Posted on 2025/03/24
舞台「となりのトトロ」ロンドンで無期限ロングラン開幕
オリビエ賞6冠を受賞した舞台「となりのトトロ」が、ロンドンのウェストエンドで無期限ロングラン公演を開始した。 “Info. 2025/03/24 舞台「となりのトトロ」ロンドンで無期限ロングラン開幕(Webニュース各種より)” の続きを読む
Posted on 2025/03/24
舞台「となりのトトロ」ロンドンで無期限ロングラン開幕
オリビエ賞6冠を受賞した舞台「となりのトトロ」が、ロンドンのウェストエンドで無期限ロングラン公演を開始した。 “Info. 2025/03/24 舞台「となりのトトロ」ロンドンで無期限ロングラン開幕(Webニュース各種より)” の続きを読む
Posted on 2025/03/13
2025年3月13日(木)朝日新聞デジタルにインタビューが掲載されました
2025年3月13日(木)、朝日新聞デジタルに久石譲のインタビューが掲載されました。
3月1日に朝日新聞朝刊 大阪本社特集面に掲載されたインタビューの続編です。
下記リンクからご覧いただけます(有料版)。 “Info. 2025/03/13 「本籍はクラシック」の久石譲が考える、オーケストラとの良い関係(朝日新聞)” の続きを読む
Posted on 2025/03/04
久石譲「一生に一度はオケとじっくり深く仕事を」
「世界のヒサイシ」こと久石譲が、4月から日本センチュリー交響楽団(大阪府豊中市)の“顔”である音楽監督に就任する。2021年に首席客演指揮者に着任し、急速に関係を深めてきた。今後はプログラム策定や経営面などにも関わっていくといい、「過去から未来につながるクラシック音楽のあり方を追求したい」と声に力を込める。(青木さやか) “Info. 2025/03/04 久石譲「一生に一度はオケとじっくり深く仕事を」(読売新聞オンラインより)” の続きを読む
Posted on 2025/03/01
《前編》はジブリフィルムコンサートのプログラムや楽器編成そのほか参考作品までを見ていきました。《中編》《後編》は作品ごとに見ていきます。
▽プログラム
▽出演/楽器編成
▽歌
▽参考作品(DVD/TV/CD)
▽MUSIC VIDEO
▽INTERVIEW VIDEO
▽コンサート軌跡
▽風の谷のナウシカ
▽魔女の宅急便
▽もののけ姫
▽風立ちぬ
▽崖の上のポニョ
▽天空の城ラピュタ
▽紅の豚
▽ハウルの動く城
▽千と千尋の神隠し
▽となりのトトロ
天空の城ラピュタ
CASTLE IN THE SKY
武道館コンサート/パリ・コンサート
ハトと少年
君をのせて
大樹
編成特記:
マーチングバンド、合唱
↓
グラモフォン・アルバム
ハトと少年
君をのせて
Doves and the Boy
Carrying You
編成特記:
管楽、合唱、バンダ
全体構成は武道館/パリと変わっていません。
世界ツアーは公演ごとにマーチングバンドあり・なしで演奏形態が異なり、それに合わせて構成曲も三曲目「大樹/The Eternal Tree of Life」あり・なしになります。グラモフォン・アルバムはマーチングバンドではないオーケストラの管楽セクションと合唱で演奏される二曲です。世界ツアー版と位置づけられています。
《ハトと少年》武道館コンサートとパリ・コンサートは、観客席通路にくまなく配置された大所帯のマーチングバンドが魅力的です。後半部のくり返しと転調とで曲尺は長くなっています。グラモフォン・アルバムは、トランペットのメロディとホルンによって導かれます。パーカッション群も加わっていくこのパートは交響組曲とほぼ同じ構成と曲尺になっています。
コンサートではバンダによって演奏されます。バンダとは舞台上の編成とは別に離れた位置で演奏する演奏手法のことで、ここではトランペットとホルンが会場二階席の前方左右に分かれています。まるで映画本編でパズーがスラッグ渓谷からトランペットを吹いているように会場にメロディが降ってきます。
