Blog. 「クラシック プレミアム 4 ~ショパン ピアノ作品集~」(CDマガジン) レビュー

Posted 2014/3/1

「クラシック プレミアム」第4号は、ショパンです。

他の19世紀作曲家とは違い、生涯ピアノ作品のみをつくりつづけたショパンですが、まさにピアノひとつで多彩な世界、詩人のような作曲家だなと思います。

 

【収録曲】
《幻想即興曲》
スタニスラフ・ブーニン(ピアノ) 録音/1987年
《華麗なる大円舞曲》
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ) 録音/1990年
ポロネーズ《英雄》
ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ) 録音/1999年
《子犬のワルツ》、ワルツ 第7番
ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ) 録音/1990年
バラード 第1番
アンドレイ・カヴリーロフ(ピアノ) 録音/1991年
練習曲《別れの曲》
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ) 録音/1988年
練習曲《革命》 《黒鍵》 《木枯らし》
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ) 録音/1971-1972年
夜想曲(ノクターン) 第2番・第20番
マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ) 録音/1995-1996年
前奏曲 第8番・第15番《雨だれ》
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ) 録音/1975年
スケルツォ 第2番
アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ(ピアノ) 録音/1971年

 

収録曲の名前だけを見ても、曲が思い浮かばないものもありますが、かくいう私もCDを聴くまではそうでした。いざCDを流してみてびっくりしました。ほとんどの曲を知っていました、聴いたことがありました。

そのくらいどの曲も、そのなかのメロディーやフレーズも印象的で、TV・映画・CMと引っ張りだこな音楽たちばかりということがわかります。

上品かつ繊細で、イメージを縛らない、動的な曲も静的な曲も印象的でインパクト、まさにピアノ1本で多彩な音楽世界、イメージを広げるショパンの音楽だからこそ、今日まで多くの人に愛され、日常生活にもその音楽が溢れているんだろうなと思います。

 

 

「久石譲の音楽的日乗」第4回は、僕が指揮をするわけは?

この連載コラムも4回目を迎えましたが、全50巻のうちこの冒頭は、久石譲の指揮者としての考え方や視点を垣間見ることができます。

今回のコラムでは、職業としての指揮者が確立された時代のことや、作曲家が指揮をしていた時代、その背景や逸話など、いろいろな側面からのクラシック音楽の歴史が見れておもしろかったです。

そして印象に残った箇所を一部抜粋してご紹介します。

 

「それでは作曲家兼楽器奏者と作曲家兼指揮者の違いは何なのだろう。ブーレーズによれば「前者は日常的とまでは言わないにせよ、少なくともあまり大きな中断のない筋肉の訓練を必要とし、そうすることによって楽器の名手としての能力を維持するが、他方、後者の方は、専門家としての技能を手中にしていれば、断絶の影響を恐れることなく、いつでも自分の活動を中断したり再開したりできる。」なるほど、おこがましいが僕が最近ピアノを弾かなくなった理由と指揮をするわけがわかった気がする(笑)。」

 

作曲家が指揮をすることの意味は、前回(第3回)のコラムで書かれていましたが、久石譲は、作曲家、ピアニスト、指揮者と3役ありますからね。このあたりそれぞれの住み分けも自身の著書やインタビューで明確に語っていた内容がありますね。

これからどんな指揮者論や、クラシック話、広義での音楽話が聴けるのかますます楽しみです。毎回コラムのなかで、いろいろな人物などキーワードが飛び出すので、それを後から自分なりに調べたりするのもおもしろいです。知らないことや、新しい興味など、どんどん広がっていきます。

 

クラシックプレミアム 4 ショパン

 

Blog. 映画『魔女の宅急便』の音楽 久石譲 高畑勲 インタビュー

Posted on 2014/2/27

先日、文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」について、読書感想としてその内容を書きました。

こちら ⇒ Blog. 文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」 読書

とても読み応えのある内容で、おそらく誰が読んでも、目からウロコ、新しい発見がある、そんな充実した本です。そして、あまりにもたくさん書いてしまって、肝心の音楽:久石譲のことを触れることができなかったので、あらためて。

 

映画『魔女の宅急便』が1989年公開ですから、今から約25年前です。

この作品は音楽:久石譲に加えて、注目すべきなのは音楽演出:高畑勲です。宮崎駿監督との間で、この3者による音楽制作が進められていたということです。なので、当時のインタビューも久石譲と高畑勲監督の、それぞれのインタビューが収録されています。

それがすごく興味深かったです。つい昨年2013年に、映画『かぐや姫の物語』で高畑勲×久石譲の初タッグが実現し、それにともなうインタビューや対談はたくさん紹介してきました。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー 熱風より
※ページ下部に『かぐや姫の物語』関連インタビュー リンクもほぼすべて紹介しています

 

映画『かぐや姫の物語』の物語に関しては、まだ記憶に新しいのもあり、この「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」を読み進んでいくと、久石譲も高畑勲監督も、お互い言っていることがシンクロするほどだったんです。

1989年の『魔女の宅急便』と2013年の『かぐや姫の物語』約25年の時間の隔たりがあるなか、両者とも映画音楽に求めるものや、その位置づけ、大切にしていることなど、その根幹となるものに対して同じことを言っているんですね。

これにはびっくりしました。

 

具体的には、高畑勲監督は、映画『かぐや姫の物語』の音楽に対して、こういう要求をしています。

  • 一切登場人物の気持ちを表現しないでほしい
  • 状況に付けないでほしい
  • 観客の気持ちを煽らないでほしい

つまりは「一切感情に訴えかけてはいけない」、引きの音楽、観る人に委ねる音楽、これを久石譲の音楽に求め、見事にその音楽世界は表現されることになりました。

これを念頭に、本書「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」のインタビューを紐解いてみます。一部抜粋して紹介します。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

-今回はヨーロッパが舞台ということで音楽的にもそのへんを意識されたと思うのですが。

久石 「そうですね、架空の国ではあるけれどもヨーロッパ的な雰囲気ということで、いわゆるヨーロッパのエスニック、それも舞曲ふうのものを多用しようということは考えました。」

(中略)

-たしかに、映画を拝見しますと音楽のつけ方がはっきりしていて、今回でいえばキキがつぎの場所へ移動する時の、つなぎの部分に音楽が使われているような印象がありました。

久石 「たとえば悲しいシーンに悲しい曲をつけるとか、アクションシーンに派手な曲をつけるとか、そういうやり方はいっさいしないという前提でやりましたからね。ある意味でそれはすごく徹底していると思います。むしろ感情に訴えかけるよりも、見ている人を心地よくさせるような音楽のつけ方というんですか、そういう点を心がけたということはありますね。わざとらしくない、自然な音楽といいますか…。」

