Disc. 久石譲 『Symphonic Suite Porco Rosso / 交響組曲「紅の豚」』 *Unreleased

2022年7月23日 世界初演

 

2022年7月23日~29日開催「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2022」にて世界初演。

以降は再演されていない。

 

 

ご来場の皆さん、2022年のWORLD DREAM ORCHESTRA(WDO)に来ていただきありがたく思っています。

本日演奏する交響組曲「Porco Rosso」とバンドネオンとオーケストラのための「My Lost City」について少し解説します。

「Porco Rosso」は宮﨑駿監督の映画「紅の豚」に書いた音楽をもとに交響組曲として再結成し、「My Lost City」は僕のソロアルバムとして発表した作品をバンドネオンと小オーケストラの楽曲として新たに構成し直しました。バンドネオン奏者の三浦一馬さんは僕の作品「The Black Fireworks」というとてつもなく難しい楽曲を演奏してもらいましたが、今回はもっとバンドネオンにふさわしい楽曲なので彼も安心して演奏できるのではないかと思っています、、、たぶん。

両作品とも1929年から始まった世界大恐慌の時代を舞台にしていて、方や当時のアメリカの象徴的作家であり破滅的な人生を送ったスコット・フィッツジェラルド、方や豚の風態を変えてしまったポルコと一見無関係に思える二人がそれぞれの主人公です。それは人が人でいられた時代から、そうで無くなった時代に馴染めなかった、あるいは否定した男たちの話です。

両作品ともバブルの時代の1992年に発表されました。個人的な思いとしてはバブルに浮かれている人たちへの警鐘の意味もありました。

これは誰にも言っていないことですが、イメージアルバムの「Porco Rosso」と「My Lost City」を同時に宮﨑さんにお送りしたら、「逆にしてほしいな」と言っていたそうです。つまり「My Lost City」を「Porco Rosso」の映画に使いたいということでした。冗談なのか本気なのか当時は意味がわからなかったのですが、今は少しわかります。宮﨑さんが「Porco Rosso」の音楽に求めていたのはもっと大人の、しかもパーソナルな音楽だったのかもしれません。その片鱗が「Madness」です。「My Lost City」の中の曲としてレコーディングしたのですが宮﨑さんがどうしても使いたい、ということで映画でも使用しています。だから今回は両作品で演奏します。

こんな秘密書いてもいいのかな?誰にも言わないでください、、、、

そして2022年の今、まるで「風の谷のナウシカ」の腐海に住むように我々はマスクを着用し、21世紀に起こるとは誰もが想像すらしなかったロシアによるウクライナ戦争が勃発しています。しかも信じられないくらいアナログで!

「僕たちはどこに行くのか?」という問いが「My Lost City」のテーマであり「Porco Rosso」のように豚になることで世間と距離を置くことが一つの答えかもしれません。しかし「飛べない豚はただの豚だ!」という明快な言葉が全ての答えであり、「しっかり生きる」ことが僕たちに一番必要なことだと僕は思います。

(久石譲)

(「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2022」コンサート・パンフレットより 抜粋)

 

 

レビュー

構成曲
1. 帰らざる日々
2. 時代の風 -人が人でいられた時-
3. Flying boatmen
4. Fio Seventeen
5. セリビア行進曲(マーチ)
6. Doom -雲の罠-
7. アドリアの海へ
8. Friend *後半部
9. 狂気 -飛翔- Madness
10. 帰らざる日々

 

 

 

Disc. 久石譲 『Toccata』 *Unreleased

2022年5月7日 世界初演

 

2022年5月6日~8日開催フィルハーモニー・ド・パリ「week-end Joe Hisaishi」久石譲にフォーカスしたイベントプログラムのなかの一公演「MAKI NAMEKAWA」。久石譲作品「Variation 57 ~2台のピアノのための協奏曲~」の初演などでもつながりのある滑川真希のピアノリサイタルにて世界初演。

 

 

プログラムノート

Joe Hisaishi
Toccata

Composition : 2020-2022.
Commande du Massachusetts Institute of Technology’s Center for Arts,
Science, and Technology (CAST), du Festival Ars Electronica et de la
Philharmonie de Paris.
Durée : environ 9 minutes.

Ma Toccata a été composée à la demande de Maki Namekawa pour un concert à la Philharmonie de Paris programmé à l’origine à l’automne 2020. Je lis dans mes premières ébauches que j’ai commencé à y travailler en janvier 2020. Puis sont arrivés la Covid-19, le confinement et les annulations dans le monde entier pour des artistes comme Maki et moi-même. J’ai utilisé le temps qui m’était subitement accordé par la force des choses pour composer plusieurs grandes pièces pour orchestre, dont mes Symphonies nos 2 et no 3.

