1997年2月1日 CD発売 POCH-1621
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9004
1997年公開 映画「パラサイト・イヴ」
監督:落合正幸 音楽:久石譲 出演:三上博史 他
「映像で表現しきれなかった登場人物の気持ちや背景を、音できちんと語ったつもりです」
-脚本についてですが。
久石:
僕はもっとホラーに徹するべきだと思いました。ただ、たまたま他の仕事で大林監督にお会いした時に「実は今、ホラーをやってるんです」っていう話をしたら、大林さん曰く「ホラーは究極のラブロマンスだよね」って仰ったんですよね。要するに、現実の世界では何らかの理由でうまくいかなくて、片方があの世に逝っちゃたりして、そこから来る怨念のような物がいろいろ絡まってくる話だから、根底は究極のラブロマンスだと。その話を聞いてなるほどなって思いましたね。
-それで音楽的には。
久石:
音楽的に言うと、非常に綺麗なメインテーマをワンテーマ。後は完全なホラーサウンド。そのホラーサウンドも怖いタイプと、宗教がかった運命的な物とか、そういう使い分けで全体を構成しました。
-今回の音楽でのドラマ作りというのは。
久石:
落合監督の画は、波が寄せては返し、寄せては返しっていうある種の繰り返しのようにしてジワジワと来る感じなんですよ。それは僕が得意なミニマルミュージックにすごく近いんですね。だから監督が意図されたことと、僕が音楽的に設計図を引いたことがすごくいい形にドッキングしていると思います。
-今回の音的な部分についてですが。
久石:
恐怖を煽っていくシーンは、基本的に非常に不思議なエスニックな音とか、とんでもない生楽器ではない物を主体にしました。メインテーマに関しては、生の僕のピアノとか、クラシックのソプラノの歌手だとか、ストリングスだとか、非常に空気感のある人間的な物にして、思いっきり対比をつけました。
-今回の音楽のポイントは。
久石:
画面が進行していながら呼吸するように、音楽もやっぱり呼吸しているわけですよね。そうすると、これはもう僕のポリシーなんだけど、単に画面をなぞるような劇伴は一切、書いたつもりはないんです。むしろ映像で表現しきれなかった登場人物の気持ちとか背景、そういう事をきちんと語れるようにしたいと思っていて、もちろん映画にはいろんな要素があるし、映像あっての物ですから、完璧に出来たとは思ってないですけど、うまくいけたなっていう気はしています。
(Blog. 映画『パラサイト・イヴ』(1997) 久石譲 インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)
極端な言い方をすれば、本編音楽とサウンドトラック盤は別もの。CDに収録されたバージョンがそのまま使われているものはほとんど皆無と言ってもいい。映画シーンに合わせて少しアレンジが加えられているもの、ニュアンスの異なるCD未収録バージョン、また短い尺に当てこまれた未収録楽曲など。ここまで映画に使用された音楽と、サウンドトラックに収録された楽曲が一致しないというのも珍しい作品だと思う。世界観や楽曲の核はどちらも失っていない。それだけ、いかなるバリエーションに料理したとしても性格のはっきりした楽曲が書き下ろされているということ。メインテーマ「Eve」もおそらく3~4バージョンは聴くことができる。映画の世界を越えてエバーグリーンな名曲。
言い換えれば、このサウンドトラック盤は、通常手掛ける映画音楽のなかで、音楽作品としてきっちり仕上げた作品とも言える。本編音楽をつけたあとに、CD制作作業に入っているはずだから。
「EVE -パラサイト・イヴのテーマ」
1997年1月25日 CDS発売 PODH-1339
1. EVE (パラサイト・イヴのテーマ) Vocal Version
2. EVE (パラサイト・イヴのテーマ) Piano Version
1. EVE-Vocal Version
2. Choral
3. Cell
4. Darkness
5. Explosion
6. EVE-Piano Version
All songs composed , arranged and performed by Joe Hisaishi
ゲスト・ミュージシャン
ヴォーカル:佐藤ひさら(藤原歌劇団)
アコースティック・ギター:古川昌義
ストリングス:後藤勇一郎グループ