Info. 2022/10/08-12 「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」(フランス3都市) 開催決定!! 【10/8 Update!!】

Posted on 2019/09/29

2022年10月8-12日、久石譲によるスタジオジブリ宮崎駿監督作品演奏会がフランスの3都市、リール、ナント、ボルドーにて開催決定!

2017年6月パリ世界初演、「久石譲 in パリ -「風の谷のナウシカ」から「風立ちぬ」まで 宮崎駿監督作品演奏会-」(NHK BS)TV放送されたことでも話題になりました。 “Info. 2022/10/08-12 「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」(フランス3都市) 開催決定!! 【10/8 Update!!】” の続きを読む

Info. 2021/10/01 久石譲「I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~」FOC Vol.3 (長野公演)より 動画配信

Posted on 2021/10/01

2021年7月8,10日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」コンサートより、久石譲の新曲「I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~」が動画配信されました。ぜひご覧ください。 “Info. 2021/10/01 久石譲「I Want to Talk to You ~for string quartet, percussion and strings~」FOC Vol.3 (長野公演)より 動画配信” の続きを読む

Overtone.第51回 「久石譲指揮 新日本フィル 第637回定期演奏会」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2021/09/28

9月11,12日開催「久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第637回 定期演奏会」です。終演後は、新日本フィル・ファンの熱い感想がSNSに溢れていました。また12日公演は、アーカイブ有料配信も期間限定(9/22-9/28)で視聴でき、多くの人が楽しめたコンサートとなりました。

今回ご紹介するのは、ふじかさんのコンサート・レポートです。もう6回目にもなります(プレッシャーになってない?!その話はのちほど)。予習していないとここまで書けないかも、そんな全体から細部まで遠近法なレポートお楽しみください。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #637

[公演期間]  
2021/09/11,12

[公演回数]
2公演
9/11 東京・すみだトリフォニーホール
9/12 東京・サントリーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙

[曲目]
新日本フィル創立50周年委嘱作品
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番) *世界初演
I. existence
II. where are we going?
III. substance

—-intermission—-

マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」

 

 

新日本フィル 第637回定期演奏会(指揮 久石譲)の模様をレポートさせて頂きます。

2021年9月11日14:00開演 すみだトリフォニーホール

 

残暑の残る9月中旬、新日本フィルの新シーズン開幕と新日本フィルのComposer in Residence and Music Partner というポジションに就任した久石さんが就任祝いを兼ねてのコンサートが開催されました。

今回はマーラーの『Symphony No.1』を軸に久石さんの新作『Symphony No.3』を世界初演という、とても重厚なプログラムが組まれました。まだまだコロナ禍の影響の真っただ中にいる、昨今マーラーの”巨人”がこの世の中にどのように響くのか…とても期待にあふれるコンサートになりました。

 

チケットもぎりを過ぎ、ホワイエに入るとトリフォニーホールから新日本フィルへ豪華な花束が贈られていました。ホール内へ入ると、今回は巨大編成のオーケストラのためか、ステージの端ギリギリまで椅子が置かれています。1st ヴァイオリン16人の巨大編成。超大作の2曲がホールにどのような響きで伝わるのかワクワクしてきました。

 

 

Joe Hisaishi『Metaphysica(Symphony No.3)』

1楽章 existence

独特のリズムにホルンのメロディからスタート。口ずさみにくいような複雑なメロディと交錯するリズムからは、高速で螺旋階段を昇っていくような印象を受けました。その後、冒頭のメロディを変容させながら、弦楽、金管へと受け継がれていきます。低音弦のピチカートが現れるあたりからは『Contrabass Concerto』の様な雰囲気の箇所も。

中間部の息の長いヴァイオリンメロディからはクラシックの要素も取り入れられたのかなと感じるところもありました。後半に向かうにつれ、増えてゆくパーカッションからは『The East Land Symphony』の1楽章に通ずる世界観も。

 

2楽章 where are we going?

前作の『Symphony No.2』の1楽章と同じような雰囲気のタイトルを持つ本楽章。浮遊感と虚無感を感じるような独特なメロディが全体を構成していきますが、どこかクラシカルな響き。交響曲における緩急楽章を意識したのかなと思いました。しかし、冒頭で提示されたメロディは変奏をしていき、『Symphony No.2』の2楽章に共通した空気を感じさせます。ミニマルの交響曲なので、あるモチーフを繰り返しながら変容していくというところは一貫されているようでした。

 

3楽章 substance

久石さんの力強い振りとともに、響く2音の和音。その後、ミニマル特有のパルスと弦楽器のうねりで進行していきました。弦楽が下から上へと上昇していく様子からは、『弦楽オーケストラのための螺旋』や『5th Dimension』、打楽器が一定のリズムを刻む様子からは『The End of The World』の1楽章のような印象も。終盤に向かうにつれリズムとメロディが幾重にも重なり、独特なグルーヴ感を感じさせ、そのまま力強くフィナーレへと向かいました。

 

コンサートで聴いた様子を箇条書きでメモし、その後配信で一度確認しながらレポートを書きましたが、たくさんの要素が緻密に構成された本楽曲はなかなか感想を書くのが難しく、箇条書きになってしまいました。

『Symphony No.2』と似たような変奏部分の要素はあり、『The East Land Symphony』のような重たく、緊迫した様子も少なく、純粋な音の追求の作品であるということは伝わってきましたが、これから音源化されたものを何度も繰り返し聴いて自分の中に取り入れていきたいと思う作品でもありました。

 

 

休憩

 

 

Gustav Mahler:『Symphony No.1 in D major”Titan”』

1楽章 Langsam.Schleppend.Wie ein naturlaut.

短・長とも感じさせない弦楽の長い和音の上に、木管の4度音程の下降が次々と紡がれ、遠くから聴こえるファンファーレの華やかな音色。それに続くカッコウの鳴き声のような音色。ホルンのふくよかな音色。短い冒頭からすでにたくさんの要素を詰め込んだ超大作がどっしりとスタートしました。主題へと向かうための半音階的な低音弦のフレーズもジリジリと迫ってくるような雰囲気にワクワクが膨らみます。

それから続く主題のメロディ。牧歌的で明るいメロディから幸福感が伝ってきました。今回も冒頭主題の繰り返しはきっちりと再現。2度目の主題は1度目とはまったく異なった音色で聴こえるのは、毎回不思議に感じます。

中間部から暗・明をいったり来たりしながら、終盤へ向かっていく様子はとても高揚感に包まれました。終盤のティンパニとオケとの掛け合いは少しテンポ感は速めでスッキリとフィニッシュへ向かいました。

 

2楽章 Kraftig bewegt,doch nicht zu cshnell

舞曲的な出だしのパートは速めのテンポ感で演奏されると思いきや、どっしりとした低音弦のリズムから。少しタメがある感じがして、大股でステップを踏む感覚。楽しい雰囲気のメロディを聴いていると、顔もほころんでしまいました。

中間部へと向かうホルンソロからは、ここからは雰囲気が大きく変わるよ!というような合図を送るような久石さんが印象的でした。ゆったりとした3拍子が印象的な中間部は美しいメロディをじっくりと聴かせてくれるとともに、恒例の対向配置から聴こえてくるヴァイオリンの掛け合いがさらに華やかに聴こえてきます。再び前半の主題に戻るとどっしりとした演奏へ。久石さんの指揮も大きな身振りで全体を引っ張っていきました。

