Disc. 久石譲 『空想美術館 ~2003 LIVE BEST~』

久石譲 『空想美術館』 2003 LIVE BEST

2003年10月22日 CD発売 UPCH-1299
2018年4月25日 LP発売 UMJK-9073/4

 

 

~空想美術館紀行~

久石譲さんの演奏には必ず光景が伴う。オーケストラや観客、或いは久石さん本人の向う側に、かつて旅で出会った人々やその時々の風のようなものが立ち上がるのだ。たとえ有名な映画曲であろうと、目をつぶれば私には独自のシーンが浮かんでくる。見事、としか言い様がない魔法である。

 

Musée imaginaire (Orchestra Ver.)
エクアドルの首都キトからバスでアンデス山脈を越えた時、高度四千メートルで突然もやが晴れ、笑顔で手を振るインディオの子供たちが現れた。この曲をあの峠でもう一度聴いてみたい。

Summer
米国オレゴン州のキャノンビーチには日本の風鈴八百個と暮らす老人がいた。彼は東京を空襲したパイロットで、海風に鳴りやまぬ風鈴を聴きながら静かに枯れ枝と化していくのだった。風鈴はまだ揺れているだろうか。

MIBU
展開とともにまったく新しいイメージが湧きあがるこの曲は、アンコールワットの日の出を思い出させた。たとえ大地が戦乱の荒廃にあったとしても、日輪は何万もの色彩をもって新たな一日を祝福しようとしたのだ。

Silence
トルコのエフェス遺跡のイメージ。エーゲ文明の遥か昔に愛しあった男女の吐息が、今もなお朽ちた柱に絡み付いているようだった。風は時の向う側から情念と音楽を運んでくるらしい。

月に憑かれた男
三年間暮らしたニューヨークで、やるせない気持ちになる度にブルックリン橋を歩き、そこから見える窓灯りを数えていた。どの窓にも命があり、苦悩があり、歓喜がある。その痛いような感覚を思い出させる曲。

夢の星空
ベトナムの漁村を夜明けに訪れたら、歩き始めたばかりの漁民の子が丸太の上に乗って用を足し始めた。あっけらかんとした笑い声、世界で一番幸せそうだったあの子の笑顔に、いつまでも美しい星空とこの曲を捧げたい。

Bolero
チェコの田舎街道はひまわり畑に埋もれているため、夏になると地平線までの黄色で覆われる。しかしその横を走る線路はかつてアウシュビッツまで続いていたのだ。無数の魂が風にそよいでいたようなあの夏空。黄色。

a Wish to the Moon
沖縄から台湾までは貨物船の旅がお薦め。島をひとつ経る度に珊瑚礁の色は濃くなり、五線譜から飛び出す音符のようにイルカたちがジャンプを繰り返していた。

KIKI
洞窟ホタルを見るためにオーストラリアのアウトバックを踏破した夜。気がつけば横をカンガルーの群れが並走していた。この曲のように心が舞い続けた夜。

谷への道
ヨルダン砂漠のロレンス砦に行った時、どこまでも続く赤い砂漠の果てに、三千年前の落書きがあることを知った。どうしてこの曲はあの時のジープの荷台を思い出させるのだろう。歴史なんて一瞬で、それよりも大切なのは今生きているこの鼓動なのだと曲が伝えているようである。

Musée imaginaire (9 Cellos Ver.)
バージョンが変われば曲がイメージさせる疾走感も異なる。世界で一番好きな列車、ハンブルグ発ブダペスト行のハムレット号だ。エルベ川沿いの小鹿飛び出す列車の旅を、この曲を聴いたすべての人に体験してもらえたらと思う。

TETSUYA (ex. ドリアン助川)

(空想美術館紀行 ~CDライナーノートより)

 

 

2003年春のチェリストとのツアーと、同年夏の新日本フィルとのツアー、この2つのツアーからベスト・テイクを選りすぐったライヴ・ベスト盤。ピアノ・ソロアルバム『ETUDE』の名曲たちをシンフォニック・アレンジで聴くことができる。

 

 

2018年4月25日 LP発売 UMJK-9073/4
完全生産限定盤/重量盤レコード/初LP化

 

 

 

久石譲 『空想美術館』 2003 LIVE BEST

1.Musée imaginaire (Orchestra Ver.) (NHK「世界美術館紀行」より)
2.Summer (映画「菊次郎の夏」/トヨタ カローラ CM より)
3.MIBU (映画「壬生義士伝」より)
4.Moonlight Serenade
5.Silence (ダンロップ VEURO CMより)
6.月に憑かれた男
7.夢の星空
8.Bolero
9.a Wish to the Moon (キリン一番搾り生ビール CMより)
10.KIKI (映画「魔女の宅急便」より)
11.谷への道 (映画「風の谷のナウシカ」より)
12.Musée imaginaire (9 Cellos Ver.) (NHK「世界美術館紀行」より)

Recorded at Tokyo Metropolitan Art Space , Tokyo Opera City Concert Hall , Niigata-City Performing Arts Center

Conducted by Kim Hongje (except M10-12) , Joe Hisaishi (M10-12)

Orchestra:New Japan Philharmonic

 

Disc. 久石譲 『4MOVEMENT』

久石譲 『4 MOVEMENT』

2003年3月19日 DVD/CD発売 PCBE-50470

 

2001年「うつくしま未来博」ナイトファンタジア上映作品 『4 MOVEMENT』
監督:久石譲 音楽:久石譲

久石譲 第二回監督作品

 

日本映画音楽の第一人者、久石譲が奏でる
音楽と映像のシンフォニー、「QUARTET」に続き、
自ら監督を務めた待望の映像ファンタジー!

人は心の中にいくつもの顔を持っている。
優しさと人には言えない暗い部分を…。
ミオは成長していく中で心の中の闇に生まれた
もう一人の自分とどう向き合っていくか?
音楽の精ポコとともに巨大な怪物、
黒鳥と闘いながら見つけ出していく…

【STAFF】
監督・音楽:久石譲
プロデューサー:石原真
原案:ドリアン助川
脚本:小川智子
撮影:阪本善尚
音響:橋本文雄

【CAST】
Pace Wu、黄川田将也、浅野優梨愛、山本小百合、相ヶ瀬龍史、若林淳

 

 

【ストーリー】

MOVEMENT 1
殺伐とした大都会。雑然とした風景が闇に転じると少しずつ鼓動が聞こえ、閉ざされた空間(CUBE)から一人の少女・ミオが現れる。暗闇の中で戸惑うミオが目にする1台のピアノ。彼女が鍵盤をたたくと光りが現れ、その中から可愛らしい音楽の精・ポコが誕生する。ミオの良心の象徴であるポコは、彼女の奏でるフレーズを歓喜に満ちたメロディーに導き、それはやがて大きな光とともに新たな世界へと広がっていく…

MOVEMENT 2
大自然に包まれた世界。10才になったミオはポコとともに鬱蒼と生い茂る森を進み、そこでアルトという名の少年に出会う。彼がミオ自身の心の闇であるとも知らず、その不思議な魅力に惹かれ後をついていくが、突然豹変したアルトに翻弄され、自然の脅威にもまれながら闇へと流されていく…

MOVEMENT 3
無機質な人々の流れの中にいるミオは、黒衣をまとった男と出会う。彼に導かれるまま進む道は、人間の愚かさを具現化した殺伐と狂気の世界であった。ミオは怯えと哀しみにもまれながら傷つく人々の間をさまよい歩いていく。全てが焼き尽くされた大地に辿り着いたミオは、そこで朽ち果てた1台のピアノを見つける。ピアノを弾くミオ、幼い頃の思い出が蘇る。が…

MOVEMENT 4
アルトと再会するミオ。20才に成長した二人は思い出の森へと向かい、お互いの想いに気付く。一瞬の安らぎを得たミオだったが、ふと気づくと巨大な黒鳥に変貌したアルトが、邪悪な牙でミオに襲いかかる。ポコとの必死の戦いも空しく、湖畔へ追い詰められていくミオ。しかし、そこで意外な真実が明らかにされていくのであった…

 

 

【メッセージ】

この物語は、主人公のミオが5歳、10歳、20歳と成長していく、4つの楽章(MOVEMENT)から成り立っている。ひとりの人間の心の中には様々な顔があり、とてもやさしい部分と、人にはいえない暗い部分とを皆んなが持っている。ひとりひとりの中にあるものは小さくても、世界中の人間の、つまり60億分ものエネルギーとなると、それが戦争や、憎しみといった世の中の様々な問題を起こしているのではないか。ひとりひとりの中にある問題が連鎖拡大されて戦争が起こったりする。それを解決するのは、自分自身であって、問題は自分の外にあるのではなくて、自分の中にある。「心の中の闇に生まれたもうひとりの自分とどう向き合っていくか」がこの作品の大きなテーマである。  -久石譲

 

 

 

「『4 MOVEMENT』というんですけど、これは1本目の反省から、最新テクノロジーを駆使する方法でやってるんですよ。やっぱり100パーセント満足することって、ないじゃないですか。『カルテット』を撮りおえたあとも、あのシーン、なんでもうひとつ顔のアップを撮っておかなかったんだとか、そんなことばかり考えてたら、もう1本撮りたくなっちゃんたんですよね。『4 MOVEMENT』はね、すごくいい映像が何カットか撮れてるんです」

「あっ、そういうこと言っちゃいけないか(笑)。でも、実はこれが映画のピンポイントなんですよ。北野監督もみんなおっしゃるんですけど、このシーンを撮りたくてストーリーを作ったということはあるんです。それが5つか6つ、その監督が命がけで、どうしてもこれを撮りたかったというシーンを持っている映画は、すべていい映画ですよ」

