Disc. 久石譲 『Dolls オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『Dolls』

2002年10月2日 CD発売 UPCH-1191
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9010

 

2002年公開 映画「Dolls」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:菅野美穂 西島秀俊 他

 

北野武監督10作品目、久石譲が音楽を手がけた北野武映画7作目。そしてこの映画を最後に北野武と久石譲のタッグはない。

 

 

シンセサイザーの神秘的な響きとピアノを基調としたシンプルな構成。ほぼメロディといえるような旋律はないなかで、かくも絵画的な印象を与える世界。久石譲音楽のなかでも異色な作品といえるが、その完成度は素晴らしく、新しい境地を切り拓いたともいえる作品。

サウンドトラックとしても30分にも満たないが、まさに循環音楽、ずっとエンドレスで聴いていたくなる力がある。(1) (3) (5)は映画のメインテーマともいえるモチーフのバリエーション。そして(4)はピアノ・ソロで、美しすぎる名曲である。癒される、心が洗われる、涙がでる、心にしみる、それを超えた言葉として形容しがたい音楽が込められている。

主張がない映画と同じく、主張しない音楽を貫いているが、かといって印象に残らないわけではない、芯のある音楽。主張しない音楽が薄っぺらい安い音楽になっていないのは久石譲の巨匠たるゆえんだろう。

日本の四季を美しく表現した映画本編と同じく、この音楽にも日本の美、四季の美しさ、そして儚さがある。神秘的であり叙情的でありポエムのような音楽。絵画的な音楽ということは、起承転結がない。封じ込められた一瞬の世界、時間軸のない世界。だからこそその瞬間が永遠につづくのである。これこそがこの作品の極意といえる。

日本を象徴する風景が桜や紅葉とするならば、そのような美に共鳴する音楽こそがこの作品だろう。

 

 

久石譲 『Dolls』

1. 桜 – SAKURA –
2. 白 – PURE WHITE –
3. 捩 – MAD –
4. 感 – FEEL –
5. 人形 – DOLLS –

All Music Composed, Arranged, Produced and Performed by Joe Hisaishi

Recording Studio:Wonder Station

M-5:Asian Samples Courtesy of Spectrasonics “Heart of Asia”

 

Disc. 久石譲 『Castle in the Sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~』

久石譲 『Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン』

2002年10月2日 CD発売 TKCA-72436
2021年11月27日 LP発売 TJJA-10042

 

1986年公開 スタジオジブリ作品 映画「天空の城ラピュタ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

ディズニーが2003年に北米でリリースした「ラピュタ」の英語吹替版用に、久石自らが、ハリウッド映画音楽のオーケストラを率いて壮大なスケールと迫力あるサウンドで再録音したニュー・サントラアルバム。一部、書き下ろしの新曲も含まれている。

 

 

『天空の城ラピュタ』USAヴァージョン

『ラピュタ』のオリジナルを作ったのは、16年も前のことです。『風の谷のナウシカ』をやって、徳間書店さんの大作アニメの二番目の作品である『アリオン』をやった後だったので、宮崎駿監督が新作を作っていると聞いても、僕に音楽が回ってくるとは思っていませんでした。でも、結局、久石がいいということになって、プロデューサーだった高畑勲さんと鈴木敏夫さんが、僕のところに依頼しに来て下さった時は、本当に嬉しかった。

『ナウシカ』は、実は音楽自体にまとまりがないんです。シンセのウチコミの音だったり、オーケストラだったりして、全体の統一感に乏しい。ただ、『ナウシカ』の物語に気持ちを入れこんで作ったので、統一感のなさが問題にならないくらいの説得力があった。そういうこともあって、『ラピュタ』は音楽としての完成度をすごく上げたいと思って作ったんです。僕自身、映画音楽としてのまとまりのある仕事が出来たのは『ラピュタ』が初めてだったような気がします。完成したフィルムを観ると、画面が呼吸しているんです。音楽がなんとなく流れているんじゃなくて、突然アップテンポになって、ガッと下がって、また上がって。序破急と言うんでしょうか、緩急のメリハリがすごくあって、自分でも、こんなに上手く作れたんだと感心できた作品でした。

『ラピュタ』の音楽はそういうふうに完成度が高かったので、アメリカでリリースするに際しても、本当は手を加えたくなかったんです。しかし、アメリカ映画は最初から最後まで音楽が鳴っているのが普通だから、今までの『ラピュタ』の音楽の付け方だと、アメリカの観客はなじめないんじゃないかということで、もう一度録り直すことにしました。宮崎駿監督にも確認をとったんですが、自由にやっていい、ということでしたので。

実は僕は、ハリウッド映画の音楽の作り方は、そんなに好きなほうじゃないんです。僕の映画音楽の作り方というのは、監督の作りたい世界を根底に置いて、そこからイメージを組み立てていく。しかし、ハリウッド映画は、基本的にキャラクターのための音楽を作っていくんです。はっきり言ってしまえば嫌いなやり方なんですけど、あえてそういう単純明快なアプローチを試してみようと思いました。『ラピュタ』は冒険活劇なので、ハリウッド的な音楽もいいかな、と。

今回は、もともと完成されたオリジナルがあるということで、気楽なスタンスで作ることができました。音楽を作る時、いちばん厳しいのは、新しいメロディを作り出すことです。今回はそれがなかったので、精神状態が安定していて、曲にゆとりが生まれました。作品に入れこみすぎて、一生懸命になりすぎてしまうと、かえって視野が狭くなって、豊かなイマジネーションが損なわれてしまうものなんです。その結果、出来上がった音は、堅苦しい音になってしまう。でも、今回は音に遊びがあって、自分で聴き直して、素直にいいなぁと思える出来になりました。トラックダウンをやっていても、すごいな、これ、と。自分ですごいなんて言っちゃいけないんですけど(笑)、今回の音は屈託がないんですよ。いい意味で、ノビノビしているんです。

