Disc. V.A. 『スタジオジブリトリビュートアルバム「ジブリをうたう」』

2023年11月1日 CD発売 VICL-65894
2024年1月10日 LP発売 VIJL-60311~60312

 

武部聡志プロデュースによるスタジオジブリ音楽のトリビュートアルバム

日本国内に留まらず、今や世界中を魅了し、世代を超えて愛されるアニメーションを制作し続けるスタジオジブリ。その素晴らしい作品たちには、いつも素晴らしい音楽たちがドラマを彩っていました。映画と共に愛され続ける数多の心に残る名曲たち。音楽プロデューサー武部聡志プロデュースのもと、そんなスタジオジブリ作品の楽曲たちを世代を超えた様々なアーティストたちが新たな解釈でカバーする、スタジオジブリ音楽のトリビュートアルバムが完成。

※宮崎吾朗監督書き下ろしイラストジャケット仕様

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

映画「コクリコ坂から」「アーヤと魔女」では音楽を担当するなどスタジオジブリ作品とも縁の深い、作・編曲家、音楽プロデューサー武部聡志が全面プロデュースする初のスタジオジブリ トリビュートアルバム

 

 

原曲が久石譲曲の映画主題歌/メインテーマは、「01.となりのトトロ」「03.いのちの名前」「04.君をのせて」「06.人生のメリーゴーランド」「11.もののけ姫」の5曲。

 

 

01.となりのトトロ(映画「となりのトトロ」より) / 岸田繁(くるり)
  作詞:宮﨑駿 / 作曲:久石譲 / 編曲:武部聡志 / コーラスアレンジ:岸田繁
02.カントリー・ロード(映画「耳をすませば」より) / 松下洸平
  作詞・作曲:JOHN DENVER、TAFFY NIVERT、BILL DANOFF / 日本語詞:鈴木麻実子(補作:宮﨑駿) / 編曲:武部聡志
03.いのちの名前(映画「千と千尋の神隠し」より) / 幾田りら
  作詞:覚和歌子 / 曲:久石譲 / 編曲:武部聡志
04.君をのせて(映画「天空の城ラピュタ」より) / 家入レオ
  作詞:宮﨑駿 / 作曲:久石譲 / 編曲:武部聡志
05.テルーの唄(映画「ゲド戦記」より) / Little Glee Monster
  作詞:宮崎吾朗 / 作曲:谷山浩子 / 編曲:寺嶋民哉
06.人生のメリーゴーランド(映画「ハウルの動く城」より) / 角野隼斗
  作曲:久石譲 / 編曲:角野隼斗
07.風の谷のナウシカ(映画「風の谷のナウシカ」より) / 玉井詩織(ももいろクローバーZ)
  作詞:松本隆 / 作曲:細野晴臣 / 編曲:武部聡志
08.ルージュの伝言(映画「魔女の宅急便」より) / 木村カエラ
  作詞・作曲:荒井由実 / 編曲:武部聡志
09.ひとりぼっちはやめた(映画「ホーホケキョ となりの山田くん」より) / 満島ひかり
  作詞・作曲:矢野顕子 / 編曲:武部聡志
10.海になれたら(映画「海がきこえる」より) / GReeeeN
  作詞:望月智充 / 作曲:永田茂 / 編曲:武部聡志
11.もののけ姫(映画「もののけ姫」より) / Wakana
  作詞:宮﨑駿 / 作曲:久石譲 / 編曲:武部聡志
12.時には昔の話を(映画「紅の豚」より) / 渋谷龍太(SUPER BEAVER)
  作詞・作曲:加藤登紀子 / 編曲:武部聡志
13.さよならの夏~コクリコ坂から~(映画「コクリコ坂から」より) / 武部聡志
  作詞:万里村ゆき子 / 作曲:坂田晃一 / 編曲:武部聡志

 

Disc. 宮田大 『VOCE -フェイヴァリット・メロディー』

2023年10月25日 CD発売 COCQ-85615

 

その音は聴くものの心を震わせる― 日本を代表するチェロ奏者・宮田大が圧倒的表現で “歌う”新時代の名曲選

日本を代表するチェリストの宮田大。日本人として初めてロストロポーヴィチ国際コンクールで優勝。世界的指揮者・小澤征爾をはじめ、国内外の音楽家から支持を集め、また、クラシック界における権威のある賞の一つ、OPUS KLASSIK 賞(2021)を受賞するなど国際的な評価を高めている。また、尾高惇忠や菅野祐悟らから協奏曲を献呈され、また、数ある協奏曲のなかでも難曲として知られる吉松隆のチェロ協奏曲の演奏では、作曲家自身から大絶賛されるなど、作曲家からの信頼も厚い。その演奏は聴く者の心の奥底を震わせる、と各地で話題を集め、公演は完売が相次いでいる。

今回のアルバムでは、宮田大が今届けたい「名曲」を厳選して収録。従来のチェロ定番曲にとらわれず、言わずと知れたクラシックの名曲から、日本を代表する作曲家の作品や隠れた名曲まで、その圧倒的な演奏力で、一つ一つの作品に新たな命を吹き込む。「まるで歌声のよう」と評されることも多い、宮田大だからこその唯一無二の表現、“歌声” で届ける、新たな時代に贈る名曲集。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

 

久石譲の「Asian Dream Song」がチェロ&ピアノ版で収録されている。このアルバムのために篠田大介氏の編曲によるもの。この曲には「旅立ちの時 ~Asian Dream Song~」として大サビの書き加えられた歌もあるが、本作はオリジナル版(『PIANO STORIES II ~The wind of Life』)を取り上げている。

 

 

 

1.村松崇継:Earth
2.ロルフ・ラヴランド:ソング・フロム・ア・シークレット・ガーデン
3.ビル・ウィーラン:リバーダンス
4.久石 譲:Asian Dream Song
5.カミーユ・サン=サーンス:「あなたの声に私の心は開く」~《サムソンとデリラ》
6.加羽沢美濃:Desert Rose
7.菅野祐悟:ACT
8.アストル・ピアソラ:リベルタンゴ
9.吉松隆:ベルベット・ワルツ
10.植松伸夫:ザナルカンドにて
11.坂本龍一:星になった少年
12.アントニン・ドヴォルザーク:私にかまわないで ~4つの歌曲 作品82 第1曲

編曲:伊賀拓郎(2, 8) 山中惇史(3) 篠田大介(4, 10, 11)

演奏:宮田大(チェロ)、ジュリアン・ジェルネ(ピアノ)

録音時期:2023年4月18-20日
録音場所:新潟県、柏崎市文化会館アルフォーレ
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

 

Disc. キングズ・シンガーズ 『ワンダーランド』

2023年9月22日 CD発売 XSIGCD739

 

キングズ・シンガーズ新録音。リゲティ生誕100周年記念&委嘱作品集!

