Blog. 「クラシック プレミアム 6 ~モーツァルト2~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/06/12

「クラシックプレミアム」 第6巻は、モーツァルト2です。今回取り上げられているモーツァルト作品は3大交響曲。モーツァルトや、モーツァルト音楽を生涯指揮したカラヤンの歴史もいつもながら内容濃く解説されています。

【収録曲】
モーツァルト
交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
交響曲 第40番 ト短調 K.550
交響曲 第41番 ハ長調 K.551 《ジュピター》
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1970年

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第6回は、
作曲家兼指揮者とプロの指揮者の違いとは

折しもこの執筆およびコラム掲載の前に、久石譲は、今年2014年1月台湾にてコンサートを行っています。その自身のことや体験にもふれながら今号のお題について述べられています。とても貴重な、リアルタイムな久石譲を知ることができますので、一部抜粋してご紹介します。

 

「自作の《フィフス・ディメンション》は、ベートーヴェンの《運命》のリズム動機(有名なダダダダー)と音程を音列化し、ミニマル楽曲として作ろうとしたのだが、作曲していた最中に東日本大震災がおこり、それが影響したのか激しい不協和音とエモーショナルなリズムに満ちていて演奏がとても難しい。今回はさらに手を加えてより完成度を上げたのだが、難易度も計り知れないほど上がった。指揮していた僕が「この作曲家だけはやりたくない!」と何度も思った、本当に。」

「それで(リハーサル)2日目に臨んだのだが、不協和音にシンコペーション、テンポチェンジと変拍子の中で飛び交うパッセージに悪戦苦闘していた僕はあまりに余裕がなかった。指示を待つ団員の表情が彼ら自身に対する不安(リハ1日目)から、僕に対する不安に変わっていくようにすら感じた。さすがに一流のオーケストラの団員、最初は戸惑っていたが、僕の期待に応えるべく、パート譜越しに楽曲イメージを的確に摑んでいって、まだ如何に振るかで汲々としている僕を追い越していってしまったのだ。作曲家としてはありがたいが、指揮者としてはちょっと情けない。一般的に作曲家兼指揮者は、オーケストラを振るという経験値の少なさが、あるいはプロとしての技術力の不足が最大の問題になる。逆にいうと技術というものは経験の裏打ちによってしか獲得できない。実践からしかその先の技術は学べないのだ。」

 

 

コラムの中盤を抜粋していますので、前後の文脈や構成がわかりにくいかもしれません。(そこは本マガジンを実際にご覧ください)

コラムの結びでは、経験豊富で同じ作品を度々演奏するプロの指揮者、作品の特徴(優れた点や脆弱な点)を知ったうえで、難しい箇所を稽古するという、限られた時間の中で何を優先するか的確に見積もることができる、そんなプロの指揮者の優位性に対して、作曲家兼指揮者の優位性はないのか?

というところで結ばれていますので、次号以降の展開も楽しみです。

 

 

さて、今コラムで触れられている台湾コンサートは、2014年初のコンサート開催にして、海外コンサートだったわけですが、そのプログラム詳細やレポート内容は、すでに書いていますので興味のある方はどうぞ。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 2013-2014 年末年始コンサートレポート (オフィシャルブログより)

「5th dimension(フィフス・ディメンション)」という楽曲は、久石譲が藤澤守(本名)名義で発表した現代音楽作品で、いわゆる映画/CMなどのエンターテインメント音楽の作曲家 久石譲とは、一線を画して発表した作品です。

2011年に発売された「JOE CLASSICS 4」に収録されています。それから3年後、上にあるようにオリジナル版を改訂したものが、台湾コンサートで改訂初演となったわけです。なかなか久石譲のコンサートプログラムにあがる機会は少ない楽曲かもしれませんが、ぜひ改訂された「フィフス・ディメンション」をいつか実際に聴いてみたいです。台湾コンサートは「ベートーヴェン」プログラムだったため、演奏リストとしてラインナップされたのだと思います。

 

それにしてもリハーサル風景とはいえ、鬼気迫る作曲家・指揮者とオーケストラ楽団との臨場感を、自ら語ったレアな掲載コラムだった今号です。これからもクラシック音楽・指揮者・作曲家という切り口だけでなく、今回のような「今の久石譲」が垣間見れる瞬間があるかもしれません。

とても楽しみです。

 

クラシックプレミアム 6 モーツァルト2

 

Blog. 「クラシック プレミアム 5 ~ヴィヴァルディ / ヘンデル~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/06/06

「クラシックプレミアム」 第5巻は、バロック音楽の代表であるヴィヴァルディとヘンデルです。

中学校の音楽授業を思い出します。音楽室で大音量でクラシック音楽を鑑賞する時間が当時はありました。そして聴いたあとに感想文なんかを書いていたような。

今マガジンを見ていて知ったのですが、ヴィヴァルディの『四季』は、これまでに世界でもっとも売れたクラシック・レコード(CD含む)だそうです。そのくらい誰でも一度は聴いたことのある音楽ということですね。

そしてその名演として名高い「イ・ムジチ合奏団」です。もちろんCDマガジンにも彼らの名演が収められているのですが、これを聴くとバロック音楽の印象が変わる!というくらい、澄んだ気品のある、まさに18世紀にタイムスリップしたような響きでした。「イ・ムジチ合奏団」の名前は『I MUSICI』(音楽家たち)という意味のイタリア語だそうです。まさに!です。

 

【収録曲】
ヴィヴァルディ
協奏曲集 《四季》 作品8
第1番 ホ長調 《春》 / 第2番 ト短調 《夏》 / 第3番 ヘ長調 《秋》 / 第4番 ヘ短調 《冬》
ピーナ・カルミレッリ(ヴァイオリン)
イ・ムジチ合奏団
録音/1982年

ヘンデル
《水上の音楽》より
第1組曲 ヘ長調 第1番~第9番
第2組曲 ニ長調 第2番 アラ・ホーン・パイプ
トレヴァー・ピノック 指揮、チェンバロ
イングリッシュ・コンサート
録音/1983年

 

マガジン後半の岡田暁生さんによる「キーワードでたどる西洋古典音楽史」も毎号とてもおもしろいです。クラシック音楽の歴史をまさに紐解いていて興味がわいてきます。そんななかでもおもしろかった内容が、交響曲に関するものです。

 