Blog. 「月刊ピアノ 2001年7月号」映画『Quartet』 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

当時博覧会会場中央の池にて、夜間開催期間中、野外特設ステージとしてウォータースクリーンにて上映された。噴水などの演出とスクリーンによる映像と音楽である。

 

音楽について。

本編でも登場する(登場人物が奏でる)ピアノやフルート、そしてシンセサイザーを基調としたサウンド構成となっている。シンプルで可愛らしい無邪気なアコースティックサウンド、反面ダークな部分を描いたシンセサイザーサウンドなどである。

主人公がピアノの鍵盤に触れるなにげない音は、同博覧会イメージソング「永遠の心」のモティーフにもなっている。その他の場面にも同メロディーの変奏が、バリエーションとして登場している。

「Crossing」にみられるミニマル的音楽要素も盛り込まれている。

同時期公開(および制作期間においても)であった映画『千と千尋の神隠し』(2001)のエッセンスを思わせるような楽曲もあり、そういった久石譲の音楽時代として聴くこともまたおもしろい。

映像音楽とはいえ、監督・音楽の両方を担っていることから、サウンドトラックという枠にはおさまらない、オリジナル・ソロ作品という捉えかたもできる作品である。

自身が監督を務める作品だけあって、映像と音楽がほぼシンクロするような緻密に練られたサウンド構成となっている。それぞれの楽曲は短いが(1-2分程度)、本編30分、サウンドトラック27分ということからも、ほぼ本編全体で音楽が流れているということでもある。

本編エンドロールにて流れる「VIEW OF SILENCE」は、オリジナル・ソロアルバム『PRETENDER』(1989)に収録されていた楽曲である。メロディーメイカーとして久石譲が存分に堪能できる、ピアノとストリングスの美しい旋律と洗練されたアレンジである。なぜこの楽曲がこの作品に取り上げられたかは、メイキングでのインタビューなどでも語られてはいない。

欲をいえば、イメージソング「永遠の心」のインストゥルメンタル・バージョンを、サウンドトラックのボーナス・トラックとしてでも収録してほしかった。DVDメイキング映像の冒頭と最後のエンドクレジットにて、「永遠の心」オーケストラ・インストゥルメンタル・バージョンが流れる。ピアノとシンフォニーによる美しい構成となっている。フェードイン・フェードアウトのため、1曲全体をとおしてこのシンフォニー版を聴くことはできない。

 

メイキング映像は、撮影記録と久石譲インタビューによって構成されている。森の撮影は屋久島で行われていることや、その他撮影場所、特殊撮影などの様子が記録されている。

音楽の精・ポコは、音符をイメージしてキャラクター化されている。

 

 

 

久石譲 『4 MOVEMENT』

【セル収録内容】
DVD ~ 本編30分 / メイキング(映像)42分
CD ~ オリジナル・サウンドトラック

初回封入特典:オリジナルポストカード

4 MOVEMENT
SOUND TRACK CD

1. Nobody
2. Poco Dance
3. Mio’s Forest
4. Alto ~もう1人の私~
5. Escape
6. Crossing
7. Darkness
8. Sand Piano
9. Refrain
10. Crisis
11. You are …
12. VIEW OF SILENCE

All Music Composed , Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Recording Studios : Wonder Station , Avaco Creative Stuidios

 

Disc. 久石譲 『壬生義士伝 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『壬生義士伝』

2002年12月26日 CD発売 CPC8-3055

 

2003年公開 映画「壬生義士伝」
監督:滝田洋二郎 音楽:久石譲 出演:中井貴一 佐藤浩市 他

 

 

コメント

久しぶりに”かっこの良い男の仕事ぶり”を見た。音楽録りに立ち会った私は、待ちに待った音楽を聴くより、目の前のオーケストラを率いて、自信に満ち溢れ、自分の曲に浸り、自分だけの至福の瞬間(とき)を求め続ける、圧倒的指揮者久石譲に見惚れてしまった。今、この男を撮ってみたとも思ったくらいだ。

そして、この曲は一生忘れない。

初号の翌日に旅立ってしまったこの映画の編集マン・盟友冨田功の通夜の席、不意にこの曲が流れた時、言葉にならない感動を覚えた。東京国際映画祭のオープニングでも冨田功追悼演奏をしていただき、最高の音楽で彼を送り出すことが出来て、感謝しております。久石さん 本当に「オモサゲナガンス」。

滝田洋二郎

 

コメント

この仕事は僕にとっては久しぶりの時代劇であった。王道を行くこの作品には、奇をてらわない正統派の音作りがふさわしいと考え、オーケストラの起用を決めた。とはいえ、和太鼓、アイルランド民族楽器・ホイッスルなどで独特のサウンドを心がけた。また、家族愛、郷土愛、男女の愛、友情と、多くの愛情がテーマであるため、音楽が情感に流されないよう気を付けた。以前から滝田監督の作品が好きだった僕としては、今回、監督やスタッフのみなさんとの素晴らしいコラボレーションが実現し、とても嬉しく思っている。

久石譲

(コメント ~CDライナーノーツより)

 

 

インタビュー
音楽・久石譲

数々の映画音楽を手がけてきた久石譲だが、本格的な時代劇は初めて。
さらに監督滝田洋二郎とも初顔合わせ。
「王道をいく映画にふさわしい音楽を作りたかった」と語る笑顔の中に、
日本映画の面白さを知る久石ならではの自信がのぞいていた。

 

-本格時代劇にチャレンジしたご感想は?

久石:
滝田監督の映画が以前から好きだったので、これはいい機会だな、と思いましたね。時代劇は『福沢諭吉』(91)でやってはいますが、いわゆる本格的時代劇にチャレンジしてみたかったんです。とはいえ、時代劇だから特に何かが違うというわけではなく、あくまで内容に即するものを作りたい。今回はいい意味でオーソドックスな王道をいく作品なので、それにふさわしい音楽をつけたいという想いがありました。具体的にはオーケストラが一番向いていると思って、そこから入りましたね。

-オーソドックスということで、ご苦労された点は?

久石:
時代劇と言っても、現在作っているんだという点を出さなきゃいけない。そして10年後、20年後に観ても古く感じないようにしなくてはならない。それがオーソドックスということですよね。ですから、オープニング・タイトルが出るときの和太鼓にも、シンセサイザーを入れたりしています。また、この映画には非常にいろんな”情”が出てくるんですね。男と女の情だったり、家族愛や郷土愛、友情。そこにベタベタに音楽をつけてしまうと情緒に流されやすいので、ある意味、音楽はちょっと引いた感じにしました。泣かせるところに泣かす音楽をつけるのではなく、むしろそこは引いて、精神的なものを感じるように音楽をつけていく。そこが一番大変な作業でした。

-メロディの美しさとあわせて、今回はリズムを強く感じました。

久石:
そうですね。アクション・シーンが結構ありますからね。ただ、通常のリズムの音ではつまらないので、非常にエスニックなリズム、たとえば和太鼓とか、アフリカや中近東の太鼓も実は入っています。あくまでこの映画の独特の雰囲気を出すために、使ったんですけれど。

-『壬生義士伝』や北野武監督のような男の世界を描いた映画と、宮崎駿監督のアニメなどを、交互に手がけているのは意識されてのことですか?

久石:
あまり気にしてないですよ。あくまで作品に対して自分がどう思うか、同時に、作品からイマジネーションをどれだけ豊かにできるか、そこが一番大切。宮崎さんのアニメーションであろうと、なんであろうと、僕の中では普通にやっているんです。でも、幅はありますよね。ひとりの人間の中にもいろんな顔がありますから。心温まる作品のときは、必然的にメロディ・ラインが大事になってきますし、突き放したような映画のときには、自分の中にもそういう部分はありますから、極力音楽がでしゃばらないように作る。共通するのは、画面をなぞるような音楽は作らない、ということ。あくまで、もしかしたら絵で表現しきれなかったものを表現する、というようにしています。音楽って非常に怖いんですよ。世界観とかムードを決定してしまうところがありますから。

-ご自身の監督経験は、音楽にも影響がありましたか。

久石:
簡単に言えば、功罪半ばって感じです(笑)。『カルテット』(01)を撮った直後は、監督の気持ちがわかってしまい、「ここはきっと大事にしているな」なんて思うと、音楽をやたら抑えちゃったんですよ。気づいたら、絵に音楽が近づき過ぎている。でも本来、音楽が鳴るなんて異質なんですよ。だって、日常では鳴るわけないんですから。やっぱり距離をとっておいたほうがいい、と反省しました。だから多少、監督が大事にしているシーンだろうがなんだろうが、無視しようと(笑)。お互いの軋轢から、相乗効果が生まれるようにしないといけない。どちらかが寄り添っちゃうと、そのダイナミズムは出ないな、と気づきましたね。今回は、音楽がでしゃばりもせず、けれど主張するところでは主張する、という点はうまくいった気がします。

-最後に観客の方へ一言お願いします。

久石:
メインテーマも含めて、映画音楽の王道をいく音楽をつけたと自分では思っていますので、映像と音楽が一緒になったときのダイナミズム、あるいはサウンドトラックCDで音楽だけを聞いて、両方の楽しさを味わっていただければと思います。

(聞き手・構成 石津文子)

Blog. 映画『壬生義士伝』(2003) 久石譲 インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

 

