Overtone.第59回 「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサート・レポート by tendoさん

Posted on 2022/02/14

2月9日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサートです。当初予定からの延期公演です。プログラムも新たにアップデートされリアルチケットは完売御礼。さらに、Vol.2,3に引き続いてライブ配信もあり、国内外からリアルタイム&アーカイブで楽しめる機会にも恵まれました。

今回ご紹介するのは、韓国からライブ・ストリーミング・レポートです。「WDO2021」「新日本フィル定演」「MF Vol.8」コンサートにつづいてこの1年間で4回目の登場tendoさんです。とてもおもしろい注目の仕方と表現で、いつも対訳させてもらいながら楽しませてもらっています。きっと共感ポイントあると思いますよ。

 

 

久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4

[公演期間]  
2022/02/09

[公演回数]
1公演
東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Future Orchestra Classics
コンサートマスター/ヴァイオリン・ソロ:近藤薫

[曲目] 
レポ・スメラ:Musica Profana
久石譲:Winter Garden

—-intermission—-

ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 Op.90

—-encore—-
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番 ニ長調

 

 

はじめに

F.O.C.シリーズもすでに4回目になる。今回の公演もリアルタイム・ストリーミングが決定し、日本公演を韓国で楽しむことができた。世界各国の人々とコンサートの直後に感想を交わすことができ、コンサートが終わった後もアーカイブで見ることができるので、リアルタイム・ストリーミングがこのように継続的に続いていることに感謝するばかりだ。いつの日かパンデミックの状況が良くなって会場に直接行ってパンフレットやCDなどを買って演奏を直接聴く日が来てほしい。

 

F.O.C.シリーズについて

Future Orchestra Classics(F.O.C.)シリーズは久石譲の代表的なコンサートシリーズの一つで、長野で活動していたN.C.Oを母体として再結成されたフューチャー・オーケストラが、古典クラシック作品を久石譲作品などの現代作品とともに演奏するプログラムだ。

フューチャー・オーケストラは、厳選した首席演奏家で構成されており、久石譲は指揮を兼ねる作曲家として、時代を先取りした指揮を追求している。現在はブラームスの交響曲全曲のツィクルスが進行中だ。

 

Lepo Sumera : Musica Profana

 

久石譲のファンなら、もうレポ・スメラはおなじみの名前だろう。今回のコンサートで演奏されるレポ・スメラの曲は、弦楽オーケストラで演奏される曲だ。

いつからか久石譲のコンサートには、弦楽だけで演奏される曲が少なくとも1曲は含まれているようだ。正確な理由は分からないが、金管楽器演奏者たちのクオリティーを高めるためのようでもあり、コンサートのレパートリーで小編成の弦楽からなる曲を試してみることのようでもあり、シンプルに久石譲が弦楽オーケストラを好んでよく楽しむのかも知れない。

Musica Profanaはよく演奏されるとか有名な曲ではないけど、かなり面白い曲だった。緊張感の感じられるメロディーがリズム感のあるように進んでは停止するを緊密に繰り返しながら進行される。現代曲をよく演奏する首席奏者からなるオーケストラ、ミニマル音楽を作曲している久石譲に適している曲だと思った。

何度か緩やかに進んでは再び最初の雰囲気に戻ることを繰り返すが、中断を適切に活用した曲という側面から、久石譲の「2 Pieces」という作品の第1楽章である「Fast Moving Oppositions」という曲が浮かんできた。

 

 

最後のハイライトで曲が盛り上がったとき、久石譲がキューサインを与える姿が素晴らしかった。終わりまで本当に素敵な曲だった。F.O.C. vol.3で演奏したレポ・スメラの交響曲第2番も本当に印象深かったが、今回の曲も本当にすごかった。

 

Joe Hisaishi : Winter Garden

 

Winter Gardenはヴァイオリンのための協奏曲として作曲されたミニマル曲だ。2006年にヴァイオリンとピアノのためのバージョンとして2楽章の曲として作曲され、これはアルバムとしてもリリースされたことがある。だが、以降に新たに3楽章が付け加えられたヴァイオリンとオーケストラバージョンになってから2014年に改訂されたバージョンが出てきたが、映像やアルバムなどでは残っていなかった未知の曲だ。

 

 

久石譲のミニマル曲を聴くときは最近打楽器に耳を傾ける方だが、キラキラしたグロッケンシュピール、トライアングルや欠かせないウッドブロックの音もあった。特に、後ろにあるカウベルが注目を集めた。 久石譲の「The East Land Symphony」や「Deep Ocean」に使われた楽器だ。(2017年の韓国公演でも見たうれしい楽器だ。)

コンサートマスターである近藤薫さんの素敵なヴァイオリン・ソロで始まるが、ヴァイオリンとピアノのバージョンとは違いパーカッションがヴァイオリンとともに和やかな音を出しながら始まるのが印象的だった。

第1楽章は、覚えやすいメロディーを中心に軽快な感じで進められる曲だった。全体的に明るく朗らかな雰囲気だった。最後にヴァイオリンの高音で終わりを迎えるが、その瞬間オーケストラが急にみんな静まる部分が印象的だった。

第2楽章は、先に話したカウベルとともに始まる。瞑想的な雰囲気の穏やかな曲だった。ヴァイオリンの官能的なソロ演奏が本当によかった。 ぼたん雪が少し積もった穏やかな感じで、だんだん緊張感が高まった。オーケストラがヴァイオリンをやさしく包み込んで終わる。

 

 

爽やかな雰囲気で始まる第3楽章は、ヴァイオリンのテクニックが引き立つ曲だった。オーケストラとヴァイオリンが交差し、次々と主要テーマを演奏していく。チューブラーベルが加わってさらに豊かでかっこいい雰囲気に。ソロ・ヴァイオリンのカデンツァ直前のオーケストラが力強く躍動する場面も印象的だった。

