Posted on 2022/11/21
2022年12月9日開催「第28回 四人組とその仲間たち」コンサートです。今回のゲスト作曲家として久石譲出演予定です。その連動企画として貴重な作曲家対談が実現しています。その第2回(全3回予定)です。ぜひご覧ください。 “Info. 2022/11/21 特別対談企画【久石譲×西村朗】第2回:現代音楽とバッハとミニマル・ミュージック(全音楽譜出版社)動画公開” の続きを読む
Posted on 2022/11/21
2022年12月9日開催「第28回 四人組とその仲間たち」コンサートです。今回のゲスト作曲家として久石譲出演予定です。その連動企画として貴重な作曲家対談が実現しています。その第2回(全3回予定)です。ぜひご覧ください。 “Info. 2022/11/21 特別対談企画【久石譲×西村朗】第2回:現代音楽とバッハとミニマル・ミュージック(全音楽譜出版社)動画公開” の続きを読む
Posted on 2022/11/20
ふらいすとーんです。
怖いもの知らずに大胆に、大風呂敷を広げていくテーマのPart.6です。
今回題材にするのは『職業としての小説家/村上春樹』(2015)です。
村上春樹と久石譲 -共通序文-
現代を代表する、そして世界中にファンの多い、ひとりは小説家ひとりは作曲家。人気があるということ以外に、分野の異なるふたりに共通点はあるの? 村上春樹本を愛読し久石譲本(インタビュー記事含む)を愛読する生活をつづけるなか、ある時突然につながった線、一瞬にして結ばれてしまった線。もう僕のなかでは離すことができなくなってしまったふたつの糸。
結論です。村上春樹の長編小説と短編小説と翻訳本、それはそれぞれ、久石譲のオリジナル作品とエンターテインメント音楽とクラシック指揮に共通している。創作活動や作家性のフィールドとサイクル、とても巧みに循環させながら、螺旋上昇させながら、多くのものを取り込み巻き込み進化しつづけてきた人。
スタイルをもっている。スタイルとは、村上春樹でいえば文体、久石譲でいえば作風ということになるでしょうか。読めば聴けばそれとわかる強いオリジナリティをもっている。ここを磨いてきたものこそ《長編・短編・翻訳=オリジナル・エンタメ・指揮》というトライアングルです。三つを明確な立ち位置で発揮しながら、ときに前に後ろに膨らんだり縮んだり置き換えられたり、そして流入し混ざり合い、より一層の強い作品群をそ築き上げている。創作活動の自乗になっている。
そう思ったことをこれから進めていきます。
今回題材にするのは『職業としての小説家/村上春樹』(2015)です。
自伝的エッセイです。語られている内容は、これまでどこかで読んだことあるかも、と重複しているものも多いのです。でも、この本の文章はとても研ぎ澄まされていて、同じテーマもそのすべてを総括するように体系的に文章化されています。
なんでかなと思ったら「あとがき」でわかりました。”いつか語っておきたいことを、数年間かけて断片的に書きとめておいたもの”。つまり時間と推敲を重ねるなかで、文章と思考が磨かれてきたかたちとして収まっている。繰り返し語られるのは、それだけ大切であり本質であるということ。だから、とっても噛みごたえあるというか、しっかり噛んでゆっくり咀嚼したい、そんな本です。
自分が読んだあとなら、要約するようにチョイスチョイスな文章抜き出しでもいいのですが、初めて見る人には文脈わかりにくいですよね。段落ごとにほぼ抜き出すかたちでいくつかご紹介します。そして、すぐあとに ⇒⇒ で僕のコメントをはさむ形にしています。
”そういう作業を進めるにあたっては音楽が何より役に立ちました。ちょうど音楽を演奏するような要領で、僕は文章を作っていきました。主にジャズが役に立ちました。ご存じのように、ジャズにとっていちばん大事なのはリズムです。的確でソリッドなリズムを終始キープしなくてはなりません。そうしないことにはリスナーはついてきてくれません。その次にコード(和音)があります。ハーモニーと言い換えてもいいかもしれません。綺麗な和音、濁った和音、派生的な和音、基礎音を省いた和音。バド・パウエルの和音、セロニアス・モンクの和音、ビル・エヴァンズの和音、ハービー・ハンコックの和音。いろんな和音があります。みんな同じ88鍵のピアノを使って演奏しているのに、人によってこんなにも和音の響きが違ってくるのかとびっくりするくらいです。そしてその事実は、僕にひとつの重要な示唆を与えてくれます。限られたマテリアルで物語を作らなくてはならなかったとしても、それでもまだそこには無限の──あるいは無限に近い──可能性が存在しているということです。「鍵盤が88しかないんだから、ピアノではもう新しいことなんてできないよ」ということにはなりません。
それから最後にフリー・インプロビゼーションがやってきます。自由な即興演奏です。すなわちジャズという音楽の根幹をなすものです。しっかりとしたリズムとコード(あるいは和声的構造)の上に、自由に音を紡いでいく。