 

3楽章 Feierlich und gemessen,ohne zu schleppen

有名な民謡のメロディで始まるこの楽章、少しテンポ感は速めで小切れよくコントラバスのソロから始まりました。久石さんの『Symphony No.2』の3楽章と共通した要素を感じられる本楽章。メロディが次々と折り重なる部分はミニマル的なアプローチも感じることができました。

途中から出てくる木管の副旋律をひょいっと拾い上げるような指揮をしているのも印象的でした。この楽章でも中間部では非常に美しいメロディが特徴的ですが、こちらもじっくりと聴くことができました。再び冒頭の主題に戻ると、さらに要素が追加されていて、視覚的にも音楽的にも楽しめました。

 

4楽章 Sturmisch bewegt-Energisch

3楽章から絶え間なく演奏される本楽章。久石さんの大きな振りとともに、嵐のような激しい旋律が上下します。この楽章は同じような波形のフレーズが次々と現れて構築されていくので、ミニマル的なアプローチがよく似合いました。冒頭の激しいパートから一転して、中間部は弦楽によるメロディはより優雅に、情熱的に。久石さんも大きく身体を動かして、全体に指示を出していきました。

一度主調のD-Durが顔をのぞかせ、小さな盛り上がりを見せたあと、1楽章の再現が始まります。ここまで全体を通しての体感時間あっという間で、ここの再現で「もう終わりか!」と思ってしまいました。

ここからは言うまでもなく、怒涛の展開を魅せてくれます。ヴィオラの怪しげなメロディから、一気に炸裂する金管のファンファーレ。再び主調のD-Durに転調したのち、金管が主音から下降してゆく華やかなメロディをふんだんに聴かせて、迫りくるような大迫力のコーダ。圧倒的な迫力に泣きそうになってしまいました。身体が熱くなるような熱い演奏でフィナーレまで一気に駆け抜けていきました。

 

 

会場からは惜しみない拍手が続きました。久石さんもそれに答えるようにいつもより時間をかけじっくりと楽団員へと称賛の拍手を送ります。久石さんに拍手が向けられると照れてしまって、オーケストラの奥のほうへ隠れていってしまうシーンも(笑) 最後は客席に大きくバイバイと手を振ってステージを去りました。

長年の信頼とさらなる音楽の進化へと向かう久石さんと新日本フィルの皆様。今後のコンサートにも更なる期待が膨らむ就任記念コンサートになりました。

 

2021年9月27日 ふじか

 

 

 

とてもボリュームいっぱいのレポートでしたね。

久石譲作品、ふじかさんのレポートはいつも他作品が引き合いに出されています。久石譲の作曲活動の点と点が線になっているような気がしてきます。また聴いていない新作でも、おのずとイメージしやすくなりますね。でも似てる似てないじゃないんですよね。作風として同じベクトルを感じる、たぶんそんな表現に近いんじゃないかなあ、と僕なんかは勝手に共感しています。その作品につながったんだ!? ハッと驚くこともままあります。

マーラー作品、ふじかさんは毎回予習されているんですよね。いつもコンサートが近づくと予習ツイートが流れてくるので、そうだ僕もしなきゃと思い出すほどです。そして音源だけじゃない、スコア片手に予習しているときもある。これにはまいった。とてもとても及ばない。コンサートを最大限に楽しみたい!最大限に浴びて吸収したい!、、、言わなくても伝わってきます。

 

こぼれ話。

コンサート会場でお会いして話すことできました。コンサート・レポート、なんか書くの当たり前とか思ったり…プレッシャーになっていたりしませんか?コンサートを純粋に楽しめていますか? そんな質問に「自分の記憶の整理もできるので楽しく書かせてもらってます」と笑顔でひと言。ありがとうございます!

そして独り言のように、「これってアーカイブ配信見てから書いたほうがいいかなあ」と真剣な眼差しで一点を見つめてた瞬間が印象的でした。それもあってコンサートから間を置いたこのタイミングで送ってくれました。コンサート、書く、観る聴く、書くまとめる。けっこう時間とられる工程だと思います。でも、それだけ自分のなかに染みこんでいくことも多い、と僕も信じています(笑)。

 

”コンサートで聴いた様子を箇条書きでメモし、その後配信で一度確認しながらレポートを書きましたが、たくさんの要素が緻密に構成された本楽曲はなかなか感想を書くのが難しく、箇条書きになってしまいました。”

 

レポート中にありましたが、すごく同感です。視聴してはじめてわかったこともあるし確認できたこともある。けれど、なかなか感想を書くのは難しい。僕は最初からさじを投げて、視聴前にコンサートレポートを一旦終わらせてしまいました。追記しようとも思ったけれど、部分でしかないんですよね、ちょっとしたことの追加に終わる。それなら世界初演の瞬間の感想のまま、今はさわらないでおこうと。急いでわかることもないし、わかりっこないし。音源化されてスコア化されて、ゆっくり味わっていきたい作品ですね。

 

 

いつも楽しいツイートもチェックです。好きな音楽ジャンルでFFつながりたくなるかも(^^)

ふじかさん
@fujica_30k

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
ちょっとした反応やリアクションあると書いた人はとってもうれしいです(^^)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Disc. 白石光隆 『ニーノ・ロータと久石譲 ピアノ作品集』

2021年9月25日 CD発売 MM-4097

 

聴き終えて胸に深いものを残す

映画音楽の分野で極めた業績と名声によって、作曲家、ひいては音楽家としての全体像が見えにくくなっている。そんな人物がいるとすれば、イタリアの生んだニーノ・ロータ、そして日本の久石譲はさしずめ最右翼の存在ではないだろうか 。奇しくも共通点を持つ2人の音楽に共感を寄せるピアニストが、深々と響く美音によって、彼らの魅力を解き明かしてくれる。耳にはいたって優しく、しかし聴き終えて胸に深いものを残す。 そんな楽の音が刻み込まれ たアルバムだ。 (木幡 一誠)

(メーカーインフォメーションより)

 

 

久石譲作品はもちろん全曲において、オリジナル楽譜/音源をもとに演奏されている。クレジットもないように独自に編曲された曲はない。とても忠実で丁寧なピアノカバー作品になっている。純粋な聴きくらべを味わうことができる。

とりわけ「人生のメリーゴーランド」「Oriental Wind」の2曲はピアノ愛好家こそうれしい収録といえる。この2曲は久石譲によるピアノソロが録音されていないからだ。オリジナルアルバム『FREEDOM PIANO STORIES 4』(2004)で聴けるのはピアノと弦楽のアンサンブル。そしてピアノ譜『FREEDOM PIANO STORIES 4 -オリジナル・エディション-』はそれをもとにピアノソロ用に直したしたもの。本盤白石光隆のピアノ演奏は、このオリジナル楽譜を忠実に再現している。これは必聴というほかない。リスニングにお手本に。またひとつ聴く楽しみと弾く楽しみを運んでくれるアルバムの登場はこよなくうれしい。

 

 

 

 

 

 

 

ニーノ・ロータ
1. 15の前奏曲より 第2番
2. 15の前奏曲より 第6番
3. 15の前奏曲より 第9番
4. 15の前奏曲より 第10番
5. 15の前奏曲より 第13番
6. 戯れるイッポーリト
7. 子どものための7つの小品より 第1番 ジャンプとゲーム
8. 子どものための7つの小品より 第4番 小さな階段
9. 子どものための7つの小品より 第7番 アクロバット

