるだろう。

 

China Town
同名の映画は1930年代を舞台にした、情ない探偵の話で、僕の大好きな映画。主演のジャック・ニコルソンも好きな俳優だ。曲はジェリー・ゴールドスミス。この曲のテーマが頭にこびりついていたので、今回、ティムさんというトランペット奏者を得て、どうしてもこの曲を入れたいと思った。ティムさんのジャジーな雰囲気も素晴らしい。その演奏からは、音楽性の幅の広さがわかる。

 

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

 

Mission Impossible
あまりにも有名な、「スパイ大作戦」のテーマ曲。この曲を創ったラロ・シフリンも大好きな作曲家だ。変型のはずなのに、心地いい5拍子。このリズムの凄さが、オーケストラのダイナミック・レンジを表現するのにぴったりだ。「ハードボイルド・オーケストラ」のシメの曲としてもピッタリではないか?

 

ジャズ組曲第2番 ワルツ (ショスタコーヴィチ)
僕が今年、最もはまった曲。映画「アイズ ワイド シャット」の曲だけれど、とにかく見事にはまっている。他人の曲で、今年一番好きになった曲はこれだ。

 

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

 

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

 

ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)
この曲は、ひとつひとつ挙げられないほど、多くの映画に使われている。複雑なテクスチュアというよりも、素朴な、強いメロディの楽曲。

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

 

 

【楽曲解説】

あれからまだ1年も経っていないのか・・・久石譲が2004年夏に新日本フィルハーモニー交響楽団とともに新しいプロジェクトとしてスタートさせた”久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ”の3年間の活動を集大成したベスト・アルバムを聴きながら、僕は思った。

「アヴェ・マリア」が流れてきた時にフラッシュバックしてきた。2006年8月13日に東京・錦糸町のすみだトリフォニー・ホールで行われた一夜限りのコンサート「真夏の夜の悪夢」の圧倒的な素晴らしさ。久石さんが曲の間のMCで「サスペンス映画やホラー映画の曲というのはコード進行も含めて非常に精密で複雑、奥が深いものが多いので、オーケストラで演るにはいいものがたくさんあるんです」と話しながら『エクソシスト』や『サイコ』『殺しのドレス』・・・といった曲をカール・オルフの代表作である「カルミナ・ブラーナ」などと同列線上に並べて聴かせるという離れ技を軽々とこなして見せたが、その間にいろいろなことをやっているので、記憶がぼやけてしまっていたのである。

少し例をあげてみると、2006年10月には、久石譲というアーティストがアメリカのフィリップ・グラス、イギリスのマイケル・ナイマンと並んで世界でもトップクラスの現代音楽の作曲家であることを証明したソロ・アルバム『Asian X.T.C.』が発表された。また、その直後から2007年3月まで全国ツアーとアジア・ツアーも行い、大成功させている。TVから流れてくるCFの音楽も、担当する映画音楽の話題もとぎれることがない。

だから、本当にもったいないことに、久石さんが「システムの壊れかけた世界で、僕たち音楽家は、音楽ができることは何なのか・・・」という熱い想いをもとにスタートさせたW.D.O.のプロジェクトは、作り出された音楽が素晴らしくクオリティが高く、唯一無二の魅力を持ちながら、久石譲の旺盛な仕事の中に埋没してしまっている感がある。そう考えると、このベスト・アルバムは久石譲というアーティストの才能の深さ、広さを知るには絶好のものであり、選曲と曲のつながりは、いわゆる人気のある曲、聴きたいだろう曲を集めた一般的な意味での”ベスト・アルバム”という範疇を完全に超えたアルバムと言える。

久石さんはW.D.O.について「これは僕のコンサートでもなければ、新日本フィルのコンサートでもない。新日本フィルの音と自分の2つが1つになって、別の新しいユニットを創る。それを何かいい形で世に出したいというお互いの思いがワールド・ドリーム・オーケストラとなって実現した。僕は基本的にアレンジはやらない人間だ。作曲家だから興味がない。だが、自分がアレンジをすることによって、作品となって初めて発表できるものになる。1つの楽曲やメロディーやリズムのエッセンスを基に、僕のオリジナル部分を組み立てていく。僕にとってアレンジは翻訳みたいなものかも知れない。外国語の作品が日本語になる段階で翻訳家の個性が反映されるのと同じように、他の人の楽曲でも、こうしてひとつの組曲のようにすることで、そこに自分の作曲家としての意図が出てくる。世界中にはいい曲が山ほどあるので、それを僕のフィルターを通して、オーケストラ作品として完成させ、世に出していく。それがこのオーケストラの一番大きなテーマだ」とコメントしているが、W.D.O.のために久石さんが書き下ろした「World Dreams」からショスタコーヴィチの「Waltz II」までの14曲は、過去3枚のアルバムと3回の公演で、その思いが結実したことをはっきりと示している。久石さんが最初のアルバムに寄せた文章をもう一度ここで紹介し、そこから全曲を紹介していくことにしよう。

1.World Dreams
「新日本フィルハーモニー交響楽団とのこのニュープロジェクトは、色々考えて「ワールド・ドリーム・オーケストラ」と命名した。そして、まずこのCDの制作を決めた。 目玉は「ハードボイルド・オーケストラ」という組曲だ。例えるなら「夏場のラーメン」。暑い夏に熱いラーメンを食べて汗を掻き切ると清々しくなる。それと同じで暑い夏に暑苦しいブラスセクションが大汗を掻いて鳴りまくって!という男らしいコンセプトなのだ。 そして、あまり今までやった事のなかった自分の楽曲でないもののアレンジに取り掛かった。「Mission Impossible」とか「007」とか、しかし、何か物足りなかった。 何をやりたいんだろう、このオーケストラと?
何のために・・・・。 そんな中でこのオーケストラの為に曲を書き下ろした。もともと祝典序曲のようなものを、と思っていた。作曲している時、僕の頭を過ぎっていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。「何で……」そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国歌のような格調のあるメロディーが頭を過ぎった。「こんなことをするために我々は生きてきたのか?我々の夢はこんなことじゃない!」まるで憑かれたように僕は作曲し、3管フル編成のスコアは異様な早さで完成した。タイトルは「World Dreams」以外なかった。漠然と付けた名前、「ワールド・ドリーム・オーケストラ」ということ事体がコンセプトそのものだった。 レコーディングの当日、まさにこれから録る!という時に僕は指揮台からオーケストラの団員にこれを伝えた。「感情的な昂りは音楽事体には良くない」といつも心がけていたが、込み上げてくるものを押さえることが出来ないまま僕は腕を振り続けた・・・。そしてホールに響いたその演奏は、今まで聞いたことがないくらいすばらしいものだった。 その瞬間、僕らは「ワールド・ドリーム・オーケストラ」として1つになった。」