かと言って、楽して作ったかというと、そんなことは全然ありません。ハリウッドでもこれだけお金をかけることはないですというくらいの壮大な費用を使っていますし、スコアの量もすごいですから。音は、正統派のオーケストラサウンドです。もちろん、シンセを入れたりはしていますが、東洋的な音を入れたりするような、奇をてらうことは、一切していません。ハリウッド映画をやっているオーケストラや指揮者の方に演奏していただきましたが、結局は自分のやりたい音になりました。真っ当なオーケストラで、自分のオイジナリティを出そうと思って作った作品ですね。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

「ディズニーのスタッフによると、外国の人って、音が3分も鳴らなければ落ち着かなくなるんだそうです(笑)。洋画を見ると分かりますが、ずーっと音が鳴っていますよね。しかもアニメなんて、全編鳴っているのが当たり前なんです。ところが、オリジナルの「ラピュタ」では、2時間4分の上映時間のうち、音楽は1時間。すると7分間~8分間、音楽が全くない部分があるんです。これでは海外で通用しないというわけで作り直すことになったんですが、単に新しいものを足しても、14年前に制作した音楽と合わないので、すべて新録にしたんです。もちろん「ラピュタ」のメロディは崩せないので、そこは生かしながらアレンジを変更しています」

また、海外での公開を前提とするという新たな要素が加わったことで、制作のアプローチにも変化があったという。

「アメリカ映画の音楽の付け方って、基本的にすごくシンプルなんです。それはどういうことかというと、とにかくキャラクターと音楽を一致させる。軍隊が出てきたら軍隊のテーマというように、映像を説明するような音楽が、ハリウッド調の音楽であり、それがポイントになっている。これまで、僕はそういうアプローチというのは理解はしていましたが、すごく音が単調になりそうなのがいやで、避けていたんです。でも、いざ意識して作ってみると、やはりものすごく勉強になりましたね」

もちろん、新録された「ラピュタ」でも、シンセサイザーによるデモ作りは行われた。しかも、こちらも全くゼロの状態から制作し、レコーディングされたのだという。当然、生のオーケストラ・パートもすべて新録音。総勢80人という大きな編成を組み、教会を使った大規模なレコーディングが行われたのだが、ここでも、生のオーケストラとシンセサイザーのミックスという手法が大きな威力を発揮したという。

「教会でのレコーディングは、まさにすさまじい音で、アンビエンスがあまりにすごいため、近接マイクや各セクションのマイクなどで音質のコントロールをすることが難しかった。ですから、ちょっとゴリっとした音にしたりしようとしてもそうならない。そこで、シンセサイザーをミックスするという手法が役に立ったんですよ。サウンドトラックのリリースについては、まだ予定が立っていないのですが、仕上がりは最高です。宮崎さんもすごく喜んでくれていましたね」

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「もう一つ、昔やった『天空の城ラピュタ』がアメリカで英語で公開されるんです。ディズニーで公開するんですけど、ディズニーの常識でいうと、アニメーションというのは1時間40分なんですよ。ところがあれば2時間4分です。しかもあまり音楽の量が多くない。日本の映画はアニメーションを含めて、みんなそうで、音楽の量が多くないんですよ。ところがアメリカは全編に入れるんです。もう10何年前の映画だから、新たに音楽を足してくれと言われてもできないし、性格的にもオール・オア・ナッシングなところがあるから、いま全部作り替えているんですよ。来月の頭にアメリカのシアトル交響楽団というところで、録るんですよ。これはいままで自分がやってきた映画のスタンスと全然違うんです。アメリカは過剰情報量の世界だから、誰々のテーマというのがあって、何かが出てくるとそのテーマを流すんです。基本スタイルが本当に劇の伴奏なんです。僕はそういうやり方、基本的に嫌いだし宮崎さんの作品に関しても、これが我々の決定稿であるというオリジナルがちゃんとあるわけです。でも今回、もしやるのであれば、まったく違うもの、あえてハリウッドスタイルでやろうかということで。鈴木さんの『バースディ』みたいなものですよ。『こういうのもあるだろう』というスタイルで作っている。映画音楽の作り方って、いろんな考え方があるんですよ。僕にとってそれは、作者の意図がどう伝わるかということに貢献していくということです。」

Blog. 「ダカーポ 422号 1999.6.2 号」鈴木光司×久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

1ヶ月半におよぶベーシックレコーディング(サンプラーを使ったデモ音源)は、オリジナル版制作当時のフェアライトII音源からフェアライトIIIへの移行作業から実施され、ストーリーに沿った順録りで追加音源ふくめた音楽制作が行われている。また久石譲は英語吹き替え版の映像に合わせて、セリフとメロディがかぶらないようになど緻密に作曲されている。パズー、シータとドーラの線路上でのおっかけっこの場面でシンセベースの旋律を書き、ポップなリズムでスピード感あふれるベースラインができたあたりから、この音楽制作のペースをつかんできたとある。全55曲。ソロ部分のピアノだけは久石譲によるもので先に日本でレコーディングされている。コーラスも日本で、オリジナル版は児童合唱、本作は中学・高校生の女の子30人によるもの、都内の教会でレコーディングされている。またケーナなリュートといった民族楽器も効果的に使われることになった。