男声ア・カペラのレジェンド、キングズ・シンガーズ!リゲティ生誕100周年記念と55年の歴史の中で委嘱した作品を厳選!2022年12月の来日公演でも取り上げた、久石譲の《 I was there 》、木下牧子の《あしたのうた》も収録!

ルネサンス・ポリフォニーからジャズ、ポップスまで2000曲以上ものレパートリーを誇り、2018年に結成50周年を迎えた男声ア・カペラ・グループのレジェンド、キングズ・シンガーズ。本アルバムでは、2023年に生誕100周年を迎えるリゲティの作品を中心に、キングズ・シンガーズの55年の歴史の中で、彼らのトレードマークである音楽的なストーリーテリングと喜びにあふれた委嘱作品を収録。アルバムのタイトルでもある「ワンダーランド」の通り、魔法、神話、おとぎ話の世界に立ち返っています。

遊び心のある子供の詩やルイス・キャロルの代表作「不思議の国のアリス」からの抜粋を題材にしたリゲティのナンセンス・マドリガル集を中心に、オーストラリアの最も著名な音楽家のひとり、マルコム・ウィリアムソンによって1972年に作曲されたグリム童話「ブレーメンの音楽隊」に基づいた音楽、2022年12月の来日公演で世界初演された久石 譲の『I was there』(9.11や東日本大震災など、悲劇的な出来事の文化的記憶に焦点を当てた作品)、同じく2022年の来日公演で披露された(初演は2020年)木下牧子の『あしたのうた』(自然界を中心とした希望とポジティブなテーマを思い浮かばせる作品)まで、各時代を代表する現代作曲家から200を超える作品を捧げられてきたキングズ・シンガーズの珠玉のレパートリーをお楽しみいただけます。(東京エムプラス)

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

~平和~
久石譲:I was there(委嘱作品/世界初演)
Joe hisaishi: I was there (World Premiere on this tour)

”I was there”はThe King’s Singersの委嘱によって作曲した。”I Want to Talk to You”(2020年作曲)に続く英詞作品の第2弾である。当初から”I was there”というコンセプトは決めていた。そして2001年の9.11ニューヨークの世界貿易センターへのテロ、2011年の3.11東日本大震災、2020~22年のCOVID-19の犠牲者による証言、現場で命を失った人たちの手紙などを元に人々が最後に何を考えたか、何を願ったかを音楽で表現しようと考えた。しかし、かなりの長さが必要なこと、重いテーマであること、The King’s Singersの爽やかなコーラスには合わないことを考慮してタイトルだけ残し、音の構成に重点を置いて、約8分半の楽曲として作曲した。

繰り返される”I was there”という言葉とメロディーはミニマル的なズレを生じさせながら、徐々に変容していき、日本語の言葉も登場する。作詞はMAIで”I was there”と関連用語だけにした。ただ言葉としては使われていないが、言外に僕の最初に考えたことは行間から滲み出ていると思う。

The King’s Singersの6名の音域表(各自微妙に違う)を見ながら作曲をしていくうちに、如何にこの6声であることが有効かわかってきた。つまり通常コーラスは4声部で描くことが多いが、6声だと3声ずつ2グループにできること、カウンターテナーの低域での音量などの問題が出た時の補強、ハーモニーの時の微妙なバランスを取る時などの他、各パートが自由に動ける、または休めるなど多くの利点があった。

だが最大の強みは彼らが単に歌うだけのグループではなく、信頼し合い響き合うFamilyのような絆と人としての知性なのではないか、と僕は思った。

12月に初演される予定だが、その時2022年がどういう年であったか、そして新しい年はどういう年になるのか?彼らの歌を聞きながら思いを馳せたい。

久石譲

(ザ・キングズ・シンガーズ 2022 日本ツアープログラムブック より)

 

 

 

日本ツアーの久石譲とのリハーサル風景、メンバー・インタビュー、コンサート・レビュー、また数か月後にTV・ラジオ放送されたプログラム内容も記した。

 

 

 

 

『ワンダーランド ~リゲティ生誕100周年と久石譲、木下牧子、イェイロ、ビンガム、パターソン他の委嘱作品集』
キングス・シンガーズ

1.木下牧子:あしたのうた
2.ジェルジ・リゲティ:ナンセンス・マドリガル集より 2つの夢と小さな蝙蝠
3.オラ・イェイロ:夢の中の夢
4.リゲティ:ナンセンス・マドリガル集より 梨の木の上のカッコウ
5. フランチェスカ・アミューダー=リヴァーズ:アライヴ
6.リゲティ:ナンセンス・マドリガル集より アルファベット
7.久石譲:I was there
8.リゲティ:ナンセンス・マドリガル集より 空飛ぶロバート
9.ジュディス・ビンガム:トリックスター
10.リゲティ:ナンセンス・マドリガル集より ロブスターのカドリーユ
11.マルコム・ウィリアムソン:ブレーメンの音楽隊
12.リゲティ:ナンセンス・マドリガル集より 長く、悲しい物語
13.ポール・パターソン: タイム・ピース

キングズ・シンガーズ
パトリック・ダナキー(カウンターテナー)
エドワード・バトン(カウンターテナー)
ジュリアン・グレゴリー(テノール)
クリストファー・ブリュートン(バリトン)
ニック・アシュビー(バリトン)
ジョナサン・ハワード(バス)

録音時期:2022年10月19,21日、2023年1月16-18日
録音場所:イギリス、サフォーク、ブリテン・スタジオ
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

国内仕様盤(解説日本語訳、歌詞訳&日本語曲目表記オビ付き)

 

The King’s Singers – Wonderland

1.Makiko Kinoshita: Ashita no uta
2.György Ligeti: I. Two Dreams and Little Bat
3.Ola Gjeilo: A Dream within a Dream
4.György Ligeti: II. Cuckoo in the Pear-Tree
5.Francesca Amewudah-Rivers: Alive
6.György Ligeti: III. The Alphabet
7.Joe Hisaishi: I was there
8.György Ligeti: IV. Flying Robert
9.Judith Bingham: Tricksters
10.György Ligeti: V. The Lobster Quadrille
11.Malcolm Williamson: The Musicians of Bremen
12.György Ligeti: VI. A Long, Sad Tale
13.Paul Patterson: Time Piece

 

Disc. 久石譲 『Adagio for Two Harps and Strings』 *Unreleased

2023年9月9日 世界初演

 

2023年9月9,11日開催「新日本フィルハーモニー交響楽団 第651回 定期演奏会」にて世界初演。

以降も日本公演や海外公演でもたびたび演奏されている。作品名はプログラムによって「Adagio for Strings and Two Harps」と表記されている場合もある。

 

 