-久石さんが宮崎作品の音楽を創る時にいちばん、心がけることは何ですか。

久石 「まず大きな声で歌えること。変にこまっしゃくれたものではなく、徹底して童心にかえってストレートに作るということですね。そしてヒューマン、人間愛にあふれていること。これに尽きると思います。」

(中略)

 

-今回の音楽の特徴は、どういうところですか。

高畑 「この作品はいわゆるファンタジーではありません。『トトロ』もそうでしたが、大きな意味ではファンタジーに属するものでしょうが、もっと現実に近い物語であると宮さんは考えてつくった。たとえばキキは空を飛びますけど、それはカッコよく飛ぶのとはちがうし、ふつうの女の子の日常的な描写や気持ちが中心になっているんですね。ですから音楽が担当する部分も、世界の異質さとか戦闘の激しさとかを担当するわけではない。むしろふつうの劇映画のような考え方をして、しかもヨーロッパ的ふんいきをもった舞台にふさわしいローカルカラーをうち出そうということだったんです。それと、つらいところ悲しいところに音楽はつけない、とか、歌とは別にメインテーマの曲を設定して、あのワルツですが、あれをキキの気持ちがしだいにひろがっていくところにくりかえし使うとかが、音楽の扱いの上での特徴というえば特徴ではないでしょうか。はじめ、ホウキで空を飛ぶ、というのはスピード感もないし、変な効果音をつけるわけにはいかないので心配だったのですが、久石さんの音楽もユーミンの歌も、いまいったねらいにピッタリだったし、上機嫌な気分が出ていたのでホッとしているところです。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

いかがでしょうか。

約25年の時空を超えて、考え方や発言がシンクロしていることが、わかってもたえたのではないでしょうか。

それだけスタジオジブリ作品、鈴木敏夫プロデューサーをはじめ、宮崎駿監督、高畑勲監督、それぞれが劇中音楽をいかに大切にしているか、独自の価値観と要求によって、それを見事に久石譲が音楽に昇華しているか、ということがあらためてわかった当時のインタビュー内容でした。

 

本当に読み応え満点で、思わず映画『魔女の宅急便』がまた観たくなります。実際、この読書をしながら、文章を書きながら、『魔女の宅急便』の音楽を聴いています。

 

当サイトでは、もちろん『魔女の宅急便』関連CD作品もそれぞれ詳細紹介しています。

  • イメージアルバムとサウンドトラックの違いって?
  • 同じメロディーの曲なのに曲名がちがう?
  • ヴォーカル・アルバムやハイテックシリーズって?

 

そのあたりも下記CD作品詳細をのぞいてもらえれば、わかると思います。

魔女の宅急便 イメージアルバム

魔女の宅急便 イメージアルバム

 

久石譲 『魔女の宅急便 サントラ音楽集』

魔女の宅急便 サントラ音楽集

 

久石譲 『魔女の宅急便 ヴォーカル・アルバム』

魔女の宅急便 ヴォーカル・アルバム

 

久石譲 『魔女の宅急便 ハイテックシリーズ』

魔女の宅急便 ハイテックシリーズ

 

 

ほかにも、『魔女の宅急便』の音楽たちは、久石譲作品のいろいろなCDアルバムに収録されています。「メロディフォニー」では、美しいフルオーケストラ組曲として。「空想美術館」では、華麗な弦の響きにて。そのあたりは、いつの日か、特集ページでしっかり掘り下げて紹介したいと思います。

 

 

Related page:

 

ジブリの教科書 魔女の宅急便

 

Blog. 文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」 読書

Posted on 2014/2/24

2013年4月から創刊された文春文庫 x スタジオジブリによる文春ジブリ文庫シリーズです。第1弾『風の谷のナウシカ』から始まって、第5弾は『魔女の宅急便』です。

毎回楽しみにしているこのシリーズですが、各界からの豪華執筆陣がその作品を独自の視点から読み解いていたり、当時の製作陣インタビューなど貴重な記録が満載です。当時出版された様々な書籍からの再編集も多いですが、ある意味作品ごとに、その内容がまとめられて収められているのはうれしいところ。

また今回のための書き下ろしや語り下ろしインタビューなどもあり、過去と現在の時間を超えて『魔女の宅急便』の世界を楽しむことができます。多彩な執筆陣から、原作者角野栄子、内田樹、上野千鶴子、青山七恵、氷室冴子、松任谷由実、C.W.ニコル、などいろいろなインタビューや対談満載です。

 

読んで知ったことなど、書きたいことたくさんあるのですが。

目からウロコだったのは

  • 映画『魔女の宅急便』の表テーマと裏テーマの存在
  • どうしてキキは飛べなくなったのか?
  • どうしてキキは黒猫ジジと言葉が通じなくなったのか?

このあたりのことが、宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーの口から語られていてとても興味深いです。

ほかにも上の3点などの主要な問題に対して、豪華執筆陣たちが、それぞれの解釈で、あらゆる角度から解説しているのも、なるほどとうなずけます。どれが正解というよりも、いろいろな考え方や捉え方が自由にあるんだな、ということがすごくよくわかります。

“思春期の女の子の物語”でありながら、そこには、「成長」「才能」「働くということ」がしっかりと描かれていたんだなと、改めて奥が深い作品であることがわかりました。

 

宮﨑駿監督は、この作品にふれて「才能」のことを語っています。

平気に無意識にできていたことが、ある日突然できなくなる。
なぜできなくなったのかわからない。
そして無意識のうちに成長していくことはできない。

ちょっと漫画を描けるだけ、単に空を飛べるだけ、それで食っていけるのか?

 

このように「才能を職業にするということ」「働くこと」「おカネをもらって生活していくこと」つまりは、『自分でおカネを稼いで自立する』ということがどういうことなのか、その過程で起こる不安や葛藤、つまずきや成長を、見事に描いています。

キキは空を飛ぶだけの才能、監督は漫画が描けるだけの才能、その小さい頃から無意識にできていたことを意識的に成長させていく物語、そう両者を捉えると、この作品の見どころや台詞の重さも変わってくるのかもしれません。

 

また”思春期”に対する洞察力がすごい。確かに「思春期の頃ってこういう感情だったかな」と誰もが思うような、思春期特有の言動・葛藤・自分を守ること・避難場所 など宮崎駿監督の語りはそれだけでも読む価値が十分にあります。

そんな”思春期”特有のディティールを、映画のなかに散りばめてあって「なるほど、このシーンはこういうことだったのか」と唸ってしまいます。

 

冒頭に、制作当時のインタビューなどを再編集、と書きましたが、そのおかげて、いろいろな製作陣の話が、とてもリアルです。当時の時間をそのまま切り取ったような鮮明さと具体的な話が満載です。美術ボードなどのカラースケッチも多数収録してあり、キャラクター設定のスケッチもあり、絵としても見どころ満点でした。「西洋と東洋の魔女、その歴史」なんかもかなり深く掘り下げてあって、より専門的な話、歴史観や宗教観も学ぶことができます。