(以上、NEWS WONDER2 No.32 より要約)

 

 

 

エンディングに流れる「君をのせて」は、オリジナル版をベースに久石譲ピアノが伴奏や間奏に追加された新バージョン。エレクトリック・ピアノ・トラックが削除され、生ピアノ・トラックに変わり、またフレーズも異なる。さらにいうと、歌に入る前の「タイガーモス号」モチーフも新録されたもの。サントラ未収録なのがもったいない。北米版本編(輸入版/国内盤ブルーレイ映像特典など)のみで聴くことができる。

 

 

 

 

映画『千と千尋の神隠し』予告編に「Track.17 The Lost Paradise」が使用されていた。その経緯は下記より抜粋。

”それから、みなさんが御覧になったであろう、おどろおどろしいサスペンスのようなミステリーのような曲は陰謀でありまして・・・僕の作った曲ではあるんです。ですが・・・言っていいんでしょうか・・・
あの・・・「天空の城ラピュタ-アメリカ版-」というレコーディングをアメリカでしたときの、大本の映画が2時間5分くらいあるんですけど、音楽がそれでは足りないということで4、50分書き足した部分があるんですね。書き足したところの音楽を日本でまだ公開されていないことを幸いに、鈴木プロデューサーが使っちゃいまして・・・それが流れているわけで、何人かからあの音楽が入っていないという問い合わせはうちのホームページにもずいぶん来ていたようです。”(久石)

”それから、誤解のないように僕もこの際言っておきたいんですけど、久石さんが「俺に内緒でラピュタの曲を勝手に使った」と。あれは、この際だから言っちゃいますけど、久石さんが音楽を作るのが遅れたのが原因なんですよ。そのことだけは、はっきりさせておきたいなと。(会場笑い)失礼いたしました。”(鈴木)

出典:DVD映画ポータル 完成報告記者会見&完成披露試写会 「千と千尋の神隠し」 より
https://www.eiga-portal.com/butaiaisatsu/sentochihiro-s/04.shtml

 

 

 

 

2021.11 update

アメリカ版『天空の城ラピュタ』スタッフ日記(当時のワンダーシティスタッフによるweb日記を抜粋)所収

 

 

 

 

オリジナル作品の全米公開に向けて音楽をリアレンジ。映画も「Castle in the Sky」として公開予定もお蔵入り。北米版本編は後の「天空の城ラピュタ」(Blu-ray DVD)特典として収録され、このサウンドトラックもUSAヴァージョンとして発売される。

オリジナル劇中音楽は、オーケストラ+シンセサイザーだったのに対し、ほぼ全編フルオーケストラとしてリアレンジされている上に曲数も格段に多くなっている。オリジナルサウンドトラック(日本版)には未収録となっていた「ボムじいさん」シーンの曲が収録されていたり、音楽のついていなかったシーンへの新録も多数。このあたりは、意図的に音楽を追加しているようである。ハリウッド映画は劇中音楽がとにかく多い。音楽が鳴っていないシーンがないというほどに。ジブリ作品はもとより多くの日本映画、日本文化とは違う点である。いい意味での間(無音・余白・隙間)、こういったものを味わえる文化。

全米公開に向けて、ある程度欧米文化に受け入れやすいように、かつオリジナル性を損なわないように。オジリナル作品に後から手を加えるという意味では異例の音楽再編集、新録、フルオーケストラ、という流れになったようである。オリジナルの日本版サントラに馴染みがある人も多いとは思うが、また違った角度から新しいラピュタの世界観を味わえるという意味では純粋にうれしい作品だと思う。ストーリーと並行した曲順になっているので英題からどのシーンだったかを読み解くのもおもしろい。

シアトルにて録音された、新しい躍動感・壮大感・テンポ感、かつ緻密なオーケストレーション、パワーアップしたラピュタサウンドを楽しむことができる。久石譲の映画音楽を自身ではなく、他指揮者がタクトを振っている点もまた違った空気感と響き、そしてオケとの呼吸が新鮮である。

指揮:ヴィンス・メンドーザ Vincent Mendoza
演奏:シアトル・ミュージック SEATTLEMUSIC

 

 

 

久石譲 『Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン』

1. Prologue 〜 Flaptors Attack
2. The Girl Who Fell from the sky (Main Theme)
3. The Levitation Crystal
4. Morning in the Mining Village
5. Pazu’s Fanfare
6. The Legend of Laputa
7. A Street Brawl
8. The Chase
9. Floating with the Crystal
10. Memories of Gondoa
11. Stones Glowing in the Darkness
12. Disheartened Pazu
13. Robot Soldiers 〜Resurrection – Rescue〜
14. Dola and the Pirates
15. Confessions in the Moonlight
16. The Dragon’s Nest
17. The Lost Paradise
18. The Forgotten Robot Soldier
19. The Invasion of Goliath
20. Pazu Fights Back
21. The Final Showdown
22. The Destruction of Laputa (Choral Version)
23. The Eternal Tree of Life

All music composed & arranged by Joe Hisaishi
Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Vincent Mendoza
Performed by SEATTLE MUSIC

Recording Engineer: Suminobu Hamada (Wonder Station)
Assistant Engineer: Hiroyuki Akita (Wonder Station)

Recorded at
St.Thomas Chapel – Bastyr University, Seattle
Wonder Station, Tokyo

 

Disc. 久石譲 『天空の城ラピュタと空想科学の機械達展』 *Unreleased

2002年10月2日 公開

 

