Overtone.第31回 ファンサイトにあらゆるテキストを記録する5つの理由

Posted on 2020/04/21

ふらいすとーんです。

ファンサイトでは、久石譲インタビュー内容などたくさんのテキストを載せています。雑誌・新聞・Webインタビューから、CDライナーノーツ・コンサートパンフレット・映画パンフレットなど多岐にわたります。

 

なぜこんなことをするのか?

それは、もちろん久石譲の音楽活動をあらゆる角度から記録しつづけることを目的としているサイトだからです。とはいっても、決して声を大にして言えるアピールポイントではありません。誉められることでもない、微妙なバランスのなか存在することができています。このことはいつも謙虚に、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

なぜそこまでするのか?

リスクをおかしてまで、テキストを載せつづける理由はあります。ケンカを売っているわけでも、挑発的に臨んでいるわけでもありません。僕なりの小さな信念がそこにはずっとあります。でも、その小さな信念は、僕だけの小さな正義であって、振りかざすことはできません。いつか続けられなくなる日もくるかもしれない。そう思っています。

今回は、ファンサイトを運営するにあたって、あらゆるテキストを記録する理由をお話したいと思います。言い訳がましい、弁護がましく響くかもしれません。それでもなお、しっかり自分の思うところを示すことも大切だと思い、とすすめていきます。

 

1.書写すること

書き写すことの学びは大きいです。目で追って読む読書よりも、口に出して読む音読よりも、一言一句を丁寧に書き写す作業は、記憶と吸収力の差に直結すると信じています。小学校の授業でもありましたよね。大人になっても好きな本の一節や詩を、ノートに書き残すことはあったりしますね。書くという運動をとおして、自分のからだのなかに入っていく感触や手ごたえのようなもの。

実は、最初の動機はこの一点でした。久石譲の音楽活動という長い歴史を、少しでも自分のなかに血肉として吸収したい、覚えたい。インタビューのなかに知らない言葉があれば、パソコンのページを切り替えて、すぐに調べることもできる。久石譲の口から飛び出した他作曲家やその音楽作品、気になるキーワードもまた、同じように書き写しと並行して調べることができる。そういうことを、ひとつひとつやりこなすうちに、小さな好奇心が小さな学びとなって、ぷつっぷつっと自分のからだに付随してくる感覚です。

たぶん、読むだけだと、知らないことも知らない言葉も、読み流してなんとなく前後の文脈でフィーリングで理解します。雑誌1ページのインタビューも、読むと3-5分、書くと調べると15-30分。そんなアナログな作業を、僕はとてもささやかに楽しんでいます。

 

 

2.ファイリングすること

「そういえばこの曲について、何か言ってたな。あれどの本だっけ? えーっと、時代からみてあの本かなあ・・・」、、、「えっ、本じゃない?! じゃあ雑誌かなあ、パンフレットかなあ、動画かなあ・・・ムリ探せない・・・」

本であればわりとすぐに見つけることができる内容も、それ以外のメディアに書かれたこと語られたことから探すのは本当に大変です。そうやって、忘れられていく歴史的資料も多く、それは自然の流れなのかもしれません。残らなくていい記憶や記録というものもあるでしょう。時間のフィルターで大切なことだけが残っていく。

そうか、Web上に文章をのせてしまえば、自分のための検索として探しやすくなるな。Web上にファイリングしてしまえば、アーカイブしてしまえば、いつでもサクッと探しやすくなる。自分のために始めたことです。それがほかの人の役にも立つかもしれない、という心優しいことまでは、ちっとも考えていませんでした。Webにあげるということは、公開されるということ。もちろんその責任も理解していますが、静かに記録していくだけ、そっとファイリングされていくだけ。でも、今となってはそんな無責任な立場はとれません。だったら、やるなら穴がたくさんあいたパズルよりも、できるだけ公平に完全に近いかたちで網羅していきたい。その一心です。

 

 

3.Webインタビュー

近年はWeb公開される久石譲インタビューも多いです。インフォメーションで発信メディアを紹介するだけでなく、その内容をファンサイトでもあえて同じく収めています。理由はひとつだけ、公開終了になったら見れなくなってしまうからです。パズルのピースが時間とともに自然消滅的に抜け落ちてしまう。そんな風化にあらがうように、出典元をしっかり明記したうえで、記録させてもらっています。

 

 

4.書き起こし(ラジオ・TV・動画)

ラジオ出演した内容を運良く録音できたとして、それをそのまま音源としてアップロードすることはNGです。ずいぶん悩んだのですが、意を決して音声を書き起こして記録することにしました。悩んだ理由は、シンプルに膨大な時間とエネルギーがかかるからです。