Adagio for Two Harps and Strings

2023年新日本フィルハーモニー交響楽団からの委嘱で、9月9日トリフォニーホール、11日サントリーホールの第651回定期演奏会のために作曲した。

自らマーラーの交響曲第5番を指揮するのでその前に演奏することになる。マーラーの楽曲は全5楽章からなり、約1時間10分を要する大曲である。第4楽章のアダージェットが映画『ベニスに死す』などにも使われとても有名で、マーラーの交響曲の中でも最も人気が高い作品である。

当然僕としてはそれを意識した上で2023年7月末から作曲を開始した。7月はワシントン・ナショナル交響楽団を含む3つのオーケストラですべて異なるプログラムを行った直後なので、かなり疲れたため困難な状況だったが、東京から離れた仕事場で8月10日までに大方の作曲を終了し、東京で仕上げに取り組み8月15日に完成した。異例の速さだったが、これはとても幸運だったとしか言いようがない。

漠然と「マーラー”アダージェット”の久石版が書ければ」と考えていたのだが、詰まるところは遅いテンポの楽曲を書きたかったということである。

ミニマル系の作曲ではリズムがメインになるのでスローな曲は得意ではない。特にアメリカ系のミニマル作品には少ない。僕の作品でも遅い楽曲はあまり多くないので、今回チャレンジしようと考えた。また、マーラーの楽曲と一緒に演奏するのはそれなりのプレッシャーがかかるのだが、幸い上記のスケジュールをひたすらこなして目の前のことに集中したため、順調に仕上がったわけである。

だが、完成したスコアを見るとかなり細かい音符もあり演奏は決して楽ではない。

編成は2ハープとストリングスでほぼマーラーの”アダージェット”と同じで(ハープが1台僕の曲では多い)約12分半の長さになった。出だしのハープの音形は半音高いが、マーラーからの引用で、もちろん敬意を込めての使用である。

論理的に構成しているつもりであるが、結果として大らかな自然と人への讃歌であり、祈りでもあれば、と願っている。

久石譲

(9月6日公式サイトPDFにて公開/9月9,11日会場配布プログラム冊子 より)

 

 

 

 

レビュー

 

 

Disc. 久石譲 『君たちはどう生きるか サウンドトラック』

2023年8月9日 CD発売 TKCA-75200
2023年8月16日 配信開始

 

宮﨑駿監督10年ぶりとなる、長編映画最新作 「君たちはどう生きるか」のサウンドトラック。
宮﨑監督のオリジナルストーリー作品。

2023年7月14日(金)全国劇場公開
スタジオジブリ最新作
「君たちはどう生きるか」
原作・脚本・監督:宮﨑駿
配給:東宝
製作:スタジオジブリ
音楽:久石譲

主題歌含む37曲収録

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

久石さんからの誕生日プレゼント

年の初めに、いつのまにか恒例になった行事がある。毎年1月5日になると、久石譲さんが宮﨑駿のアトリエに顔を出す。その日、出来上がったばかりの曲を携えて。

1月5日は宮﨑駿の誕生日。その曲は、宮さんへの誕生日プレゼントだ。なにしろ、新曲だ。何時ごろ完成するのか、分からない。早いときもあれば、そうじゃない時もある。調子のいい悪いもあるだろう。

お迎えは、ずっとぼくと宮さんのふたり。そして、新しい曲をふたりで聴く。

この時、ぼくはいつも緊張が走る。いい曲であって欲しいと。祈りに近い。宮さんは大概、目を閉じている。宮さんの前でいつも笑顔を絶やさない久石さんも、その表情が変わる。

聞き終わる。宮さんが相好を崩す。久石さんとぼくは安堵する。こうして、ぼくらの新しい年が始まる。

プレゼントの曲は、ぼくの記憶だと、そのほとんどがミニマルミュージック。久石さんの得意とする音楽だ。久石譲さんといえばオーケストラと思う人が多いと思うが、それは映画音楽をやる時の久石さんの顔だ。本当は音楽大学で電子音楽を基調とするミニマルミュージックを専攻した人。つまり、現代音楽の勉強をした人だ。

これまでも、映画の時は、メロディを中心としたオーケストラで映画音楽を作って来た。しかし、大事な場面ではミニマルを挿入する。それが久石さんの大きな特徴だった。

「となりのトトロ」のサツキがトトロと出会う、雨のバス停のシーン。あのミニマルの曲はいまだに傑作だ。あのシーンはあの曲によって補完され、子どもたちはむろんのこと、大人たちもトトロの実在を信じることが出来たとぼくは思っている。

「君たちはどう生きるか」。この作品で久石さんは、大きな勝負に出た。ミニマルだけで、映画音楽を成立させることが出来るのか? ミニマルにはメロディらしいメロディは無い。聴く人によって、表情が変わるのがミニマルの大きな特徴だ。楽しい悲しいをフィルムに固定することも出来ない。

ぼくはドキドキしながら、映画の完成を待った。試写を見終わったぼくは、久石さんが、その勝負に、賭けに勝ったのだと思った。

使われた曲の多くは、誕生日プレゼントの曲だった。

「君たちはどう生きるか」プロデューサー
鈴木敏夫

(CDライナーノーツより)

 

 

久石さん やりましたね!
全部ミニマルで通すなんて.
ありがとう

みやざき

(CDライナーノーツより 直筆メッセージ)

 

 

 

2024.08 update

映画『君たちはどう生きるか』サウンドトラック楽曲解説

(1)イントロダクション
(2)方法論
(3)方法論 継
(4)Ask me why
(5)白壁・聖域・祈りのうた
(6)青サギ・黄昏の羽根 ほか
(7)ワラワラ・炎の少女 ほか
(8)追憶・陽動 ほか
(9)眞人とヒミ・大伯父 ほか
(10)ネクストアップ

 

 

 

 

 

 

 

1. Ask me why(疎開)
2. 白壁
3. 青サギ
4. 追憶
5. 青サギⅡ
6. 黄昏の羽根
7. 思春期
8. 青サギⅢ
9. 静寂
10. 青サギの呪い
11. 矢羽根
12. Ask me why(母の思い)
13. ワナ
14. 聖域
15. 墓の主
16. 箱船
17. ワラワラ
18. 転生
19. 火の雨
20. 呪われた海
21. 別れ
22. 回顧
23. 急接近
24. 陽動
25. 炎の少女
26. 眞人とヒミ
27. 回廊の扉
28. 巣穴
29. 祈りのうた(産屋)
30. 大伯父
31. 隠密
32. 大王の行進
33. 大伯父の思い
34. Ask me why(眞人の決意)
35. 大崩壊
36. 最後のほほえみ
37. 地球儀 / 米津玄師

 

作曲・編曲・プロデュース:久石譲

指揮・ピアノ:久石譲
演奏:Future Orchestra Classics
ゲストコンサートマスター:郷古簾
コーラス:麻衣&リトルキャロル

マニピュレーター:前田泰弘
レコーディング&ミキシングエンジニア:秋田裕之
アシスタントエンジニア:安中龍磨(Bunkamuraスタジオ)、萩原雪乃(ビクタースタジオ)
マスタリングエンジニア:藤野成喜(ユニバーサルミュージック)