公開期間:2002年10月2日~2004年5月9日

短編アニメーション『空想の空とぶ機械達』
原作・脚本・監督:宮崎駿
音楽:久石譲
上映時間:約6分
*2007年7月から断続的に日本航空の一部飛行機にて本作品が機内上映されている

 

この作品の音楽は「天空の城ラピュタ」からの音楽も使用されている。

 

 

短編アニメーション『空想の機械達の中の破壊の発明』
企画:宮崎駿
原作・脚本・監督:庵野秀明
音楽:久石譲
上映時間:約3分
*企画展示終了をもって公開終了

 

楽曲情報
・空想の空とぶ機械達 M-1 ~ M-3
・空想の機械達の中の破壊の発明 M1

 

 

短編実写ドキュメンタリー『オーニソプター物語~飛べ!ひよどり天狗号』
構成・演出:浦谷年良
音楽:久石譲
上映時間:約4分

 

楽曲情報
・オーニソプター物語 M-1 ~ M-5

 

 

 

Disc. 久石譲 『めいとこねこバス サウンドトラック』

久石譲 『めいとこねこバス サウンドトラック』

2002年10月2日 CD発売 MDG-R-00003

 

2002年公開 スタジオジブリ作品
三鷹の森ジブリ美術館 短編アニメーション「めいとこねこバス」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

三鷹の森ジブリ美術館オリジナル短編アニメーション第3作「めいとこねこバス」(2002年上映開始、原作・脚本・監督:宮崎駿)のサントラ盤。本作は映画「となりのトトロ」の後日談的な短編作品であり、久石が長編と同様に音楽を担当した。録音は2002年8月。

 

 

「めいとこねこバス」 「パン種とタマゴ姫」等の三鷹の森ジブリ美術館オリジナル短編アニメーション作品は、三鷹の森ジブリ美術館(日時指定の予約制)の映像展示室「土星座」だけで上映しています。

「めいとこねこバス」のサウンドトラックCDは、同美術館のショップ「マンマユート」でのみ販売しています。(発売元:スタジオジブリ)

 

 

シンプルだけど複雑な、口ずさめる面白い音楽

音楽を担当したのは「風の谷のナウシカ」以降、全ての宮崎監督作品の音楽を担当する久石譲さん。今回、全8曲中、新たなメロディーは2曲。1曲目はメイがコネコバスと一緒にキャラメルを食べるシーンで流れるもの。「この曲はメイのテーマとして『メーイ、メーイ、タラリララ~』と単純に呼びかける感じで作ったんです」メロディーこそシンプルなこの曲、実はとてもむずかしいリズムで構成されている。

「シンプルなメロディーにちょっと複雑さを加えつつ、でも口ずさみやすい面白いものにしようと思っていたんです」この曲の出来に大満足な久石さん。この曲が完成した時、メイとコネコバスの喜びのテーマとして、これがこの映画音楽の核になると確信したという。

そしてもう1曲、久石さんが作ったのは、森の中にたくさんのネコバスが入っていくところに流れるもの。「あのシーンが物語の大きな変わり目ですからね。ちょっと面白くて印象的なものにしようと考えました」そこで久石さんが取り入れたのが、クルムホルンという傘の柄のような面白い形のオーボエ族の楽器。「エスニック風な感じが出て面白いんですよ」こうして「となりのトトロ」の楽曲に新しい曲が加わり、映像に寄り添う形で流れる音楽は、作品をよりいっそう楽しいものにしている。

(「めいとこねこバス」公式パンフレット より)

 

 

久石譲 『めいとこねこバス サウンドトラック』

1.めいとこねこバスのさんぽ
2.キャラメルあげるっ。
3.めいの子守うた
4.出発進行!
5.塚森のネコバァちゃん
6.あ、トトロだ。
7.またネ!

指揮:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
演奏:安井敬 庄司祐子(クルムホルン)

 

Disc. 石井竜也 『君をつれて』

2002年9月26日 CDS発売 SRCL-5442

 

1986年公開 スタジオジブリ作品 映画「天空の城ラピュタ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

映画公開から16年を経てDVD化にともない制作されたイメージ・ソング

久石譲のメロディーはそのままに、16年後の主人公の視点から描いた石井竜也作詞の作品。カップリングには、オリジナル主題歌の石井竜也ヴァージョンを収録。

 

 

君をつれて 石井竜也

1. 君をつれて 作詞:石井竜也 作曲:久石譲 編曲:光田健一
2. 君をのせて 作詞:宮崎駿 作曲:久石譲 編曲:光田健一

 

Disc. 久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

2002年7月26日 CD発売 WRCT-1005
2002年11月23日 CD発売 WRCT-1005 ※新パッケージ

 

2001年12月7日東京芸術劇場で行われた公演のCD化
指揮:金洪才 演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団

アカデミー賞受賞作品「千と千尋の神隠し」組曲
北野武監督映画「Kids Return」、久石譲監督映画「Quartet」他収録

 

 

解説

本作は2001年10月30日から始まったツアー「久石譲・SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」の最終日、2001年12月7日の東京芸術劇場におけるコンサートのCD化である。