「ウィーン古典派の3人の巨匠。ハイドンの12の交響曲、モーツァルトの3つの交響曲、そして何よりベートーヴェンの9つの交響曲。これらの金字塔はのちの作曲家にとって絶対の規範であり続けた。「大作曲家」と呼ばれるためには、いくらいいピアノ曲や室内楽を書いてもダメ、ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンの傑作に匹敵するような交響曲を書くことことが、その絶対条件となったのである。」

「19世紀の作曲家にとって、よほどの覚悟がない限り、下手に交響曲に「手を出す」わけにはいかなかった。交響曲に関してメンデルスゾーンは改稿に改稿を重ねるのが常で、最後まで出版を許可しない作品もあった。いつまでたっても出来に満足せず、自作の交響曲を改稿し続けたのは、ブルックナーも同じである。すでにピアノ曲や歌曲の傑作の数々を生み出していたにもかかわらず、シューマンが最初の交響曲を発表したのは31歳になってからであった。交響曲を公にすることに激しいプレッシャーを感じていたのはブラームスも同じで、最初の交響曲の作曲に21年もかけ、43歳になってようやく初演にこぎつけた。」

「交響曲にチャレンジしようとする作曲家にとってとりわけ重圧となったのが、ベートーヴェンの9つの交響曲である。作品の内容面だけではない。9つという数字もまた、19世紀の作曲家にとって呪縛となった。シューマンとブラームスの交響曲は4つ、チャイコフスキーは6つ、そしてドヴォルザークとブルックナーは9つどまり。誰も「第10交響曲」を書くことはできなかったのだ。」

「マーラーはこれに怖れをなして、つまり第9交響曲を書いてしまうと死んでしまうのではないかと半ば信じ、本来なら9つ目の交響曲になるはずだった作品に「交響曲」というタイトルを与えず、代わりにそれを《大地の歌》と名づけた。しかし結局のところ彼はさらにもうひとつ交響曲を書いて、これが「交響曲第9番」となった。しかしその次、10番目の交響曲の作曲は未完のまま、マーラーは世を去ることになった。迷信は本当になったのである。」

 

3大巨匠の交響曲の壁、ベートーヴェンの「9つの交響曲」の呪縛、などなど、まさにトリビア的な内容で、音楽だけじゃなく知識も広がってとてもおもしろいです。

音楽は純粋にそれを聴いて感動するものだとも思うのですが、それもひとつ、そしてクラシック音楽のようなものはまさに「古典」なわけですから、こういった歴史や背景が学べるのもこの「クラシックプレミアム」のいいところです。

そういういろいろな角度からクラシック音楽を紐解きながら、毎号CDを聴いていると、集められた名盤からの名演もさることながら、また違う新しい印象をその楽曲から受けます。

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第5回は、作曲家と指揮者の関係

19世紀後半の作曲家兼指揮者として活躍していた、ワーグナーやマーラーなどが、モーツァルトやベートーヴェンの楽曲を指揮するにあたり、オリジナル版に「楽譜の書き換えや加筆」を行っていたという背景などが記されています。

具体的には、音を加えたり、ニュアンスを変更したり、作曲家の指示したテンポとはかけ離れた速さで演奏したりと、そういう時代もあったのですね。オリジナルが尊重されている現代からは考えられない時代が。

そして印象に残った箇所を一部抜粋してご紹介します。

 

「マーラーも激務の指揮活動を毎年夏の数ヶ月だけ休み、南オーストリアのマイアーニヒ山荘でシンフォニーを書いていた。作曲家としては《ウエスト・サイド・ストーリー》などで知られ、指揮者としてもカラヤンと双璧といわれたバーンスタインも「例えばマーラーを振るときの3ヶ月前からは一切の作曲活動は困難だ。作曲家の書いたスコアに没頭するとき、自分の音は頭に浮かばない」と言っている。それでは作曲家兼指揮者と通常のオーケストラ指揮者は何が違うのか?枚数が尽きたので次号に書きたい。」

次号以降も楽しみです。

 

クラシックプレミアム 5 ヴィヴァルディ ヘンデル

 

Blog. 久石譲のヨーロッパの風景の音楽

Posted on 2014/06/04

今年に入ってガーデニング・デビューしました。

気に入った花のことを調べていたら、それが広くヨーロッパでよく鑑賞されていることを知りました。風景としてはこういったものを連想します。

 

ゼラニウム ヨーロッパ 窓辺

 

たしかにヨーロッパって、街の通りにも、家の窓辺にも、本当にお花が多いです。これは景観もさることながら、その土地の歴史や、観光業としても、いろいろな意味があるようです。

そして年間をとおして、よく咲いている、この花たちは、ゼラニウムやペチュニアといった品種です。多年草や宿年草といって、冬場以外の春~秋まで、咲いている期間が長く、一年間に何回も咲く、そして次の年もまた元気に大きくなって咲く、そんな花の種類です。ガーデニングをはじめてから結構勉強しました。

 

まだお披露目できるお花たちはないのですが、そんなこともあり、今ベランダや窓辺には少しずつ花が増えています。日本にいながら、ちょっとヨーロッパな雰囲気を醸し出せてて、気に入っています。

そして、宮崎駿監督のジブリ映画には、架空やいろいろな街の寄せ集め感こそあれ、ヨーロッパが舞台となっている作品がたくさんあります。そのつながりで、ヨーロッパの風景を感じる久石譲の楽曲を掘り出して聴いています。

 

映画の風景ともリンクするといえば、やはりこの3作品でしょうか。

『魔女の宅急便』 『紅の豚』 『ハウルの動く城』

これらの作品関連CDを春くらいからよく聴いています。

 

『魔女の宅急便』
一般的にはもちろんサウンドトラック盤が心地よい音楽ですが、イメージアルバムも、ハイテックシリーズも、サウンドトラックの各テーマが映画からはなれた音楽的世界観で、独立して完成された1曲として表現されているのでBGMにはぴったりです。

ワルツのテーマやヨーロッパの雰囲気のする楽器たちの使用など、そのあたりは、CD解説にて詳細あります。「晴れたら日に…」「旅立ち」「海が見える街」などなど序盤からヨーロッパです。

久石譲 『魔女の宅急便 サントラ音楽集』

こちら ⇒ Disc. 久石譲 『魔女の宅急便 サントラ音楽集』

 