僕は楽器を演奏できません。少なくとも人に聞かせられるほどにはできません。でも音楽を演奏したいという気持ちだけは強くあります。だったら音楽を演奏するように文章を書けばいいんだというのが、僕の最初の考えでした。そしてその気持は今でもまだそのまま続いています。こうしてキーボードを叩きながら、僕はいつもそこに正しいリズムを求め、相応しい響きと音色を探っています。それは僕の文章にとって、変わることのない大事な要素になっています。”
~(中略)~
⇒⇒⇒
ん?これは小説を書くことじゃなくて音楽についてのことなの?というくらい音楽的にみてもとても説得力があります。作曲家や演奏家が強くうなずきそうです。逆に物書きで強く共感する人はいるのかな、というほうが気になってきます。いかに村上春樹さんが作家性としての特異なオリジナリティをもっているか、それもまた浮き立ってよくわかります。
”でも僕は基本的には、というか最終的には、自分のことを「長編小説作家」だと見なしています。短編小説や中編小説を書くのもそれぞれに好きですし、書くときはもちろん夢中になって書きますし、書き上げたものにもそれぞれ愛着を持っていますが、それでもなお、長編小説こそが僕の主戦場であるし、僕の作家としての特質、持ち味みたいなものはそこにいちばん明確に──おそらくは最も良いかたちで──現れているはずだと考えています(そうは思わないという方がおられても、それに反論するつもりは毛頭ありませんが)。僕はもともとが長距離ランナー的な体質なので、いろんなものごとがうまく総合的に、立体的に立ち上がってくるには、ある程度のかさの時間と距離が必要になります。本当にやりたいことをやろうとすると、飛行機にたとえれば、長い滑走路がなくてはならないわけです。
短編小説というのは、長編小説ではうまく捉えきれない細部をカバーするための、小回りのきく俊敏なヴィークルです。そこでは文章的にもプロット的にも、いろんな思い切った実験を行うことができますし、短編という形式でしか扱えない種類のマテリアルを取り上げることもできます。僕の心の中に存在する様々な側面を、まるで目の細かい網で微妙な影をすくい取るみたいに、そのまますっと形象化していくことも(うまくいけば)できます。書き上げるのにそれほど時間もかかりません。その気になれば準備も何もなく、一筆書きみたいにすらすらと数日で完成させてしまうことも可能です。ある時期には僕は、そういう身の軽い、融通の利くフォームを何より必要とします。しかし──これはあくまで僕にとってはという条件付きでの発言ですが──自分の持てるものを好きなだけ、オールアウトで注ぎ込めるスペースは、短編小説というフォームにはありません。
おそらく自分にとって重要な意味を持つであろう小説を書こうとするとき、言い換えれば「自分を変革することになるかもしれない可能性を有する総合的な物語」を立ち上げようとするとき、自由に制約なく使える広々としたスペースを僕は必要とします。まずそれだけのスペースが確保されていることを確認し、そのスペースを満たすだけのエネルギーが自分の中に蓄積されていることを見定めてから、言うなれば蛇口を全開にして、長丁場の仕事にとりかかります。そのときに感じる充実感は何ものにも代えがたいものです。それは長編小説を書き出すときにしか感じられない、特別な種類の気持ちです。
そう考えると、僕にとっては長編小説こそが生命線であり、短編小説や中編小説は極言すれば、長編小説を書くための大事な練習場であり、有効なステップであると言ってしまっていいのではないかと思います。一万メートルや五千メートルのトラック・レースでもそれなりの記録は残すけれど、軸足はあくまでフル・マラソンに置いている長距離ランナーと同じようなものかもしれない。”
~(中略)~
⇒⇒⇒
”長編小説こそ”という内容は村上春樹の根幹にあたることよく語られます。久石譲でいうと「今はクラシックに籍をおいている」という根幹に近いかもしれません。自分の創作活動のフィールドやポジショニング、常に位置を定め確認している。そして、周りを見渡しながら(作家・大衆・社会)時代のなかで共鳴できるポイントの距離感を測っている。
先頭のほうの文章に戻ります。”長編小説こそが僕の主戦場であるし、僕の作家としての特質、持ち味みたいなものはそこにいちばん明確に──おそらくは最も良いかたちで──現れているはずだと考えています(そうは思わないという方がおられても、それに反論するつもりは毛頭ありませんが)”、久石さんもそんなふうに思っているんじゃないかな、なんとなく。そう思っていてほしいなとも、なんとなく。
(「職業としての小説家/村上春樹」より 一部引用)
今回とりあげた、『職業としての小説家/村上春樹』。これまでにどこかで書いた語った散文的なものとは違います。小説家としての姿勢、大きく言えば小説家としての生き方のようなものが、作家自らによって思考をまとめあげるように、丁寧に濃密に記されています。とても価値のある稀有な種類の本だと思います。