Dans ma Toccata je suis à la recherche de la fluidité dans le son, associée à la diversité
rythmique que j’admire tant en musique baroque. En me concentrant sur des mouvements horizontaux, linéaires, et en évitant les dissonances manifestes dans les accords, j’espère faire naître une réponse émotionnelle chez l’auditeur plutôt que de lui en imposer une. Maki Namekawa est une excellente pianiste, avec une approche directe et sincère de la musique qu’elle interprète. J’attends son concert avec beaucoup d’impatience.

Joe Hisaishi
Traduction : Delphine Malik

(「MAKI MAKI NAMEKAWA」プログラムノートPDFより 抜粋)

 

 

約9分のピアノソロ作品。作曲時期は2020-2022年。

Toccataは滑川真希の依頼で作曲しました。フィルハーモニー・ド・パリは当初2020年秋に予定されていました。私は2020年1月に作曲を始めました。その後、Covid-19によって真希のようなアーティストも私自身も世界的なロックダウンとキャンセルに見舞われました。私は突然与えられた時間を使って交響曲第2番と第3番をふくむオーケストラのためのいくつかの大きな作品を作曲しました。

Toccataでは、多様性に関連する音の流動性を探しています。バロック音楽でとても尊敬するリズム。動きに焦点を当てる。水平で直線的で、そして和音の明らかな不協和音を避けたいと試みました。聴き手に感情的な反応を強要するのではなく、感情的な反応を呼び起こします。滑川真希は優れたピアニストであり、彼女が演奏する音楽、彼女のコンサートを楽しみにしています。

(プログラムノートより Web翻訳・仮訳)

 

 

 

久石譲はパリ初演公演に駆けつけている。なお約1週間後の5月13日には同じく滑川真希によるアメリカ初演が行われている。場所はマサチューセッツ工科大学講堂クレスジ・オーディトリウム MIT Center for Art。

 

 

 

 

 

2025.10.27 update

「Piano Sonata」全3楽章版が披露された。

久石譲:Piano Sonata
I. Heavy Metal
II. Blues Invention
III. Toccata

 

 

 

Disc. 久石譲 『I Want to Talk to You』 *Unreleased

2022年4月30日 世界初演

 

山形県合唱連盟創立70周年事業
山形県総合文化芸術館オープニング事業
「合唱の祭典」

 

2020年5月10日開催予定されていたものの、新型コロナウィルスの影響に伴い延期・中止のスケジュールを経てようやく2年越しの振替公演となった。また、久石譲の新作が自身の指揮やコンサートによって初演を迎えるのではないかたちは近年の中で珍しいケースといえる。

 

 

I Want to Talk to You (委嘱作品・初演)
作曲:久石譲
1. I Want to Talk to You 作詞:麻衣 久石譲
2. Cellphone 作詞:久石譲

指揮:山田和樹
パーカッション:大場章裕、和田光世
ピアノ:鈴木慎崇、今村尚子
合唱指揮:水戸博之、鈴木義孝、柿﨑泰裕
合唱:東京混声合唱団、山形県合唱連盟、合唱団じゃがいも、合唱団Pianeta、鶴岡土曜会混声合唱団

 

 

楽曲解説

「I Want to Talk to You」は、2020年5月に山形県山形市で行われる予定だった「合唱の祭典」で演奏するために山形県から委嘱されて作曲した。僕の作品としては初めての書き下ろし合唱作品になるはずだったが、Covid-19の世界的パンデミックのため何度か順延され、2年後の2022年4月にやっと初演される運びになった。

当初は、街を歩いていても、店に入っても、電車の中でも人々は携帯電話しか見ていない、人と人とのコミュニケーションが希薄になっていくこの現象に警鐘を鳴らすつもりでこのテーマを選んで作曲したが、その後の人と人との接触を控えるこの状況では、携帯電話がむしろコミュニケーションの重要なツールになった。別の言い方をすると世間という煩わしい人との関係性から逃れる便利なアイテムが最小限の人との接触のアイテムになった。なんとも皮肉なことだが、それだけ携帯電話が人々にとって必須なものになったということだろう。

作詞はいくつかのキーワード、例えば「Talk to you」をコンピューターで検索し関連用語やセンテンスを抜き出し、音のイメージに合う言葉を選んでいった。最終的には、I. I Want to Talk to Youは娘の麻衣が詩としてまとめ、II. Cellphoneは僕がまとめた。約20分の作品になり、少合唱グループと大合唱グループ、それに2台のピアノとパーカッションという編成になった。