音楽制作マネージメント:川本伸治、佐藤蓉子、宮國力
楽譜制作:蓑毛沙織、蓮沼淳史
マネージメントオフィス:ワンダーシティ

スタジオ:Bunkamuraスタジオ、ビクタースタジオ

音楽製作:スタジオジブリ
製作プロデューサー:鈴木敏夫

 

主題歌
地球儀 米津玄師

作詞・作曲・プロデュース:米津玄師
編曲:米津玄師、坂東祐大

レコーディング ミックス:小森雅仁
マスタリング:ランディ・メリル/スターリングサウンド

ボーカル:米津玄師
ドラム:石若駿
ピアノ,シンセベース:坂東祐大
バグパイプ:十亀正司
制作:リイシューレコーズ

 

and more…

 

 

『The Boy and the Heron (Original Soundtrack)』
Joe Hisaishi

01 Ask Me Why (Evacuation)
02 White Wall
03 Gray Heron
04 Memories
05 Gray Heron II
06 A Feather in the Dusk
07 Adolescence
08 Gray Heron III
09 Silence
10 The Curse of the Gray Heron
11 Feather Fletching
12 Ask Me Why (Mother’s Message)
13 A Trap
14 Sanctuary
15 The Master of the Tomb
16 Ark
17 Warawara
18 Reincarnation
19 Rain of Fire
20 Cursed Sea
21 Farewell
22 Reminiscence
23 Close Encounter
24 Diversion
25 A Girl of Fire
26 Mahito and Himi
27 The Corridor Door
28 A Burrow
29 A Song of Prayer (The Delivery Room)
30 Granduncle
31 In Secret
32 The King’s Parade
33 Granduncle’s Desire
34 Ask Me Why (Mahito’s Commitment)
35 The Great Collapse
36 The Last Smile
37 Spinning Globe / Kenshi Yonezu

 

Disc. 久石譲 『Ask my why』(Pf.solo) *Unreleased

2023年7月21日 初演

 

映画『君たちはどう生きるか』よりメインテーマ。コンサートで演奏されるピアノ・ソロ版は音源化されていない。

 

 

作品の変遷

2022年宮﨑駿監督の誕生日にプレゼントされたピアノ曲。

オリジナルは5分程度でまとめられていると推察する。もともとの着想は三鷹の森ジブリ美術館オリジナルBGMとして使用できることも想定されている。館内や展示室音楽としてループ再生で流れるため5分は必要になると考え得る。「祈りのうた for Piano」や「WAVE」も5~6分の楽曲としてまとめられている。

 

 

2023年7月14日公開映画『君たちはどう生きるか』のメインテーマとなる。この曲を初めて聴いた宮﨑駿監督の強い希望である。劇中には映画のシーンに合わせて書き直された楽曲で3度登場する。サウンドトラックには「1. Ask me why(疎開)」「12. Ask me why(母の思い)」「34. Ask me why(眞人の決意)」の3曲とて収録されている。映像に合わせて音楽が付けられているためいずれも短い尺での使用で一曲としては完結していない。

 

 

2023年7月21,22,24日開催「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2023」にてサプライズ披露される。アンコールでピアノ・ソロ版が演奏される。曲構成は1コーラス~間奏~2コーラスでまとめられている。

以降、日本公演や海外公演のアンコール曲として人気となる。

 

 

2025年8月23日~27日開催「Joe Hisaishi Special Concert 祈りのうた 2025」にてアンコール曲。曲構成は以前よりも少し短くなっている。

 

君たちはどう生きるか
Ask me why (大阪・東京)

久石譲によるピアノソロです。〈祈りのうた2025〉では少し曲尺が短くなっていました。1コーラス~間奏と行ってAメロに戻ってきますが、そのAメロ終わりでrit.して、次のサビには進まずに一気にアウトロの最終和音へと飛びます。2コーラスはフルで演奏されていません。アンコールサイズとしては、もしかしたらこれから定着していくバージョンになるのかもしれませんね。

Blog. 「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・レポート より)

 

 

音楽ストリーミング・サービスなどでは久石譲ではないピアノ奏者による演奏が存在する。配信リリースもされている。これはカバー版であり、久石譲による演奏は音源化されていない。なお、オリジナル版にあたる宮﨑駿監督へプレゼントされたバージョンも音源化されていない。いつの日か聴いてみたい。

 

 

 

Disc. 久石譲 『Symphonic Suite “Ponyo” / 交響組曲「崖の上のポニョ」』 *Unreleased

2023年7月21日 初演

 

2023年7月21日~24日開催「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2023」にて交響組曲版の世界初演。

以降は再演されていない。

 

 

作品の変遷

2008年8月4,5日開催「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」にて演奏。

『崖の上のポニョ』
深海牧場〜海のおかあさん (Vo.林正子)
波の魚のポニョ〜フジモトのテーマ (Vo.藤岡藤巻)
ひまわりの家の輪舞曲 (Vo.麻衣)
母の愛〜いもうと達の活躍〜母と海の讃歌
崖の上のポニョ (Vo.大橋のぞみと藤岡藤巻)

 

2008年12月31日開催「久石譲 ジルベスターコンサート 2008」にて演奏。

[崖の上のポニョ組曲]
深海牧場
海のおかあさん
浦の町
波の魚のポニョ
発光信号
母と海の賛歌
崖の上のポニョ

 

2009年8月15日~9月3日開催「久石譲 Orchestra Concert 2009 ミニマリズムツアー」にて演奏。

Ponyo on the Cliff by the Sea (with Chorus)
Movement. 1
Movement. 2
Movement. 3
Movement. 4

 

2011年5月19日開催「第4回クラクフ映画音楽祭 (4th Film Music Festival in Krakow)」にて演奏。

20011年6月18日~7月9日開催「久石譲 3.11 チャリティーコンサート 〜ザ ベスト オブ シネマミュージック〜」にて演奏。

Ponyo on the Cliff by the Sea
深海牧場
グランマンマーレ
母の愛
いもうと達の活躍
母と海の讃歌
崖の上のポニョ

 

 

2023年7月21,22,24日開催「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2023」にて交響組曲版の初演。

 

Symphonic Suite “Ponyo” / 交響組曲「崖の上のポニョ」

今年のWORLD DREAM ORCHESTRA(WDO)は”French”がテーマです。

クラシックではドビュッシーの交響詩「海」とラヴェルの「ラ・ヴァルス」、エンターテインメントとしては「Woman」と最新の交響組曲「崖の上のポニョ」を演奏します。また、今回は合唱も入ります。東京と名古屋では栗友会の皆さん、大阪では日本センチュリー合唱団の皆さんと共演します。

(久石譲)

(「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2023」コンサート・パンフレットより 抜粋)

 

 

レビュー

久石譲:交響組曲「崖の上のポニョ」
Symphonic Suite “Ponyo”

構成曲
1.深海牧場
2.海のお母さん
3.出会い
4.浦の町
5.クミコちゃん
6.ポニョと宗介
7.からっぽのバケツ
8.波の魚のポニョ
9.ポニョと宗介 II
10.宗介のなみだ
11.母の愛
12.いもうと達の活躍
13.母と海の讃歌 *後半部
14.崖の上のポニョ

 

 

 

Disc. ニコラス・ホルヴァート 『Studio Ghibli Piano Collection』

2023年7月21日 CD発売 RBCP6825
2023年7月21日 LP発売 RBJE2078

 

スタジオ・ジブリの素晴らしい映画音楽が、美しいピアノソロ作品に!