またこの作品のみならず、宮崎駿監督ジブリ作品の恒例となっているサントラ発売前のイメージアルバムと、その位置づけについても詳しく解説しています。

魔女の宅急便 イメージアルバム

こちら ⇒ Disc. 久石譲 『魔女の宅急便 イメージアルバム』

 

ハイテックシリーズはイメージアルバムをもとにした久石譲楽曲ですが、編曲しているアレンジャーが違うので、また違う雰囲気を楽しめます。オリジナル盤にはない、乾いたアコースティック・ギターの爽やかなサウンドや、オリジナル盤以上の多種多様な楽器とアレンジになっています。

久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

こちら ⇒ Disc. 久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

 

 

『紅の豚』
地中海、アドリア海の青い海と、大人なピアノ、ストリングスの調べ。目が覚めるような鮮やかな赤い花が似合います。「帰らざる日々」「Friend」「アドリアの海へ」「遠き時代を求めて」など。

久石譲 『紅の豚 サウンドトラック』

 

 

『ハウルの動く城』
メインテーマ「人生のメリーゴーランド」はもちろんのこと、「空中散歩」「引越し」「花園」「星をのんだ少年」など、ヨーロッパの賑やかな街だけでなく、湖畔とそこに広がる花畑たち、そんな優しい彩りの花園が印象的です。

「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」は、もちろん恒例のジブリ映画イメージアルバムですが、早い段階から制作していたものあるなかで、渾身のフルオーケストラです。そして、なんとそこにはメインテーマ「人生のメリーゴーランド」は…ありません。この段階ではまだ作曲されていなかったんですね。

後に、宮崎駿監督から、「この映画はメインテーマ1曲でほぼやりたい」という要望から、”18歳から90歳までのソフィーを表現できる曲”それに見合うだけ(主題や変奏としてバリエーション豊富にできる)の新しい楽曲を制作したのが「人生のメリーゴーランド」です。しっかりとメロディの軸があり、かつ多彩なバリエーションに変奏できる、そういう意図だと思います。

実際に、「人生のメリーゴーランド」は王道なワルツ(3拍子)の曲ですが、劇中では、これが4拍子になったり、時にはスリリングな曲調に、時にはしっとりとした恋心を歌ったピアノの調べにと、18歳から90歳までのソフィーの年齢や容姿、感情の振れ幅の大きさを、巧みに表現された「お見事!」としか言いようのない楽曲です。

なので、残念ながら、このイメージアルバムからは、おおよそ半分弱くらいしか本編では使用されていないのですが、それでも完成度は高いです。「ミステリアス・ワールド」「ソフィーの明日」「シークレット・ガーデン」など。「ケイブ・オブ・マインド」は、ハウルが星をのむ印象的なシーンで、「星をのんだ少年」として活かされています。

ハウルの動く城 サウンドトラック

 

 

『魔女の宅急便』以外は、まだCD解説が追いついていないのですが。追々それぞれCD作品ごとに充実させていくつもりです。

 

そうこう言っていたら、『天空の城ラピュタ』もイギリスが舞台ですし、『風立ちぬ』もカプローニが登場するのはイタリア、サントラにも、メインテーマ「旅路」のモチーフとして「旅路(イタリアの風)」があります。

とにかく宮崎駿監督のジブリ作品にはヨーロッパ感が満載であり、久石譲のそれぞれの作品音楽も、それを見事に表現しているなあと思います。

ジブリ音楽のライブラリーはこちらにまとめています。

こちら ⇒ Studio Ghibli ディスコグラフィー

 

こんな音楽を聴きながら、ガーデニングに励み、部屋の一角でヨーロッパ感を感じていたら、映画本編もまた観たくなってきています。それは作品自体のおもしろさもあるんですけど、「あのシーンで、あの街並みで、あのテラスで、どんな花が描かれていたっけな?」となってしまうわけです。

もちろん細部にまでこだわるジブリ作品ですので、描かれている建物、風景、花、土の色までよく調べあげられています。この土地にこの植物は生息しないとか、この頃の東京の土は赤いとか…。

映画本編を観て、花の種類まではわかることはないかもしれませんが、(関連書籍を読めば紐解けるかもしれません)その風景や雰囲気はわかるので、イメージをふくらませて、ささやかなガーデニングの参考にはなるかなと思っています。小さな鉢植え、ひとつふたつでも。

 

ガーデニングの話をしたかったのか、久石譲のヨーロッパ感漂うある音楽の話をしたかったのか、わからなくなってしまいましたが。とにかく映画音楽も、ジブリ音楽も、久石譲音楽も、いろいろな切り口と楽しみ方があります。

光と水と風と音楽?!を切らすことなく、初夏の頃には、花たちが鮮やかに咲きほこってくれるよう、大切に育てていきたいと思います。(お披露目できるくらいまで)

 

ヨーロッパ 花園

 

Blog. 久石譲 雨にちなんだ名曲「la pioggia」

久石譲 『PIANO STORIES 3』

Posted on 2014/06/02

もうすぐ梅雨の季節に入ります。

毎年この時期になると頭のなかで流れてくるメロディーがあります。

「la pioggia」という曲です。

これは1998年公開映画「時雨の記」(監督:澤井信一郎)の久石譲によるメインテーマ曲です。

 

とにかくきれいな曲です。メインテーマの旋律はピアノ、ストリングスなどが豊かに美しく奏でています。「la pioggia」とはイタリア語で「雨」という意味だそうです。そう、まさに「雨」にちなんだ曲なんです。

すべてはイントロが物語っています。ピアノの2小節たらずの短いイントロですが、まさにその音粒が雨粒のように、しっとりと、一粒一粒、一音一音、美しく響いています。

この導入部だけで、この曲はすでに名曲だな、と思ってしまうほどです。そこからつづくメインテーマ、日本情緒ある哀愁的で叙情的な旋律は、奥深い感情の揺れ幅を感じます。

 

まさに「雨にちなんだ名曲」=『la pioggia』であり、この曲を聴くと梅雨の時期も悪くない、といいますか、日本ならではの風情すら感じてしまうので不思議です。そこに紫陽花(あじさい)の淡い紫やピンクの花たちが、大きく花広げ、雨水によって水々しくも輝いている風景が想像されます。

そんな景色も、日本のどこに住んでいても、ふと足を止めれば、見つけられそうな世界です。いつも通っている道の脇にも、アジサイを見つけることはできるかもしれません。

 

名曲「la piggia」は、下記の作品にそれぞれ収録されています。

 

