Disc. 久石譲 『もののけ姫 サウンドトラック』

久石譲 『もののけ姫 サウンドトラック』

1997年7月2日 CD発売 TKCA-71168
2020年7月22日 LP発売 TJJA-10025

 

1997年公開 スタジオジブリ作品 映画「もののけ姫」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のフルオーケストラによるサントラ盤。録音は1997年5月。映画本編の楽曲を米良美一の主題歌も含め完全収録。本作の主題歌で久石は日本レコード大賞作曲賞を受賞、アルバム自体も企画賞を受賞している。

 

 

寄稿

雑誌の編集者という自分の仕事のテリトリーに則した比喩で恐縮であるが、エディトリアル・デザインと久石さんが仕事の中心にしているサウンド・トラックは似ているような気がしている。日本には優秀なデザイナーがたくさん居るが、エディトリアル・デザイン、つまり本や雑誌などの編集デザインをする人は少ない。理由は簡単で、報われる事の少ない仕事だからだ。広告デザインをやれば大きなお金になるし評価をする賞もたくさんある。しかしエディトリアル・デザインはお金にならないし、評価される場もない。仕事が簡単ならばいいが、ある意味で広告よりも才能と労力を要求される場合が多い。サウンド・トラックも同じだ。大きな才能と労力を要求されながら、報われる事の少ない仕事である。それこそ久石さんほどの才能があれば、それをお金に変える方法はポップ・ミュージックのフィールドにたくさんある。しかし久石譲はサウンド・トラックの仕事にこだわり続け、僕達はそのおかげで数多くの幸福な映像体験を持つことができた。

サウンド・トラックとエディトリアル・デザインの似ているところは他にもある。欧米における地位の高さだ。ジョン・ウィリアムズやエンニオ・モリコーネ、あるいはヘンリー・マンシーニなど巨人として知られている人は無論の事、若手にも優秀な才能が続々と現れている。そして、そういう才能はすぐに引っぱりダコになる。エディトリアル・デザインの世界もそうだ。例えば、イタリアン・ヴォーグやローリング・ストーンといった雑誌のAD(アート・ディレクター)が変わったりすると、編集長交替以上に話題になる。実際、ADが交替して売り上げが激減なんて事もあったりするのだから、当然だろう。同じ事がサウンド・トラックにも言える。ジョン・ウィリアムズの音楽なしの”スター・ウォーズ”は考えられないし、久石譲のない”風の谷のナウシカ”は考えられない。だから、もっともっと久石譲は評価されていい。僕も音楽評論家なんだから、余り客観的な事ばかり言っていてはいけないのだけれど。

では、何故にそういう貧しいエディトリアル・デザイン状況と、サウンド・トラック状況が生まれてしまったのか。理由は簡単だ。編集者と演出家が駄目だからだ。金がないの、余裕がないの、といった言い訳はいくらでもできるが、結局はそういう事だと思う。そんな中でも久石譲が存在する事ができたのは、宮崎駿を筆頭に優れた演出家が彼の仕事を理解したからだ。澤井信一郎、北野武、という日本映画のトップとの仕事がほとんどなのは、偶然ではなく、必然である。ゲーム業界の広井王子から宮崎駿まで、久石譲がいかにコラボレーションの対象を慎重に選んでいるかがよく分かる。

久石譲と宮崎駿の最新作は”もののけ姫”である。まだ作品は観ていないが、サウンド・トラックの出来は素晴らしい。いつも久石さんの仕事で感心するのは、テーマに相当するメロディーの許容量の大きさだ。サウンド・トラックの場合、ただ単にメロディーがポップ・ミュージックとしてキャッチーであればいい、というものではない。このCDを聞いても分かるように、このテーマのメロディーはいろいろなシチュエーションで反復される。ある一定の情緒しか呼び起こさないメロディーだと、状況変化の反復に耐えられないのだ。悲しいだけのメロディー、楽しいだけのメロディー、といったものでは駄目なのである。その点、この”もののけ姫”のテーマは、実に広いレンジの情緒に対応する力を持っている。まさにサウンド・トラックとして理想的だ。こうした点だけを考えても、いかにサウンド・トラックを作りあげていく作業が大変であるか分かると思う。

僕は演出家、宮崎駿も大好きだし、音楽家、久石譲も大好きである。この2人の共同作業を体験できる限り、日本映画も捨てたもんではないという気がして来る。そして僕も編集者としていい仕事をしなくちゃ、と改めて襟を正す気持ちになってくる。

渋谷陽一

(CDライナーノーツより)

 

 

「この映画の件で、初めて宮崎さんとお話した時に、直感的に今回、一番ベースになるのはオーケストラだろうと感じました。ですから二管編成の、六十六人によるオーケストラに、ほとんど全ての曲に入ってもらい、そこにエスニックな民族楽器と、隠し味的な電気楽器系をプラスするという形で作っていきました。こんなに大編成でやったのは、宮崎作品では初めてですよ。つまり非常に骨太の世界を望んだんです」

「自分にとって日本は非常に大切な要素だったので、もちろん積極的に取り入れました。ただ琵琶や尺八のように、その音がした瞬間に侍が出てきそうな音は極力引っ込めて、本当に音楽の骨格の中での日本的なものを相当意識して、五音音階と言いますか、西洋的なコード進行よりは、むしろアイルランド民謡に近い感じのものをベースに置きました」

「極力『これが戦闘シーンだ』というようなものは避けましたね。戦闘シーンの後で、そうならざるを得ないんだというような心境を歌うというような方向に考えて、レクイエムのように心情を表現するために音楽があるという考えを基本に作りました」

「イメージアルバムの1曲目の『アシタカせっ記』という曲です。『幸せは来ないかもしれないけど、自分から生きろ』というような、のたうちまわっている登場人物たちを俯瞰して見ているような音楽として、映画の冒頭とラストに流れています。そうなると、この曲の方が本当のメインテーマとしての重みを持っていると僕は思いますね」

Blog. 久石譲 「もののけ姫」 インタビュー 劇場用パンフレット(1997)より 抜粋)

 

 

「今までの作品は、イメージアルバムの段階で既に、作品のテーマが出ていたと思うんです。でも、今回は全然別ですね。イメージアルバムから残っている曲は、重要なやつを数曲…メインテーマの『もののけ姫』と『アシタカせっ記』、エンディングシーンに使う『アシタカとサン』。それ以外はほとんど変わりました。イメージアルバムというのは、絵がない状態で作品の世界を表現しようとしますよね。『もののけ姫』は、ストーリーがあまりにも劇的で強烈じゃないですか。だから、それを音楽で表現してしまったところがある。大作映画の力感のようなものを主眼において作ったわけです。ところが、実際に映画のなかで使う音楽を作ろうとしたときに、そういう部分は映像で十分表現されているから、登場人物の気持ちや宮崎さんの精神世界を表現しようと思ったんです」

