Blog. 久石譲 オルゴールのシンフォニーできらめく冬を

Posted on 2013/11/23

2010年7月、久石譲作曲の映画音楽やCMソングをオルゴールやオルガンで演奏する特別展「久石譲。記憶の扉。~オルゴールが紡ぐノスタルジー~」が神戸市灘区のオルゴールミュージアム「ホール・オブ・ホールズ六甲」で開催されていました。

高さ5メートル、幅8メートルの日本最大級の自動演奏オルガンや、金属の円盤が回転することで音が出る「ディスクオルゴール」を使い、久石譲のCM音楽 / 映画音楽 / ジブリ音楽 が演奏披露されていたようです。

オルゴールの音色が紡ぎだす、情感溢れる久石譲の作品世界を楽むことができたこの特別展ですが、実は公式サイトにてその演奏を今でも聴くことができます。

幾度となく公式サイトYoutubeで聴いたことがありました。夏の催事だけあって、涼しげでいいなーと思って聴いていたのですが、改めてこの季節に聴いてみると、また感じ方も変わっていいなと思ったのでご紹介します。

 

映画「となりのトトロ」より「となりのトトロ」~映画「紅の豚」より「アドリアの海へ」~
映画「千と千尋の神隠し」より「ふたたび」 メドレー

 

サントリー緑茶伊右衛門CM音楽「Oriental Wind」

公式サイトYoutubeより

 

オルゴールらしい響きがステキです。どの曲も原曲とはまた違った印象を与えてくれます。これから冬に向かって寒くなります。クリスマスを演出する街やイルミネーション。そして冬ならではのピンと張った透明感のある空気。寒さと一緒に、こういったきらめいた風景やあたたかいぬくもり。

そんなこれからの季節にもピッタリなオルゴール・シンフォニーです。

 

ほかにも公式サイトでは、
映画「崖の上のポニョ」より「崖の上のポニョ」
映画「あの夏、いちばん静かな海。」より「SILENT LOVE」
映画「菊次郎の夏」より「Summer」~映画「魔女の宅急便」より「海の見える街」
などどれも有名な久石譲作品を貴重なオルゴールやオルガン演奏で楽しめます。

公式サイト〉〉六甲山ポータルサイト ROKKOUSAN.COM
「Sumeer」「Oriental Wind」「Silent Love」など5曲の演奏映像を視聴可能

 

ぜひのぞいてみてください。

寒い季節だからこそ、ワクワクしたいですね、あったまりたいですね。ぬくもりある家のなかで、子供たちと一緒に、恋人と寄り添いながら、そんなあったかい冬を迎えれますように。

 

六甲オルゴールミュージアム

 

Blog. 久石譲 「楽譜紹介ページ」 久石譲監修オリジナル・スコア と 楽譜検索 まとめ

Posted on 2013/11/8

久石譲の楽譜紹介ページを新設しました。

こちら ⇒ 久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 SCORE

久石譲作品はCDもたくさんありますが、同じように楽譜もたくさんあります。さらに楽譜は、難易度 / 演奏楽器 / 演奏形態 / アレンジなどによって多岐にわたります。多くの出版社から発売されているだけでなく、現在は楽譜ダウンロード販売なども充実していて、弾きたい曲を1曲からでも買えるようになりました。

久石譲の音楽を聴いて、「弾いてみたい!」と思う人は少なくないですよね。そしていざ楽譜を探そうとすると、あまりにもたくさんありすぎてどれを選んでいいのやら…と。

当サイトで紹介する楽譜は、久石譲本人の監修による、オリジナル・エディション楽譜です。それぞれの楽譜に、そのオリジナル音源となる参考CD作品も掲載しています。

久石譲の音楽・CDを聴いて、「この曲をこのとおりに同じように弾きたい」「この楽譜がほしい」と思う人は、やはりオリジナル・エディションがおすすめす。原曲と同調、同アレンジとなりますので、CDをお手本として練習もしやすいです。

※下記 注)参照

 

今回楽譜をまとめるにあたって、その種類の多さにびっくりしました。オリジナル楽譜としては現在12冊が購入可能です。その他オリジナル・エディション 久石譲監修のレンタル楽譜は割愛しました。オーケストラ・スコアや吹奏楽など、オフィシャルサイト公式発表ものも多いです。ショット・ミュージックが主に取り扱っていますのでそちらをご参照ください。

こちら ⇒ ショット・ミュージック株式会社 久石譲

 

