Blog. 「週刊アスキー 2010年11月9日号」「メロディフォニー」久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/06/01

雑誌「週刊アスキー 2010年11月9日号」に掲載された久石譲インタビューです。『Melodyphony メロディフォニー』(2010)を中心に2号連続インタビューになっています。

 

 

やっとこれでトータルな自分の音楽が完成した

「音楽的にすべてを表現」

久石:
「つくり終わって大変満足しています。やっとこれでトータルな自分の音楽が完成したなと。なぜかと言うと去年『ミニマリズム』という作家性の強い作品をつくって。その制作中から今回のようなエンタテインメントのメロディー中心の曲をオーケストラで録りたいと思っていたんです。だから2年がかりでひとつのコンセプトが完成したという感じ。自分の持っている内生的な部分と外に向かって人を楽しませたいという部分。その両面をこれで表現できたなと思います。やはりどちらかだけではダメなんですよね。」

-映像ありきの楽曲中心の選曲。サントラと今作の違いは?

久石:
「それはですね、映像の仕事の場合、基本的には監督にインスパイアされて、すごく一所懸命曲を書くわけです。ところがやはり映像の制約というものもある。『このシーンは3分です』だとか。だから映像の中のドラマ性に合わせなくてはいけなくて。映像と音楽合わせて100パーセント、もしくは音楽がちょっと足りないくらいがいいときもある。そこから解放されて音楽自体で表現、音楽だけで100に。つまり本来曲がもっている力を音楽的にすべて表現できる。そこが今作なんです。」

 

「意識下の別の自分と出会う」

-収録曲は”旅”や”新しい世界”的な印象もありますが。

久石:
「音楽を聴くこと自体が、その瞬間日常を離れるんですよね。音楽って楽しいし、いいわけでしょう、ふだんとは違ったレベルの体験ができるというか。意識下の別の自分と出会うような、そういう意味では”旅”なのかもしれないですよね。それに音楽が人間に与える力というのも確かにあるから、それを大事にしたいんですよ。」

-聴いていると思い出や映像が脳裏に浮かんできました。

久石:
「聴くことでいろんなことが思い浮かぶってことですね。それはすごく重要。メッセージを伝えるだけではなく、自分の意識下に触れることでイマジネーションが豊かになるから。それって音楽にとっても大切だし、人間にとっても大事ですよね。」

-「音と向き合え!」と言われているような気もしたんです。

久石:
「ははは(笑)。音を聴かせてしまう部分は確かにあるかもしれないです。どうしても自分の性格で細かくつくり込んでしまうので。心地よいBGMというよりはオーケストラでガツンと世界観はきますよね。聴きやすくしようと思いながらも、鳴っているか鳴ってないかの部分までつくっているし。でもそこもある意味聴きどころなのかもしれませんね。」

※次号に続く

(週刊アスキー 2010年11月9日号 より)

 

 

今週のプレイリスト
my favorite!

選曲:久石譲

今いちばん気に入っている曲。ラジオ番組をやっているのですが、そこでもよくかけている曲ですね。

1曲目
MICHEL CAMILO & TOMATITO『SPAIN』(アルバム「SPAIN」収録)
デュエットアルバムなのですが、これがすばらしい。アルバムを一緒につくろうと話してから6年くらい経つんです。未知数のフラメンコギタリストとの共演をいつか実現させたいと考えていて、そのきっかけになった1枚。

2曲目
ベルリン・フィル12人のチェリストたち『SOUTH AMERICAN GET AWAY』(アルバム「SOUTH AMERICAN GET WAY」収録)
ブラジル風バッハやバンドネオン風のピアソラまで全部入ってます。全曲いいですね。このアルバムを聴いてチェロのアンサンブルがいかにすばらしいかを認識し『The End of the World』という僕の曲に結晶させました。

3曲目
STING『ENGLISHMAN IN NEW YORK』(アルバム「FIELDS OF GOLD-THE BEST OF STING(1984-1994)収録)
彼のアルバムは大概いいですよね。映画音楽のエンドロールに流すとしたら彼以上にいい人はいない! 声を出しただけで人生の哀愁や歓びを出せるのは彼しかいない。それくらい好きなミュージシャンです。

(週刊アスキー 2010年11月9日号 より)

 

 

2号連続後半

 

 

久石譲 『ミニマリズム』

 

久石譲 『メロディフォニー』

 

 

 

Blog. 「キーボード・マガジン 1992年10月号」「Symphonic Best Selection」久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/05/31

音楽雑誌「キーボード・マガジン Keyboard Magazine 1992年10月号」に掲載された久石譲インタビューです。

 

 

不特定多数の聴ける音楽が出来ればいいなあと思います

5月に東京芸術劇場で行われた久石譲のコンサートが、ライヴ・アルバムとなって発売された。ソロ活動、映画音楽から、プロデュース活動まで幅広く活動を続けるキーボーディストの彼に、今作について等、いろいろと話を聞いてみた。

 

ーライヴをこういった形でアルバムにするというのは、ライヴを行った段階で決定していたんですか?

久石:
「完全決定ではないんですが、このライヴをやった時には、一応ライヴ盤も作ってみようという発想はあったんです。ただああいうクラシックの形態だと後で手直しがきかないんですよ。ですから、上がったもののクオリティによって出すか出さないかを最終的に決めようというスタンスはとってたんです。ただ、録るということに対する最大限の努力としてアビー・ロード・スタジオのチーフ・エンジニアのマイク・ジャレットを呼んだりとか、サウンドのクオリティが高いものになるよう万全は期したつもりです。」

 

ーもしかしたら、CD化されなかったかもしれないわけですね?

久石:
「そういうふうに言ってて、東芝の人もみんな真っ青になってました。上がりの悪いのは外に出せないというのもあったし、みんな戦々恐々としてましたね。」

 

ー無事作品になったわけですが、率直なところ出来に関してはどのくらい満足されていますか?

久石:
「従来のソロ・アルバムとはまったく違うタイプですから、まったく違うものとして満足しています。中にはミス・タッチもあれば、オケとずれたりとか、いろんな部分があるんですが、その時、お客さんがいてオーケストラがいて僕がいてという独特の熱気、そういうのはスタジオ作品ではちょっと味わえないものがあるんですね。それが出てる部分で僕は凄く満足しています。特に本当にその場でテンポが揺れて気合で行くような時が多いライヴは、その時のエモーショナルな部分っていうのがそのまま演奏に出てくるから、そういう意味で作品がうまく再現されているということです。」

 

ー録音しているのと、していないのでは緊張感が違いますか?

久石:
「出だしは意識しました。(ライヴは2日間なので)チャンスは2回しかありませんから。ところが意識すると優等生の発表会みたいになってしまって、無理をしなくなりますでしょ。だから、途中から意識しなくなりましたね、まあいいやって。」

 

ー今回のアルバムでは宮崎駿さんの作品のためにお書きになった曲がかなり演奏されていますが、久石さんが映画音楽を多く手掛けている理由は、映像に曲を付けるという行為自体に魅力があるからですか。それとも宮崎さんの作品に惹かれる部分が大きいからですか?

久石:
「映画という表現に惹かれていることの方がやはり大きいですね。映画自体が僕は大好きですから。元々インストゥルメンタル・ミュージックをやっているという性格上、映像とは非常に結び付きやすくなる可能性があるんですね。そういう意味でも、映像で表現したいというのが自分の中の半分ぐらいありますよ。もちろん宮崎さんだからというのもありますけど、そういう意味で言うと、大林さんだから、北野たけしさんだからというのもありますから。」

 

ー少女の繊細な心理を描く大林さんと、割と激しいものを描かれるたけしさんの作品用に音楽を使い分けるというのは難しくないですか?

久石:
「難しいよね。たけしさんが本の中で書いているんだよね。”おいら、女を肯定的に捉えたようなあんな「ふたり」みたいな映画は絶対認めない。女は恐いもんなのに、あんな映画撮る人の気持ちがわからない。きっと育ちがいいんだろう。ついでに言うと、ああいう映画をやりながらおいらの映画をやるなんて信じられない”って(笑)。あっ、僕のこと言ってるって、まずいなって思ったんですけどね。確かに正反対ですもんね。彼らからすると理解できないのかもしれないけれど。ただ、大林さんって非常に音楽的な教養が高い人で、僕のメロディ・ラインを欲しがる人なんですよ。映画全体を包みこむような音楽が欲しいという、思考がハリウッド映画の人ですから。かたや、たけしさんっていうのは、非常に尖った人ですから。今回の映画でもはっきり出てるんですが、大林さんの方は非常にメロディ作家で押して、たけしさんとやる時は、元ミニマル・ミュージック作家の顔で作ってます。たけしさんは感情移入の曲を嫌ってらしたし。」

 

ーリスナーには自分のどういった部分を聴いて欲しいと思いますか?

久石:
「基本的にクオリティの高い音楽をやっているから、音楽性を求める人に聴いて欲しいですよね。でももっと大事なのは、そういう音楽性の高い人にしかわからない音楽をやってるつもりはなくて、「あら、きれいなメロディだわ、ちょっとバックに流しながらお風呂に入っちゃおう」みたいなノリでもいいんですよ。それからその人がいろんな音楽を聴いて自分の音楽的レベルが上がると「このレコードこんなこともやってるんだ」というように、なおさら楽しいレコードが自分の理想なんですよ。不特定多数の聴ける音楽ができればいいなあと思います。」

(キーボード・マガジン 1992年10月号より)

 

 

久石譲『Symphonic Best Selection』

 

 

 

Blog. 「月刊ピアノ 2000年4月号」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/05/30

雑誌「月刊ピアノ 2000年4月号」に掲載された久石譲インタビューです。

 

 

北野(武)さんは、音楽抜きで映画を撮れたらサイコー、と思ってるんじゃないかな。

北野武、宮崎駿監督らの映画音楽の作曲で知られる久石譲は、その仕事をどう捉えているのだろうか。

一昨年から去年にかけて半年間、ピアノに向かうことをやめていたというインタビュー記事を読んだ。それはなぜだったのか。まずそのへんのことから聞いてみたい。

 

ピアノはスポーツだからまずはジムで体力づくり

ー昨年、ピアノを半年間弾かない時期があった、という記事を拝見したんですが?