収録された楽曲は全曲が初演であり、久石自身がコンサートの数ヶ月前から少しずつアイデアを固め、全ての関連スコアをチェックした後、オーケストラ演奏用にリ・アレンジし、演目の最終決定というプロセスをたどっている。これは映画音楽が映像とのマッチングを前提として作曲されているため、コンサートの演目として演奏するためには全く異なるアレンジアプローチが必要となったからである。どの作品にも意欲的に思い切ったアレンジを施しているが、特に「BROTHER」は1度作ったアレンジから徹底して離れて新しく作り直しており、非常に聴き応えのある作品に仕上がっている。また「千と千尋の神隠し」は、映画の中の印象深い楽曲をセレクトして組曲形式で構成し、独立した完成度の高い作品となった。

演奏は「千と千尋の神隠し」「BROTHER」「Quartet」のサウンドトラックのレコーディングを行った新日本フィルハーモニー交響楽団で、レコーディング時のオリジナルに近いメンバーによるコンサート音源であることも興味深い。

録音は、クラシック・レコーディング界における日本屈指のエンジニア、江崎友淑氏による。演奏収録場所は東京芸術劇場。指揮は金洪才氏、ピアノ演奏は久石譲。また今回は1曲だけ「Student Quartet」を久石自身が指揮している。

(宮崎至朗)

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ほとばしる魂の音楽

わたしがアナウンサーを志したのは、NHKのある番組がきっかけだった。

それは大学の頃に偶然見た「胃の粘膜が…」とか、「人の遺伝子とは…」といった科学番組だった。優しく包み込むような音楽とナレーションが心に染み入り、気がつくとポロポロ涙がこぼれていた。衝撃だった。耳から受ける刺激は、これほどまでに人の心を揺さぶるものなのか、と。同時に何かを伝えたい、表現したい、いつかこんな仕事に関わりたい、そう強く望むようになった。これが久石譲さんの音楽との出会いだった。

昨年、雑誌の対談で初めてお目にかかる機会に恵まれた。黒のスーツをさり気なく身にまとい、颯爽と登場された久石さんは、わたしの想像とは全く違っていた。

正直、驚いた。失礼ながら『サンタクロースの様なおじいさん』を思い描いていたからだ。穏やかな語り口にかい間見える鋭さ。「学生時代は尖っていましたからね」と微笑まれたのが印象的だった。

当時、久石さんは前衛的な音楽に傾倒されていたと聞いた。だからこそ、創造力果てしなく、あまたの作品が生み出されてきたのだろうか。

”SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001”。今回もまた心が震え、喚起された。ほとばしる魂を感じさせる久石さんの音楽。これからもわたしたちを新たな世界へ導いて下さることだろう。

進藤晶子 (キャスター)

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

「千と千尋の神隠し」組曲
1.あの夏へ 2.竜の少年~底なし穴 3.6番目の駅 4.ふたたび
日本における映画記録をことごとく塗り替えた、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」。宮崎監督とのコンビも「風の谷のナウシカ」以来7作目となるこのファンタジー映画の中で、久石譲の音楽は観客の感情の振幅を見事に広げてみせた。今回、ステージで初めて演奏されたのは、スクリーンで耳に馴染んだ数々のメロディを、コンサートのために4曲からなる組曲として書き下ろしたものである。

「Quartet」より
5.Black Wall 6.Student Quartet 7.Quartet Main Theme
2001年秋、久石譲がはじめて監督・脚本・音楽を手掛けた作品「Quartet」が公開された。音楽学校を卒業した後、社会でそれぞれの挫折を味わった4人の仲間が出会い、再びカルテットを組んでコンテストに挑戦するという物語で、日本では珍しい本格的な音楽映画に仕上がっている。全ての音楽を、久石譲はこの映画のために新たに作曲した。CDではその中から3曲を選んでいるが、「Black Wall」は現代音楽風に、「Student Quartet」はモーツァルト風に、そして「Quartet Main Theme」はフランス印象派風にと、久石譲の音楽的センスの多彩さが溢れでている。

「BROTHER」より
8.Drifter…in LAX 9.Wipe Out 10.Raging Men 11.Ballade
久石譲は「BROTHER」の音楽を、自分自身、非常に気に入っているものの1つだと言う。それを今回、コンサートホールでの演奏用に書き換えた。リ・アレンジというより、ほとんど作り替えてしまったと言ってもいい。そのくらい迫力と存在感のある楽曲となった。哀しみを含んだメロディライン、対比する息も詰まるようなパーカッション・リズムの躍動感が聴く者の心を揺さぶり、否応なくハードボイルドともいえるその世界に引きずり込んでいく。

「Le Petit Poucet」より
12.Le petit Poucet Main Theme
久石譲が、監督オリビエ・ダアンの「プチ・プセ」(原作シャルル・ペロー、日本語原題「親指トム」)でフランス映画に進出した。映画は2001年10月17日に公開されたが、色彩の美しさを際立たせた映像美と緩急自在の語り口、そして特別出演のカトリーヌ・ドヌーブを初めとする豪華なキャスティングが話題となり、公開初日にはパリとその近郊だけで1万3千人を動員した。「久石節」とでもいうべき美しい旋律と和声は映像美と見事に絡み合い、本来「子供向け」にカテゴライズされるこの作品のクオリティを、1ランク引き上げることに成功している。日本での公開が待たれる作品である。

「Kids Return」より
13.Kids Return 2001
メインテーマとなったこの曲は、素晴らしい速力と緊張感をもっている。それは物理的な速力というに止まらず、人間の内面に鋭く切り込んでくるかのような疾走感である。聴くたびに新しい感動を呼ぶこの曲を、久石はフルオーケストラとピアノのためにリ・アレンジした。その驚くべき華やかさの裏に、ある秘めた切なさを感じさせるのは、さすがに久石譲である。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

(新パッケージ ジャケット)