 

そしてあのヨーロッパ的な雰囲気のする舞台ですが、モデルとなったスウェーデンのストックホルム、ゴッドランド島のヴィズビーの他、インタビューのなかからいろいろな街の名前が登場してきます。そんなごっちゃまぜにしたヨーロッパ的な舞台だからこそ、モデル地はありながらも「架空の場所」という設定になっているんですね。

ヴィズビーの街です。

魔女の宅急便 ヴィズビー

素敵ですね!ほかにも「ヴィズビー」や「ストックホルム」などで検索をすると、『魔女の宅急便』的雰囲気をもった街写真がたくさんHitすると思います。

 

さて、肝心の音楽:久石譲のことに触れていませんが、もちろん久石譲の当時制作インタビューも収録されています。ここまで網羅してしまいますと、膨大になってしまいますので、それはまた別の機会にご紹介します。

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ジブリの教科書 魔女の宅急便

 

Blog. 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 歴代受賞者/受賞作品 一覧

Posted on 2014/2/13

いよいよ来月に、日本アカデミー賞 各最優秀賞の発表、TV放送があります。そして、久石譲に関する今回のノミネート作品一覧もすでに紹介しています。

こちら ⇒ Blog. 久石譲 2014年 日/米 アカデミー賞 ノミネート まとめ

 

過去の日本アカデミー賞の歴史を振り返ってみます。ここでは最優秀音楽賞の歴史です。1977年に始まった第1回から、2013年の第36回までです。

【日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 受賞者/受賞作品】

1977年 第1回 芥川也寸志 『八甲田山』  /『八つ墓村』
1978年 第2回 武満徹 『燃える秋』 / 『愛の亡霊』
1979年 第3回 佐藤勝 『あゝ野麦峠』 / 『英霊たちの応援歌』 / 『真田幸村の謀略』 / 『闇の狩人』
1980年 第4回 佐藤勝 『遥かなる山の呼び声』
1981年 第5回 宇崎竜童 『駅 STATION』
1982年 第6回 甲斐正人 『蒲田行進曲』
1983年 第7回 佐藤勝 『陽暉楼』 / 『海嶺』 / 『せんせい』
1984年 第8回 池辺晋一郎 『瀬戸内少年野球団』
1985年 第9回 武満徹 『食卓のない家』 / 『火まつり』 / 『乱』
1986年 第10回 井上堯之 『火宅の人』 / 『離婚しない女』
1987年 第11回 本多俊之 『マルサの女』
1988年 第12回 三枝成彰 『椿姫』 / 『優駿』
1989年 第13回 武満徹 『黒い雨』 / 『利休』
1990年 第14回 池辺晋一郎 『少年時代』 / 『夢』 / 『流転の海』
1991年 第15回 久石譲 『あの夏、いちばん静かな海。』『仔鹿物語』『ふたり』『福沢諭吉』
1992年 第16回 久石譲 『青春デンデケデケデケ』
1993年 第17回 久石譲 『ソナチネ』『はるか、ノスタルジィ』『水の旅人 侍KIDS』
1994年 第18回 忌野清志郎 『119』
1995年 第19回 武満徹 『写 楽』
1996年 第20回 周防義和 『Shall we ダンス?』
1997年 第21回 大貫妙子 『東京日和』
1998年 第22回 久石譲 『HANA-BI』
1999年 第23回 久石譲 『菊次郎の夏』
2000年 第24回 佐藤勝 『雨あがる』
2001年 第25回 松田岳二 / 冷水ひとみ 『ウォーターボーイズ』
2002年 第26回 冨田勲 『たそがれ清兵衛』
2003年 第27回 鈴木慶一 『座頭市』
2004年 第28回 ミッキー吉野 / 岸本ひろし 『スウィングガールズ』
2005年 第29回 佐藤直紀 『ALWAYS 三丁目の夕日』
2006年 第30回 ガブリエル・ロベルト / 渋谷毅 『嫌われ松子の一生』
2007年 第31回 大島ミチル 『眉山 -びざん-』
2008年 第32回 久石譲 『崖の上のポニョ』
2009年 第33回 池辺晋一郎 『劔岳 点の記』
2010年 第34回 久石譲 『悪人』
2011年 第35回 安川午朗 『八日目の蟬』
2012年 第36回 川井郁子 『北のカナリアたち』

 

そうそうたる作品たちばかりです。そして受賞者の方々も作曲家として、映画音楽界に一時代を築いてこられた方たちばかり。

そんななか久石譲の名前の多いこと。

最優秀音楽賞は計7度受賞と、歴代No.1です。

また優秀音楽賞受賞(最優秀音楽賞のノミネートにもあたる)も、なんと計13度受賞です。

上には、最優秀音楽賞のみでの受賞一覧になりますので、
第14回 久石譲 『カンバック』『タスマニア物語』『釣りバカ日誌2』『ペェスケガタピシ物語』
第20回 久石譲 『Kids Return』
第26回 久石譲 『Dolls <ドールズ>』
第30回 久石譲 『男たちの大和 YAMATO』
第32回 久石譲 『おくりびと』
第36回 久石譲 『天地明察』

これらの受賞歴も追記しますと、優秀音楽賞は13度となります。

 

第15回~第17回の3年連続最優秀音楽賞、第22回~第23回の2年連続最優秀音楽賞など、日本映画界におけるその功績と、映画音楽の地位確立など、まさに映画音楽の巨匠にふさわしいアワードたちです。

振り返りながら、ふと思ったのですが、北野武監督作品は、音楽を手がけたほぼ全作品が挙がっていますが、スタジオジブリ 宮﨑駿監督作品は、なんと『崖の上のポニョ』だけなんですね。最優秀音楽賞としてもそうですが、優秀音楽賞としても『風の谷のナウシカ』から『ハウルの動く城』までの8作品が、どれも受賞したことがないというのが、意外でしかありません。

アニメーション映画だからということでしょうか?審査基準や選考基準などがわからないため、なんとも言えませんが。というわけで、映画『崖の上のポニョ』で初のジブリ作品音楽として、日本アカデミー賞 最優秀音楽賞 受賞 となったわけですね。

 

そして、今年2014年の第37回日本アカデミー賞ですが、すでに優秀音楽賞はノミネート発表され、そのなかから最優秀音楽賞が選ばれるのが、3月7日です。(日本テレビ系 放送予定)

□優秀音楽賞 ノミネート作品

岩代太郎 『利休にたずねよ』
荻野清子 『清須会議』
久石 譲 『かぐや姫の物語』
久石 譲 『風立ちぬ』
久石 譲 『東京家族』
松本淳一/森 敬/松原 毅 『そして父になる』
渡邊 崇 『舟を編む』

 

このようになっています。

ここから第37回 日本アカデミー賞 最優秀音楽賞は…

映画『崖の上のポニョ』以来の5年ぶり、映画『風立ちぬ』で宮崎アニメ2度目の受賞か!?約30年の付き合いにして初タッグとなった高畑勲監督 映画『かぐや姫の物語』で受賞か!?日本映画界の巨匠 山田洋次監督との初タッグ作品 映画『東京家族』で受賞か!?