実は今回楽譜をまとめるにあたって、もっとたくさんオリジナル楽譜があると思っていました。CDの作品枚数にしたら(おそらく200枚以上)、楽譜12冊は少ないなと。

でもよくよく振り返って整理していましたら、基本的にはスタジオジブリ作品をはじめとした映画作品が多いですし、またオリジナル・ソロアルバムも、ピアノ編成のみよりも、オーケストラ作品も多いです。

久石譲監修によるオリジナル・エディションは、サウンドトラック作品ではなくオリジナル・ソロアルバムからほぼ選ばれていますので、今回まとめたような楽譜のラインナップになるのだろうと思います。

またお気に入りの曲がピアノ曲ではない場合などは、いろんな出版社、編曲者から販売されている楽譜を手にとることになると思います。同じようにお気に入りの曲が、演奏したい楽器ではない場合も、いろんな出版社、編曲者から販売されている楽譜を手にとることになると思います。

当サイトでも、新設した楽譜紹介ページだけでなくInformationでも新着楽譜販売情報 / レンタル楽譜開始情報も随時更新しています。

 

 

久石譲 楽譜の探し方 まとめ

 

注)
曲によっては、オリジナル・エディションながらCDと違うアレンジのものも多少あるかもしれません。その詳細は実際に楽譜を手にとったり、レビューなどを参考にしてみてください。

注)
同じようにピアノ譜でも、原曲がピアノのみではない編成の場合もあります。その場合、ピアノパートが再現されている場合と、ピアノ・ソロ用にアレンジしたものとあります。その詳細は実際に楽譜を手にとったり、レビューなどを参考にしてみてください。

 

久石譲 楽譜 score

 

Blog. 久石譲 TV「読響シンフォニックライブ」 風立ちぬ初披露 レビュー

Posted on 2013/11/7

2013年8月28日に行われた「読響シンフォニックライブ」の公開録画(東京芸術劇場)からどれだけこの放送日を楽しみに待っていたか。

 

2013年11月6日 2:29-3:59 日テレ「読響シンフォニックライブ」 90分拡大版

指揮:久石譲
演奏:読売日本交響楽団
朗読:樹木希林

[曲目]
久石譲/オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」 朗読:樹木希林
久石譲/風立ちぬ
ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調 作品92
ハチャトゥリアン/仮面舞踏会よりワルツ(アンコール)

 

 

90分拡大版だけあってたっぷりと堪能できました。

オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」は、映画「となりのトトロ」のストーリーをもとに音楽と朗読で綴るオーケストラ用にアレンジされた作品です。朗読によって物語が進められ、楽器紹介なども盛り込まれたオーケストラの魅力を楽しめます。

オリジナル作品はCD「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」として2002年に発表され、朗読は、映画にてお父さん役の声優もされていた糸井重里さんでした。今回の樹木希林さんのバージョンもまた違う深みと味わい、楽しさがあってよかったです。

クライマックスの主題歌「となりのトトロ」フルオーケストラは、コンサートでもよく演奏されているおなじみの定番曲ですし、そのダイナミックさは圧巻です。また「さんぽ」での楽器紹介や、クイーカやフレクサトーンという珍しい楽器で、ススワタリなどを楽しくかわいらしく表現しているのも魅力的です。

今回25分におよぶこのオーケストラストーリーを聴きながら、あっ!CDと少しオーケストレーションが変化していることに気づきました。ちょうど10年近く前に発表した作品ですが、時を経て、演奏しつづけるなかで、楽曲も変化していってるんだなあ、と感心してしまいました。

CD版もおすすめですので、ぜひ聴いてみてください。

 

そしてそして!映画「風立ちぬ」の公開から、初披露となった「風立ちぬ」です。映画本編でもとても印象的なメインテーマ「旅路」です。「風立ちぬ サウンドトラック」ではこのメインテーマをモチーフにストーリー展開に合わせていろいろなバリエーションによって美しく奏でられています。

今回の初披露は、この「旅路」が音楽として、ひとつの楽曲として完結しています。どうしても映画では短いフレーズとして、そしてモチーフとしてのみ使われますが、このシンフォニックライブでは、5分程度の1曲の楽曲としてまとめられています。

オリジナルでは、アルトバラライカ、マンドリン、バヤンといったロシアの代表的な民族楽器が繊細なこのメロディーを奏でていますが、今回は久石譲本人によるピアノ演奏です。

☆メロディーが久石譲自身によるピアノ演奏バージョン
☆メインテーマ「旅路」がサントラ版のモチーフを紡ぎあわせたような楽曲としての完成版
☆小編成だった劇中音楽オリジナルから、大編成のフルオーケストラアレンジ

