Overtone.第50回 「久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2021/09/23

9月19日開催「久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会」です。新しいホール アクリエひめじのオープニングシリーズとして開催されました。また翌20日は京都公演(同プログラム)、24日には「定期演奏会 #257」(別プログラム)など目白押しです。

2021年4月、久石譲は日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任しました。その就任シーズンをお祝いするように、12月の山口公演・豊中公演、2022年3月の「定期演奏会 #262」まで、西日本エリアを中心にいつもなら久石譲コンサートはなかなか開催されない地域までくまなく巡ります。久石譲×日本センチュリー交響楽団の新しいタッグだからこそ実現できるスケジュール&プログラムです。

 

 

 

今回ご紹介するのは、ふじかさんのコンサート・レポートです。もう5回目にもなります(感謝です!)。とにもかくにも鮮度満点!濃厚満点!なレポートをお楽しみください。

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会

[公演期間]  
2021/09/19

[公演回数]
1公演
兵庫・アクリエひめじ 大ホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
コンサートマスター:松浦奈々

[曲目]
メンデルスゾーン:交響曲 第4番 イ長調 作品90 「イタリア」

—-intermission—-

久石譲:DA・MA・SHI・絵
久石譲:Symphonic Suite Castle in the Sky / 交響組曲「天空の城ラピュタ」

—-encore—-
久石譲:Merry-Go-Round

[参考作品]

久石譲 千と千尋の神隠し 組曲 交響組曲「天空の城ラピュタ」久石譲 Symphonic Suite Castle in the Sky

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会の模様をレポートさせて頂きます。

2021年9月19日 15:00開演 アクリエひめじ 大ホール

 

台風一過のよく晴れた三連休の中日、兵庫県の姫路市に新たに誕生したコンサートホール「アクリエひめじ」のこけら落とし公演として、久石譲×日本センチュリー交響楽団の演奏会が開催されました。

引き続き緊急事態宣言が発令されており、数日前に同内容で開催予定だった岐阜公演は中止になってしまいましたが、こちらの公演は対策を行った上で、無事に公演が行われました。

 

14:20くらいに会館に到着。検温・消毒のあとにホール内へ入場しました。ホワイエは天井が高く、窓ガラスも大きく取られていてとても明るい印象でした。

15:00すぎにステージに楽団員の皆様が続々集結。コンマスの登場のちに、チューニングが行われ、その後しばし静寂。ほどなくして拍手喝采の中、久石さんがステージに登場しました。

 

 

Felix Mendelssohn:『Symphony No.4 in A major,Op.90,”Italian”』

Ⅰ.Allegro vivace

木管のトレモロのような刻みのイントロから始まり、弦楽による躍動感と明るく開放的なメロディが会場を華やかに包み込みました。こけら落としに相応しい、本楽曲の1楽章。同じような音型が全体を支配する楽曲のため、久石さんによるミニマル的なアプローチとの相性も抜群。

今回もオーケストラの配置は対向配置のため、1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンが別々の動きをする箇所は、より立体的に聴こえてきます。テンポ感は通常程度だったと記憶していましたが、8分の6拍子のリズム感を久石さんはキビキビとした動きで指揮を行っていて、キレのある歯切れのよい演奏をしていました。省略されることの多い前半の提示部も繰り返しが行われていました。

 

Ⅱ.Andante con moto

2楽章は若干テンポ感は速めな感じがしました。チェロとコントラバスが8分音符の上下に動くような音列の伴奏を演奏しながら、どこか民謡的ながら、物悲し雰囲気のメロディを木管が紡いでいきます。途中のヴァイオリンの旋律に先日のマーラーの『Symphony No.1』の3楽章の副旋律に似たような箇所もあり、聴いていてワクワクするような場面もありました。

 

Ⅲ.Con moto moderato

3拍子のリズムに合わせて優雅なメロディが披露される三楽章。ゆったりとしたメロディの聴かせどころは、久石さんが左手を使ってテンポを速めたり緩めたり、メロディをタメたりなど細かく指示を出していました。一方で中間部の大きく曲調が変わるところでは、テンポも速くなり、副旋律は小躍りをするような上昇をしていくなど、メリハリを大きく感じることができた楽章だったので、聴きごたえは抜群でした。

 

Ⅳ.Saltarello:Presto

終楽章は全体を3連符が支配していて、高速で駆け抜けていきます。こちらもミニマル的なアプローチがとても似合う楽章で、スピード感ある序奏から木管の舞曲のようなメロディが流れます。本当に速かったです。ですが、縦のラインががっちりと揃っていて、同じリズムを刻むところは本当に高揚しました。久石さんもカチッカチッとしたリズム感を指揮棒で指示していて、聴いている側もビートを刻みたくなるような感じがしました。トップスピードのまま、フィニッシュ。全体通しては30分ほどの楽曲でしたが、体感時間はあっという間でした。

演奏後お辞儀をしたのちに舞台袖へと戻る久石さん。と同時に拍手も一旦途切れてしまって、楽団の皆さんが盛り上げる場面も。久石さんもちょっと動揺(?)してしまったのか、再度登壇してお辞儀の際にはコンマスの譜面台に肘をぶつけてしまうハプニング(?)もありました。

 

 

休憩中に舞台転換が行われ、ステージ中央にはピアノが備え付けられました。

 

 

Joe Hisaishi『DA・MA・SHI・絵』

2009年のミニマリズムツアーで演奏されたのち、しばらく披露される機会が少なくなってしまっていた本楽曲。2019年のWDOツアーから再びセットリストに組み込まれることが増え、地方での単発公演等でもセレクトされることが増えてきています。今回の姫路公演でも聴くことができました。