《君をのせて》武道館コンサートとパリ・コンサートは、引き続き観客席通路にくまなく配置された大所帯のマーチングバンドとステージの合唱・児童合唱で演奏されます。グラモフォン・アルバムは、オーケストラの弦楽器を除いた木管・金管楽器そしてパーカッション+合唱・児童合唱で演奏されます。この曲は日本語で歌われます。歌に寄り添うようにずっと吹き続けるトランペットの旋律もエスコートヒーローのパズーらしい。威厳ある英国風の曲想に仕上がっています。
《大樹》武道館コンサートとパリ・コンサートそして世界ツアーのマーチングバンドあり公演では演奏されます。パリ・コンサートがTV放送された「久石譲 in パリ」ではカットされていますがしっかり本演では演奏されています。
この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。
オーケストラのためのプログラム構成と楽器編成について。世界ツアーを展開していくなかで当初は組み込まれていなかった休憩時間も入るようになります。それにより『天空の城ラピュタ』開始前にバンダへ移動準備する時間もとれるようになります。『天空の城ラピュタ』は弦楽セクションの出番はないため楽器調整など休憩時間にあてることができます。次のプログラム『紅の豚』は管楽セクションの出番はないため楽器調整など休憩時間にあてることができます。プログラムの流れは『天空の城ラピュタ』でも演奏していたトロンボーンやクラリネットらがステージ中央に移動してきます。
紅の豚
PORCO ROSSO
帰らざる日々
Bygone Days
編成特記(武道館コンサート):
トロンボーン3、バストロンボーン1、テューバ1、アルトサックス1、テナーサックス1、大太鼓(グランカッサ)、シンバル、スネア
編成特記(パリ・コンサート/グラモフォン・アルバム):
トロンボーン3、バストロンボーン1、テューバ1、クラリネット2、バスクラリネット1、大太鼓(グランカッサ)、シンバル、スネア
全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽器編成から変化を見てとれます。
《帰らざる日々》久石譲によるピアノと10~11名の奏者によるジャジーなアンサンブルです。武道館コンサートは5人の金管楽器と2人のサクソフォン、そして3人のパーカッションです。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムはサクソフォンからクラリネットへと切り替わっています。サックスのほうが雰囲気でる、武道館のその印象が強い、そう思う人も多いかもしれませんが、そこにはしっかりとした理由あります。
武道館コンサートはオーケストラ編成のなかにアルトサックス1、テナーサックス1も入っていました。これは久石譲の創作活動においてこの時代のひとつの特徴とも言えます。サクソフォンの音色パレットの効いた作品には「Oriental Wind for Orchestra」(2005/2010)、「MKWAJU 1981-2009」(2009)、「The End of the World」(2009/2015)などがあります。以降、クラシック音楽の指揮活動を本格化させるなかで合わせて自作品もオーケストラの楽器編成と編成規模は標準化の流れへと向かいます。一般的なオーケストラ編成にサクソフォンは入っていません。これにより従来サクソフォンも編成された作品が改訂される際にはクラリネットなど他の楽器へと切り替わっていきます。編成に残っている作品もあります。ジャズクラリネットも多くのスタンダード曲があります。落ち着いた雰囲気でくゆらすクラリネットと円熟したピアノと。
コンサートではフィンガースナップ(指パッチン)も演出で聴くことができます。その歴史は2018年9月ロサンゼルス公演まではない、2018年11月カーネギーホールで開催されたニューヨーク公演ではある、ここから始まっているようです。もしかしたらリハーサルまでもなかったのかも、本演中に管楽器奏者の粋な演出で自然発生的に起こったことかもしれません。そうならさすがジャズの街ニューヨークらしいエピソードです。以降の公演でも定着していくことになるパフォーマンスです。
武道館コンサートはこの後メッセージ動画が流れます。パリ・コンサートはこの後鈴木敏夫プロデューサーと宮崎駿監督のメッセージがスクリーンに映し出されています。映画『君たちはどう生きるか』公開後はどうなっているのでしょう。