作品としてはこれで完成しているが、僕としては日本語でも聴きたいと思っている。つまり日本語バージョンである。そこには弦楽オーケストラが演奏していることも想定している。山形の皆さんには、これが終わりではなく、これからも機会があるたびに進化してくこの作品を聴いて(歌って)いっていただきたいと思っている。

久石譲氏からのプログラムノート

(「合唱の祭典」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

ここからはSNS情報による。

・演出には携帯電話の呼び出し音、指揮合図による音の消音など。また最後は、着信の入った電話を渡された指揮者がスマホ片手に話しながら退場する、という演出もある。

・I. I Want to Talk to You、ビブラフォンを低弦楽器の弓で弾く特殊奏法もある。

・II. Cellphone、クラッピング(手拍子)やストンプ(足を踏み鳴らす)も取り入れられている。

・久石譲からのビデオレターも流された。同期間の海外公演先チェコにて撮影したもの。

・作詞を手がけた麻衣も会場に駆けつけた。

 

 

リハーサル風景

from 東京混声合唱団 公式ツイッター
https://twitter.com/TokyoKonsei

 

 

2022.10 追記

2022年10月30日開催「リトルキャロル 26周年コンサート」にてプログラムされた。

 

 

 

I Want to Talk to You ~ for string quartet, percussion and strings ~

2021年3月開催「久石譲コンサート 2021 in ザ・シンフォニーホール」にて世界初演。2020年5月開催予定だった合唱版の順延によって、ほぼ同時期に構想された弦楽バージョンが先がけて披露された。久石譲指揮、共演は日本センチュリー交響楽団。

2021年7月開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.3」にてプログラム。久石譲指揮、FOCの以心伝心タッグで披露された。

 

 

 

この弦楽バージョンは久石譲公式チャンネルなどから特別配信されている。

 

 

 

2023.6 追記
合唱版のライブ映像公開にともないレビューを新しく記した。

 

 

 

 

 

Disc. 久石譲 『Metaphysica(交響曲第3番)』 *Unreleased

2021年9月11日 世界初演

 

2021年9月11,12日開催「新日本フィルハーモニー交響楽団 第637回 定期演奏会」にて世界初演。

2023年以降も日本公演や海外公演にてたびたびプログラムされている最新交響曲。

 

 

Metaphysica(交響曲 第3番)

Metaphysica(交響曲第3番)は新日本フィル創立50周年を記念して委嘱された作品。新作は2021年4月末から6月にかけて大方のスケッチを終え、8月中旬にはオーケストレーションも終了し完成した。前作の交響曲第2番が2020年4月から2021年4月と1年かかったのに比べると約4ヶ月での完成は楽曲の規模からしても僕自身にとっても異例の速さだった。

楽曲は4管編成(約100名)で全3楽章からなる約35分の長さで、この編成はマーラーの交響曲第1番とほぼ同じであり、それと一緒に演奏することを想定して書いた楽曲でもある。

Metaphysicaはラテン語で形而上学という意味だが、ケンブリッジ大学が出している形而上学の解説を訳すと「存在と知識を理解することについての哲学の一つ」ということになる。要は感覚や経験を超えた論理性を重視するということで、僕の場合は音の運動性のみで構成されている楽曲を目指した。

I. existence は休符を含む16分音符3つ分のリズムが全てを支配し、その上にメロディー的な動きが変容していく。

II. where are we going? は26小節のフレーズが構成要素の全て。それが圧縮されたり伸びたりしながらリズムと共に大きく変奏していく。

III. substance は ド,ソ,レ,ファ,シ♭,ミ♭の6つの音が時間と空間軸の両方に配置され、そこから派生する音のみで構成されている。ちなみにこれはナンバープレースという数字のクイズのようなゲームからヒントを得た。

(「Joe Hisaishi Royal Philharmonic Orchestra Special Tour 2025 Orchestra Concert」パンフレットより)

 

 

「最終的なオーケストレーションの段階です。曲は交響曲第3番(仮)で、全3楽章約35分の作品。第2番と姉妹作ですが、自然をテーマにしたような第2番に比べると内面的で激しく、リズムはより複雑になっています。加えてミニマル的な構造の中にもう一度メロディを取り戻したいとも考えました。編成は後半のマーラーに合わせた4管編成でホルンは1本少ない6本。自分だけ見劣りしたくないというのは作曲家の性ですね。また作曲家は皆そうですが、大編成になると逆に弦の細分化など細部にこだわるようになります。あと50周年は意識しながらも、現況から祝典風ではなく力強さを織り込んだつもりです」