久石:
「一昨年の秋のツアーを終えてから夏ごろまで、ピアノから遠ざかっていたんですよ。理由は簡単なんです。ツアーで全国10ヶ所くらいを回って、もうピアノはいいや、と思った。技術的にもうこれ以上うまくならないや、というような諦めもふくめて(笑)。一方で、もし続けるなら、いま以上のレベルにいかなければいけないという思いもあって、そのいずれかの決断の時期だったんです。そこで一度、ピアノから離れてみたほうがいい、と。そうこうしているうちに、昨年の秋、イギリスのバラネスク・カルテットとツアーを回ることになった。でも、やっぱりピアノは弾かないで、今度はジムばっかり通ってたんです(笑)。僕のピアノはというか、日本人のピアノの欠点だと思うんですけれど、リズムが弱いんですよ。ところが、彼らは弦楽四重奏でテクノ・ポップをやっちゃうようなバンドだから、圧倒的にリズムがいいんですね。彼らと1ヶ月間ツアーを回ったら、これは負ける、と思った。そこでジム(笑)。僕はピアノを弾くことはスポーツだと思っていたから、まったくスポーツと同じように、筋肉を鍛えて、身体からつくりなおしていったんです」

ーそれで、ツアーのほうはどうでしたか。

久石:
「恐れていたとおり、彼らは素晴らしかったですよ。初日から2、3日めまでは、我々日本チームのほうがいいんですよ。ところが、彼らは日々よくなる。馬力を出してくる。彼らが楽曲を理解して納得して弾いたとき、絶対に日本人はついていけない。僕はそのときに自分はどう対応するかと考えていて、一応、狙ったとおりにはできたんです。体力つけたのは正解でした」

ー狙ったとおりというのは、まずは馬力ですか。

久石:
「そう、まずは馬力でしょう。それから、リズム。ツアーではピアノはほんと打楽器だったんです。ドラムと同じ役割で、ずっとリズムをキープしつづける。16分音符で4分5分弾きつづけるというのは、すごく大変なんです。つっちゃって、つっちゃって。そのつっちゃっているときに、いきなり今度はメロディアスなものを弾かなきゃいけなかったり。チェロのニックは、腕は太いしすごくいい体格をしている。でも、自分たちの楽曲を1曲弾いたときには、もう手がつっちゃって弾けない。想像以上にきついラインナップでした。それについていくには、やっぱり一に体力でしょう」

ーバラネスク・カルテットとは新作アルバム『Shoot the Violist』でも共演なさってますよね。

久石:
「そう、彼らはほんとにすごいミュージシャンなんですよ。音楽するとは、音を出すというのはどういうことか、教わりました」

ーどういうことなんですか。

久石:
「譜面をなぞるような演奏をしていても、絶対に音楽にならないということ、なにも表現できないということが、よくわかった。多くの日本のミュージシャンたちは、このことを忘れてます。バラネスク・カルテットといっしょにやってみて、日本の演奏家と組むのはイヤだな、と正直思いました。自分の書いた曲を聴いて、あっ、こんなふうに自分の音を出してくれたのか、とその演奏家を尊敬したいし、僕自身も感動したいんですよ」

ー日本人にそれを求めるのはむずかしいですか。

久石:
「むずかしい、ほんとにむずかしい。テクニックのうまい人は山ほどいるんです。でも、じゃあ、なぜ自分はこの楽器をやって音楽をやっているのかという意識をちゃんともっている方は少ない。したがって、たぶんこの人と話したら1分で寝ちゃうだろうな、と思うような人が多すぎる(笑)。この人はこうやって生きてきて、それでこういう音が出てくるんだ、と思うと、いっしょにお酒を飲んでいても楽しいし、音楽の話もしたくなるわけです。ヨーヨー・マのインタビューを聞いていても、素晴らしいですもの。まず、人間として素晴らしい。海外では、14、5歳でジュリアード(音楽院)を卒業したなんていう人がけっこういます。彼らが偉いなと思うのは、そのあと一般の大学に入りなおして、哲学だったり美学だったり、人によっては経済だったり学んでいるんです。要するに、音楽しか知らないような狭い視野では人間としてダメだと、もっと広い知性をつけたり、もっと人間をみがかなくてはと。そうじゃないとダメなんですよ、ほんとは」

 

映画音楽に、映画を超えた壮大な広がりがあるのだろうか

ー映画音楽の作曲はどのようにして?

久石:
「映画というのは、基本的に監督のものなんです。僕はスタッフとして、自分はこう思うけれど、監督ならどうだろうというところで、決断をします」

ーすると、監督と意見がぶつかることはない?

久石:
「ないですよ。僕の場合、映画音楽では、わりと引いたところでしか仕事のスタンスをとってこなかったから。僕は、映画のなかの音楽に壮大な宇宙があるかというと、あんまりないような気がするんです。それはその監督の世界だから。だって『七人の侍』を見て、音楽が素晴らしかったとはいわないでしょう。音楽はやっぱりバックグラウンド。もちろん、そこに自分の世界を確立しなくちゃいけないし、少しはもっているつもりでいるけれど、そのこちらの世界で、たとえば今回の『Shoot the Violist』の音で、北野さんの映画を全部やろうとは思いませんよね。監督のいうことを全部聞いたうえで、それでも自分の世界が出るように、という努力の仕方なんです」

ー北野監督はどんなことをいってきますか。

久石:
「北野さんはね、さあ、映像を撮ったぞと、ポーンと僕のほうに預けて、さあ、音楽つけてみやがれ、っていうかんじですね、いつも。生易しいものじゃない。できたら音楽抜きで映画を撮れたら最高だな、と思ってると思いますよ。志ある監督はみんなそうです。また今回も(音楽に)助けられちゃったなあ、ってたまにいいますからね。それはお互いさまで、「Kids Return」にしても「HANA-BI」にしても、核になっている部分は、北野さんのアイディア。北野さんの映像に出会わなければ、ああいうメロディーは書かなかったわけですから、半分は北野さんの作曲だと思ってますよ」

ー今年のはじめに映画音楽家の佐藤勝さんが亡くなりましたね。

久石:
「佐藤さんは一生、映画音楽家でしたよね。僕のお師匠さんなんです。若いころは、佐藤先生の作品を何度も手伝いましたし」

ーそうだったんですか。佐藤さんは、黒澤明監督の遺稿を映画化した『雨あがる』の音楽を手がけて、自分のもっているものを全部出しちゃった、とおっしゃったそうですが、そんなふうに全部出しちゃったと思えることってあるんですか。

久石:
「ありますね。滅多にないけれど、ありますね」

ー『Shoot the Violist』はどうですか。

久石:
「ありましたね。それまで、どちらかというと、あくまで仕事としてソロアルバムをこなしていたところがあるんですよ。はい、北野さんの映画終わった、ソロアルバムの締め切りはここ、はい、次の映画……みたいな調子で。ところが、この『Shoot the Violist』については、さあ、次になにをやろうかじゃなくて、このアルバムのなかにしか次にいく解答はない、というかんじがしています」

ー最後に、お話が戻りますけれど、いまこうしてまたピアノを弾いてらっしゃるということは、もっと上にいこうと思われたわけですね?

久石:
「いきたい、と思いましたよね。自分のスタイルをつくらなければいけない時期って、どこかでくるから。あのツアーを、レコーディングをこなしてみて、はじめて見えたところはあります。ピアノをやめることはないなと、いまは確信しています」

(月刊ピアノ 2000年4月号より)

 

 

久石譲 『Shot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

Disc. 久石譲 『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』

 

 

 

Blog. 「Sakura Tour 2019 久石譲 スプリングコンサート Vol.1 ~仙台フィルとともに~」 コンサート・レポート

Posted on 2019/05/03

2019年春、久石譲の新しいコンサートシリーズ「Sakura Tour 久石譲スプリング・コンサート」が始動しました。日本各地その地域で活動するオーケストラとの共演、その土地ならではの会場。生活する人たちにとって親しみのある地元オーケストラと馴染みある場所は、ぐっと距離感が近く足を運びやすいコンサートだと思います。記念すべきVol.1は仙台フィルハーモニー管弦楽団と東北を巡るツアーです。

 

まずは、コンサート・プログラム(セットリスト)および当日会場にて配布されたコンサート・パンフレットより紐解いていきます。

 

 

Sakura Tour 2019
久石譲 スプリングコンサート Vol.1 ~仙台フィルとともに~

[公演期間]  
2019/04/27,29,30

[公演回数]
3公演
4/27 郡山・けんしん郡山文化センター 大ホール(郡山市民文化センター)
4/29 南陽・シェルターなんようホール(南陽市文化会館)
4/30 仙台・東京エレクトロンホール宮城

[編成]
指揮・ピアノ:久石 譲
管弦楽:仙台フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:西本幸弘

[曲目] 
久石譲:DA・MA・SHI・絵
久石譲 :Symphonic Suite “Castle in the Sky”/交響組曲『天空の城ラピュタ』
—-intermission—-
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

—-encore—-
ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
久石譲:Kiki’s Delivery Service

 

[参考作品]

久石譲 『ミニマリズム』 交響組曲「天空の城ラピュタ」久石譲 Symphonic Suite Castle in the Sky 久石譲 メロディフォニー

 

 

プログラムノート

久石譲の新しいコンサートシリーズが東北で始動!

ミニマル・ミュージックの旗手として、最先端の”現代の音楽”を生み出すとともに、数々の映画音楽によってその名を世界に轟かせ、常に第一線を走り続けている作曲家・久石譲。近年は指揮活動にも精力的だ。昨年はニューヨーク・カーネギーホールでの公演が大成功。また、長野市芸術館芸術監督として結成した、一流演奏家による「ナガノ・チェンバー・オーケストラ」とは、ベートーヴェンの交響曲全曲チクルスを展開。その作曲家目線で練り上げられた解釈は”まさにロックのようなベートーヴェン”と称賛され、レコード芸術特選盤を獲得するなど、久石の指揮者としての評価は一段と高まっている。

そんな久石が新たに始めるこの『Sakura Tour 久石譲スプリングコンサート』のキーワードは”地域に根付いた地方オーケストラとの共演”だ。地方の音楽文化の担い手であり、地域の人々の生活に潤いと癒しを与える”地方オーケストラ”。そんなオーケストラと共に、その活動エリアを巡るのが、今回のコンサートシリーズである。クラシックファンはもちろんのこと、「一度は生のオーケストラを聴いてみたい」というビギナーにとっても、久石が馴染みのオーケストラと共に開くこのコンサートを逃す手はない。

記念すべき一回目の舞台は東北。パートナーは仙台フィルハーモニア管弦楽団。2011年の東日本大震災以降、東北の人々に寄り添い、勇気づける活動を継続してきた。一方で内外の一流指揮者や演奏家との共演で示す高い演奏水準は、日本中の音楽ファンから熱い視線を浴びている。またSNSやコンサートの合間に見せるお茶目な一面が「オーケストラはハードルが高い」の概念を打ち破り、今や”日本一親しみやすいオーケストラ”として君臨しているといっても過言ではない。

今回のツアーでは、福島県郡山市、山形県南陽市、宮城県仙台市の3つの街で本公演を行う。それぞれに特徴の違うホールでの演奏は、まさに”一期一会”。前半は、久石の代名詞と言えるミニマル・ミュージックの作品と、映画音楽を題材にした交響組曲を演奏。後半には、クラシックの名曲・ブラームスの交響曲を披露する。

さらに本公演の合間には、東松島市でのアウトリーチ(地域貢献)コンサートも開催される。久石×仙台フィルのミニコンサートのほか、地元中学校の吹奏楽部も演奏をし、楽器体験も出来るという、まさに”夢の時間”。体育館を会場に、市民の皆さんが囲んで聴く生のオーケストラ! 新たな時代を迎えるこの季節に相応しい”出会い”が、きっと生まれるはずだ。

久石譲と仙台フィルが起こす”音楽の奇跡”。こんな待ち遠しい春はない!