この文章を読みながら曲を聴くと、様々な映像が頭を過り、映像を喚起する音楽を書かせたら、久石譲という作曲家が世界でも5本の指に入る存在であることを改めて実感させられる。W.D.O.の出発点であると同時に、これは永遠のテーマ曲であり、オープニングを飾るにふさわしい名曲、名演である。

2.パリのアメリカ人
ジャズの自然さをブロードウェイとコンサート・ホールに結合させた作曲家ジョージ・ガーシュインの代表作の1つに、オープニング・ナンバーは時の流れを超えてつながっていく。1951年に同名のミュージカル映画が作られ、大当たりをとった名曲がフル・オーケストラ用管弦楽曲として書かれたのは1928年ガーシュウィンが30歳の時。名曲が4分の3世紀の時を超えて感応しあっている。

3.男と女
”映像と音楽が合体した最高の成功例”として評価され、1966年のカンヌ映画祭グランプリに輝いたクロード・ルルーシュ監督の名作の主題曲で、数え切れないほどのカバー・バージョンが作られているが、有名な”ダバダバダ”のフレーズより、オーケストレイションに趣向をこらしたこのバージョンは本当に個性的だ。

4.白い恋人たち
ルルーシュの名パートナー、フランシス・レイとピエール・バルーのコンビの曲が続く。1968年にフランスのグルノーブルで開催された第10回冬季オリンピックの模様を収めたルルーシュ監督のドキュメンタリー映画の主題曲だが、「イージーリスニングではなく、どうしたらオーケストラになるか」を考えてアプローチをしている久石さんならではの仕上がりになっている。

5.風のささやき
スティーヴ・マックィーンとフェイ・ダナウェイが共演した粋でお洒落な犯罪映画『華麗なる賭け』の主題歌。1968年のアカデミー主題歌賞を受賞した名曲で、久石さんはミシェル・ルグランのメロディーを”華麗なるオーケストラ”に仕立て上げている。

6.ロシュフォールの恋人たち
フランスの名監督ジャック・ドゥミ監督がミシェル・ルグランと組み、カトリーヌ・ドヌーヴと姉のフランソワーズ・ドルレアックをメインにジーン・ケリー、ジョージ・チャキリスといったアメリカのスター俳優をキャスティングして作ったフランス製ミュージカルの決定版『ロシュフォールの恋人たち』。リズミカルなアンサンブルが夢の世界へと誘ってくれる。

7.The Pink Panther
ミシェル・ルグランなどとともに映画音楽の世界に輝ける足跡を残している名匠ヘンリー・マンシーニが書いたユーモラスな主題曲が軽快な調子で演奏される。ドジなクルーゾー警部の活躍ぶりをコミカルに描き、1963年のシリーズ第1作から93年の7作まで30年間にわたり、人気を呼んだ「ピンクの豹」を選ぶあたりは、久石さんの遊び心か・・・。

8.China Town
雰囲気はいきなりダークなハードボイルドの世界へと変わる。『チャイナタウン』は60年代のポーランド映画界を代表するロマン・ポランスキーがアメリカで製作したハードボイルド映画の傑作。デカダンなムード漂う30年代のロサンジェルスの風俗を克明に映し出したカメラも出色だったが、ジェリー・ゴールドスミスの書いた音楽を久石さんはさらに深く掘り下げている。アレンジひとつで音楽は本当に色々な表情を見せてくれることを実感して欲しい。

9.Ironside
作曲家としてもアレンジャーとしてもプロデューサーとしても、ジャズからポップスの分野まで幅広く、かつ長いこと一線で活動し続けているクインシー・ジョーンズが書き下ろした曲を久石さんが信頼しているアレンジャー山下康介さんが、変幻自在という言葉がぴったりとはまる感じでW.D.O.バージョンに仕立て上げた。本当に良く鳴っているオーケストラ。W.D.O.はイージーリスニングのオーケストラではないから出来るだけ音量を上げてその魅力を堪能して欲しい。

10.映画『殺しのドレス』よりテーマ曲
ラルフ・ボードの官能的なカメラワークが光っていたブライアン・デ・パルマ監督の『殺しのドレス』は非常にファンの多いサスペンス映画の傑作だ。製作は1980年。デ・パルマとは何本か一緒に仕事をしているイタリア人作曲家、ピノ・ドナジオの書いた楽曲も素晴しく、それをさらに美しく昇華させたW.D.O.の魅力的な音の響きを味わうことが出来る。

11.シェルブールの雨傘
再びジャック・ドゥミとミシェル・ルグランが組んで作られたフランスの有名なミュージカル映画の主題曲が登場する。唸らされるのは前曲とのつなぎの絶妙さ。ストリングスの美しいゆれ方もW.D.O.ならではの魅力という感じで、7分近い音の芸術が楽しめる。

12.Mission Impossible
人気テレビ・シリーズをトム・クルーズが映画にして大ヒットさせた。一度聴いたら忘れられないリフが最高にキャッチーな楽曲を書いたのはラロ・シフリン。『スパイ大作戦』から『ミッション・インポッシブル』と変わっても、名曲だけはきちんと引きつがれたが、久石さんは「どのくらい緻密なアレンジが出来るかを考え」ストリングスの人たちに音楽的な冒険をさせた。それが成功していることは言うまでもない。

13.アヴェ・マリア
たくさんのバージョンが存在する「アヴェ・マリア」だが、W.D.O.は16世紀イタリアの作曲家ジュリオ・カッチーニの手によるものを2006年の8月にすみだトリフォニーホールで演奏した。美しいコーラスとストリングスの融け合い方は言葉にならないほど素晴しい。この「アヴェ・マリア」を聴きながら、久石さんはこのベスト・アルバムを作りたいために前3作を作ったのではないかと言ってしまいたくなるほどの出来映えであり、また曲順としてもぴったりとはまっている。