Blog. 久石譲 「もののけ姫」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「すごいでしょ? あれね、映画館だともっとすごいですよ。椅子とかビリビリいってますから。こんなにいい音で録れるとは思わなかったというのが、正直なところなんですけど。

あの音は、自分のサンプリングで持っている、すごいいちばん重低音の出る「グランカッサ」という西洋的な大太鼓、それからエスニックのモノと、それから実際の東京シティ・フィルの大太鼓と、ティンパニなどをミックスして作った音なんです。でも、結局ティンパニは、芯が出ちゃうから極力抜きました。生の音とサンプリングと全部混ぜた音ですね。大太鼓を録る時にも相当苦労した。叩く場所なども、「この辺を叩いて、それをこっちから録って」とか、相当細かくやって録った音ですからね。出だしで「ドーン、ドーン」って二発鳴った時に、「あ、勝った」って思いましたね。」

 

「最後の部分のメロディーでしょ。あれを考案した段階で「勝った」と思いましたね。「いただき!」という感じです(笑)。結局歌の曲のメロディーをそのまま1コーラス使ってアルバムの中に歩かせると、すごくダサイんですよ。「いかにもテーマ曲ですね」みたいな感じというか。だから、いちばん最後のリフレインのところを使って、インスト・バージョンをもう1個作った。それを映画の旅立ちの場面のところから、順番に要所要所、サン(もののけ姫)と出会うシーンなどにその曲をつけていって、それがだんだんメロディーが伸びてきたら、「もののけ姫」の歌になるという。その設計が自分でも相当気に入ってます。」

 

「”間”というのか、わりと沈黙をどう作るかというか、それは、いちばん気を使った部分ですね。なにか、沈黙を作るって、音楽家は恐いんですよ。次々とメロディーを出したくなるから。だけど、あえてそういうのをずいぶん作っている。『レクイエム』なんかはそうですよね。だから、その作りが相当うまく、自分の中では新しく、「こういう表現も成り立つんだよな」って。その辺は自分でもすごく嬉しいところですね。」

Blog. 「KB SPECiAL キーボードスペシャル 1997年9月号 No.152」『もののけ姫』久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「もののけ姫」に関しては、宮崎監督から「覚悟を決めた映画を作るから」ということを聞いていました。「人がたくさん死ぬような映画だけど、この時代はこういうものを作らなくてはならない」という決意表明があったんです。そんな話をしていて、今回はフル・オーケストラで行こうということになりました。

宮崎さんの仕事は、とにかく丁寧さが別格です。この作品でも、最初にイメージ・アルバムを作って、そのアルバムを元にして綿密な打ち合わせを行った上でサウンドトラックを作っていったんです。映像を見て、映像のために本当に細かく作っている、まさにサウンドトラックといえる音楽ですよ。どれくらい細かい作業をしているかというと、例えば2分半とか3分程度の曲の中でも、その中で20箇所くらい絵と音楽をシンクロさせたりしているんです。それも1/30秒などの単位で。ですから、曲中でテンポもどんどん変わりますし、そのテンポも80,28とか、そこまで細かく設定しています。

ただし、あとで編集して合わせ込むなんてことは絶対にしません。テンポ・チェンジがプログラムされたクリックに合わせて生で演奏するんです。もちろん、演奏する人間にテクニックと能力がないと合いません。こういう手法に関しては「もののけ姫」がひとつのピークと言えるんじゃないでしょうか。

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

下記インタビュー記事でも、抜粋できないほどたっぷりと語られている。

 

 

 

「今まで僕はエンディングにはいつも絵を入れていたんですけど、今回の内容は絵を入れたくないなと思ったもんですから、『もののけ姫』のエンディングは幕にただローリングで字がぞろぞろ並ぶんですね。そこに音楽が、米良さんの歌がもう一回きちんと入って、それから久石さんのメインテーマが流れるんです。これはやっぱりきちんと聴くに値する音楽になったなと思いますね。ですから、名前なんか見なくてもいいですから(笑)、目をつぶっていただいてもけっこうですから、その音楽だけはそのまま座って聴いて欲しいなと。これは本当にそう思います。」(宮崎駿)

from 1997年NHKトップランナー

 

 

書籍「折り返し点 1997~2008」/宮崎駿・著に、詩が収載されている。これは監督から久石譲へ作品イメージを伝えるために書いた音楽メモのようなもの。「もののけ姫」「アシタカせっ記」「失われた民」「タタリ神」「犬神モロの君」「エボシ御前」「コダマ達」「ヤックル」「シシ神の森」。イメージアルバムのほとんどの曲がそろっていることがわかる。

*初出:『THE ART OF The Princess MONONOKE もののけ姫』徳間書店

 

 

 

 

音楽は今回も久石譲が担当した。久石の作業は、恒例のイメージ アルバム作りから始まった。まずは、いつもの宮崎のキーワードとそれにまつわる詩が手渡された。宮崎は「ひとつのメロディで、 猛々しくもあり、優しくもあり、象徴的なメロディを」と困難な注文を出し、しかも自身も物語に頭を痛めていたためか、「早く音を聞きたい」と要請した。

96年7月、異例の早さで全10曲で構成されたイメージアルバムが発売された。久石はこのアルバムで、大作にふさわしいスケール感を追求し、同時に琵琶・二胡・能管・龍笛などを駆使し、雅楽や中国音楽を意識した音作りを試みている。

しかし、本番で採用された楽曲はヴォーカル曲「もののけ姫」、メインテーマ「アシタカせっ記」、ラストのピアノ曲「アシタカとサン」 の3曲だけで、残り7曲はほとんど使われなかった。久石が映像の凄まじいまでの緊張感にそぐわないと判断し、もっと深い精神性を重視した楽曲がふさわしいと判断したためである。久石は一から新譜をおこし、66人・二管編成のフルオーケストラを使用、そこに篳篥・龍笛・和太鼓などをさり気なく挿入させ、シンセサイザーも併用した。前二曲は様々に変奏され、全編で使用されている。