フィリップ・グラス、フランツ・リスト、クロード・ドビュッシー、エリック・サティらといったクラシック曲の名演で世界的に名を馳せ、名誉あるスタインウェイ・アンド・サンズ アーティストにも選出されているフランス人ピアニスト”ニコラ・ホルヴ”によるアレンジとピアノソロ演奏による作品。久石譲の公式ピアノスコアに基づきながらも新鮮さに溢れるアレンジと、どこまでも美しいピアノソロの音色は、ジブリ・ファンのみならず、音楽ファンをも新たな音世界へと誘います。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

CD1枚組全23曲
LP2枚組全24曲
Deep Sea Pastures (CD Edition only)
Starting the Job (Vinyl Edition only)
Mother Sea (Vinyl Edition only)

2023年6月1日より先行デジタル配信/サブスク開始
CD/LP収録曲違い含め全25曲

 

 

原曲を基本としながら端正で流麗なピアノ演奏を楽しむことができる。またオーケストラ曲からピアノアレンジされたものも多く、たしかなテクニックで魅せる仕上がりになっている。ふだんピアノソロとして聴けないような楽曲もあり、ピアノ好きな人には、まるで上級用楽譜をまるごと一冊聴いて楽しめるような、クラシカルなピアノアルバムだ。

 

ダイジェスト動画も公開されている。

Studio Ghibli Piano Collection (約19分)

from Wayo Records YouTube

 

 

Studio Ghibli – Wayo Piano Collections (CD)

01 Fantasia for Nausicaä
02 The Road to the Valley
03 Confessions in the Moonlight
04 The Lost Paradise
05 The Wind Forest
06 My Neighbor Totoro
07 Kiki’s Delivery Service
08 Heartbroken Kiki
09 Porco e Bella
10 Madness
11 Ashitaka and San
12 Kodamas
13 Princess Mononoke
14 One Summer’s Day
15 Sootballs
16 The Sixth Station
17 Merry-Go-Round of Life
18 Deep Sea Pastures
19 Ponyo on the Cliff by the Sea
20 A Journey (A Dream of Flight)
21 Nahoko (An Unexpected Meeting)
22 The Procession of Celestial Beings
23 When I Remember This Life

Time: 79:16

輸入盤:国内流通仕様
デジパック仕様

 

 

Studio Ghibli – Wayo Piano Collections (LP)

SIDE A
01 Fantasia for Nausicaä
02 The Road to the Valley
03 Confessions in the Moonlight
04 The Lost Paradise
05 The Wind Forest
06 My Neighbor Totoro

SIDE B
01 Kiki’s Delivery Service
02 Starting the Job
03 Heartbroken Kiki
04 Porco e Bella
05 Madness
06 Ashitaka and San

SIDE C
01 Kodamas
02 Princess Mononoke
03 One Summer’s Day
04 Sootballs
05 The Sixth Station
06 Merry-Go-Round of Life

SIDE D
01 Mother Sea
02 Ponyo on the Cliff by the Sea
03 A Journey (A Dream of Flight)
04 Nahoko (An Unexpected Meeting)
05 The Procession of Celestial Beings
06 When I Remember This Life

Time: 80:50

輸入盤:国内流通仕様

 

Disc. 久石譲指揮 フューチャー・オーケストラ・クラシックス 『ブラームス:交響曲全集』

2023年7月19日 CD-BOX発売 OVCL-00820

 

ロックなベートーヴェンから最先端のブラームスへ!
未来のクラシックを問う久石譲とFOCの「ブラームス交響曲全集」ついに完成!

クラシック音楽へのかつてないアプローチが大きな話題を集める、久石譲とFOCによる挑戦。このブラームス全集は、2020年から取り組んだブラームス・ツィクルスより第2番・第3番・第4番と、新たにセッション録音をした第1番が収録されています。3年半という時間をかけた入魂のアルバムです。

久石譲のもと若手トッププレーヤーが集結したFOCは、瞬発力と表現力が爆発。作曲家ならではの視点で分析された演奏は、常識を打破するような新しいブラームス像をうち立てています。

(メーカー・インフォメーション/CDBOX装丁 より)

 

 

 

久石譲ロングインタビュー「ブラームスはヘビメタだ!」

聞き手・構成:柴田克彦(音楽評論家)
オブザーバー:江崎友淑(録音プロデューサー)

▼トピック紹介▼
・ブラームスの難しさ
・FOCのブラームスとは?
・録り直した第1番
・第2番の独自性
・第3番への思い
・第4番の罠
・最後に

(ブックレット p.2-12掲載)

 

曲目解説 寺西基之

(ブックレット p.13-19掲載)

 

久石譲/フューチャー・オーケストラ・クラシックス/オーケストラ メンバーリスト

(ブックレット p.20-25掲載)

 

Brahms is Heavy Metal!

*久石譲ロングインタビュー 英文

(ブックレット p.26-34掲載)

 

Music Commentary

*楽曲解説 英文

(ブックレット p.34-41)

 

Profile Joe Hisaishi / Future Orchestra Classics(FOC)

*英文

(ブックレット p.42-44)

 

 

 

ブラームスはヘビメタだ!

聞き手・構成:柴田克彦(音楽評論家)
オブザーバー:江崎友淑(録音プロデューサー)

 

ブラームスの難しさ

柴田:まずは、フューチャー・オーケストラ・クラシックス(FOC)の演目として、ベートーヴェンの次にブラームスの交響曲を選ばれた理由からお聞かせください。

久石:ベートーヴェンに並ぶ作品といえばやはりブラームスしかない。まだ早いかもしれないと思いながらも、チャレンジすることにしました。ただ、ブラームスは本当に難しい。

柴田:どんな点が難しいのでしょう?