 

 

カデンツァは本当に完璧だった!ヴァイオリンのテクニックというのはこういうことなんだ!曲が終わる頃に聴こえる楽器はヴィブラフォンだろうか。 暖かい音色で包み込んで終わりを告げているが、本当に素敵な終わり方だった。

 

Brahms : Symphony No.3 in F major Op.90

 

インターミッションの後に続く曲は、今日の主人公ブラームスの交響曲第3番だ。

第1楽章は、管楽器の力強いハーモニーから始まる。この曲は全体的には明るいようでありながらも、一方ではどこか複雑微妙な感情も感じられた。時々登場する急上昇の和音部分は素敵だった。

第2楽章は、緊張した一日を降りて気楽に聴くことができる曲だった。ロマンティックで叙情的な雰囲気の曲だ。

第3楽章は、おそらくブラームスの交響曲第3番で最もよく知られている楽章ではないだろうか。 訴える力の強い濃厚なメロディーに秋の香りが漂うような感じだった。

 

 

福川伸陽さんのホルン演奏はどんなに素敵なことか!オーボエも本当によかった。最高だった!第3楽章が終わる頃には、しばらく泣きそうになった。一生覚えていたい素敵な瞬間だった。

第4楽章は、実に強烈で情熱的な演奏だった。私も知らないうちにリズムに乗っていた。第3楽章に次ぐ素敵な楽章だった。第4楽章は非常に静かに落ち着いた調子で締めくくられた。ブラームスの交響曲第3番は、すべての楽章でこのように穏やかに締めくくられているのが特徴だと感じた。

 

続くアンコール曲は、やはりブラームスのハンガリー舞曲だった!

 

Brahms : Hungarian Dance No.6 in D Flat Major

やや馴染みのない曲だったが、軽快で茶目っ気が感じられる面白い曲だった。「ドン!ドン!」という音に合わせて腕を振り回す久石譲の姿も面白かった。指揮者と演奏者の息が本当に良かったというか、素晴らしいアンコールだった!

 

 

今日のコンサートは本当に駆け引きする演奏に夢中になってしまった。FOCが始まった時は、ブラームスの交響曲に目覚める前でしたが、今は久石譲のおかげでその真価をわかってくるようになった。FOCが持っている特有の音色とアクセント、リズム感、スピードなどなど… FOCが持っている魅力は数え切れないほど多かった。

ミニマル作品とクラシック作品をつなげて紹介するコンサートはどれほどか、またこうして完成度の高い曲を聞けて本当に幸せだった。次のFOCは7月にブラームスの最後の交響曲となる。久石譲のRecomposed楽曲はどのように披露するのか、そしてまだ発表されていない曲はどんな曲なのか。

久石譲が指揮したブラームス交響曲全曲を全集で会うその日を楽しみにしてこの文を終える。

 

2022年2月11日 tendo

出典:TENDOWORKS|히사이시조 – Future Orchestra Classics Vol.4 콘서트 리뷰https://tendowork.tistory.com/77

 

 

tendoさんは韓国で久石譲活動を広く知ってもらいたいとウェブサイトで発信しています。なので、韓国の人たちに現在進行系の久石譲を伝える「はじめに」などの導入部で丁寧に解説しています。こんなライブレポートがあるとうれしいですよね。距離感を越えてぐっと身近に感じられます。

ライヴ映像をことこまかに忘れてしまっても、数年後このレポートを見たらきっとその瞬間の映像が蘇ってくるだろうな、音楽が聴こえてくるだろうな、そんなふうに思います。もうね、SNSでライブ配信直前からスタンバイしてる様子(写真付き)とかを見るだけで、なんだかこっちまでそわそわワクワクうれしくなってきます。そういう海外ファンがもっと増えたらいいですね!

tendo(テンドウ)さんのサイト「TENDOWORKS」には久石譲カテゴリーがあります。そこに、直近の久石譲CD作品・ライブ配信・公式チャンネル特別配信をレビューしたものがたくさんあります。ぜひご覧ください。

https://tendowork.tistory.com/category/JoeHisaishi/page=1

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
訳しながら久石譲が使うキーワードを熟知しているなと感嘆しきり。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Info 2022/02/08 久石譲×日本センチュリー交響楽団「メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」から第4楽章」動画公開

Posted on 2022/02/08

2021年コンサート「久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会」より、「メンデルスゾーン:交響曲 第4番 から第4楽章」のライヴ動画が公開されました。ぜひご覧ください。 “Info 2022/02/08 久石譲×日本センチュリー交響楽団「メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」から第4楽章」動画公開” の続きを読む

Info. 2022/02/08 ジョン・ウィリアムズ、90歳の誕生日を祝い、小澤征爾、久石譲らからお祝いコメントが到着(Webニュースより)

Posted on 2022/02/08

ジョン・ウィリアムズの90歳の誕生日を祝い、小澤征爾、久石譲らからお祝いコメント到着 『帝国のマーチ』など珠玉の演奏シーンを1回限りのプレミア公開 “Info. 2022/02/08 ジョン・ウィリアムズ、90歳の誕生日を祝い、小澤征爾、久石譲らからお祝いコメントが到着(Webニュースより)” の続きを読む

Blog. 「Hundred ハンドレッド 1987年11月号」久石譲インタビュー内容

Posted on 2022/01/26

音楽雑誌「Hundred ハンドレッド 1987年11月号」に掲載された久石譲インタビューです。その次号から「連載 久石譲の今月の気になるアイツ」(全何回/不明)もスタートしていきます。

 

 