まとめると、このくらいの聴きどころ満載な初お披露目だったわけです。1度きりのコンサート演奏として、永久保存版ですね。

映画公開時から幾度となく聴いてきた「風立ちぬ」の音楽ですが、やっぱりいいです。不思議な曲なんですよね。いろんな顔を持っているというか、いろんな側面があるというか。昭和レトロな雰囲気もあり、イタリアの風や匂いもする、そして宮廷音楽のような品格。今回の「風立ちぬ」より「旅路」のオーケストラ演奏を聴いてなお一層そういう印象が強くなりました。

 

他にも、普段あまり触れる機会の少ないクラシック音楽も優雅なひとときでした。

ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調 作品92 は、いろいろなCM音楽や「のだめカンタービレ」でも印象的なとても有名な交響曲です。今回約38分におよぶ全楽章が聴けたのですが、随所に聴いたことあるフレーズも登場し、同じ交響曲のなかのモチーフだったのかと新発見することもたくさんありました。

ハチャトゥリアン/仮面舞踏会よりワルツ ドラマティックな素敵な曲でした。有名な曲なんですかね?また機会を見て、曲のことや作曲者のことも調べてみようと思います。

 

また久石譲インタビューではベートーヴェンの魅力についてこう語っています。

「西洋音楽史の中で最大の作曲家ですよね。あるモチーフを起用しだすと、これだけやりつくして徹底的に使用した上で、それが論理的なだけではないんですよね。すごく感覚的でもありすべての人間の要素を持っているので、どんな指揮者が演奏しようとベートーヴェンはベートーヴェンなんですよね。(第7番は)わかりやすいから一番人気がありますね。でもそういう分かりやすい面があるからすごく流れやすいんですよね。なので実は細かく書いてあるんですけれども、強弱・堅い音柔らかい音・音の重い軽い…そういうのをかなり徹底しないと意外に立体的に仕上がらない難しい曲だと思います。」

 

と、90分を大満喫した至福の時間でした。次はやはり生でコンサート会場で体感したくなりますね。もし今回のTV番組を見逃した方は、11月16日にもBS日テレにて放送予定ですので、そちらをチェックしてみてください。

8月28日の公開録画での演奏プログラムは
こちら ⇒ 読響シンフォニックライブ 公開録画 (東京芸術劇場)

公式サイト>>読響シンフォニックライブ

 

読響シンフォニックライブ

 

Blog. 宮崎駿監督引退発表は時代に対する一石

Posted on 2013/11/06

スタジオジブリ 宮崎駿監督の突然の引退発表と引退会見。それから早2ヶ月が経とうとしています。当時もこのビッグニュースに対してはいろいろと思うところがありました。「なんで もったいない まだやってほしい お疲れさまでした ありがとう……」いろんな思いがいちファンとして交錯していました。そして時間が経ちまたそのことをふと考えたりしていると、あの決断はすごいことだったのかもしれない、と思うようになってきました。

引退会見で記者から「なんで引退会見をするという経緯になったのか?」という質問に、「引退会見なんてそんな大々的にするつもりはなかった。自分はジブリの社員たちに引退を伝えたかっただけ。」だと。

確かにそのとおりです。今まで一緒に働いてきたジブリの仲間たちにまずは宣言をする。するとそこで終わることはなく、情報は外部に出てしまい、憶測だけが飛び交う。そうなるならいっそ引退会見という場を設けて自分の言葉で説明するほうがいい、という流れになるのはしごく普通です。

それなら、ジブリスタッフにも引退を宣言しなければいい。濁したままにすることもできたはず。

それもまた違うんだろうなと思います。そのままの延長線上で在籍し続けるということは、周りにも変な期待が滞留し続けます。いつかまた長編つくりだすのかな、次はどんな作品やるんだろう、という身内でもその思いが常に念頭にあってしまいます。

引退を身内に宣言するということは、一区切りであり、今までジブリを引っ張ってきた人が事実上身をひく、つまりジブリスタッフにも危機感を煽るという効果をもたらします。そうすることで意識的にも無意識的にもあまりにも大きな存在である「宮崎駿」がいなくなる、新しい血が入り、新しい活力がみなぎるきっかけになる。そう思われたんじゃないかと思います。

そしてあの引退会見を開くという流れに。

もうひとつ思うのは。

あえて「引退宣言」をすることは芸術家としても賭けであり冒険だと思うのです。芸術家、クリエーター、アニメーターは、一生涯現役であり、死ぬ間際まで芸術家なのです。だからこそあえて「引退宣言」を公の場ですることは、自分の一部を切り取られたような、なにか失ってしまうような思いだったんじゃないかとも思います。まだ人生が終わっていない今の時点で、自分でその烙印を押してしまうような。