 

 

ごあいさつ

2019年の春、桜が咲く季節に東北地方を周るコンサートができることをとても楽しみにしています。今回はブラームスの「交響曲第1番」と自作品を組み合わせたプログラムです。出来るだけこの季節にふさわしい楽曲を選んだつもりです。また、仙台フィルハーモニーとの共演は一年半前のカール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」を演奏して以来です。とても素晴らしいオーケストラなので、再び一緒に演奏できることも楽しみです。みなさんに楽しんでいただけると幸いです。

久石譲

 

DA・MA・SHI・絵

1985年の「α-BET-CITY」というアルバムで発表した作品です。その後、オーケストラに直して演奏していましたが、2009年の「Minima_Rhythm」というアルバムの時に、完全なオーケストラ作品として最終的な形にしました。基本的な手法はミニマル・ミュージックという短いフレーズを反復させる方法で出来ていますが、とても快活で前向きな曲になっています。ラストに向かう高揚感を楽しんでいただければ嬉しいです。

Symphonic Suite “Castle in the Sky” / 交響組曲『天空の城ラピュタ』

「天空の城ラピュタ」という映画のために作曲したものを、すべて聴き直し、スコアをもう一度見直して、交響組曲にふさわしい楽曲を選んで構成しました。約28分の組曲ができました。映画のストーリーを思い浮かべながら聴いてみるのもいいかと思います。

久石譲

 

*奥田佳道(音楽評論家)筆、「ブラームス 交響曲第1番ハ短調作品68」の楽曲解説も掲載されています。ここでは割愛しています。

 

(プログラムノート ~コンサート・パンフレットより)

 

公式サイト:Sakura Tour 2019 久石譲スプリング・コンサート
http://hisaishi-sakuratour.com/

公式ツイッター:hisaishi-sakuratour
https://twitter.com/hisaishi_sakura

 

 

 

ここからは個人的感想、コンサートレポートです。

 

平成最後の日、4月30日仙台公演に足を運びました。平成と令和という時代と時代のつなぎめに、久石譲コンサートを聴けたこと、久石譲音楽との出会い「天空の城ラピュタ」、クラシック音楽との出会い「ブラームス交響曲第1番」というプログラム。幸せで忘れられない大切な一日になりました。

 

DA・MA・SHI・絵
W.D.O.2018でも披露されたアプローチを軸にし、表現やアクセントの付け方もさらに精密に磨きのかかった演奏でした。ラストへの盛り上がりもパーカッションや低音を強調し興奮するグルーヴ感。

交響組曲『天空の城ラピュタ』
何よりも久石譲がオーケストラを楽しく煽るように、笑顔で踊っているような指揮姿が印象的でした。「The Castle of Time」パートから指揮棒をはなし、手をほぐしてから極上の「Innocent」久石譲ピアノへ。感動。

 

指揮台とピアノの位置。いつもは指揮台のななめ後ろにピアノ、右側から移動してそこにイスがある。今回は指揮台の真後ろにピアノ。左側から移動してそこにイスがある。ピアノへの移動が1回だからか?ステージの広さか?たぶんこれはちがうかなあと思っています。

弦12型。第1ヴァイオリン12人という人数を軸にして、第2ヴァイオリン10人、チェロ、、ヴィオラ、、コントラバス5人と少しずつ減っていきます。室内楽に近い小さい編成です。より中央寄りに固めたオーケストラにして音が分散しないように、そのためピアノの位置がそうなったのかなあ、と勝手に推測しています。

久石譲コンサートでは、過去大きい編成で弦24型(第1vn24人、第2vn20~22人、、)で、おそらく武道館コンサート(2008年)などをピークにしています。近年のW.D.O.コンサートでは弦20~22型くらいじゃないかと思います。

ちなみに後半のブラームスは弦14型。第1ヴァイオリン14人、第2ヴァイオリン12人、ヴィオラ10人、チェロ8人、コントラバス5人。久石譲作品のほうが編成が小さかったというのもおもしろいですね。細かいことをいうと、弦12~14型にしてはコントラバスの数は少し多いです。作曲家ならでは、久石譲ならでは、低音重視です。

いずれにしても、編成が小さいからといってこじんまりとするわけではなく、迫力満点です!よりソリッドでくっきりとした音像を求めた編成と対向配置です。CDでは聴こえなかった音が聴こえてくるおもしろさ。座っている場所、久石譲指揮の表現、オーケストラの特徴や楽器バランス、一期一会の熱気と迫真の演奏が、思いもよらない隠れていた音を運んできれくれる喜びは、コンサートだからこそ。

 

前半は黒の正装に、飛行石のような濃い蒼のシャツとチーフが印象的だった久石譲の衣装。後半は白シャツでクラシカルに。

 

ブラームス 交響曲第1番ハ短調作品68
第1楽章のコーダもきっちりくりかえし。第2楽章の前にオケ再度チューニングというめずらしい光景。これは決して第1楽章で音が乱れていたのではなく、あまりにもスタートから力強い勢いで奏したから、調整する必要があったのか、呼吸を整える必要があったのか。そのくらい迫真でした。そして甘美な第2楽章へ。ここでは美しいホルンとヴァイオリンのソロ、そしてふたつの音色と旋律が美しくからみあいます。第3楽章の軽やかさから、第4楽章の爆発力もすさまじい。どっしりと爽やかなブラームス交響曲第1番でした。

この公演の久石譲×仙台フィルのLive CD化を熱望するSNSも多かった。そのことが感想を表しているように思います。初めて聴いた人もさることながら、往年の演奏を聴いてきた人にもインパクトあったはずです。そのくらい固定概念を覆すような現代版ブラームスです。いつか久石譲版のブラームス交響曲全集が叶うといいですね。そして、もしコンサートで気に入った人、どんな演奏だったのは気になる人は……今は、アプローチで共感するところの多いパーヴォ・ヤルヴィ指揮版をぜひ聴いてみてください。かなり近い!と楽しめると思います。

 

 

アンコール。

ブラームス ハンガリー舞曲第5番
スローモーションからはじまるような冒頭に驚きながら、少しずつテンポも加速。山あり谷ありのジェットコースターのように大胆な緩急で魅せてくれます。観客の気持ちの盛り上がりもアップダウンを楽しみながら、一気に昇りつめます。

MC
カーテンコールをくり返すなか、なんと久石譲がマイクを持ってステージに戻ってきました。まさかしゃべるの?!と思うのは当然、近年コンサートでMCはありません(MFコンサート除く)。そこで語られたのは平成最後の日に寄せる思いでした。 ”13歳の女の子が新しい街で新しい生活をする「魔女の宅急便」、新しい時代を迎える、決して幸せなことばかりではないけれど、必ず希望はあるいつかよくなる、そしてそれは自分から掴みにいかないと手に入らない、応援するつもりもあり勇気をもってもらえたらとこの曲を選んだ。” という趣旨だったと思います。この言葉を聞けただけでも感無量です。

Kiki’s Delivery Service
W.D.O.2018で披露された最新版と同じ「魔女の宅急便」より。そして今年W.D.O.2019では交響組曲「魔女の宅急便」がいよいよ初演される予定です。この楽曲がどう盛り込まれるのか楽しみです。

 

MCから流れるように演奏されたクライマックスは、気がつけば観客総立ちスタンディングオベーション。ひとりひとりが平成最後の日であり新しい時代を迎えるカウントダウン。

 

久石譲にとっても平成最後のコンサート、ピアノ演奏の締めくくりは「Innocent ~天空の城ラピュタ」、希望と応援を乗せた「Kiki’s Delivery Service」で指揮棒を置く。終わって振り返れば、オーケストラも観客もみんなが笑顔、みんなが幸せな空間に包まれていました。僕はどうしてもこの日、久石さんへの平成の感謝を込めて、スタンディングオベーションと大きな拍手でステージを後にしてほしかった。そんな想いはみんな一緒だったんだ、この光景を刻めたことは心からうれしいです。

 

from 公式ツイッター

 

 

さてここからが本題!?