久石譲 『時雨の記』

久石譲 「時雨の記 サウンドトラック」

 

 

ほかにも、
「NOSTALGIA ~Piano Stories III~」では、ピアノとストリングのかけあいがより鮮明に豊かに、「WORKS II ~Orchestra Night~」では、より重厚なフルオーケストラによるライブ音源を、「ENCORE」では、ピアノソロにて緩急あるリズムの揺れと強弱ある鍵盤のタッチが豊かに、聴くことができます。

久石譲 『PIANO STORIES 3』

久石譲 『WORKS2』

久石譲 『ENCORE』

また久石譲プロデュース作品である「ARCANT / 近藤浩志」では近藤浩志のチェロと久石譲のピアノによるシンプルながらも奥ゆかしい名演をゆったりとした揺れで聴くことができます。

それぞれのアレンジと楽器による「la pioggia」の美しさが堪能できます。

個人的には「NOATALGIA ~Piano Stories III~」が一番よく聴きます。楽曲としてサントラ盤よりも構成がうまくまとめられている音楽完全盤なのと、ピアノと小編成のオーケストラという、その響きとひかえめさが品格を感じます。

 

 

ちなみに上に紹介した近藤浩志さんとのピアノ&チェロによるデュオ演奏は、CDのみならず、2003年のツアーでも演奏され、そのDVDも発売されています。

久石譲 『a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos  2003 ETUDE&ENCORE TOUR-』

a Wish to the Moon -Joe Hisaishi & 9 cellos 2003 ETUDE&ENCORE TOUR-

 

 

いろいろな梅雨の楽しみ方で、ジメジメ感にイライラすることなく、癒やされたいですね。

紫陽花

 

Blog. 久石譲「ジブリ・ベスト ストーリーズ」はもうひとつのジブリ史

Posted on 2014/05/30

久石譲名義での初のジブリ・ベストアルバム「ジブリ・ベスト ストーリズ」が今年の3月に発売されました。

もちろん購入し何回も聴いていたのですが、そこはベスト、選曲の妙こそあれ、新鮮味にはやはり欠けるわけで。それはこれまでリアルタイムでそのジブリ映画やジブリ音楽を聴いてきたので懐かしさと改めてゆっくり聴く、といった感じでしょうか。

そういう楽しみ方や、手元においておきたいファン心理ももちろんあります。ただ、今回は本作に収められているライナーノーツの話題を。

 

久石譲本人も、この「ジブリ・ベスト ストーリーズ」発売に期して、コメントを寄せています。

『風の谷のナウシカ』の公開(1984年3月11日)から30年の節目にどういう経緯と思いでこのベストアルバムが企画され、久石譲がそれをどう受け止めているのか。

『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで、宮崎駿監督作品のなかからそれぞれの映画の印象的な楽曲が選曲され、さらにはそれはサウンドトラック盤ではなく、久石譲ソロアルバムの音源から。つまりはピアノメインの楽曲たちになっています。

そのあたりのこの「ジブリ・ベスト ストーリーズ」にあたる選曲と考察については以前のブログにまとめていますので興味のある方は。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 初ジブリベスト 宮﨑駿×久石譲 30周年 CD発売決定!

 

 

そんな個人レベルの解説と考察ではとうていおよびもしない(当たり前…)前島 秀国さんによる久石譲解説と楽曲解説が読み応え満点です!「なるほどー!」「言われてみれば!」「そういう背景だったのか!」などなど驚嘆と納得の連続でした。

  • 宮崎駿監督ジブリ映画におけるピアノ・メロディとヒロインの関係性とは?
  • 印象的な音楽を生み出す、根本的な音楽制作の出発点とは?
  • 久石譲がサウンドトラックから離れて宮崎作品をソロアルバムでリアレンジする意味とは?

このあたりのことが鋭い洞察力と説得力で記されています。

 

楽曲解説も端的に要点をずばっと書かれています。そこに発表年順(収録曲順ではなく、ソロ・アルバム発表年順)でまとめられているため、時系列で久石譲の変遷が垣間見れておもしろいです。

たとえば…

『宮崎作品のサントラ録音で初めて常設の交響楽団(東京シティ・フィル)を起用した『もののけ姫』以後、久石は大編成を用いた演奏に意欲を燃やし始める(その論理的な帰結が、2000年から始める彼の指揮活動だ)。』

『久石初の全曲ピアノソロアルバム『ENCORE』は、マイクの設置場所にミリ単位までこだわった入魂作。”破壊された世界の再生”を描く、『もののけ姫』の重要なラストにおいて、久石はそれまで鳴り続けていたオーケストラを止め、シンプルなピアノだけで希望のメロディを奏でてみせた。その意味では《風の伝説》と対をなす楽曲と言えるかもしれない。』

『~略~ 表現の奥深さを示した例のひとつが、飛行船の上でシータがパズーに不安を打ち明ける場面の《Confessions in the Moonlight》(月光の雲海)だ。空間の響きを活かした久石のピアノソロが、オリジナル版以上に《君をのせて》の旋律をしっとりと浮かび上がらせている。』

『『崖の上のポニョ』公開後にピアノ、チェロ12本、コントラバス、マリンバ、打楽器、ハープ2本という編成によるツアーと連動して録音されたアルバムから。伝統的な管弦楽法からは絶対に思いつかない発想だが、チェロのピツィカートとマリンバの倍音が生み出すユーモラスな響きは、不思議とポニョのイメージに合う。』

『2009年のアルバム『Minima_Rhythm』に続き、久石がロンドン交響楽団を指揮したアルバム、メロディフォニーから。《One Summer’s Day》(あの夏へ)と《Kiki’s Delivery Service》(海の見える街)は、それまでの日常と異なる世界──『千と千尋の神隠し』の場合は湯屋の町、『魔女の宅急便』の場合は大都会コリコ──に足を踏み入れようとするヒロインが、そこはかとなく感じる期待と不安を表現しているという点で、対をなす2曲と言えるかもしれない。しかも、《Kiki’s Delivery Service》のリアレンジでは久石のピアノソロがメロディをくっきりと演奏しており、《One Summer’s Day》のニュアンスに富んだピアノソロと見事な対照を生み出している。』