Info. 2021/08/18 久石譲 現代曲同様のアプローチでクラシックを活性化したい (ぶらあぼ より) より抜粋)

 

 

初演より第2楽章は特別公開されている。

 

 

 

レビュー

2021年

 

2023年

 

2025年

 

 

Disc. 久石譲 『十六茶』 *Unreleased

2021年3月8日 動画公開
2021年3月12日 TVCM放送

 

アサヒ飲料十六茶、新CMの音楽を久石譲が担当している。CMオリジナル楽曲を書き下ろしている。

 

「自然に、健康。編」
「環境にやさしいペットボトルでました編」
出演:新垣結衣、中村倫也
音楽:久石譲 曲名:十六茶

 

公式サイトCMギャラリーや公式チャンネルにてCM動画&メイキング動画 全8種 公開されている。(※2021年3月現在)

  • 十六茶 CM 「環境にやさしいペットボトルでました」編 新垣結衣
  • 十六茶 CM 「自然に、健康。」となりのお姉さん春編 15秒 新垣結衣
  • 十六茶 CM 「自然に、健康。」となりのお兄さん春編 15秒 中村倫也
  • 十六茶 CM 「自然に、健康。」となりのお姉さん春編 30秒 新垣結衣
  • 十六茶 CM 「自然に、健康。」となりのお兄さん春編 30秒 中村倫也

ほか

 

 

 

2021.05.27 追記

CM動画全8種公開。メイキング動画は、音楽をわりときれいな音源として聴くことができる。

 

 

 

聴いた瞬間にパッと爽やかになる、清涼感にあふれたメロディと音色。純度の高い旋律と純度の高い和音で透明感をつくっている。ピアノのメロディにグロッケンシュピールとハープが軽やかにバッキングを添える。春の待ち遠しい原曲版登場となった。

また15秒版と30秒版はメロディに変化を加えている。30秒版をベースにすると、Aメロ(00-10秒)Bメロ(11-20秒)Cメロ(21-30秒)となる。これできれいに起承転結、そしてきれいに着地している楽曲。

15秒版はAとCの2パートで構成され、Bメロはカットされている。AとCをつなぐ8-10秒あたりのメロディが変化している。これにより、縫い目よくメロディとパート展開をつなぎあわせている。30秒版からの切り貼りでもなく、15秒間流れるだけとおすでもなく、あえて修正を加えている。さりげないけれど、たしかな技でぬかりない。感嘆。

1回聴いただけで覚えてしまいそうな、軽く鼻歌してしまいそうな、リフレインするキャッチーなメロディ。”CMは15秒・30秒の勝負、もっと言うならセリフやナレーションの入ってくる前、最初の数秒が勝負” こんな久石譲のかつての発言が甦ってくる。感嘆。

これから季節ごとの新CM発表にあわせて、楽曲もバリエーションが増えていく、そんな期待と楽しみがある。

 

 

 

 

 

Disc. 久石譲 『Good Morning Alice』 *Unreleased

2021年3月1日 動画公開

 

チョバニ(Chobani)の広告動画の音楽を久石譲が書き下ろしている。チョバニはギリシャヨーグルトで人気のアメリカ乳製品企業で、コマーシャル動画「Eat today, feed tomorrow」がウェブ動画公開された。本国TVCMとしてもオンエアされているかどうかはわからない。

 

音楽:久石譲
曲名:Good Morning Alice

 

公式サイトにて動画試聴可能(※2021年3月現在)

公式サイト:Chobani
https://www.thelineanimation.com/work/chobani

 

ノスタルジックで牧歌的な笛のメロディにのせて流れる。エスニックなパーカッションやピアノの伴奏なども入って異国情緒あふれる、小編成なアンサンブル構成になっている。また拍節ごとに絶妙な変拍子で30秒の音楽をおさめ、フェードアウトではなくきれいに着地している。

日本ならばすぐに久石譲音楽だとわかるくらいの久石メロディとハーモニーが、海を渡って海外で頻繁に流れ聴かれ、こういった久石譲音楽のテイストが浸透していくとうれしい。

 

 

2021.07 追記

新しい動画(ロングバージョン,約1分)が公開された。同じ音楽を使用しているがこちらも前回よりも長尺で聴くことができる。

 

動画視聴可(2021.7現在)

 

 

 

 

Disc. 久石譲 『Prayers』 *Unreleased

2020年10月19日 動画公開

 

明治神宮鎮座百年祭 記念曲「Prayers」

明治神宮公式チャンネルにて公開

 

 