当初挿入歌の予定はなかったが、モロの棲む洞窟の静かなシーンに歌が入ることになり、イメージアルバムの「もののけ姫」が採用となった。歌手は、宮崎がラジオで歌声を聞いて惚れ込んだというカウンター・テナーの米良美一に決定。特異の澄んだ声量で圧倒的な存在感を示し、主題歌としてラストのタイトルロールで再使用されることとなった。宮崎が久石に渡した短い詩がそのまま歌詞となっているため、歌は一番しかなく、二番はスキャットのみの変わった構成。レコーディングの際、米良は「感憤を抑制して」との指示により、誰の立場の歌か分からずに困惑したが、宮崎の「この歌は、アシタカがサンへの気持ちを歌ったもの」というアドバイスを基に歌い上げ、OKとなった。また、タタラ場の女たちが踏み糖を踏むシーンにもヴォーカル曲「エボシタタラうた」が作られた。こちら も宮崎の詩に久石が曲をつけたものだ。

主題歌のシングルCDは60万枚の大ヒット、「サウンドトラック」も過去最高の50万枚を売り上げた。97年11月に発表された「第39回日本レコード大賞」では、久石譲が「もののけ姫」で作曲賞を受賞。また、アルバム企画賞も「もののけ姫サウンドトラック」が受賞した。

大ヒットが一段落すると、「「アシタカせっ記」をスラブ色の強い一流オーケストラで聴いてみたい」という久石の発案で、交響組曲に仕立て直した楽曲が作られた。演奏は、歴史あるチェコ・フィルハーモニー管弦楽団、指揮はマリオ・クレメンスが担当した。録音は 98年6月6日から8日まで、プラハのドヴオルザーク・ホールで行われ、アルバムは「交響組曲もののけ姫」として98年7月に発売された。これも前例のない快挙であった。

(書籍「宮崎駿全書」より 抜粋)

 

 

 

2020.07 Update

2020年発売LP盤には、新しく書き下ろされたライナーノーツが封入された。時を経てとても具体的で貴重な解説になっている。

 

 

 

 

久石譲 『もののけ姫 サウンドトラック』

1.アシタカせっ記
2.タタリ神
3.旅立ち -西へ-
4.呪われた力
5.穢士(えど)
6.出会い
7.コダマ達
8.神の森
9.夕暮れのタタラ場
10.タタリ神 II -うばわれた山-
11.エボシ御前
12.タタラ踏む女達 -エボシ タタラうた-
13.修羅(しゅら)
14.東から来た少年
15.レクイエム
16.生きろ
17.シシ神の森の二人
18.もののけ姫 インストゥルメンタルバージョン
19.レクイエム II
20.もののけ姫 ヴォーカル
21.戦いの太鼓
22.タタラ場前の戦い
23.呪われた力 II
24.レクイエム III
25.敗走
26.タタリ神 III
27.死と生のアダージョ
28.黄泉の世界
29.黄泉の世界 II
30.死と生のアダージョ II
31.アシタカとサン
32.もののけ姫 ヴォーカル エンディング
33.アシタカせっ記 エンディング

映画「もののけ姫」主題歌
もののけ姫
歌:米良美一 作詞:宮崎駿 作編曲:久石譲

エボシ タタラうた
作詞:宮崎駿 作編曲:久石譲

 

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮:熊谷 弘

作曲・編曲・演奏:久石譲
プロデュース:久石譲

録音:1997年5月17日、18日
アバコクリエイティブスタジオ (早稲田)
ワンダーステーション

ミュージシャン:
ヴォーカル:新倉芳美/木村真紀/下成佐登子
ケーナ:旭孝
和太鼓:梯郁夫
龍笛:竹井誠
篳篥:西原祐二

 

Princess Mononoke (Original Soundtrack)

1.The Legend of Ashitaka
2.The Demon God
3.The Journey to the West
4.The Demon Power
5.The Land of the Impure
6.The Encounter
7.Kodamas
8.The Forest of the Gods
9.Evening at the Ironworks
10.The Demon God II – The Lost Mountains
11.Lady Eboshi
12.Tatara Women’s Song
13.The Furies
14.The Young Man from the East
15.Requiem
16.Will to Live
17.San and Ashitaka in the Forest of the Deer God
18.Princess Mononoke (Instrumental Version)
19.Requiem II
20.Princess Mononoke (With Vocal)
21.The Battle Drums
22.The Battle in front of the Ironworks
23.The Demon Power II
24.Requiem III
25.The Retreat
26.The Demon God III
27.Adagio of Life and Death
28.The World of the Dead
29.The World of the Dead II
30.Adagio of Life and Death II
31.Ashitaka and San
32.Princess Mononoke – Ending Theme Song with Vocal
33.The Legend of Ashitaka – Ending

 

Disc. 久石譲 『もののけ姫』

久石譲 もののけ姫 シングル

1997年6月25日 CDS発売 TKDA-71167

 

1997年公開 スタジオジブリ作品 映画「もののけ姫」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

サウンドトラック盤に先がけて主題歌が先行リリースされた。

なお、カップリング(c/w)に収録された「もののけ姫 インストゥルメンタル」は、いわゆるメロディの旋律を除いたものが1番、笛によるメロディや旋律を加えた2番で構成されている。また使われている楽器も聴き分けるとイントロから異なっており、オリジナル・カラオケと明記していない、すなわち単独のインストゥルメンタル版。

サウンドトラックには未収録ヴァージョンとなることから、このシングルでしか聴くことのできない貴重な音源である。

 

シングル盤には歌詞とメロディ譜(一段譜/コード)も掲載されている。

 

 

2004年10月27日 CDS発売 TKCA-72759

なお、2004年にマキシシングル盤として再発売されている。収録内容同一。

(CDジャケット / CD盤)

 

 

久石譲 もののけ姫 シングル

1.もののけ姫 歌:米良美一
2.もののけ姫 インストゥルメンタル

 

Disc. 久石譲 『パラサイト・イヴ』

久石譲  『パラサイト・イヴ』

1997年2月1日 CD発売 POCH-1621
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9004

 

1997年公開 映画「パラサイト・イヴ」
監督:落合正幸 音楽:久石譲 出演:三上博史 他

 

 

「映像で表現しきれなかった登場人物の気持ちや背景を、音できちんと語ったつもりです」

-脚本についてですが。

久石:
僕はもっとホラーに徹するべきだと思いました。ただ、たまたま他の仕事で大林監督にお会いした時に「実は今、ホラーをやってるんです」っていう話をしたら、大林さん曰く「ホラーは究極のラブロマンスだよね」って仰ったんですよね。要するに、現実の世界では何らかの理由でうまくいかなくて、片方があの世に逝っちゃたりして、そこから来る怨念のような物がいろいろ絡まってくる話だから、根底は究極のラブロマンスだと。その話を聞いてなるほどなって思いましたね。