久石譲
10. One Summer’s Day
11. HANA-BI
12. Ashitaka and San
13. Innocent
14. The Wind Forest
15. 人生のメリーゴーランド
16. Oriental Wind

ニーノ・ロータ
17. アマルコルド
18. 8 1/2
19. 甘い生活

ピアノ:白石光隆

 

Overtone.第50回 「久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2021/09/23

9月19日開催「久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会」です。新しいホール アクリエひめじのオープニングシリーズとして開催されました。また翌20日は京都公演(同プログラム)、24日には「定期演奏会 #257」(別プログラム)など目白押しです。

2021年4月、久石譲は日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任しました。その就任シーズンをお祝いするように、12月の山口公演・豊中公演、2022年3月の「定期演奏会 #262」まで、西日本エリアを中心にいつもなら久石譲コンサートはなかなか開催されない地域までくまなく巡ります。久石譲×日本センチュリー交響楽団の新しいタッグだからこそ実現できるスケジュール&プログラムです。

 

 

 

今回ご紹介するのは、ふじかさんのコンサート・レポートです。もう5回目にもなります(感謝です!)。とにもかくにも鮮度満点!濃厚満点!なレポートをお楽しみください。

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会

[公演期間]  
2021/09/19

[公演回数]
1公演
兵庫・アクリエひめじ 大ホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
コンサートマスター:松浦奈々

[曲目]
メンデルスゾーン:交響曲 第4番 イ長調 作品90 「イタリア」

—-intermission—-

久石譲:DA・MA・SHI・絵
久石譲:Symphonic Suite Castle in the Sky / 交響組曲「天空の城ラピュタ」

—-encore—-
久石譲:Merry-Go-Round

[参考作品]

久石譲 千と千尋の神隠し 組曲 交響組曲「天空の城ラピュタ」久石譲 Symphonic Suite Castle in the Sky

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会の模様をレポートさせて頂きます。

2021年9月19日 15:00開演 アクリエひめじ 大ホール

 

台風一過のよく晴れた三連休の中日、兵庫県の姫路市に新たに誕生したコンサートホール「アクリエひめじ」のこけら落とし公演として、久石譲×日本センチュリー交響楽団の演奏会が開催されました。

引き続き緊急事態宣言が発令されており、数日前に同内容で開催予定だった岐阜公演は中止になってしまいましたが、こちらの公演は対策を行った上で、無事に公演が行われました。

 

14:20くらいに会館に到着。検温・消毒のあとにホール内へ入場しました。ホワイエは天井が高く、窓ガラスも大きく取られていてとても明るい印象でした。

15:00すぎにステージに楽団員の皆様が続々集結。コンマスの登場のちに、チューニングが行われ、その後しばし静寂。ほどなくして拍手喝采の中、久石さんがステージに登場しました。

 

 

Felix Mendelssohn:『Symphony No.4 in A major,Op.90,”Italian”』

Ⅰ.Allegro vivace

木管のトレモロのような刻みのイントロから始まり、弦楽による躍動感と明るく開放的なメロディが会場を華やかに包み込みました。こけら落としに相応しい、本楽曲の1楽章。同じような音型が全体を支配する楽曲のため、久石さんによるミニマル的なアプローチとの相性も抜群。

今回もオーケストラの配置は対向配置のため、1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンが別々の動きをする箇所は、より立体的に聴こえてきます。テンポ感は通常程度だったと記憶していましたが、8分の6拍子のリズム感を久石さんはキビキビとした動きで指揮を行っていて、キレのある歯切れのよい演奏をしていました。省略されることの多い前半の提示部も繰り返しが行われていました。

 

Ⅱ.Andante con moto

2楽章は若干テンポ感は速めな感じがしました。チェロとコントラバスが8分音符の上下に動くような音列の伴奏を演奏しながら、どこか民謡的ながら、物悲し雰囲気のメロディを木管が紡いでいきます。途中のヴァイオリンの旋律に先日のマーラーの『Symphony No.1』の3楽章の副旋律に似たような箇所もあり、聴いていてワクワクするような場面もありました。

 

Ⅲ.Con moto moderato

3拍子のリズムに合わせて優雅なメロディが披露される三楽章。ゆったりとしたメロディの聴かせどころは、久石さんが左手を使ってテンポを速めたり緩めたり、メロディをタメたりなど細かく指示を出していました。一方で中間部の大きく曲調が変わるところでは、テンポも速くなり、副旋律は小躍りをするような上昇をしていくなど、メリハリを大きく感じることができた楽章だったので、聴きごたえは抜群でした。

 

Ⅳ.Saltarello:Presto

終楽章は全体を3連符が支配していて、高速で駆け抜けていきます。こちらもミニマル的なアプローチがとても似合う楽章で、スピード感ある序奏から木管の舞曲のようなメロディが流れます。本当に速かったです。ですが、縦のラインががっちりと揃っていて、同じリズムを刻むところは本当に高揚しました。久石さんもカチッカチッとしたリズム感を指揮棒で指示していて、聴いている側もビートを刻みたくなるような感じがしました。トップスピードのまま、フィニッシュ。全体通しては30分ほどの楽曲でしたが、体感時間はあっという間でした。

演奏後お辞儀をしたのちに舞台袖へと戻る久石さん。と同時に拍手も一旦途切れてしまって、楽団の皆さんが盛り上げる場面も。久石さんもちょっと動揺(?)してしまったのか、再度登壇してお辞儀の際にはコンマスの譜面台に肘をぶつけてしまうハプニング(?)もありました。

 

 

休憩中に舞台転換が行われ、ステージ中央にはピアノが備え付けられました。

 

 

Joe Hisaishi『DA・MA・SHI・絵』

2009年のミニマリズムツアーで演奏されたのち、しばらく披露される機会が少なくなってしまっていた本楽曲。2019年のWDOツアーから再びセットリストに組み込まれることが増え、地方での単発公演等でもセレクトされることが増えてきています。今回の姫路公演でも聴くことができました。

CDでは何度も聴いているのに、やはり生で聴くと圧倒的な迫力。ヴァイオリンから始まる遊び心があり、口ずさみたくなるような主題テーマに畳みかけていくように重なってはズレていく、様々な要素たち。そして軸となる鍵盤やパーカッションによるパルスのリズム。

こちらも対向配置のため、会場で聴いていると音の万華鏡を体感しているような気分になってきます。中盤から入る金管のロングトーンや後半にいくにつれ増えてゆくパーカッションも聴きどころ。演奏が難しい楽曲ですが、楽団員の皆さんも楽しそうに演奏されていたのも印象的でした。8分ほどの時間にミニマルミュージックの魅力をたくさん詰め込んだ、濃密な世界を堪能できました。

 

 

Joe Hisaishi『Symphonic Suite”Castle in the Sky”』

2017年WDOツアーにて初演され、その後世界各地の演奏会でも披露されている本組曲。いままで生で聴く機会に恵まれず、ようやく聴くことができました。

『Doves and the Boy』の金管のファンファーレから一気に物語の世界観へと引きずり込まれます。メインテーマとなる『The Girl Who Fell from the Sky』での、チェロがメロディを演奏するシーンでは久石さんが、手を横にスーッと動かしてゆく指揮が印象に残りました。