今回はピックアップしたものがふたつ。自伝的エッセイらしい多彩なテーマについて記された本です。そのなかに、オリジナリティについてたっぷりと頁をさいた章もあります。オリジナリティとは何か、何をもってオリジナリティとするか、みたいなことが説得力たっぷりに記されています。ここはまたいつか、それだけでOvertoneしたいくらいの内容です。
今回はピックアップしたものがふたつ。いちばんロジカルにまとまっています。どちらもよく語られる内容で同旨あります。
-共通むすび-
”いい音というのはいい文章と同じで、人によっていい音は全然違うし、いい文章も違う。自分にとって何がいい音か見つけるのが一番大事で…それが結構難しいんですよね。人生観と同じで”
(「SWITCH 2019年12月号 Vol.37」村上春樹インタビュー より)
”積極的に常に新しい音楽を聴き続けるという努力をしていかないと、耳は確実に衰えます”
(『村上さんのところ/村上春樹』より)
それではまた。
reverb.
好きな小説とか、まったく触れていない、今さらながら。
*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪
Posted on 2022/11/02
10月26,27日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.9」コンサートです。春の開催発表から7月には追加公演(10/26)決定、そして公演前日にライブ配信の発表、なんとも直前まで目が離せない。2日間を完売にできる現代音楽のコンサート。日本国内だけでなく世界各地からも視聴できるコンサート。シリーズを重ねるごとにリスナーの好奇心をつかみ、さらにその少し先をいってみせてくれるコンサートです。
久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.9
[公演期間]
2022/10/26,27 and 2022/11/05
[公演回数]
3公演
10/26,27 東京・紀尾井ホール
11/05 ニューヨーク・カーネギーホール(ザンケルホール)
[編成]
指揮:久石 譲
作曲・ピアノ:ニコ・ミューリー
ヴィオラ:ナディア・シロタ
室内楽:Music Future Band
[曲目]
久石譲:室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra
ニコ・ミューリー:Selections from the Drones and Viola
久石譲:Viola Saga (世界初演)
ニコ・ミューリー:Roots, Pulses (世界初演)
New York
November 5, 2022
Zankel Hall
Performers
Joe Hisaishi, Conductor
Nico Muhly, Piano
Nadia Sirota, Viola
Bang On A Can Festival Ensemble
Program
JOE HISAISHI: 2 Dances for Large Ensemble
NICO MUHLY: Selections from Drones & Viola
NICO MUHLY: Roots, Pulses for Chamber Orchestra
JOE HISAISHI: Viola Saga
まずは会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。
Joe Hisaishi
室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra
室内交響曲は2015年のMUSIC FUTURE Vol.2で初演した。その前年のVol.1でNico Muhlyの「Seeing is Believing」を演奏したいと考えたのだが、その曲で使用される6弦のエレクトリック ヴァイオリンは日本に無くて結果としてアメリカから買わざるを得なくなった。その時の演奏は東フィルのコンサートマスターである近藤薫氏によって素晴らしい演奏になった。と同時にそのサウンドに魅了された僕も翌年にエレクトリック ヴァイオリンを使用した室内交響曲を作曲した次第である。全3楽章で約28分の協奏曲として完成したが、タイトルはあえて室内交響曲とした。たぶんにアメリカンなムードが漂うのはエレクトリック ヴァイオリンの特性かもしれない。もちろんジョン・アダムズがこの楽器のために書いたようにエスニックな方向もあるのだが。
今回は初演と同じく、我がMusic Future Bandのバンドマスターであり新日フィルのコンサートマスターでもある西江辰郎氏が演奏する。
久石譲
Nico Muhly
Selection from the Drones and Viola