-それで音楽的には。

久石:
音楽的に言うと、非常に綺麗なメインテーマをワンテーマ。後は完全なホラーサウンド。そのホラーサウンドも怖いタイプと、宗教がかった運命的な物とか、そういう使い分けで全体を構成しました。

-今回の音楽でのドラマ作りというのは。

久石:
落合監督の画は、波が寄せては返し、寄せては返しっていうある種の繰り返しのようにしてジワジワと来る感じなんですよ。それは僕が得意なミニマルミュージックにすごく近いんですね。だから監督が意図されたことと、僕が音楽的に設計図を引いたことがすごくいい形にドッキングしていると思います。

-今回の音的な部分についてですが。

久石:
恐怖を煽っていくシーンは、基本的に非常に不思議なエスニックな音とか、とんでもない生楽器ではない物を主体にしました。メインテーマに関しては、生の僕のピアノとか、クラシックのソプラノの歌手だとか、ストリングスだとか、非常に空気感のある人間的な物にして、思いっきり対比をつけました。

-今回の音楽のポイントは。

久石:
画面が進行していながら呼吸するように、音楽もやっぱり呼吸しているわけですよね。そうすると、これはもう僕のポリシーなんだけど、単に画面をなぞるような劇伴は一切、書いたつもりはないんです。むしろ映像で表現しきれなかった登場人物の気持ちとか背景、そういう事をきちんと語れるようにしたいと思っていて、もちろん映画にはいろんな要素があるし、映像あっての物ですから、完璧に出来たとは思ってないですけど、うまくいけたなっていう気はしています。

Blog. 映画『パラサイト・イヴ』(1997) 久石譲 インタビュー 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

 

極端な言い方をすれば、本編音楽とサウンドトラック盤は別もの。CDに収録されたバージョンがそのまま使われているものはほとんど皆無と言ってもいい。映画シーンに合わせて少しアレンジが加えられているもの、ニュアンスの異なるCD未収録バージョン、また短い尺に当てこまれた未収録楽曲など。ここまで映画に使用された音楽と、サウンドトラックに収録された楽曲が一致しないというのも珍しい作品だと思う。世界観や楽曲の核はどちらも失っていない。それだけ、いかなるバリエーションに料理したとしても性格のはっきりした楽曲が書き下ろされているということ。メインテーマ「Eve」もおそらく3~4バージョンは聴くことができる。映画の世界を越えてエバーグリーンな名曲。

言い換えれば、このサウンドトラック盤は、通常手掛ける映画音楽のなかで、音楽作品としてきっちり仕上げた作品とも言える。本編音楽をつけたあとに、CD制作作業に入っているはずだから。

 

 

「EVE -パラサイト・イヴのテーマ」

1997年1月25日 CDS発売 PODH-1339

EVE パラサイト・イヴのテーマ 久石譲 シングル 1

 

1. EVE (パラサイト・イヴのテーマ) Vocal Version
2. EVE (パラサイト・イヴのテーマ) Piano Version

 

 

 

久石譲  『パラサイト・イヴ』

1. EVE-Vocal Version
2. Choral
3. Cell
4. Darkness
5. Explosion
6. EVE-Piano Version

All songs composed , arranged and performed by Joe Hisaishi

ゲスト・ミュージシャン
ヴォーカル:佐藤ひさら(藤原歌劇団)
アコースティック・ギター:古川昌義
ストリングス:後藤勇一郎グループ

 

Disc. 久石譲 『EVE -パラサイト・イヴのテーマ』

1997年1月25日 CDS発売 PODH-1339

 

1997年公開 映画「パラサイト・イヴ」
監督:落合正幸 音楽:久石譲 出演:三上博史 他

 

メインテーマ曲のシングル盤である。同2楽曲(Vocal version / Piano version)ともに、サウンドトラック盤にも同音源が収録されている。

 

 

EVE パラサイト・イヴのテーマ 久石譲 シングル 1

1. EVE (パラサイト・イヴのテーマ) Vocal Version
2. EVE (パラサイト・イヴのテーマ) Piano Version

All songs composed , arranged and performed by Joe Hisaishi

ゲスト・ミュージシャン
ヴォーカル:佐藤ひさら(藤原歌劇団)
アコースティック・ギター:古川昌義
ストリングス:後藤勇一郎グループ

 

Disc. V.A. 『スタジオジブリ サントラ全集』

1996年12月21日 CD発売 TKCA-71100

 

ジブリがいっぱい
―スタジオジブリ作品 サントラ全集―

 

スタジオジブリ作品のスペシャルBOX
●「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「火垂るの墓」「魔女の宅急便」「おもひでぽろぽろ」「紅の豚」「海がきこえる」「平成狸合戦ぽんぽこ」「耳をすませば」のサウンドトラック10枚
●24金ゴールドディスクCD
●24bitリマスタリング
●ポスター原画コレクション(A4サイズ)
●スタッフリスト・作品データ
●新柄オリジナル・ジャケット
●ボーナスCDS

 

スタジオジブリ サントラ全集

Disc 1
「風の谷のナウシカ サウンドトラック ~はるかな地へ~」
Disc 2
「天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎」
Disc 3
「となりのトトロ サウンドトラック集」
Disc 4
「火垂るの墓 サウンドトラック集」
Disc 5
「魔女の宅急便 サントラ音楽集」
Disc 6
「おもひでぽろぽろ オリジナル・サウンド・トラック」
Disc 7
「紅の豚 サウンドトラック」
Disc 8
「海がきこえる」
Disc 9
「平成狸合戦ぽんぽこ サウンドトラック」
Disc 10
「耳をすませば サウンドトラック」

Disc 11 -Bonus CDS-
1.LE TEMPS DES CERISES
2.「魔女の宅急便」より ドラマ元気になれたら
3.なんだろう
4.そらいろのたね

 

Disc. 久石譲 『もののけ姫 イメージアルバム』

久石譲 『もののけ姫 イメージアルバム』

1996年7月22日 CD発売 TKCA-70946
2004年9月29日 CD発売 TKCA-72747
2020年7月22日 LP発売 TJJA-10024

 

1997年公開 スタジオジブリ作品 映画「もののけ姫」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

本イメージアルバムはいつも通りサントラに先がけて制作されたが、作品の制作期間が長期に及んだこともあり、映画公開の1年前に制作・発表された。宮崎監督の音楽メモを歌詞にして作曲された歌「もののけ姫」を、本アルバムでは麻衣が歌っている。

 

 