僕が一番残し記したいことです。「Sakura Tour 久石譲スプリングコンサート」始動とともに、公式ツイッターアカウントが開設されました。そこでは最新情報はもちろん、リハーサル風景や舞台裏、公演風景もしっかり発信してくれました。

これを見るだけでコンサートへの期待は高まり、集められたピース(つぶやき)とともにコンサートの感動は大きく膨らみ溢れ、とっておきの記念として一人一人の思い出になっていきます。コンサートがあることを知った、チケット買った、待ち遠しい、コンサート行った、感動した。もしこれが自分ひとりのなかだけで完結してしまったら…、と考えると雲泥の差だと思いませんか? チケットを手にしたその日から会場をあとに家に帰ってからも、ひとりの期待・興奮・感動に終わらない、見えない誰かとつながり共感することができる。

公式アカウントでは、主の情報発信はもちろん、仙台フィルハーモニー管弦楽団の奏者・関係者のツイートも拾い上げ(いいね・リツイート)、観客の感想も広めてくれるという、大変細やかな役回りもしてくれていました。いわばハブですね。桜でいったら大きな幹ですね、そこへいろいろな人の花をつける。

コンサートで演奏する人の声を見れることは、奏者や楽器に興味を持ち聴こえ方も変わってくるでしょうし、生活する街のオーケストラへの親近感も一気にまし、またコンサートへ行ってみようかなと距離感も近くなるはずです。SNSアカウントを持っていれば、フォローするというかたちでつながることができますし、普段どんな演奏活動をしているのかなど好奇心が音楽生活を豊かにします。コンサートの感動を奏者へ直接伝えることだってできます。

そのくらい価値のあることだと思い、いくつか紹介させてもらいます。Vol.2以降も公式ツイッターが引き継がれ楽しませてもらえることを期待しています。

 

 

🌸仙台市内でのリハーサルが始まりました。のっけからテンションの高い音が響いています。久石さんと仙台フィルは一年半ぶりの共演。その再会を喜ぶような、熱を帯びたリハーサル。ツアーにお越しの皆さま、どうぞご期待ください🌸

ビートとエッジの効いたブラームス。ベートーヴェンの交響曲チクルスを経てたどり着いた 久石さんのアプローチに、仙台フィルの皆さんが生命力ある演奏で応えます。作曲家の目線でスコアを読み解き、そして情熱的な音楽。スゴいブラームス🌸

そしてリハーサルは「ラピュタ」へ。コンサートの幕開けを飾る仙台フィル金管セクションのゴージャスな響き!首席トランペット森岡さんのファンファーレを合図に、仙台フィルのキラキラした音色が踊り出します!これはぜひ生で聴いていただきたーい🌸

 

from 公式ツイッター

 

久石譲さんのコンサートリハとても楽しい!!
やり慣れた曲でも久石さんというメガネを通して見つめると新しい発見の連続。

ジブリのイメージが強くて、それに興味を持つお客様も多いでしょうけど、まんまとブラームスの交響曲1番を楽しんで帰って欲しい!
明日コンサートだけどラピュタ見ようかな。

(以後2投稿つづきあり)

from 大野晃平 Kohei Ono @koheicor
https://twitter.com/koheicor/status/1121724840132485120

 

明日、いよいよ久石譲さんとのツアー始まります!
作曲家ならではの久石さんから醸し出されるブラームスのディレクションはリズムやフレーズを大事にした、流れのある音楽。オケのサウンドも引き締まってきたな😤
2楽章のソロも新しいアプローチで参ります。楽しみ☺

from yukihiro nishimoto @yukihironishimo
https://twitter.com/yukihironishimo/status/1121755553590415360

 

 

久石譲指揮[#久石譲スプリングツアー アウトリーチin東松島市]#仙台フィル は昨日から久石譲さんとスプリングツアーで東北ツアーを行っています。本日は宮城県・東松島市立宮野森小学校にてアウトリーチ開催中!まずはご来場の皆さんに、オーケストラの楽器を体験していただきました!

from 仙台フィルハーモニー管弦楽団【公式】/Sendai Philharmonic @sendaiphil
https://twitter.com/sendaiphil/status/1122384181311393793

 

震災以前からお付き合いが深かった東松島地域。震災後は復興コンサートで何度もお邪魔しました。そんな所縁の深い場所に久石譲さんとお邪魔できた事、また多くの東松島市民の皆様と交流し楽しい時間が持てた事に心から感謝です。音楽が益々皆様に寄り添いますように。明日は南陽市にお邪魔します。

from spo inspector @spo1973
https://twitter.com/spo1973/status/1122416877253193728

 

東松島市のコンサート、とても楽しかった。
久石譲さんが音楽教室の指揮と司会をやるなんて、まずないのではないでしょうか。
バンキシャで放送するかもって言ってましたよ。
僕は楽器体験コーナーと、コンサートの2ndホルン、そして楽器紹介のホルンDuoと金管五重奏を担当させていただきました。

from 大野晃平 Kohei Ono @koheicor
https://twitter.com/koheicor/status/1122405863539400704

 

🌸4/29南陽公演・4/30仙台公演、当日券について🌸
前売にて完売となっていた南陽公演と仙台公演ですが、機材・関係者席開放につき、当日券を両日とも14:15より販売いたします。若干枚数のため、販売状況につきましては、当日の会場にてご確認ください。

from 公式ツイッター

 

🌸南陽公演、終演しました。満員のお客さまの、たっっっっくさんの拍手‼︎ 今日も素敵なコンサートになりました。ありがとうございました😊 久石さんも笑顔満面でホールを後にされました。仙台フィルの皆さんもお疲れさまでした!

from 公式ツイッター
https://twitter.com/hisaishi_sakura/status/1122786504445546502

 

平成最後の1日。今日は東北の殿堂・東京エレクトロンホール仙台で、このツアーの締めくくりとなるコンサートを開きます。ご来場の皆さま、どうぞお気をつけてお運びください。そして、久石さんと仙台フィルの音楽を、ごゆるりとお楽しみください🌸

from 公式ツイッター

 

(´-`).。oO(#平成最後 のゲネプロなう😎

from 仙台フィルハーモニー管弦楽団【公式】/Sendai Philharmonic @sendaiphil
https://twitter.com/sendaiphil/status/1123065479558340608

 

(´-`).。oO(東京エレクトロンホール宮城の下手袖にて。#久石譲 さんにサインを書いていただいています😎

from 仙台フィルハーモニー管弦楽団【公式】/Sendai Philharmonic @sendaiphil
https://twitter.com/sendaiphil/status/1123086053118697473

 

東京エレクトロンホール仙台の舞台下手に、平成最後の日のメモリアル‼︎

from 公式ツイッター
https://twitter.com/hisaishi_sakura/status/1123086417486319616

 

#久石譲スプリングコンサート 仙台公演は前半が終了しました。前半は、久石譲作曲、交響組曲「天空の城ラピュタ」を、久石譲さんによる指揮で演奏しました。そして久石さんご自身がピアノも弾かれ、中の人はもう、感無量です!!🎹

from 仙台フィルハーモニー管弦楽団【公式】/Sendai Philharmonic @sendaiphil
https://twitter.com/sendaiphil/status/1123117429918277632

 

久石譲スプリングコンサートツアー全公演を終えました。久石さんの妥協の許さない音楽への熱い思いとポリシーに、仙台フィルは貴重な時間をいただきました🙇オーケストラは伝統を受け継ぎながらも、時代と共にアップデートしながら駆け抜けていかなくてはならないということを教えていただきました。

ブラ1を改めて新鮮に向き合えたのは大きな収穫、ソロも毎回緊張の極みだけどディレクションにのってのプレイは気持ちよかった。

(久石譲とのツーショット写真あり)

from yukihiro nishimoto @yukihironishimo
https://twitter.com/yukihironishimo/status/1123183220432850944

 

久石譲さんのツアーが本日で終了。作曲家として楽譜を眺めて生まれてくるブラームス像がすごくリアルで面白かった!名画が修復を重ねて結果、元の絵から遠くなることがあるように、ブラームスの名曲に伝統という名の手垢をなすりつけてないか?自問自答した数日間でした。

from 三宅 進 @miyakevc
https://twitter.com/miyakevc/status/1123217675155410944

 

作曲家目線でのブラームス。伝統とは何か…という問題提起はじめ、様々な発見があって、疲れたけど充実した一週間でした。

習慣的にやっているタメやルバートを一度取り払ってから、テンポ設定を考えてみたようです。慣れるまで結構大変でしたが非常に流れのある美しいブラームスでした。

from 西沢 澄博 @nishi_38
https://twitter.com/nishi_38/status/1123373732666306560

 

郡山、東松島、南陽、仙台…4日間に渡るツアーが無事に終了しました。心踊る久石さんの作品、新時代を迎えるに相応しいブラームス、仙台フィルの熱い音楽…そしてスタンディングオベーション‼︎ 素晴らしい時間を共にした皆さま、ありがとうございました🌸

from 公式ツイッター
https://twitter.com/hisaishi_sakura/status/1123160074719875075

 

久石さんの「熱」を、仙台フィルの皆さんが真正面から受け止めて、音楽に昇華してきた一週間。幸せな日々…。楽団員の皆さんも、裏方の方々も、カッコ良かったなぁ。また久石さんと仙台フィルの演奏を聴きたい、って思うのは、裏の人だけではないはず‼︎ ですよね?

from 公式ツイッター

 

今回のツアーでのアンコールは…

♪ ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番
♪ 久石譲:Kiki’s Delivery Service(魔女の宅急便)

…の2曲でした。

from 公式ツイッター
https://twitter.com/hisaishi_sakura/status/1123175433917218817

 

 

⚡️ “Sakura Tour 2019 久石譲スプリングコンサート Vol.1 ~仙台フィルとともに~”

平成最後の久石さんのコンサートということで、平成31年4月27日(土)のけんしん郡山文化センターと、平成31年4月30日(火・休)の東京エレクトロンホール宮城へ行ってきました。その時のツイートをモーメントとしてまとめたので、行けなかった方にも少しでもコンサートの雰囲気を楽しんでもらえればなと思います。

from ショー@Sho’s PROJECT @shosproject
https://twitter.com/i/moments/1123437475286933509


久石譲ファンの大先輩です(^^) とても楽しいレポートになっています。MCコーナーも詳しく参考になります。久石さんの貴重なサインも! 仙台フィルの方との興奮冷めやらぬ終演後の感想やりとりも。アルバムのようにきれいにまとめられたモーメントです♪

 

 

紹介したSNSは、あくまでも僕がキャッチしていたものからの抜粋です。公式ツイッターでは、たくさんのツイート・リツイートをはじめ、観客みなさんのコンサート感想ツイートにもたくさんの「いいね」が記録されています。ぜひゆっくりご覧ください。

 

久石譲スプリングコンサート【公式】ツイッター
https://twitter.com/hisaishi_sakura

 

 

アウトリーチコンサートの当日風景やプログラムはこちらでご紹介しています。

 

 

 

 

桜散ったばかりの東北に、再びぱっと明るい桜を咲かせた「Sakura Tour 2019 久石譲スプリングコンサート Vol.1 ~仙台フィルとともに~」。来年以降、どの土地で、どんな桜が満開になるのか、楽しみですね。

 

 

 

Blog. 「NHKウィークリーステラ 2009年12/5~12/11号」久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/04/25

テレビ情報誌「NHKウィークリーステラ 2009年12/5~12/11号」に収録された久石譲インタビューです。NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」についての内容になっています。

 

 

純粋な気持ちをシンプルなメロディーにのせて
音楽 久石譲 インタビュー

スペシャルドラマ〈坂の上の雲〉の音楽を手がけているのは日本を代表する作曲家・久石譲。念願だったという作品に取り組み希望に満ちた旋律を作り上げた彼に、音楽に込めた思いを聞いた。

 