明治神宮鎮座百年祭にあたり、わが国を代表する音楽家 久石譲氏に記念の楽曲をつくっていただきました。まるで森の中へと入っていくような、静けさと奥行きのある荘厳な調べは、まさに明治時代、日本の精神をもって西洋文明を取り入れた和魂洋才を思い起こします。この曲にあわせて編集された映像と共にご視聴ください。

作曲・編曲 久石譲
演奏 東京交響楽団
録音会場 ミューザ川崎シンフォニーホール
録音・ミキシング 江崎友淑・村松健(オクタヴィア・レコード)
映像編集 佐渡岳利・ 井上寛亮(NHKエンタープライズ)
映像撮影 宝貝社、凸版印刷、乃村工藝社・惑星社、HEXaMedia
アートディレクター 原研哉
写真 関口尚志
制作 サンレディ、ワンダーシティ
制作統括 明治神宮

from 明治神宮 公式チャンネル Meiji Jingu Official Channel

 

 

公開動画について

 

 

明治神宮の会員および関係者へ、CD+DVDパッケージ化したものが非売品として配布されている。音源も映像も公開されたものと同一収録されている。

 

 

 

 

 

和太鼓の強打によってはじまる曲は、静謐な五音音階的モチーフを幾重にも織りませながら厳かな雰囲気ですすめられる。いくつかの打楽器はあるものの、日本の伝統和楽器は使われていない。一般的な西洋オーケストラ楽器のみで、日本古来からの世界観を表現している。公式コメントにもあるとおり、まさに”和魂洋才”といえる。フルートやピッコロをはじめとした木管楽器で五音音階的ハーモニーや五音音階的不協和音を演出するなど、その響きは雅楽などにも共鳴するものがある。

この作品がエンターテインメントに属するかという点においても、レビューをためらう。聴いた感じやイメージで語ることはできたとしても、果たしていいのか、とためらう。信仰や宗教といった側面をもつこともあり単なるエンタメ気分だけで作曲していないことは確かだと思う。そうなると、信仰や宗教といったもの、それになぞらえたものを、どう音楽的手法に置きかえているのか、どこにコンセプトをおいているのか。そういった手引がないと、なにを表現しているのか、見当違いな回答を導きだしてしまう。それでいいのかもしれないけれど、やはりためらう。とっかかりがわかったほうがまっとうな理解は深まる。

「この曲を聴いて絵を書いてください」そう課題を出されたクラス全員の絵が、すべて違うような状態にある。もしそこに「作者は、森をイメージしたようです」「作者は、この楽器を火に見立てたようです」「作者は、このような儀式から着想を得ています」などと解説があれば、課題を出されたクラスの半数以上に、共通点が見つかる絵ができあがるかもしれない。ましてや鎮座百年という記念曲、歴史においても、ふたつの世界大戦をのみこむ長大な時間。そういうことです、レビューをためらう。

たとえば、印象にのこっているもののひとつに、執拗なトランペットの旋律、奏者にとっては最も過酷なパート(動画タイム 4:57-5:27 )。息つく間もなく祈りを唱えつづける言霊のようにも聴こえたり、はたまた、かがり火の炎がちりちりと火の粉たちをまき散らすようにも聴こえたり。容易に近づくことのできない信仰の集中力や、場の空気の緊張感といったものがひしひしと伝わってくる。

こういった部分的なイメージ空想の羅列になってしまうので、やっぱり控えることになる。シンプルに言うと「すごくかっこいいじゃないですか! That’ so Cool!!」と日本からも海外からも驚きと深い喜びでむかえられる楽曲。

この曲をひとつの楽章として置き、多楽章な作品へと発展する生命力を十分に宿した、今の久石譲を出し惜しみなく具現化した大曲。大衆性・芸術性の両軸をかねそなえた、歌わせる旋律とミニマルな旋律を交錯させた、日本と西洋を”いま”で表現した、そんな楽曲になっている。いつか、本人解説や楽曲コンセプトが知りたい。

 

 

 

 

Disc. 久石譲 『Xpark(館内展示エリア音楽)』 *Unreleased

2020年8月7日 開館

 

2020年8月7日グランドオープン
新都市型水族館『Xpark』(台湾・高鉄桃園駅前)
館内展示エリアの楽曲(全7曲)書き下ろし

曲名・分数・編成などは不明

 

 

“久石譲さんによる7曲の館内音楽は、コロナの影響でリモート会議による打ち合わせを行ったという。巨大水槽で行われる魚群ショーや各ゾーンのイメージを伝えて打ち合わせを重ね、コロナの影響でオーケストラでのレコーディングができないなどの困難を乗り越えで完成した。”