こちらも音源では何度も聴いてきましたが、やはり生で聴くと印象はまったく変わります。音源収録からもさらに時間も経過しているため、さらに磨きがかけられたような感じがしました。特に抑揚のつけ方はまったく異なっている感じを受ける箇所もありました。

『Memories of Gondoa』での2回目のサビでは久石さんがグーッと音量を下げるような指示を体全体で行っていて、それに答えるように美しいデクレッシェンド。とても繊細な表現に磨きがかかっていました。

『Robot Soldier~Resurreciton-Rescue~』ではまるで映画本編を観ているかのような手に汗握るようなスリリングな展開。映像が無くても、思い返すことができるようにアップグレードされたオーケストレーションには終始圧倒されました。

そして今回の組曲内で一番印象に残った点は、久石さんによるピアノを『Innocent』にてしっかりと堪能できたところです。昨年の骨折というハプニングからコンサート内でのピアノ演奏がかなり控えられてきている印象を受けていましたが、今回は1曲まるまる演奏。『君をのせて』のメロディを作曲者本人の手から紡がれる貴重な時間。特に前半の完全ソロの部分は全身に染み入るように聴き入っていました。後半の伴奏パートもオケを率いるように華麗な演奏。アウトロの最後の一音までしっかりと噛みしめながら聴きました。

指揮者としての活動にウェイトを占めるようになってから、ピアノ演奏の曲が縮小傾向にありますが、1曲だけでもいいから、今後も久石さんのピアノを聴きたいと強く願う瞬間でもありました。

『The Eternal Tree of Life』での金管の力強い雄大なメロディとパーカッションによる浮遊感を感じさせ、盛り上がりのピークを聴かせたのち、全体でバン!というフィナーレで演奏は終わりました。

 

 

会場も笑顔が溢れ、拍手喝采!

久石さんがお辞儀をし、何度かのカーテンコール。

そして恒例の演奏者への拍手を行いました。

 

Encore

Joe Hisaishi『Merry-go-round』

マンドリン・アコーディオンが抜かれた以外、WDO2019でのアレンジとほぼ同一だったと思います。ハープから始まるイントロののち、華麗で優雅なワルツが会場全体を包みます。サプライズ的に演奏された本楽曲に会場も圧倒されたような雰囲気を感じました。終盤の転調からよりドラマチックに。こけら落とし公演の最後はみんなが踊りだしくなるような、幸福感と熱気に包まれて幕を閉じました。

 

 

拍手喝采の中、カーテンコールに応じる久石さん。最後はバイバイと手を振ったのちに、満面の笑顔でステージを去りました。今回初めて体感することができた久石譲×日本センチュリー交響楽団。今後も様々なプログラムで西日本の群衆を久石ワールドへと引き込んでくれそうです。また足を運べる機会があれば、ぜひ参加したいと思い、コンサート会場を後にしました。

 

2021年09月21日 ふじか

 

 

 

楽しかったですね!コンサートの様子が自然と浮かんできそうな、音楽もふわっと響いてきそうな、”This is Report!” いつも感嘆しています。素敵なレポートありがとうございます。まだまだ過去のふじかさんレポートも読みたくなった人は、ぜひコンサートを追体験してみてください。最後に紹介しています。

 

いつも楽しいツイートもチェックです。好きな音楽ジャンルでFFつながりたくなるかも(^^)

ふじかさん
@fujica_30k

 

 

リハーサル風景

 

姫路公演風景

 

京都公演風景

from 日本センチュリー交響楽団 公式ツイッター
@Japan_Century

 

 

本公演は会場で配布されたプログラムに楽曲解説の掲載はありません。初オケ!初コンサート!のお客さんも多かったようですね。序盤のドキドキ戸惑いも終わる頃にはすっかり感動にハイテンションですね。初めて!だけに、コンサート・パンフレットは思い出の記念品として残るもの。楽曲解説はあったほうがいつでもあのときの感動を呼び醒ますことができます。と、僕は思います。ぜひよろしくお願いします!

 

 

姫路公演も京都公演も当日券なしの完売御礼!

京都公演は撮影カメラが入っていたようです。

今後のアナウンスも楽しみですね!

 

from SNS

 

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

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みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
オケが変われば音も空気も変わる。楽しいですね。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第49回 「On the Nature of Daylight/マックス・リヒター」一曲を聴く

Posted on 2021/09/22

ふらいすとーんです。

あまりにも今の作曲家です。本格的な音楽活動は2000年代から。そんななか、すでに評価の定まった、確固たる地位を確立している、これからますます動向に注目が集まっていく。そんな作曲家だろうマックス・リヒターです。

 

 

マックス・リヒター
MAX RICHTER

マックス・リヒターはドイツ生まれのイギリス作曲家です。2002年にアルバム『メモリーハウス』でソロ・デビュー。クラシックとエレクトロニカを融合させたポスト・クラシカルを代表する作曲家として人気を集めています。「ポスト・クラシカル」という言葉の生みの親でもあって、この言葉によるカテゴライズのおかけでジャンルや次世代作曲家がひとつの潮流として推し進められてきた効果は大きくあると思います。

日本で広くマックス・リヒターの名が認知されるようになったのは、ヴィヴァルディの《四季》をリコンポーズしたアルバム『25%のヴィヴァルディ』(2012)。斬新かつ現代的な再構築でみずみずしさと新しい息吹に感動します。世界各国のクラシック・チャートで1位を獲得しています。

そして、もうひとつ。映画『メッセージ』(2016)に使用された「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」です。作曲家や曲名を知らない人でも、この曲は聴いたことあるかもしれない。たとえば、久石譲を語るときに「Summer」や「Oriental Wind」が外せないのと同じように、マックス・リヒターを語るときに「On the Nature of Daylight」は外せない。そんな代表曲の先頭に立つ一曲です。

 

今回は、一曲だけでOvertone。

 

 

映画『メッセージ』(2016)のオープニング&エンディングテーマに「On the Nature of Daylight」が起用されたとき。物語のテーマや映像との相乗効果もあって、この映画を観た多くの人に強い印象を残します。映画スコアを担当したヨハン・ヨハンソンの曲たちよりも、映画のトーンを決定づけているほど、この映画の核になっています。それを象徴するかのようなエピソードがあります。 ”ヨハンソンも、ヴィルヌーヴ監督が仮に入れていたリヒターの既存曲を超えるものは作れないと判断し、そのまま使うように進言した”  こう言われている一曲です。

「On the Nature of Daylight」は、2枚目のオリジナル・アルバム『The Blue Notebooks』(2004)に収録された曲です。まだまだ作曲家としても認知されていない頃です。その後、映画『主人公は僕だった』(2006)で挿入曲の一つとして使用され、映画『シャッター・アイランド』(2010)、映画『二郎は鮨の夢を見る』(2011)、映画『ディス/コネクト』(2012)、映画『天使が消えた街』(2014)、映画『夜明けの祈り』(2016)といった多くの映画で用いられるようになっていきます。

とてもおもしろい現象です。どの映画作品もマックス・リヒターが音楽を担当しているわけではなく(『ディス/コネクト』除く)、それぞれの映画に必要な挿入曲の一つとして、監督たちに熱望されてきた曲。普通は、同じ曲をいくつもの作品になんて、使うほうも使われるほうも敬遠しますよね。それなのに? 何色にも染まるし、何色にも染まらない、ナチュラルに伝えたいことをのせやすい音楽なのかもしれません。