14.Waltz II  Suite for Jazz Orchestra No.2
ショスタコヴィチの作品で、スタンリー・キューブリック監督の遺作『アイズ・ワイド・シャット』で使われて有名になったこの曲で、久石さんが「女の子が夜聴ける感じ・・・」とさらりと言ってのけた美しい世界は完結する。「W.D.O.でこのワルツを振ったので、ハウルのメインテーマにつながった」という言葉を聞くと、本当に音楽というのは不思議な魔力を持っているものだと思う。

2007年5月 立川直樹

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

「World Dreams」 (2004)、「パリのアメリカ人」 (2005)、 「真夏の夜の悪夢」 (2006)の3枚のアルバムから選曲した初のベストアルバム。未発表音源として 『Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2』をボーナストラックとして収録。

久石譲は本作品ライナーノーツでも、こう語っている。

「僕は基本的にアレンジはやらない人間だ。作曲家だから興味がない。だが、自分がアレンジをすることによって、作品となり初めて発表できるものになる。ひとつの楽曲のメロディーやリズムのエッセンスを基に、僕のオリジナル部分を組み立てていく。僕にとってアレンジは翻訳みたいなものかもしれない。外国語の作品が日本語になる段階で翻訳家の個性が反映されるのと同じように、他の人の楽曲でも、こうしてひとつの組曲のようにすることで、そこに自分の作曲家としての意図が出てくる。世界中にはいい曲が山ほどあるので、それを僕のフィルターを通して、オーケストラ作品として完成させ、世に出していく。それがこのオーケストラの一番大きなテーマだ。」

また同ライナーノーツでは、未発表音源・ボーナストラックとして収録された(14) 『Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2』の項にて、「W.D.O.でこのワルツを振ったので、ハウルのメインテーマにつながった」とも語っている。

ポップス・オーケストラとしての名演と、それを可能にした選曲とアレンジという、まさにすべてが一体となってその新しい輝きを解き放ったプロジェクトである。

 

 

久石譲 WDO 『BEST』

1. World Dreams
2. パリのアメリカ人
3. 男と女
4. 白い恋人たち
5. 風のささやき
6. ロシュフォールの恋人たち
7. The Pink Panther
8. China Town
9. Iron side
10. 映画『殺しのドレス』より テーマ曲
11. シェルブールの雨傘
12. Mission Impossible
13. アヴェ・マリア
14. Waltz II Suite For Jazz Orchestra No. 2 *未発表音源

【初回限定盤DVD収録内容】
001. 天空の城ラピュタ
002. Raging Men
003. HANA-BI
004. ロミオとジュリエット

except
Arranged by Kousuke Yamashita 6. 9. 13.
Arranged by Chieko Matsunami 10.

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『W.D.O.』

久石譲 『W.D.O.』 DVD

2006年12月20日 DVD発売

久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ、ついに初映像作品発売!

2004年にリリースした1枚目のアルバム「ワールド・ドリームス」を受けて行われた”ハードボイルド”をコンセプトにした全国ツアー、2005年12月にリリースした2枚目のアルバム「パリのアメリカ人」を受けて30名の女性コーラス「リトルキャロル」を従えたツアー「12月の恋人たち」、そして今夏「真夏の夜の悪夢」と題して100人を超える合唱団を迎えて一夜限り行われた”背筋が凍るような熱い特別な夜”の3つの異なるコンサートを収録。珠玉の名演が1枚のDVDにコンパイルされた、これ以上ないほどの大満足の内容!

 

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような拡張あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら・・・。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

 

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

 

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

 

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

 

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

 

ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)
この曲は、ひとつひとつ挙げられないほど、多くの映画に使われている。複雑なテクスチュアというよりも、素朴な、強いメロディの楽曲。

 

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

 

 

本作品には、久石譲インタビューもおりこまれている。インタビュー内容は各公演コンサート・プログラムや雑誌インタビューなどで活字化されているものとほぼ同内容である。

 

 

久石譲 『W.D.O.』 DVD

2004 | World Dreams ~ハード・ボイルド・オーケストラ
1.World Dreams 2004 / 久石譲
2.風の谷のナウシカ (風の伝説) / 久石譲
3.天空の城ラピュタ / 久石譲
4.アイアンサイド TVシリーズ『鬼警部アイアンサイド』より / クインシー・ジョーンズ
5.Raging Men 映画『BROTHER』より / 久石譲
6.HANA-BI 映画『HANA-BI』より / 久石譲
7.風のささやき 映画『華麗なる賭け』より / アラン・バーグマン, マリリン・バーグマン & ミシェル・ルグラン
8.ロミオとジュリエット / セルゲイ・セルギーヴィッチ・プロコフィエフ

2005 | 12月の恋人たち
9.男と女 / ピエール・バロウ & フランシス・レイ
10.白い恋人たち / ピエール・バロウ & フランシス・レイ
11.キャロル・オブ・ザ・ベルズ / ミクロ・レオントヴィッチ
12.ロシュフォールの恋人たち / ミシェル・ルグラン, ジャック・デミ & レイモンド・ルイス
13.ボレロ / M.ラヴェル

2006 | 真夏の夜の悪夢
14.カルミナ・ブラーナ「おお、運命の女神よ」 / カール・オルフ
15.ジ・オーケストラ・チューブラー・ベルズ パート1 映画『エクソシスト』より / マイク・オールドフィールド
16.映画『殺しのドレス』より テーマ曲 / ピノ・ドナジオ
17.レクイエム「怒りの日」 / ジュゼッペ・ヴェルディ
18.「もののけ姫」組曲 / 久石譲
19.カルミナ・ブラーナ「アヴェ、この上なく姿美しい女」〜カルミナ・ブラーナ「おお、運命の女神よ」 / カール・オルフ
20.World Dreams 2006 / 久石譲

All Produced & Conducted by JOE HISAISHI

Orchestra:JOE HISAISHI & NEW JAPAN PHILHARMONIC WORLD DREAM ORCHESTRA

2004 World Dreams ~ハード・ボイルド・オーケストラ 〈2004.7.27 Sumida Triphony Hall〉
2005 12月の恋人たち 〈2005.12.5 Yokohama Minato Mirai Hall〉
2006 真夏の夜の悪夢 ~Psycho Horror Night 〈2006.8.13 Sumida Triphony Hall〉