などなど

これを読んでいるだけでも、ジブリ映画ファン、ジブリ音楽ファン、久石譲ファンとしては、あのシーンが、あの音楽が、鮮やかに甦ってきてニンマリしてしまいます。そして、冒頭にも書いたように、もう何回も聴いたことのあったこの楽曲たちを、もう1回注意深く熟聴したくなってしまいます。そういう経緯もあって、最近改めてこの「ジブリ・ベスト ストーリーズ」のリピート・リピートです。

こんな洞察力と考察力があったらなーと思います。ということで、「なるほどー!」「言われてみれば!」「そういう背景だったのか!」などなど驚嘆と納得の連続だったわけです。

 

ぜひCDを手にとってみてください。レンタルや音楽配信もありますが、ライナーノーツはCDを買わないと見れません。そこがいいところだとも思っています。

また上の前島 秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)さんの解説や、久石譲のコメントなど、ライナーノーツの内容は、もう少しだけ詳しく紹介していますので、気になった方はぜひご覧ください。あくまでも抜粋ですので、最終的には…買わないと。 笑

こちら ⇒ Disc. 久石譲 『ジブリ・ベスト ストーリーズ』

 

特にファンとして個人的に思うことですが、久石譲はあまりメディアもふくめ露出も少なく、作品ごとに多くを語っていないですし、「久石譲論」のような専門家・評論家による資料や書籍もほぼないなか、とても貴重な内容でした。

どなたかこういう視点で「久石譲」を書籍としてまとめてくれたらいいのに。「宮崎駿」論や「ジブリ」論はたくさんありますしね。

 

さて、そんなこんなで、久石譲「ジブリ・ベスト ストーリーズ」は『もうひとつの30年のジブリ史』を紡いでいます。もちろん音楽で。

さて、そんなこんなで、この作品の久石譲監修 ピアノ楽譜も5月に発売されています。CDとの完全タイアップ楽譜、オリジナル・エディションです。

こちら ⇒ Score. 久石譲 「ジブリ・ベスト ストーリーズ -オリジナル・エディション-」 [ピアノ譜]

 

さて、そうこうしていたら、7月には「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」が発売されます。『風の谷のナウシカ』から2013年公開の『風立ちぬ』まで。久石譲が手掛けた宮崎駿監督映画のサウンドトラック12作品を収めた豪華BOXセットです。

こちらは正真正銘のサウンドトラック盤ですね。そして音質もオリジナル盤発売当時よりもよくなっているようです。(高音質HQCD)もちろん既発作品たちのBOXセットにはなるのですが、特典CDもついてきます。

また今回の内容と関連しますが、封入ブックレットも楽しみです。

<ブックレット>
徳間書店から発売されている各作品の「ロマンアルバム」より久石譲イタビューと、宮崎駿作品CDカタログを掲載。

とあります。「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」の詳細は

こちら ⇒ Info. 2014/07/16 「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」 発売決定!

今年の夏もジブリの夏、の予感です。

 

Related page:

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ 久石譲 収録曲

 

Blog. 「夢と狂気の王国」 ジブリドキュメンタリー映画 鑑賞

Posted on 2014/05/27

スタジオジブリの貴重なドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」を鑑賞しました。

劇場公開時ももちろん映画館へ観に行ったのですが今月21日にブルーレイDVDが発売されましたのであらためてゆっくりと鑑賞しました。

一般的にはジブリの裏側であり、ジブリの日常を追った作品で、ファンなら釘付けになって観てしまう内容です。宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫という3人の王の、ささやかな日常生活のなかの言動ではあるのだけれど、とても鋭く、深く、問いをこちらに投げかけられているような、極論を言えば「働くとは?」がテーマのように思います。

またスタジオジブリの建物やそこで働く人々の内側も垣間見れてとても得した気分になります。個人的には映画の全体を包む映像美や音楽、雰因気など、大満足なドキュメンタリー映画です。

もし、映画「風立ちぬ」の制作現場などを詳しく見たい方は2013年にNHKプロフェッショナルでも特集された番組のほうがいいかもしれません。

それも来月6月にはブルーレイ/DVD化されて発売されます。

こちら ⇒ Info. 2014/06/27 「プロフェッショナル 仕事の流儀 特別編 映画監督 宮崎駿の仕事」 Blu-ray DVD 発売決定

 

そしてこのドキュメンタリー映画「夢と狂気の王国」のジャケットにあるような、宮崎駿・高畑勲・鈴木敏夫の3人の会話などを期待された方も、ちょっと残念な思いをされたかもしれません。

たしかこの作品の封入ライナーノーツにも書いてありましたが、3人が揃って会話をすることはほとんどないらしいです。ましてや、話す機会があったとしても、過去のことは一切話さない、ほとんど雑談めいたちょっとした時間のようです。

宮崎駿・高畑勲・鈴木敏夫の3人が一同に介した貴重な鼎談は、過去「文藝春秋 2014年2月号」に収録されていました。その後「映画を作りながら、考えたこと。/高畑勲」(文春ジブリ文庫)にも、同内容がそのまま収められています。かなり濃い内容で必読です。

こちら ⇒ Blog. 文藝春秋 2014年2月号 スタジオジブリ 高畑勲×宮崎駿×鈴木敏夫 鼎談

 

 

さて、映画の内容はこのくらいにして。

特典映像などあったんだ?くらい期待していなかったのですが、なんとそこにやっと久石譲が登場していました!(本編には残念ながら…)

未公開映像集が8編収録されているのですが(計約32分)そのなかに「宮崎さんと久石譲さん」というチャプターがあります。

ビックリしました!
その内容が貴重な蔵出しものです。

スタジオで宮崎駿監督・鈴木敏夫プロデューサーと一緒に、映像を見ながら音楽打ち合わせをしている風景です。ちょうど「二郎とカプローニの出会い」のシーンのところで、宮崎駿監督は、『二郎のカプローニへの思いは、尊敬と友情です。時空を超えた。』『明るく、高揚感のある感じでもいいんじゃないかなー。』などど端的に会話をしています。

そして久石譲は、隣に座っているのですが、宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーの発言を、おそらく言葉のキーワードとして、どんどんメモをとっているようなシーンでした。劇場公開よりもかなり前(おそらく1年半~2年前)の出来事じゃないかと推測します。

宮崎駿監督のジブリ映画ではいつもそうですが、まだクライマックスもわからない、映画の軸やテーマだけの段階で、音楽制作も同時進行ですから、言葉や途中段階の切り取ったシーンだけで打ち合わせをして、構想を伝え、少しずつ世界観を共有していく、巨匠2人のあうんの呼吸といったところでしょうか。