 

 

Richter: On The Nature Of Daylight

from MaxRichterMusic Official YouTube

 

5つの弦楽器とシンセサイザー低音によるシンプルな構成です。静謐なるくり返し。始めから終わりまで同じフレーズがくり返されているだけなのに、極めてエモーショナルな波があります。揺れ動く音のなか、旋律や楽器の息づかい、まるで心地よい朗読を聴いているように何かを語りかけてきます。6分間という時間、いつもとは違う時間の流れ方をしているようです。

楽曲タイトルは、古代ギリシアの哲学者エピクロスの宇宙論をローマの哲学者ティトゥス・ルクレティウス・カルスが詩の形式で解説した書「On The Nature of Daylight(『事物の本性について』)」から取られています。この原典の深堀りはできていませんが、なんとも含蓄のあるタイトルだなと思います。

 

アルバム1曲目はプロローグ、「2.On The Nature of Daylight」に始まり、ピアノソロとなった「11.Written On The Sky」で終わる『The Blue Notebooks』。この一曲がコンセプチュアルな軸になっていることがうかがえます。

 

Richter: Written On The Sky

 

 

映画『ディス/コネクト』(2012)は、「On The Nature of Daylight」が使用された映画のなかで、唯一マックス・リヒターが映画全体の音楽を担当した作品です。サントラ盤では、同曲をモチーフにした曲たちも多く散りばめられています。別アレンジ曲といえるものもあれば、曲の素材を少し使ったり、曲を構成する素材を削ぎ落として使っていたり。「9.The Report」「10.Written On The Sky」「13.Break In」「14.Confrontation」「15.Afghanistan」「17.Unwritten」「18.The Swimmer」など。ときにピアノソロに、ときにエレクトロニカに。

 

The Report

(*公開終了)

Unwritten

(*公開終了)

 

 

2018年、『The Blue Notebooks』リリース15周年を記念した特別版がリリースされます。新曲から新規リミックスやボーナス・トラックまで加わった2CDです。ここで初めて登場するのが「On the Nature of Daylight」4つのニュー・トラックです。

 

 

Max Richter – On The Nature Of Daylight (Entropy)

ニュー・レコーディング版です。原曲とたぶんスコアはそのままに、奏者は入れ替わっていたりもします。新録音にあわせてMUSIC VIDEOも作られています。僕はなぜかこちらEntropyのほうがだんぜん好きです。一番好きです。響きのニュアンスが素晴らしい。

ロンドンAir Studiosでの収録と撮影です。マックス・リヒターは、映画音楽もオリジナルアルバムも、レコーディングにはほとんどこのスタジオを使っているようです。唐突に、久石譲作品『WORKS・I』や『水の旅人 -侍KIDS- オリジナル・サウンドトラック』も、Air Studiosで制作されたアルバムです、ご縁あります。

 

 

Max Richter – On the Nature of Daylight | DG120 concert – Hong Kong, China

from Deutsche Grammophon – DG

弦楽オーケストラ版です。CDはセッション録音で収録されています。2019年には日本公演も15年ぶりに果たし、3日間で異なる3つのプログラムを公演するという大プロジェクトを成し遂げています。共演を務めたのは、WDOでおなみじ新日本フィルハーモニー交響楽団です。もちろん披露されています。この公式動画は、同年の香港フィルハーモニー管弦楽団との香港公演の模様です。

 

このほかに、「This Bitter Earth / On The Nature Of Daylight」「Cypher」というリミックス版2曲が15周年記念盤に収録され、トータル4つの新版「On the Nature of Daylight」が誕生しました。

 

 

マックス・リヒターが語ったこと。

 

“『ブルー・ノートブック』の作曲時、私は“非現実の政治”あるいは“政治の虚構”が始まったと感じていました。ありもしない大量破壊兵器を口実にイラク戦争を始めるなんて、不条理そのものではないかと。だから『ブルー・ノートブック』のなかで、不条理という手法で権力構造を批判した作家カフカのテキストを朗読パートに加えることにしたんです。ここ数年、米英をはじめとする世界各地において、ふたたび不条理な要素が強まってきていると感じます。だからこそ、『ブルー・ノートブック』は今の時代にふさわしい作品ではないかと。”

(from 日本公演時インタビュー 2019)

 

 

『ボイジャー』~マックス・リヒターが語る「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」

from UNIVERSAL MUSIC JAPAN

これは2019年発売ベストアルバム『ボイジャー マックス・リヒター・ベスト』の際に作られた楽曲解説プロモーション動画です。

 

 

久石譲「Summer」や「Oriental Wind」が多くの人に愛聴され、多くの人に演奏されているように。マックス・リヒター「On the Nature of Daylight」も、多くのカバーやトランスクリプション(異なる楽器への編曲版)があります。動画サイトをめぐると、いかに広く愛されているかよくわかります。

 

SIGNUM saxophone quartet & Hila Karni – On the Nature of Daylight (Transc. for Saxophone and Cello)

シグナム・サクソフォン四重奏団という、2020年ドイツ・グラモフォンよりデビューを果たしたアーティストで、そのアルバム『エコーズ』に収録されています。

 

ほかにも、世界中の演奏家が、オーケストラが、自らの楽器レパートリーにしている、演奏会のプログラムに並べている。奏しながらイメージしているのは、平和の尊さ、命の尊さ、音楽の尊さだったりするのかもしれない。どんなイメージで発信されたとしても、共通する想いはある。聴いた人たちが共鳴しあうような想いが生まれる。言葉の壁を越えてつながることのできる音楽、まさにそんな一曲「On the Nature of Daylight」です。

 

 

出会い。

2016年「久石譲 presents ミュージック・フューチャー Vol.3」で、マックス・リヒター「Mercy」がプログラムされたときです。ヴァイオリン&ピアノからなるこの曲、コンサートでは、我らがWDOコンサートマスター豊嶋泰嗣さんのヴァイオリンの音色で、小ホールという至福空間を満たしてくれました。

これをきっかけに気がつくと、約10枚のオリジナル・アルバムと、約30作品の映画/テレビドラマ・サウンドトラックと、聴けるものはどんどん手にとっていきました。そして今、リアルタイムで追いかけている、そんな作曲家です。

知れば知るほど、マックス・リヒターの曲は、いろいろな映画に、いろいろなTV番組BGMに、あるいは美術の個展BGMに、あるいはフィギュアスケートの演技曲目に。多くの使用頻度とあらゆる選曲バリエーションで使われていると気づきます。日常のなかにさりげなく、知らず知らずのうちに通奏している。極めて汎用性の高い、かつ芸術性の高い音楽をつくっているという深みに溺れていきます。

現代曲なのに、いかにもクラシック曲のようなポジションを獲得している曲たち。不思議です。使いやすいけれど陳腐なBGMにはならない。バッハのG線上のアリア、パッヘルベルのカノン、時代を超えた通奏低音のような風格すら感じるマックス・リヒター音楽です。

 

 