Iron Side:Arranged by Kosuke Yamashita
The Windmills of Your Mind:Arranged by Joe Hisaishi
Un Homme et Une Femme:Arranged by Joe Hisaishi
Treize Jours En France:Arranged by Joe Hisaishi
Carol of The Bells:Arranged by Yasuo Minami
Les Demoiselles De Rochefort:Arranged by Kosuke Yamashita
The Orchestra Tubular Bells Part 1 “The Exorcist”:Arranged by Kosuke Yamashita
“Dressed to Kill” Main Theme:Arranged by Chieko Matsunami
“PRINCESS MONONOKE” Suite:Scoring by Kenji Ashimoto

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『真夏の夜の悪夢』

久石譲 WDO 『真夏の夜の夢』

2006年12月20日 CD発売

2006年8月13日、すみだトリフォニー・ホールにて、『真夏の夜の悪夢』と題して行われた、久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラによる一夜限りの貴重なコンサートの模様を収録したライヴ・アルバム。

 

 

楽曲解説

2006年8月13日、「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」は、東京・錦糸町のすみだトリフォニーホールにて一夜限りのコンサートを行った。このアルバムは、そのスペシャル・コンサート「真夏の夜の悪夢」の模様を収録したものである。

コンサートは、久石自身の手による楽曲およびマーラーの「交響曲第五番第四楽章”アダージェット”」を取り上げた第1部と、”サイコ・ホラーナイト”なるテーマを掲げた第2部とで構成。久石作曲の『男たちの大和/YAMATO』や『もののけ姫』の楽曲を組曲にしたもの、そして、『サイコ』、『エクソシスト』、『殺しのドレス』等、映画史に残る名画のスリルとサスペンスを大いに盛り上げた映画音楽や、クラシックの名曲が演奏された。総勢100人を超える混声の「栗友会合唱団」も参加しており、「カルミナ・ブラーナ」、レクイエム「怒りの日」、「アヴェ・マリア」等、合唱の醍醐味が味わえる楽曲も取り上げられている。

ちなみに久石は、サイコ・ホラー映画の音楽の魅力を、「非常に精密なスコアが多く、オーケストラ向きのいい曲がたくさんある。また西洋の映画の場合、神の問題をも扱うシリアスな作品が多い」と分析。「サイコ・ホラー映画に登場する人物はしばしば、この世で遂げられなかった思いを、あの世に行っても抱き続ける。現世へのそのような思いは、究極の愛の形ではないか」と語っている。そんな思いを踏まえてここに収録された楽曲を耳にするのもまた味わい深い。

1. カルミナ・ブラーナ 「おお、運命の女神よ」
20世紀ドイツの作曲家、カール・オルフの出世作にして代表作である「カルミナ・ブラーナ」は、19世紀初頭、バイエルンにあるベネディクト会ボイレン修道院で発見された中世ラテン語の詩歌集に曲をつけた世俗カンタータ。テレビ番組やコマーシャル、はたまた映画音楽としてたびたび使われているのを耳にした方も多いことだろう。全24曲から成り、プロローグ、第一部、第二部、第三部、エピローグという構成で、プロローグに置かれたNo.1「おお、運命の女神よ」では、運命の女神フォルトゥーナへの恨みの念が歌い上げられる。

2. プレリュード 映画『サイコ』より
”サスペンスの神様”、巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督作の中でもひときわ名高い『サイコ』(1960)。音楽を手がけたアメリカ人作曲家バーナード・ハーマンは、『知りすぎていた男』(1956)、『めまい』(1958)、『北北西に進路を取れ』(1959)等、数々のヒッチコック作品に楽曲を提供したほか、『市民ケーン』(1941)や『タクシー・ドライバー』(1976)等でも知られる映画音楽の巨匠である。1998年、ガス・ヴァン・サント監督により『サイコ』がリメイクされた際にも、ハーマンの音楽がベースに使われていた。

3. ジ・オーケストラ・チューブラー・ベルズ・パート1 映画『エクソシスト』より
イギリス出身のプログレッシヴ・ロックの鬼才、マイク・オールドフィールドのソロ・デビュー作である「チューブラー・ベルズ」(1973)は、パート1、パート2の2曲から成る壮大な作品。発表後、少女に取り憑いた悪魔と神父との壮絶な戦いを描いたオカルト映画の名作『エクソシスト』(1973)のテーマ曲として使用され、大ヒットを記録、オールドフィールドの名を世界に知らしめることとなった。

4. 映画『殺しのドレス』より テーマ曲
四年ぶりの新作『ブラック・ダリア』がこの秋封切られたブライアン・デ・パルマ監督が1980年に手がけた映画『殺しのドレス』は、ヒッチコック作品の影響を色濃く受けたサスペンス映画。楽曲を担当したイタリア人作曲家、ピノ・ドナジオは、『キャリー』(1976)や『ミッドナイトクロス』(1981)、『ボディ・ダブル』(1984)などでデ・パルマと組んでいるほか、『死海殺人事件』(1988)や『法王の銀行家~ロベルト・カルヴィ暗殺事件~』(2002)等、数々の映画音楽を手がけている。

5. レクイエム「怒りの日」
「椿姫」「アイーダ」等のオペラで名高い19世紀イタリアの作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディの手による「レクイエム」の第二章。ヴェルディが敬愛していたイタリアの文豪、アレッサンドロ・マンゾーニの追悼のため作曲されたこの作品は、モーツァルト、フォーレの楽曲と並んで”世界三大レクイエム”の一つに数えられる。

6. 操り人形の葬送行進曲
「アヴェ・マリア」やオペラ「ファウスト」で知られる19世紀フランスの作曲家、シャルル・フランソワ・グノーの手によるこの楽曲は、ヒッチコック本人も番組の初めと終わりに姿を見せていたテレビドラマ・シリーズ『ヒッチコック劇場』のテーマ音楽として知られる。このドラマ・シリーズは日本でも放映され、人気を博した。