だからこそ、これからどういうクリエイトな活動をされようが、もし仮に長編映画をつくるとなったにしても、誰にも避難される所以はないはずです。だって芸術家は一生芸術家です。しいて言えば、今回の引退宣言で、宮崎駿監督は、スタジオジブリの宮崎駿から、一人の人間宮崎駿になったんじゃないかと。シンプルに、まっさらに、生まれたてのように。

エンターテインメント、大衆文化、興行成績、ジブリの発展……すべてを支え先頭で走り続けた監督宮崎駿から、真っ白から純粋無垢に創作活動に向き合える一人の芸術家に。

そう思うと、「引退宣言」をしないといけなかったのは、今の時代背景であり、そうなってしまった宿命を背負いながらも、自らの言葉で伝えた引退会見、時代に一石を投じた出来事だったように、振り返って思います。

これからどんな創作活動をされるか楽しみであり期待していますが、それは世間の、ファンの思いであり、勝手にこちらが思うこと。だからこれから、どんなことをされようと、どんな活動をされようと、ひとつの宮崎駿には区切りをつけたわけですから、受け手側も今までの延長線上で捉えずに批評せずに、新しいクリエーター宮崎駿さんとして受け入れていくことができる環境になることが一番いいんじゃないかなと思います。

長編であれ、短編であれ、また違った創作活動であれ、次に私たちが触れることのできる宮崎駿作品は、きっと新しい感動を与えてくれること、笑顔や温かいぬくもりをくれること、生きる今とこれからの未来に希望の光を射してくれることは、間違いないですから。

こういう思いもまた負荷になるのかもしれませんね。すいません。

芸術と大衆文化の境界線がなくなってしまっているようなこの時代、いち芸術家に時代のすべてを背負わせることは酷だと思います。宮崎駿監督の引退会見で印象的だった言葉「私は自由です」。そうですよね。やるやらないも自由、どういうものをやるかも自由。そして受け手の解釈に一人一人の自由があるのと同じように、本来つくりだす芸術家にも表現の自由はもちろんあるわけです。その対等さを忘れてしまっているように思ってしまいます。

いつの時代も芸術家は、自分の表現したいものと時代との接点を探りながら、ひとつの作品として完成させて表現しているわけです。それに対して決して時代の拷問を受けるべきではない。

同じ時代に生きているからこそ、同じ時代の芸術家と一般社会、作品をとおしてつながり、感動し、共鳴できる喜びはかけがえのないもの。そういったシンプルなことに純粋な心を持ち感動をわかち合う。これが芸術と大衆文化を育てていける時代への布石になるんじゃないかと思います。

 

 

Blog. 映画「もののけ姫」 アシタカ旅立ちの音楽 制作秘話

Posted on 2013/11/3

1997年公開 スタジオジブリ作品 映画「もののけ姫」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

構想に16年、制作に3年をかけ、自然と文明の衝突というテーマに挑んだ作品で、公開当時、映画国内歴代興行成績の記録を塗り替え1位を記録した作品です。あれから16年経った今でも、歴代5位です。

この「もののけ姫」という作品に対して、スタジオジブリ鈴木プロデューサーはこう振り返っています。

「自分のためじゃなく誰かのために戦う。子どものころから、主人公はそういうものだと思っていた。ナウシカは風の谷の500人のために戦った。だから、納得がいった。観客として、主人公に共感するのは、その一点だった。」

「しかし、「もののけ姫」の主人公、アシタカは違う。アシタカは、誰かのためじゃなく、自分のために戦った。腕に痣あざの出来たアシタカは、体良く村を追い出される。痣あざは村人たちにとって忌まわしいものだった。」

「この時期を境に、その後のヒーローたちは、自分のための戦いを繰り広げている。いま振り返ると分かることがある。「もののけ姫」のころに、大きな時代の転換点があったのだと。」

 

なるほどなあと思います。ヒーロー像が時代とともに変化していると。そしてそんな『大きな時代の転換点』となったのが、映画「もののけ姫」であったと。

実は音楽についても同じようなことが言えるかもしれません。「風の谷のナウシカ」から一連の宮崎アニメの音楽を担当してきた久石譲ですが、「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「紅の豚」を経て、この「もののけ姫」の音楽は、作曲家としてのひとつの転換期だったという人もいるからです。

大きく作風が変わったということではないでしょうが、それほどまでに宮崎駿監督の構想から映画完成までのエネルギーに刺激され、音楽的にもそんな監督の期待と作品の世界観に応えるべく、新しい表現方法が開花した、そういう作品なのかもしれません。まさに作品トータルとして、発表された時代として、『大きな転換点』だったのかもしれませんね。

