Blog. 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサート・レポート

Posted on 2023/11/08

10月30日,11月1日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサートです。近年は慣例となっている春発表、そこにテリー・ライリーさんのお名前を見たときには驚きました。いよいよその時がきました。予感はありました。でも実現するかはまた別、久石譲×テリー・ライリー、世紀のミニマル・コラボが遂に!です。今年10回目を迎えるアニバーサリーにふさわしい夢の共演!11月1日公演はライブ配信(アーカイブ配信なし)も叶えられました。

 

 

久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10

[公演期間]  
2023/10/31,11/01

[公演回数]
2公演
東京・紀尾井ホール

[編成]
久石譲
テリー・ライリー
サラ
Music Future Band

[曲目]
テリー・ライリー:Dr. Feelgood ~The last gasp of my dying classical career~ *World Premiere
久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos

—-intermission—-

テリー・ライリー:Aquatic Parc Mix ~Lago Passacaglia & Danse to the End~ *World Premiere
久石譲:MKWAJU for MFB *World Premiere
    I. MKWAJU
    II. SHAK SHAK
    III. LEMORE
    IV. TIRA-RIN

[参考作品]

ムクワジュ・アンサンブル 『MKWAJU』 久石譲 『Shot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

 

 

まずは会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。

 

 

MUSIC FUTUREはミニマルミュージックをベースにした現代の音楽を聴くことのできる唯一のコンサートです。今年で10回目を迎えますが、皆様に支持されてここまでくることができました。心より感謝いたします。

その記念すべき10回目にミニマル・ミュージックの創始者の一人であるTerry Rielyさんをゲストに迎えられたことは望外の喜びです。彼の音楽と彼から触発されてミニマリストになった僕の音楽を楽しんでいただきたいと思います。

2023年10月
久石譲

 

 

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos
    揺れ動く不安と夢の球体 ー2台のチェロのための(2022)

原曲は2012年、Hakujjuギター・フェスティバルの委嘱作品として2台ギターのために作曲し、荘村清志氏と福田進一氏により初演された。ギターの開放弦を使ったリズミックな楽曲に仕上がったが、その後2014年にMUSIC FUTURE Vol.1においてマリンバ2台のためにRe-Composeした。そして2022年知り合いの西村朗氏が参加していた作曲家グループ「4人組」のコンサートで「2 Cellos」として再びRe-Composeした。ただスケジュールが厳しかったこともあり、最も信頼する作曲家長生淳氏に編曲を依頼した。チェロの開放弦を利用することなどを打ち合わせした上で彼に全て任せた。そして仕上がった楽曲は別の楽曲に生まれ変わった。躍動感あふれるミニマルの反復と複雑な変拍子を用いた原曲の構成はさらに立体的に、そして人間的になったと僕は考えている。

その機会を作っていただいた西村朗氏は突然他界された。今後10年以上論争をしていくはずだった良きライバルを失い言葉もない。今回MUSIC FUTUREで演奏するのは西村朗氏への追悼の意味もある。ご冥福を心からお祈りしたい。

曲名は、アメリカの詩人ラッセル・エドソン(1935-2014)が生命の宿る瞬間を表現した一節による。「揺れ動く不安と夢の球体」という日本語表現が気に入り、敢えて原文の文脈にとらわれず”shaking anxiety(揺れ動く不安)and dreamy globe(夢の球体)”という英語に逆変換し、新たなタイトルとした。

久石譲

 

 

Terry Riely:Aquatic Parc Mix ~Lago Passacaglia & Danse to the End~(2023) *World Premiere

『アクアティック・パーク(AQUATIC PARC)』は、私が日本に居を構えるようになった2020年から描き始めた楽譜とドローイングの数々を編纂した物の一つです。

この作品を構成する複数の「頁」は、各々が独自のタイトル・音楽の断片そしてドローイングを持つ部分集合(サブセット)として存在しており、それ故に非常にユニークな記譜法と相成りました。演奏者一人一人は、各素材を基に、各々が独自のバージョンを編纂していくことを推奨され、つまり、都度同じ演奏には成り得ません。各頁の演奏時間・オーケストレーション・順序・音の強弱・そして音楽の全体的な形式や流れは、明確に規定されていません。言わば、演奏される度に独自に組み立てられる「音楽素材建設キット」のようなもので、即興的な相互の働きかけを強く促すものです。