 

過去の受賞歴を見ますと、1作曲者に対して、複数の映画音楽作品が選ばれている年もありますが、近年は1作曲者/1作品が選ばれる傾向にあるようです。おそらく、久石譲が手がけた映画3作品のなかから、今年の最優秀音楽賞は選ばれるのではないか、と期待しています。

 

公式サイト:日本アカデミー賞 では、今年の作品賞/監督賞/俳優賞など主要ノミネート作品の他、過去の受賞作品一覧や、当時の受賞コメントなども閲覧することができます。

気になる賞や作品、年代などあったら、ぜひのぞいてみてください。

 

第37回日本アカデミー賞 3月7日

 

Blog. 久石譲 初ジブリベスト 宮﨑駿×久石譲 30周年 CD発売決定!

ジブリ・ベスト ストーリーズ(CD)

Posted 2014/2/9

突然飛び込んできたビッグ・ニュースです。

  • 久石譲がジブリ・ベストアルバムをリリース!
  • 久石譲名義としては初ジブリ・ベスト盤!
  • 自ら選曲し、さらに初CD化曲収録の全13曲!
  • 『風の谷のナウシカ』(公開日1984年3月11日)から30周年という節目に!
  • 『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで宮﨑駿監督9作品より!
  • タイトルは「ジブリ・ベスト ストーリーズ」、発売日は2014年3月12日!

さてこれにはビックリしました。
まさに上に書いたポイントとおりです。

 

そしてそのベスト盤CDの詳細は…

久石譲 「ジブリ・ベスト ストーリーズ」 収録曲

1. One Summer’s Day (「Melodyphony」収録 / 千と千尋の神隠し)
2. Kiki’s Delivery Service (「Melodyphony」収録 / 魔女の宅急便)
3. Confessions in the Moonlight (「Castle in the Sky」収録 / 天空の城ラピュタ)
4. The Wind Forest (「Piano Stories」収録 / となりのトトロ)
5. 谷への道 (「空想美術館」収録 / 風の谷のナウシカ)
6. Fantasia(for NAUSICAA) (「Piano Stories」収録 / 風の谷のナウシカ)
7. il porco rosso (「PIANO STORIES III」収録 / 紅の豚)
8. Ponyo on the Cliff by the Sea (「Another Piano Stories」収録 / 崖の上のポニョ)
9. 海のおかあさん / 歌:林正子 (崖の上のポニョ) ※初CD化/初CD収録
10. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (「Piano Stories Best ’88-’08」収録 / ハウルの動く城)
11. もののけ姫 (「WORKS II」収録 / もののけ姫)
12. アシタカとサン (「ENCORE」収録 / もののけ姫)
13. My Neighbour TOTORO(「Melodyphony」収録 / となりのトトロ)

※初回プレス分のみ「スリーブケース」仕様

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ 久石譲 収録曲

 

(補足)
※サウンドトラックベースのオリジナル曲原題(タイトル)参考
※主にメインテーマ曲およびメインテーマのモチーフ曲
※どの作品も映画を象徴する主要な楽曲
※原題(タイトル)リンクURL先はサウンドトラック詳細ページJUMP

1. One Summer’s Day 「あの夏へ」
2. Kiki’s Delivery Service 「海の見える街」
3. Confession in the Moonlight 「月光の雲海」
4. The Wind Forest 「風のとおり道」
5. 谷への道 ※サウンドトラック未収録/劇中本編未使用曲
6. Fantasia (for NAUSICAA) 「風の谷のナウシカ〜オープニング〜」
7. il porco rosso 「帰らざる日々」
8. Ponyo on the Cliff by the Sea 「崖の上のポニョ 主題歌」
9. 海のおかあさん 歌 / 林 正子 *CD初収録
10. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- 「人生のメリーゴーランド」
11. もののけ姫 「もののけ姫 主題歌」
12. アシタカとサン 「アシタカとサン」
13. My Neighbour TOTORO 「となりのトトロ 主題歌」

 

 

これまでも「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」という映画『崖の上のポニョ』公開に合わせた記念コンサートを2008年に開催しています。ジブリベスト、総括にふさわしい、オーケストラコンサートで、後にTV特集もされ、DVD・Blu-rayでも発売されています。

この企画も記念碑的であり、かつ画期的でした。当時から「現在進行形なので、ベスト選曲のような、振り返るようなコンサートはしない」と公言していたなか、新しい試みや挑戦もふんだんに盛り込んだ感動のコンサートでした。

 

そして今回の初ジブリ・ベストアルバム発売に至った経緯、映画『風の谷のナウシカ』から宮崎駿との30周年という節目であることです。宮﨑駿監督の長編映画からの引退宣言(2013年)が影響しているかどうかは現時点ではわかりません。

 

さて、「ジブリ・ベスト ストーリーズ」のベスト・アルバムの内容に話を戻します。ご紹介したとおりのポイントと収録曲なのですが、これをもとに補足があります。

それは、

  • 収録曲すべてがサウンドトラックからではない
  • 劇中オリジナル音源ではない
  • 映画「風立ちぬ」からは収録されない

以上の3点です。

宮﨑駿監督との長編映画は『風の谷のナウシカ』から『風立ちぬ』まで全10作品です。でも今回は前作の『崖の上のポニョ』までで区切られています。

なぜでしょう?