「ハリウッドでいえば『ブレイブハート』や『グラディエーター』ですよね。日本で古典活劇をやるとするなら時代劇ですから、当然、音楽家としてはチャレンジしておきたいジャンルですし、それをきちんとこなせる日本人でいたいと思いましたね。音楽の持つダイナミズムを、映像に乗せてこれだけ表現できるんだぞってね」

「主人公の吉村貫一郎って、とにかく魅力的なんですよ。エンドロールに流れるテーマ曲は、いわばあの時代に生きた人々への鎮魂曲です。でも、映画の音楽って、あまりドラマに共感しても実はダメなんです。僕の場合、あまり共感していない。むしろぐっと対象化しています。この映画でも醒めた意識を持って取り組んだからこそ、全体がしっかり見えたと思うんです。映像では出演者がガンガン泣いていますけど、僕としてはそこから少し距離をとって高潔な感じで包み込むようにしました。本来ならもう少し情緒を盛り込むところを、今回は吹っ切って作ってるんですね。それがやり甲斐であり、大きな課題でもありました」

Blog. 「キネマ旬報 2003年1月下旬号 No.1372」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲 『壬生義士伝』

1. 雪の降る夜に
2. 壬生の狼
3. 雨の宴(えん)
4. 「おもさげながんす」
5. ふるさと-南部盛岡-
6. 討入
7. 蛍
8. 愛しき人へ
9. 別離(わかれ)
10. 時代の足音
11. 義への道
12. 友よ
13. 旅立ち
14. 故郷へ
15. 壬生義士伝

All songs are written, arranged, produced by JOE HISAIHIS

Performed by TOKYO CITY PHILHARMONIC ORCHESTRA

Additional musicians:
Whistle:TAKASHI YASUI
Guitar:MASAYOSHI FURUKAWA
和太鼓:AUN

Recorded at WONDER STAION, AVACO CREATIVE STUDIOS

 

Disc. 久石譲 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』

久石譲 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』

2002年10月23日 CD発売 TKCA-72453
2021年11月27日 LP発売 TJJA-10043

 

1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

初めてオーケストラに接する子供達と大人達のために、久石が新たに編曲した「トトロ」の曲を、分かりやすく楽器を解説しながらオーケストラ演奏した作品。糸井重里によるナレーション・ヴァージョンと、「となりのトトロ組曲」を収録。録音は2002年5月。

 

 

『となりのトトロ』交響組曲

このCDは、『となりのトトロ』の初めてのオーケストラ演奏版です。僕のコンサートでは今までなぜか、『トトロ』の曲を演奏したことはなかったんです。だけど、ずいぶん前から、親と子のためのコンサートも開催してほしいという希望がたくさんあって、あれからだいぶ時間も経っているし、今だったら新たな気持ちでオーケストラに書き直せると思ったんです。じゃあ、どういう形態のものを作ろうかなと考えた時、頭に浮かんできたのは、ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』とかプロコフィエフの『ピーターと狼』などの、ナレーション入りのオーケストラ作品でした。ああいう、ある種啓蒙的な、今まであまりオーケストラを聴いたことがない人に、オーケストラっていいなぁと感じられる作品を作りたい。そこから『トトロ』を素材とした、オーケストラストーリーズという発想が生まれたんです。

僕自身、今でも、元気がなくなった時は『トトロ』のビデオを観て、元気をもらっています。何度観ても、本当にすごい作品だと思います。だから、中途半端なものは作れない。『トトロ』のフィルムやビデオと同じように、ずっと語り継がれるくらいのスタンダードな作品を作らなければいけないというプレッシャーを感じました。

そもそも『トトロ』の音楽は、14年前のイメージソング集から始まりました。『風の谷のナウシカ』も『天空の城ラピュタ』も、サントラに取りかかる前にまず、イメージアルバムをインストゥルメンタルで作ったんですが、『トトロ』は歌でいこうと思って。宮崎監督もちょうど、児童文学者の中川李枝子さんとのコラボレーションを考えていて、イメージアルバムの作詞はお二人に担当していただきました。それが功を奏したと思うんです。最初に歌詞のついた歌う曲を作ったために、どの曲も完結した親しみやすいメロディになっています。その分、シンフォニックという捉え方は全くしていないので、今回のオーケストラ版は、アレンジが大変でした。どの曲もシンプルなメロディで個性を出すという、簡単に見えて実は難しいことをやっています。

今回の録音は、ホールレコーディングです。やっぱり、フルオーケストラの演奏で、2000人規模の広くて天井も高いホールで録音すると、非常に空気感を伴った音になる。100人近い人間が楽器を演奏しているぬくもりみたいなものを、『トトロ』の親しみやすいメロディとともに、感じ取っていただきたいですね。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

CDブックレットには、ナレーション台本も収められている。

 

 

2021.11 update

liner notes 『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』について/楽章解説 (前島秀国)所収

 

 

 

久石譲 『オーケストラシリーズ となりのトトロ』

「オーケストラストーリー となりのトトロ」 語り:糸井重里
1. さんぽ
2. 五月の村
3. ススワタリ~お母さん
4. トトロがいた!
5. 風のとおり道
6. まいご
7. ネコバス
8. となりのトトロ
「となりのトトロ組曲」 ※ナレーションなし・ヴァージョン
9. さんぽ
10. 五月の村
11. ススワタリ~お母さん
12. トトロがいた!
13. 風のとおり道
14. まいご
15. ネコバス
16. となりのトトロ

作曲・編曲・プロデュース:久石譲
ピアノ:久石譲
指揮:金洪才

原作:宮崎駿「となりのトトロ」より
ナレーション:糸井重里
脚本:宮崎至朗 久石譲
ナレーション・ディレクター:林和弘

演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
録音:すみだトリフォニーホール (2002年5月22日録音)

レコーディング・エンジニア:江崎友淑(オクタヴィア・レコード)
              浜田純伸(ワンダーステーション)
アシスタント・エンジニア:村松健(オクタヴィア・レコード)
             秋田裕之(ワンダーステーション)

監修・ジャケット画:宮崎駿

 

Orchestra Stories – My Neighbor Totoro

1.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – Hey Let’s Go
2.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – The Village in May
3.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – The Dust Bunnies – Mother
4.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – Totoro’s here!
5.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – The Path of the Wind
6.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – A Lost Child
7.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – Cat Bus
8.Orchestra Story – My Neighbor Totoro – My Neighbor Totoro
9.”My Neighbor Totoro Symphony” Hey Let’s Go
10. “My Neighbor Totoro Symphony” The Village in May
11.”My Neighbor Totoro Symphony” The Dust Bunnies – Mother
12.”My Neighbor Totoro Symphony” Totoro’s here!
13.”My Neighbor Totoro Symphony” The Path of the Wind
14.”My Neighbor Totoro Symphony” A Lost Child
15.”My Neighbor Totoro Symphony” Cat Bus
16.”My Neighbor Totoro Symphony” My Neighbor Totoro

 

Disc. 久石譲 『Castle in the Sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~』

久石譲 『Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン』

2002年10月2日 CD発売 TKCA-72436
2021年11月27日 LP発売 TJJA-10042

 

1986年公開 スタジオジブリ作品 映画「天空の城ラピュタ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

ディズニーが2003年に北米でリリースした「ラピュタ」の英語吹替版用に、久石自らが、ハリウッド映画音楽のオーケストラを率いて壮大なスケールと迫力あるサウンドで再録音したニュー・サントラアルバム。一部、書き下ろしの新曲も含まれている。

 

 

『天空の城ラピュタ』USAヴァージョン

『ラピュタ』のオリジナルを作ったのは、16年も前のことです。『風の谷のナウシカ』をやって、徳間書店さんの大作アニメの二番目の作品である『アリオン』をやった後だったので、宮崎駿監督が新作を作っていると聞いても、僕に音楽が回ってくるとは思っていませんでした。でも、結局、久石がいいということになって、プロデューサーだった高畑勲さんと鈴木敏夫さんが、僕のところに依頼しに来て下さった時は、本当に嬉しかった。

『ナウシカ』は、実は音楽自体にまとまりがないんです。シンセのウチコミの音だったり、オーケストラだったりして、全体の統一感に乏しい。ただ、『ナウシカ』の物語に気持ちを入れこんで作ったので、統一感のなさが問題にならないくらいの説得力があった。そういうこともあって、『ラピュタ』は音楽としての完成度をすごく上げたいと思って作ったんです。僕自身、映画音楽としてのまとまりのある仕事が出来たのは『ラピュタ』が初めてだったような気がします。完成したフィルムを観ると、画面が呼吸しているんです。音楽がなんとなく流れているんじゃなくて、突然アップテンポになって、ガッと下がって、また上がって。序破急と言うんでしょうか、緩急のメリハリがすごくあって、自分でも、こんなに上手く作れたんだと感心できた作品でした。

『ラピュタ』の音楽はそういうふうに完成度が高かったので、アメリカでリリースするに際しても、本当は手を加えたくなかったんです。しかし、アメリカ映画は最初から最後まで音楽が鳴っているのが普通だから、今までの『ラピュタ』の音楽の付け方だと、アメリカの観客はなじめないんじゃないかということで、もう一度録り直すことにしました。宮崎駿監督にも確認をとったんですが、自由にやっていい、ということでしたので。

実は僕は、ハリウッド映画の音楽の作り方は、そんなに好きなほうじゃないんです。僕の映画音楽の作り方というのは、監督の作りたい世界を根底に置いて、そこからイメージを組み立てていく。しかし、ハリウッド映画は、基本的にキャラクターのための音楽を作っていくんです。はっきり言ってしまえば嫌いなやり方なんですけど、あえてそういう単純明快なアプローチを試してみようと思いました。『ラピュタ』は冒険活劇なので、ハリウッド的な音楽もいいかな、と。