CDでは何度も聴いているのに、やはり生で聴くと圧倒的な迫力。ヴァイオリンから始まる遊び心があり、口ずさみたくなるような主題テーマに畳みかけていくように重なってはズレていく、様々な要素たち。そして軸となる鍵盤やパーカッションによるパルスのリズム。

こちらも対向配置のため、会場で聴いていると音の万華鏡を体感しているような気分になってきます。中盤から入る金管のロングトーンや後半にいくにつれ増えてゆくパーカッションも聴きどころ。演奏が難しい楽曲ですが、楽団員の皆さんも楽しそうに演奏されていたのも印象的でした。8分ほどの時間にミニマルミュージックの魅力をたくさん詰め込んだ、濃密な世界を堪能できました。

 

 

Joe Hisaishi『Symphonic Suite”Castle in the Sky”』

2017年WDOツアーにて初演され、その後世界各地の演奏会でも披露されている本組曲。いままで生で聴く機会に恵まれず、ようやく聴くことができました。

『Doves and the Boy』の金管のファンファーレから一気に物語の世界観へと引きずり込まれます。メインテーマとなる『The Girl Who Fell from the Sky』での、チェロがメロディを演奏するシーンでは久石さんが、手を横にスーッと動かしてゆく指揮が印象に残りました。

こちらも音源では何度も聴いてきましたが、やはり生で聴くと印象はまったく変わります。音源収録からもさらに時間も経過しているため、さらに磨きがかけられたような感じがしました。特に抑揚のつけ方はまったく異なっている感じを受ける箇所もありました。

『Memories of Gondoa』での2回目のサビでは久石さんがグーッと音量を下げるような指示を体全体で行っていて、それに答えるように美しいデクレッシェンド。とても繊細な表現に磨きがかかっていました。

『Robot Soldier~Resurreciton-Rescue~』ではまるで映画本編を観ているかのような手に汗握るようなスリリングな展開。映像が無くても、思い返すことができるようにアップグレードされたオーケストレーションには終始圧倒されました。

そして今回の組曲内で一番印象に残った点は、久石さんによるピアノを『Innocent』にてしっかりと堪能できたところです。昨年の骨折というハプニングからコンサート内でのピアノ演奏がかなり控えられてきている印象を受けていましたが、今回は1曲まるまる演奏。『君をのせて』のメロディを作曲者本人の手から紡がれる貴重な時間。特に前半の完全ソロの部分は全身に染み入るように聴き入っていました。後半の伴奏パートもオケを率いるように華麗な演奏。アウトロの最後の一音までしっかりと噛みしめながら聴きました。

指揮者としての活動にウェイトを占めるようになってから、ピアノ演奏の曲が縮小傾向にありますが、1曲だけでもいいから、今後も久石さんのピアノを聴きたいと強く願う瞬間でもありました。

『The Eternal Tree of Life』での金管の力強い雄大なメロディとパーカッションによる浮遊感を感じさせ、盛り上がりのピークを聴かせたのち、全体でバン!というフィナーレで演奏は終わりました。

 

 

会場も笑顔が溢れ、拍手喝采!

久石さんがお辞儀をし、何度かのカーテンコール。

そして恒例の演奏者への拍手を行いました。

 

Encore

Joe Hisaishi『Merry-go-round』

マンドリン・アコーディオンが抜かれた以外、WDO2019でのアレンジとほぼ同一だったと思います。ハープから始まるイントロののち、華麗で優雅なワルツが会場全体を包みます。サプライズ的に演奏された本楽曲に会場も圧倒されたような雰囲気を感じました。終盤の転調からよりドラマチックに。こけら落とし公演の最後はみんなが踊りだしくなるような、幸福感と熱気に包まれて幕を閉じました。

 

 

拍手喝采の中、カーテンコールに応じる久石さん。最後はバイバイと手を振ったのちに、満面の笑顔でステージを去りました。今回初めて体感することができた久石譲×日本センチュリー交響楽団。今後も様々なプログラムで西日本の群衆を久石ワールドへと引き込んでくれそうです。また足を運べる機会があれば、ぜひ参加したいと思い、コンサート会場を後にしました。

 

2021年09月21日 ふじか

 

 

 

楽しかったですね!コンサートの様子が自然と浮かんできそうな、音楽もふわっと響いてきそうな、”This is Report!” いつも感嘆しています。素敵なレポートありがとうございます。まだまだ過去のふじかさんレポートも読みたくなった人は、ぜひコンサートを追体験してみてください。最後に紹介しています。

 

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ふじかさん
@fujica_30k

 

 

リハーサル風景

 

姫路公演風景

 

京都公演風景

from 日本センチュリー交響楽団 公式ツイッター
@Japan_Century

 

 

本公演は会場で配布されたプログラムに楽曲解説の掲載はありません。初オケ!初コンサート!のお客さんも多かったようですね。序盤のドキドキ戸惑いも終わる頃にはすっかり感動にハイテンションですね。初めて!だけに、コンサート・パンフレットは思い出の記念品として残るもの。楽曲解説はあったほうがいつでもあのときの感動を呼び醒ますことができます。と、僕は思います。ぜひよろしくお願いします!

 

 

姫路公演も京都公演も当日券なしの完売御礼!

京都公演は撮影カメラが入っていたようです。

今後のアナウンスも楽しみですね!

 

from SNS

 

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

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みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
オケが変われば音も空気も変わる。楽しいですね。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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