これで30年間の監督×音楽のゴールデンコンビですからね。

そして、そのレコーディング風景も収録されています。「風立ちぬ サウンドトラック」では3曲目「カプローニ(設計家の夢)」です。二郎とカプローニがはじめて夢の中で出会うシーンです。この音源がまるまる1曲、レコーディング風景として収録されています。

 

2013年の映画「風立ちぬ」公開前後には、いろいろなTV特番もありました。

こちら ⇒ Info. 2014/01/15 [TV] 「笑ってコラえて!ジブリ支局リターンズ 世界中がワンダフォーSP」 放送
こちら ⇒ Info. 2013/07/10 [TV] 笑ってコラえて!ジブリ3時間SP 放送
こちら ⇒ Info. 2013/08/10 [TV]シューイチ×風立ちぬ特集 放送

そのどの番組でも取り上げられなかった、まさに本作品のカメラだけがとらえた初お披露目な内容でした。

 

久石譲が宮崎駿監督の誕生日(1月6日)にスタジオを訪問し、ケーキを囲むなごやかなシーンも収録されていましたが、久石譲が宮崎駿監督へ誕生日に曲をプレゼントしているのはご存知ですか?これはもちろんプライベートな作品としてCD化はされていませんが、そのほとんどは三鷹の森ジブリ美術館でのみ館内BGMとして聴くことができます。

こちら ⇒ Disc. 久石譲 三鷹の森ジブリ美術館 展示室音楽 *Unreleased

 

さてそうこうしていたら、いよいよ来月6月18日には、映画「風立ちぬ」がブルーレイ/DVD発売です!

こちら ⇒ Info. 2014/06/18 ジブリがいっぱいCOLLECTION 「風立ちぬ」 Blu-ray DVD 発売

 

その他、8月くらいまでジブリ作品のブルーレイ/DVD化ラッシュです。「千と千尋の神隠し」に「ルパン三世 カリオストロの城」(これはジブリ名義ではないけれど)、「NHKプロフェッショナル 宮崎駿」に「宮﨑駿監督作品集BOX」まで。

その合間に、7月16日には、「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」も発売されますので、お見逃しなく!

こちら ⇒ Info. 2014/07/16 「スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX」 発売決定!

 

夢と狂気の王国 ブルーレイ

 

Blog. やっぱり久石譲のCM「伊右衛門」音楽は四季を感じます。ニューバージョンOA開始!

Posted on 2014/04/03

年度末から年度初めは忙しくも慌ただしくもある時期ですね。

今年の冬は日本各地で例年にない大雪で、寒い寒いと思っていたら、3月に入って急に暖かくなってきて桜も咲きそうだと思っていたら、もう桜の花びらは舞い散りはじめ、葉桜に。

この新年度の時期は日常生活でも環境が変わったり、いろいろな意味で新生活がはじまるタイミングです。そんななか久しぶりにTVから久石譲のサントリー伊右衛門CM音楽が流れてきました。

 

2004年のサントリー伊右衛門発売開始からCM音楽は、久石譲の「Oriental Wind」がCMバージョンごとに様々なアレンジで、そして四季折々の映像と音楽でほっとひと息できる瞬間でした。

2012年秋からは「新テーマ曲」(曲名不明)が引き継いでいたのですがこれもまたピアノとストリングのきれいな楽曲です。

 

さて、ここ最近は健康茶ブームもあってか、伊右衛門も「特茶」シリーズということで、いつもの伊右衛門シリーズとは違うCMになっていました。本木雅弘さんと宮沢りえや宮崎あおいさんによる、日本情緒ある古都京都の四季やその景色というシチュエーションからはなれて。

そんななか、この春、4月1日から、これまでのテイストの伊右衛門CMシリーズが新しくOA開始されていました。そしてそこにあの久石譲の音楽が流れていた、というわけです。また新しい曲かな?と思って聞き耳を立てていましたら、後半であのおなじみのピアノの旋律が流れてきました。

 

サントリー緑茶 伊右衛門『お茶の言葉』篇 60秒

※公開終了 2015.4現在

サントリー緑茶 伊右衛門『お茶の言葉』特別篇 120秒

※公開終了 2015.4現在

 

このCM動画はサントリー公式サイトにて視聴できますのでぜひ。
こちら ⇒ サントリーCMギャラリー ※公開終了 2015.4現在

 

このCMギャラリーを見てもわかるように、過去1年は「特茶」「特茶」です。ちなみに、右下に「過去のCMはこちら」という紹介がありますが、そこではあの「Oriental Wind」時代の伊右衛門CMも視聴することができます。

2004年の伊右衛門CM開始から、このCMギャラリーでは、約50本近くの伊右衛門CMシリーズを堪能することができます。これを観るだけで、音楽のいろいろなバージョンやバリエーションを聴くだけで、心が安らぎます。映像の秀逸さもありますが、やっぱり久石譲の「伊右衛門シリーズ」CM音楽は日本の四季を感じます。ぜひこの桜の季節に、ちょっとした時間に、ほっとひと息視聴してみてください。

 

今年はどんな伊右衛門シリーズを見ることができるのか、またCMのシチュエーションや季節の移り変わりにあわせて、久石譲の「新テーマ曲」もどんなアレンジで聴くことができるのか、楽しみです。

ということで、新年度早々、気持ちを新たに、そして春を届けてくれた新情報でした。

 

Related page:

 

 

久石譲 サントリー 伊右衛門 2014 2

久石譲 サントリー 伊右衛門 2014

 

Blog. 久石譲 第37回 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 受賞 「風立ちぬ」

Posted on 2014/3/10

先日3月7日、ついに第37回日本アカデミー賞が開催されました。ということで、それをもとに結果はこうなりました。

 

第37回 日本アカデミー賞 結果(ノミネート発表:1月16日 授賞式:3月7日)

□優秀作品賞 ノミネート作品

  • 『凶悪』
  • 『少年H』
  • 『そして父になる』
  • 『東京家族』
  • 『舟を編む』 ☆
  • 『利休にたずねよ』

□優秀アニメーション作品賞 ノミネート作品

  • 『かぐや姫の物語』
  • 『風立ちぬ』 ☆
  • 『キャプテンハーロック』
  • 『劇場版魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』
  • 『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』