 

そして、当時を振り返る、「もののけ姫」の音楽に、こんな秘話があります。

本編前半でアシタカがタタリ神の痣を負い、村を旅立つことになるシーン。その旅立ちの音楽は、当然、アシタカの複雑な心境を表現しなければいけない。宮崎駿監督は久石譲に、そう依頼したそうです。

それに対して鈴木プロデューサーは悩んだそうです。

「それでいいのだろうか。たとえそうだったとしても、ぼくは、主人公の旅立ちはいつだって、勇壮さが必要だと思った。」

そんな鈴木プロデューサーの悩みを打ち明けると、久石譲は、二曲を用意したそうです。

鈴木プロデューサーはこの時の情景を、

「そしてふたつの曲が出来あがった。いずれ劣らぬ名曲だった。さて、どっちがいいだろうか。どちらにするか決めるとき、久石譲さんがぼくに目で合図を送った。宮さんは、迷うことなく勇壮さを選んだ。」

と振り返っています。

あのアシタカの旅立ちのシーンはとても印象的に記憶に残っています。まさかこんなエピソードがあろうとは。確かに、あのシーンには『覚悟を決めた者、決意を秘めた者の強い意志』を感じますし、旅が始まる勇壮さだけでなく、『運命を背負って生きていく覚悟を決めた者』の重みも感じます。

こんな話をしていると、また映画が観たくなってしまいますね。映画「もののけ姫」は、12月ついにブルーレイ化が決定しました。

当時の空気をそのままに、そしてさらに進化した映像美と高音響が今から楽しみです。
こちら ⇒ 2013/12/04 ジブリがいっぱいCOLLECTION 「もののけ姫」 Blu-ray DVD 発売決定

 

もののけ姫 時代の転換点

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Blog. 鈴木敏夫 「ジブリの哲学 -変わるものと変わらないもの-」 読書

Posted on 2013/11/1

スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫さんの著書。過去にも数冊出してますが、わりと新しい本なのかな。スタジオジブリの過去から今に至るエピソードも満載。宮崎駿監督とのやり取りや作品ごとの製作過程の話、プロデューサーとしての話や仕事に関してももちろん。

それにしても、相当な映画や本を読んでいるんだなあと。しかも、その考察がすごい。思ってもみないような解釈、それを迷いなく言い切るんですね。なんでこういう発想ができるんだろうと思って読むと面白い。この人の考え方のバックボーンが知りたくなる、というか。

そしたら、このエッセイ集にもたくさんの著名な文化人が登場します。異文化・異世代の人たちとの交流によって培われてきたものなんだなあと。

もともとは、ジブリ作品が好き → 宮崎駿 → 鈴木敏夫プロデューサーと紐解いているのですが、またそこから“自分のなかのひっかかりや興味”が広がるんですね。

ちょうどいろんな角度から本を読んでいるせいか、時代小説しかり、とある専門書しかり、『日本という国のかたち 時代性 流行 文化』そういうのを過去の偉人たちが、どう時代をつくり、どう時代を考えていたか、そして未来を、というのが気になってきたんですね。

ある種、ループしてると思うんですよ、普遍性・大衆性・社会性 etc いろいろなものが。まさに 【すでに起こった未来】です。違和感のある言葉ですよね、未来なのに過去形の表現。これはP.F.ドラッカーの言葉と著書です。ちょっと話がそれるのでこの辺はまた別の機会に。

何を見て、何を考え、どう生きていくか。時代をどう捉えつづけるか、過去も、現在も、未来も。ちょっと大それた雲をつかむような壮大なテーマのように聞こえますけど、そこは小さく自分なりに、です。でもそういうのって自分の血肉になって活きてくると思うんですよね。歳でしょうか?!

そういう本との出会いや広げ方もおもしろいと思う今日この頃です。本著でも、時代性が反映される様々な芸術界の方たちとの話もあり。映画にとどまらず、絵画、音楽、文学、放送、メディア、出版、野球などなど。

そんな中でも強烈に影響を受けたと何回もエピソードを交え語っていた 堀田善衛さん 加藤周一さん この方たちのそれぞれの小説や作品を、近いいつか読んでみたいなと思っています。名前は聞いたことあるかなあくらいの無知なので、それだけでもこの本を読んだ収穫でしたね。

自分が影響を受けやすい人が、「強烈な影響を受けた」とお墨付きをしているわけですから、そこから広がる本も、おもしろくないわけがないだろうと。そんな本の読み方してたら、「読みたい本がない」なんて言う日が来るのかな!?とか思っちゃいますね。苦笑楽しいブックサーフィン・アナログサーフィンを続けていこうと思います。