作品にある純朴さを表現

宮崎駿監督の『もののけ姫』の音楽を担当すると決まったころ、宮崎さんと司馬遼太郎さんの対談が行われることになったんです。それで「宮崎さんが傾倒する司馬さんの作品って、どんなものなんだろう」と思い、1年くらいかけて司馬さんの全集を読みました。そのとき、いちばん自分の中に響いた作品が『坂の上の雲』だったんです。「いつか、この音楽を作ってみたい」と思っていたところ、今回、依頼をいただいたので、すごくうれしかったですね。

ドラマの脚本を読んで感じたのは、とにかく”ピュア”ということでした。長かった鎖国が解かれて、近代的な体制の諸外国に「追いつけ、追い越せ」という目標をもって生きる純粋な情熱。自分の人生を世の中を変えることに向ける姿が、とても印象に残りました。今の日本が先進国になって、もう失ってしまっている純朴さ、いちずさみたいなものがあるんですね。それを音楽でどう表現するのかを、すごく考えました。

メインテーマの「Stand Alone」は、第1回から4回までの演出を担当した柴田岳志ディレクターと打ち合わせをしているとき、「スコットランド民謡みたいな、シンプルな曲が1曲あるといいよね」という話が出て、そこから誕生した曲です。キーワードにしたのは”凛として立つ”ということ。人と人が寄り添いながら生きているのもすばらしいことなのですが、最後は1人ですくっと立つことができる、それが人間としてすごく大事なことではないかと思ったのです。それは〈坂の上の雲〉の時代だけじゃなく、今の時代にも共通して言えることではないでしょうか。

明治の人たちと重なるような音楽をイメージしたとき、明治時代に日本がイギリスから学んだものを考えました。実は私たちが学校で習う西洋音楽は、イギリス民謡から始まっているものが多いんです。たとえば、「蛍の光」や「ロンドンデリーの歌」。だから僕の音楽にも、スコットランド民謡やアイルランド民謡といったものがベースにある。個人的なことですが『風の谷のナウシカ』の音楽も、海外では「イギリス的なにおいがする」とすごく言われたので。その根底にあるのは、やはり明治からの音楽教育なんですよ。そういう自分の思いと、東洋的な5音階のやり方と、イギリス民謡のような素朴な音と、そういうものを自分の中でミックスしていく……。その過程を音楽でやりたいと思いました。

ですから、いわゆる劇音楽という使い方はしないで、僕が手がけていたミニマルミュージックをベースにした音楽で。泣かせようとか、盛り上げようとかではなく、役者さんたちの演技を信じて、ちょっと引いた感じで、そのうえで、できるだけシンフォニックに作りました。

(「NHKウィークリーステラ 2009年12/5~12/11号」より)

 

 

久石譲 『坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 1 』

 

 

 

Blog. 「レコード芸術 2019年3月号」ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」 久石譲 NCO 特選盤・評

Posted on 2019/04/03

クラシック音楽誌「レコード芸術 2019年3月号 Vol.68 No.822」、新譜月報コーナーに『ベートーヴェン:交響曲 第9番「合唱」 / 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ』が掲載されました。特選盤、同じく本号で取り上げられたもう一枚の特選盤《第九》と比較するように評されています。

 

毎月多くのCD盤が発売され、そのほぼすべてを網羅紹介している誌「レコード芸術」。100枚以上の新譜から特選盤に選ばれるのは計20枚前後。ジャンルごと(交響曲・管弦楽曲・協奏曲など)で各2~3枚程度。指揮者・オーケストラ・演奏者、日本だけではない世界各国の音楽家たちが盤に記録したもののなかから選ばれています。

わからない専門用語や、日常的ではない表現用語も多く、置いてけぼりになりそうですが、そこは少しずつ学べばいいとして。ファッションや車に詳しくない人が、なにがすごいかわからずただただパラパラめくるカタログのような感覚、これまた好きなジャンル・作曲家・演奏家を見つけて、そこから少しずつ興味や理解を深めればいいとして。

音楽に精通している専門家・評論家たちが、どういうものさしで見ているのか、どういう位置づけで捉えたのか、ここが知れるだけでも視点が広がります。すべていいことばかりを評しているわけでもありません。あるディスク評には「このディスクの立ち位置や狙いが不明/奏者にかなり癖がある/独り相撲の感」など具体的に箇所を指摘しながら厳しく記されています。

それは跳ね返って、中途半端では意味がない明快なコンセプトを貫いた久石譲版であること、やもするとイロモノととられる危惧を振り切りよい痛快な表現で魅せた久石譲版であること、指揮者とオーケストラが目指したアプローチが結実した久石譲版であること。知識と耳の富んだ人たちにも認められた抜きん出たディスクであること。「レコード芸術」の久石譲・NCO 計4CD盤 評は、新しい発見と新しい聴き方を案内してくれます。

 

 

新譜月評

THE RECORD GEIJUTSU 特選盤
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》/ジョヴァンニ・アントニーニ指揮 バーゼル室内管弦楽団 他

 

推薦 金子建志
偶然にも久石と同月にリリースされたことで、攻撃的解釈を競う形になった。第3楽章の4番ホルンのソロ [5分59秒~] がゲシュトプフを誇示することでも、ピリオド志向は鮮明。ベーレンライター版+超快速も共通だが、第1楽章 [アントニーニ13分27秒・久石13分00秒]・第2楽章 [A 13分20秒・H 12分40秒]・第3楽章 [A 11分59秒・H 11分07秒]・第4楽章 [A 22分49秒・H 21分46秒] と、全楽章で久石が速いのはモダンとの機能性の差か。

当盤で最も激辛な印象を与える第2楽章では、イデー・フィクス的に繰り返される付点リズムの後半を極端に消去。3小節周期でリズム主題を刻印するティンパニ [2分51秒~] も同様で、これほどfp的に落とすとリズムの輪郭がぼやけてしまうが、これは撥の選択や、叩く位置も奏者と吟味した結果のデフォルメと見た。トリオが久石よりも遅いのは [7分14秒] からのナチュラル・ホルンの8分音符の操作を考慮したのだろう。

同じリコーダー奏者から指揮者に転じたブリュッヘンが、晩年クナッパーツブッシュ的な微速前進に行き着いたのに対し、昨年の読売日本交響楽団への客演でも披露したアントニーニの笛は名技主義の典型。頭の回転の速さが、そのまま演奏に映し出されるのは棒を振っても同じで、第1楽章はそれが全ての楽器のフレージングや奏法にまで反映している。第4楽章のトルコ行進曲のファゴットは、速さに加え [9分19秒~] の裏拍強調が実にコミカルだ。

 

推薦 満津岡信育
当コンビによるベートーヴェンの交響曲全集の完結編。セッション録音の良さを感じ取ることができる、すばらしい《第9》だ。小編成のモダン・オーケストラによるピリオド・スタイルの演奏であり、作曲者本人によるメトロノームの数字に近づける努力が払われている。従って、第1楽章からテンポ設定は、きわめて速く、しかも、タメをつくらずに進んでいくが、各フレーズの流れが明瞭になる分、鮮やかな推進力が生み出されている。また、ライナー・ノーツで木幡一誠氏も指摘しているように、レガート、ノン・レガート、ポルタート(メゾ・スタッカート)の弾き分けを徹底的に突き詰めることによって、より直截な響きが形づくられ、刻々と表情を変えていくのが圧巻だ。もちろん、そこには、指揮者であるアントニーニの卓越した和声感が大きな力となっていることは間違いない。第2楽章も、テンポは速いが、バタつくことはなく、明快な表情と俊敏な諧謔性が見事に立ちあらわれている。

第3楽章が、12分を切る演奏時間では、せかせかと追い立てられることになるのではないかという心配も無用である。シンコペーションのリズムが浮き彫りになり、前打音が巧みに処理されるのをはじめ、見事な和声感の移ろいを通して、展開と変奏が精妙に描き出されていく。終楽章も、ものものしさは一掃され、各楽器の語り口が活かされ、そして、歌詞のシラブルを大切にした声楽陣とオーケストラの親和力もきわめて高い。

 

[録音評] 石田善之
それぞれが明快にピック・アップされ、全体的に濁りがなく解像力が高い。ただ、木管や第4楽章のチェロの旋律は前方に位置し、声楽のソロも最前列にある。全体に奥行きよりも左右へ広がり、バリトンは左、ソプラノは右という具合に十分な間隔で聴かせるが、小型再生システムでは不自然さはないかもしれない。快適な長めのホール・トーンでまとめられている。

 

 

THE RECORD GEIJUTSU 特選盤
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》/久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 他

 

推薦 金子建志
「ベートーヴェンはロックだ」という主張は全くそのとおりだが、《第9》はブルックナーやマーラーの交響曲、ワーグナーの楽劇に代表される「重厚壮大なロマン主義の原点」として再現する解釈が主流だった。久石はここでも、快速と、リズムの裏拍の強調(ジャズに通ずるオフ・ビート)で、従来のゲルマン的なロマンティシズムに風穴をあける。よく似た凝縮タイプの解釈で競うことになったアントニーニが「バロックのオーケストラが近未来に挑んだ」とするなら、こちらは現代作曲家としての構造分析を基本に「モダニズムの原点としてのDNAを探ろうとした」と評すべきか。

両者の違いが鮮明なのが、32分音符の刻みを連打する第1楽章再現部のティンパニ。アントニーニが細かいトレモロ処理に徹して、主題のアウフタクトの刻印に必ずしも拘らないのに対し、久石は [6分57秒~] のように32分音符の音価を明示させ、主題としてのアウフタクトを強打させる。スケルツォの主題も常にリズムが克明で、完全な構造重視。リズム成分を消して小節線だけを示すアントニーニの修辞的な遊びは、一切おこらない。第4楽章の低弦による「歓喜の主題」をスコアどおり区切りを入れずに開始させるアントニーニに対し、久石は [2分27秒] のように、完全に構造的な区切りを入れてからスタート。過激な前傾姿勢を保ちながら、楷書体のツボはしっかりと押さえている。

 

推薦 満津岡信育
「ロックのようなベートーヴェン」というコンセプトは、この声楽入りの《第9》にも貫かれている。弦楽セクションの編成は、別項のアントニーニ盤より、第2ヴァイオリン以外は、1名ずつ少ないようだ。しかし、演奏時間は、アントニーニ盤よりもさらに短く、全曲で計58分30秒台という超快速テンポになっている。アントニーニのようにピリオド・アプローチの具体的実践を徹底しているというわけではないが、アーティキュレーションをきちんと整えた上で、各声部を明瞭に打ち出しているのが特徴的。伴奏音型や内声部で同じような音型を繰り返す際に、ノリのいいリフのように処理されている箇所もあり、猛烈な推進力が生み出されている。第2楽章も、テンションが高く、ティンパニだけでなく、各楽器がオクターヴ下行する際にエネルギーが漲り、ダンス音楽のような気分にあふれている。中間部の軽やかなステップも印象的だ。