今回の公演のために取り上げる頁の各題名は、以下の通りです。(註:全部で14の頁が書かれた中の2頁)

I. ラーゴ・パサカヤ(Lago Passacaglia)
II. ダンス・トゥ・ジ・エンド(Dance to the End)

『ラーゴ・パサカヤ』は、2台のシンセサイザーとあらゆる種類の楽器の混成アンンサンブルとのために作曲しました。楽曲の基礎となる2つのシンセサイザー・パートは、8分の6拍子で書かれた4つのベース反復パターンで構成されています。1台は、一貫してセル’a’,’b’,’c’もしくは”d”のいずれかのセルを反復して演奏。その上に、もう1台は即興で素材を加えていきます。そのセクションと対応して、8分の6拍子で書かれた6小節ずつの6つのラインが楽器アンサンブルによって交互に演奏されていくのですが、各楽器の演奏者は「自分がいつ、どこに入るか」或いは「演奏するか・しないか」等を自由に選択することができます。指揮者は、音楽の流れを整理する、言わば「交通整理をする警察官」のような役割を果たすのですが、「素材に最も効果的な形を与え得る」と判断した際は、指揮者は個々の演奏家の決定を覆しても構いません。

『ダンス・トゥ・ジ・エンド』は、我が弟子である宮本沙羅の協力を得て、今回の公演のために編曲しました。私ライリーが『ジゲル・ターラ(Shigeru Tala)』と命名したリズム構造(5と4に分割した9拍のパターン)に基づき、「水族館」に散在する音楽の断片を使い、ひとつの完全な作曲作品を作り上げてみた、という次第です。

今回私は、主にこれら「水族館」の各頁にある素材から、この生き生きとしたフォルムを編纂していった訳ですが、その過程でも折に触れて新しい素材が浮かんでくるなどして、それらが最終的な構成を形づくる大きな助けとなりました。

創作に於いて、私にはこのような事が屡々起きるのです。

 

註:通常、音楽用語としての「Passacaglia」は「パッサカリア」とカナ表記されるが、ライリー氏曰く「それは勿論認知しつつ、それとは違う自分ならではの形態」ということ。本人による発音、並びに、明確に区別する意味も込めて「パサカヤ」と表記する。

※「Dr. Feelgood ~The last gasp of my dying classical career~」は作曲家の意図により、解説を掲載していません。

テリー・ライリー
北杜市にて 2023年10月21日

 

 

久石譲:MKWAJU for MFB(2023) *World Premiere
    I. MKWAJU
    II. SHAK SHAK
    III. LEMORE
    IV. TIRA-RIN

MKWAJUはスワヒリ語のタマリンドの樹の意味である。作曲当時の1980年前後に東アフリカの民族音楽を集めたLPレコードを聴いてヒントを得たと記憶している。

ムクワジュ・アンサンブルによって1981年レコーディングし、その後英国のバラネスク・カルテットを招聘した国内ツアーなどで演奏した。またロンドン・シンフォニーとのアルバム「Minima_Rhythm」でもオーケストラ用にアレンジしている。

今回Terryさんを迎えたMUSIC FUTURE Vol.10のための新曲も試みたがしっくり来ず、レジェンドである彼へのオマージュの意味を含めて4曲からなるMKWAJU組曲として完成させた。

Re-Composeにあたって、繰り返しを意味するリピートマークが多用されていることに懐かしさと多少の違和感を覚えたが(現在の僕はそれを使うことはない)ミニマル音楽の基本であることを重視し、原作を尊重しながら作業を進めた。Marimba、Vibraphone等をフィーチャーしたMusic Future Bandの演奏を楽しみにしている。

久石譲

(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.10」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

 

テリー・ライリー×久石譲、コンサート・コラボレーションの予感はありました。2022年3月リモート対談、2022年10月「MUSIC FUTURE Vol.9」コンサートでのバックステージ・ショット、同時期「テリー・ライリー with special guest 久石譲 @Billboard Live YOKOHAMA」は久石譲さんの体調不良のため公演中止になってしまいました。2023年9月「NHK スイッチインタビュー」放送(8月収録)、そうして本公演と一歩一歩着実に距離を縮め親交を深めていった二人のミニマル巨匠です。

 

「A Rainbow in the Curved Air」を聴いて
ミニマル・ミュージックを知った
あまりのショックに数日寝込んだ
そして僕はミニマリストになる決心をした

そのテリー・ライリーが日本に滞在していてコンサートを開く
日本で何を感じ、何を見つめていたのか?
聴き逃すことはできない!