そこには “収録曲がオリジナル音源ではない サウンドトラックからではない”というところにヒントがありそうです。今回のベスト・アルバムは、たしかにスタジオジブリ映画・宮﨑駿映画の人気曲がほとんど網羅されています。

同時に、収録音源にあるように、その曲たちは、「久石譲 オリジナル・ソロ作品」からほとんどが選ばれています。「スタジオジブリ サウンドトラック」からではなく。「Piano Stories」シリーズや、「WORKS」シリーズです。

「Piano Stories」シリーズは、その時折の映画作品やCM音楽などを、ピアノを主体とした音楽作品に再構築したもの。楽器編成やアレンジも手を加えられています。

「WORKS」シリーズは、その時折の映画作品やCM音楽などを、オーケストラを主体とした音楽作品に再構築したもの。楽器編成やアレンジも手を加えられ、組曲のような大曲になることも。

そして「Piano Stories」シリーズと「WORKS」シリーズの共通点は、

  • 久石譲が、その時代の自身の作品からマイルストーンとして、選曲しリアレンジしたもの
  • 劇中音楽という映画シーンに合わせた楽曲を、音楽単体で音楽完成型として発表したもの
  • 映画やCMの短いフレーズを、ひとつの楽曲として構築、新しい楽器編成で作品化したもの
  • 時代ごとの集大成として、映画やCMから解放された音楽作品 久石譲オリジナル・ソロ作品
  • 大衆性 × 芸術性 どちらも両立させた久石譲音楽の真骨頂

 

つまりは、久石譲自身が、音楽活動の歴史において、大切にしている音楽作品たちが、「Piano Stories」シリーズと「WORKS」シリーズには詰まっています。久石譲の音楽活動の歴史における、ライフワーク、その時代ごとの集大成、それが「Piano Stories」であり「WORKS」です。

その延長線上に位置づけられて発表された「ENCORE」(ピアノ・ベスト盤)、「Melodyphony」(オーケストラ・ベスト盤)にも同じことが言えます。

これらの作品からの選曲というのが、今回のジブリ・ベスト・アルバムのポイントになっています。

 

宮﨑駿監督との30周年の振り返りを、あえてサウンドトラックや劇中オリジナル音楽からでななく、自身の音楽完成型としての「宮﨑駿作品」音楽によって、映画の一部としてではなく、芸術性のある「スタジオジブリ音楽」として、映画本編やスクリーンから解放された音楽作品(大衆性 × 芸術性)として、音楽家 久石譲として、監督 宮﨑駿と対峙する。

そういった趣旨になっているように思います。

 

  • 収録曲すべてがサウンドトラックからではない
  • 劇場版オリジナル音源ではない
  • 映画「風立ちぬ」からは収録されない

上の2点は解説できましたとして、『風立ちぬ』のことに触れてみます。上の2点の趣旨にかぶるというか背景は含まれるのですが、映画『風立ちぬ』は公開が2013年でした。

まだ公開されて1年も経っていません。そして同時に、『風立ちぬ』の音楽としては、「風立ちぬ サウンドトラック」という1作品でしか発表されていません。

「Piano Stories」シリーズや「WORKS」シリーズとして、久石譲が『風立ちぬ』の音楽を、音楽作品として再構築する経過に至っていない、そういうことからだと思います。

 

だったら、ボーナストラックとして、映画『風立ちぬ』のメインテーマ曲である「旅路」をピアノ・ソロで収録してほしい!そういう気持ちもたしかにありますが、そういうかたちでこの音楽を扱いたくなかったのではないかと。

思い入れも強い作品であることは間違いないですし、つけやきば的に、ピアノ・ソロで録音しとこう、とはならなかったのではないかと推測します。

それだけ大切にしているスタジオジブリ音楽、宮﨑駿作品ですので、久石譲が『風立ちぬ』の音楽を振り返り、音楽完成型として再構築し、新しい息吹きがその音楽に吹き込まれたその時に、新しい音楽作品として発表されるのではないか、と思っています。

(偉そうにすいません)

 

いろいろと自分なりに情報や収録曲から、考察してみました。いや、とにもかくにも!純粋にCD発売が楽しみですね。

初音源化の「海のおかあさん / 林正子」(崖の上のポニョ)も、同サウンドトラックではフルコーラスの収録ではありませんでしたから。「久石譲 in 武道館」コンサートでも披露されたフルコーラスを初収録なのか、はたまたアレンジや楽器編成なども変わっているのか?

楽しみですね。またこのCDに関する情報をキャッチしましたら、更新ご紹介していきます。

 

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ジブリ・ベスト ストーリーズ(CD)

 

Blog. 「クラシック プレミアム 3 ~ドヴォルザーク/スメタナ~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/2/8

「クラシック プレミアム」第3号は、ドヴォルザークとスメタナです。

【収録曲】
ドヴォルザーク 交響曲 第9番 ホ短調 作品95 《新世界より》
イシュトヴァン・ケルテス指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1961年

ドヴォルザーク 弦楽のためのセレナード ホ長調 作品22
ラファエル・クーベリック指揮
イギリス室内管弦楽団
録音/1969年

スメタナ 連作交響詩 《わが祖国》 より 第2曲 《モルダウ》
ラファエル・クーベリック指揮
ボストン交響楽団
録音/1971年

 

どの曲も小中学校の音楽授業でも耳にしたことのある曲ですし、それ以外でもTV・CM・映画など、いろいろな方面で聴いたことのあるおなじみの曲です。

 

「久石譲の音楽的日乗」第3回は、指揮者についてのあれこれ

指揮者の仕事や役割がわからない素人にとっては、とても具体的な話もあり、興味深く一気に読みました。結局、楽器や編成、譜面が同じであれば、誰が指揮をしたとしても、同じ曲は同じように鳴るんじゃないかと思ってしまうことも、「あっ、だから指揮者によってここまで演奏が変わってくるんだ」ということがすごくよくわかりました。

なるほど、本当に奥が深いです。

そういった話を、
●指揮者、映画監督、野球の監督、3つの共通点から
●ベートーヴェン 交響曲 第9番 第3楽章のテンポの問題から

わかりやすく解説しているのがおもしろかったです。また、作曲家が指揮をすることの意味を語っています。その箇所を今回は一部抜粋して紹介します。

 

「生のオーケストラでクラシック音楽を指揮するということは、いろいろなことをリアルタイムで音を出しながら確認でき、それがうれしい。じつは作曲家で指揮をする人は意外に少ないが、それは残念なことだと思う。頭だけで作曲し、現実と自分がやりたいことがどんどん乖離してしまうからだ。現代音楽の作曲家ペンデレツキもよく指揮をし、『曲だけ書いていてもだめだよ』と言っている。自分が演奏して思い通りにならなかった点を確認し、観客の反応もみてやっていかないと、よりよい音楽活動はできないのだと。作曲と演奏は分離してはならず、連動していくべきなのだ。それは作曲家にとってもオーケストラの未来にとっても、とても重要なことだと僕は思う。」

 

なるほど。

だから久石譲作品でも、フルオーケストラとして発表されているオリジナル作品でも、コンサート演奏を繰り返すたびに、改訂されていることもしばしばあります。先日もご紹介しましたが、「5th dimension」やその他多くの作品も、CD化した時点でのものを完成型やゴールとせずに、そこからまた時間の経過や演奏公演に伴って進化し変化していっているのだなあと。

 