□優秀音楽賞 ノミネート作品

  • 岩代太郎 (利休にたずねよ)
  • 荻野清子 (清須会議)
  • 久石 譲 (かぐや姫の物語)
  • 久石 譲 (風立ちぬ) ☆
  • 久石 譲 (東京家族)
  • 松本淳一/森 敬/松原 毅 (そして父になる)
  • 渡邊 崇 (舟を編む)

 

メインの音楽賞で、最優秀音楽賞を「風立ちぬ」の音楽で見事受賞いたしました。

2013年に携わった作品のなかで「東京家族」「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」が各部門にノミネートされていたわけですが、アニメーション作品賞の宮崎駿監督×高畑勲監督のジブリ対決では、宮崎駿の映画「風立ちぬ」が選ばれましたね。

優秀音楽賞に久石譲の音楽3作品がノミネートされているだけでもすごいことだったわけですが、最優秀音楽賞は「風立ちぬ」の音楽が選ばれました。

日本アカデミー賞の最優秀音楽賞の受賞は第34回の「悪人」以来です。そしてジブリ作品では、第32回の「崖の上のポニョ」で同じく最優秀音楽賞を受賞しています。

これで日本アカデミー賞最優秀音楽賞の受賞は歴代No.1記録を更新し計8度目の受賞となりました。

 

過去の受賞歴はこちらにまとめています。

こちら ⇒ Blog. 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 歴代受賞者/受賞作品 一覧

 

ちなみに映画「風立ちぬ」の音楽としては、第10回 国際映画音楽批評家協会賞においてもオリジナル作曲賞アニメーション部門を受賞しています。

こちら ⇒ Info. 2014/02/20 第10回 国際映画音楽批評家協会賞 久石譲「風立ちぬ」受賞

 

日本アカデミー賞の受賞コメントでは、「3作も入っていたので、(票が)割れてとれないんじゃないかと思っていました。とても驚いています。ありがとうございます。」と笑顔で喜びお礼を。

また、ゴーストライター問題がニュースになっている時期でもあったため、「何かと作曲家が注目されていますが、(今回の曲は)私が書いています。念のため。」とニヤリとチクリと話題にしていました。

 

さて、毎年恒例なのですが!?TV放送ではメインの各賞を取り上げているため、久石譲の最優秀音楽賞受賞の瞬間も、上の受賞コメントも、TV放送ではカットされていました。翌日以降の各局のニュースやワイドショーでは取り上げられていましたが。旬な話題ということもあり。

ということで、3月16日21:00-25:00「第37回日本アカデミー賞授賞式 完全版」CS放送・日テレプラス(未公開映像を加えたノーカット版)

こちらを楽しみにしたいと思います。

 

Related page:

 

日本アカデミー賞 久石譲 風立ちぬ

 

Blog. 「クラシック プレミアム 4 ~ショパン ピアノ作品集~」(CDマガジン) レビュー

Posted 2014/3/1

「クラシック プレミアム」第4号は、ショパンです。

他の19世紀作曲家とは違い、生涯ピアノ作品のみをつくりつづけたショパンですが、まさにピアノひとつで多彩な世界、詩人のような作曲家だなと思います。

 

【収録曲】
《幻想即興曲》
スタニスラフ・ブーニン(ピアノ) 録音/1987年
《華麗なる大円舞曲》
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ) 録音/1990年
ポロネーズ《英雄》
ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ) 録音/1999年
《子犬のワルツ》、ワルツ 第7番
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ) 録音/1990年
バラード 第1番
アンドレイ・カヴリーロフ(ピアノ) 録音/1991年
練習曲《別れの曲》
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ) 録音/1988年
練習曲《革命》 《黒鍵》 《木枯らし》
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ) 録音/1971-1972年
夜想曲(ノクターン) 第2番・第20番
マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ) 録音/1995-1996年
前奏曲 第8番・第15番《雨だれ》
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ) 録音/1975年
スケルツォ 第2番
アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ(ピアノ) 録音/1971年

 

収録曲の名前だけを見ても、曲が思い浮かばないものもありますが、かくいう私もCDを聴くまではそうでした。いざCDを流してみてびっくりしました。ほとんどの曲を知っていました、聴いたことがありました。

そのくらいどの曲も、そのなかのメロディーやフレーズも印象的で、TV・映画・CMと引っ張りだこな音楽たちばかりということがわかります。

上品かつ繊細で、イメージを縛らない、動的な曲も静的な曲も印象的でインパクト、まさにピアノ1本で多彩な音楽世界、イメージを広げるショパンの音楽だからこそ、今日まで多くの人に愛され、日常生活にもその音楽が溢れているんだろうなと思います。

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第4回は、僕が指揮をするわけは?

この連載コラムも4回目を迎えましたが、全50巻のうちこの冒頭は、久石譲の指揮者としての考え方や視点を垣間見ることができます。

今回のコラムでは、職業としての指揮者が確立された時代のことや、作曲家が指揮をしていた時代、その背景や逸話など、いろいろな側面からのクラシック音楽の歴史が見れておもしろかったです。

そして印象に残った箇所を一部抜粋してご紹介します。

 

「それでは作曲家兼楽器奏者と作曲家兼指揮者の違いは何なのだろう。ブーレーズによれば「前者は日常的とまでは言わないにせよ、少なくともあまり大きな中断のない筋肉の訓練を必要とし、そうすることによって楽器の名手としての能力を維持するが、他方、後者の方は、専門家としての技能を手中にしていれば、断絶の影響を恐れることなく、いつでも自分の活動を中断したり再開したりできる。」なるほど、おこがましいが僕が最近ピアノを弾かなくなった理由と指揮をするわけがわかった気がする(笑)。」

 

作曲家が指揮をすることの意味は、前回(第3回)のコラムで書かれていましたが、久石譲は、作曲家、ピアニスト、指揮者と3役ありますからね。このあたりそれぞれの住み分けも自身の著書やインタビューで明確に語っていた内容がありますね。

これからどんな指揮者論や、クラシック話、広義での音楽話が聴けるのかますます楽しみです。毎回コラムのなかで、いろいろな人物などキーワードが飛び出すので、それを後から自分なりに調べたりするのもおもしろいです。知らないことや、新しい興味など、どんどん広がっていきます。

 

クラシックプレミアム 4 ショパン

 

Blog. 映画『魔女の宅急便』の音楽 久石譲 高畑勲 インタビュー

Posted on 2014/2/27

先日、文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」について、読書感想としてその内容を書きました。