 

ジブリの哲学 鈴木敏夫

 

Blog. 文春ジブリ文庫「ジブリの教科書3 となりのトトロ」 読書

ジブリの教科書 3 となりのトトロ

Posted on 2013/10/30

2013年4月から創刊された文春ジブリ文庫。

第1弾『風の谷のナウシカ』 第2弾『天空の城ラピュタ』 につづき第3弾は『となりのトトロ』。1988年公開映画でスタジオジブリ作品の中でも最も人気のある作品のひとつ。今回も前2作品同様、あさのあつこ 中川李枝子 川上弘美など豪華執筆陣が作品の背景を解き明かしています。

背景美術を担当した男鹿和雄の世界、サツキとメイの家など、カラーページも満載です。当時の制作現場や秘蔵裏話などが編集されています。監督・プロデューサー・作画・声優・音楽・美術など、この作品に携わったプロフェッショナルなお仕事の現場が垣間見れます。既発の関連書籍からの再編集という趣きももちろんありますが、トトロの世界だけにフォーカスして広く深く読み解いています。

印象的だったのは、ラピュタのそれでも触れましたが、宮崎駿監督の制作に入る段階での企画書一文。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
中編アニメーション映画『となりのトトロ』が目指すものは、幸せな心温まる映画です。
楽しい、清々した心で家路をたどれる映画。
恋人達はいとおしさを募らせ、親達はしみじみと子供時代を想い出し、
子供達はトトロに会いたくて、神社の裏の探検や樹のぼりを始める、
そんな映画をつくりたいのです。

つい最近まで『日本が世界に誇れるものは?』との問いに、
大人も子どもも『自然と四季の美しさ』と答えていたのに、今は誰も口にしなくなりました。
(中略)
この国はそんなにみすぼらしく、夢のない所になってしまったのでしょうか。
国際時代にあって、もっともナショナルなものこそインターナショナルのものになり得ると知りながら、
なぜ日本を舞台にして楽しい素敵な映画をつくろうとしないのか。
(中略)
忘れていたもの 気づかなかったもの なくしてしまったと思い込んでいたもの
でも、それは今もあるのだと信じて、『となりのトトロ』を提案します。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

鮮明にトトロの世界を表現している一文だと思います。楽しむ映画ではもちろんあるけれど、同時に深いなあと。今でも色褪せない、そして時代を越えて愛されつづけるだろう映画ですが、この宮崎駿監督の視点や考え方も色褪せない、普遍性がありますよね。

今の社会でも言えること、この発言が今だったとしても、なんの疑いもしないというか。『国際時代にあって、もっともナショナルなものこそインターナショナル~』この言葉は強烈ですね。これを1986年に書き記しているんですから、その重みと凄みを感じます。

その他、昭和30年代の日本食卓の視点から当時の社会背景を、はたまた「森のヌシ 森の精霊 etc」というトトロの視点から、古来の日本の神々の世界を、そしてその神々が、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』ではどう表現されたかなど、宗教哲学者がかなり濃厚に掘り下げたりしています。

“ひとつの日本” “自分が知らない日本” をいろんな角度から探求できるかもしれません。

 

 

ジブリの教科書 3 となりのトトロ

本著の表紙でもあり、公開当時の映画宣伝ポスターでもあったこの1枚の画。こんなシーンも劇中にありましたよね。

でも…何かが違う…

そう、ここに描かれているのは、さつきでもメイでもない、ひとりの女の子。有名な秘話ですが、なぜこの画があり、映画ポスターにまでそのまま使われたのか、その辺りもももちろん紹介されています。

長くなってしまうのでここでは割愛します。

これからジブリの教科書は『火垂るの墓』『魔女の宅急便』『もののけ姫』『ハウルの動く城』など、スタジオジブリ作品公開の順番ごとに、発刊が予定されています。なんと、現時点で、『崖の上のポニョ』が発刊されるのは2016年。(予定)

長期的に継続した楽しみのひとつとなりそうです。

 

Blog. 文春ジブリ文庫「ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ」 読書

Posted.on 2013/10/27

1984年公開 スタジオジブリ作品 宮崎駿監督 『風の谷のナウシカ』

この2013年4月から文春ジブリ文庫なるものが創刊されて「ジブリの教科書」シリーズが毎月刊行されます。創刊の第1弾はもちろん『風の谷のナウシカ』。当時の作成現場や秘蔵裏話などが編集されています。