また「クラシックプレミアム」本誌では、様々な角度からクラシック音楽を紐解いていますが、そのなかでクラシック音楽の歴史を毎号少しずつ紹介しているコラムがあります。

そういった他の読み物もとてもおもしろく毎号楽しみにしています。

  • クラシック音楽とはいつの時代の音楽をさすのか
  • バロック時代、古典派、ロマン派など、時代背景や楽器編成の特徴
  • 時代ごとに求められたクラシック音楽の役割
  • 宮廷音楽やBGM音楽としての依頼から、「自己表現する音楽」へと変化した時代

こういったことがわかりやすく毎号少しずつ解説されていておもしろいです。純粋にクラシック音楽を楽しむもよし、時代まで紐解いて味わうもよし。クラシック音楽の、バロックから古典派への変化のキーワードは、「コンサートという制度、ソフトとしての交響曲、楽器編成のスダンダード」とありました。この3つが大きくクラシック音楽の歴史と発展、進化に影響しているのだと。

 

これからますますクラシック音楽に触れるのが楽しみになっていきそうな予感です。耳も肥え、知識も肥え、少しずつクラシック音楽を「大人の嗜み」にしていけたらと思います。

また次号以降も紹介していきます。

 

クラシックプレミアム 3 久石譲

 

Blog. 「クラシック プレミアム 2 ~モーツァルト1~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/2/3

「クラシック プレミアム」第2巻は、モーツァルトでした。収録曲は下記のとおりです。

【収録曲】
カラヤン円熟期の、自在なる境地
《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1981年

若きピリスとアバドの絶妙な出会い
ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467
マリア・ジョアン・ピリス(P)/クラウディオ・アバド指揮/ヨーロッパ室内管弦楽団
録音1993年

モーツァルト弾きグルダ、’75年に成し得た渾身の名演
ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595
フリードリヒ・グルダ(P)/クラウディオ・アバド指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1975年

 

「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はもちろん誰しも知る有名な曲です。たしかに今回のカラヤン指揮の演奏は、従来のイメージと違う印象でした。クラシック音楽って指揮者や演奏者で本当に変わってくるんですね。

聴き比べをしたわけではないですが、素人の耳にも、「なんか今まで自分が知っていたものと違う」という違和感や新鮮な響きを発見するような感じです。

そしてこの「クラシックプレミアム」のすごいところは、作曲家のことから、当時の時代背景、曲ごとの誕生秘話も細かく紹介されています。それぞれの曲も、さらに楽章ごとの解説がありまして、たとえば「展開部([5]6分41秒)において ~ 」というように、収録CDの何曲目のどのあたりのこと、というのがわかるようになっているんですね。

これにはびっくりしました。確かに私のような素人には、解説しているのが曲中のどの箇所のことなのか、わからない場合が多いですから。

マガジン片手にCDを聴きながら、読みながら、そんな至福の時間になっています。クローズアップしている指揮者や演奏家の紹介や解説も詳細で、こうやって作曲家/作品/指揮者/演奏家などいろいろな角度からクラシック音楽を紐解いていく道がつながっていくんだろうなあ、と奥深さをあらためて。

 

さて、楽しみのひとつである「久石譲の音楽的日乗」です。

今回のコラムタイトルは
クラシック音楽を指揮するようになるまで

有名な話ですが、現代音楽、とりわけミニマル・ミュージックにのめり込んだ20代。そしてそれをやめてポップス・フィールドに入っていく30代。その経緯や当時の思いが綴られています。

初のオリジナル・アルバム『INFORMATION』を発表したのが1982年。同時期に、宮崎駿監督と出会い、映画「風の谷のナウシカ」(1984年公開)の音楽を担当。33歳のときだったそうです。

まさに音楽ジャンルの転換、フィールドの変化、そして運命的な出会い。今に引き継がれる「久石譲音楽の誕生」となった分岐点ですよね。

さて、映画音楽界での仕事と、クラシック音楽の指揮をするようになった経緯。今回のコラム連載でこのように語っていますので一部抜粋紹介します。

 

「映画音楽を書きだすと、はじめはシンセサイザーを使っていたのだが、だんだん、弦楽器やオーケストラなど生の楽器を使う機会が増えてきた。特に『もののけ姫』(1997年公開)のころから、フルオーケストラで映画音楽を書くようになった。フルオーケストラの見本はクラシック音楽にたくさんあった。多くの作曲家が命をかけて作った交響曲など、長い年月のなか生き残ってきた名曲が山ほどある。そこにはオーケストラ曲を書くためのコツ、秘密が満載されていたのだ。大学時代にクラシックをもっと勉強しておけばよかったと、つくづく後悔したものだ。」

「スコア(総譜)をながめるだけでも、その秘密は探れる。だが、ほんとうに自分の血となり肉となるには、みずからその作品を指揮するのが一番だと思う。自分でオーケストラに指示し、音を出させるのだから。これが、僕がクラシック音楽を指揮してみようとしたきっかけだった。あくまで、自分の作曲活動の役に立つと思って始めたのだ。でも、そこから僕のクラシック音楽との新たな関係が生まれることになっていくのだった。」

 

ここでコラムは結ばれています。

3巻目以降も、いろいろな角度からクラシック音楽を綴ってくれるのだと思います。久石譲が思う、クラシック音楽や、好きな作曲家や作品…どんな話が飛び出すのか楽しみです。

モーツァルトは、ほんと優雅で美しく上品ですね。CDを聴きながら穏やかなひとときです。「クラシックプレミアム」シリーズ詳細や、過去関連記事もまとめていますので、ぜひご覧ください。

 

クラシックプレミアム2

 

Blog. 「クラシック プレミアム 1 ~ベートーヴェン1~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2014/2/2

2014年1月4日から創刊された「クラシック プレミアム」です。全50巻の刊行予定で、SHM-CD付きマガジンとなっています。

とても楽しみにしていました。理由は大きくふたつあります。

もちろんひとつは、「久石譲の音楽的日乗」というコラムが連載されることです。毎号楽しみに読んだとして、全50巻ということは、最終的に書籍1冊分が発行されるくらいの質量になっているはずです。

もうひとつは、ちょうどクラシックを学びたいと思っていた時期と、幸運にもタイミング的にぴったりだったからです。昔からピアノをやっていたので、知っている曲や知識も多少はありますが、ここらでもう一度クラシックの世界を勉強したいなと思っていました。

どういう曲があるのか?どういう作曲家がいるのか?どういう時代背景や秘話が名曲たちの誕生にひそんでいるのか?また曲ごとに名盤と言われている指揮者や演奏者たちは?