いつか僕の主催するMusic Futureに曲を書いてもらう
そんな夢を実現したい

久石譲

 

 

 

 

 

 

 

 

”いつか僕の主催するMusic Futureに曲を書いてもらう そんな夢を実現したい”(2022年3月)、まさかそしてこんなにも早く実現!テリー・ライリーさんのプログラムはどちらも世界初演になる新作です。

 

 

久石譲あいさつ

久石譲が登壇してあいさつが5分程ありました。MUSIC FUTUREについて、シリーズ振り返り、テリー・ライリーさん紹介、プログラム紹介など。また特記事項としてプログラム順についても。通常はゲストは後ろに組むことにしているけれど、テリーさんの作品はシンセサイザー、電子楽器なのでセッティングなどデリケートになる。音のトラブルを減らしたいという配慮から、前半後半ともにテリー・ライリー作品を先行にプログラムしている。といったお話でした。なるほど。

 

 

Terry Riley:Dr. Feelgood ~The last gasp of my dying classical career~(2023) *World Premiere

楽器編成:キーボード2 (楽器編成はコンサートの目視による、以下同)

約20分の作品。テリー・ライリーさんのコンサートを聴ける日が来るなんて。すぐ近く目の前にテリーさんがいて演奏している。ミニマル好きを育ててもらったファンにはたまらない瞬間です。久石さんを通してミニマル・ミュージックに親しんできた、その源流にふれることができる。よくここまでミニマルについてきたねとご褒美をもらってる気持ち、一生忘れない。

瞑想的で幻想的で、すっと力をほどくことのできる心地よさです。テリー・ライリーさんのスタイルは即興性にあります。どんな感じなんだろうと想像していたんですけれど、とても魅力的でした。たとえば即興性というとジャズのようにエキサイティングあるいは楽器ごとのアドリブバトルのような競演あたりをイメージします。それとは真逆と言っていいほどでした。風や雲のように常に移り変わるもの、ひとつとして同じ瞬間はない、再現できない。録音芸術とはまた異なるライブらしい時間芸術なのかもしれません。

心地よかった理由はほかにもあります。素材やモチーフは用意されている。ジャズほど何が飛び出すかわからないとか奏者の個性的な演奏が如実に現れるとかもない。素材があってその使い方に自由がある、なのでリズムやハーモニーを失うこともない。とても優しい自然的な即興に安心して身を委ねていました。

久石譲ファンからすると、いろいろな国を連想させてくれる異国感、現実と空想の境界がないような世界観、エスニックで神秘的な音色、まるでナウシカやラピュタの世界が蘇ってきそうになります。当然、あの時代に久石譲が受けていたであろうミニマル・ミュージックの影響度からみてもです。後半には「A Rainbow in Curved Air」も出現してきて感涙です。ファンになってから聴いてきた1980年代の久石譲音楽の歩みも走馬灯のように駆け巡ってきて、ずっと聴いていたかったです。フラッシュバックする幸せでした。

 

 

久石譲:Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos
    揺れ動く不安と夢の球体 ー2台のチェロのための(2022)

楽器編成:チェロ2

約9分の作品。この作品のためだけの登場となったチェリスト古川展生さんと富岡廉太郎さんは、「現代室内楽の夕べ 四人組とその仲間たちコンサート2022」での初演奏者でもあります。