including
Drones and Piano
Drones and Viola
もう何年も前になるが、私の乗った飛行機がなかなか離陸できず滑走路で延々と待機させられたことがある。その時、私は飛行機のエンジン音や客室の空調の音をはじめとする、さまざまな機械が発する音がある一定の音符に相当する音を出していることに気づいた。真ん中のドの音より低いシの音だ。飛行機が少しずつ前へ進むたび、音程が徐々半音上がったり、下がったりする。飛行機が進んでは止まり、進んでは止まりを繰り返していたので、止まるたびにその音に合わせてメロディやパターンをメモに残した。この即興で作ったメモがきっかけとなり、「ドローンとピアノ」、「ドローンとヴィオラ」と題した連作の曲作りが始まったのだ。あの機内でのひらめきの可能性を探りたいと思った。ドローンはどんな楽器でも作ることができる。アコースティック楽器とエレキ楽器を組み合わせてもすばらしい効果を発揮する。このシリーズの楽曲は、それぞれ複数の楽章で構成されているが、楽章と楽章の間に小休止を置かず、ドローンの音程を変えることで楽章ごとの特徴づけがされている。
ニコ・ミューリー
Joe Hisaishi
Viola Sage
Viola SagaはMUSIC FUTURE Vol.9で初演するために作曲した。今回は世界で活躍している若手作曲家Nico Muhlyとのジョイントコンサートであるが、同時にニューヨークからヴィオラ奏者のNadia Sirota氏を招聘していて彼女のために書いた曲である。
タイトルのSagaは日本語の「性──さが」をローマ字書きしたもので意味は生まれつきの性質、もって生まれた性分、あるいはならわし、習慣などである。同時に英語読みのSagaは北欧中世の散文による英雄伝説とも言われている。あるいは長編冒険談などの意味もある。仮につけていた名前なのだが、他に思いつかず、これにした。
僕自身は今年から海外のコンサートが再開し、作曲依頼も溜まりに溜まっていたためこなしきれず、凄まじいカオスの中にいた、いやまだいるのだが、そのためSagaは8月ニューヨークのRadio City Music Hallでの5回公演の直前にやっとII.の基本モチーフが浮かんだ。初演するコンサートの2ヶ月前である。もちろん考えていたのは数年前に遡るし、そもそもNicoとNadiaは2020年のMFに来る予定だった。その時からCOVID-19のため何度も中断を余儀なくされ、今日に至った。Radio City Music Hallの楽屋でNadiaと一緒に約2分のDemoを聞いた。彼女のホッとした安堵の表情が忘れられない。その後いくつかのコンサートと、作曲をこなしつつ10月の初め、フランスツアーの直前にやっと完成した、、、と思う。
曲は2つの楽曲でできていて、I.は軽快なリズムによるディヴェルティメント、II.は分散和音によるややエモーショナルな曲になっている。特にII.はアンコールで演奏できるようなわかりやすい曲を目指して作曲した。この2~3年は前衛的なものより、わかりやすいものを書きたいと思っていた。つまり誰もが疲れている時に疲れる曲を聞いてもらおうとは思わなかった。その意味ではノンジャンル音楽ではある。が、リズムはかなり複雑で演奏は容易ではない。Music Future Bandへの信頼があってこその作曲である。
2022年10月
久石譲
Nico Muhly
Roots, Pulses
「Roots, Pulses」は今回の演奏会のために書き下ろされた楽曲。”快活vs抽象的”、”前景vs背景”の間の葛藤を模索する様を表現している。冒頭の2分半は、シンプルなハーモニーの牧歌的で楽しい活気のある曲調が続き、その後、ピアノ、鍵盤打楽器、弦楽器で空虚五度の和音が多用され、曲の雰囲気は窮屈なドローンに近い厳しく統制された様相へと変化していく。そして転換の範囲や変わり目を曖昧にしたまま、再度、快活でやや危険な様相へと移行する。曲の途中、快活な調べは鳴りを潜め、代わりに低音弦楽器、ピアノ、コントラバスーン、バスクラリネットのアンサンブルが最も低い音域と中低音の間の音域の主旋律を担うことで、より暗くて抽象的な曲調へと変化する。冒頭の長音でゆっくりと流れる連続したアンサンブルとは真逆の曲調だ。その後、長いオーボエソロを境に快活な曲調が復活するが、冒頭部よりもさらに拍車のかかった明るさでより一層の盛り上がりを見せる。
ニコ・ミューリー
(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.9」コンサート・パンフレットより)
ここからはレビューになります。
第4回 Young Composer’s Competition
受賞者 山本哲也 Tetsuya Yamamoto
受賞作 「ギミックバッハ3(Gimmick Bach 3)」
「Young Composer’s Competition」とは?