なかなかこれらのことを知りたいと思うと、どこから紐解いていいのやら…となってしまいます。クラシック音楽やジャズ音楽などの世界は奥が深いですから中途半端に手を出すと、ただただ溺れてしまいます。

今回の小学館から創刊された「クラシック プレミアム」全50巻は、まさにクラシック音楽の世界に触れる素人にはもってこいかな、と思って喜んでいます。これから学んでいくための手引きとなってくれたらいいなと。

 

記念すべき創刊号は、カルロス・クライバー指揮による、ベートーヴェン 交響曲第5番/第7番です。もちろんカルロス・クライバーという名指揮者すら知りませんでしたので、マガジンも読み応え満点、CDも聴き応え満点でした。

 

今回紹介したいのは、もちろん久石譲の連載内容です。

「久石譲の音楽的日乗」の記念すべき第1回は、第5番でも第7番でもなく、ちょうど自身のコンサートプログラムの時期もあってか、「第9」を指揮して思うこと というタイトルとその内容になっていました。

第9の誕生物語から、復活上演までの時代背景、音楽的構造の解説まで、さすが自身でタクトを振るだけあって、すごい知識と説得力でした。それは作曲者でもあり、指揮者でもあり、両方の側面からのベートーヴェン論が垣間見れて非常に興味深かったです。

一部だけ抜粋紹介します。

「第9の基本的構造は第5番《運命》と同じ、苦悩から歓喜へという図式。この構造は聴く側もカタルシスを得やすい。耐えに耐えたあとの最後にくる解放。それを明確に示した曲が第5であり、第9だ。人間の生理に根ざしたものともいえる。ある意味、きわめてシンプルで明解な作品だが、そのシンプルさに難しさがある。」

 

「クラシック プレミアム」にCD収録されているのは
1. ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 作品67《運命》 録音1974年
2. ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92 録音1975~76年
カルロス・クライバー指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
3. ヨハン・シュトラウスII世:喜歌劇《こうもり》序曲 録音1975年
カルロス・クライバー指揮/バイエルン国立管弦楽団

 

そして久石譲指揮としても、ベートーヴェン第5番と第7番は 『JOE HISAISHI CLASSICS 4 』というCDにてライブ音源作品化されています。また直近では、2013年の「読響シンフォニックライブ」や「久石譲 第九スペシャル」などのコンサート活動としてもベートーヴェンの楽曲を取り上げています。いや、2014年の幕開けとなる最初のコンサート、1月11日に台湾・台北でのコンサートもベートーヴェン・プログラムでした。

それぞれ上の作品やコンサートに伴って、ベートーヴェンやベートーヴェン作品への思いも語っています。

 

「クラシック プレミアム」全50巻は、予定では2015年の11月まで続きます。隔週(火)発売ですので、1ヶ月で2巻分です。じっくり腰をすえて、耳を傾けながら、クラシック音楽を聴き学ぶには、これから2年間というのはいいスパンかもしれません。

ゆっくり継続してクラシック音楽の世界を楽しんでいこうと思います。もちろん久石譲の連載も毎号楽しみにしながら。また2巻目以降も、少しずつ紹介していきます。

 

高音質(SHM-CD)で聴く全230曲
これが5つの”プレミアム”

1.初めて聴く高音質でクリアな音
マスター・クオリティに限りなく近い高音質を再現できる、SHM(スーパー・ハイ・マテリアル)-CDを採用。

2.かつてない豊富な音源
ドイツ・グラモフォンやデッカなどを傘下に持つユニバーサル・ミュージックと、EMIクラシックスやテルデックのワーナーミュージックの協力により、いままでではありえなかった豊富な音源のなかから、歴史的名演奏、名録音を厳選して構成。

3.こだわり抜いた選曲、音楽家、演奏、そして編成
歴史的名演奏から、現在、世界に冠たる演奏家の演奏も収録。さらに、世界で活躍する日本人音楽家の最高の演奏を収録。

4.入門者にもよくわかり、クラシック通も楽しめる充実のガイドブック
楽曲、演奏家の詳細な解説とともに、クラシック音楽の歴史、内容、本質、楽しみ方がわかりやすく伝わる1冊。

5.平均収録時間68分を超えるCD
1巻目は、充実の80分を収録。ほかのほとんどの巻も収録時間が60分を超えた、まさにクラシック音楽が “ぎっしり” と詰まったCD。

 

クラシックプレミアム1

 

Blog. 文藝春秋 2014年2月号 スタジオジブリ 高畑勲×宮崎駿×鈴木敏夫 鼎談

Posted on 2014/2/1

文藝春秋 2014年2月号 にてスタジオジブリを代表する三人の鼎談(ていだん)が掲載されています。スタジオジブリ創設から今日までを担ってきた、高畑勲監督、宮崎駿監督、鈴木敏夫プロデューサーです。「スタジオジブリ 30年目の初鼎談」と題する内容です。

2013年の映画「風立ちぬ」(宮崎駿監督)、映画「かぐや姫の物語」(高畑勲監督)の公開、そして宮崎駿監督の引退宣言。二人の巨匠と名プロデューサーが三時間にわたって語り合った作品のこと、この国のこと。こういった見出しで始まります。

そもそも「鼎談」という言葉が読めなかったのですが…「鼎談」とは「ていだん」と読みます。その意味は「三人で語り合うこと」をさすようです。

とてもおもしろい内容でした。

宮崎駿監督が、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」のことを、高畑勲監督が、宮崎駿監督の「風立ちぬ」のことを、それぞれ鋭い視点と、お互いを熟知しているからこそ本音を語っているわけです。

「そういうところを見ているのか」と、その細やかな着眼点にただただ驚かされます。お互いの作品を批判する、口を出す、というよりも、尊重したうえで、自分の意見や疑問点をぶつけるといった内容でした。

宮崎駿監督、高畑勲監督のそれぞれの個性や特長、仕事の進め方や考え方の違いが、お互いが話すからこそ見えてきて、とてもおもしろかったです。

 

また昔のディズニー映画黄金期と言われる頃の(『101匹わんちゃん』や『風車小屋』という作品が登場します)ディズニー作品に受けた衝撃を、とてもリアルに語り合っています。

様々な革新的な試みが行われていた、鉛筆線をペンでトレースする方法から、ゼロックスによるコピーに切り替えた、マルチプレーンカメラという奥行きの出るカメラで撮影して、独特の効果を出している、

などなど、専門分野以外の人にはなかばちんぷんかんぷんな内容ですが、語り合っている熱は感じることができました。

そうやってディズニーは革新的な方法をまずは短編映画で実験し、そのあとに長編映画で使うという手法をとっていたようです。

そのやり方は、宮崎駿監督にも言えることで、三鷹の森ジブリ美術館で上映される短編映画では、いろいろな実験的な試みをしているようです。そういえば、映画「風立ちぬ」の効果音は、「人の声」ということで話題になりましたが、それも2006年の短編映画「やどさがし」ですでに試みて実験しています。当時、三鷹の森ジブリ美術館に行ったときに、この作品を見たのですが、タモリさんと矢野顕子さんが、その効果音をされていたのを覚えています。

 