もう少しテンポを落としたらどんな感じだろう?と思い、「久石譲:The Black Fireworks 2018 for Violoncello and Chamber Orchestra/1」(『久石譲 presents MUSIC FUTURE IV』収録・2019)を聴いてみたら、こっちのほうが速いんですね。そうなんだ。チェロの音って点(・)じゃなくて棒(ー)による発音になるから、チェロ2台のフレーズの交錯がちょっと密集して聴こえてしまう。ギターやマリンバは点(・)だから粒がはっきりしてる。だからもう少しテンポを落としたほうが2台それぞれ一音一音の輪郭が出ておもしろいかもと想像していました。エネルギッシュな疾走感は失うことになるかもしれませんが、どっしりとしたチェロらしい重層感は出るみたいなイメージです。ここまできたら、同じテンポ感でいくなら、全く作曲意図を踏み外してしまいますが、「The Black Fireworks」のようにチェロ1台と室内オーケストラのアンサンブルで聴いてみたい、きっといい感じ。

前説明を全て飛ばしてしまいました。作品誕生とその変遷、音源とスコアになっている2台ギター版と2台マリンバ版、2022年の2台チェロ版初演とその経緯を話した西村朗さんとの対談など。ゆっくり紐解いてみてください。

 

 

 

Terry Riely:Aquatic Parc Mix ~Lago Passacaglia & Danse to the End~(2023) *World Premiere

楽器編成:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピッコロ、フルート、バス・クラリネット、ファゴット、サクソフォン、トランペット、トロンボーン、バス・トロンボーン、マリンバ、ビブラフォン、(キーボード2 *Lago Passacaglia)、(コンガ、ボンゴ、シンバル *Danse to the End)

約20分の作品。こちらも本公演のための新作です。約15-17名のMUSIC FUTURE BANDメンバーによる編成で、久石譲作品「MKWAJU」とほぼ同じ編成になっているところはポイントです。テリーさんがこの編成で作品をお書きになるかはわかりませんが、MUSIC FUTUREのために用意されたバージョンと言っていいほどです。そしてこれは、いくつかの素材でアンサンブルするというテリーさんの創作手法が可能にした編成コラボレーションでもあります。

2楽章形式になっていて「Lago Passacaglia」はテリーさんとサラさんがキーボードで参加、合図を送るなど先導者はテリーさんが担っていました。演奏後、テリーさんらはキーボードから離れ、久石譲が指揮者として登場です。コンサートプログラムとしてだけではなく、ひとつの作品のなかでお二人が密接に関わっている。当たり前のようなスムーズさで進行していましたが、よくよく思うとすごいことです。

「Danse to the End」を聴きながら「久石譲:Single Track Music」(『Minima_Rhythm II ミニマリズム 2』収録・2015)を思い浮かべる箇所もありました。それは手法ではなく雰囲気で、サックスを編成しているなど音色パレットからくる印象だと思います。「Lago Passacaglia」のほうでも「フィリップ・グラス/久石譲編:2 Pages」(『久石譲 presents MUSIC FUTURE IV』収録・2019)っぽいと思うところも。ドレミ♭ドレミ♭とCmコードの音型を反復していて、かつMUSIC FUTURE BANDの楽器編成で色彩感が共通しているからです。ミニマリストたちのいろいろな作品に親近性を感じながら浸っていました。

ふだん即興性のパフォーマンスに慣れないメンバー、1楽章はテリーさんらの即興を軸とし、2楽章は久石譲が指揮したところからもきっちり曲として形を固めていたのかもしれません。今回テリー・ライリーさんの音楽を聴きながら、民族音楽の原点のようなものを感じました。その土地や集落にある音楽、その時集まった人たちで奏でる、その自由度はゲームやレクレーションに近い。音楽を通した楽しいコミュニケーションのようなもの。だから、技術や創造を磨いてほしい即興性ではなくて、ゲームのルールブックのような素材やモチーフがあって、あとは自由に遊びましょうと。難解な現代音楽と違うのは、聴いてもらう音楽になっていること、プレーしている奏者とオーディエンスがいつしか一体となったコミュニティが生まれ一緒に楽しめるようになっていること。

 

 

久石譲:MKWAJU for MFB(2023) *World Premiere
    I. MKWAJU/II. SHAK SHAK/III. LEMORE/IV. TIRA-RIN