豪速球のキャッチボール

サウンドトラック音楽を作る前にまず、イメージアルバムを作り、宮崎監督と意見のキャッチボールをしながら、最終的な音楽の完成を目指す。その方法論は基本的に今回も変わるところはない。が、その緊張感といえば、前にも増して高まっている。イメージアルバムでは、通常映画の内容にあわせると言うよりも、意外な可能性を見つけだすこと、イメージが広がるものを提示していくことが重要だ。そしてそれを最終的に絞り込んでサウンドトラックに活かす。だからいつもイメージアルバムはもっとリラックスして作っていた。しかし、今回の「もののけ姫」では、最初の打ち合わせからかなり明確な、かつ圧倒的な作品世界の提示があった。まだ動く絵がほとんどないにも関わらず。キャッチボールで言えば、最初から豪速球がきたという感じなのだ。だからこちらもはじめから全力投球。

「もののけ姫」は日本にとどまらず、これから世紀末を迎える、世界中のすべての人々に向けて作られるものだと思う。その音楽を手がけることになって、いま一番考えていることは、日本人としてのアイデンティティーをどう保ち、どう表現するか。非常に深いところでのドメスティックさ、日本人であるということが、かえって世界共通語になるんじゃないかと思う。ではどうすればいいか。映画の公開まで、宮崎監督との豪速球のキャッチボールが続きそうだ。  (音楽/久石譲・談)

(CDライナーノーツより)

 

 

もののけ姫
詩・宮崎駿 曲・久石譲

はりつめた弓の ふるえる弦(つる)よ
月の光にざわめく そなたの心

とぎすまされた刃の美しい
そのきっさきによく似た おまえの横顔の
悲しみと怒りにひそむ まことの心を知るは
森の精 もののけ達だけ もののけ達だけ

(歌詞 CDライナーノーツより)

※劇場公開時の主題歌は歌詞が一部修正されている

 

 

「作るのに6ヶ月もかかっちゃったんだよね。予算は飛び出すわ、ソロアルバムより時間がかかるわで(笑)。でもあれって、たった一人に聴いてもらうために作ったんですよ。だからCDなんて出なくてよかったんだよね。」

「そう。宮崎さんが聴くこと以外は何一つ考えなかった。宮崎さんが早く聴きたいって望んだ、じゃあ作りますっていう非常にシンプルな関係なわけ。それと半年という期間は、『ナウシカ』以来の良い面もあるけどそうじゃない部分も含めたいろんなものを洗い流す意味で必要な時間だったんだよね。ただ、僕が宮崎作品のために書いてきた音楽を聴いてきた人からすると、何か不満みたいね。」

「愛とか感動とかロマンとか一切感じないでしょう。だから宮崎さんもすごく戸惑われたと思う。ただ、よく分かってる人達からは「ついに新しいところへ行ったね」と言われましたね。『もののけ姫』のイメージアルバムは僕にとってかなり大きかった。自分という人間をすごく考えましたね。」

「途中でかなり悩んだんです。「間違ったかな」と思うこともあった。だけど「僕はこれで作る」と宣言したんだから変えなかったんです。その作家としての姿勢を貫けるかどうかで半年かかった気がしますね。」

Blog. 「キネマ旬報 1996年11月上旬特別号 No.1205」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

書籍「折り返し点 1997~2008」/宮崎駿・著に、詩が収載されている。これは監督から久石譲へ作品イメージを伝えるために書いた音楽メモのようなもの。「もののけ姫」「アシタカせっ記」「失われた民」「タタリ神」「犬神モロの君」「エボシ御前」「コダマ達」「ヤックル」「シシ神の森」。イメージアルバムのほとんどの曲がそろっていることがわかる。

*初出:『THE ART OF The Princess MONONOKE もののけ姫』徳間書店

 

 

 

映画本編には使用されなかったが、「犬神モロの公」は映画『もののけ姫』予告編で強い印象を残している。

 

 

久石譲 『もののけ姫 イメージアルバム』

1. アシタカせっき
2. タタリ神
3. 失われた民
4. もののけ姫
5. ヤックル
6. シシ神の森
7. エボシ御前
8. コダマ達
9. 犬神モロの公
10. アシタカとサン

ゲスト・ミュージシャン
梯郁夫(パーカッション)
坂田美子(琵琶)
賈鵬芳(二胡)
竹井誠(能管・竜笛)
藤沢麻衣(ヴォーカル)
矢島富雄(チェロ)
小池弘之 ストリングス

 

Princess Mononoke Image Album

1.The Legend of Ashitaka
2.The Cursed God
3.The Lost People
4.Princess Mononoke
5.Yakkle
6.The Forest of the Shishi God
7.Lady Eboshi
8.The Kodamas
9.The Dog God Moro
10.Ashitaka and San

 

Disc. 久石譲 『銀河鉄道の夜 / NOKTO DE LA GALAKSIA FERVOJO』

久石譲 『銀河鉄道の夜』

1996年7月20日 CD発売 COCC-13556
2013年7月24日 CD発売 COCB-54072

 

久石譲が音楽でつづる宮沢賢治の世界
ピアノとシンセサイザーによる極上のヒーリング・ミュージック
ノンタイアップという企画作品ながら名曲たちが彩る

 

 

優しくも光が瞬くような (1) をはじめ「銀河鉄道の夜」の世界へ連れて行ってくれる。(3) でのヴァイオリンとピアノの美しく呼吸しあう旋律、(5) でのチェロとピアノの刻みあうリズミカルで弾ける音、(7) でのシンセサイザーをバックに響くピアノの神秘的なメロディー、どの曲もシンプルでいて美しい。ヴァイオリン、チェロ、オボーエなどとシンセサイザーの優しい音色が、満天の星空を映しだしてくれる。

サウンドトラックとは趣向が違うため、どの曲もひとつの作品としてメロディーが成立しているからかもしれない。それほどまでにリリカルな情緒的な佳曲がならぶ。これが映像作品とはまったく切り離された、音楽だけで作り上げられたコンセプトアルバムだけに贅沢な1枚である。

 

 

 

2013年7月24日 Blu-spec CD発売

宮沢賢治の没後80年(2013年時)を記念して、久石譲が「銀河鉄道の夜」を描いた1996年のオリジナル作品を再リリース。日本的情緒にあふれる癒しの音楽が、最新リマスタリング&Blu-spec CDで生まれ変わる。

 

 