「On the Nature of Daylight」。最小音型でシンプルに構成された音楽。しっかり印象的でありながら、いかなる映像にもなじむ曲。ひたすらにくり返しながらも同じことのループではない。寄せては返す波のように心地のよいエモーショナル。走馬灯のような心の揺らぎ。いろいろな場面や感情に寄り添ってくれる音楽。聴く人色に染まってくれる曲。そんな音楽的魅力を感じます。

……ふと、久石譲音楽に置き換えたときに、どんな曲だろう? いろいろな候補曲が浮かんできたなかで、しっくりきたひとつ「WAVE」です。もしこの曲が、映画の印象的なシーンに使われる挿入曲だったなら、多種多様なジャンル映画たちに多岐使用されることになったなら。たぶん何の不思議も感じません。なんと素敵な現象だろうと思います。

「WAVE」。最小音型でシンプルに構成された音楽。しっかり印象的でありながら、いかなる映像にもなじむ曲。ひたすらにくり返しながらも同じことのループではない。寄せては返す波のように心地のよいエモーショナル。走馬灯のような心の揺らぎ。いろいろな場面や感情に寄り添ってくれる音楽。聴く人色に染まってくれる曲。そんな音楽的魅力を感じます。(上の「On the Nature of Daylight」と同文)

 

WAVE

from Joe Hisaishi Official

 

 

収録アルバム

 

 

 

 

むすび。

アルバム『The Blue Notebooks』は、原盤(2004輸入盤/2015国内流通輸入盤)、15周年2CD盤(2018輸入盤)、15周年2CDデラックス盤(2018輸入盤)、SHM-CD盤(2019初国内盤)と4タイプあります。収録曲数の違い、価格、入手しやすさなど、詳細は公式サイトにてゆっくり眺めてみてください。せっかくなら、今回紹介した全バージョンが収録されている2CD盤おすすめです。

公式サイト:ユニバーサルミュジックジャパン|マックス・リヒター DISCOGRAPHY
https://www.universal-music.co.jp/max-richter/discography/

 

 

Max Richter – Richter: On The Nature Of Daylight

2018年、15周年記念盤リリースにあわせて、新しく作られたMUSIC VIDEOです。エリザベス・モスが出演しています。音源はオリジナル版(2004)を使用しています。

マックス・リヒター音楽。それは、深く深く自分のなかに降りていきたいときに、深いところで結びつく音楽なのかもしれません。そして気がつくと、自分の知らない内面と対峙することになる。僕にとっては、大切な音楽、大切な時間です。

 

 

追記

最新オリジナル・アルバム『EXILES / MAX RICHTER』(2021年8月6日発売)にも「On The Nature Of Daylight」弦楽オーケストラ・ヴァージョンが新録音されています。(とても厳密にいうと、低音シンセサイザーも外した初のオーケストラ楽器のみ録音になります。)また、このアルバムは「レコード芸術 2021年10月号」にて特選盤にも選ばれています。その話は機会あればまた。

 

 

それではまた。

 

reverb.
マックス・リヒター音楽の旅はつづきます♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Blog. 「久石譲指揮 新日本フィル 第637回定期演奏会」コンサート・レポート

Posted on 2021/09/14

9月11,12日開催「久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第637回 定期演奏会」です。新型コロナウィルスによる緊急事態宣言を受け観客上限50%となりましたが、それよりは少し多く客席うまっていたようにも思います。要請前に販売しているものはOKという補足事項もあったのかもしれません。それだけ早い段階から期待と注目を集めていた演奏会ともいえますね。

いつもの久石譲コンサートとは違って、新日本フィルのお客さま、そんな印象を受けた会場内でした。一方では、新日本フィルご愛顧のお客さまから見ると、今日はいつもとは違った顔ぶれや客層だな、とも感じられたようです。いろんな血が通うというか、風通しのよい新鮮な空気が循環するようで、いいですよね。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #637

[公演期間]  
2021/09/11,12

[公演回数]
2公演
9/11 東京・すみだトリフォニーホール
9/12 東京・サントリーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙

[曲目]
新日本フィル創立50周年委嘱作品
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番) *世界初演
I. existence
II. where are we going?
III. substance

—-intermission—-

マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」

 

 

 

さて、個人的な感想はひとまず置いておいて、会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。

 

 

Program Notes

■ 久石譲:Metaphysica(交響曲第3番)

Metaphysica(交響曲第3番)は新日本フィル創立50周年を記念して委嘱された作品です。新日本フィルとはもうかれこれ30年くらい一緒に演奏していて、お互いをよく知っています。シーズンのオープニングコンサートでこの新作とマーラーを演奏することは大きなプレッシャーもありますが、最大の楽しみでもあります。

新作は2021年4月末から6月にかけて大方のスケッチを終え、8月中旬にはオーケストレーションも終了し完成しました。前作の交響曲第2番が2020年4月から2021年4月と1年かかったのに比べると約4ヶ月での完成は楽曲の規模からしても僕自身にとっても異例の速さです。

楽曲は4管編成(約100名)で全3楽章からなり約35分の長さです。この編成はマーラーの交響曲第1番とほぼ同じであり、それと一緒に演奏することを想定して書いた楽曲でもあります。

当然何らかの影響はあると思います。

僕の尊敬する作曲家デヴィット・ラング氏は「ミニマル系の作曲家は一つの楽曲をできるだけ単一要素で乗り切ろうとあらゆる手を尽くして作曲するけど、マーラーは次々に新手のテーマを投入して楽曲を構成するから羨ましい」とジョークまじりに話していましたが、これがミニマルミュージックと他の音楽の大きな違いです。

その全く違うタイプの楽曲を組み合わせることでかつて経験したことのないプログラムになればと考えています。

Metaphysicaはラテン語で形而上学という意味ですが、ケンブリッジ大学が出している形而上学の解説を訳すと「存在と知識を理解することについての哲学の一つ」ということになります。要は感覚や経験を超えた論理性を重視するということで、僕の場合は音の運動性のみで構成されている楽曲を目指したということです。

I. existence は休符を含む16分音符3つ分のリズムが全てを支配し、その上にメロディー的な動きが変容していきます。

II. where are we going? は26小節のフレーズが構成要素の全てです。それが圧縮されたり伸びたりしながらリズムと共に大きく変奏していきます。

III. substance は ド,ソ,レ,ファ,シ♭,ミ♭の6つの音が時間と空間軸の両方に配置され、そこから派生する音のみで構成されています。ちなみにこれはナンバープレースという数字のクイズのようなゲームからヒントを得ました。

何やら難しい事ばなり書いてきましたが、これは生きた音楽を作るための下支えでしかありません。

皆様には心から楽しんでいただけたら幸いです。

2021年8月12日 久石譲

 

[楽器編成]
フルート4(ピッコロ2持替)、オーボエ4(イングリッシュホルン持替)、クラリネット4(Es管クラリネット、バスクラリネット2持替)、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン6、トランペット4、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、ドラムセット、小太鼓、大太鼓、シンバル、吊しシンバル、トライアングル、タムタム、タンバリン、クラベス、鈴、シェイカー、ウッドブロック、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン、チャイム、ハープ、ピアノ(チェレスタ)、弦楽5部。

(新日本フィルハーモニー交響楽団 2021/2022シーズン プログラム冊子 より)

 

 

 

会場で配布された「新日本フィルハーモニー交響楽団 2021/2022シーズン プログラム冊子」と同内容(9~10月開催分)がPFD公開されています。マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」の作品解説もふくめてぜひゆっくりご覧ください。