若手作曲家に活動の場を与えたいという久石譲の思いから始まった若手作曲家の新作を募集する企画。毎回、世界各国から作品が寄せられ、久石をはじめとした評論家・アーティストによる厳正なる審査のもと、優秀作品が選ばれる。
(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.9」コンサート・パンフレットより)
本演前に披露されました。冒頭で足本憲治さん、ニコ・ミューリーさん、久石譲さんが登壇され司会進行のもと講評がありました。口を揃えて評されていたのがユニークな作品だということ。久石さん談では、10年前に国立音楽大学で教えていた生徒だった(もちろん審査は番号でやるから名前はわからない)、ギミックバッハというタイトルに少し覚えがあった、BACH(バッハ)を音名にした「シ♭-ラ-ド-シ」を使った曲をという講義をしたことがある。そんなお話だったと思います。26日公演からです。5分ほどの講評の後、Music Future Band奏者によって演奏されました。ヴァイオリン、コントラバス、クラリネット、ファゴット、トランペット、トロンボーンによる6重奏作品です。
難しい悩ましい。開場18時ー受賞作披露18時半ー19時開演、このコーナーは開場時間中にやっています。だから演奏中照明は落としているものの出入り自由です。ロビーコンサートのようというかとても作品をしっかり聴く雰囲気にはない。始まるときは3割くらいだった客席が終わるころには8割まで埋まっていた、となればどれだけ演奏中に人が移動していたかわかると思います。作曲者も会場に来ているなか、、。(前からこんなに集まり悪かったかな?早めに密集することを避けたい心理が働いてるのかな?)
せっかく定着している企画なのにもったいない。本演と分ける必要はあるけれどしっかり聴きたい。聴く立場ではあるけれどちゃんと受賞作として聴きたい。じゃあ開場時間を早めるか、もっと告知するか、、難しい悩ましい。と閃いた!「受賞作演奏および久石譲によるプレトーク!本公演プログラムについて作品ごとに魅力を語ります!ぜひお早めにご来場ください!」これしかない。本気で、前向きに、そう思った次第です。
Joe Hisaishi
室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra
久石譲解説にあるとおりです。もう初演から7年になるんですね。MFプログラムはMFならではの作品がのることを証明するかように今回で2度目の披露となりました。それだけ前衛性も楽器編成も尖った作品という現れです。エレクトリック・ヴァイオリンつながりでいうと、「天音 / EXILE ATSUSHI&久石譲」(2017)にもフィーチャーされています。そこでの演奏も西江辰郎さんです。また第3楽章は「The Border Concerto for 3 Horns and Orchestra」(2020)の同じく第3楽章「III. The Circles」として再構成されました。エレクトリック・ヴァイオリンからホルンとオーケストラのための作品へ。
今回改めて聴きながら、時間の経過とともに作品を線で感じれるところもあっておもしろかったです。第1楽章・第2楽章は「The End of the World for Vocalists and Orchestra」の「II. Grace of the St. Paul」、サックスが編成されている共通点もありますが、雰囲気として近いと感じる箇所がいくつかあります。エレキギターさながらのエレクトリック・ヴァイオリンだけがアメリカ色を作っているんじゃないんだ、みたいな印象です。
第3楽章は「2 Pieces for Strange Ensemble」(2016/2020)、アンビル(Anvil/鉄塊を打つ金属音)・大太鼓・シンバルといったパーカッションのスパイスが同じくよく効いています。2 Piecesで語られていた「NYのSOHO/ワイルドなサウンド」という音響的効果がつながってくるように感じました。
Nico Muhly
Selection from the Drones and Viola
楽器編成:ヴィオラ、ピアノ、エレクトロニカ (楽器編成はライブ配信の映像目視による、以下同)
約14分にセレクトされた作品。ニコ・ミューリー自らのピアノにナディア・シロタのヴィオラというデュオからなります。導入楽章は電子音源も背景に使われていました。楽曲解説に「複数の楽章で構成」とあるとおりアルバム『Drones』収録から選ばれています。アルバムは、ピアノ、ヴィオラ、ヴァイオリンをそれぞれフィーチャーしたEP盤をのちにまとめたもので全14曲です。うちシリーズ・ヴィオラの全4曲をベースにプラスアルファで、録音されたものとは異なる箇所もあったりと演奏会でしか聴けないパフォーマンスでした。瞑想的でただ身を任せていたいとも思います。暗示的で何かを仄めかしたり示唆したりとも思います。そして、僕が不思議と強く思ったのは歴史的だということ。いかなる現代社会にもフィットしてくる曲。今でいうと……。リアリズムをあぶり出してしまう。5年後10年後に聴いたときには、またその時の今が浮かび上がってきそうな作品です。この機会に見つけたアルバムもまたゆっくり聴いてみたいと思います。
Joe Hisaishi
Viola Sage
楽器編成:ソロ・ヴィオラ、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、ピアノ、パーカション (2奏者)
約20分の作品。このかっこいいヴィオラの世界!この美しきヴィオラの世界!伝えたい感想はこれだけでいいかなと思います。これからつらつらと書いてしまいますけれど、それは記憶から消してしまっていい、あとはやっぱり聴いてみてほしい。
I.