久石譲 『銀河鉄道の夜』

1. 銀河鉄道の夜
2. 三人の漂流者
3. プリオシン海岸
4. 天気輪のワルツ
5. 鳥を捕る人
6. ジョバンニの風景
7. 北十字
8. サザンクロスの祈り ~New World~
9. カムパネルラ
10. 銀河鉄道の夜 (reprise)

except track8:「新世界より 第二楽章」/アントニン・ドヴォルザーク

Produced by 久石譲
All Songs Composed and Arranged by 久石譲

All Instruments Performed by 久石譲
except:原えつこ (Violin, Track 3&5) , 諸岡由美子 (Cello, Track 5)

イラストレーション:東逸子
原作:宮沢賢治

 

Disc. 久石譲 『Kids Return』

久石譲 『Kids Return』

1996年6月26日 CD発売 POCH-1576
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9003
2021年11月27日 LP発売 PROS-7035

 

1996年公開 映画「Kids Return」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:安藤政信 金子賢 他

 

 

[あらすじ]

懐かしい顔をシンジ(安藤政信)は見つけた。高校時代の同級生マサル(金子賢)。あの頃ふたりが熱中していたのは自転車の曲乗りだ。シンジがハンドルに後ろ向きに乗ってペダルを漕ぎ、マサルが荷台に跨って舵を取る。コツは息をぴったり合わせること。そうやって校庭に描いた軌跡のように、ふたりの道のりはいつまでも途切れず続くと思っていた。

マサルはやりたいと思えばすぐに行動し、ダメと分かればすぐあきらめて次のことをやる。自分がやりたいことだけをやってシンジとつるんで楽しく生きている。なじみのサテンで一服し、看板娘のサチコ(大家由祐子)に色目をつかうヒロシ(柏谷享助)を茶化し、気分が乗れば学校へ向かう。ホーキで作った”先公人形”を屋上から吊るし、キザな若手教師の自慢の新車を焼け焦げにしたり…そんなふたりは、担任(森本レオ)の目には”落ちこぼれ”としか映らない。

大学入試が近づき、授業もテクニック重視の実戦型に変わって、気ままなふたりの生活にも変化が訪れた。カツアゲた高校生の、助っ人ボクサーに叩きのめされたマサルはボクシングに励み、シンジも誘われるままジムに入門した。そんなある夜、いい気分で入ったラーメン屋でヤクザ(寺島進)に絡まれ、あわやのところを貫禄でさばいた若頭(石橋凌)にマサルは尊敬の眼差しを浮かべる。

数か月後、シンジは前座戦でデビューを飾り、やがて挑戦者の資格を得た。トレーナーがセンスを見抜き、コーチが口説いて、会長(山谷初男)以下ジムをあげてシンジをチャンピオン候補に育て上げてきたのだ。しかしジムにはマサルの姿はない。いつも後ろにつき従っていたシンジに、遊び半分のスパーリングで鮮やかなカウンターを食らって以来、マサルは姿を消したのだ……。

 

 

 

〈episode 3〉
特にこの作品のエンディングは、かなり印象的なシーンに仕上がりましたね。主人公の2人が「もう俺たち終ったのかな」「まだ始まってもいねぇよ」と言った瞬間にドーンとテーマ音楽とエンド・ロールが入ってくる。普通ロール・チャンスというと、映画の本編が終わり、ポツポツと立ち上がるお客さんに向けた”どうぞお帰り下さい”の合図みたいになりがちですが、でも「まだ始まってもいねぇよ」の台詞のあとにきわめて激しく飛び込んでくるこの作品の音楽は、ロール・チャンスをも作品の一部として取り込んでしまうほどの迫力があるし、それがあるから直前のシーンもより生きてくるという相乗効果をもたらしていると思うんです。メインテーマのキャッチーさでいえば、「菊次郎~」とともに、メロディメイカーとしての久石さんの力量を再認識させられます。

〈サウンドトラック制作進行ノート〉
1995年10月27日 調布にっかつ撮影所にて前半部のラッシュを見る。その後打ち合わせ。
1996年2月16日 にっかつ撮影所にてオールラッシュ。監督を交え最終打ち合わせ。
1996年2月29日 代々木にあるワンダーステーション2st.にて音楽制作開始。
1996年3月13日 音楽制作日程終了。

(「joe hisaishi meets kitano films」CDライナーノーツより)

 

 

「音楽的にいうと、僕は10代・20代の子が主人公だから、音楽は元気なものでやる必要性を感じていたんで、相当リズミックにしましたね。底辺のベースにあるのはユーロビート、もっというとディスコビートみたいなもの、その上に来るのが印象に非常に残るのに、歌おうと思うと歌えないくらい、拒否しているメロディなんですよ。北野さんもあのメロディをすごく気に入ってくれて、「いや~、メロディ残るなあ。いいよこれは」っておっしゃって、すごくうれしかったですね。特にラストシーンがね、「まだ始まっちゃいねえよ」って言った瞬間に、ピストルの音をサンプリングしたんですけど、ドヒューンといって、エンドロールになりますよね。もう「この効果狙ったね」って言われるくらいハマっちゃったんでね。あそこは北野さんも喜んじゃって「あのエンドロールのために映画があったなあ」なんてね。

あれはね、不思議な話、北野さんの事故後の復帰の映画であると同時に、僕にとっても復帰作だったんですよ、こんなこと話すのは初めてなんだけど。映画音楽から離れて、自分のソロアルバムをつくったり、他人のプロデュースをしたりしていて、1年半か2年のブランクがあった。そこへちょうど偶然にも、日本を代表する二人の監督に同時に頼まれたんで、「これはもう復帰しなきゃな」と。先にできたのが『キッズ・リターン』で、その次に『もののけ姫』の準備にかかった。そういう意味で『キッズ・リターン』は相当大事にしてつくった作品です。」

Blog. 「キネマ旬報増刊 1998年2月3日号 No.1247」北野武映画 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「あれは本当に、最後の最後に録った。ピアノは、実際に弾いて入れた音はすごく少ないんですよ。でも、それが印象に残るぐらい、生の存在感ってあるんですよね。それはプレイヤーの質もあるけどね。でも、結果的にピアノが目立ってくれて、僕自身は本当にほっとしているし、嬉しく思いますね(笑)。」

「”ミニマル”っぽいやつね。あれは、すごく苦労しました。ヤマハのVP-1とVL-1に、いくつか音色をブレンドして、あの空気感が出るまでやってみたんです。だから、あれを聴いた人はなかなか打ち込みとは思わないと思う。」

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1996年8月号 No.139」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

 

 