INTERVIEW

「映画音楽で一番気を使うのは、監督のテンポ感。それが僕にとっては生命です」
久石譲

あるときはキーボード・プレーヤー、またあるときは作曲家、編曲家。映画音楽、CM音楽、アーティストのアレンジと八面六臂の仕掛人。やがて、映画『となりのトトロ』で新しい世界を聴かせてくれる人。

 

ー久石さんのお仕事は大変多岐にわたっているわけですが、まず、映像に関係したお仕事についてお聞きしたいと思います。久石さんとラピュタの宮崎駿監督とは今や珠玉のコンビといわれていますが、宮崎さんと仕事をする醍醐味のようなものをお聞かせください。

久石:
実はアニメーションは宮崎さんの作品以外はあまりやっていないんです。というのは、やっぱり宮崎作品は単にアニメーションということでなく、映像として非常に優れていると思うわけなんです。実写ものでもなかなかあそこまでは表現しきれないんじゃないですか。ラピュタはいま香港で大ヒットしてるんですよ。空前のヒットらしいです。あの時の『君をのせて』という歌を中国語と英語で吹き込みたいというオファーが来てるんです。香港といえば「アチョー!」の映画ですけど、それを超えるヒットだそうで、ラピュタなんかはもう国際的な広がりの中で十分やっていける作品だと思うんです。単にアニメだとか映画だとかそういう区別を抜きにして、大変なもんですよね。

宮崎さんとのやり方というのはけっこう特殊で、映像にかかる前に必ずイメージアルバムっていうのをつくるんですよ。音楽の打ち合わせっていうのは、どうしても抽象的になっちゃうでしょ。ここでキレイなメロディーをとかいっても、こちらの考えてるキレイと監督さんの考えるキレイとは違ったりするでしょ。それを極力避けるということで、イメージアルバムがあれば、あのテーマをこの部分のテーマにしたらどう、とか、このシーンにはあのメロディーのアレンジでどうですか、とか、非常に具体的なやり方でつっ込んで話すんですよ。だから、ナウシカにしてもラピュタにしても、とってもレベル高くできたんじゃないかと思うんです。

 

ー映像に関係したお仕事で最も気を使うのはどういうところでしょうか。

久石:
監督のテンポ感です。カット割りとか、画面の演出のテンポ、編集のテンポですね。それが僕にとっては生命です。僕の場合、台本を読んだ段階で60~70%はできていて、あとラッシュを見に行くのは、監督のテンポをつかむため。

『ドン松五郎の大冒険』っていう正月映画なんですけど、その監督が後藤秀司さん。すごくコミュニケーションうまくとてまして、台本を読んでからラッシュ見に行って、ああ後藤監督のテンポってこんな感じだなあ、で、自分なりに曲を書き出す。そうしたら、ほとんどのシーンがピタリピタリと合っていっちゃうんですよ。おもしろいもんですよ。例えばここからどっかに歩いていくだけのシーンだって、監督によって演出が全然変わるでしょ。だけど、その監督の全体を見ていくと、だいたいここではこういうカット割りになるとかって読めてくるんですよ。

それは『漂流教室』の大林監督の時もそうだし『この愛の物語』の舛田監督の時もそうだし『Wの悲劇』『早春物語』の澤井監督の時もそうですね。みんなそれぞれのテンポ感が違うし、それをつかまえるのがコツというか、一番大変なところですね。

 

ー今度の『となりのトトロ』という映画は、どういうイメージなんでしょうか。

久石:
全体に日本の古きよき時代というか、空気が汚れてなくて、山があって川があって、子供たちは目いっぱい遊んでいる、というイメージでしょうね。ただ、時代考証的に何年頃とかいうんじゃなくて、もう宮崎ワールドですから、時代とかいうものには僕はあんまりこだわらないようにしてるんです。トトロの歌のアルバムはすごくいいと思いますよ。ものすごく時間もかけましたしね。本当に素直に大きな声で歌える歌をつくってくれっていう宮崎さんの注文ですから、だからすごく大変でしたよね。まず、そういう歌手がいないんですよ、基本的には。そういう人を捜すことから始めましたからね。でも、これは楽しみにしてください。

 

ー今度はもうひとつ別の仕事、アーティストのためのアレンジャーとしての意見をお聞かせください。

久石:
日本には優秀なアレンジャーって大勢いるんですよ。だから、わざわざそこで僕も頑張ることないなとか思ったりするんだけど、ただ、例えばちょっとマニアックな、ジェネシスっぽい音だとか、ああいったアプローチでアレンジできたらベストだなあ、と思いますね。あるいはホール&オーツのようなすごくスッキリしたアレンジだとか、あんまりゴチャゴチャしないでね、キッチリした仕事だったらやってもいいなと思ってますね。最近はだんだんそういう風にやれるようになってきたんで、それなりの成果が出せてるな、という気がちょっとしてます。ただ、自分でメロディー書いた時の方がいいものができますね。アレンジだけだと、そこで主張しちゃって、やりすぎるから、あまりよくない(笑)。

 

ー15秒の世界は、どうでしょう。

久石:
CMは瞬間瞬間を切りとっていく作業だから、メロディーで勝負ってことではないですよね。論理的に解釈するには時間が短かすぎるんです。映画ってある程度論理的に解釈できるんですね、このテーマはこう使ってとかね。CMは15秒、30秒ですからね。その短い時間に時代の先端の音を切りとって入れていかなければならない。そうすると、非常にサウンド主体にしていかなければいけなくなりますよね。切り売りですよね。

全体が15秒として、音楽を聞かせられるのは頭の7秒ですからね。7秒っていうと1小節か2小節しかないですからね。頭7秒で、エッ何これってふり返らせられるかどうかが勝負だと思ってるんですよ。おもしろいけど、大変ですね。

 