(台北経済新聞 より抜粋)

 

 

メディア・旅行代理店向けに行われた内覧会の様子を動画で見たかぎり、TV『Deep Ocean シリーズ』、プラネタリウム『ad Universum』、映画『海獣の子供』の音楽づくり線上にあるような、ミニマルベースの心地よい、時間軸や空間軸の無数の広がりを感じる音楽となっている。また、生楽器のレコーディングが難しい環境下だったからだろうか、シンセサイザーベースの音楽になっていて、ほとんど生楽器は使っていないように聴こえる。そのぶん、シンセサイザー構成ならではの音やフレーズが飛び交っていて、近年の久石譲音楽制作からすると、貴重な音源といえるかもしれない。生楽器ならば微細な質感や音感でニュアンスに広がりや表情をもたせられることに対して、今回のシンセサイザーベースの楽曲は、パート数・トラック数といった旋律の数を多くすることで、表情を豊かにカラフルにしているように聴こえた。

 

 

なお、公式CM動画公開(2020年9月28日)でも、少しだけ音楽を聴くことができる。

 

 

いつかオリジナル音源や、演奏会用の作品として聴いてみたい。

 

 

 

2021.7 追記

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサートにて「Xpark」が初演された。

 

”台湾の水族館のために作曲した。いわば環境音楽のように観に来ていただいた人々に寄り添う音楽を書いたが、この曲はExitの音楽として観客の皆さんが楽しい気分で帰って欲しい、と思い作曲した。”

(「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

 

2021.11 追記

久石譲インタビュー動画が公開された。また11月11日からは新しいフルオーケストラ・バージョンが館内で公開されることになった。あわせて全7曲のタイトルも発表された。

1.entrance 『Xpark 〜introduction〜』
2.福爾摩沙 『Sea mystery』
3.銀鯧幻影之美『Rainbow in curved fishes』
4.暖海生機 『Fish around the sea』
5.癒見水母(前半) 『Floating the space』
6.癒見水母(後半) 『Kaleidoscope』
7.Xcafe~EXIT 『Xpark 〜ending〜』

 

 

 

2022.07追記

アルバム『Symphonic Suite “Princess Mononoke” 2021』に収録された。「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2021」にて演奏されたメインテーマ1曲である。

 

 

 

 

 

Disc. 久石譲『Variation 57』(室内オーケストラ版/管弦楽版) *Unreleased

2019年10月25日 世界初演

 

Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra

2019年10月25日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.6」にて世界初演。

 

Variation 57 -Concerto for Two Pianos and Orchestra- (Version for Orchestra)

2022年3月4日開催「日本センチュリー交響楽団 第262回 定期演奏会」にて管弦楽版が世界初演。

 

 

作品の変遷

久石譲:Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra *世界初演 約17分
Joe Hisaishi:Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra *World Premiere

MUSIC FUTURE Vol.6のために書き下ろした新作は、2台のピアノと室内オーケストラで演奏される。3楽章形式だが、第2曲は2分弱の短い曲で第1曲と第3曲のブリッジのような役割を果たしている。作曲のスタイルは久石が提唱しているSingle Track Musicという手法でできている。ここでは和音がなく、ただ単旋律が変容しながら続いていく。だが、ある音が高音に配置され、またある音が低音に配置されると3声のフーガの様に聞こえ、また発音時は同じ音でもそれがエコーのように弾き伸ばされると和音的効果も生まれる。

今回も概ねその手法でできているが、第2曲はより自由な形式で和音もあり、奏者の即興性に委ねられている。それは滑川真希、デニス・ラッセル・デイヴィス夫妻への信頼の証であろう。

Variation 57は文字通り各楽章の3つのモチーフのほか57のヴァリエーション、変奏でできている。久石は「ニューヨークの57thストリートに滞在していた時に着想し、スケッチも書いた」と語っている。また第3曲は現代の音楽では珍しく、2016年のダンロップのCM(福山雅治が出演)とした書いた曲をベースに作られている。

(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.6」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

 

Variation 57 -Concerto for Two Pianos and Orchestra- (Version for Orchestra)

2022年3月4日開催「日本センチュリー交響楽団 第262回 定期演奏会」にて管弦楽版が世界初演。

2022年3月6,8日開催「日本センチュリー交響楽団 周南特別演奏会」「日本センチュリー交響楽団 豊中特別演奏会」にて同一内容プログラムで演奏される。

2022年4月28,29日開催「HISAISHI DIRIGUJE HISAISHIHO」にてチェコ初演。

 

 