7. 「もののけ姫」組曲
スタジオジブリの宮崎駿が監督を手がけた長編アニメーション映画『もののけ姫』(1997)は、生と死をテーマに、人間と、”もののけ”と呼ばれる山神や山の獣たちとの戦いを描いた作品。1420万人もの観客を動員、興行収入193億円は当時の日本映画の歴代1位となる記録だった。久石が手がけたサウンドトラック、カウンターテナーの米良美一が歌った主題歌も共に大ヒットしている。

8. カルミナ・ブラーナ 「アヴェ、この上なく姿美しい女」~「おお、運命の女神よ」
カール・オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」のエピローグを成す2曲。女性の美を讃えるNo.24「アヴェ、この上なく姿美しい女」では、ブランツィフロールとヘレナ、ヴィーナスの”世界三大美女”の名が挙げられる。楽曲をしめくくるNo.25「おお、運命の女神よ」は、1曲目のNo.1「おお、運命の女神よ」と同じ曲であり(全24曲構成なのにNo.25まであるのはそのためである)、物語の最後に再び運命の女神へと呼びかけるものである。

9. アヴェ・マリア
シューベルトやグノーの有名曲をはじめ、「アヴェ・マリア」には数多くのバージョンが存在するが、ここで取り上げられているのは16世紀イタリアの作曲家、ジュリオ・カッチーニの手によるもの。最近では、世界的に活躍するカウンターテナー、スラヴァが、1995年の日本デビュー作「ave maria」で取り上げ、話題となった。

10. YAMATO組曲 第一楽章
11. YAMATO組曲 第二楽章、第三楽章
12. YAMATO組曲 第四楽章
13. YAMATO組曲 第五楽章
久石作曲の「YAMATO 組曲」は、第二次世界大戦終戦60周年を記念して制作された映画『男たちの大和/YAMATO』(2005)のために書いた楽曲を組曲にした作品。作家・辺見じゅんの原作を、『人間の証明』(1977)の佐藤純彌監督が映画化したこの作品は、世界最強の戦艦と言われながらも東シナ海に散った戦艦大和の運命と、その乗務員たちの生き様を描き出す。反町隆史、中村獅童、鈴木京香、仲代達矢、渡哲也ら、豪華出演陣も話題を呼んだ。

文 Oct. 2006 藤本真由

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

久石譲は本作品ライナーノーツにて、「サイコ・ホラー映画の音楽は非常に精密なスコアが多く、オーケストラ向きのいい曲がたくさんある。また、西洋の映画の場合、神の題材をも扱うシリアスな作品が多い。」と語っている。そこから、サイコ・ホラー映画を「究極の愛の物語」とし、名曲たちがセレクトされている。

自身の映画音楽作品からは、(2) 「もののけ姫」組曲 アシタカせっ記~タタリ神~もののけ姫 を組曲にしたもの。主題歌『もののけ姫』は、ピアノやヴァイオリンがメロディーを奏でるインストゥルメンタルとなっている。

(10)~(13) 「YAMATO組曲」第一楽章 – 第五楽章 映画「男たちの大和/YAMATO」で使用された楽曲を組曲にしたもの。もともと劇中でもコーラスがふんだん効果的に用いられた映画音楽だっただけに、今回の合唱団の編成が、この演目を可能にしたとも言える。

確かに本作品に収録されている映画音楽やクラシック音楽を聴いていると、サイコ・ホラー映画のおどろおどろしさや恐怖というよりは、まるで恋愛映画の世界にいるような、美しい旋律が多いことがわかる。

讃美歌やレクイエムといった、西洋の宗教を象徴し色濃く反映した楽曲たち。映像と音楽とのコントラスト、いい意味で対比している。格式高いオペラやミュージカルのようであり、劇舞台のドラマティックさがある。

 

 

久石譲 WDO 『真夏の夜の夢』

1. カルミナ・ブラーナ 「おお、運命の女神よ」
2. プレリュード 映画『サイコ』より
3. ジ・オーケストラ・チューブラー・ベルズ・パート1 映画『エクソシスト』より
4. 映画『殺しのドレス』より テーマ曲
5. レクイエム「怒りの日」
6. 操り人形の葬送行進曲
7. 「もののけ姫」組曲
8. カルミナ・ブラーナ 「アヴェ、この上なく姿美しい女」~「おお、運命の女神よ」
9. アヴェ・マリア
10. YAMATO組曲 第一楽章
11. YAMATO組曲 第二楽章、第三楽章
12. YAMATO組曲 第四楽章
13. YAMATO組曲 第五楽章

初回:デジパック仕様

except
Arranged by Kenji Ashimoto 2.
Arranged by Kousuke Yamashita 3.
Arranged by Chieko Matsunami 4.
Scoring by Kenji Ashimoto 7. 10. 11. 12. 13.

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『パリのアメリカ人』

久石譲 『パリのアメリカ人』

2005年11月30日 CD発売

新しいポップス・オーケストラとして誕生したニュープロジェクト「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」の第2弾アルバム。

 

 

楽曲解説

001. パリのアメリカ人
1928年に作曲家ジョージ・ガーシュインが初めて手がけた同名のフル・オーケストラ用管弦楽曲をもとに、ミュージカル映画「巴里のアメリカ人」が作られたのは1951年のこと。パリに住む画家志望のアメリカ人青年とキュートなパリジェンヌの恋模様を小粋に描いたこのMGM作品は、主演および振付を務めたジーン・ケリーとレスリー・キャロンのダンス・シーンが話題となり、作品賞はじめ8つの部門でオスカーを受賞している。

002. 男と女
フランシス・レイが手がけた「ダバダバダ」のメイン・テーマがあまりに名高いこの作品は、過去の痛手から立ち直れず、新たな愛へと踏み切れぬ男女の心の機微を描いた、大人のムードあふれる1966年のフランス映画。主演はジャン・ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメ。監督は、フランシス・レイと組んで「パリのめぐり逢い」(1967)、「白い恋人たち」(1968)等の名作を送り出したクロード・ルルーシュ。

003. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
1943年のミュージカル映画「サムシング・トゥ・シャウト・アバウト」のためにコール・ポーターが作詞作曲した曲。ドン・アメチーとジャネット・ブレアが歌い、アカデミー主題歌賞にノミネートされたが、失敗作続きのブロードウェイ・プロデューサーが新作を舞台に乗せようとするまでの悪戦苦闘を描いた映画自体は流行らず、クリフォード・ブラウンと共演した歌手ヘレン・メリルのレコード等によってポピュラーな曲となった。