 

公式サイト:新日本フィルハーモニー交響楽団|2021年9月~10月定期演奏会のプログラムノートを公開
https://www.njp.or.jp/magazine/25169?utm_source=twitter&utm_medium=social

(*公開終了)

 

 

 

 

メディア取材より

「新日本フィルはオーケストラとしてとても品のよい音がします。僕は、新日本フィルの育ちの良い、温かい音がすごく好きなのです。彼らとは現代的なアプローチもずいぶんいっしょに行ってきましたが、新日本フィルは、時代の先端を走るオーケストラであったし、これからもそうあると思います」

「新しいコンサート・シリーズでは、現代の音楽と古典の音楽を同じプログラムで演奏し、クラシックの名曲を現代の視点からコンテンポラリーなアプローチでリクリエイトしたいと思っています。状況が許されるなら、新日本フィルとは、マーラーやブルックナー、《春の祭典》のような大きな編成のものをきちんと形にしたいですね」

Blog. 「音楽の友 2021年1月号」 特集:オーケストラの定期会員になろう2021 久石譲インタビュー 内容 より抜粋)

 

 

「もう30年くらいの付き合い。リハーサルの進め方などすべてを教わりましたし、メンバーを思い浮かべながら曲を書いてもきました。ですから僕にとっては完全にベースとなるオーケストラです。魅力は音が上品なこと。音が鳴った瞬間に人を惹きつける温かさやロマンがあり、最近は力強さも加わっています」

「今まで以上に継続した音楽作りができますね。いわば点から線になる。これを機に今一度クラシック作品にチャレンジすることができます。現代曲を演奏するオーケストラはありますが、後に登場するクラシック作品は昔流のまま演奏することが多いです。そうではなく、現代曲で行ったアプローチでクラシックを演奏することも必要だと思うのです。例えば僕の曲はミニマルがベースなのでリズムが厳しくなる。その厳しいリズムをクラシック作品に持ち込んだらどうなるのか? そうしたアプローチを今後一緒にやっていきたいと思っています」

「『巨人』はタイトルも含めてシーズンの開幕に相応しいと思いますし、現代曲とクラシックを組み合わせたい、現代曲を演奏しないとクラシックは古典芸能になってしまうとの思いもあります。またマーラーが控えている状態でその前の曲を書くのは、作曲家として非常に燃えますし、内容も必然的に影響はあると思います」

「最終的なオーケストレーションの段階です。曲は交響曲第3番(仮)で、全3楽章約35分の作品。第2番と姉妹作ですが、自然をテーマにしたような第2番に比べると内面的で激しく、リズムはより複雑になっています。加えてミニマル的な構造の中にもう一度メロディを取り戻したいとも考えました。編成は後半のマーラーに合わせた4管編成でホルンは1本少ない6本。自分だけ見劣りしたくないというのは作曲家の性ですね。また作曲家は皆そうですが、大編成になると逆に弦の細分化など細部にこだわるようになります。あと50周年は意識しながらも、現況から祝典風ではなく力強さを織り込んだつもりです」

「マーラーは独特なんですよ。どこまでも歌謡形式で、対位法的な動きもその中でなされていますから、それをどう整理するか? また僕自身の作品と並べて演奏することによってどれだけ新しいマーラー像を描けるか? がカギになります。あとはユダヤ的なフレーズの扱い。実は第3楽章を重視していて、そうした部分を東欧ユダヤ系の酒場のバンドのように演奏したい。そして第4楽章のめくるめく激しさには、誰もが書くのに苦労する交響曲第1番を見事にまとめる物凄いエネルギーを感じます。僕はクラシックを演奏するとき、作曲家が書く過程を一緒に辿るんです。『ああこの人はここで苦しんだな』などと推理小説のようにスコアを読んでいます。でも『私はこれを書きたい』という気持ちの強さが一番大事なのではないかと思う。その点でマーラーは別格に感じます」

「シーズンのオープニングを任され、作曲も依頼され、マーラーも演奏させてもらう。作曲家で指揮もする僕としてはこれ以上ない舞台を用意していただき、心から感謝しています。それに僕と新日本フィルは“音を出す喜び”をもう一回取り戻したい。人と一緒に音を出すことが楽しい─これがやはりオケの原点ですよね」

Info. 2021/08/18 久石譲 現代曲同様のアプローチでクラシックを活性化したい (ぶらあぼ より) より抜粋)

 

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

新日本フィル50周年、そのシーズン・オープニング公演を飾ったのが久石譲指揮です。「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ(WDO)」をはじめ、数々のコンサートや録音で共演をかさねてきた黄金タッグです。

 

久石譲:Metaphysica(交響曲第3番)

むずかしかったな、かっこよかったな、また新しいタイプだったな。これが第一印象のすべてです。これまでに『THE EAST LAND SYMPHONY』『交響曲 第2番』ときて、また異なる性格をもった交響曲が並ぶことになったな、なんともうれしくて震える。

今の時点でこれ以上のことは書けません。世界初演にして一聴!つかめるものは少なく、浴びるような体感だけが残っています。それでも、メモをひっぱりだして…演奏会でいつも書きとめるキーワードの羅列から、思い出すように振り返ってみます。平たい感想です。

 

I. existence
[混沌]、楽章全体を覆うのは混沌とした印象です。

[パーカッション炸裂]、スネアや大太鼓はもちろんドラムセットが入っているのでバスドラムのキックも効いていたと思います。『THE EAST LAND SYMPHONY』の楽章を思い浮かべるような。

[拍節感のない]、3拍子4拍子とリズムを数えることの難しい楽章でした。モチーフやメロディ的なわかりやすい旋律を見つけにくいこともあるのかもしれません。また旋律も展開も目まぐるしく変わる入り乱れるという印象です。拍節感のない、正しくはリズム感の難しい、ですね。

[ホルン吠える]、これは中盤以降で下音から上音へ速いパッセージで駆け上がるホルン旋律のところだと思います。6本ありますからね。

[EAST]、たぶん『THE EAST LAND SYMPHONY』に近い印象をもったんでしょう。でも改めてそちらを聴いてみると、「1. The East Land」や「4. Rhapsody of Trinity」よりも終始カオスだった気もします。休まるところを知らない混沌だった印象です。

 

II. where are we going?
[緩徐楽章]、ゆっくりとした楽章です。

[ストリングス]、ストリングスがメロディを奏でて進みます。他の楽器も同じモチーフからきているので、律動的な声部というかリズムをつくりだすオーケストレーションは抑えられているように感じます。

[無調]、たぶんシェーンベルクの弦楽作品ような印象もあったんでしょう。前半は情感に訴えかけてくるようなハーモニーは抑えられている印象でした。行き先の定まらない彷徨のような調性のなか、ときおりみせる一瞬の明るさや暗さのハーモニー。

[ヴァリエーション]、基本となっているフレーズが熱をおびていくように変奏されていきます。

[パーカッション壮大に]、終盤はパーカッションも入って壮大で重厚な響きになります。

[迫ってくる]、とてもエモーショナルで迫ってくるものがあります。

きびしく美しい旋律です。力強い慈悲もしくは力強い慈愛、そんな印象を強く感じました。この楽章を抜き出してリピートしたくなる人多いかもな、そんなことも感じました。クラシック風に言うと、初演演奏会で観客たちの熱狂にこたえるように、この楽章が再びアンコール演奏された。