*新パッケージはジャケット表面背面、CD帯、円盤デザイン、ライナーノーツ、すべてのデザインが異なる

 

 

久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

「千と千尋の神隠し組」組曲
1. あの夏へ
2. 竜の少年〜底なし穴
3. 6番目の駅
4. ふたたび
「Quartet」より
5. Black Wall
6. Student Quartet
7. Quartet Main Theme
「Brother」より
8. Drifter… in LAX
9. Wipe Out
10. Raging Men
11. Ballade
「La Petit Poucet」より
12. La Petit Poucet Main Theme
「Kids Return」より
13. Kids Return 2001

All composed, arranged and Produced by Joe Hisaishi

ピアノ:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:金洪才

2001年12月7日 東京芸術劇場にて収録

 

Disc. LYNX 『Cinema Complex』

LYNX 『CinemaComplex』

2002年7月24日 CD発売 SRCL-5383

 

フルート4本でポップに聴かせる才色兼備のフルーティスト集団「リンクス」
宮崎駿監督、北野武監督、大林宣彦監督から
久石譲の映画音楽の世界がフルートで優しく生まれ変わる

 

 

楽曲解説

1.ふたたび
弦カルテットとフルートカルテットという二つの世界が重なりあって織りなすハーモニーの美しさが秀逸。メロディもフルートから弦へ、弦からフルートへと流れるようにタッチしていき、後半に向かって徐々に盛り上がっていく。

2.あの夏へ
フルートのハーモニーで始まり、だんだんリズムやシンセが重なっていく大作。生のウィンドチャイムやベルなどが夏らしさを演出。また、フルートの技巧も存分に味わえるアレンジの妙で聴きごたえ十分である。

3.海の見える街
跳ねるようなフルートとアルトフルートのかけ合いのスタッカートで始まるテーマからクラシカルな展開部、そして6/8拍子の明るいサブテーマへと流れるようにつながっていき、再びメインテーマを奏でて終わる。

4.KIDS RETURN
コンガ、ボンゴなどのパーカッションが疾走感あふれるオケにマッチし、鼓動をかき立てる。フルートの華やかさと切なさが見事に生かされて青春の危うさやほろ苦さを表現。

5.TANGO X.T.C.
ピアノと弦カルテットを加えた演奏は、激しく切なく心に訴えかける。アルバムのハイライトとも言える大作である。

6.Summer
テレビコマーシャルでもおなじみのこの曲。フルート四重奏の軽快な演奏で夏らしい清涼感にあふれた作品となっている。

7.もののけ姫
米良美一の歌うメインテーマとして大ヒットを記録したこの曲。フルート四重奏で重厚にしっとりと表現されている。

8.Reging Men
「凶暴な男」というタイトル通り不穏で緊張感のある世界を、タムの重いリズムとフルートの無調っぽい響きで表現。エンディングに向かって狂気の世界がジョジョに盛り上がっていく…。

9.BROTHER
男の哀愁、ヤクザの悲しい運命を感じさせる情緒たっぷりのメロディがフルートのもの哀しい音色でつづられていく。パーカッションと打ち込みのオケの中、「息」という生命を感じさせるフルートの存在が光る。

10.ナウシカ・レクイエム~遠い日々
弦カルテットの重厚なレクエイムに続き、おなじみのメロディがフルート四重奏でみずみずしく表現されている。

11.TWO OF US
石田ひかりの初主演となるこの作品の主題曲で、Lynxも初アレンジを披露。演奏者ならではの観点で、フルートの音色や技巧を十分に活かした作品となっているのでじっくりとお楽しみを…。

12.HANA-BI
フルート四重奏とハープの演奏は本当に切なく悲しい本編と見事にオーバーラップ。アルバムの最後を美しい余韻で飾る。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

LYNX 『CinemaComplex』

1. ふたたび (千と千尋の神隠し)
2. あの夏へ (千と千尋の神隠し)
3. 海の見える街 (魔女の宅急便)
4. KIDS RETURN (キッズ・リターン)
5. TANGO X.T.C. (はるか、ノスタルジィ)
6. Summer (菊次郎の夏)
7. もののけ姫 (もののけ姫)
8. Raging Men (BROTHER)
9. BROTHER (BROTHER)
10. ナウシカ・レクイエム~遠い日々 (風の谷のナウシカ)
11. TWO OF US (ふたり)
12. HANA-BI (HANA-BI)

編曲:
山路敦斗詩 (1-5, 8-9, 12)
篠田昌伸 (6, 10)
上田麻衣子 (7)
Lynx (11)

全作曲:久石譲

 

Disc. 久石譲 『Quartet カルテット』

久石譲 『カルテット DVD』

2002年3月25日 DVD発売 BCBJ-1128

 

2001年公開 映画「Quartet」
監督:久石譲 音楽:久石譲 出演:袴田吉彦 桜井幸子 他

久石譲 第一回監督作品
[モントリオール映画祭ワールドシネマ部門正式招待作品]

 

 

この作品は僕の自伝ではないけれど、ある意味で僕の物語。僕の周りにいた、音楽と共に生きようとして悩み立ち止まる、繊細で、美しい人たちの物語です。

久石譲

 

 

「音楽が主役になっている、ということ。物語に音楽がからんでいるとか、主人公が音楽家というだけでは音楽映画にはなりません。音楽がドラマとからんでクライマックスに向かっていくような映画を、私は音楽映画と呼ぶことにしています」