久石:ベートーヴェンはもちろん、歌謡的なイメージのあるシューベルトでさえも、交響曲ではモティーフを重要視してきちんと作ってあります。モティーフ的な楽曲は、論理的な構造を明確にできるので、全体の構成もクリアになります。でもブラームスは、歌謡的なメロディを無理矢理モティーフ化しようとしている。その扱い方がとても難しいのです。

柴田:ブラームスの交響曲の満足いく演奏は、意外に少ないですね。

久石:マーラーなどに受け継がれていく歌謡メロディ的な要素、すなわち非常にロマン的な体質と、ベートーヴェンに憧れている論理的な部分が混然としているので、指揮者にとっては難儀なのです。だから僕も若干躊躇しました。

 しかも、ドイツ音楽という括りの重い演奏=「これぞブラームス!」との見方が横行してしまった。FOCでもその問題が出てしまうので、改めて「うちはチャンバー・オーケストラで、スポーツカーだから」と言わないといけなかった。フル・オーケストラはダンプカーで、カーブもゆっくりとしか曲がれない。でもスポーツカーはきゅっと曲がれます。FOCではそれをやりたいのに、皆少しずつ次を待ってしまう。

 ブラームスも初期の時はFOCと同じくらいの編成なので、そんなに重く弾いているわけではない。ところが一般的なアプローチは、後期ロマン派のマーラーなどへ繋がり、さらには20世紀のドイツ的な重い表現へと繋がっていった。すると演奏家がそこから抜け出すのはすごく難しい。

柴田:確かにそうですね。

久石:FOCのブラームスでも、1番は一度録音し、リリースもしています。でもそれを聴くと、速いテンポで論理的に扱おうとし過ぎたために、歌っていない。なので1番だけセッションで録り直しをしました。歌謡的な要素と論理的な部分のマッチングを上手くやらないとブラームスは成立しないというのが、今回よく分かりましたね。

 

FOCのブラームスとは?

柴田:前のベートーヴェンの交響曲全曲演奏の際に「ロックやポピュラー音楽を知った上でのベートーヴェン」という話をされていましたが、今回その点はどうですか?

久石:今回その発想はあまりありません。それよりも、今まで聴いてきた重すぎるブラームスはやりたくないとの思いが強かった。とはいえアップテンポにしてただ縦を合わせたような演奏だとブラームスにならない。従って、現代的なテンポやインテンポを基準にはするが、必ず大きく歌う。その点をものすごく気にかけました。

柴田:ベートーヴェンの時はリズムを相当意識されていましたが、今回はどうですか?

久石:とても大事にしています。ただ、ブラームスに颯爽という印象はないでしょう? 遅くはないが、颯爽ではない。アップテンポにすると絶対弾けないくらい難しいところが出てきます。だから、テンポを上げればいい、リズムを強調すればいいってものでもない。ブラームスの難しさはそういうところにもありますね。

柴田:では、ベートーヴェンの時に話されていた「ロックのような」という要素は?

久石:もちろんその要素はあります。でも音楽が軽くない。ブラームスの場合は、聴覚的に感じる1拍目が実際の1拍目ではなく、裏拍が多いので緊張させられます。それでも、テンションを保つリズムの要素はすごくあるので、リズムから追い込んでいく僕のスタイルは変わっていません。そう、ベートーヴェンがロックだとすれば、ブラームスはヘビメタ。重い。同じリズムだけど性格が違う。

柴田:「ブラームスはヘビメタだ!」というのはキャッチーですね(笑)。

久石:そこだけ切り取られると困るけど(笑)。

柴田:ビブラートに関してはどうですか?

久石:ベートーヴェンの時から基本的にかけていません。例えば、玄関のピンポーンってチャイム。あれは正弦派に近いです。正弦波はピュアで音がすごく通る。例えばうちの犬は、テレビの中のドラマでチャイムの音が鳴ると、慌てて玄関に吠えて行きます。つまり正弦波だと距離感がわからない。でもビブラートをかけると波形がぐちゃぐちゃになる。そのように複雑になればなるほどニュアンスが出るわけです。ところがビブラートなしで出す音は正弦波に近い。すると遠くまで届くのですが、そばで聞いている人には細く感じる。しかもビブラートがないと味気なくなるので、指の速度や弓の返しでニュアンスを出すといった別の工夫が必要になります。ともかくFOCがビブラートなしで演奏する理由は、遠くまで聞こえるその抜けの良さを一番大事にしたいから。それによって管楽器のアンサンブルも見通しがよくなります。

江崎:1番の第4楽章の最後は、普通は弦楽器や管楽器がティンパニに消されて聞こえないんですよ。だけどFOCは明確に聞こえている。不思議に思っていたんですよね。

柴田:あとブラームスでは立奏をされていますね。

久石:室内オケなので、ホールが大きくなるとちょっともの足りないと思うことがありました。そういう時に立った方が寂しくないという、非常に単純な理由でした。またクルレンツィス率いるムジカエテルナの立奏に刺激されたのも一因ですし、僕がやっている現代音楽の公演も立奏が多い。それに今回実験したんですよ。座って一部録った後に立って演奏してみた。すると立った方が音の抜けがいい。ですから今回は全部立奏での録音です。

柴田:ナガノ・チェンバーからFOCへ、メンバーも替わりながら続けてきて、オーケストラ自体の変化は感じられますか?

久石:コアなメンバーはあまり変えていないから、どうでしょうか。コンサートマスターの近藤さんやホルンの福川さん、チェロの向井さんあたりが引っ張ってくれている。

江崎:オケの”音”はもう完全に定着しましたね。ブラームスの4番は普段のメンバーとかなり違うんですよ。だけど全く音色に遜色がない。

久石:弾き方が違う奏者がいると皆分かる。若干遅れるなど、少し浮くんです。それが2、3日すると気にならなくなる。僕も「うちはスポーツカーなんだから、溜めるんじゃない」などとしつこく言ってはいます。でも皆な理解して最後はFOCの音になっている。

柴田:それにしても、ブラームスはピリオド系の演奏を含めてなかなか成功しないですよね。

久石:この数年、フランソワ=グザヴィエ・ロトとレ・シエクルのフランスものが一番トレンドな演奏になっていますよね。ピリオド系の人達は、基本的にいま主流になりました。あと、レコード芸術誌の「新時代の名曲名盤500」で、僕が日本人で初めてベートーヴェンの交響曲第7番で1位になったんですよ。FOCの演奏が、カラヤン、フルトヴェングラーなどを含めた全部のCDの中で1位になった。8番も2位になりました。もちろんフランスものなどはほとんどロトが1位です。ところが、ブラームスだけは昔のまま往年の指揮者やオーケストラがトップです。先ほど言ったように、ロマン的な体質と論理的な体質の、どちらかに焦点を当てても、何か足りない面があるので最も現代的な演奏に行き着けないのではないですか?

柴田:すると、今回の録音がベートーヴェンの7番8番にあたるかもしれませんね。

久石:そうであって欲しい(笑)。

柴田:ところで、今回時間的にはCD2枚に入る4曲を、3枚に分けた理由はあるのですか?