こちら ⇒ Blog. 文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」 読書

とても読み応えのある内容で、おそらく誰が読んでも、目からウロコ、新しい発見がある、そんな充実した本です。そして、あまりにもたくさん書いてしまって、肝心の音楽:久石譲のことを触れることができなかったので、あらためて。

 

映画『魔女の宅急便』が1989年公開ですから、今から約25年前です。

この作品は音楽:久石譲に加えて、注目すべきなのは音楽演出:高畑勲です。宮崎駿監督との間で、この3者による音楽制作が進められていたということです。なので、当時のインタビューも久石譲と高畑勲監督の、それぞれのインタビューが収録されています。

それがすごく興味深かったです。つい昨年2013年に、映画『かぐや姫の物語』で高畑勲×久石譲の初タッグが実現し、それにともなうインタビューや対談はたくさん紹介してきました。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー 熱風より
※ページ下部に『かぐや姫の物語』関連インタビュー リンクもほぼすべて紹介しています

 

映画『かぐや姫の物語』の物語に関しては、まだ記憶に新しいのもあり、この「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」を読み進んでいくと、久石譲も高畑勲監督も、お互い言っていることがシンクロするほどだったんです。

1989年の『魔女の宅急便』と2013年の『かぐや姫の物語』約25年の時間の隔たりがあるなか、両者とも映画音楽に求めるものや、その位置づけ、大切にしていることなど、その根幹となるものに対して同じことを言っているんですね。

これにはびっくりしました。

 

具体的には、高畑勲監督は、映画『かぐや姫の物語』の音楽に対して、こういう要求をしています。

  • 一切登場人物の気持ちを表現しないでほしい
  • 状況に付けないでほしい
  • 観客の気持ちを煽らないでほしい

つまりは「一切感情に訴えかけてはいけない」、引きの音楽、観る人に委ねる音楽、これを久石譲の音楽に求め、見事にその音楽世界は表現されることになりました。

これを念頭に、本書「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」のインタビューを紐解いてみます。一部抜粋して紹介します。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

-今回はヨーロッパが舞台ということで音楽的にもそのへんを意識されたと思うのですが。

久石 「そうですね、架空の国ではあるけれどもヨーロッパ的な雰囲気ということで、いわゆるヨーロッパのエスニック、それも舞曲ふうのものを多用しようということは考えました。」

(中略)

-たしかに、映画を拝見しますと音楽のつけ方がはっきりしていて、今回でいえばキキがつぎの場所へ移動する時の、つなぎの部分に音楽が使われているような印象がありました。

久石 「たとえば悲しいシーンに悲しい曲をつけるとか、アクションシーンに派手な曲をつけるとか、そういうやり方はいっさいしないという前提でやりましたからね。ある意味でそれはすごく徹底していると思います。むしろ感情に訴えかけるよりも、見ている人を心地よくさせるような音楽のつけ方というんですか、そういう点を心がけたということはありますね。わざとらしくない、自然な音楽といいますか…。」

-久石さんが宮崎作品の音楽を創る時にいちばん、心がけることは何ですか。

久石 「まず大きな声で歌えること。変にこまっしゃくれたものではなく、徹底して童心にかえってストレートに作るということですね。そしてヒューマン、人間愛にあふれていること。これに尽きると思います。」

(中略)

 

-今回の音楽の特徴は、どういうところですか。

高畑 「この作品はいわゆるファンタジーではありません。『トトロ』もそうでしたが、大きな意味ではファンタジーに属するものでしょうが、もっと現実に近い物語であると宮さんは考えてつくった。たとえばキキは空を飛びますけど、それはカッコよく飛ぶのとはちがうし、ふつうの女の子の日常的な描写や気持ちが中心になっているんですね。ですから音楽が担当する部分も、世界の異質さとか戦闘の激しさとかを担当するわけではない。むしろふつうの劇映画のような考え方をして、しかもヨーロッパ的ふんいきをもった舞台にふさわしいローカルカラーをうち出そうということだったんです。それと、つらいところ悲しいところに音楽はつけない、とか、歌とは別にメインテーマの曲を設定して、あのワルツですが、あれをキキの気持ちがしだいにひろがっていくところにくりかえし使うとかが、音楽の扱いの上での特徴というえば特徴ではないでしょうか。はじめ、ホウキで空を飛ぶ、というのはスピード感もないし、変な効果音をつけるわけにはいかないので心配だったのですが、久石さんの音楽もユーミンの歌も、いまいったねらいにピッタリだったし、上機嫌な気分が出ていたのでホッとしているところです。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

いかがでしょうか。

約25年の時空を超えて、考え方や発言がシンクロしていることが、わかってもたえたのではないでしょうか。

それだけスタジオジブリ作品、鈴木敏夫プロデューサーをはじめ、宮崎駿監督、高畑勲監督、それぞれが劇中音楽をいかに大切にしているか、独自の価値観と要求によって、それを見事に久石譲が音楽に昇華しているか、ということがあらためてわかった当時のインタビュー内容でした。

 

本当に読み応え満点で、思わず映画『魔女の宅急便』がまた観たくなります。実際、この読書をしながら、文章を書きながら、『魔女の宅急便』の音楽を聴いています。

 

当サイトでは、もちろん『魔女の宅急便』関連CD作品もそれぞれ詳細紹介しています。

  • イメージアルバムとサウンドトラックの違いって?
  • 同じメロディーの曲なのに曲名がちがう?
  • ヴォーカル・アルバムやハイテックシリーズって?

 

そのあたりも下記CD作品詳細をのぞいてもらえれば、わかると思います。

魔女の宅急便 イメージアルバム

魔女の宅急便 イメージアルバム

 

久石譲 『魔女の宅急便 サントラ音楽集』

魔女の宅急便 サントラ音楽集

 

久石譲 『魔女の宅急便 ヴォーカル・アルバム』

魔女の宅急便 ヴォーカル・アルバム

 

久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

魔女の宅急便 ハイテックシリーズ

 

 

ほかにも、『魔女の宅急便』の音楽たちは、久石譲作品のいろいろなCDアルバムに収録されています。「メロディフォニー」では、美しいフルオーケストラ組曲として。「空想美術館」では、華麗な弦の響きにて。そのあたりは、いつの日か、特集ページでしっかり掘り下げて紹介したいと思います。

 

 

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ジブリの教科書 魔女の宅急便