ーフェアライトという楽器について、お聞かせください。

久石:
とにかく民族音楽が死ぬほど好きなんですよ。フェアライトというのは、オーストラリア製のサンプリング・マシンなんですが、前だと民族楽器なんていうのはどこかまで行ってその楽器を手に入れてこないとその音は出せなかったわけですけど、これだとデジタルで記憶させて鍵盤でその音を弾けるわけです。機械合成音っていうのはあんまり好きじゃなくて、サンプリング・マシンというのを駆使していくことによって、新しいアコースティックな世界がつくれんじゃないかと思ってるわけです。音もすべて管理できているし、ニュアンスも出しやすいんですよね。意外と完全主義者でね、曖昧なものが入ってくるのは好きじゃなくて、そういう意味では今のスタイルが自分には一番あってると思ってます。

 

ーこれからの予定を聞かせてください。

久石:
去年から懸案のピアノのソロがありまして、去年の11月にロンドンで4曲録って来てそのままなんですよ。日本で残りを録ろうとしたら、音質が違いすぎてダメなんですよ。環境も違うし楽器の鳴りが違うし、しかたがないんで、11月か12月にまたあっちへ行って残りをやるつもりです。これは、僕がやってきた映画の音楽をできるだけシンプルに一人で弾くというやつなんですよ。もちろんナウシカも入ってるしラピュタも入ってるし『Wの悲劇』『早春物語』それから『漂流教室』まで全部入れて、久石譲メロディー集みたいなね、ものになると思うんですよ。どうしてもアレンジの仕事もしてますと、いろんな音を使って壮大なサウンドをつくるみたいなのが多いでしょ。それで、できるだけ原点に戻りたくて、ピアノ1本で、しかもメロディーをケバケバしく弾きまくらないで、サティのようにシンプルにしてアルバムをつくりたいということなんですね。そのためには、音質がね、飛びぬけて深い音のするところに行かないと。ロンドンのエアー・スタジオっていうところの1スタのピアノが世界で最高だと思うんですよ。どうしてもあそこで録りたいですね。

あと、藤原真理さんとう国際的なチェリストがいますが、この人と実は春先からLPつくってんです。これもすごいゼータクでね、ちょっと録っては2~3ヵ月おいてまた録って、で、ちょっと気に入らないから全部捨ててまた録り直ししてるというね、信じられないことしてんですけど、これはすごいですよ。ナウシカ組曲というチェロとピアノのためだけの作品をつくってる最中なんです。

やり始めるとね、すべて大変になっちゃいますね。

(「Hundred ハンドレッド 1987年11月号」より)

 

 

Blog. 「Jazz Life 別冊 ピアノプレイブック No.10」(1990)久石譲インタビュー内容

Posted on 2022/01/25

音楽雑誌「Jazz Life別冊 ピアノプレイブック No.10」(年4回発行/1990年10月31発行)に掲載された久石譲インタビューです。映画『タスマニア物語』のタイミングですが、これまでの経歴を掘り下げていくような内容になっています。

 

 

JOE HISAISHI INTERVIEW

『タスマニア物語』では、正統派の映画音楽をやりたかったんです。
久石譲

『タスマニア物語』を始め『風の谷のナウシカ』『魔女の宅急便』などの映画や、NHKテレビ『人体』の音楽を作曲した久石譲さん。いつも、とっても美しい音世界を感じさせてくれますが、実は学生時代から現代音楽を研究し、ミニマル・ミュージックをポップスの世界に導入した先駆者でもあるのです。そこで、久石さんの創作活動の一端を覗かせていただきました。その音楽のように、親しみやすくてピリッと辛口のスパイスが利いたインタヴューです。

 

特にアニメだからという意識はないんです

ー『風の谷のナウシカ』を始め、アニメの音楽をお書きになってらっしゃいますが、映像と結んだ音楽を始められたキッカケというのは?

久石:
やはり、小さい時から映画が好きだったということはありますね。非常に映画に親しい環境だった……たくさん見たということで。

ー印象に残っている映画というのは?

久石:
もう、すごい量を見ていますので特にこれと限定できないですよ。多すぎて…。高校とか大学の時に一番見ていましたので、その頃のというと、(フェデリコ)フェリーニとか(ミケランジェロ)アントニオーニとか、あの一連のヤツですね。『サテリコン』『王女メディア』、あのへんのは印象に残っていますね。

ー特にアニメについては?

久石:
う~ん、実はね、特にアニメというものを意識したことはないんですよ。僕にとっては、映像の延長というか…。

ー久石さんの創作活動の一部という位置づけで?

久石:
まったくそうです。たとえば、宮崎駿さん(『風の谷のナウシカ』などの監督)は、特にアニメの人とは思っていないんです。日本の有数な映画監督のひとりと捉えているんです。彼にとっての手段がアニメかもしれませんけど、僕にとっては実写のものと同じようにしかやっていない。当然アニメの方が現実の動きと違うから、その分だけ音楽が少し多めにしゃべる、ということはあっても、アニメだから…ということは思っていないですね。

 

学生時代は過激なことばかりやって

ー大学は国立音楽大学の作曲科ですよね?

久石:
ええ。

ーやはり小さい頃から音楽を?

久石:
4歳からヴァイオリンをやっていました。よく言われるんですけど、一番幸せなのは一回も他の職業を考えたことがない、ということ。

ーそんなに早く、音楽の道に進もうと思ったんですか?

久石:
4歳の時に音楽家になるって決めて、そのまんま来ていますから…。全然悩んだことがない(笑)。

ー学生時代はどんな音楽を聴いていましたか?

久石:
高校時代くらいからは現代音楽。ジョン・ケージとかシュトック・ハウゼンなど、そういうのばかり聴いていました。そのまま、超アヴァンギャルドの方に走って行ってしまいましたから…。ナウシカとはずいぶん違いますけどね(笑)。

ーアヴァンギャルドというと?