004. ロシュフォールの恋人たち
監督ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン、主演カトリーヌ・ドヌーヴのゴールデン・トリオが生み出した、フランス・ミュージカル映画の傑作の一つ。お祭りにわきたつロシュフォールの街を舞台に、さまざまな恋が展開されてゆく1965年の作品で、ドヌーヴは実の姉フランソワーズ・ドルレアックと、夢に恋に生きる双子の姉妹役で生涯唯一の共演をはたした。ジョージ・チャキリス、ジーン・ケリーと、その他の出演者も豪華。

005. Le Petit Poucet
シャルル・ペローの童話「親指トム」をもとにした、2001年製作のフランス映画。小人の“親指トム”が主人公のファンタジーで、ロマーヌ・ボーランジェ、カトリーヌ・ドヌーヴらが出演している。監督は、ジャン・レノ主演の映画「クリムゾン・リバー2」を手がけたオリヴィエ・ダアン。久石譲が音楽を手がけ、主題歌をヴァネッサ・パラディが歌っている。

006. 夜も昼も
コール・ポーターが作詞作曲を手がけた1932年のブロードウェイ・ミュージカル「陽気な離婚」からのナンバーで、主演スターであるフレッド・アステアのために書かれたもの。海辺のリゾートを舞台に、イギリス人作家と離婚を控えた女性との恋が描かれるこの作品は、名ダンス・コンビ、フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャーズの主演で、1934年に「陽気な離婚者」と改題されて映画化された(邦題「コンチネンタル」)。

007. ビギン・ザ・ビギン
1935年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル「ジュビリー」からのナンバーで、西インド諸島のマルチニーク島の民俗舞曲である“ビギン”と“始める=ビギン”を掛けて、コール・ポーターが作詞作曲した。身分を隠して城を抜け出し、普段できないことを楽しむロイヤル・ファミリーの姿を描いた「ジュビリー」はさほどヒットしなかったが、後の大スター、モンゴメリー・クリフトが子役として出演していたことで知られる。

008. ラストタンゴ・イン・パリ
パリのアパートでただただセックスに溺れる日々を送る中年男と若い女の姿をとらえた「ラストタンゴ・イン・パリ」は、衝撃的な性描写ゆえに1972年の発表当時世界各国で上映禁止となり、日本でも27年の年月を経てやっと無修正完全版が公開された。「ラスト・エンペラー」(1987)などで名高いベルナルド・ベルトルッチ監督が31歳の若さで発表した問題作で、主演はマーロン・ブランドとマリア・シュナイダー。

009. ソー・イン・ラヴ
シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」のミュージカル版と、そこに出演している役者たちのラブロマンスが二重写しで描かれるブロードウェイ・ミュージカル「キス・ミー・ケイト」(1948)の、舞台裏の部分で歌われたナンバー。コール・ポーター作品として最大のヒットとなり、第一回トニー賞の栄誉に輝いたこのミュージカルは、1953年にMGMにて映画化されているが、その際コール・ポーターその人も出演をはたした。

010. 太陽がいっぱい
リッチな放蕩息子に憧れ、彼になりかわるべく恐ろしい犯罪に手を染めていく貧しい青年を描いた映画「太陽がいっぱい」(1960)は、主演のアラン・ドロンがスターの地位を不動のものとしたサスペンス・ドラマ。監督はルネ・クレマン、「ゴッドファーザー」シリーズやフェリーニ作品などで名高いニーノ・ロータが音楽を手がけた。後に「リプリー」(1999)のタイトルで、マット・デイモン主演でリメイクもされている。

011. シェルブールの雨傘
「ロシュフォールの恋人たち」に先駆け、監督ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン、主演カトリーヌ・ドヌーヴのゴールデン・トリオが生んだ、フランス・ミュージカル映画の最高傑作で、1964年度のカンヌ映画祭グランプリを受賞した。港町シェルブールを舞台に、戦争で引き裂かれる傘屋の娘と自動車修理工の若者との悲恋が、甘い調べに乗ってせつなく描かれるこの作品は、セリフもすべて歌いあげる手法も話題を呼んだ。

012. 白い恋人たち
フランス・グルノーブルにて1968年に開催された第十回冬季オリンピック大会の模様をとらえたドキュメンタリー映画で、「男と女」や「パリのめぐり逢い」と同じく、クロード・ルルーシュが監督を務め、フランシス・レイが音楽を担当している。アテネからの聖火リレーに始まり、華やかな開会式、各競技に挑む選手たちの姿、そして13日間の白熱した日々を経ての閉会式などが、ヴィヴィッドに描き出されている。

文:藤本真由

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

「1920年代、30年代という世界大恐慌前後の時代、アメリカ人が憧れるものっていうのは「文化」だったんですね。成功したらパリに住むというのが、彼らのステイタスになっていた。それでコール・ポーターもフィッツジェラルドもパリに住むようになった。でも今、成功したらここに住みたい、というような場所はないでしょう? わかりやすい憧れの対象や目的がないこの時代に、「パリのアメリカ人」をテーマにすることで、今の時代性が浮き出てくるといいなと考えたんです。」

「コール・ポーターっていうと、やっぱり歌ですからね。スウィング的なものや、ジャジーな感覚を持っているということで、彼女を選んだんです。フランス映画音楽だけをそのままやってしまうのではイージーリスニングになってしまうかも知れない。どこかに異種のもの、アメリカン・テイストを入れたかったんですね。フランス料理にハンバーガーが入ってくるというか(笑)。それがコール・ポーターであり、レディ・キムのヴォーカルなわけです。ミスマッチの要素が入ることで両方が際立てばと。そういうことも含めて「パリのアメリカ人」なんです。」

「あと、こうしたテーマを日本人がやるっていう部分も面白いと思うんです。例えば僕はオーケストラをやってますけど、これは西洋音楽がベースでしょ。なんで日本人がやるんだって言われると困っちゃうわけです。結局みんな根無し草状態なんですよね。でも、だからこそ自分のルーツを知りたいという思いがある。そうした部分から出てくる孤独感や叙情っていうのは僕にとって昔からのテーマなんです。」

Blog. 久石譲 「アップル iTunes インタビューズ」 『パリのアメリカ人』発売記念 より抜粋)