久石:1番と4番はとりわけ納得がいく出来栄えだったので、それぞれ1曲をじっくり聴いてほしいと思い、ディスクを独立させることにしました。特にこの全集のために改めてセッションを組んだ1番は、演奏への思い入れも強かったのです。

 

録り直した第1番

柴田:1番を録り直したのは、やはり「歌っていない」点が最大の理由ですか?

久石:そうですね。アップテンポであることに気を遣い過ぎ、斬新さを求め過ぎてしまった。でも今回の再録音でやっとできたという感じがしています。

柴田:基本的なテンポなどは前と一緒ですか?

久石:第1楽章の冒頭部分だけは、少しゆったりさせました。

柴田:あそこはウン・ポコ・ソスティヌートであって、アンダンテやアダージョではないんですよね。

久石:そうです。だが普通は迷宮に入るみたいに重く始まるケースが多く、それは違うと僕はずっと思っていました。今回はそこをちゃんとできた。テンポは変わらず速いですが、前回よりもある意味自然になっています。でも1番が一番難しい。作曲に時間かけ過ぎなんです。

柴田:構想から完成まで約20年というのは、作曲家の立場で見てどうなんですか?

久石:やり過ぎ。20年かかった意味はスコア見ればわかるのですが、3オクターヴに亘って三度で動かしたりする。例えば、高い方をフルート、1オクターヴ下をクラリネット、もう1オクターヴ下をファゴット、場合によってチェロなどで弾いたりする。だから厚ぼったい。時間をかけるとそのようにクドくなるんです。なので今回は、例えば一番下のパートに「弱く吹いてください」とお願いし、抜けをできるだけ良くするよう心がけました。僕らもそうですが、時間をかければかけるほど厚くなる。スコアを眺めていると「うーん…重ねておこうかなぁ」と。作曲家の心理として必ずありますね。

柴田:久石さんは、作曲にそれほど年数をかけたことはありますか?

久石:一番長くなったのは交響曲第1番。第1楽章を書いて、第2楽章の80%くらいできた時に、これでいいのか?と。そこで躓いて、2~3年ほどブランクがあり、結局7年ちょっとかかった。でも第2番は6ヶ月。オーケストレーションは翌年でしたが、かなり速い。

柴田:ブラームスと同じですね。それは解放感によるものでしょうか?

久石:交響曲とはこういうものだと分かるのに時間がかかるんです。ブラームスの場合は、あまりにも巨大なベートーヴェンの作品があるから、それを意識し過ぎたのでしょう。なので、これでいいのだと実感するのに、すごい時間がかかった。まだ足りないのではないかと、絶えず思ってしまうわけです。

柴田:やはり交響曲は特別なのですね。

久石:特別になってしまいますね。僕の交響曲で言うと、2番3番はコンセプチュアルなんですよ。ミニマルを完全に前面に押し出しているので、各楽章のテーマやリズムがわりとはっきりしている。1番の時はそれがはっきりせず、交響曲はこうあるべきだなど、色々な思いが入ってきてしまった。他は全部ミニマル的な単一動機の延長で行けたのが、1番だけ違うんですよ。だからブラームスも2番は非常にコンセプチュアルです。

 

第2番の独自性

柴田:2番はやはり”自然”や”田園”がコンセプトでしょうか?

久石:1番と2番の関係は、ベートーヴェンの5番「運命」と6番「田園」にあたります。2番は基本的に「田園」を意識していますね。ただ、深刻な音楽と深刻ではない音楽というよりも、純音楽的な要素で作ったものと情景的な要素を入れて作ったもの、と考えた方がいいと思います。

柴田:2番は特に第1楽章の演奏が難しいように感じます。

久石:ソナタ形式というのは、呈示部で、激しく男性的な第1主題、優しい第2主題を出して、展開部と再現部があるのが基本です。でも2番の場合は、第1主題と第2主題のキャラクターの差があまりないんです。しかも似通った別の経過的なフレーズもメロディに聞こえるので、呈示部だけで5つか6つくらいの主題が出てくる感じがする。そこがまず演奏を難しくしています。

柴田:呈示部を繰り返すとさらに大変ですね。

久石:ゴルフ場で3ホール前にアイアンを忘れてきたようなものです。普通3ホールも戻れない。何が言いたいかというと、僕はいつも呈示部を必ず繰り返します。ブラームスは、主題が一杯あって山越え谷越えしてきているから、もう一回戻るのは本当に大変です。でも僕は行う。テンポを速くして、思い入れを込めすぎないようにします。

 特に2番は、1番で苦しんだ後なので旋律が自然に浮かんでそのまま書いたという感じがします。主題になるようなフレーズを山ほど出すので、全体の構成がはっきりしない。再現部でもう一回呈示部と同じことを繰り返す時も辛い。まだやるのかって(笑)。その後終結部が来ると途端に元気になって、バタバタして終わる。演奏が息切れするんです。そうしないためには呈示部をあっさりと表現する。いつも出てくるメロディに全部気持ちを込めていったら、息切れするに決まっています。

 

第3番への思い

柴田:3番も扱いが難しい曲ですね。

久石:僕は一番好きです。まずは冒頭の主題のリズムの凄さ。6/4拍子なのに聴覚上の1拍目と6拍目が区別できない。これが独特の緊張感を出しています。また有名な第3楽章のメロディもいい。

柴田:3番は力強い曲なのに、全楽章が弱音で終わります。これは珍しいですよね。

久石:僕はあまり意識していませんが、斬新ではありますね。特に、曲の最後に冒頭のテーマが出てくる箇所。そのまま出したらわざとらしいので、全部トレモロなんです。遠くに去っていく感じをさりげなく出したいということでしょうね。

柴田:意識しないということは、3番目になると結構自然に書かれている?

久石:3番の構成力のシンプルさに感心しています。カタルシスをその前にはっきり出しているので、静かに終わるのはすごくいいなといつも思っていますね。

 この曲は、ジブリの監督の高畑勲さんが大好きだったんですよ。《かぐや姫の物語》のファイナルミックスの時に、ロビーで3番のポケットスコアを見ていたら、高畑さんがスコアを取り上げて、「ここ、ここなんですよ、これが良いんですよね」と、その最後の主題が戻る箇所を指摘されたんです。映画監督でそこまでわかる人はまずいない。ちょっとびっくりしましたね。いつも3番を演奏すると、高畑さんを思い浮かべます。

柴田:それはすごいですね。

久石:ただ、あの部分は譜面通りにやるとメロディが絶対聴こえない。そこで、これは秋山和慶先生から教わったのですが、弦を半分普通に弾いて、半分はトレモロで、と。僕は最初、譜面通りにやっていたのですが、後で聴くと全然メロディが出てきていない。先生の仰る通りだなと思って、以後はその通りにやっています。

 

第4番の罠

柴田:4番についてはいかがでしょうか?