今回は、もともと完成されたオリジナルがあるということで、気楽なスタンスで作ることができました。音楽を作る時、いちばん厳しいのは、新しいメロディを作り出すことです。今回はそれがなかったので、精神状態が安定していて、曲にゆとりが生まれました。作品に入れこみすぎて、一生懸命になりすぎてしまうと、かえって視野が狭くなって、豊かなイマジネーションが損なわれてしまうものなんです。その結果、出来上がった音は、堅苦しい音になってしまう。でも、今回は音に遊びがあって、自分で聴き直して、素直にいいなぁと思える出来になりました。トラックダウンをやっていても、すごいな、これ、と。自分ですごいなんて言っちゃいけないんですけど(笑)、今回の音は屈託がないんですよ。いい意味で、ノビノビしているんです。

かと言って、楽して作ったかというと、そんなことは全然ありません。ハリウッドでもこれだけお金をかけることはないですというくらいの壮大な費用を使っていますし、スコアの量もすごいですから。音は、正統派のオーケストラサウンドです。もちろん、シンセを入れたりはしていますが、東洋的な音を入れたりするような、奇をてらうことは、一切していません。ハリウッド映画をやっているオーケストラや指揮者の方に演奏していただきましたが、結局は自分のやりたい音になりました。真っ当なオーケストラで、自分のオイジナリティを出そうと思って作った作品ですね。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

「ディズニーのスタッフによると、外国の人って、音が3分も鳴らなければ落ち着かなくなるんだそうです(笑)。洋画を見ると分かりますが、ずーっと音が鳴っていますよね。しかもアニメなんて、全編鳴っているのが当たり前なんです。ところが、オリジナルの「ラピュタ」では、2時間4分の上映時間のうち、音楽は1時間。すると7分間~8分間、音楽が全くない部分があるんです。これでは海外で通用しないというわけで作り直すことになったんですが、単に新しいものを足しても、14年前に制作した音楽と合わないので、すべて新録にしたんです。もちろん「ラピュタ」のメロディは崩せないので、そこは生かしながらアレンジを変更しています」

また、海外での公開を前提とするという新たな要素が加わったことで、制作のアプローチにも変化があったという。

「アメリカ映画の音楽の付け方って、基本的にすごくシンプルなんです。それはどういうことかというと、とにかくキャラクターと音楽を一致させる。軍隊が出てきたら軍隊のテーマというように、映像を説明するような音楽が、ハリウッド調の音楽であり、それがポイントになっている。これまで、僕はそういうアプローチというのは理解はしていましたが、すごく音が単調になりそうなのがいやで、避けていたんです。でも、いざ意識して作ってみると、やはりものすごく勉強になりましたね」

もちろん、新録された「ラピュタ」でも、シンセサイザーによるデモ作りは行われた。しかも、こちらも全くゼロの状態から制作し、レコーディングされたのだという。当然、生のオーケストラ・パートもすべて新録音。総勢80人という大きな編成を組み、教会を使った大規模なレコーディングが行われたのだが、ここでも、生のオーケストラとシンセサイザーのミックスという手法が大きな威力を発揮したという。

「教会でのレコーディングは、まさにすさまじい音で、アンビエンスがあまりにすごいため、近接マイクや各セクションのマイクなどで音質のコントロールをすることが難しかった。ですから、ちょっとゴリっとした音にしたりしようとしてもそうならない。そこで、シンセサイザーをミックスするという手法が役に立ったんですよ。サウンドトラックのリリースについては、まだ予定が立っていないのですが、仕上がりは最高です。宮崎さんもすごく喜んでくれていましたね」

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「もう一つ、昔やった『天空の城ラピュタ』がアメリカで英語で公開されるんです。ディズニーで公開するんですけど、ディズニーの常識でいうと、アニメーションというのは1時間40分なんですよ。ところがあれば2時間4分です。しかもあまり音楽の量が多くない。日本の映画はアニメーションを含めて、みんなそうで、音楽の量が多くないんですよ。ところがアメリカは全編に入れるんです。もう10何年前の映画だから、新たに音楽を足してくれと言われてもできないし、性格的にもオール・オア・ナッシングなところがあるから、いま全部作り替えているんですよ。来月の頭にアメリカのシアトル交響楽団というところで、録るんですよ。これはいままで自分がやってきた映画のスタンスと全然違うんです。アメリカは過剰情報量の世界だから、誰々のテーマというのがあって、何かが出てくるとそのテーマを流すんです。基本スタイルが本当に劇の伴奏なんです。僕はそういうやり方、基本的に嫌いだし宮崎さんの作品に関しても、これが我々の決定稿であるというオリジナルがちゃんとあるわけです。でも今回、もしやるのであれば、まったく違うもの、あえてハリウッドスタイルでやろうかということで。鈴木さんの『バースディ』みたいなものですよ。『こういうのもあるだろう』というスタイルで作っている。映画音楽の作り方って、いろんな考え方があるんですよ。僕にとってそれは、作者の意図がどう伝わるかということに貢献していくということです。」

Blog. 「ダカーポ 422号 1999.6.2 号」鈴木光司×久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

1ヶ月半におよぶベーシックレコーディング(サンプラーを使ったデモ音源)は、オリジナル版制作当時のフェアライトII音源からフェアライトIIIへの移行作業から実施され、ストーリーに沿った順録りで追加音源ふくめた音楽制作が行われている。また久石譲は英語吹き替え版の映像に合わせて、セリフとメロディがかぶらないようになど緻密に作曲されている。パズー、シータとドーラの線路上でのおっかけっこの場面でシンセベースの旋律を書き、ポップなリズムでスピード感あふれるベースラインができたあたりから、この音楽制作のペースをつかんできたとある。全55曲。ソロ部分のピアノだけは久石譲によるもので先に日本でレコーディングされている。コーラスも日本で、オリジナル版は児童合唱、本作は中学・高校生の女の子30人によるもの、都内の教会でレコーディングされている。またケーナなリュートといった民族楽器も効果的に使われることになった。

(以上、NEWS WONDER2 No.32 より要約)

 

 

 

エンディングに流れる「君をのせて」は、オリジナル版をベースに久石譲ピアノが伴奏や間奏に追加された新バージョン。エレクトリック・ピアノ・トラックが削除され、生ピアノ・トラックに変わり、またフレーズも異なる。さらにいうと、歌に入る前の「タイガーモス号」モチーフも新録されたもの。サントラ未収録なのがもったいない。北米版本編(輸入版/国内盤ブルーレイ映像特典など)のみで聴くことができる。

 

 

 

 

映画『千と千尋の神隠し』予告編に「Track.17 The Lost Paradise」が使用されていた。その経緯は下記より抜粋。

”それから、みなさんが御覧になったであろう、おどろおどろしいサスペンスのようなミステリーのような曲は陰謀でありまして・・・僕の作った曲ではあるんです。ですが・・・言っていいんでしょうか・・・
あの・・・「天空の城ラピュタ-アメリカ版-」というレコーディングをアメリカでしたときの、大本の映画が2時間5分くらいあるんですけど、音楽がそれでは足りないということで4、50分書き足した部分があるんですね。書き足したところの音楽を日本でまだ公開されていないことを幸いに、鈴木プロデューサーが使っちゃいまして・・・それが流れているわけで、何人かからあの音楽が入っていないという問い合わせはうちのホームページにもずいぶん来ていたようです。”(久石)

”それから、誤解のないように僕もこの際言っておきたいんですけど、久石さんが「俺に内緒でラピュタの曲を勝手に使った」と。あれは、この際だから言っちゃいますけど、久石さんが音楽を作るのが遅れたのが原因なんですよ。そのことだけは、はっきりさせておきたいなと。(会場笑い)失礼いたしました。”(鈴木)

出典:DVD映画ポータル 完成報告記者会見&完成披露試写会 「千と千尋の神隠し」 より
https://www.eiga-portal.com/butaiaisatsu/sentochihiro-s/04.shtml

 

 

 

 

2021.11 update

アメリカ版『天空の城ラピュタ』スタッフ日記(当時のワンダーシティスタッフによるweb日記を抜粋)所収

 

 

 

 

オリジナル作品の全米公開に向けて音楽をリアレンジ。映画も「Castle in the Sky」として公開予定もお蔵入り。北米版本編は後の「天空の城ラピュタ」(Blu-ray DVD)特典として収録され、このサウンドトラックもUSAヴァージョンとして発売される。

オリジナル劇中音楽は、オーケストラ+シンセサイザーだったのに対し、ほぼ全編フルオーケストラとしてリアレンジされている上に曲数も格段に多くなっている。オリジナルサウンドトラック(日本版)には未収録となっていた「ボムじいさん」シーンの曲が収録されていたり、音楽のついていなかったシーンへの新録も多数。このあたりは、意図的に音楽を追加しているようである。ハリウッド映画は劇中音楽がとにかく多い。音楽が鳴っていないシーンがないというほどに。ジブリ作品はもとより多くの日本映画、日本文化とは違う点である。いい意味での間(無音・余白・隙間)、こういったものを味わえる文化。

全米公開に向けて、ある程度欧米文化に受け入れやすいように、かつオリジナル性を損なわないように。オジリナル作品に後から手を加えるという意味では異例の音楽再編集、新録、フルオーケストラ、という流れになったようである。オリジナルの日本版サントラに馴染みがある人も多いとは思うが、また違った角度から新しいラピュタの世界観を味わえるという意味では純粋にうれしい作品だと思う。ストーリーと並行した曲順になっているので英題からどのシーンだったかを読み解くのもおもしろい。