久石:
僕が学生時代やっていたのは、舞台に出て椅子をバーンと放り投げて帰って来るとか、ピアノの中にシンバルとか入れて、弾いてもまともな音にならないとか、過激なことばかりやっていました。

ー久石さんの作品には、ミニマル・ミュージックの手法などを取り入れられたものも多いですが、ミニマルはいつ頃から?

久石:
大学2年くらいかな? ある時に、テリー・ライリーの「ア・レインボウ・イン・カーヴド・エアー」というのに出会って、3日くらい寝込むくらいにショックだったんです。それまで、僕らはオーケストラのスコアをね、60段80段1個1個書いて緻密に作ってた時に、あの単純な「ア・レインボー~」を聴いて…。一瞬ロックかな?って思ったんだけど、後で最先端のアメリカの現代音楽だということがわかった瞬間に、雷に打たれたようなショックを受けたんです。

 

自分はジャンルに拘ることはない

ー今まで緻密なスコアを書いていたのが、ミニマルに変わるというと、かなりのご苦労が?

久石:
大変でした。4年くらいかかりましたね。ミニマルをやるためには、譜面を緻密に書いて”これが僕の作曲です”というんじゃ意味がないんですよ。環境から全部作って行かなければならない。それで、バンドを組んだりとか、みんなで練習して…。同じパターン延々とやるわけですから、1曲40分くらいかかる。ひとつのコンサート3曲で終わったり(笑)。そういう活動をしばらく続けていたら、僕は現代音楽の方から登って行ったんだけど、ロックの方から登って来て同じフィールドでやっている人もいっぱいいる、ということに気がついたんです。そのひとりが、マイク・オールドフィールド、あの「エクソシスト」の。それから、クラフトワークだとか、タンジェリン・ドリームだとかね。彼等もミニマル・ミュージックとテクノ…、エレクトロニクスをドッキングさせた音楽ですよね。その中でも一番ショックだったのがブライアン・イーノだったんです。

ー現代音楽とロックの両方からアプローチがあって…。

久石:
そう、それでその境がなくなっちゃったんです。僕は、その時ムクワジュというパーカッション・グループを作ったんです。高田みどりとか、日本の若手の打楽器奏者の主だった人を集めてね。そのバンドでコロムビアから『MKWAJU』というレコードを出したんです。アフリカの素材をそのまま使ってパターンを作ったものなんですけど、日本初のミニマル・ミュージックのアルバムなんですよ。ところが、それがフュージョンのジャンルで売れちゃったんです(笑)。

ーフュージョンのジャンルで!?

久石:
そう(笑)。その段階で僕が思ったことは、これ以上クラシック(の世界)っでやっていても意味がない、ということ。何故なら、リズムが違う。硬いんですね。そうした時にブライアン・イーノなどを聴いて、自分はジャンルに拘ることはないと思いました。それで、クラシックの活動をいっさいやめて、ポップスというフィールドに出て行ったんです。それまでもテレビ(の音楽)とかもやっていましたけど、基本的には現代音楽の作曲家がメインでしたから。

ーポップスの世界に出て来ていかがでしたか?

久石:
むしろ、ポップスというフィールドの方がアヴァンギャルドがいっぱいできましたね。最初に『インフォメーション』というアルバムを作ったんです。これは糸井重里さんの「おいしい生活」とドッキングして、”おいしい生活にはおいしい音楽を”というキャッチフレーズで、知的ポップスという形で出したんです。それをやった後が「ナウシカ」などの作品ですね。

 

僕のベースにはアヴァンギャルドが

ーミニマル・ミュージックは、ある意味ではリズムのおもしろさみたいなものもあると思うのですが?

久石:
そうですね。リズムにはすごく興味がありますね。ある時期はリズムしかなかった、みたいな…。僕はアフリカの音楽がすごく好きで研究して、結局ミニマルの人ってアフリカの音楽を研究しているんですよ。イーノも行ったし、スティーヴ・ライヒもそうですね。アフリカといってもガーナ。ガーナの音楽が一番複雑なんですよ。リズム構造が。

ーポリ・リズムみたいな?

久石:
ものすごいですよ。2/4と3/8、16/8とかいうリズムが同時進行…。

ーどっか一カ所で合って、あとはズレていくような?

久石:
そうそう。そういう音楽にのめりこんでいまして、その時は『アルファベット・シティ』というアルバムを出しました。これはすごかった。大アヴァンギャルド。メロディなしのリズムの洪水なんです。ニューヨークでトラックダウンしたんですけど、A&Mとセルロイド・レーベルの2社から契約したいと言ってきましたね。

ー久石さんのベースには、アヴァンギャルドの世界があるんですね?

久石:
ええ。おもしろい話がありまして、そのアルバム作っている時に、某レコード会社のアイドルをプロデュースすることになって、『アルファベット・シティ』を聴かせたんです。そうしたら、その仕事がなくなっちゃった(笑)。うちの〇〇が壊されるって(笑)。そのくらいアヴァンギャルドだったんです。

ーこれは、オフレコにしておきましょうね(笑)。

久石:
ハッハッハッ(笑)。もう時効ですよ(笑)。

 

もう1回やろうと思ってもできないですね

ーリズムという面では、たとえばナウシカの音楽にしてもかなり凝っているという印象を受けるのですが、映像とのドッキングという自由度の少ない分野でお作りになる難しさはありますか?

久石:
作曲家というのは、基本的に自分のアイデンティティというか、自分の個性とかスタイルをどう築いていくか、というのが使命なんです。しかし、それを無理やり作って行くというのは不自然ですよね。僕の場合は、学生時代からミニマル・ミュージックというものにどっぷり浸かっていたわけです。それを否定しようとするとウソになってしまうんです。だから、ポップスのフィールドでも、それが自分のベーシックにあって構わないと思うんです。

ーミニマルとかが?