久石譲 『Kids Return』

1. MEET AGAIN
2. GRADUATION
3. ANGEL DOLL
4. ALONE
5. AS A RIVAL
6. PROMISE…FOR US
7. NEXT ROUND
8. DESTINY
9. I DON’T CARE
10. HIGH SPIRITS
11. DEFEAT
12. BREAK DOWN
13. NO WAY OUT
14. THE DAY AFTER
15. KIDS RETURN

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi

プロデュース・作曲・編曲・演奏:久石譲

ゲスト・ミュージシャン
角田順(ギター)
梯郁夫(パーカッション)

レコーディング・スタジオ:ワンダーステーション
レコーディング・エンジニア:浜田純伸(ワンダーステーション)
アシスタント・エンジニア:石原裕也(ワンダーステーション)
シンセサイザー・オペレーター:山田友規(ワンダーステーション)

 

Disc. V.A. 『アイドル・ザ・ムービー サウンドトラックコレクション』

1995年8月2日 CD発売 VPCD-81103

 

松竹映画サウンドメモリアル

アイドルの輝きに極上の音楽を……
「アイドルを探せ」「Let’s 豪徳寺!」ほか ’85年から’95年までに松竹が製作、配給した”アイドル映画”の背景音楽を集大成!

全9作品総収録曲数38曲

(CD帯より)

 

 

アイドルの微笑は音楽とともに──。

松竹百年を記念したサウンドトラックシリーズ ”松竹映画サウンドメモリアル”。小津安二郎、山田洋次、野村芳太郎、奥山和由等の個人作品集。江戸川乱歩原作ものや、「宇宙大怪獣ギララ」などのSF作品、さらに「必殺シリーズ」といったラインナップが並ぶ中で異色ともいえる企画がこの「アイドル・ザ・ムービー サウンドトラックコレクション」です。

’85年公開の早見優主演「キッズ」から’95年春に封切られた高橋由美子・山本耕史主演「時の輝き」までの9作品をセレクト。主題歌は各アーティストのCDですでに聴いていることでしょう。このアルバムでは映画公開当時にサントラ盤が未発売だったことによって聴きたいと思っても聴くことができなかったインストゥルメンタル楽曲を中心に構成しました。いずれも各場面や印象に残るセリフ等のバックに流れて、演出効果を高めた傑作ばかりです。

オムニバス盤であるが故に1作品あたりの曲数も限られており、各々のアイドルのファンの方全てが量的に満足いくものではないかもしれませんが、ここに集めた一曲一曲によって心のスクリーンにアイドル達の微笑ときらめきを映し出せることができれば企画者として嬉しく思います。

‘95.6.7 高島幹雄

(CDライナーノーツより)

 

 

この愛の物語

<収録曲解説>
(12) M-8 村雨との別れを大介の回想の形で描くシーンの曲。また、立花と村雨の友情のテーマ的な使われ方も。

(13) M-24 大介を想う時子が、彼のマンションを訪ねるシーンの曲。

(14) M-25 大介がスタントの特訓を行う場面の曲。

(15) M-28 大道寺監督の名セリフ「プロなら死ぬなよ!」の直後に流れる楽曲。

(16) M-32 日米大作スペクタクル・アクション映画の決死のスタントを描写した曲。

(17) M-34 ウタント大成功を讃えるように流れる曲。

(収録楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

※CDライナーノーツには全作品このように楽曲と使われた映画シーンの解説が掲載されている

 

 

1987年公開 映画「この愛の物語」
監督:舛田利雄 音楽:久石譲 出演:中村雅俊 他

このオムニバスCDには、久石譲が音楽を担当した映画「この愛の物語」の本編BGMのいくつかが収録されている。久石譲名義サウンドトラック盤「この愛の物語 オリジナル・サウンドトラック」も出ているが、歌曲を中心に構成されている。

久石譲 『この愛の物語 オリジナル・サウンドトラック』

 

1.オープニングテーマ / 久石譲
作曲・編曲:久石譲
2.レイン / 甲斐よしひろ
作詩・作曲:甲斐よしひろ 編曲:椎名和夫
3.Born To Be A Runner / 三浦秀美
作詩:Jim 作曲・編曲:久石譲
4.Take Me To The Party / 黒住憲五
作詩:Jim 作曲・編曲:久石譲
5.Flying High / SYOKO
作詩:SYOKO 作曲・編曲:久石譲
6.時間(とき)よ古い友達なら / 久石譲
作詩:冬杜花代子 作曲・編曲:久石譲
7.鳥のように / 和田加奈子
作詩:和田加奈子 作曲・編曲:久石譲
8.黒のラプソディ / BOOWY
作詩:氷室京介、松井五郎 作曲:氷室京介 編曲:布袋寅泰
9.Bitter Luck Lovers / 伊東真由美
作詩:冬杜花代子 作曲・編曲:久石譲
10.All Night / 高中正義
作詩:Daryl Canada 作曲・編曲:高中正義
11.眼差し / 黒住憲五
作詩:Show 作曲・編曲:久石譲
12.心戦場 / 大和美恵子
作詩:つかこうへい 補作詩:Show 作曲・編曲:久石譲

 

 

上記「この愛の物語 オリジナル・サウンドトラック」の収録曲と、オムニバスCDに収録されたBGM楽曲を照らし合わせると次のとおり。

 

12. M-8 (1:26)
「眼差し」インストゥルメンタル・バージョン。カラオケに近い音構成になっていて、メロディラインを器楽が奏でているが、バックミュージックはボーカル版と同じ編成による。イントロからAメロまでの構成になっている。

13. M-24 (1:34)
「鳥のように」インストゥルメンタル・バージョン。ボーカル版のリズムパートを抜いたしっとりとした構成。1コーラス流れる。

14. M-25 (0:51)
「Flying High」インストゥルメンタル・バージョン。こちらはほぼカラオケに近い。ボーカルのみを抜いたもの。

15. M-28 (0:45)
BGM専用楽曲。シンセサイザーによるもの。

16. M-32 (1:42)
BGM専用楽曲。シンセサイザーによるもの。

17. M-34 (1:00)
「心戦場」インストゥルメンタル・バージョン。ボーカル版はしっとりとした構成になっているが、こちらは壮大なシンセサイザーアレンジになっている。クライマックス的・エンディング的な本編盛り上がりシーンに使われたのかもしれない。

 

 

 

 