シアトルにて録音された、新しい躍動感・壮大感・テンポ感、かつ緻密なオーケストレーション、パワーアップしたラピュタサウンドを楽しむことができる。久石譲の映画音楽を自身ではなく、他指揮者がタクトを振っている点もまた違った空気感と響き、そしてオケとの呼吸が新鮮である。

指揮:ヴィンス・メンドーザ Vincent Mendoza
演奏:シアトル・ミュージック SEATTLEMUSIC

 

 

 

久石譲 『Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン』

1. Prologue 〜 Flaptors Attack
2. The Girl Who Fell from the sky (Main Theme)
3. The Levitation Crystal
4. Morning in the Mining Village
5. Pazu’s Fanfare
6. The Legend of Laputa
7. A Street Brawl
8. The Chase
9. Floating with the Crystal
10. Memories of Gondoa
11. Stones Glowing in the Darkness
12. Disheartened Pazu
13. Robot Soldiers 〜Resurrection – Rescue〜
14. Dola and the Pirates
15. Confessions in the Moonlight
16. The Dragon’s Nest
17. The Lost Paradise
18. The Forgotten Robot Soldier
19. The Invasion of Goliath
20. Pazu Fights Back
21. The Final Showdown
22. The Destruction of Laputa (Choral Version)
23. The Eternal Tree of Life

All music composed & arranged by Joe Hisaishi
Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Vincent Mendoza
Performed by SEATTLE MUSIC

Recording Engineer: Suminobu Hamada (Wonder Station)
Assistant Engineer: Hiroyuki Akita (Wonder Station)

Recorded at
St.Thomas Chapel – Bastyr University, Seattle
Wonder Station, Tokyo

 

Disc. 久石譲 『めいとこねこバス サウンドトラック』

久石譲 『めいとこねこバス サウンドトラック』

2002年10月2日 CD発売 MDG-R-00003

 

2002年公開 スタジオジブリ作品
三鷹の森ジブリ美術館 短編アニメーション「めいとこねこバス」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

三鷹の森ジブリ美術館オリジナル短編アニメーション第3作「めいとこねこバス」(2002年上映開始、原作・脚本・監督:宮崎駿)のサントラ盤。本作は映画「となりのトトロ」の後日談的な短編作品であり、久石が長編と同様に音楽を担当した。録音は2002年8月。

 

 

「めいとこねこバス」 「パン種とタマゴ姫」等の三鷹の森ジブリ美術館オリジナル短編アニメーション作品は、三鷹の森ジブリ美術館(日時指定の予約制)の映像展示室「土星座」だけで上映しています。

「めいとこねこバス」のサウンドトラックCDは、同美術館のショップ「マンマユート」でのみ販売しています。(発売元:スタジオジブリ)

 

 

シンプルだけど複雑な、口ずさめる面白い音楽

音楽を担当したのは「風の谷のナウシカ」以降、全ての宮崎監督作品の音楽を担当する久石譲さん。今回、全8曲中、新たなメロディーは2曲。1曲目はメイがコネコバスと一緒にキャラメルを食べるシーンで流れるもの。「この曲はメイのテーマとして『メーイ、メーイ、タラリララ~』と単純に呼びかける感じで作ったんです」メロディーこそシンプルなこの曲、実はとてもむずかしいリズムで構成されている。

「シンプルなメロディーにちょっと複雑さを加えつつ、でも口ずさみやすい面白いものにしようと思っていたんです」この曲の出来に大満足な久石さん。この曲が完成した時、メイとコネコバスの喜びのテーマとして、これがこの映画音楽の核になると確信したという。

そしてもう1曲、久石さんが作ったのは、森の中にたくさんのネコバスが入っていくところに流れるもの。「あのシーンが物語の大きな変わり目ですからね。ちょっと面白くて印象的なものにしようと考えました」そこで久石さんが取り入れたのが、クルムホルンという傘の柄のような面白い形のオーボエ族の楽器。「エスニック風な感じが出て面白いんですよ」こうして「となりのトトロ」の楽曲に新しい曲が加わり、映像に寄り添う形で流れる音楽は、作品をよりいっそう楽しいものにしている。

(「めいとこねこバス」公式パンフレット より)

 

 

久石譲 『めいとこねこバス サウンドトラック』

1.めいとこねこバスのさんぽ
2.キャラメルあげるっ。
3.めいの子守うた
4.出発進行!
5.塚森のネコバァちゃん
6.あ、トトロだ。
7.またネ!

指揮:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
演奏:安井敬 庄司祐子(クルムホルン)

 

Disc. 久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

2002年7月26日 CD発売 WRCT-1005
2002年11月23日 CD発売 WRCT-1005 ※新パッケージ

 

2001年12月7日東京芸術劇場で行われた公演のCD化
指揮:金洪才 演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団

アカデミー賞受賞作品「千と千尋の神隠し」組曲
北野武監督映画「Kids Return」、久石譲監督映画「Quartet」他収録

 

 

解説

本作は2001年10月30日から始まったツアー「久石譲・SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」の最終日、2001年12月7日の東京芸術劇場におけるコンサートのCD化である。

収録された楽曲は全曲が初演であり、久石自身がコンサートの数ヶ月前から少しずつアイデアを固め、全ての関連スコアをチェックした後、オーケストラ演奏用にリ・アレンジし、演目の最終決定というプロセスをたどっている。これは映画音楽が映像とのマッチングを前提として作曲されているため、コンサートの演目として演奏するためには全く異なるアレンジアプローチが必要となったからである。どの作品にも意欲的に思い切ったアレンジを施しているが、特に「BROTHER」は1度作ったアレンジから徹底して離れて新しく作り直しており、非常に聴き応えのある作品に仕上がっている。また「千と千尋の神隠し」は、映画の中の印象深い楽曲をセレクトして組曲形式で構成し、独立した完成度の高い作品となった。

演奏は「千と千尋の神隠し」「BROTHER」「Quartet」のサウンドトラックのレコーディングを行った新日本フィルハーモニー交響楽団で、レコーディング時のオリジナルに近いメンバーによるコンサート音源であることも興味深い。

録音は、クラシック・レコーディング界における日本屈指のエンジニア、江崎友淑氏による。演奏収録場所は東京芸術劇場。指揮は金洪才氏、ピアノ演奏は久石譲。また今回は1曲だけ「Student Quartet」を久石自身が指揮している。

(宮崎至朗)

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ほとばしる魂の音楽

わたしがアナウンサーを志したのは、NHKのある番組がきっかけだった。

それは大学の頃に偶然見た「胃の粘膜が…」とか、「人の遺伝子とは…」といった科学番組だった。優しく包み込むような音楽とナレーションが心に染み入り、気がつくとポロポロ涙がこぼれていた。衝撃だった。耳から受ける刺激は、これほどまでに人の心を揺さぶるものなのか、と。同時に何かを伝えたい、表現したい、いつかこんな仕事に関わりたい、そう強く望むようになった。これが久石譲さんの音楽との出会いだった。

昨年、雑誌の対談で初めてお目にかかる機会に恵まれた。黒のスーツをさり気なく身にまとい、颯爽と登場された久石さんは、わたしの想像とは全く違っていた。

正直、驚いた。失礼ながら『サンタクロースの様なおじいさん』を思い描いていたからだ。穏やかな語り口にかい間見える鋭さ。「学生時代は尖っていましたからね」と微笑まれたのが印象的だった。

当時、久石さんは前衛的な音楽に傾倒されていたと聞いた。だからこそ、創造力果てしなく、あまたの作品が生み出されてきたのだろうか。

”SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001”。今回もまた心が震え、喚起された。ほとばしる魂を感じさせる久石さんの音楽。これからもわたしたちを新たな世界へ導いて下さることだろう。

進藤晶子 (キャスター)

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

「千と千尋の神隠し」組曲
1.あの夏へ 2.竜の少年~底なし穴 3.6番目の駅 4.ふたたび
日本における映画記録をことごとく塗り替えた、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」。宮崎監督とのコンビも「風の谷のナウシカ」以来7作目となるこのファンタジー映画の中で、久石譲の音楽は観客の感情の振幅を見事に広げてみせた。今回、ステージで初めて演奏されたのは、スクリーンで耳に馴染んだ数々のメロディを、コンサートのために4曲からなる組曲として書き下ろしたものである。

「Quartet」より
5.Black Wall 6.Student Quartet 7.Quartet Main Theme
2001年秋、久石譲がはじめて監督・脚本・音楽を手掛けた作品「Quartet」が公開された。音楽学校を卒業した後、社会でそれぞれの挫折を味わった4人の仲間が出会い、再びカルテットを組んでコンテストに挑戦するという物語で、日本では珍しい本格的な音楽映画に仕上がっている。全ての音楽を、久石譲はこの映画のために新たに作曲した。CDではその中から3曲を選んでいるが、「Black Wall」は現代音楽風に、「Student Quartet」はモーツァルト風に、そして「Quartet Main Theme」はフランス印象派風にと、久石譲の音楽的センスの多彩さが溢れでている。