 

 

──選曲の基準は。

久石 自分が思い入れのある映画が多いかな。当初は新しい作品も入れようと思ったけど、いざ聴いてみたらぴんとこなかった。最近の映画音楽はメロディーが弱くなっている気がする。「アメリ」(2001年)みたいに面白い曲もあったけど、オーケストラの楽曲として耐えられるメロディーだと感じられなかった。結果的に強いメロディーを持つ昔の曲が残った。

──原因は何だと思いますか。

久石 映画の作り方全般に言えることだけど、「ハリウッド流」が浸透して、ヒットのために作品とは関係のない楽曲が持ち込まれることが多くなった。そのため、映画を象徴するようなメロディーが減ってしまい、サウンドトラックというよりコンピレーションアルバムになってしまっている。昔はもっとあの映画と言えばこのメロディーということがあったのにね。

──名曲のスコアを見て感じたことは。

久石 ガーシュインに代表されるように、クラシックとかポップスとか、ジャンルの垣根を感じさせない曲が多かった。ただ、実際にアレンジし始めたら、編曲というより作曲になってしまった。やっぱり自分は作曲家。素直に編曲すればよかったのに、余計に時間がかかってしまった。

──手ごわかった曲は。

久石 ミシェル・ルグランはどれも大変だった。和音にわざと異音が入っていて、不協和音的に聴かせる構造が多く、こっちがこうしたいのにと思ってもぶつかってしまう。「ルグランは鬼門だ!」ってずっと言っていたよ(笑)。

Info. 2005/11/29 メロディーが強かった往年の映画音楽 久石譲に聞く(読売新聞より) より抜粋)

 

 

 

久石譲 『パリのアメリカ人』

1. パリのアメリカ人 AMERICAN IN PARIS
2. 男と女 UN HOMME ET UNE FEMME
3. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ YOU’D BE SO NICE TO COME HOME TO
4. ロシュフォール恋人たち LES DEMOISELLES DE ROCHEFORT
5. Le Petit Poucet
6. 夜も昼も NIGHT AND DAY
7. ビギン・ザ・ビギン BEGIN THE BEGIN
8. ラスト・タンゴ・イン・パリ LAST TANGO IN PARIS
9. ソー・イン・ラブ SO IN LOVE
10. 太陽がいっぱい PLEIN SOLEIL
11. シェルブールの雨傘 LES PARAPLUIES DE CHERBOURG
12. 白い恋人たち TREIZE JOURS EN FRANCE

Guest Singer:Lady Kim 3. 6. 7. 9.
Guest Pianist:Alex Nakhimovsky 3. 6. 7. 8. 9. 12

Recorded at Sumida Triphony Hall

except
Arranged by Kousuke Yamashita 3. 4. 7.

初回限定エンハンスト映像
「ワールド・ドリームス」収録

 

Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『WORLD DREAMS』

久石譲 『WORLD DREAMS』

2004年6月16日 CD発売

新日本フィルハーモニー交響楽団との新しいポップス・オーケストラを目指したニュープロジェクト、それが「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」の誕生。

記念すべき第1弾。目玉は「ハードボイルド・オーケストラ」、例えるなら「夏場のラーメン」。ブラスセッションが鳴りまくる男らしいコンセプトとなっている。

 

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような拡張あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら・・・。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

007 Rhapsody
僕にとっての007シリーズは、ショーン・コネリーに尽きる。ここでやる「007のテーマ」「ロシアより愛をこめて」「ゴールドフィンガー」は、ショーン・コネリーの一番いい時期の作品だ。また、全作を通じて音楽的にもメロディ的にも強いのはこの3作。オーケストラで演奏するということは、言葉(歌詞)がなくなるわけだから、その分メロディのしっかりした曲がいい。この3曲がベストだ。

The Pink Panther
ヘンリー・マンシーニのこの作品は、ワンフレーズ聴いただけで何の曲かはっきりわかる、とても個性的な曲。これほどユーモアがあって、しかもしっかり創られている曲は少ないので、これはのちのち、我々にとっても大事な曲になっていくと思う。だからぜひやりたかった。ところで、この曲はたいがい、ブラス・サウンドが中心になる。しかし今回は、「隠し味」とも言える、弦のちょっと色っぽい音がすごく重要な要素。それがたぶん、僕のアレンジの特色になるだろう。

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

China Town
同名の映画は1930年代を舞台にした、情ない探偵の話で、僕の大好きな映画。主演のジャック・ニコルソンも好きな俳優だ。曲はジェリー・ゴールドスミス。この曲のテーマが頭にこびりついていたので、今回、ティムさんというトランペット奏者を得て、どうしてもこの曲を入れたいと思った。ティムさんのジャジーな雰囲気も素晴らしい。その演奏からは、音楽性の幅の広さがわかる。

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

Mission Impossible
あまりにも有名な、「スパイ大作戦」のテーマ曲。この曲を創ったラロ・シフリンも大好きな作曲家だ。変型のはずなのに、心地いい5拍子。このリズムの凄さが、オーケストラのダイナミック・レンジを表現するのにぴったりだ。「ハードボイルド・オーケストラ」のシメの曲としてもピッタリではないか?

Cave of Mind
ここでもティムさんの豊かな音楽性が充分に発揮される。こうして一緒にツアーを回れることは大きな喜びだ。

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

 

 

ワールド・ドリーム・オーケストラ 久石譲

新日本フィルハーモニー交響楽団とのこのニュープロジェクトは、色々考えて「ワールド・ドリーム・オーケストラ」と命名した。そして、まずこのCDの制作を決めた。

目玉は「ハードボイルド・オーケストラ」という組曲だ。例えるなら「夏場のラーメン」。暑い夏に熱いラーメンを食べて汗を掻き切ると清々しくなる。それと同じで暑い夏に暑苦しいブラスセクションが大汗を掻いて鳴りまくって!という男らしいコンセプトなのだ。

そして、あまり今までやった事のなかった自分の楽曲でないもののアレンジに取り掛かった。「Mission Impossible」とか「007」とか、しかし、何か物足りなかった。