便利なITツールで、パソコンで音声を流すと、それを自動で文字起こししてくれる、そんなソフトもたくさんあります。ちょっと試したこともあります。でも、テキスト化された文章は50点くらいしかあげられません。細かく添削しないといけないなら、ゼロから書き起こしたほうが、きっと楽です。集中力も精神力もかなり鍛えられますが、海外小説を辞書片手に翻訳するような、大きくカラフルなタペストリーを黙々と織りあげるような。そんな超アナログな作業を、僕はとてもコツコツと楽しんでいます。

Web動画もWebインタビューと同じく、いつかは公開終了となってしまいます。公開中の動画URLを紹介したうえで、話していることを文字にしています。

 

Transcription from RADIO

Transcription from TV

Transcription from VIDEO

ほか

 

 

5.世界中のファンが読むことできる

あらゆるテキストを記録するなかで気づいたことがあります。そうか、喜んでもらえるかもしれないと思ったことがあります。海外の久石譲ファンです。

 

情報をさがす
日本であれば簡単に情報は探せるし、新しい情報にもすぐに気づくことができます。それをそのまま見るなり読むなり聞くなり、なんの不便もなく理解吸収できます。でも、海外の人にはむずかしい。

 

CDライナーノーツ
海外ファンは久石譲CDの日本国内盤を買いたいはずです。でも、買っても日本語で書かれたライナーノーツは読むことできません。もし、Web上にテキスト化されたものがあれば、翻訳ツールを使って簡単に自国語として80~90%以上の理解度で、読み楽しむことができます。

僕も海外アーティストのCDを買ったりして、そこにぎっしりとインタビューが載っているのに英語が読めない、残念な思いをすることはたくさんあります。もし読んで楽しめたなら、音楽の聴きかた・楽しみかた・感じかた、さらに大きく広がるだろうなあと。

近年、LP化された久石譲オリジナル作品シリーズや、世界同時リリースのベスト盤は、英文ライナーノーツも併記されています。日本語だけよりは、ずいぶん親切に、そして世界へ向けたメッセージになりますよね。

 

 

雑誌インタビュー
海外から雑誌を買う人まではいないと思いますが、コレクションに購入しても、写真や雰囲気を眺めることしかできません。Web上にテキスト化してしまえば、同じように翻訳ツールで読むことができます。ここで肝心なのは、CDライナーノーツにしても雑誌にしても、写真や画像でアップロードしても意味がない(その前にその行為はNGです)。ウェブテキストになっていないと翻訳できません。スキャンしてアップしてしまえばすむ簡単なことも(くりかえしその行為はNGです)、海外ファンには伝わらない。1回ボタンをおしてカシャッと1秒で終わることと、カチカチと奮闘しながら時間をかけてタイピングすること。その時間のなかにささやかな親切心のようなものを感じてもらえたら、うれしく思います。

 

書き起こし
自動で文字起こししてくれるITツールがあると紹介しました。実際に、久石譲ファンに限らず、海外ファンがお目当ての日本人を追っかけるなかで、こういったツールを駆使している人はいます。逆もまたしかりです。英語を読みあげている音声を文字化して、できあがったものを日本語に翻訳してみる。そういう使い方をしている人や分野は多いかもしれません。

でも50点なんです。とくにフリーソフトは。だったら、正確さを最大のモットーとして、日本人であることを武器として、書き起こしまでしたものを公開できたなら。きっと正しく伝わり、きっと正しく喜んでくれますよね。

 

 

近年、久石譲著書は中国などでどんどん翻訳されています。これはとてもうれしい動きです。でも、時代的にみて少し古い書籍たちになっていきます。そこにも十分な価値はあります。自国語で読めるのはなんといってもうれしいものです。リアルタイムな雑誌やラジオで「久石譲が語ったこと」は、瞬間的にはファンサイトで補ってもらいながら、長い目でみると、これから新しい久石譲著書が出版されていくといいなあと思っています。

 

◇データベース

このようにしてファンサイトのデータベースはできあがっています。もし気になることを調べたいときには、サイト内検索窓でキーワード検索してください。いろんな情報が見つかると思います。

ただし、”あいまい検索”はヒットしません。サイト内に書かれている正確なキーワードが必要です。Googleなら【ハウル動城】で《ハウルの動く城》のことだとヒットしてくれますが、こまやかな気配りは叶いません。ちゃんと【ハウルの動く城】と検索窓に入れてくださいね。