「BROTHER」より
8.Drifter…in LAX 9.Wipe Out 10.Raging Men 11.Ballade
久石譲は「BROTHER」の音楽を、自分自身、非常に気に入っているものの1つだと言う。それを今回、コンサートホールでの演奏用に書き換えた。リ・アレンジというより、ほとんど作り替えてしまったと言ってもいい。そのくらい迫力と存在感のある楽曲となった。哀しみを含んだメロディライン、対比する息も詰まるようなパーカッション・リズムの躍動感が聴く者の心を揺さぶり、否応なくハードボイルドともいえるその世界に引きずり込んでいく。

「Le Petit Poucet」より
12.Le petit Poucet Main Theme
久石譲が、監督オリビエ・ダアンの「プチ・プセ」(原作シャルル・ペロー、日本語原題「親指トム」)でフランス映画に進出した。映画は2001年10月17日に公開されたが、色彩の美しさを際立たせた映像美と緩急自在の語り口、そして特別出演のカトリーヌ・ドヌーブを初めとする豪華なキャスティングが話題となり、公開初日にはパリとその近郊だけで1万3千人を動員した。「久石節」とでもいうべき美しい旋律と和声は映像美と見事に絡み合い、本来「子供向け」にカテゴライズされるこの作品のクオリティを、1ランク引き上げることに成功している。日本での公開が待たれる作品である。

「Kids Return」より
13.Kids Return 2001
メインテーマとなったこの曲は、素晴らしい速力と緊張感をもっている。それは物理的な速力というに止まらず、人間の内面に鋭く切り込んでくるかのような疾走感である。聴くたびに新しい感動を呼ぶこの曲を、久石はフルオーケストラとピアノのためにリ・アレンジした。その驚くべき華やかさの裏に、ある秘めた切なさを感じさせるのは、さすがに久石譲である。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

(新パッケージ ジャケット)

*新パッケージはジャケット表面背面、CD帯、円盤デザイン、ライナーノーツ、すべてのデザインが異なる

 

 

久石譲 『SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001』

「千と千尋の神隠し組」組曲
1. あの夏へ
2. 竜の少年〜底なし穴
3. 6番目の駅
4. ふたたび
「Quartet」より
5. Black Wall
6. Student Quartet
7. Quartet Main Theme
「Brother」より
8. Drifter… in LAX
9. Wipe Out
10. Raging Men
11. Ballade
「La Petit Poucet」より
12. La Petit Poucet Main Theme
「Kids Return」より
13. Kids Return 2001

All composed, arranged and Produced by Joe Hisaishi

ピアノ:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
指揮:金洪才

2001年12月7日 東京芸術劇場にて収録

 

Disc. 久石譲 『Quartet カルテット』

久石譲 『カルテット DVD』

2002年3月25日 DVD発売 BCBJ-1128

 

2001年公開 映画「Quartet」
監督:久石譲 音楽:久石譲 出演:袴田吉彦 桜井幸子 他

久石譲 第一回監督作品
[モントリオール映画祭ワールドシネマ部門正式招待作品]

 

 

この作品は僕の自伝ではないけれど、ある意味で僕の物語。僕の周りにいた、音楽と共に生きようとして悩み立ち止まる、繊細で、美しい人たちの物語です。

久石譲

 

 

「音楽が主役になっている、ということ。物語に音楽がからんでいるとか、主人公が音楽家というだけでは音楽映画にはなりません。音楽がドラマとからんでクライマックスに向かっていくような映画を、私は音楽映画と呼ぶことにしています」

「整理すると、音楽とストーリーが密接にかかわっていること、音楽が台詞の代わりになりえていること、この2点に集約されます」

「まず演奏トレーナーには役者が楽器を弾けるようにするのではなく、”弾いているように演じる”ことを教えてもらいました。役者たちは彼のもとで最低1ヵ月間のトレーニングを積んで、撮影に挑んでいます」

「たとえば、役者が演奏しているふうの表情をアップで見せ、切り返しでプロの演じている手元だけを見せるというカット割では、観る人誰もが『編集で見せていますね』と興ざめしてしまう。ワンカットで登場人物が演奏するシーンを成立させるためには、まず役者のトレーニング。しかし、それでも追いつかないほどの演奏技術が必要なパートがあることもわかっていましたから、そこは撮影のトリックを入れる計画を立てました。技法は複数。完全な種明かしをしてはつまらないので、たとえば2人羽折り、たとえば合わせ鏡、そんな技法を用いているということだけお伝えしておきます。時間をかけた創意工夫ばかりで、その分できばえも良かったと自負しています。ぜひ、映画館で演奏シーンを堪能していただきたいですね」

Blog. 「ディレクターズマガジン 2001年11月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「撮影は去年に終えていてね。劇中、袴田(吉彦)君扮する主人公の台詞で『音楽ってそれほどのものなんですか?』っていうのがある。この一言を音楽家である僕が言わせるのは、自分では結構強烈な挑戦だった。多分この一言を撮りたくて映画を作ったんだなと、今は思っている。”音楽を作る”ことと”生きる”ことの関係性を何らかの形にしてみたかったのではないかな。音楽は自分では未だ模索の最中だし『Quartet』も、その明確な答えとは成り得ていないけれど、リアリティという点ではなかなかの仕上がりだよ」

Blog. 「SWITCH スイッチ JULY 2001 Vol.19 No.16」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「ストーリーは自分とはそう関係ないんですけども、僕にとってのリアルという面でね。たとえば、大学のシーンをどこで撮ろうかと、いろんな大学を見せてもらったんですけど、結局、自分が出た大学、国立音大しかない、と。キャンパスの真ん中にはやっぱり噴水(笑)。あったほうがいいんじゃなくて、なきゃいけない。庭ではラッパを練習していないと。ピャラララ、ピャラララとかってやっててくれないとダメなんです(笑)。監督というのはみんなどこかで虚構をやってるから、ウソっぽくなることをすごく恐れるんですね。そこでいちばんリアルなのは、自分の体験なんですよ」

「主人公が、お父さんが家を崩壊させてまでカルテットに打ち込んだことに対して、「音楽ってそれほどのもんですか」っていうシーンがあるんですよ。観ていると、すっと流れちゃう場面かもしれないけど、音楽家である僕が監督しながら、この台詞をいわせるっていうのは、すごく重いんですよね」

「あります、正直いえば。こんなに全部を犠牲にして…。たとえば、この2日間すさまじい指揮をしました。その前は籠もりきりで一日10数時間、譜面を書いてます。そのまた前は、2ヵ月間籠もってレコーディング。1年間、ピアノにさわってないのに、ピアノをダビングするなんてことまで起きてくる。まったくよくやってますよね。何のためにやってるんだろうって、ふと思うことがあるんです。「音楽ってそれほどのもんですか」。この台詞をいわせるために、僕はこの映画を撮ったんじゃないかという気がしてます」

Blog. 「月刊ピアノ 2001年7月号」映画『Quartet』 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「全体の半分弱くらいが音楽シーンで、時間軸に固定されますから、構成自体は難しくなかったんです。でも、セリフの投げ合いで感情を引っ張りすぎると音楽シーンのパワーがなくなっちゃうから、芝居は極力抑える、カメラは引くって決めてましたね。そういう意味では、北野監督的なやり方だったんですよ。過剰に説明をせずに、どこまで引いて見せるかという意味ではね。武さんは僕が映画を撮るというのを知っていたんです。あるとき一緒にご飯を食べていて、武さんが大杉漣さんに話をしていたんですよ。”ラーメンをおいしく撮る方法って、いかに本当においしいかと見えるようなカットを撮らなくちゃいけないんだよ。たいがいの監督がしくじるのは、いかにうまいかという内容を説明しちゃうから。トンコツ味でとか昆布のダシでとかさ、そうするとトンコツが嫌いな人はそれを聞いた瞬間、半分引いちゃうんだよな”って。大杉さんに話をするフリをして、たぶん僕に言ってくれたんだと思う。それがすごく残っていて、大変なヒントをいただきましたよね」

「この映画、2回観た人の反応がいいんですよ。芝居や何かを全部言葉でやっていると2回観たいとはあまり思わないですよね。でも、音楽は2度聴いても嫌にならない。その音楽が今回、セリフ代わりになってますね。リピートに耐える映画になったかと思うと、とてもうれしいですね」

Blog. 「DVDビデオ・ぴあ 2001年10月号」 映画『Quartet』久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「まず音楽映画とはどういうものか、明確な定期をしておかなければいけないと思いました。ドンパチがあればギャング映画、音楽があれば音楽映画というふうに考えれば、実際どのジャンルを見ても明確な定義など存在しないんです。そこで自分が考える音楽映画とは、まず第1に音楽自体がストーリーの展開と強く絡んでいなくてはいけない。第2に、せりふの代わりに音楽で半分ぐらいは表現してしまう。つまり、(音楽で)見る側にイマジネーションを広げてもらう。この2点を明確にして自分のスタンスをとろうというのが演出の根底にあったんです」

「そりゃ大混乱ですよ(笑)。譜面を渡されて、『3小節目のジャン!で、左からカメラ寄る』なんて書いてあるわけです。結局、学生さんのアルバイトを雇い、たとえば阪本善尚カメラマンの後ろに1人付けて、「1、2、3、ポーン」という感じで背中を叩いてもらって撮ってもらいましたから(笑)。通常、オケを撮る場合もオケを恐れちゃって遠くから撮るだけっていうケースが圧倒的に多いんですよね。自分はオケの連中との仕事も長いんで、『はいっ!弦、全部どけ~!』ってガンガンなかに入って撮る」

「袴田君たちは(プロの)ヴァイオリン奏者じゃないから、みんな(実際に)弾いていないってわかっているわけです。だから見る側が『あっ、本当に弾いている』と思えるところまでもっていくのが鍵でした。楽曲の小節ごとに顔のアップ、手のアップ……と決め、『その小節だけは何が何でも手とかは写るからね』と指示して、さらってもらったんです」