第3楽章もテンポ設定こそ速いが、豊かな歌心を感じ取ることができる。また、このテンポ設定だと、ヴァイオリンの細かなパッセージがふわりと舞い上がるように響くのが耳に残った。終楽章も、レチタティーヴォの語りかけるようなアーティキュレーションをはじめ、開放感に富み、祝祭的な気分にあふれている。舞台上手から響いてくる打楽器陣も効果的。合唱はやや音圧に乏しいが、このテンポ設定では仕方がないだろう。バリトンの明るい歌声をはじめ、独唱陣も健闘している。

 

[録音評] 石田善之
2018年7月の長野市芸術館でのライヴだが聴衆の気配やノイズ、終演後の拍手も整理されている。十分な広がりと奥行きを聴かせ、オーケストラと合唱が一体となった第4楽章のスケールの大きな響き感はほどよいホール・トーンを交えて豊か。4人のソリストはステージの中央に位置しほどよい張り出しとバランスで歌詞も明瞭。ただ合唱の歌詞の明瞭さはやや薄れる。

(レコード芸術 2019年3月号 Vol.68 No.822)

 

 

 

 

また前月号の「レコード芸術 2019年2月号 Vol.68 No.821」では、いち早く「先取り!最新盤レヴュー」コーナーでも紹介されました。

 

 

先取り!最新盤レヴュー
来月号「新譜月評」に登場するディスクから注目の海外盤、復刻・再発売盤まで、要チェック・アイテムの数々を先行紹介!!

 

ベートーヴェンはロックだ!
祝祭と解放の新時代の名演

久石譲指揮ナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェン・ツィクルス、完結!

言うは易し行うは難し ロック・テイストの実現

年明けにすさまじい《第9》が届いた。

誰も知らぬ者のない作曲家である久石譲が呼びかけて結成し現在も音楽監督を務めるナガノ・チェンバー・オーケストラのライヴによるベートーヴェン・シリーズの第4弾CDで、第1番と《英雄》、第2番と第5番、第7番と第8番と来てついに《第9》。演奏会としては7回目にして完結編だった。

久石は以前から積極的な指揮活動を行っており、録音も多い。そんな中、長野市芸術館を本拠地として結成されたナガノ・チェンバー・オーケストラを指揮して発表してきたベートーヴェンは、久石の鮮烈なベートーヴェン観と、それを完璧に具現化するオーケストラの能力の高さが見事に合致し、まさに「21世紀の新しいベートーヴェン」を形作っている。

「ベートーヴェンはロックだ!」というのが久石の視点。第1弾CDに彼が寄せた序文によると「例えればロックのようにリズムをベースにしたアプローチで誰にでも聴きやすく、それでいて現代の視点、解釈でおおくりすることが」できるという。それは言うは易しいが、実際に既存のオーケストラに徹底的に持ち込むことは(客演という形であればなおさら)難しいだろう。しかし、長野の地において彼自身の呼びかけに応え、彼の作りたい音楽に全身全霊を傾けて協力する若い世代を代表する演奏家たちの強い意志と高い技術、そして細大漏らさず記録する名録音によって、まさにロック・テイストのベートーヴェンが出来上がったのだ。

綿密なリハーサルによる緻密なディティール

これまで聴いてきた彼らのベートーヴェンは、まさにリズミックで推進力に富み、高いテンションを維持する。それは《英雄》の葬送行進曲であってもそうで、それでいて切迫感や深刻さも存分に伝わる稀有なものだった。そして全曲の最後に訪れるカタルシスはすさまじく、おそらくは客席は興奮の坩堝だろうと思われる。

今回の《第9》もまさに祝祭的で、踊り狂うようなスケルツォやフィナーレの全員が憑かれたように叫ぶ明るさと活気(しかし一瞬たりとも粗くならない)はとても新鮮だ。また第3楽章全体を覆う静けさ(テンポはベートーヴェンの指示通り)、メロディ・ラインのアーチ状の歌やヴァイオリンのアラベスクの美しさ、第4楽章の低弦によるレチタティーヴォの明確で語るようなアーティキュレーション、同楽章のメイン・テーマ提示でのコントラバス主体のバランスなど、非常に綿密なリハーサルが行われたことが容易に想像できる作り込み方だ。

独唱陣、特にバリトンの声が非常に若く軽いのも特徴的。そのため初めはなんとなく肩透かしを食ったような気分になるが、若い声による鮮やかで明快な歌は、全体の音楽作りの方向性とフィットしている。公募を含むアマチュアを主体とした合唱陣も非常にクリアな発音で決して怒鳴らず、明快さと開放感を重視して明るく歌い切る。

決して少ないとは言えない指揮経験と明確なコンセプトを持つ指揮者と、彼に全幅の信頼をおいて自らを解放するオーケストラと合唱。そのすべてがうまく噛み合った新しい名演の誕生を喜びたい。

西村祐

(レコード芸術 2019年2月号 Vol.68 No.821 より)

 

 

 

 

 

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

今日にふさわしい楽聖像を模索し伝統に一石を投じる

「ベートーヴェンはロックだ」をスローガンに交響曲全曲演奏に挑んだ久石とナガノ・チェンバー・オーケストラのチクルス完結編。指揮者の強烈な個性と俊英たちが奏でる音楽は、崇高さを際立たせるよりは今日にふさわしい楽聖像を模索するもの。ダイナミックな表現は、ピリオド・アプローチとも異なる新時代の切り口による。声楽についてはさらに望みたいところもあるが、 久石の実験がベートーヴェン解釈の伝統に一石を投じたことは間違いない。

(モーストリー・クラシック 2019年4月号より)

 

 

 

New Release Selection

ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

久石譲が、音楽監督を務めるナガノ・チェンバー・オーケストラ(NCO)と、ついに「第九」をリリースした。腕のいい若手を結集したNCOの機能性、絞り込んだ編成だからこその透明度、生き生きとしたアーティキュレーションなど美質は多々あるが、最大の魅力は全編を貫いている疾走感。ピリオド・アプローチとも似て非なるこのリズム感・躍動感が、「ロックの先をいくベートーヴェン」という現代的コンセプトを体現している。裾野の広い聴衆を持つ久石だが、本作はこれからクラシックに親しみたいというファンのみならず、コア層にも訴えるクオリティとアクチュアリティを持っている。

(ぶらあぼ 2019年3月号より)

 

 

 

 

 

 

 

 

Blog. 「レコード芸術 2018年9月号」ベートーヴェン:交響曲第7番&第8番 久石譲 NCO 特選盤・評

Posted on 2019/04/03

クラシック音楽誌「レコード芸術 2018年9月号 Vol.67 No.816」、新譜月報コーナーに『ベートーヴェン:交響曲 第7番 & 第8番 / 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ』が掲載されました。特選盤、楽器編成について、ヴァイオリンの両翼配置、舞台下手奥の低弦コントラバスという古典配置(対向配置)、その意図や効果、久石譲版のこだわりを浮き立たせる評になっています。

 

 

新譜月評

THE RECORD GEIJUTSU 特選盤
ベートーヴェン:交響曲第7番・第8番 /久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ

 

推薦 金子建志
左に3人のコントラバス、8人ずつのヴァイオリンを対向に置いた少数精鋭の集団を「ベートーヴェンはロック」と表明している久石が振ればこうなる、という予想どおりのライヴ。特に、ジャズ的オフビートの先駆になる第7番は臨界を越えている。その典型が第4楽章冒頭のリズム主題。16分音符をここまで鋭く詰めるには、指揮者の解釈に対する感性的な共感と、集団としての周知徹底がないと不可能だ。トゥッティを牽引しているのがティンパニ。第1楽章や第3楽章のトゥッティの頂点は(この小編成だと)当然にしても、例えば第4楽章の106小節 [1分32秒~] のsfの嵐では、盛り上げた後、瞬時に黒子にまわり、要所だけを強打していることが分かる。

リズムも尖鋭的で、ミニマルみたいに機械的な反復を徹底させた第1楽章のコーダは、ウィーンなどのヨーロッパ的な舞曲のリズム感とは明らかに違う。スケルツォ楽章のトリオで、バッカス的な頂点を築くトランペットとティンパニ [3分12秒~] は、アウフタクトの8分音符にアクセントが移動(特に2回目以降)。第8番の第1楽章70小節 [1分09秒~] もヘミオラよりも、2拍子が割り込んだデジタルの感覚だ。

構造的要所で思い切って弛める自在性(第8番第2楽章の [1分45秒~] )や、作曲家らしい低音部重視(第7番第1楽章コーダ [12分12秒~]、第4楽章の [7分07秒~] )も、味の濃さに繋がっている。

 

推薦 満津岡信育
このコンビによるベートーヴェンの交響曲全集の第3弾。”作曲当時の小回りが効く編成で、現代的なリズムを活用した、ロックのようなベートーヴェン”という久石のコンセプトは、当ディスクにおいても、ますます磨きがかかり、冴えわたっている。両曲ともにテンポ設定は速く、ヴァイオリンを両翼に、コントラバスを舞台下手奥に配した古典配置から繰り出される演奏は、痛快そのものだ。もっとも目立つ例は、第7番終楽章の11小節目の第2ヴァイオリンとヴィオラの扱いで、猛烈なビート感覚で強奏させることによって、電撃的な効果を生み出している。そのほかの楽章も、8型の弦楽セクションが、ここぞとばかりにダイナミックに駆けめぐる一方で、荒川洋、荒絵理子といった名うての管楽器奏者たちが、絶妙な対話を繰り広げている点も魅力的。躍動感に加え、しなやかなフレージングが保たれている。

第8番では、昔のドイツ流儀の弦楽主体のバランス感とはまったく無縁で、各声部が互いに拮抗しつつ、破天荒なパワーを生み出しているのが印象的。個々が巧いだけではなく、指揮者とメンバーが一心同体となって、音楽を愉しんでいることが伝わってくる。ベートーヴェンの豪快なユーモアも活かされている。もちろん、ピリオド系による成果を踏まえているとはいえ、久石とナガノ・チェンバー・オーケストラは、なにがしの模倣ではなく、独自の世界を鮮烈に築き上げていると言えるだろう。

 