宮崎駿監督はもちろん高畑勲さんや作画・音楽・プロデューサーなどこの作品に携わったいろいろな人の当時の、また数年経過しての回想インタビューや、この創刊に寄せて、立花隆、内田樹、椎名誠など著名執筆陣があらゆる角度からこの作品を読み解いています。

当事者たちの作成秘話は、それぞれの他のいろんな本でもすでに書かれているエピソードも多く『風の谷のナウシカ』という作品に関わる話を再編集したという感じもありますが。知ってたこと知らなかったこともそれぞれ多く、すらすら楽しめました。

ウクライナ南部のミリミア半島に、シュワージュという場所があって、腐海の世界の参考にしたこと。ちなみに、シュワージュとは「腐った海」という意味らしい。まさに。

ナウシカがギリシア神話から名前を拝借してるのは有名ですが、「風使い」という言葉が、『ゲド戦記』(原作)の「風の司」を参考にしていることなど。知れば知るほど深い世界です。

映画版とコミック版の違いなんかも解説されていて、改めてコミック版が見たくなる。。

毎月刊行ということで、5月は『天空の城ラピュタ』、6月は『となりのトトロ』が、それぞれ同様のジブリ教科書として刊行されています。もちろん久石譲に音楽を依頼することになった経緯やその音楽制作秘話まで。その当時の風が吹いてきます。

スタジオジブリ 宮崎監督監督との全作品音楽秘話。久石譲のインタビューをまとめたものもぜひご覧ください。

こちら ⇒ 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る 『久石譲 in 武道館』より

 

ジブリの教科書 風の谷のナウシカ

 

Blog. 「ふたたび」「アシタカとサン」歌詞 久石譲 in 武道館 より

久石譲 in 武道館

Posted on 2013/10/21

2008年に開催された「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」この記念すべき一大コンサートは久石譲が手がけた宮崎駿監督全9作品を一挙に演奏することも初の試みであり、その演奏者規模も1200名と歴史的、さらには名作たちの映像スクリーン付きという贅沢なひとときでした。

最近、このDVDや当時会場で買ったパンフレットを見返す日々です。「風の谷のナウシカ」から「崖の上のポニョ」まで、宮崎駿監督が常に新しいことにチャレンジ、新しい世界に挑むと同じように、久石譲の音楽も、どんどん進化していった歴史でもあると思っています。

そしてそのチャレンジや新しいものを生み出すという試みは、こういったコンサート企画でも随所に反映され表現されています。冒頭の説明だけでなく、まだまだたくさんあります。

今までほとんど久石譲のコンサートでは演奏されてこなかった「魔女の宅急便」や、その他おなじみの曲も過去のコンサートの再演というよりも、その演奏形態やアレンジ、すべてが「現在進行中」、今の最高傑作をつくるという意気込みや姿勢が感じられるとても貴重な体験でした。

それらの中に、新しいvocal versionでお披露目された名曲たちがあります。ひとつは「千と千尋の神隠し」でクライマックスへ印象的に流れていた「ふたたび」。ひとつは「もののけ姫」で再生へのラストを感動的に演出していた「アシタカとサン」。

「久石譲 in 武道館」では、このどちらの作品にも大切な存在であったラストを飾る2曲に、歌詞をつけて歌うという新しい試みがされ、とても感動的でした。今となっては「久石譲 in 武道館」のDVD/ブルーレイでしか堪能できない貴重な音源ですが、そのコンサートパンフレットに、楽譜と歌詞が付いていたのも貴重な宝物です。

ほかにも、この「久石譲 in 武道館」のことはたくさん触れていますので、興味のある方はぜひそちらものぞいていだたけるとうれしいです。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る 『久石譲 in 武道館』より
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『The Best of Cinema Music』
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』
こちら ⇒ Blog. スタジオジブリ 宮崎駿監督×久石譲 ディスコグラフィー紹介 まとめ

 

 

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ふたたび vocal version 「千と千尋の神隠し」より
作詞:鈴木麻実子 作曲・編曲:久石譲

ずっとずっと昔に
触れたことのある あのぬくもり

暗い道に迷い込み
一人ぼっちで 泣いてた私

信じて進むと決めたときに
扉が開いた その先に光が
私を照らした

青空に羽ばたこう
つないだその手を 離さないで

あなたが照らしてくれた道を
今一人歩こう まっすぐ前を向いて
立ち止まらず

忘れないでいたなら
いつかまた会える そう信じてる

導いてくれたのは
いつの日もあなた 私の光
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

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アシタカとサン vocal version 「もののけ姫」より
作詞:麻衣 作曲・編曲:久石譲