Blog. 「PREMIERE プレミア 日本版 October 2001 No.42」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

 

映像特典「プロローグ・オブ・カルテット」にて久石譲インタビューが収録されている。

配役中、唯一楽器奏者である久木田薫(チェロ)は、本編でも実際に自身が演奏している箇所が多い。またこの映画での出会いがきっかけとなり、 『ジブリ・ザ・クラシックス』というジブリ作品カバーCDを発売している。スタジオジブリ映画の主題歌、挿入曲を、チェロの演奏をメインにクラシック風、タンゴ風などにアレンジ。ギター、バンドネオン、ハーモニカなど多種多彩な楽器によるアコースティック・カバー作品である。

本編中盤に登場する金管アンサンブルは「上野の森ブラス」メンバーだと思われる。本編にて演奏していた楽曲は「ハトと少年」(映画『天空の城ラピュタ』より)である。また同楽曲・同アレンジで収録されているのが、彼らの『ブラス ファンタジア I ~宮崎アニメ作品集~』である。原曲の持ち味をそのままに、上質でハイセンスな金管アンサンブルを堪能することができる作品である。

映画エンドクレジットにて流れる「Main Theme」は、サントラ盤とは異なるヴァージョンとなっている。プログラミングされたパーカッション(リズム系)の音および種類が異なっている。聴き比べてみるのもおもしろい。

 

 

 

 

 

久石譲 『カルテット DVD』

キャスト:袴田吉彦/桜井幸子/大森南朋/久木田薫/藤村俊二/三浦友和

監督・音楽:久石譲
脚本:長谷川康夫/久石譲

本編113分
(シーン・チャプター/ミュージック・チャプター)

映像特典25分
・「プロローグ・オブ・カルテット」(メイキング映像)
・劇場用予告編
・ラジオスポット
・キャスト&スタッフ プロフィール

 

Disc. 久石譲 『LE PETIT POUCET』

Le Petit Poucet (プセの冒険 真紅の魔法靴) オリジナル・サウンドトラック

2001年10月9日 CD発売 014 934-2 ※輸入盤のみ

 

2001年仏公開 映画「Le Petit Poucet」(邦題:プセの冒険 真紅の魔法靴)
監督:Olivier Dahan(オリヴィエ・ダアン) 音楽:久石譲 joe hisaishi

 

 

「全体のサウンドの設計からいうと、〈日本〉をすごく出しました。和太鼓だったり尺八だったり……宮崎監督をはじめ、日本の監督は尺八を使うとすごく嫌がるんですよね。『尺八の音』とイメージを限定してしまうから、と。でも、フランス人には全然関係ないことなので、逆に前面に出したんですよ。そのほうが自分にとってリアリティがあるということもありますが、もうひとつはドメスティックなほうがかえってインターナショナルに通用する。要するに日本やアジアの風土に根ざした音楽を掘り下げた状態で提示すれば、それは世界中で通用するはずなんです」

Blog. 「PREMIERE プレミア 日本版 October 2001 No.42」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

Le Petit Poucet (プセの冒険 真紅の魔法靴) オリジナル・サウンドトラック

1. La lunan brille pour toi (Version Edit) (vocal:Vanessa Paradis)
2. Le Petit Poucet (Main theme)
3. La forȇt de Rose
4. L’attaque des pillards
5. Sur le chemin de cailloux blancs
6. Perdus
7. Les pièccs d’or
8. Aux loups!
9. La maison rouge
10. A la table de l’Ogre
11. Le jardin secret
12. L’Ogre
13. La forȇt rouge
14. Entre l’Ogre et la falaise
15. Le duel
16. Le messager de la Reine
17. “La lune brille pour toi” (Générique de fin) (vocal:Vanessa Paradis)

「La lune brille pour toi」
作詞:Olivier Dahan 作曲:Joe Hisaishi

Musique Originale Composée et Arrangée par Joe Hisaishi

Musiciens
Piano:Joe Hisaishi
Orchestre:Paris Philharmonic Otchestra

and Shakuhachi , Flute et Kena , Latin Percussion , Luth

Orchestrations:
Joe Hisaishi
Kazunori Miyake
Jun Nagao

Enregistrements:Studios Guillaume Tell
Mixage:Roland Guillotel

 

Little Tom Thumb
(United States, 2001) 016 968-2

1.Close Your Eyes
2.Little Tom Thumb (Main Theme)
3.Rose’s Forest 
4.The Pillagers Attack 
5.On The Road Of White Stones
6.Lost 
7.The Golden Coins 
8.Wolves! 
9.The Red House 
10.At The Ogre’s Dinner
11.The Private Secrets
12.The Ogre
13.The Red Forest 
14.Between The Ogre And The Cliff 
15.The duel
16.The Queen messenger
17.Close Your Eyes (Ending Theme Song) 
18.”La Lune Brille pour Toi” (Bonus track)

 

Disc. 久石譲 『Quartet カルテット オリジナル・サウンドトラック』

QUARTET カルテット

2001年9月27日 CD発売 UPCH-1105
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9009

 

2001年公開 映画「Quartet」
監督:久石譲 音楽:久石譲 出演:袴田吉彦 桜井幸子 他

 

久石譲 第1回監督作品
日本初の本格的音楽映画、劇中使用曲フル・バージョン収録
ボーナス・トラックにリミックス・バージョン収録

 

 

曲目解説 by JOE HISAISHI

1.Main Theme
メイン・テーマに、プログラミングによるリズムを加えた楽曲です。エンディングのアイディアとしては、幾つかの方法が考えられましたが、青春映画の希望的要素を込めたアレンジにしました。

2.Student Quartet
この映画の音楽に関しては、当初メイン・テーマ以外は既存のクラシック曲を使って完成させる予定でした。しかし、制作を進めていくうちに、自分の映画の中で、僕以外の人が作った曲が鳴ることに違和感を覚え始めて…。聞いてもらえばわかるように、この曲は本当ならモーツァルトの「ディヴェルティメント」をイメージしていましたので、それに近い雰囲気で書き上げました。途中、主人公の苦悩を音楽で語る意味で、イタリア映画の音楽っぽい、メロディアスで泣かせるフレーズを封入しています。そうしたところに、単なるモーツァルト風楽曲にはしないぞというこだわりを感じてもらえたら嬉しいですね。

3.パッサカリア
劇中、明夫(袴田)がオーディションで弾くソロの曲です。「Student Quartet」の場合と同様に、本当なら「カプリース24」という、パガニーニのバイオリン・ソロの曲を使いたかった箇所なので、この作風を下敷きにしてそのフォーマットにのっとって、新たに自分で作ってみました。なぜ「カプリース24」をイメージしたかといえば、メロディもよくポピュラリティがありつつ、激しさも備えている。バイオリニストとしてのビルティオーゾといいますか、テクニカルな部分も相当に要求する楽曲ですから。いうなれば、パガニーニに捧げるオマージュのようなものです。

4.Black Wall (Strings Quartet)
マレーヴィッチ・ウォルハイムという著名作曲家が作った有名なクラシック作品で、なおかつ弦楽四重奏であり、オーケストラの定番曲でもあるという設定です。これはよくあることで、「展覧会の絵」も元々はピアノ曲だったものが、オーケストラにもなっているのと似たスタイルです。本来、青春映画では、こういう現代音楽調の不協和音の楽曲を使うのは、楽曲がやたらと小難しくなりがちなので、かなりの冒険ではあります。ある意味これが、(映画の)最初から最後までを引っ張っているといってもいいくらい。そういう音楽家としての勝負曲として書いた作品です。ちなみに作曲家名は、絵画界のミニマル・アーティストの”~・マレーヴィッチ”という人と”~・ウォルハイム”という人の名前を組み合わせて作った架空の作曲家名です。

5.浜辺のカルテット
これはメイン・テーマをさらに極力シンプルに、緩やかなテンポでアレンジしたものです。主人公の明夫(袴田吉彦)と智子(桜井幸子)の恋愛感情も音楽だけで表現できるんじゃないかと思って、映画では全般的にラブ・シーンを排除してきました。だけど、二人の気持ちが徐々に接近していく様子や、バラバラだった4人が少しずつ心を通わせていくニュアンスはどうしても必要でしたので、この音楽に託してみました。

6.Melody Road (My Neighbor TOTORO~HANA-BI~KIDS RETURN)
「となりのトトロ」「HANA-BI」「キッズ・リターン」のメドレーです。僕が映画をやるということのサービス・カットでしょうか(笑)。ある程度僕の音楽が好きな人ならば、たぶん馴染みがある楽曲だろうという観点で選んだ楽曲群ですね。技術にこだわる人間が目指す音楽から、気持ちの音楽へと切り替わっていく過程や様子を感じ取ってもらえるといいんですが。

7.DA・MA・SHI・絵 (Sax Quartet)
ストーリーの中では、主人公たちがコンクールを受けている際に別のアンサンブルが演奏しているシーンの楽曲です。これもコンクール曲であるという前提ですから、構成が複雑であることと、なおかつミニマル音楽をずっとやり続けてきた自分の個人的な思い入れも込めて選曲しました。そういう意味では、僕にとって重要な曲の一つといえます。イギリスの弦楽四重奏団”バラネスク・カルテット”を迎えて昨年リリースした『Shoot The Violist』というアルバムにも入っている曲です。