ヴィオラの独奏から始まります。あなたのタイミングでどうぞ始めてください。ソリストも呼吸をつくることができる。久石譲のソリストへのリスペクトが見えてきそうです。久石譲のソロ楽器をフィーチャーした作品には、こういったスタイルの作品がいくつかあります。
冒頭「ドー、ソー、レー、ラー、シ♭ーラシ♭ソー」と始まります。2オクターブにまたがる広い音域のモチーフです。実はこの最初の「ド、ソ、レ、ラ」はヴィオラの開放弦です。4本張られた弦の指を押さえない状態で鳴る低音から高音の4つの音。そこへケルティック感のあるハーモニーの重奏になっています。はい、ここだけでももう久石譲楽曲解説にある「Saga、生まれつきの性質、北欧中世の」を見事にクリアしています。すごい!着想もそうだしそれを音楽として魅力的にかたちにしてしまう。
独奏のあと軽やかなアンサンブルが始まります。第一印象で「2 Dances」と並べたくなりました。それは5拍子の「タン、タタンタ、タン、タン」という音型やリズムがひとつの基調となっているからです。そしてこのモチーフが「2 Dances I.」の少し暗い雰囲気とは逆の少し明るい雰囲気なのもまた対称的です。かなり距離感の近い作品だと思います。このことはまた後で。
5拍子のリズムが中低音で支えていてワクワクしてきます。冒険ゲームのステージやダンジョンが変わっていくように曲想も変わっていく。そんなおもしろさあります。「冒険」というキーワードも楽曲解説にありましたね。主人公になった気分で楽しく進めたくなります。
6分あたりの静かになるところは、ヴィオラは冒頭や前半に奏でていた旋律のヴァリエーションです。そのあとまたボンゴなども加わりリズミックになります。「Variation 14 for MFB」楽器編成が近いこともありますが快活さもつながってきそうと感じます。「ならわし、習慣」というキーワードも楽曲解説に。聴けば聴くほど「2 Dances」と「Variation 14」のエッセンス入ってるってなるんですけど、僕の心の声を書き出したら止まらなくなるのでここはメモにしよう。
~(僕の心の声)~
II.