キッズ(’85) 音楽:ミッキー吉野
1. 「キッズ」(’85) M-10
2. 「キッズ」(’85) M-18 b type
3. 「キッズ」(’85) M-19 a type
アイドルを探せ(’87) 音楽:新川博
4. 「アイドルを探せ」(’87) M-1
5. 「アイドルを探せ」(’87) M-6
6. 「アイドルを探せ」(’87) M-8
7. 「アイドルを探せ」(’87) M-11・15
8. 「アイドルを探せ」(’87) M-24(「アイドルを探せ」アレンジ曲 作曲:林哲司)
Let’s 豪徳寺!(’87) 音楽:ミッキー吉野
9. 「Let’s 豪徳寺!」(’87) M-7’
10. 「Let’s 豪徳寺!」(’87) M-2
11. 「Let’s 豪徳寺!」(’87) M-15
この愛の物語(’87) 音楽:久石譲
12. 「この愛の物語」(’87) M-8
13. 「この愛の物語」(’87) M-24
14. 「この愛の物語」(’87) M-25
15. 「この愛の物語」(’87) M-28
16. 「この愛の物語」(’87) M-32
17. 「この愛の物語」(’87) M-34
東京上京いらっしゃいませ(’89) 音楽:松本治
18. 「東京上空いらっしゃいませ」(’89) M-3T3
19. 「東京上空いらっしゃいませ」(’89) 帰れない二人(JAZZ VERSION) 作詞・作曲:井上陽水・忌野清志郎/歌:小笠原みゆき
20. 「東京上空いらっしゃいませ」(’89) M-7T2
真夏の地球(’91) 音楽:平部やよい
21. 「真夏の地球」(’91) M-1T3
22. 「真夏の地球」(’91) M-1aT3
23. 「真夏の地球」(’91) M-33
満月 MR.MOONLIGHT(’91) 音楽:笹路正徳
24. 「満月 MR.MOONLIGHT」(’91) M-10
25. 「満月 MR.MOONLIGHT」(’91) M-28A
26. 「満月 MR.MOONLIGHT」(’91) M-33
27. 「満月 MR.MOONLIGHT」(’91) M-35
28. 「満月 MR.MOONLIGHT」(’91) M-36 (「Mr.Moonlight」アレンジ曲 作曲:Roy Lee Johnson)
29. 「満月 MR.MOONLIGHT」(’91) M-37
シュート!(’94) 音楽:土方隆行
30. 「シュート!」(’94) M-1-A
31. 「シュート!」(’94) M-1-B
32. 「シュート!」(’94) M-15
33. 「シュート!」(’94) M-32
34. 「シュート!」(’94) M-25
35. 「シュート!」(’94) M-33
36. 「シュート!」(’94) M-40
37. 「シュート!」(’94) M-44
時の輝き(’95) 作曲:西村由紀江 編曲:中村暢之
38. 「時の輝き」(’95) 時の輝き

※MONO→1~11・18・20~29
※STEREO→12~17・19・30~38

※このCDは、映画で使用されたオリジナルBGM(フィルムに収録する前のセリフ、効果音が入っていない元の純粋な音楽)を作品制作当時の音源で収録したものです。曲によっては音質が良くないものもありますが、古いマスターテープに起因するものです。オリジナル音源をそのままCD化するという制作意図により、そのような楽曲もあえて収録いたしました。ご了承下さい。また、作品タイトルの下にある記号はBGMのミュージックナンバーです。

 

 

Disc. 久石譲 『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 2』

1994年8月25日 CD発売 PICL-1084

 

1994年放送 NHK連続テレビ小説「ぴあの」
音楽:久石譲 出演:純名里沙 他

 

NHK連続テレビ小説「ぴあの」テーマ・ソング「ぴあの」(純名里沙&JOE’S PROJECT)、挿入歌「ぴーかぴか」、「へんなまち」(唄:純名里沙)を含む全15曲収録。

 

 

NHK連続テレビ小説「ぴあの」挿入歌
「ぴーかぴか/へんなまち」 純名里沙

1994年8月21日 CDS発売 CODA-467

ぴーかぴか 純名里沙

1. ぴーかぴか 作詞:富永元文 作曲:久石譲 編曲:青木望 歌:純名里沙(桜井ぴあの)
2. へんなまち 作詞:嶋田陽子 作曲:久石譲 編曲:青木望 歌:純名里沙
3. ふしぎなポケット 作詞:まどみちお 作曲:渡辺茂 編曲:小森昭宏 歌:濱松清香
4. ぴーかぴか 作曲:久石譲 編曲:青木望 (オリジナル・カラオケ)

 

同作品収録のTrack.15「ぴーかぴか」とはバージョンが異なる。編曲者が違うためである。

 

 

 

「(映画などの)メイン・テーマやNHKのドキュメンタリー番組「人体」とか、作品として残る仕事以外は断っていたので、テレビの劇伴は10年ぶりなんです。ずっと映画だけやってきているから、テーマをもとに適当にセレクトしてやればいいところを、映画のようにきちんと合わせて作っちゃった(笑)。NHK側が思いっきり恐縮していましたけど(笑)。15分番組だと約5曲入れてるから、週に6本で30曲でしょ? 10週書くと300曲。もちろん決まったテーマはあるから全部新しいわけじゃないけれども、途中でハッと気づいたら、とんでもない量を作ってたんです(笑)。『オリジナル・サウンドトラック ぴあの Vol.2』(8月発売予定)と合わせてもその中の抜粋でしかなくて、5枚ぐらい出せるんじゃないかっていう(笑)。でも、しかたがないですね。流れ作業的なテレビのやり方が、僕はあまり好きじゃないから。」

「ええ。テレビのスタイルに合わせて小編成にしたんですが、基本的にシンセサイザーが中心で、最後に全部まとめて録った生と混ぜてます。全体的なことで言えば、今回は半年間、毎朝流れるので何度聴いても飽きがこないように配慮してました。」

Blog. 「KB SPECiAL キーボード・スペシャル 1994年9月号 No.116」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

ぴあの オリジナルサウンドトラック volume 2

1. ぴあの (純名里沙&JOE’S PROJECT)
2. South WInd ~南風
3. Regrets ~夕焼け
4. Music Box ~lost
5. Searching Time ~探しもの
6. Broken Whistle ~拾いもの
7. She Calls ~おむかえ
8. Side Wals ~草笛
9. Piano
10. Music Box ~found
11. Tears ~夜
12. No answer
13. ぴあの ~Instrumental
14. へんなまち (純名里沙)
15. ぴーかぴか (純名里沙)

Produced by Joe Hisaishi

Musicians
Keboards:Joe Hisaishi
Additional Keyboards:Haruki Mino
Drums:Yasushi Ichihara
Bass:Chiharu Mikuzuki , Makoto Saito
Guitar:Jun Sumida , Shuji Nakamura
Accoustic Guitar:Hironori Miyano
Strings:Shinozaki Group