楽器編成:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート2、クラリネット、ファゴット、サクソフォン、トランペット、トロンボーン、バス・トロンボーン、マリンバ2、ビブラフォン、グランカッサ、ドラムセット、ウッド・パーカッション、コンガ、シンバル、ドラ、トライアングル、タンバリン、ピアノ

約20-22分の作品。良すぎてあまり書きたくない。最高すぎた!で終わらせたい。あとは特別配信?再演?音源化を心待ちにしましょう!で締めたい。(ところですが、、)

1981年作品「MKWAJU」の4曲が聴けるとは夢のようでした。約15-17名のMUSIC FUTURE BAND(MFB)フルメンバーによる編成で、大幅に加筆・改訂されていてかっこよすぎる。2001年のアンサンブル版もあるなかその再演だったとしても涙モノ、さらに進化した輝かしいニュー・バージョンでした。

「MKWAJU」ミニマルのモチーフが増えていたり、基本音型の掛け合い方が変わっていたり、本当に新しいMKWAJUでした。「SHAK SHAK」ウッド・パーカッションの奏法が「Deep Ocean」音楽のそれを思わせたり。全体的に捉えても1981年から長い時間を経過して近年の「Deep Ocean」らミニマル・アプローチを通過したうえでの新しいMKWAJUだとひしひし感じます。(だから「Deep Ocean」も並べて聴けるようになることが本当に望ましい!)。「LEMORE」この曲はマリンバ2台からマリンバ1台・ビブラフォン1台になります。オリジナルからそうですが雰囲気を変える曲です。「TIRA-RIN」終曲にふさわしい高揚感かき立てるバージョンアップにもだえる喜びを抑えきれない。すごい。

 

「MKWAJU」の変遷

久石譲バイオグラフィに《1981年「MKWAJU」を発表、翌1982年にファーストアルバム「INFORMATION」を発表し~》と必ず先頭に書かれるように、名義こそ久石譲はありませんが全作曲・プロデュースと実質のデビューアルバムに値する大切な作品です。

 

その位置づけは、

「テリー・ライリーの『A Rainbow in Curved Air』という曲を聴いた時、衝撃を受けましたね。それからは、ミニマル・ミュージックの作曲にシフトしました。でも、曲が全然書けないんですよ。もちろん、その当時なんて曲をちゃんと仕上げる技術力もないし。30歳くらいになって、本当の意味で初めて書けたという感じかな」

Blog. GS9 Club「MASTER OF JAPAN 世界が注目する日本人」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

そうなんです。1981年「MKWAJU」は31歳の時です。この頃に演奏会で披露していた自作品は数多いですが、その中から初めてリリースされるに選ばれたのが「MKWAJU」です。MUSIC FUTURE Vol.10でテリー・ライリー×久石譲の共演とプログラムは本当に互いのリスペクトとオマージュの結晶です。

「TIRA-RIN」だけ触れたい。このアルバムでは4曲ともにリズム・プログラミンングも絡ませています。「TIRA-RIN」のおもしろいところは、この曲のフレーズ歌い出しをTIRA-RINと4音に当てると、RINが小節の頭です。ティラは前の小節にかかっていて次のリンが1拍目です。ミニマルに拍子が変容してもずっとそれは変わりません。曲を通してリンが1拍目です。(曲名もここからきてると勝手に思っているほど。)オリジナル版だとシンセリズムのおかけでよくわかります。『Shoot the Violist』版や今回の『for MFB』版は、前半特にそれはわかりづらい。そこに拍子感覚を錯覚させる面白さがあります。だから『for MFB』版ほんとよかった!

 

 

久石譲 『Shot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

久石譲アンサンブル名義でリリースされています。ムクワジュ・アンサンブル(1981)からの強いリベンジやリ・チャレンジといった作品へのこだわりを感じます。ポイントのひとつにサクソフォンが編成されていること。今回の『for MFB』版でもサックスは大活躍でした。エスニック感が増すというかやっぱりエキゾチックになります。作品をつくっている雰囲気にとても印象的な楽器です。「MKWAJU組曲」となっていたオリジナル版4曲のうち「SHAK SHAK」は除外されています。だから4曲フルで蘇った『for MFB』版ほんとよかった!