久石譲楽曲解説にあるとおり「分散和音によるややエモーショナルな曲」です。そして一貫しています。弦楽器のなかでヴィオラというのは、縁の下の力持ち的役割をすることが多いです。ヴァイオリンたちのメロディをハモったり、チェロたちのリズムを支えたりと。主役になることはないけれど、それだけメロディもリズムも曲のバランスに目を配っていないといけない、オーケストラの要とも言われることあります。
そんなヴィオラを主役にしようとしたときに、久石譲はありのままのヴィオラの役割をまっとうさせた。そう思うとじんわり熱くまります。言ってしまうと、ヴィオラが奏でる分散和音は伴奏音型としてもいいわけです。飛びますけれど、7分半あたりのクライマックスの盛り上がりなんて「Will be the wind」よろしく、ヴィオラの上に悠々と滞空時間の長い大きなメロディを奏でてもいいわけです。ヴィオラを脇役にして。でもそうはしていない。「2 Dances」第1楽章にもメロディらしいものは登場する。「Viola Saga」はI.II.ともにない。もしこの作品を聴いて、今ひとつ何か足りないと思ったなら、たぶんそれで合ってると思います。それこそこの作品の正しいあり方な気がしています。
飛びますけれど、2分あたりから1分間ほど、艶を消したような弦楽器アンサンブルになっていてトーンが変わる。まさに、いぶし銀。頭から終わりまでいつもより控えめで慎ましい他の弦楽器や管楽器たちとのアンサンブル。まさに、わびさび。
久石譲楽曲解説にあるとおり「もって生まれた性分」、オーケストラにおけるヴィオラの性分をまっとうさせた。だから僕はじんわり熱くなる。そして反対のことを言う。メロディを支えて歌えるヴィオラ、リズムセンスに長けたヴィオラだからこそできることがある。メロディ抜きの作品のように見えるけれど、分散和音からなるモチーフを、これだけエモーショナルにリズミックにメロディほど奏でてしまうヴィオラ。徹底してやりきり約20分を魅了してしまうヴィオラ。足りないことなんて何もない。ちゃんとヴィオラは主役を演じきっている。ああ、ヴィオラ弾きからみたらもっといろんな美味しいところが詰まってるんだろうな。ぜひ知りたい。とにもかくにも、あますところなくヴィオラ!ぜひご堪能ください。
Nico Muhly
Roots, Pulses
楽器編成:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、ピッコロ (持替)、オーボエ、クラリネット、バスクラリネット (持替)、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、ピアノ、パーカション (2奏者)
約15分の作品。ニコ・ミューリーによる楽曲解説がとても具体的です。手引きに聴くのが一番です。とてもくっきりした音像が印象的でした。それぞれの楽器が今なにをやっているかすごくよくわかる。改めて久石譲作品と並べられると、お互いのスタイルの違いもまたくっきりしてくるようです。久石さんの場合、旋律も楽器も絡ませることで生まれる魅力があります。ニコ・ミューリーさんの場合は、スコーンと抜けてる魅力があります。楽器の使い方の違いというよりは、旋律の作り方というか音符の動き方というか。まあわからないから墓穴もほどほどにして。
久石譲×ニコ・ミューリー。共演プログラムもすごい、来日したのもすごい、ニューヨークでやるのもすごい。このインパクトはもちろんあります。そんななかでやっぱりここに注目したい。現代音楽の間口を広げてきたふたりの現代作曲家によるコラボレーションだということ。世界中から引く手あまたの作曲家が現代作品で共演した。しかも新作をもちよった同時世界初演。この企画と実現はなかなかできることではありません。来年Vol.10あたりほんとうにテリー・ライリーさん、くるかもしれませんよ。
みんなの”MF9”コンサート・レポート、ぜひお楽しみください。
ニューヨーク公演
from Official Website | Carnegie Hall
日本プログラムとは一部異なり「2 Dances for Large Ensemble」が披露されます。また、Bang on a Can Festival EnsembleはMUSIC FUTURE Vo.5 ニューヨーク公演でも共演しています。スティーヴ・ライヒ、テリー・ライリー、ニコ・ミューリーなど現代作曲家の多くを録音しています。デヴィット・ラングさん達が始めた現代音楽グループです。この年は日本公演・NY公演ともにそのデヴィット・ラングとのジョイントコンサートでした。
【MUSIC FUTURE Vol.9】
公演終了!ありがとうございました!次はニューヨーク公演!配信のアーカイブは11/3(木)まで視聴可能です!https://t.co/GP7S9e9gCe pic.twitter.com/nKSjtp5TPT— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) October 28, 2022
Backstage
from 久石譲コンサート公式ツイッター
https://twitter.com/joehisaishi2019
ほか
リハーサル風景動画もあります
from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/
ほか
日本滞在中の食レポみたいで楽しいです。そばにうなぎに。
from ニコ・ミューリー公式インスタグラム
https://www.instagram.com/nicomuhly/
ほか
from 西江辰郎インスタグラム
https://www.instagram.com/tatsuo_music/
from テリー・ライリー公式ツイッター
https://twitter.com/TerryRiley_info
会場では、最新アルバム(前回Vol.8/2021を収録)の先行販売もありました。いち早く聴けることはうれしいです。こうやってMFコンサート毎に音源化してくれることはもっとうれしいです。
まだ間に合うライブ配信!