はるか彼方に ねむる人よ
瞳とじればひろがる あの日のやさしい声

永遠の光が 土にかえるように
大地の ゆるしが とどくまで

しんじて ともに生きること
そして 生まれるつよさ

みあげて 遠くはなれても
心をひとつにむすぶ愛 希望のそら
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

どちらもその作品世界から飛び立ったようなきれいな歌詞です。ちなみにそれぞれ今回のために作詞を担当されたのは、鈴木麻実子さん(鈴木敏夫プロデューサーの娘さん)麻衣さん(久石譲さんの娘さんであり歌手)です。

 

 

久石譲 in 武道館

 

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Blog. 実写版 映画「めぞん一刻」と久石譲 1980年代の日本映画音楽

めぞん一刻 DVD

Posted on 2013/10/2

1986年公開 映画「めぞん一刻」(実写版)
監督:澤井信一郎 音楽:久石譲 出演:石原真理子 石黒賢 他

原作:高橋留美子の人気名作コミック「めぞん一刻」の実写版です。作品的にもとても古く観たことがなかったのですが、2005年にDVD化されていたものを最近発見いたしました。もちろんお目当ては音楽を担当している久石譲です。なにせこの作品は映画でしかその音楽を知ることができない、サウンドトラックが現在入手不可能な作品だからです。

登場人物たちは、原作に結構忠実なキャスティングになってしましたし、なかなか古い日本映画を観る機会もないので、それはそれで楽しめました。その時代的な古さやスクリーンに映る当時のいろんな風景など。エンディングはギルバート・オサリバンの名曲「ハロー・アゲイン」が使用されていて青春映画というか、あのめぞん一刻のほのぼのとした世界観にマッチしていました。

そして劇中音楽はというと、当時の作風ですけど、シンセサイザー満載な不思議な雰囲気のメインテーマでした。ちょっと予想していた、メロディアスなファミリー映画的なサウンドとは真逆だったので意表を突かれた感じでした。

ちょうどその時代の映画未発表曲集を集めたアルバム「B+1」に収録されている作品たちに近い音楽です。できればこのなかに一緒にコンパイルしてほしかったくらい、とても前衛的な今ではあまり聴くことのできないおもしろい作風です。

いろいろこの映画「めぞん一刻」を鑑賞しながら思うところはあったのですが。まずは、オリジナル・サウンドトラックを発売するまでの曲数がないこと。そして、劇中音楽がものすごく音量が小さく扱われていること。

これは日本映画の、特に往年の作品には顕著に見られる傾向でしょうか。ハリウッド映画の音がバンバン鳴りっぱなしとは違い、音楽が挿入されていないシーンがとても多いですね。それが日本映画の「間」を楽しむいいところでもあります。だから当時の作品は劇中音楽の曲数が少ない。

音量が小さい。本当にBGMとして鳴ってるか鳴っていないかくらい。効果音的扱いというか、そのシーンに合わせた何十秒程度の音楽。そしてシーン優先で切り替わると、音楽も流れに関係なく突然プツっと切れる。

このあたりが、当時の映画音楽としての位置づけを象徴しているように思います。音楽の少なさ、音量の小ささ、効果音的な付属BGMとしての扱い。そう思うと、だいぶん映画音楽もかわりましたよね。その位置づけも価値も見直されてきた歴史のような気がします。

もちろんそれに一役も二役も貢献してきたのは、久石譲の質の高い映画音楽を作りつづけてきたこともあると思います。ほかの映画音楽家さんたちもそうです。

そして、プロデューサーや監督の意識も変わっていったことも大きいと思います。映像やストーリーさえよければ音楽はあと付け、雰囲気でよい、とされた時代から、映像と音楽の融合によって、ひとつの作品が化学反応を起こし相乗効果をもたらす。

そう思うと、当初から音楽の存在をすごく大切にしていたジブリ作品はすごいですね。もちろんアニメーション映画なので、実写版よりは音楽が多くなるのはありますが、めぞん一刻(1986年)、風の谷のナウシカ(1984年)、天空の城ラピュタ(1986年)と発表された年代を見る一目瞭然です。今でも演奏されつづけ愛されつづける音楽が、その当時に誕生しているわけですから。

映画「めぞん一刻」の鑑賞エピソードを軽く書こうと思ったら、えらく映画音楽の時代考察になってしまいました。

映画「めぞん一刻」の音楽が気になる方は、ぜひDVD鑑賞を、そして当時の久石譲映画音楽を紐解きたい方は、「B+1 映画音楽集」にて、貴重な音源たちを聴いてみてください。

 

めぞん一刻 DVD