久石譲:Variation 57 ~2台のピアノのための協奏曲~(管弦楽版 世界初演)
Joe Hisaishi: Variation 57 -Concerto for Two Pianos and Orchestra-
(Version for Orchestra, World Premiere)

Variation 57は僕が主催しているMusic Future Vol.6のために2019年10月に2台のピアノとチェンバー・アンサンブルのために書き下ろした。今回その曲を2管編成のオーケストラのためのコンチェルトとしてRe-Composeした。

3楽章形式だが、第2曲は2分程度の短い曲で第1曲と第3曲のブリッジのような役割を果たしている。作曲のスタイルは僕が提唱しているSingle Track Musicという手法で構成している。ここでは和音がなく、ただ単旋律が変容しながら続いていく。だが、ある音が高音に配置され、またある音が低音に配置されると3声のフーガの様に聴こえ、発音時は同じ音でもそれがエコーのように弾き伸ばされると和音的効果も生まれる。

この曲でもその手法を基本としているが、第2曲はより自由な形式で和音もあり、奏者の即興性に委ねられている。初演は滑川真希、デニス・ラッセル・デイヴィス夫妻だったが、今回のコンチェルト・バージョンでは若い坂本姉妹が演奏する。YouTubeで観た演奏が良かったのでオファーした。

Variation 57は文字通り各楽章の3つのモチーフのほか、57のヴァリエーション(変奏)でできている。ニューヨークの57thストリートに滞在していた時に着想し、スケッチも書いたからである。また第3曲は2016年のダンロップのCM(福山雅治が出演)として書いた曲をベースに再構成した。

久石譲

(Program Notes ~日本センチュリー交響楽団 2022年3月演奏会 カタログ より)

 

 

レビュー

久石譲:Variation 57 ~2台のピアノのための協奏曲~(管弦楽版 世界初演)

久石譲の楽曲解説をなぞるように20回くらい読んで、曲を研ぎ澄ますように20回くらい聴いて。そうしたら何か少し見えてくるような気がします。全体の楽曲構成はアンサンブル版とほぼ同じか近いと思います。そして編成が拡大されたぶん、よりパンチの効いたダイナミックな響きになっていて、堂々たる管弦楽Single Track Music!そんな印象でした。実際に、なだれ込むように勢いよく終わる第1曲で盛大な拍手(まばらじゃない)が起こりました。

久石譲が提唱するSingle Track Music(単旋律)ですが、一番わかりやすいのは「Single Track Music 1」や「The Black Fireworks」あたりかと思います。純粋に単旋律の手法で貫いている(ほぼハーモニーも発生していない)。ただし、以降の作品を並べていくとその手法も定義も少しずつ広がっているように思います。単旋律の手法で統一されている、単旋律の手法がふんだんに(あるいはあるパートに)盛り込まれている。このあたりの《久石譲 Single Track Music》のカテゴライズは時期尚早、これから先まだまだ慎重に作品を系譜的に線で眺めていく必要がありそうです。「Variation 14」ではその手法が一部垣間見えるとか、新作「2 Dances」の楽曲解説でも、”単一モチーフ音楽、いわゆるSingle Musicといえる”という捉え方をしていたりもします。むずかしい。

この作品において。位置的には単旋律の手法がふんだんに盛り込まれているになるかと思います。もっと、単旋律の手法で貫いているに近いのかもしれません。アンサンブル版もオーケストラ版も、弦楽器などで単音をすーっと伸ばしている箇所が随所にあります。そうだもんだからいろいろな音が鳴るなか単音になってないよね、と思ってしまいそうですが、”発音時においては同じ音が鳴っている、瞬間的には同じ音しか鳴っていない”という単旋律の一面になっているのだろうと思います。

もう、めまぐるしく音が連なるなか、超スローモーションで解析しないと、たしかにどの瞬間を切り取っても同じ音しか鳴ってないね、とはわからないほどです。実際はルール破ってるんじゃないの?!(大変失礼)そんなイヤな見方をするのは僕くらいでしょうか。そんなことよりも、めまぐるしい音の連なりのなかから、音をいくつか抜き出していって違うフレーズを作ったり、リズムを生み出す旋律を作ったり。豊かな楽器と声部なのに、瞬間的には同じ音しか鳴っていない。ここに注目しないとです。みずから作ったルールでゲームを構築する、ゲームを展開する、新しいゲームの楽しみ方をみせる。

第2曲は、おもむろなピアノの同音連打に和音感も加わる短い曲です。これを聴きながら、曲想的に横揺れするような音像を感じたんですけれど、垂直的にストンと音たちが落ちていく(下に吸い込まれていく)ような音像になってもおもしろいなあ、と意味不明な妄想をしていました。