アーカイブ配信期間
配信終了後~11月3日(木)23:59
購入ページや視聴環境については公式サイトご覧ください。
公式サイト:久石譲プレゼンツ・ミュージック・フューチャー Vol.9|ライブ配信
https://joehisaishi-concert.com/mf-vol9-online/
Official web site for overseas:JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.8|LIVE STREAMING
https://joehisaishi-concert.com/mf-vol9-online-en/
2022.11.07 update
NY Photos
Joe Hisaishi, Autumn in New York !
ほか
リハーサル風景
ほか
公演風景
リハーサル風景動画もあります
公演後日
from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/
from フィリップ・グラス公式ツイッター
2022.11.15 update
NY公演風景& Young Composer’s Competition優秀作品音源公開
from 久石譲本人公式インスタグラム
MFシリーズ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
Posted on 2022/11/15
10月26,27日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.9」コンサートです。若手作曲家の新作を募集する「Young Composer’s Competition」、第4回を迎える今年も本演前に久石譲らの講評とMusic Future Bandメンバーによる披露となりました。 “Info. 2022/11/15 第4回 Young Composer’s Competition優秀作品 初演音源公開” の続きを読む
Posted on 2022/11/15
舞台『千と千尋の神隠し』帝国劇場公演のネット配信が決定 橋本環奈Ver.は初、上白石萌音Ver.は再編集版を初配信
東宝創立90周年の2022年3月に東京・帝国劇場にて幕を開け、大阪・福岡・北海道・名古屋と5大劇場計102回でいずれも即日完売を達成し、公演中の5月には、上演関係者一同が菊田一夫演劇大賞に輝くなど、観る者の心に残る舞台として歴史を刻んだ、舞台『千と千尋の神隠し』(原作:宮﨑駿 演出:ジョン・ケアード 製作:東宝)。この度、帝国劇場公演のインターネット配信(TVOD(レンタル型配信))が決定した。 “Info. 2022/11/15 舞台『千と千尋の神隠し』帝国劇場公演のネット配信が決定(SPICEより)” の続きを読む
Posted on 2022/11/15
キングズ・シンガーズのクリスマス
世界最高峰のアカペラ・グループが3年ぶりの来日 “Info. 2022/11/15 キングズ・シンガーズのクリスマス(ぶらあぼONLINEより)” の続きを読む
Posted on 2022/11/14
対談 西村朗 × 久石譲
日本を代表する作曲家の“いま”を聴く
全音楽譜出版社が主催する「四人組とその仲間たち」の第28回目のコンサートが12月に開催される。「四人組」は、池辺晋一郎、新実徳英、西村朗、金子仁美という日本を代表する作曲家たち。今回はゲストで久石譲が加わる。そこで、同公演に因んで行われた西村朗、久石譲両氏の対談の席上でお二人に話をうかがった。(対談の模様は記事下の動画をご覧ください) “Info. 2022/11/14 対談 西村朗×久石譲 日本を代表する作曲家の“いま”を聴く(ぶらあぼONLINEより)” の続きを読む
Posted on 2022/11/12
2022年6月中国ゲーム「王者栄耀(おうじゃえいよう) Honor of Kings」、久石譲が主人公をテーマにした新曲「光之奇旅 (The Road to Glory)」を書き下ろしています。このたび中国で開催されたイベント「2022共創之夜」にてオーケストラパフォーマンスされました。同ゲーム音楽から3曲披露されたうちの1曲目になります。ぜひご覧ください。 “Info. 2022/11/12 「Honor of Kings」2022共創之夜 「久石譲:光之奇旅 (The Road to Glory) 」他 動画公開” の続きを読む
Posted on 2022/11/12
久石譲の新作、ミニマル・ミュージックの癒し…「コロナ禍で痛んだ人々に届く音楽を」
作曲家・指揮者の久石譲(71)が、自ら企画する現代音楽のシリーズ公演「ミュージック・フューチャー」で新作を披露した。同じく委嘱新作を手がけた米国の作曲家ニコ・ミューリー(41)と共に現代作品の楽しみ方について聞いた。(松本良一) “Info. 2022/11/12 久石譲の新作、ミニマル・ミュージックの癒し…「コロナ禍で痛んだ人々に届く音楽を」(読売新聞)” の続きを読む
Posted on 2022/11/11
2022年12月9日開催「第28回 四人組とその仲間たち」コンサートです。今回のゲスト作曲家として久石譲出演予定です。その連動企画として貴重な作曲家対談が実現しています。ぜひご覧ください。 “Info. 2022/11/11 特別対談企画【久石譲×西村朗】第1回:作曲家の真意と現代音楽(全音楽譜出版社)動画公開” の続きを読む