話は、その効果音のことから、映画「風立ちぬ」での話題になります。ここに久石譲さんも関連しますので、少し本文を抜粋紹介します。

 

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高畑 「『風立ちぬ』では零戦のプロペラ、機関車の蒸気、車のエンジンの音を、声で表現していましたね。」

宮崎 「今、零戦のエンジンを録ろうと思っても、音がないんです。今の飛行機を使っても、昔のエンジン音ではないし、ロクなものが録れない。再現するのは無理だから諦めて、声でやってしまおうという発想でした。マイクとスピーカーを上手く使えば相当色んな音が出るし、そっちのほうがいいと思ったんです。」

高畑 「あれは聞いていて面白かった。単なる音じゃないんですね。やっぱりそこに人間味が感じられるんですよ。特に効果的だったのは、エンジンの爆音や関東大震災の地響きの音。「鳴る」という言葉には、神の怒りに通じるものを感じるけれど、そういうものは人間の声を通すことによって、非常に効果的に表現できていたと思う。」

鈴木 「興味深かったのは音楽を担当した久石譲さんの指摘でした。効果音は音楽の邪魔にならないけど、人間の声でやると音楽でぶつかる、というんです。つまり、声で入れた効果音って一種の音楽でもあるんですね。」

宮崎 「あれは鋭い指摘でしたね。だから音楽とぶつからないよう、タイミングをずらしたり、音量を調整したり。『風立ちぬ』で関東大震災を描いたのですが、地響きの音って何だろうと。東日本大震災が起きたとき、自分のアトリエで、じっとどういう音が聞こえるのかと耳を澄ませていたのですが、戸棚から物が落ちる音だけがやたら響くだけで、すごく静かだった印象があるんです。」

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とても興味深い、制作秘話です。

ほかにもこの鼎談では、高畑勲監督と宮崎駿監督が関わった『赤毛のアン』や(新世紀エヴァンゲリオンシリーズ監督の)庵野秀明監督が熱望している『風の谷のナウシカ』続編構想、このふたつの作品から、なんの話を力説しているかといえば、「アニメーションの線、線の力、線の存在感や生かし方」、そんなディープな話が繰り広げられています。

最後に鈴木敏夫プロデューサーから巨匠ふたりへのとっておきの質問が。以下そのまま引用します。

 

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鈴木 「最後に聞いてしまいますが、お二人は、お互いの作品で何が一番好きなんですか?」

高畑 「僕は『となりのトトロ』が一番好きですね。」

宮崎 「『アルプスの少女ハイジ』ですね。僕も参加したし、他のスタッフも努力したけれど、やはりあれは高畑勲が作り上げたものですよ。もっとちゃんと評価されてしかるべきものなのに誰も評価していないから、頭に来ているんですよ。」

高畑 「僕のことはどうでもいいんだけど、『ハイジ』は「天の時、地の利、人の和」、この三つがすべて揃った。」

宮崎 「一生涯に一度あるかないかのことですよ。でもスケジュールはむちゃくちゃで、今日、外注の仕事を回収しなければ間に合わないという日に大雪が降った。タイヤのチェーンが買えない、どうしようと大騒ぎしたこともありました。でもああいう作品に出会えてよかったですね。」

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さすがスタジオジブリを支えてきた三人の贅沢な鼎談です。11ページにも及ぶお三方の話は各界から注目されているだろうな、と思います。まだまだ現在進行形な創作意欲をこのお三方から感じるのは、私だけでしょうか。

この鼎談をじっくり読んだ方なら誰しも、その「創作意欲の貪欲さと若さ」に圧倒されると思います。ぜひ2013年の “ジブリ・メモリアル・イヤー” を総括、振り返る意味でも、興味のある方は「文藝春秋 2014年2月号」を手にとってみてください。またジブリ作品が観たくなる、そんな内容になっています。

 

文藝春秋 スタジオジブリ

 

Blog. 久石譲 2013-2014 年末年始コンサートレポート (オフィシャルブログより)

Posted on 2014/1/28

ようやく久石譲オフィシャルサイトのスタッフブログにて2013年12月から2014年1月に行われた久石譲のコンサートレポートがそれぞれアップされていました。

セットリストや詳細など、やはりオフィシャルの情報がより精度が高いですのでこうやって少し遅れてでも?!情報を公開していただけるとうれしいかぎりです。

 

まずは2013年12月に東京・大阪にて開催された「久石譲 第九スペシャル」です。どちらも演奏曲目はすでに紹介していますが、公式スタッフブログでは、ゲネプロ(リハーサル)写真や、コンサート過程での出来事、本番の様子まで紹介してくれています。

余談ですが、冒頭を飾った「Orbis」、もしかしたら発表された「メロディフォニー」(2010年)から少し改訂されているかも、という実際にコンサートに行った方からの情報もありました。

 

そして2014年の幕開け、最初のコンサートとなったのはなんと海外。台湾・台北でのクラシック・コンサート ベートーヴェン・プログラムだったのですが、まったく情報が少なく。スタッフブログでとても細かく紹介されていました。

 

今回新しく知った情報としては、

  • 「5th Dimension」が今公演のために中間部などの緻密なアレンジが行われ改訂初演となったこと
  • 「Kiki’s Delivery Service」(魔女の宅急便)も今公演の編成に合わせて書き直されたこと

ふたつの楽曲で改訂初演だったという、贅沢な内容だったようです。

 

Joe Hisaishi Beethoven Concert 台北NSOコンサート

[公演期間]
2014/1/11

[公演回数]
1公演 国家音楽ホール National Concert Hall (台北市)

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:國家交響樂團 Orchestra: National Symphony Orchestra
ピアノ:孫悅兒 (ソン・ヨルム)

[曲目]
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番変ホ長調 作品73「皇帝」  ピアノ奏者:孫悅兒
ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 作品67「運命」
藤澤守(久石譲):5th Dimension ※改訂初演

—アンコール—-
Kiki’s Delivery Service (映画『魔女の宅急便』より) ※改訂初演

 

また公式スタッフブログでは、2014年久石譲台北コンサートのリハーサル風景や会場ホール写真、本番の様子や写真、公演後の共演者との写真などなど、盛りだくさんで紹介されていますので、ぜひそちらものぞいてみてください。

こちら ⇒ 久石譲オフィシャルサイト スタッフブログ

 

2013年~2014年の年末年始にかけて怒涛のコンサートだったわけですが、これからは「本業の作曲家モードにシフトチェンジ」と書かれて、スタッフブログは締めくくられていました。

2014年、今年のこれからの活動が楽しみです。またコンサート開催情報などが入手できましたら、随時このサイトにてご紹介してきます。写真は国家音楽ホール(台北市)のホール写真です。

 

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国家音楽ホール 台北 久石譲コンサート