 

 

久石譲 『ミニマリズム』

久石譲ミニマル・ミュージックの真骨頂、シリーズ第1作です。「I. MKWAJU」「DA・MA・SHI・絵」など初期作品を華麗にフルオーケストラに魅せてくれます。このときのMKWAJUは単曲です。今回の『for MLB』版は、「MKWAJU組曲」4曲のフルオーケストラもいけるんじゃないか、そう思わせてくれるバージョンアップでした。楽しみが増えた、期待せざるをえない。久石譲×ミニマル×シンフォニーには、アジアな「ASIAN SYMPHONY」、日本な「交響曲第2番」などがあります。そこにエスニックな「MKWAJU SYMPHONY」が加わったら。世界をまわる壮大で躍動する久石譲交響作品、ほんと聴いてみたいです。だから予感させてくれる『for MFB』版ほんとよかった!

 

 

“JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2022” Special Online Distribution

from Joe Hisaishi Official YouTube

約10年ぶりに日本コンサートで披露されました。『Minima_Rhythm』版からの単曲ですが、サクソフォンが外れるなど一般的なオーケストラ編成に改訂されています。もしNEW交響組曲になるときには、やっぱり世界各地のオーケストラでたくさん演奏してほしいから、シンフォニーらしい響きもいいなと思います。そのぶんアンサンブル版でサックスを加えた響きを存分に楽しめる、楽しみたい。どちらも躍動的で魅惑的です。ムクワジュ・アドレナリン再熱です!!

 

 

テリー・ライリーさん、そしてMKWAJU。往年の久石譲ファンとも味わえたコンサート、忘れないコンサートになりそうです。今回MKWAJUにライトが当たったように、久石作品にはまだまだ初演・再演してほしい作品がたくさんあります。MUSIC FUTUREなら『フェルメール&エッシャー』なんてどうでしょう。映画『君たちはどう生きるか』音楽が好きになった人、そこからミニマル音楽に興味をもった人にもこの作品は刺さります、きっと。

『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』つながりから「794BDH」「DA・MA・SHI・絵」for MFB版のニュー・アンサンブルで聴いてみたい。そして、【mládí】for MFBで「Summer/HANA-BI/Kids Return」なんてどうでしょう。ついつい調子に乗ってしまいます。コンサートの感動と興奮でついつい浮かれてしまいます。

アニバーサリーにふさわしい本公演でした。作品的にもMUSIC FUTUREコンサートの歴史的にもアルバム!どうぞよろしくお願いします。今年リリースなかった昨年Vol.9の「Viola Saga」も!どうぞよろしくお願いします。

 

 

海外オーディエンスらしい熱狂的な歓声もあがる長い長い終演カーテンコールとなりました。テリー・ライリー×久石譲、まさに人気をかけ算した国際色豊かな観客層でした。まるで国際映画祭のよう、放っておいたらあと5分7分といつまでも拍手喝采がつづきそうな至福の空間でした。素敵な時間でした。

 

 

 

コンサート・レポート plus

コンサートの細かい様子がたくさん伝わってくるレポートです。ファン歴もかなり長いのでMKWAJUにかけてだんだん熱くなってくるのは同じですね(笑)会場でもお会いして「聴けてよかった!聴けてよかった!」とお互いくり返していました。

JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.10(2023.11.1)

from Sho’s PROJECT OMOHASE BLOG 改 seconda

 

 

 

とっておきエピソード

 

 

リハーサル風景

from 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF
https://twitter.com/joehisaishi2019

 

 

ほか

リハーサル風景動画もあります

from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/

 

from 西江辰郎インスタグラム
https://www.instagram.com/tatsuo_music/

 

 

 

公演風景

from 久石譲本人公式インスタグラム

 

ほか

from テリー・ライリー公式インスタグラム
https://www.instagram.com/tadashi.for.terry.riley/

 

 

打ち上げ

from 久石譲本人公式インスタグラム

 

 

from テリー・ライリー公式インスタグラム

 

 

ほか

from 西江辰郎インスタグラム

 

 

 

 

Music Future Series

 

 

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