「整理すると、音楽とストーリーが密接にかかわっていること、音楽が台詞の代わりになりえていること、この2点に集約されます」

「まず演奏トレーナーには役者が楽器を弾けるようにするのではなく、”弾いているように演じる”ことを教えてもらいました。役者たちは彼のもとで最低1ヵ月間のトレーニングを積んで、撮影に挑んでいます」

「たとえば、役者が演奏しているふうの表情をアップで見せ、切り返しでプロの演じている手元だけを見せるというカット割では、観る人誰もが『編集で見せていますね』と興ざめしてしまう。ワンカットで登場人物が演奏するシーンを成立させるためには、まず役者のトレーニング。しかし、それでも追いつかないほどの演奏技術が必要なパートがあることもわかっていましたから、そこは撮影のトリックを入れる計画を立てました。技法は複数。完全な種明かしをしてはつまらないので、たとえば2人羽折り、たとえば合わせ鏡、そんな技法を用いているということだけお伝えしておきます。時間をかけた創意工夫ばかりで、その分できばえも良かったと自負しています。ぜひ、映画館で演奏シーンを堪能していただきたいですね」

Blog. 「ディレクターズマガジン 2001年11月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「撮影は去年に終えていてね。劇中、袴田(吉彦)君扮する主人公の台詞で『音楽ってそれほどのものなんですか?』っていうのがある。この一言を音楽家である僕が言わせるのは、自分では結構強烈な挑戦だった。多分この一言を撮りたくて映画を作ったんだなと、今は思っている。”音楽を作る”ことと”生きる”ことの関係性を何らかの形にしてみたかったのではないかな。音楽は自分では未だ模索の最中だし『Quartet』も、その明確な答えとは成り得ていないけれど、リアリティという点ではなかなかの仕上がりだよ」

Blog. 「SWITCH スイッチ JULY 2001 Vol.19 No.16」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「ストーリーは自分とはそう関係ないんですけども、僕にとってのリアルという面でね。たとえば、大学のシーンをどこで撮ろうかと、いろんな大学を見せてもらったんですけど、結局、自分が出た大学、国立音大しかない、と。キャンパスの真ん中にはやっぱり噴水(笑)。あったほうがいいんじゃなくて、なきゃいけない。庭ではラッパを練習していないと。ピャラララ、ピャラララとかってやっててくれないとダメなんです(笑)。監督というのはみんなどこかで虚構をやってるから、ウソっぽくなることをすごく恐れるんですね。そこでいちばんリアルなのは、自分の体験なんですよ」

「主人公が、お父さんが家を崩壊させてまでカルテットに打ち込んだことに対して、「音楽ってそれほどのもんですか」っていうシーンがあるんですよ。観ていると、すっと流れちゃう場面かもしれないけど、音楽家である僕が監督しながら、この台詞をいわせるっていうのは、すごく重いんですよね」

「あります、正直いえば。こんなに全部を犠牲にして…。たとえば、この2日間すさまじい指揮をしました。その前は籠もりきりで一日10数時間、譜面を書いてます。そのまた前は、2ヵ月間籠もってレコーディング。1年間、ピアノにさわってないのに、ピアノをダビングするなんてことまで起きてくる。まったくよくやってますよね。何のためにやってるんだろうって、ふと思うことがあるんです。「音楽ってそれほどのもんですか」。この台詞をいわせるために、僕はこの映画を撮ったんじゃないかという気がしてます」

Blog. 「月刊ピアノ 2001年7月号」映画『Quartet』 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「全体の半分弱くらいが音楽シーンで、時間軸に固定されますから、構成自体は難しくなかったんです。でも、セリフの投げ合いで感情を引っ張りすぎると音楽シーンのパワーがなくなっちゃうから、芝居は極力抑える、カメラは引くって決めてましたね。そういう意味では、北野監督的なやり方だったんですよ。過剰に説明をせずに、どこまで引いて見せるかという意味ではね。武さんは僕が映画を撮るというのを知っていたんです。あるとき一緒にご飯を食べていて、武さんが大杉漣さんに話をしていたんですよ。”ラーメンをおいしく撮る方法って、いかに本当においしいかと見えるようなカットを撮らなくちゃいけないんだよ。たいがいの監督がしくじるのは、いかにうまいかという内容を説明しちゃうから。トンコツ味でとか昆布のダシでとかさ、そうするとトンコツが嫌いな人はそれを聞いた瞬間、半分引いちゃうんだよな”って。大杉さんに話をするフリをして、たぶん僕に言ってくれたんだと思う。それがすごく残っていて、大変なヒントをいただきましたよね」

「この映画、2回観た人の反応がいいんですよ。芝居や何かを全部言葉でやっていると2回観たいとはあまり思わないですよね。でも、音楽は2度聴いても嫌にならない。その音楽が今回、セリフ代わりになってますね。リピートに耐える映画になったかと思うと、とてもうれしいですね」

Blog. 「DVDビデオ・ぴあ 2001年10月号」 映画『Quartet』久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「まず音楽映画とはどういうものか、明確な定期をしておかなければいけないと思いました。ドンパチがあればギャング映画、音楽があれば音楽映画というふうに考えれば、実際どのジャンルを見ても明確な定義など存在しないんです。そこで自分が考える音楽映画とは、まず第1に音楽自体がストーリーの展開と強く絡んでいなくてはいけない。第2に、せりふの代わりに音楽で半分ぐらいは表現してしまう。つまり、(音楽で)見る側にイマジネーションを広げてもらう。この2点を明確にして自分のスタンスをとろうというのが演出の根底にあったんです」