久石:
そう。ただ、ポップスのフィールドで一番必要なのはメロディなんです。ミニマルやってた頃は、逆にメロディは必要なかったんですよ。ポップスの場合、そのメロディがキチッとしていれば、バックでどんなアヴァンギャルドやっても平気だし、という捉え方もあるわけです。それが、今の僕のスタイルなんですよ。映画音楽らしいものを作ろうとするより、自分なりの映画音楽を確立しようと思ってやればいいんです。

ーそういう意味でも、ナウシカの音楽というのは、印象的な美しいメロディと凝ったリズムの対比が素晴らしく、今までにない映画音楽という感じがしますが…。

久石:
そう感じていただければうれしいですね。作っている最中は、自由な音楽表現をしたつもりなんですけど、後で聴いてみると映画音楽としてオリジナリティがあるんじゃないかな? という気がしています。ある意味では、僕の中でメロディというものの存在が大きくなったのはナウシカからですね。

ーナウシカは、今まで持っていたリズムの鋭さとメロディが融合した作品?

久石:
そうかもしれませんねえ。ただ、具体的に言うとナウシカの段階では、映画音楽としてのバランスは決してよくないんですよ。つまり、打ち込みものでやった明確な部分と、ミニマルとオーケストラの部分が渾然一体していなくて、はっきり別れながら存在しているように自分では感じるんです。だから、まとまりという面では『ラピュタ』の方が好きなんです。

ーしかし、そういう部分を超えたエネルギーみたいなものを私は感じるのですが?

久石:
そういうエネルギーはあるかもしれませんね。もう1回やろうと思ってもできないですね。狙ってやれるものではないですから…。やはり、あの時期、あの時でしかできなかったことでしょうね。

 

今、ピアノに魅力を感じているんです

ーやはり、監督とのコミュニケーションも大切ですよね。

久石:
打ち合わせ徹夜が2日とか3日続いたり…。凄まじかったですよ。

ー場面場面の細かい部分まで?

久石:
やりますよ。こちらも折れないし。あそこまで緻密に(打ち合わせを)やる映画音楽はないかもしれないですね。

ー何秒と何コマ目まで音が入るとか?

久石:
ナウシカの時はそこまでやっていないですけど、ラピュタ以降はやってますね。今度の『タスマニア物語』などは、もっともっと凄まじいですよ。1秒の何十分の位置まで合わせてますので、時間がかかりました。実質半年はかかってますね。

ー『タスマニア物語』を作る時に考えたことは?

久石:
プロデューサーからの注文は、日本中が口ずさめるもの。僕が考えたのは、基本的にはやさしさと広がりですね。すごく贅沢な作り方をした音楽ですよ。シンセサイザーですむ部分をわざわざその上にオーケストラをかぶせたり。ちょっと聴いただけではわからないですけど、かなり凝っていますね。そういう意味で贅沢な作り方といえますよ。

ーそれでは最後に、今後の活動などを。

久石:
今、ピアノにすごく魅力を感じているんです。学生時代はあまり好きでなかったんですけど(笑)。最近ではハノンをまたさらったり(笑)。

ーホントに!?

久石:
45分以上はやりますね。珍しいでしょ?(笑)好きなんですよ。

ーまた、ピアノ・アルバムを出されるとか?

久石:
実は、その予定があるんです。まだプリプロダクションの段階なんですけど、これからイギリスで録音します。

ー発売は?

久石:
来年早々くらいじゃないかな? まだ、どの雑誌にも言っていない(笑)。

ー貴重な情報ありがとうございます(笑)。また、その時にお話を伺いたいと思っています。

(「Jazz Life別冊 ピアノプレイブック No.10」より)

 

 

Info. 2022/01/24 「JOE HISAISHI: LA LECCIÓN DE CINE」久石譲 ロングインタビュー動画公開

Posted on 2022/01/24

久石譲の最新ロングインタビューが海外ウェブサイトにて公開されました。2021年に行われた取材のようです。インタビューの経緯など詳細はわかりません。動画発信に向けてというよりも取材風景をそのまま公開するに至った、そんな雰囲気を感じます。117分に及ぶロングインタビューです。どうぞご覧ください。 “Info. 2022/01/24 「JOE HISAISHI: LA LECCIÓN DE CINE」久石譲 ロングインタビュー動画公開” の続きを読む

Blog. 「CM NOW 1988年 冬号 VOL.19」久石譲インタビュー内容

Posted on 2022/01/24

CM情報誌「CM NOW 1988年 冬号」に掲載された久石譲インタビューです。放映中のCMや出演俳優・アイドルにスポットを当てた雑誌らしい、当時CM音楽を数多く手がけ『α-BET-CITY』や『CURVED MUSIC』にその楽曲たちが収録された久石譲です。CM音楽にフォーカスした貴重な内容になっています。

ただし、話題に上がっている多くのCM楽曲は音源化されていないものもあります。

 

 

最初に画面を見た時のインパクトで音楽全体の70%が決まる
久石譲

リズムにこだわった、音楽作りをしています。

久石さんの手掛けたCM音楽は多く、カネボウ「ザナックス」シリーズ、ゴクミの「スコッチEG」シリーズ、日本生命「ジャスト&ビッグユー(菊池桃子)」、エスノラップの大韓航空、桂三枝がシリアスに決める「ミツカン味ぽん」など、いずれも話題になったものばかり。他にも「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「Wの悲劇」「漂流教室」「この愛の物語」他の話題の映画音楽や、菊池桃子・井上陽水らの曲のアレンジ等活動範囲は広い。

ー久石さんの音楽、特にCM音楽は、リズムに、特徴がありますね。

久石
「僕はずっと「ミニマル・ミュージック」をやっていた関係で、作曲法も自然にリズムにこだわるようになっていて、普通によくあるリズムでなく、特にCM音楽では「かつて誰も考えつかなかった」新しいリズムパターンを作ってやろうと思い、流行のリズムなどは、できるだけ意識して、使わないようにしてます。

ーCM音楽はどうやって作りますか?