僕も気になって調べたいときに、調べるキーワードに迷走することがあります。あれ、この言葉は入ってなかったんだ・・・なんて言ってたっけなあ・・・と。

また、BiographyやDiscographyには、関連記事は紐付けているものも多いです。たとえばCD作品のページに、それにまつわるインタビュー記事をあわせて紹介しています。

 

◇正しく活用するために

久石譲が語ったことと、僕が思ったこと書いたこと。それは明確に区別しています。「久石譲はこう語っています」とテキストを抜粋紹介したうえで原典も記しています。その下や別のセンテンスで自分の文章を書いています。ごっちゃまぜにならないよう気をつけています。事実や正確性がゆがめられないように。

どうしても、それができないときもあります。そんなに多くはない、たとえばこの文章です。

 

”映画のメインテーマをロンドン交響楽団でやりたい、という久石譲の希望を実現させたのは、アビー・ロード・スタジオのチーフエンジニア、マイク・ジャレット氏です。オーケストラの手配からレコーディングのスケジュールまで。用意したのは85人編成、三管編成に6ホルン、50名のストリングスという大編成オーケストラでした。レコーディングも立ち会い機材やマイクを調整しと、当時の久石譲には欠かせない存在であり、強い絆と信頼で結ばれたパートナーです。

当時、こんなに大きな編成はコンサート用でも書いたことがなかった、という久石譲は、ロンドンに持ってきていた資料も少なく、現地でマーラーの交響曲第5番のスコアを買った。それを教科書として(音楽を真似するという意味ではなく)スコアから学びながら、図書館に通いながら書きあげたのが映画メインテーマ曲です。

ところが、1993年6月23日、マイク氏は37歳の若さで突然病気に襲われて亡くなってしまいます。一緒に制作を進めていた矢先の出来事です。アビーロードでのミックスダウンが終わったときマイク氏はこう言ったそうです。「これはハリウッドにも負けないグレートな音楽だよ」。彼の最後の仕事となったのが、久石譲とのこの映画音楽制作でした。”

Overtone.第30回 久石譲もうひとつの ”HOPE” より抜粋)

 

久石譲著書からのオリジナル文章は書き写さないこと、またこの本が絶版であること。これらを考慮して、本の数ページを要約して書いている例です。本のなかに【当時の久石譲には欠かせない存在であり、強い絆と信頼で結ばれたパートナーです。】、こんな文章はなかったはずです。同じ趣旨のことは言っていたにせよ、使っている言葉や表現は違うはずです。ここに僕の意思や伝え方が入ってしまっています。なるべくこういった方法での文章は、載せないほうがいいと思っています。ごちゃまぜになってしまうので。

 

すべては正確に知ってもらうために

もし、選り好みがはたらいてしまったら。ジブリのことはのせるけど、クラシックはのせないとか。オリジナル作品のことは追求するけど、CM音楽は興味ないとか。こうなると本末転倒です。だから、やるならできるだけ漏れのないように、穴抜けのないように。徹底的にやることが正確性と公平性の担保になると信じています。そうすることで、往年ファンだけどこのテリトリーは知らなかったという人、新しいファンで過去の活動をゆっくり探求していきたい人、海外ファンへの安心できる手引き。少しでもなにかのきっかけになれるならと思っています。

今までわからなかったことが、わかってくるとき。今まで興味のなかったことが、好奇心に変わるとき。あのときはスルーしていた久石譲の言葉が、今になって響いてくることもあります。インタビューを読み返すと、気になるポイントが変わってくることもあります。お気に入りの小説を数年後に読み返したら、感じ方や印象が以前とずいぶん変わっているように。

アーカイブすることは、過去をどんどん蓄積していくことだけじゃないと思っています。どんどん上積みされて古くなっていくものだけじゃないと思っています。アーカイブにふれることで、感じとりかたの変化した自分をもまた感じることができる。これは、ファンとしてたしかな成長や変化ともいえる瞬間です。また、あのときの点と点、久石譲の発言が活動が、時間の流れでやっと反応するように、ある日突然その重みや輝きがますこともあります。アーカイブは混ざることのない地層とはちがう、常に過去と現在を往来しています。そしていくつかの未来の方向性をさし示していることもあります。

 

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 Joe Hisaishi fan site “Hibikihajime No Heya” ~The room filled with Joe Hisaishi music~ です。《この部屋は久石譲音楽で満たされています》と表現しています。そこには音楽や音源そのものはありません。久石譲音楽をかたちづくっている大切な記録や足跡が資料館のように保管され、積み重なり溢れていったらいいなあと思っています。

それではまた。

 

reverb.
次回はつづけてテキストについて♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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