何をやりたいんだろう、このオーケストラと?
何のために・・・・。

そんな中でこのオーケストラの為に曲を書き下ろした。もともと祝典序曲のようなものを、と思っていた。作曲している時、僕の頭を過ぎっていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。「何で……」そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国歌のような格調のあるメロディーが頭を過ぎった。「こんなことをするために我々は生きてきたのか?我々の夢はこんなことじゃない!」まるで憑かれたように僕は作曲し、3管フル編成のスコアは異様な早さで完成した。タイトルは「World Dreams」以外なかった。漠然と付けた名前、「ワールド・ドリーム・オーケストラ」ということ事体がコンセプトそのものだった。

レコーディングの当日、まさにこれから録る!という時に僕は指揮台からオーケストラの団員にこれを伝えた。「感情的な昂りは音楽事体には良くない」といつも心がけていたが、込み上げてくるものを押さえることが出来ないまま僕は腕を振り続けた・・・。そしてホールに響いたその演奏は、今まで聞いたことがないくらいすばらしいものだった。

その瞬間、僕らは「ワールド・ドリーム・オーケストラ」として1つになった。

久石譲

 

 

最後のレコーディング・セッションが終わった瞬間、久石さんは僕と笑顔で固い握手を交わしました。しかしこれは単に久石さんとコンサートマスターである僕との握手ではなく、このオーケストラ全員と久石さんとの握手の象徴なのだという実感が沸き起こりました。

初日のリハーサルで一曲目に演奏した「World Dreams」を弾き終えた時に「これは素晴らしいアルバムになる」という直感を得ましたが、レコーディングが進むにつれ僕のそれは確信へと変わっていきました。何より僕にそう思わせたのは、プレイバックの度に全員が集まりそれを聴き、終わればまたディスカッションし、最高の演奏を残そうというオーケストラの結束力と久石さんとの一体感が増しているのが感じられたからです。

僕達が残した最高のテイクを今はトラックダウンするという作業を久石さんと僕は行っていますが、時間をおいてスタジオで今聴いても、最大のエネルギーと繊細さで紡ぎ出された全ての作品は永久に生き続けていける強い生命力を吹きこまれたものとして響いています。

皆さんにそれらを、CD、あるいはコンサートでお届けできることを嬉しく思っています。

ソロ・コンサートマスター 崔文洙

 

 

今回、久石譲さんと新日本フィルハーモニー交響楽団とのレコーディングプロジェクトに参加出来た事を心から光栄に思います。久石さんの音楽は全ての人々の心を包み込み、そして素晴らしいオーケストラのメンバーによって演奏されました。また、この音楽を再び一緒に出来る事を楽しみにしています。

トランペット・ソリスト ティム・モリソン

(コメント ~CDライナーノーツより)

 

 

(1) 『WORLD DREAMS』は、もともと祝典序曲のようなものを、とこのプロジェクトのために制作。久石譲本人が、「国歌のような格調あるメロディーが頭を過った」と語っているとおり、壮大であり品格ある美しいメロディー、3管フル編成のスコアとなっている。まさに、このプロジェクトを象徴する曲であり、類まれな名曲の誕生だと思う。

また自身の映画音楽作品からは、以下のとおり。

(2) 『天空の城ラピュタ』では、トランペット奏者ティム・モリソンさん迎えたことにより、なんとあのパズーの印象的なトランペットから幕を明ける。トランペットのメロディーとオーケストラがだんだんと躍動感を増すなか、あのメインテーマへ。ここでもトランペットがフィーチャーされている。後半は冒頭のパズーのトランペットメロディーとメインテーマが絡みあうなか、一気にダイナミックなクライマックスを迎える。おそらくパズー(=男らしい)を主役としたアレンジの妙を体感できる、高揚感いっぱいの最高傑作、もうひとつのラピュタの世界を体験できる。

(8) 『Raging Men』では、北野武監督 映画「BROTHER」の本編さながら、パーカッションとブラスセッションがこれでもかというくらいかき鳴らし響きわたる。

(9) 『HANA-BI』では、このプロジェクトのためと思われるが、あえてピアノを編成から外し、原曲ではピアノが印象的だった叙情的なメロディーを、ヴァイオリンやイングリッシュ・ホルンが官能的に奏で、ストリングのクライマックスと、ひと味ちがう、より感情の揺れが表現されたようなアレンジとなっている。

(11) 『Cave of Mind』は、映画「ハウルの動く城」イメージ・アルバムにて同曲名で発表され、サウンドトラックでは『星をのんだ少年』という曲名になり、本編でも印象的なシーンに流れていた名曲。もともとトランペットの美しい響きが堪能できるこの曲は、もちろん本作では、ソリストのティム・モリソンさんのトランペットが華を添えている。

 

その他、幅広い作曲家の映画音楽を編曲し、演奏している。

(3) 『007 Rhapsody』では、ハードボイルドでダンディなジェームズ・ボンドの世界を、時に激しくドラマチックに、時にセクシーでムード感いっぱいに、表現している。

(10) 『Mission Impossible』でも、まさに「スパイ大作戦」の臨場感、興奮、スリリングさが凝縮された、ブラスセッション&パーカッションも大活躍な楽曲となっている。

他の楽曲もふくめ、本作に収められたすべての楽曲、その編曲、その演奏と、ポップスオーケストラの本領や持ち味をフルに堪能できる、そんな贅沢なアルバムである。

補足ではあるが、トランペットのソリストとして迎えられたティム・モリソンさんは、元ボストンポップス首席奏者も務めている。

このニュープロジェクト「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ」では、数多くのコンサートも開催されている。

 

 

久石譲 『WORLD DREAMS』

1. World Dreams (書き下ろし新曲)
2. 天空の城ラピュタ (映画「天空の城ラピュタ」より)
3. 007 Rhapsody (映画「007 James Bond」より)
4. The Pink Panther (映画「ピンクパンサー」より)
5. 風のささやき (映画「華麗なる賭け」より)
6. Ironside (ドラマ「鬼警部アイアンサイド」より)
7. China Town (映画「チャイナタウン」より)
8. Raging Men (映画「BROTHER」より)
9. HANA-BI (映画「HANA-BI」より)
10. Mission Impossible (映画「スパイ大作戦」より)
11. Cave Of Mind (映画「ハウルの動く城」より)

Trumpet Solo:Tim Morrison 2. 4. 6. 7. 11.

Recorded at Sumida Triphony Hall

except
Ironside Arranged:Kousuke Yamashita