久石
「できあがってきたフィルムを見て、そこに音楽をつけていくやり方が多いです。僕の場合は、画面を見た時のインパクトで、音も70%ぐらい決まります。最初見た時にこのCMは何を伝えようとしているのかということを読みとり、どういう音楽をつければ、それが見ているほうにうまく伝わるかを大事に考えます。

スタジオへ入ると大体5~6時間ぐらいで完成しますね。長くて30秒か60秒の短い時間の音楽を、長い時間試行錯誤して作っても良いものができるとは思わない。特に僕の場合、見る人を画面に引きつけるための、インパクトを大事にしています。インパクトという一瞬の力は、一瞬の集中力で作るべきだと、僕は思いますね。」

ーシンセサイザーをよく使われていますね。

久石
「そうですね。僕は今、フェアライトII、IIIという2台のサンプリング楽器を使ってますが、しょせん音素材にすぎないと思っています。自分の頭の中にある音をうまく伝えることができるので、シンセをよく使っているだけで、例えば自分のイメージにオーケストラが合うと思うと、そちらを使います。とにかく自分が頭の中に描いた音のイメージが最も重要な事だと思います。」

ーアイドルCMも、かなり手掛けてますね。

久石
「そうですね。後藤久美子さんは、最初見た時、すでに彼女が独特の世界を持っていることに驚きましたね。スコッチEGは、白い服と黒い服を着た2種類のCMがあって、普通音楽をつける時トーンと色の関係で、白い服には高いトーンのヴァイオリン、黒い服には低いトーンのチェロを組み合わせるんですが、彼女の持つ異質な雰囲気に合わせて、楽器を逆にしてみたら、成功しました。その時、普通のアイドルとは違うなあと感じました。

菊池桃子さんの場合は、また違ったキャラクターの持ち主で、遠くを見る眼差が印象的でした。その視点もニューヨークなどの大都会じゃなく、遠くのエスニックな世界を見ているようなイメージを受けました。それで、あのエスニックな感覚の音楽を作りました。」

 

過激に時代を超越するような音楽を作りたい。

ー一番印象深いCM音楽はなんでしょう。

久石
「カネボウの「ザナックス」のCMですね。これは、今までに3本シリーズで作っていて、全部メロディーは同じなんですけどアレンジを商品に応じて少しずつ変えています。最初にゆっくりとした部分があって、途中から、ティンパニが鋭角的なリズムを刻んでゆくという展開になっています。

このCM音楽の発想は、郷ひろみさんのかっこよさが、まずインパクトとしてあって、あとザナックスのロゴは、角張った文字で構成されてるんだけれど「その角張ったイメージを音で表現できないか」というディレクターの注文の2つの要素でできています。」

ーこれからの活動の予定は

久石
「実は夏頃からCMの仕事は減っています。映画等の大作モノを何本か並行して受けてしまって、時間がなかったのと、もう一つは、今のCMがあまりおもしろい状況ではなかったということです。

休みたいという理由は、現在のCM音楽の傾向は保守化してて商品も高級化志向が強く、車でも「ビッグオーナーカー」と呼ばれるものが出てきた。そういう商品に、過激な時代を超越するような音楽は必要なくてクラシックやきれいな音の方が好まれるんです。僕はそういう音楽は作りたくないので休んでいましたが、また少しずつ時代の流れも変わってきたという感じなので、11月から再び積極的にCMの仕事もやりだしています。

あと、チェリストの藤原真理さんと、「風の谷のナウシカ」の映画音楽をチェロとピアノ用に編曲した「ナウシカ組曲」やパブロ・カルザス作曲「鳥の歌」のピアノパートを作曲し直した作品を収めたレコードをリリースする予定です。クラシックのスタンダードを作ろうとする試みの第一弾です。」

(「CM NOW ’88 WINTER」より)

 

 

Info. 2022/04/30 「山形県合唱連盟創立70周年事業 合唱の祭典」久石譲委嘱作品 初演予定 【振替 1/23 Update!!】

Posted on 2020/03/22

2020年5月10日、山形県合唱連盟創立70周年事業「合唱の祭典」コンサートが開催されます。

世界で活躍する若手屈指の指揮者・山田和樹と東京混声合唱団を迎え、山形のアマチュア合唱団・オーケストラとともにつくりあげる合唱祭。東京混声合唱団の演奏のほか、この日のために久石譲が新たに制作した作品と組曲「蔵王」を出演者合同で演奏します。 “Info. 2022/04/30 「山形県合唱連盟創立70周年事業 合唱の祭典」久石譲委嘱作品 初演予定 【振替 1/23 Update!!】” の続きを読む

Blog. 「月刊 ログイン LOGiN 1985年5月号」久石譲インタビュー内容

Posted on 2022/01/23

雑誌「月刊 ログイン LOGiN 1985年5月号」に掲載された久石譲インタビューです。フェアライトCMIの話から『α-BET-CITY 』まで、当時の仕事環境がよくわかる内容になっています。

 

 

ミニマルからアニメ・映画音楽へ
180度方向転換

久石譲

日本には今、フェアライトCMIが15台あるらしい。その数少ないユーザーである作・編曲家、久石譲さん。そして可愛い声優、高橋美紀ちゃん。今月はこの2人にインタビューしました。

 

現代音楽+映画音楽=フェアライトCMI !?