「そりゃ大混乱ですよ(笑)。譜面を渡されて、『3小節目のジャン!で、左からカメラ寄る』なんて書いてあるわけです。結局、学生さんのアルバイトを雇い、たとえば阪本善尚カメラマンの後ろに1人付けて、「1、2、3、ポーン」という感じで背中を叩いてもらって撮ってもらいましたから(笑)。通常、オケを撮る場合もオケを恐れちゃって遠くから撮るだけっていうケースが圧倒的に多いんですよね。自分はオケの連中との仕事も長いんで、『はいっ!弦、全部どけ~!』ってガンガンなかに入って撮る」

「袴田君たちは(プロの)ヴァイオリン奏者じゃないから、みんな(実際に)弾いていないってわかっているわけです。だから見る側が『あっ、本当に弾いている』と思えるところまでもっていくのが鍵でした。楽曲の小節ごとに顔のアップ、手のアップ……と決め、『その小節だけは何が何でも手とかは写るからね』と指示して、さらってもらったんです」

Blog. 「PREMIERE プレミア 日本版 October 2001 No.42」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

 

映像特典「プロローグ・オブ・カルテット」にて久石譲インタビューが収録されている。

配役中、唯一楽器奏者である久木田薫(チェロ)は、本編でも実際に自身が演奏している箇所が多い。またこの映画での出会いがきっかけとなり、 『ジブリ・ザ・クラシックス』というジブリ作品カバーCDを発売している。スタジオジブリ映画の主題歌、挿入曲を、チェロの演奏をメインにクラシック風、タンゴ風などにアレンジ。ギター、バンドネオン、ハーモニカなど多種多彩な楽器によるアコースティック・カバー作品である。

本編中盤に登場する金管アンサンブルは「上野の森ブラス」メンバーだと思われる。本編にて演奏していた楽曲は「ハトと少年」(映画『天空の城ラピュタ』より)である。また同楽曲・同アレンジで収録されているのが、彼らの『ブラス ファンタジア I ~宮崎アニメ作品集~』である。原曲の持ち味をそのままに、上質でハイセンスな金管アンサンブルを堪能することができる作品である。

映画エンドクレジットにて流れる「Main Theme」は、サントラ盤とは異なるヴァージョンとなっている。プログラミングされたパーカッション(リズム系)の音および種類が異なっている。聴き比べてみるのもおもしろい。

 

 

 

 

 

久石譲 『カルテット DVD』

キャスト:袴田吉彦/桜井幸子/大森南朋/久木田薫/藤村俊二/三浦友和

監督・音楽:久石譲
脚本:長谷川康夫/久石譲

本編113分
(シーン・チャプター/ミュージック・チャプター)

映像特典25分
・「プロローグ・オブ・カルテット」(メイキング映像)
・劇場用予告編
・ラジオスポット
・キャスト&スタッフ プロフィール

 

Score. 久石譲 「ENCORE -オリジナル・エディション-」 [ピアノ譜]

2002年3月20日 発行

久石譲による完全オリジナル版です。映画音楽で世界的な人気の作曲家久石譲がレコーディングに使用した楽譜をもとに編曲。“オリジナルエディション”ということで、その名の通り、完全なオリジナル楽譜です。全曲、久石譲自身の校訂による奏法やフレージングなども盛り込まれています。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

『ENCORE』は、
ここ数年の自分のベスト・メロディーをセルフカバーした
ピアノソロアルバムです。
完全なピアノソロは、14年ぶりです。
最近は、映画監督を含め、仕事の範囲を広げすぎてきてしまったので、
初心に返る意味でこのアルバムを制作しました。
素朴なメロディーの美しさを引き出させるため、
できるだけ必要の無い音を省き、
似たようなアレンジにならないように心がけました。
自分としてはピアノの良さを存分に引き出せた
スタティックなものに仕上げられたと、満足しています。
皆さんも、楽しんで演奏してください。

久石譲
2002年3月

(楽譜 寄稿より)

 

 

Summer

 

 

かねてより音楽出版業界では、作曲者以外のアレンジ版ばかりが出版されていた。譜面の出版にあたり編曲者によるもの。難易度による複数のアレンジや弾きやすい調性への変更など、ニーズもたしかにあったのだが。これらの背景で、原曲とは違うアレンジおよび違う調により出版されている状態が慢性化していた。そんな当時の編集者が「ホンモノを作りたい!」との熱い思いで久石譲に依頼した結果実現したのがこの「オリジナル・エディション」シリーズである。作曲者による原曲に忠実な譜面化。こういった大きな流れのなか、この方式は定着していく。

 

 

久石譲・ENCORE
PIANO WORKS
ORIGINAL EDITION

[収録曲]
Summer (映画「菊次郎の夏」より)
Hatsukoi (映画「はつ恋」より)
One Summer’s Day (映画「千と千尋の神隠し」より / あの夏へ)
The Sixth Station (映画「千と千尋の神隠し」 / 6番目の駅)
Labyrinth Of Eden (アルバム「地上の楽園」より)
Ballade (映画「Brother」より)
Silencio de Parc Güell (アルバム「I Am」より)
HANA-BI (映画「HANA-BI」より)
Ashitaka And San (映画 「もののけ姫」より)
La Pioggia (映画「時雨の記」より)
Friends (アルバム「Piano Stories  II」より)

協力:株式会社ワンダーシティ
菊倍判/64ページ
定価 1,400円+税
発行:株式会社全音楽譜出版社

 

 

◎音源は久石譲『ENCORE』に収録されています。

久石譲 『ENCORE』