[録音評] 神埼一雄
長野市芸術館での2018年2月12日のライヴ。オーケストラは長い残響を伴うが、その響きに華やかな色彩感が乗っているのが特徴的であり、なかなか強い印象を残す。ことに高域にそうした傾向が強い。残響は長めなのも特徴で、これはオーケストラ音場の展開に豊かなイメージを生み、ことに奥行き感の深さを醸成するように働いている。華やかな色彩感が印象に残る。

(レコード芸術 2018年9月号 Vol.67 No.816より)

 

 

 

また前月号の「レコード芸術 2018年8月号 Vol.67 No.815」では、いち早く「New Disc Collection」のコーナーでも紹介されました。

 

「ロックのように」進撃する久石譲のベートーヴェン第3弾

次は、チャレンジ精神に溢れたベートーヴェン演奏を聴かせている久石譲指揮ナガノ・チェンバー・オーケストラによる交響曲全曲演奏をライヴ録音したシリーズの第3弾となる第7番と第8番(今年2月12日、長野市芸術館で収録)。

これまでの第1&3番、第2&5番を聴いてきて、今回の2曲がこのコンビに最も適した作品ではと思っていたが、予想にたがわぬ聴きものだった。第7番では「神化したリズム」に新鮮な感覚で挑み、譬えれば、陸上100メートル競走の決勝を見るような疾走に興奮を覚えたが、多彩で豊かな曲想を持つ第8番で披露された沸き立つような歌とリズムの饗宴により魅了された。ナガノ・チェンバー管の若き俊才たちは相変わらず巧者だし、演奏を重ねるたびに、久石がベートーヴェンへの理解と共感を強めているように感じられるのが、嬉しく頼もしい。

(レコード芸術 2018年8月号 Vol.67 No.815より)

 

 

 

 

 

 

 

 

Blog. 「レコード芸術 2018年4月号」ベートーヴェン:交響曲第2番&第5番「運命」 久石譲 NCO 準特選盤・評

Posted on 2019/04/03

クラシック音楽誌「レコード芸術 2018年4月号 Vol.67 No.811」、新譜月報コーナーに『ベートーヴェン:交響曲 第2番 & 第5番「運命」 / 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ』が掲載されました。準特選盤、大きな特徴のひとつティンパニによるリズム主題化、木の撥を使用していること、(もっと早く見てたらよかった)、具体的解説とタイム箇所も明記されているので、評論ポイントごとに「ここのことか!」ととてもわかりやすく読み聴きすることができます。

 

 

新譜月評

THE RECORD GEIJUTSU 準特選盤
ベートーヴェン:交響曲第2番・第5番《運命》 /久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ

 

準 金子建志
すでに新日本フィルでもベートーヴェンのステージ経験を重ねてきた久石にとって、ソリスト集団的な中編成オーケストラによる《運命》は、作曲家的分析を実際の音で突き詰める絶好の実験工房となる。その目標が、1小節を8分音符単位で1+3に記譜することでリズム主題が楽章全体を支配する構造を開拓した第1楽章は言うまでもないが、52~53小節のようにティンパニを単純な8分音符連打として、書き分けている個所がいくつかある。久石はそこ [0分35秒~] もティンパニをリズム主題化して叩かせるため、ロックのような乗りになる。390小節 [5分30秒~] のティンパニも同様にリズム主題化させているため、SLか闘いの太鼓を思わせる。直前の382小節~の弦も同じにしたかったようだが、集団作業となる弦にとっては至難なせいか、ティンパニほどではない。似た構造が再現する第4楽章も、ティンパニによるリズム主題の筋肉強化が散見されるが、反復記号直前 [1分44秒~] のように方向性が曖昧に聞こえる個所は、楽員内の自浄作用が働いたのか? 全てを貫徹すればミニマルの先取りになるから、久石は自身のルーツを示したかったのかも知れない。2曲とも緩徐楽章はテンポ設定・表現とも正攻法で、古楽器オーケストラ以降を基準にするなら標準的。楽想の対比や縁取りは鋭いが、スケルツォでトリオをテンポ的に隔絶するアーノンクール流は不採用。快速調の中でもカンタービレには自然な呼吸感が確保されている。

 

推薦 満津岡信育
久石譲とナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェンの交響曲全集の第2弾。第1弾を扱った際に指摘したように、古典配置による小編成のモダン・オーケストラによる演奏である。ブックレットに引用されている久石のコンセプトは、”作曲当時の小回りが効く編成で、現代的なリズムを活用した、ロックのようなベートーヴェン”、”往年のロマンティックな表現もピリオド楽器の演奏も、ロックやポップスも経た上で、さらに先へと向かうベートーヴェン”とのことだが、指揮者の意図がすみずみまで浸透し、奏者の一人一人が鮮やかに機能しているのが印象的。テンポはきわめて速く、ドイツ流儀の拍節感ではなく、あえてオフビートを強調している箇所もあり、鋭い切れ味でノリのよい演奏が展開されている。《運命》は、木の撥で硬質な響きを発するティンパニが目立ちまくっているが、第1弾の録音に比べて音の抜けがよく、リズムのおもしろさを打ち出している。第4楽章で演奏する楽器の種類が増える際に、サウンドのキャラクターが一変するあたりも興味深い。また、舞台下手に陣取ったコントラバスも大活躍している。久石は2011年に東京フィルと《運命》をライヴ録音(ワンダーシティ)していたが、テンポ設定が速く、推進力に富んだ当盤の方が、格段にインパクトに富んでいる。第2番も躍動感に富み、緩徐楽章も淀みのない力感がみなぎり、しなやかな歌心に満ちている。

 

[録音評] 鈴木裕
速めのテンポでリズムを強調し、特に第5番ではティンパニや低弦の存在感が大きいがそれを反映。響きのいい長野市芸術館メインホールではあるが、演奏のよさをダイレクトに楽しめる音を捕捉している。と言ってもドライな録音ではなくオーケストラに近いマイキングながら、ホールの響きのよさものびやかで、同時に細部まで明瞭な録音だ。

(レコード芸術 2018年4月号 Vol.67 No.811より)

 

 

 

また前月号の「レコード芸術 2018年3月号 Vol.67 No.810」では、いち早く「New Disc Collection」のコーナーでも紹介されました。

 

極寒を吹き飛ばす久石譲のハレなベートーヴェン第2弾

今月の締めは、「ドラマ音楽の達人」久石譲が芸術監督を務める長野市芸術館をフランチャイズとしたナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェン/交響曲ツィクルスのライヴ録音シリーズの第2弾、第5&2番。デビュー盤の第1&3番については、本欄の昨年8月号で「勢いの勝った痛快な演奏」とご紹介したが、今回の2曲にも指揮者・久石が語る「例えればロックのようにリズムをベースにしたアプローチで……」という基本姿勢が貫かれている。第1ヴァイオリン8の室内管編成の演奏は、すべての局面で陰もなく明快、シンプルな力感を添えながら超快速のテンポで運ばれる。ピリオドとモダンの要素を混合させながら、エッジを効かせた疾風怒濤のハレな表現は痛快すぎて、ベートーヴェン音楽の精神性などに思いを寄せる暇もないのだが、それはそれで心地よいのだ。

(レコード芸術 2018年3月号 Vol.67 No.810より)

 

 

 

 

 

 

 

 

Blog. 「レコード芸術 2017年9月号」ベートーヴェン:交響曲第1番&第3番「英雄」 久石譲 NCO 準特選盤・評

Posted on 2019/04/03

クラシック音楽誌「レコード芸術 2017年9月号 Vol.66 No.804」、新譜月報コーナーに『ベートーヴェン:交響曲 第1番 & 第3番「英雄」 / 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ』が掲載されました。準特選盤、評論家による専門的な分析や考察は視点を広げる学びになります。専門用語や深く切り込む玄人目線は、ついていけないこともたくさんあります。でも、いつかわかる日もくるかもしれません。録音についても詳しく評されとても興味深い内容です。

 

 

新譜月評

THE RECORD GEIJUTSU 準特選盤
ベートーヴェン:交響曲第1番・第3番《英雄》/久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ

 

推薦 金子建志
長野市芸術館(2016年オープン)の芸術監督に就任した久石が、少数精鋭の室内オーケストラとベートーヴェン・ツィクルスを開始。小編成による快速盤の中でも、飛び抜けて速く、スタッカート的な鋭さと切れ味が、抜きん出ている。第1番の主部に雪崩込むあたりから激辛ぶりは徹底しているので、その段階で拒絶してしまう人もいるだろう。常にアクセルを踏み直し、コンサートマスターも一致協力して牽引。それでいて第3楽章のトリオでは木管のテンポを大胆に落とし、後続の弦でルバート的に戻す、といった技も見せる。《エロイカ》はサバール(1994年)と比較すると、I [サバール=15:16、久石=15:35]、II [S=12:42、H=12:04]、III [S=5:25、H=5:30]、IV [S=10:49、H=11:19] と、いくぶん遅いのだが、第1楽章コーダ [15分22秒~] のようにオフビートをジャズ的に強調するぶん速く感じる。第3楽章の [1分02秒~] の掛け合いは、ディミヌエンド付加だけ見えるが、「2/4→3/2拍子」のヘミオラ認識が隠し味。第1楽章展開部 [7分35秒~] のsf強調も、最後の「リテヌート→ア・テンポ」が効いている。第4楽章の [1分24秒~] をソロにするベーレンライター版の指示も自然。第2楽章 [1分30秒~] のチェロのクレッシェンドもベーレンライター版どおりだが、第1楽章コーダのトランペット [14分46秒~] はモントゥー流に途中までハイB♭を吹かせるなど、選択肢の多さも濃さに繋がっている。

 

準 満津岡信育
指揮者の意思がすみずみまで浸透したベートーヴェンである。8型が基本のヴァイオリンは両翼配置で、コントラバスを舞台下手奥にまとめた古典配置を採用。ライナー・ノーツで、久石自身が”われわれのオーケストラは、例えればロックのようにリズムをベースにしたアプローチで誰にでも聴きやすく、それでいて現代の視点、解釈でおおくりすることができます”と記しているように、テンポ設定は速く、拍節感も重厚さは塵ほどもなく、きわめて切れがよい。近藤薫がコンサートマスターを務めるオーケストラは、まさに一騎当千のメンバー揃いで、風を巻くように駆け抜け、要所で舞台上手奥に陣取るトランペットが咆吼し、ティンパニが轟音を発するのが印象的。あえてオフビート的に処理している箇所もあり、リズミックでノリのよい演奏が展開されている。弦のヴィブラートを抑制したり、《英雄》終楽章の最初の変奏の弦楽器をソロで弾かせるなど、目配りも利いている。ただし、今日ではウィーン古典派の諸作品においても、ファイやアントニーニなど、ピリオド・アプローチを軸に、さらに騒然とした演奏を行なう指揮者もおり、その点、久石の指揮ぶりはぐっとスマートで耳当たりがよい。ただし、久石の方法論だと、両曲とも第2楽章は、他の楽章に比べると物足りないのが惜しまれる。また、ティンパニ奏者が木の撥で轟然とffを発する際に、響きがやや飽和気味になる録音が筆者には気になった。