久石譲という名前を知ったのは、アニメ映画『風の谷のナウシカ』のイメージアルバムだった。アニメビデオ『バース』にもその名前がクレジットされていた。その後、何かの雑誌を読んで、彼がフェアライトCMIの所有者であることを知った。

正直言って、そのときまで久石なる作曲家に大した興味があったわけじゃない。”きちんとしたアレンジをする人だな”、”またフェアライトの所有者がひとり増えたのか”、その程度にしか考えていなかったのだ。

ところが、4月号で紹介したイメージアルバム『吉祥天女』を聴いて、彼に対するイメージがすっかり変わってしまった。実にハードなサウンドなのだ。この手のLPにしては珍しいくらい、いたるところで”新しい音”が聴ける。たんに職業的アレンジャーなら、こんなことまでするはずがない。なにしろ、ふだんはイギシルのニュー・ウェイブにしか興味を示さない白川巴里子嬢まで「一度、会ってみたい」と騒ぎ出す始末。

とまあ、こんな経過を経て、久石さんと会うことになった。で、会う前に経歴ぐらい知っておかなくちゃ失礼だと思い、彼の事務所で用意してくれたプロフィールを読んで……ビックリ。5歳の頃からバイオリンを学び、国立音楽大学作曲科卒。大学在学中から現代音楽、それにミニマル・ミュージックの作曲・演奏活動を始め、1981年までその道一筋。

ところが1982年に大変身、アニメや映画音楽、歌謡曲を作曲するわ、フェアライトCMIを買うわ、挙げ句の果てに24チャンネル・マルチトラック・レコーダーまで買ってしまったらしい。

とても興味深いのだけれど、なんだか会うのがとてもコワイ……一番苦手なタイプの人間かもしれない。ミニマル対アニメ・映画音楽、歌謡曲、どう考えたって水と油。さらに『吉祥天女』のニュー・ウェイブっぽいサウンド…イメージがひとつに結びつかない。

「今、2枚目のソロアルバムを制作しています。昨日の夕方、録音し始めて、ついさっき終わったところなんですよ」

徹夜明けだというのに、嫌な顔もせずニコヤカに応対してくれた久石さん。まずは、ホッとひと安心だ。

 

超アバンギャルドはポップになる!?

5月に、徳間ジャパンから発売される2枚目のおソロアルバムのタイトルは”だまし絵”。そのなかの1曲を聴かせてもらった。

ムムム……、衝撃的!『吉祥天女』とも全く違う。今まで聴いた久石サウンドのなかでは一番過激だ。さまざまな音がひとかたまりになって、激しく突っ込んでくる──そんな感じなのだ。

「ほとんどノイズだらけで、まともな音はひとつも使ってないんですよ。アバンギャルドも行きすぎると、逆にポップになり得るんじゃないかと思っているんです」

だから中途半端に妥協するつもりはない。あくまでも過激に、しかもポップに、なのだ。一定のリズムを刻むのがドラム、という概念さえなくしてしまった曲もあるらしい。とにかく、最終的にどんなアルバムになるのか、今のところ久石さん自身も深く考えていないようだ。

「僕はもともとクラシックというか、現代音楽から来てるでしょ。するとどうしても、LPのコンセプトとか理論的なことを考えてしまう。それに対して自分がどこまでやれるか、ヘタをするとプログラムされた旅に出るみたいで面白くない。今回はアルバムの構成をいっさい考えずに、とにかく面白ければいいということで、まず14~15曲作り、最終的に10曲くらいにしぼろうと思ってます」

こうした録音の進め方自体、久石さんにとっては新しい試みなのだ。それにしても、現代音楽からいわゆるポップ・ミュージックに移ったのは何故だろう。

「現代音楽をやっていた頃、途中からミニマル・ミュージックをやるようになっていた。パターン音楽だから、ひとりで30~40分間、平気で弾いてるわけですよ。ところが当時のシンセサイザーは単音で、音色のプログラミングもできない。必然的にセットした音のままいじらない。シーケンサーも同じ。最初に組んだフレーズを最後まで使うしかない。タンジェリン・ドリームなんかと同じです。つまり、当時の最先端のロックとミニマルはものすごく近かったわけです」

で、どんどんロックの方へ近づき、リズム中心のサウンドでおしていたら、いつの間にかニュー・ウェイブの位置にいた、というわけらしい。リズム中心では、必然的に現代音楽の世界にはいられない。完全に現代音楽をやめてしまったのだ。とはいうものの、とてもクラシカルな面も久石さんは合わせ持っていて、その要素までを捨ててしまったわけではない。それが強く出たのが、『風の谷のナウシカ』のイメージアルバムだ。同時に、作家としていいメロディを書きたいという気持ちも常に持っている。

断片的に見たときにはそれぞれの仕事がバラバラに思えたが、こうして話を聞いてみると、ちゃんんとひとつにまとまった。「ストリングスのアレンジが好きだ」と言うのも、今はよくわかる。

頼まれたから引き受けるというのでは、決してない。”遊べない仕事”は、基本的に断るそうだ。遊べそうだと引き受けた仕事は、今年もかなりある。去年このスタジオで作ったレコードは、イメージアルバムや井上陽水のLPまで含めると14~15枚。今年はそれ以上の枚数になりそうだ。そのほかに、テレビドラマの音楽、CMなどもある。昼間は(株)ワンダーシティー社長としての事務処理もしなければならない。

「今、けっこう規則正しい生活をしてるんですよ。お昼ごろここにきて、5時まで事務、5時から夜中までがミュージシャンです(笑)」

今、自分から頼んででもやってみたい仕事があるという。大友克洋の『アキラ』のレコード化だ。久石さんをこれ以上忙しくさせるのはよくないかもしれないが、できることなら是非、実現してもらいたいと思う。

(「月刊 ログイン LOGiN 1985年5月号」より)