第3曲も、とにかく細かい音符のタイミングを合わせるのが大変、難所のオンパレードです。《久石譲 Single Track Music》はオーケストラがリズム感覚を磨くための現代の課題曲のようでもあると思ったりもしました。習得することで免許皆伝、久石譲作品はもちろん世界中の現代作品をリズム重視のソリッドなアプローチで表現できるようになる。そんなことを思いはじめると、現代の作品を遺すことに注力する久石譲と、現代の表現力を磨くオーケストラ、ちゃんと両輪になっているそんな気さえしてきます。スパイラルアップしていく創作と表現の追求。

Blog. 「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第262回 定期演奏会」コンサート・レポート より)

 

 

Disc. 久石譲 『Diary』 *Unreleased

2019年5月5日 TV放送

 

曲名:Diary
作曲:久石譲
演奏:読売日本交響楽団

 

日本テレビ系TV番組「皇室日記」(毎週日曜日、朝6:00-6:15)新テーマ曲として書き下ろされた楽曲。2019年5月1日、時代は平成から令和へ。番組オープニングやエンディングを主に内容にあわせて使用されている。

 

先がけて3月10日放送回にて、新テーマ曲について久石譲インタビューやレコーディング風景をまじえて紹介された。録音は2月川崎市にて。またフルバージョン(約3分)もオンエアされた。ナレーションもなく回想映像音もない、録音映像と皇室映像をまじえたPVのように、その音楽だけがきれいに聴けた貴重な回となっている。

 

 

久石譲 談

「『皇室日記』という番組でもあることもあってできるだけひと言で言ってしまえば堂々とした曲。天皇の代も替わるしいろんな意味で新しい時代が来ると。新しい時代の風みたいなそういうような感じに仕上がるといいなとは思いましたね。」

「大っきいこう大河が流れてくような楽曲にしたい。そうするとメロディーが高いほうできらびやかにするよりは、こうお腹の底からと言いますかね、割と低いほうからガツっと音楽を支えたほうがいい。それでやはりヴィオラが何かね、あの音域のメロディっていうのはとても自分にとっては今回合うなと思いまして。」

「皇太子さまがヴィオラ弾かれてるっていうのは何となく風のうわさでは聞いてましたけども、意図したわけではないんですがいい具合に一致したのはとてもありがたいです。」

(3月10日放送回より 書き起こし)

 

 

 

久石譲による言葉がこの楽曲の特徴を語ってくれている。高い品格をまとった曲で、ヴィオラの音域が堂々とかまえ悠々と流れる大河のように旋律を奏でる。それはヴァイオリンなどが高らかに歌うのとは違う、同じ高さ(目線)で語りかけてくれるようでもある。テーマを1回奏した次の中間部では、ソリッドな手法でひとつのモチーフが弦楽・管楽と交錯する。まるで幾重にも織り編まれる時間を刻んでいるようで、まるで幾重にも交わる人のつながりが果てしないように、綴られていく日記。その後2回目のテーマが奏され、1回目よりも弦楽による刻みや低音のリズムがしっかり強調される、力強く前向きに。だがしかし、ドラマティックになりすぎない展開は劇的さを望まず、最後にチューブラーベルの鐘の音がくっきりと響きわたる。

 

未CD化楽曲。これから先、読売日本交響楽団との共演コンサートなどで初演を迎えてほしい。

 

 

 

2019.8.14 追記

2019年8月1日「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」にて世界初演された組曲「World Dreams」の第3曲として組み込まれた。

 

組曲「World Dreams」 
1.World Dreams
2.Driving to Future
3.Diary

 

実は「World Dreams」を組曲にしたいという構想はこれまでもありましたが、今年テレビ番組(「皇室日記」)からオファーを受けて「Diary」を書いた時に「World Dreams」の世界観と通じるものがあると感じ組曲にしました。

(久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019 コンサート・パンフレットより 抜粋)

 

第3曲「Diary」はTV番組『皇室日記』の新テーマ曲として2019年5月から使用されている楽曲。TV版は約3分の楽曲として一度だけO.A.されたことがありますが、それとは異なる組曲用の再構成、大幅にドラマティックに加筆されていました。第1曲のキメのフレーズが再循環で登場したりと、組曲を統一するにふさわしい壮大なオーケストレーション。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサート・レポート より抜粋)

 

 

2020.08.19 追記

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサートライヴ盤がCD発売された。

 

 

 

TV番組用のオリジナル版としては音源化されていない。