 

[録音評] 鈴木裕
第1番の小さめの編成のオーケストラに対しても、第3番の編成に対しても、近くから聴いているような高い臨場感を持っている。打楽器や金管楽器の力感も十分にあるとともに、弦楽器、木管楽器のパートの響きも透明感高く収録。長野市芸術館の響きのよさも奏功していて、高い天井や広い空間に音が広がっていく感じも実にうまく捉えている。

(レコード芸術 2017年9月号 Vol.66 No.804より)

 

 

本号では、「新譜月報」後半に掲載されている「優秀録音」(5盤選出)ページにも選ばれていました。筆者は [録音評] と同じ、より詳細に記されています。

 

新譜月報|優秀録音
いろいろな意味で意欲的な録音だ。まず、使われているのが2016年5月に誕生した長野市芸術館メインホールで、1300人程度を収容。第1番は同年7月に、第3番は翌年2月に収録されていて、ホールの響きとしてはまだ熟成されていないものの、録音を聴いている限りその響きは若すぎることがなく、音の重心の低さやまろやかさを持っている。確かに第1番の第4楽章など、大きめの音量の部分で密度の薄いソノリティも感じるところだが、第3番ではすでに落ち着いている。オーケストラの演奏については筆者の言及する担当ではないが、その響きを聴きつつコントロールしてることがわかる。そして録音。マルチ・マイクとステレオ・ワン・ポイント・マイクを絶妙にミックス。オーケストラの前後の奥行きは若干浅いが、ライナー・ノーツの写真を見ると実際に浅いので納得させられる。ホール、演奏、録音のそれぞれがよく、これからのシリーズも楽しみな組み合わせだ。(鈴木)

(レコード芸術 2017年9月号 Vol.66 No.804より)

 

 

 

また前月号の「レコード芸術 2017年8月号 Vol.66 No.803」では、いち早く「New Disc Collection」のコーナーでも紹介されました。

 

久石譲&ナガノ・チェンバー・オケの痛快なベートーヴェン

音楽家は作曲家と演奏家に大別される。いずれも音楽のさまざまに精通していることで、表現活動の一環としてタクトを手にする人が少なくない(言わずもがなだが、かつては作曲家=演奏家であった)。宮崎駿のアニメーション映画の音楽を数多く作曲した久石譲も、16年5月に開場した長野市芸術館をフランチャイズに結成されたナガノ・チェンバー・オーケストラの音楽監督として指揮活動を本格化させ、ベートーヴェンの交響曲全集の録音をスタート、その第1弾として第1番と第3番《英雄》をリリースした(昨年と今年の演奏会のライヴ録音)。

久石譲はクラシック音楽の指揮経験は豊かとはいえず、オーケストラは、コンサートマスターが現東京フィルのコンマスでもある近藤薫以下、30名ほどのメンバーは若手中心。それで「どんなベートーヴェンになるんだろう?」と聴いた演奏は……2曲ともにかなり楽しめた!

久石の音楽の運びには、ベートーヴェンの原典研究に基づく近年の表現スタイルを規範にしていることが窺え、メリハリが効いていて明快。テンポは速めで、常に躍動感がみなぎっている。最近の若手オケマンの巧さにも感心することしきり。この勢いの勝った痛快な演奏をするオーケストラが、これからどう熟成し、どのような情動を聴衆の内面に生み出していくのか、興味は尽きない。

(レコード芸術 2017年8月号 Vol.66 No.803より)

 

 

 

 

 

 

 

 

Blog. 「月刊ピアノ 2005年9月号」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/04/02

雑誌「月刊ピアノ 2005年9月号」に掲載された久石譲インタビューです。

 

 

”ハウル”も含む最新アルバム完成!自ら監督するオケをもつ意味を語る

理想があるんだ。だからもう来年の夏の企画までできてるもん(笑)

組曲「DEAD」はいかにして生まれたのか? 音楽監督と指揮を務める新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの次なるステージは? アメリカの映画音楽の巨匠J・ウィリアムズと久石の音楽性の違いは? などなど。どんな質問にも、穏やかに笑いながら鋭い答えを返してくる久石譲。揺るぎない確信から生まれた大きな余裕。そんなものを感じた。

 

オケのメンバーは”久石のフォルテはこれだ!”ってわかってる

ーやはり『WORKS III』で特筆すべきは、組曲「DEAD」だと思うのですが。これは数年前にご自分がメガホンを取る予定だった映画のために書いた曲だそうですね。

久石:
「そう。4、5年前ですね。でもその映画の内容が、人が死んだりとか、ちょっときついものだったので、時期をみようということになって、先に『カルテット』を撮ったんです。でもテーマ曲はできていて、そのときは2曲だけだったけど、僕の頭の中では4楽章の組曲にしようと思っていまして。今年こそは完成させたくてね。やっと発表できました。今回のアルバムはこの曲のために作った、といっても過言じゃないくらい(笑)」

ーDEADのスペルD,E,A,Dを音名に置き換えた、レ、ミ、ラ、レを主に使った作りになってるんですね、どの楽章も。おもしろい。

久石:
「映画の内容を考えながら、最初に思いついたアイデアだったんだけど、明快でしょう。明快だから音のインパクトも強い。だからどうしても弦楽オーケストラでやりたかったんです。フルだといろんな音色がありすぎちゃって派手になっちゃうから。弦だけの方がきっと深い世界が表現できるなあと思ってね」

ー元々久石さんがやってらっしゃった、現代音楽的なアプローチの作品ですよね。特に3楽章なんか、バリバリ、ミニマルですね。

久石:
「やっぱりそれは僕の本籍地みたいなものだから。すごく真剣になるとスタンスがそこに戻っちゃうんだよね、どうしても。でもね、もう一歩踏み込んじゃうと、ほんとうに現代音楽の作品になっちゃうんだけど、僕がいまやってるフィールドで考えると、それをポップスという世界の中に留める、ということが大事になってくるんです。僕は特別な人たち相手に音楽を作る芸術家じゃないからね。宮崎映画とか北野映画から僕の音楽を知ってくれたような多くの人たちと、コミュニケーションできる音楽でなくちゃいけないんです。今回はそのギリギリ(笑)。だいぶ挑戦的なことはしたなと思いますけどね」

ーところで、ワールド・ドリーム・オーケストラの音楽監督に就任されて1年経ちますが、オーケストラとの活動はいかがですか?

久石:
「作家としては最高に幸せなオケとの関係ができてると思いますね。おもしろいのはね、譜面にあるフレーズ、たとえばチェロなんて、譜面通りに弾けば、フォルテであっても、タ~ラ~ラ~って、上品に弾くんだけど、僕の楽譜にこういうフレーズでフォルテなんて書いてあると、なんの指示も出さないのにみんなガンガン弾きだすの(笑)。久石のフォルテはこれだって、もうわかってるんだよね」

ー確かに、記号のフォルテが、作曲家の頭の中に鳴ってるフォルテのイメージと同じというわけではないですもんね。

久石:
「譜面は表現できる範囲が意外と狭いですね。どんなに精密に書いて、その通りに演奏したっていい演奏になるわけじゃない。譜面の後ろにある世界というか、それぞれの演奏家が解釈できる範疇、そこに音楽家の個性が生まれるわけでね。そういう意味では自分が監督してるオーケストラがあるというのは本当に素晴らしいです。誰よりも僕の好きな音を出してくれるからね。今年の冬、ワールド・ドリーム主体のコンサートをやるんですけど”12月の恋人たち”というタイトルで、『白い恋人達』『シェルブールの雨傘』『男と女』……フレンチ・ムービーの曲を僕がアレンジします。あとコール・ポーターを、外人シンガーを呼んでやろうと思っていて。恋人同士で来るには最高のコンサートだと思うよ」

ー本当にハイペースに、次々とアイデアが湧いてくるんですねえ。

久石:
「ワールド・ドリームが好きだから、どんどんアイデアが出てきちゃうんです。だってもう来年の夏の企画までできてるもん(笑)。あとね、僕には理想があって……僕のコンサートの次の日にフルオケでマーラーを聴きに行く、なんていう人はあんまりいないと思うんですよ。そういう人たちに、クラシックの敷居はそんなに高くないんだって知ってもらいたくてね。だから冬のコンサートでも、フレンチムービー音楽とコールポーターと一緒に、ラヴェルのボレロもやるんです。別にクラシックの入門編をやりたいわけじゃなくて、クラシックにもポップスにも、こんなにいい音楽があるんだよって、垣根なくみんなに知ってもらいたいんだよね。たとえば『シェルブールの雨傘』のあとにブラームスの3番の3楽章なんかをやって、これっていい曲だなあって、先入観なしに聴いてもらえれば嬉しいじゃない。ワールド・ドリームではそういうことをどんどんやっていきますよ」

ーここまでたくさんの大作映画の音楽を次々に手がけていらっしゃる久石さんを”日本のジョン・ウィリアムズ”と呼ぶ声も多く聞かれます。ご自分では嬉しいことですか? 不本意なことですか?

久石:
「やっぱりオーケストラを扱って映画音楽をやってるから比べられるのはしょうがないと思うし、昨年、ワールド・ドリームでスター・ウォーズのテーマを自分で振ってみてよくわかったんだけど、あれだけのクオリティと内容のオーケストレーションをやれる人はいないですよ。すごく尊敬してるし、僕なんかまだまだだな、と思います。でもね、実際の音楽でいうと、僕と彼の作るものはまるで違うんですよ。僕は東洋人なので、5音階に近いところでモダンにアレンジしてやったりするものが多いんです。でもJ・ウィリアムズはファとシに非常に特徴がある。正反対のことをやってるんです。それはすごくおもしろいなあと思いますね。音楽の内容も方法論も違うけど、僕もあれくらいのクオリティを保って作品を発表し続けたいですね」

(月刊ピアノ 2005年9月号より)

 

 

久石譲 『WORKS3』

 

久石譲 『パリのアメリカ人』

 

久石譲 『W.D.O.』 DVD