 

III. substance
[リズム]、よっぽど気になったんでしょうね。この楽章もそうなんですけれど、作品とおして安定した拍節感のようなものがあまりない印象です。リズムをキープする(推進する)構成じゃないので、何が飛び込んでくるかわからない。それがまたいい。聴きこむほどにいい味を出してくる作品になるだろうなという予感すら感じます。

[クラシック感]、逆にいうと一番クラシック要素の強い作品とも感じました。たとえミニマルであっても、ミニマル・ミュージックを出発点にはしていない。そういう意味でリズム重視ではない。運動性、ほんとそうですね、リズムにも束縛されない運動性で解き放て、貫いています。

[パーカッション]、タイトルからも第1楽章と第3楽章は対をなしているのかもしれません。音楽的なしかけもあるのかもしれません。そうでなくても、ふたつの楽章は怒涛のようなパーカッションが鮮烈です。

 

 

感覚的な感想に終始しました。第2番の姉妹作にあたると語られていますが、運動性のみの構成でつくられた作品という点でそうですね。また、あれこれ持ち出さないというか、ピンポイントにフォーカスされている、突きつめて追求されている。ここがまたぐっときます。なんというか密度高いかつ異なる性格をもった第2番と第3番が並んだ。ここにぐっときます。個人的にはかなり好きになる自信のある作品の登場となりました。音源として届けられたときにはずっと聴くだろうな。

 

 

楽器編成について。

プログラムノートから。

 

フルート4(ピッコロ2持替)、オーボエ4(イングリッシュホルン持替)、クラリネット4(Es管クラリネット、バスクラリネット2持替)、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン6、トランペット4、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、ドラムセット、小太鼓、大太鼓、シンバル、吊しシンバル、トライアングル、タムタム、タンバリン、クラベス、鈴、シェイカー、ウッドブロック、グロッケンシュピール、ヴィブラフォン、チャイム、ハープ、ピアノ(チェレスタ)、弦楽5部。

 

*補足
弦16型(第1ヴァイオリン16、第2ヴァイオリン14、ヴィオラ12、チェロ10、コントラバス8)対向配置

*補足2
マーラー:ホルン8、トランペット6、トロンボーン4、ティンパニ2、ハープ2、(パーカッション群異なる)

 

約100名の大編成となっていますけれど、僕の整理した補足2のマーラー作品と比べると、通常でも編成しやすいギリギリのラインをしっかり保っていることも見えてきます。つまりは大掛かりな一大イベントのマーラー作品と比べて、演奏機会の制限を受けない、プログラム頻度に影響を及ぼしにくい大編成交響曲の誕生ということになります。誕生おめでとうございます!

 

 

マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」

久石譲指揮でマーラーが聴ける、ちょっとざわざわするような感覚があります。たとれば、それは『ムソルグスキー:展覧会の絵』『エルガー:威風堂々』『ホルスト:惑星』『ラフマニノフ:交響曲第2番』のように、わりとポピュラーな作品を久石譲が指揮するんだという妙な驚きと妙な納得のような。聴いてみたいって思うざわざわ感がありますね。

大編成だけあって、もう音楽的重力はハンパない!圧倒されて感動します。久石譲×新日本フィルは王道で攻める、堂々とマーラーと真っ向勝負な印象を受けました。歌わせるところはたっぷりと歌わせて、ホルンのスタンドプレイ、クラリネットのベルアップなど、視覚的にも魅せてくれます。

リアリティのある演奏。ヨーロッパな優麗さでもないし、民俗的によっているわけでもない。現代的というのともまた違う、リアリティのある響きでした。うまく表現できないのですが、いま響いていること?音?音楽?に必然性を感じる演奏としか言い表せません。きれいに演奏しようとか上品な音を出そうとかいうよりも、すべての楽器・パート・声部がしっかりとリアルな音を出す。ミキサーボードでいうと各ボリュームメーターすべて高め。近視的、接近的な音像で訴えかけてくる。すごかったです。

約1時間の作品を飽きさせずに聴かせるマーラー作品。そのメロディの力や、どんどんいろんな要素を持ち込みながらも見事に構築させてしまう力。ここで注目したのが久石譲指揮の巧みなテンポコントロールです。歌わせるところ、たたみかけるところ、ひと息ゆるめるところ、突き放し駆けるところ。旋律ごとにパート展開ごとに抑揚のある絶妙なテンポバランス感覚で引っ張り、多彩なニュアンスを表現し、決してだれることがありません。…これって、スタジオジブリ交響作品と同じじゃないか! めまぐるしく展開する物語に沿った音楽構成を、見事なテンポ演出でハラハラ・ドキドキ・うっとり。

フォームのしっかりしたベートーヴェン作品やブラームス作品をリズム重視で現代的にアプローチする。ミニマル久石譲の強みです。一方では、フレームに収まらない脈略なく絡み合うマーラー作品をリズムバランスで統率してしまう。いかなる構成パートも沈むことなく、うまくまとめあげてしまう。交響組曲久石譲の強みです。あれっ、死角がなくなってきている?! そんな印象を強く持つことになったコンサートでした。

 

 

 

今回はサクッと加減のコンサート・レポートになりました。なってしまいました。9/22~のアーカイブ有料配信楽しみにしています。もう少し濃厚に吸収できたらいいな、そう思っています。

 

配信期間:
9月22日(水)12:00〜9月28日(火)23:59
視聴チケット販売期間:
9月22日(水)12:00〜9月28日(火)21:00

料金:1500円(税込)

視聴・会員登録はこちら
「CURTAIN CALL」
https://curtaincall.media/njp?

 

 

 

ぜひかぶりつきで視聴しましょう!

 

 

リハーサル風景

 

 

公演風景

 

 

from 新日本フィルハーモニー交響楽団 公式ツイッター
@newjapanphil

 

 

うれしいオフショットです。久石譲と佐渡裕さんもつながりあります。『久石譲:Orbis』の初演は佐渡裕指揮による「1万人の第九」番組プログラムでした。

2023年から新日本フィルハーモニー交響楽団 第5代音楽監督に佐渡裕さんが就任すること発表されたばかりです。今シーズン、音楽監督不在のなか、シーズンの幕開けを任されたのが久石譲だったんですね。

SNSでは新日本フィル・ファンの感想が飛び交っていました。さすがクラシック通だけあって、それぞれの「かくあるマーラー第1番」というものがあります。聴き方や注目のしかたなど、とてもおもしろいです。熱い感想が多くて、純粋な音楽評が綴られていて、たくさん「いいね」してしまいました。勉強になりますし、自分になかった視点や幅が広がるような気がしてきます。

久石譲がオーケストラ楽団の定期演奏会を指揮する。新日本フィルハーモニー交響楽団に日本センチュリー交響楽団。このことは、より一層《指揮者:久石譲》の認知と評価を広げていく流れになっていくのかもしれません。いろいろな客層を集め、久石譲指揮を目の当たりにし、十人十色な感想を抱く。これからますます楽しみです。

 

 

 

オーケストラを熱く応援する!(^^)

 

 

 

 

2021.10.15 追記

プログラムから久石譲の世界初演『Metaphysica(交響曲第3番)』より第2楽章「II. where are we going?」が公開されました。