久石:4番は、第1楽章の冒頭部が象徴的です。「ティーラ、ターラ」「ティーラ、ターラ」と続く下行上行の動きは、全て同じ音型。とても論理的です。しかしどの指揮者も、ものすごくロマンティックに表現する。皆がそこに命をかけて、ムードたっぷりなんです。冒頭部にそうした思いを込めすぎると後が大変なので、僕はそうしません。

柴田:あの出だしにはロマンティックな演奏伝統のようなものがありますね。

久石:逆に言うと、あれが一番ブラームスらしいところ。論理的で明快な音型なのに、演奏者はなぜかものすごくロマンティックにやろうとする。これがブラームスの危険さ!なのです。つまりロマン的に書いていながら、次のメロディに発展させず、あくまで論理的に処理している。そこに論理的でありロマン的でもあるというブラームスの罠が全部仕込まれています。

江崎:音大なんかでも、音が出る前からビブラートをかけろなどと教わりますからね。

久石:そのくらいにブラームスはこうあらねばと皆が思ってしまっている。なので今回、真逆なことをやっています。

 あと4番の場合は、第4楽章のパッサカリアがすばらしい音楽ですよね。4番には2番の時に話した主題の出し過ぎがない。整備されていて、最後がパッサカリアでしょう。結局構成に関してはバロック時代に戻っている。だからすごく明快になっています。

江崎:言わせてください。今回の第3楽章。この快速をこのように弾けてる演奏は他にないですよ。もう痛快以外の何物でもないです、本当に。

久石:プロデューサーに褒められて嬉しいね。まあ第4楽章に話を戻すと、当時一番新しかったのは多分リストで、交響詩がソナタ形式に変わるシステムとして登場し、物語性を盛り込んでいった。しかしブラームスは最も古臭いと言われる位置にいて、ソナタ形式にこだわってきた。その彼が最終的に選んだのがパッサカリア。この意味はすごく重いと思います。8小節の低音のラインは変えず、上の動きで変えていく。それによって生まれる構成力が、おそらくブラームスが最終的に行き着いた答えの一つではないでしょうか。

柴田:重くたっぷりと表現されがちな第4楽章も、久石さんの演奏はわりと普通に進みますよね。あそこもアレグロ・エネルジコ・エ・アパッショナートで、別に遅いテンポではない。

久石:そう、全然遅くない。皆は重いと思っているけど、我々はスポーツカーですから。

 

最後に

久石:ブラームスを振るのは重荷ではありましたが、幸せでもありました。論理的な部分と感覚的な部分の両立は誰にとっても生きて行く上での最大の課題です。その課題が一番顕著に出てくるのがブラームス。両方を融合させなければいけない。今回出来たかどうか分からないけど、最大限頑張りました。

 でも、当時1番の初演を聞いた人が「第4楽章の主題はベートーヴェンの9番の主題に似てませんか?」と訊いた時、ブラームスは「そんなことは馬でもわかる」とはっきり言ってる……(笑)。僕はそういうブラームスが好きです。あの人はユーモアもクールです。決して深刻な人じゃないんですよ。だから誰があんな深刻な音楽(演奏)にしたんだ!と言いたい。それからブラームスが「ドヴォルザークがクズ箱に捨てたスケッチで僕はシンフォニー1曲書ける」と言ったという有名な逸話があります。彼はドヴォルザークのメロディがすごいことをちゃんと言う。俺が!俺が!ではないですよね。その意味でもブラームスを堅苦しくなく演奏できる状態にしたいですね。

(2023年5月11日)

 

(久石譲ロングインタビュー「ブラームスはヘビメタだ!」 ブックレットより)

 

 

 

 

 

過去コンサート・レポートなど

 

 

ブラームス:交響曲全集《特別装丁BOX》 久石譲&FOC

 [Disc1]
 交響曲 第1番 ハ短調 作品68
 [Disc2]
 交響曲 第2番 ニ長調 作品73
 交響曲 第3番 ヘ長調 作品90
 [Disc3]
 交響曲 第4番 ホ短調 作品98

久石譲 (指揮)
フューチャー・オーケストラ・クラシックス

〈録音〉
第1番:2023年5月10-11日 長野市芸術館 メインホール(セッション)
第2番:2021年7月8日 東京オペラシティ コンサートホール、7月10日長野市芸術館 メインホール(ライヴ)
第3番:2022年2月9日 東京オペラシティ コンサートホール(ライヴ)
第4番:2022年7月14日 東京オペラシティ コンサートホール、7月16日長野市芸術館 メインホール(ライヴ)

SACD Hybrid
2ch HQ (CD STEREO/ SACD STEREO)

●初回限定 特別装丁BOXケース&紙ジャケット仕様
●豪華ブックレットには久石譲ロングインタビューを掲載
●第1番は当全集のために新たに行なったセッション録音を収録

 

 

Producer: Joe Hisaishi

Recording & Balance Engineer: Tomoyoshi Ezaki
Recording Engineer: Takeshi Muramatsu, Masashi Minakawa
Mixed and Mastered at EXTON Studio, Tokyo

Production Management: Shinji Kawamoto (Wonder City Inc.)
A&R: Moe Sengoku

Photo: Dai Niwa (Box, P.7)
Cover Design: Miwa Hirose, Ayumi Kishimmoto

Executive Producer: Ayame Fujisawa (Wonder City Inc.), Tomoyoshi Ezaki

Joe Hisaishi by the courtesy of Deutsche Grammophon GmbH

 

Disc. 井上あずみ 『Dear GHIBLI II』

2023年7月5日 CD発売 FRCA-1321

 

「となりのトトロ」「さんぽ」「君をのせて」…ジブリの歌姫、井上あずみのジブリカバー集!

ジブリ映画『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』の主題歌、テーマ曲を歌う井上あずみのデビュー40周年を記念するアルバムです。2010年に自身の曲のセルフカバーを含め全14曲のジブリカバーアルバムを発売。今回はその第二弾となり、「君をのせて」「となりのトトロ」「さんぽ」「風の通り道」を含むジブリの名曲を全12曲、新規録音で収録します。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

 

 

01. いのちの名前
 「千と千尋の神隠し」テーマソング
02. となりのトトロ (2023)
 「となりのトトロ」エンディング主題歌
03. 風になる
 「猫の恩返し」主題歌
04. 君をのせて (2023)
 「天空の城ラピュタ」挿入歌
05. さよならの夏
 「コクリコ坂から」主題歌
06. Arrietty’s Song
 「借りぐらしのアリエッティ」主題歌
07. ルージュの伝言
 「魔女の宅急便」挿入歌
08. 鳥になった私
 「魔女の宅急便 ヴォーカルアルバム」より
09. ひこうき雲
 「風立ちぬ」主題歌
10. テルーの唄
 「ゲド戦記」挿入歌
11. さんぽ (2023)
 「となりのトトロ」オープニング主題歌
12. 風のとおり道
 「となりのトトロ イメージソング集」より