8.Lover’s Rain
この映画では唯一のBGMです。つまり、ほかの楽曲はすべて、絵(映画)の中で誰かが演奏したり、周りで誰かが弾いているという状況下で奏でられていますから、いわゆる映画音楽というのがこの映画にはほとんど存在しない。唯一書いたのがこの曲。自分としては相当画期的なことをやっているつもりではあります。

9.冬の夢
僕の『My Lost City』というソロ・アルバムの中に収録されている作品です。ここでは映画にも出演している久木田薫さん自身が弾いてます。主人公の一人・愛ちゃん(久木田)が音楽の深さを知るきっかけとなる曲ですね。これまで随分いろいろな曲をチェロのために書いてきましたが、これが最も好きな曲のひとつです。

10.・・・・for Piano
映画の中では使っていない、メイン・テーマのピアノ・ソロ・バージョンで、このCDに収録するために急遽演奏した曲です。映画「Quartet」のサントラ盤でありつつも、僕のソロ・アルバムとしての側面もあるCDですから、どうしてもピアノのソロでテーマを弾いてほしいというリクエストがありまして…。実際、僕はこういう感じの楽曲を、過去に出したソロ・アルバムを含めてもほとんど弾いていませんので、今までの自分のピアノ・スタイルとは違った世界にチャレンジしてみたいという感覚が強かったですね。

11.Black Wall (Orchestra)
track 4のオーケストラ・バージョン。映画では、オーケストラのコンサート・マスターとしてバイオリンを弾く明夫(袴田)と、その一方で明夫の到着を待つカルテットのメンバーという、クライマックスにつながる重要なシーンでずっと流れる曲です。同じ曲ですが、カルテットでは繊細さが強調され、オーケストラでの演奏ではダイナミックさが増し、荘厳な感じに響いています。

12.Quartet g-moll
本来映画音楽としては、見てくれた人が映画館を出た後にも口ずさめるようなメロディがベストな形といえます。音楽とともに映画のシーンが浮かんでくるような…。その場合のメロディは極力シンプルなほうがいいわけです。ただこれは、映画の中ではコンクールで演奏する曲でもあり、コンクールを受ける楽曲であるからには、テクニック的にもカルテットとしての機能を存分に引き出している作品でなければならない。すると必然的に、映画音楽としてのシンプルさと、アンサンブルの奥行きや音楽的な内容の深さ、難しさの両方を兼ね備えた、非常に高度な音楽にならざるを得ない。そうした大きな矛盾といいますか、相反する要素を融合させる取り組みをしました。

13.Main Theme -Remix
※ボーナス・トラックとして収録

(曲目解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

そもそも”カルテット”とは?

カルテット(英語表記で quartet)とは、広義で四重奏(唱)のこと。四重奏曲を指すこともある。『新音楽辞典』(音楽之友社刊)には「4個の独奏楽器による室内楽重奏。弦楽四重奏が基本的で、(中略)ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにピアノ四重奏、木管をひとつ加えたフルート四重奏、オーボエ四重奏、木管、金管、ホルン、サクソフォーン四重奏その他各種の編成がある」と記されている。今日まで続く弦楽四重奏曲の基本様式を確立したのはフランツ・ジョゼフ・ハイドン(1732~1809)という説がもっぱらである。その醍醐味は様々だが、劇中で三浦友和扮する青山助教授わいく「アンサンブルの中でも弦楽四重奏ってのは、余分なものをすべて削ぎ落とした究極の形態だ。演奏家としての力量がこれほどはっきり表れるものはない」とのこと。幼少の頃バイオリンをたしなんでいた久石自身の弦楽四重奏に対する考え方としてとらえてもいいだろう。

Blog. 映画『Quartet カルテット』(2001)監督・音楽:久石譲 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

「撮影は去年に終えていてね。劇中、袴田(吉彦)君扮する主人公の台詞で『音楽ってそれほどのものなんですか?』っていうのがある。この一言を音楽家である僕が言わせるのは、自分では結構強烈な挑戦だった。多分この一言を撮りたくて映画を作ったんだなと、今は思っている。”音楽を作る”ことと”生きる”ことの関係性を何らかの形にしてみたかったのではないかな。音楽は自分では未だ模索の最中だし『Quartet』も、その明確な答えとは成り得ていないけれど、リアリティという点ではなかなかの仕上がりだよ」

Blog. 「SWITCH スイッチ JULY 2001 Vol.19 No.16」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「まず音楽映画とはどういうものか、明確な定期をしておかなければいけないと思いました。ドンパチがあればギャング映画、音楽があれば音楽映画というふうに考えれば、実際どのジャンルを見ても明確な定義など存在しないんです。そこで自分が考える音楽映画とは、まず第1に音楽自体がストーリーの展開と強く絡んでいなくてはいけない。第2に、せりふの代わりに音楽で半分ぐらいは表現してしまう。つまり、(音楽で)見る側にイマジネーションを広げてもらう。この2点を明確にして自分のスタンスをとろうというのが演出の根底にあったんです」

Blog. 「PREMIERE プレミア 日本版 October 2001 No.42」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「音楽が主役になっている、ということ。物語に音楽がからんでいるとか、主人公が音楽家というだけでは音楽映画にはなりません。音楽がドラマとからんでクライマックスに向かっていくような映画を、私は音楽映画と呼ぶことにしています」

「整理すると、音楽とストーリーが密接にかかわっていること、音楽が台詞の代わりになりえていること、この2点に集約されます」

Blog. 「ディレクターズマガジン 2001年11月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「主人公が、お父さんが家を崩壊させてまでカルテットに打ち込んだことに対して、「音楽ってそれほどのもんですか」っていうシーンがあるんですよ。観ていると、すっと流れちゃう場面かもしれないけど、音楽家である僕が監督しながら、この台詞をいわせるっていうのは、すごく重いんですよね」

「あります、正直いえば。こんなに全部を犠牲にして…。たとえば、この2日間すさまじい指揮をしました。その前は籠もりきりで一日10数時間、譜面を書いてます。そのまた前は、2ヵ月間籠もってレコーディング。1年間、ピアノにさわってないのに、ピアノをダビングするなんてことまで起きてくる。まったくよくやってますよね。何のためにやってるんだろうって、ふと思うことがあるんです。「音楽ってそれほどのもんですか」。この台詞をいわせるために、僕はこの映画を撮ったんじゃないかという気がしてます」

Blog. 「月刊ピアノ 2001年7月号」映画『Quartet』 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「全体の半分弱くらいが音楽シーンで、時間軸に固定されますから、構成自体は難しくなかったんです。でも、セリフの投げ合いで感情を引っ張りすぎると音楽シーンのパワーがなくなっちゃうから、芝居は極力抑える、カメラは引くって決めてましたね。そういう意味では、北野監督的なやり方だったんですよ。過剰に説明をせずに、どこまで引いて見せるかという意味ではね。武さんは僕が映画を撮るというのを知っていたんです。あるとき一緒にご飯を食べていて、武さんが大杉漣さんに話をしていたんですよ。”ラーメンをおいしく撮る方法って、いかに本当においしいかと見えるようなカットを撮らなくちゃいけないんだよ。たいがいの監督がしくじるのは、いかにうまいかという内容を説明しちゃうから。トンコツ味でとか昆布のダシでとかさ、そうするとトンコツが嫌いな人はそれを聞いた瞬間、半分引いちゃうんだよな”って。大杉さんに話をするフリをして、たぶん僕に言ってくれたんだと思う。それがすごく残っていて、大変なヒントをいただきましたよね」

「この映画、2回観た人の反応がいいんですよ。芝居や何かを全部言葉でやっていると2回観たいとはあまり思わないですよね。でも、音楽は2度聴いても嫌にならない。その音楽が今回、セリフ代わりになってますね。リピートに耐える映画になったかと思うと、とてもうれしいですね」

Blog. 「DVDビデオ・ぴあ 2001年10月号」 映画『Quartet』久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

 

 

 

映画公開当時、ファンクラブ限定で映画前売券販売企画があった。その特典として『CD付 Quartet プロモーションツール』が前売券と一緒に届けられている。また一般劇場前売券でも、”プレミアムCD付前売券”発売があった。数量限定、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の指定された複数映画館が対象。

(ファンクラブ会報 NEWS WONDER2 No.39 より要約)

 

 

 

 

 

 

QUARTET カルテット

1. Main Theme
2. Student Quartet
3. パッサカリア
4. Black Wall (Strings Quartet)
5. 浜辺のカルテット
6. Melody Road
(My Neighbor TOTORO〜HANA-BI〜KIDS RETURN)
7. DA・MA・SHI・絵 (Sax Quartet)
8. Lover’s Rain
9. 冬の夢
10. ・・・・for Piano
11. Black Wall (Orchestra)
12. Quartet g-moll
13. Main Theme -Remix

all composed, arranged and produced by joe hisaishi

Piano:JOE HISAISHI

Conductor:KIM HONG JE

Musicians
Balanescu Quartet:
ALEXSANDER BALANESCU:1st Violin
FENELLA BERTON:2nd Violin
CHRIS PITSILLIDES:Viola
NICK HOLLAND:Violin Cello (M-2,3,4,5,6,12)

YUICHIRO GOTO GROUP (M-1,8,9)
IKUO KAKEHASHI (M-1)
NEW JAPAN PHILHARMONIC (M-11)
kAORU KUKITA (M-9)
Vivi SAXPHONE ENSAMBLE (M-7)

Orchestration:KAZUNORI MIYAKE

Recording Studios:
WONDER STATION
AVACO CREATIVE STUDIOS
ANGEL STUDIO (LONDON)