ハウルの動く城
HOWL’S MOVING CASTLE
シンフォニック・ヴァリエーション「メリーゴーランド+ケイヴ・オブ・マインド」
Symphonic Variation “Merry-go-round + Cave of Mind”
編成特記:
バンダ(*武道館コンサートのみ)
全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽器編成から変化を見てとれます。
交響変奏曲は「人生のメリーゴーランド」の変幻自在する旋律と「星をのんだ少年」の美しいメロディが組み込まれた作品です。武道館コンサートは「ケイヴ・オブ・マインド」パートはバンダによって演奏されます。バンダとは舞台上の編成とは別に離れた位置で演奏する演奏手法のことで、ここではトランペットとトロンボーンが会場二階席の前方左右に分かれています。各4人ずつ左右で計8人です。会場全体にこだまして響き渡っています。こんな離れ業ができたのも大編成だったおかげです。もともとトランペット8、トロンボーン8いた大規模編成はバンダ要員に配置してもしっかりステージにトランペット4、トロンボーン4と残っています。
パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは一般的なオーケストラ編成でトランペット3、トロンボーン3、バストロンボーン1です。「ケイヴ・オブ・マインド」冒頭からのメロディはトランペット1とイングリッシュホルン(コーラングレ)で奏でられます。バンダではなくステージから聴こえてきます。ここでもまたオーケストラ編成の変化からオーケストレーションの修正が施されています。
うっかり目から鱗かもしれませんがこの作品も待望の音源です。オリジナルアルバム『WORKS III』に収録されているのは「Symphonic Variation “Merry-go-round”」で「ケイヴ・オブ・マインド」パートはありません。「ハウルの動く城 オーケストラのための -オリジナル・スコア-」(2014)スコアの完全音源化とも言えてしまいます。これまでは参考音源は『久石譲 in 武道館』(ライヴ映像)や『The Best of Cinema Music』(ライヴ音源)としていたところに、編成規模もオーケストレーションも同じに対向配置でセッション録音されたものになるからです。今では世界中のコンサートで演奏されている作品です。演奏団体の皆さん、ぜひグラモフォン・アルバムを由緒ある参考音源にしてください。スコアを手に聴きながら、もし異なる箇所に気づけたとすればあの半音和音で揺れ動く久石譲のピアノイントロの長さやメロディ装飾ぐらいだったかもしれません(パート番号25)。
うっかり勘違いしてしまうかもしれませんが「Symphonic Variation “Merry-go-round + Cave of Mind”」は単純に「ケイヴ・オブ・マインド」パートをプラスでくっつけたものではありません。「Symphonic Variation “Merry-go-round”」の楽曲構成からパートの短縮やカットを経て「ケイヴ・オブ・マインド」パートが組み込まれています。その証拠に「Symphonic Variation “Merry-go-round”」約14分、「Symphonic Variation “Merry-go-round + Cave of Mind”」は約12分と演奏時間は短くなる魔法です。またオリジナル・スコアには代替バージョン(Alternative Version)も並べて書き記されています。近年久石譲が指揮するクラシック演奏会などでアンコールに選ばれることもある曲名「Merry-go-round」、冒頭のピアノパートがハープやグロッケンシュピールらに切り替わっているそのバージョンです(パート番号25)。
この作品で「人生のメリーゴーランド」のメロディを一度も弾いていないオーケストラ楽器ってあるかな、というほどの秀逸さです。グラモフォン・アルバムのCD限定盤DISC2には後半部の「人生のメリーゴーランド」パートを抜粋したトラックが特別収録されています。単曲でもオリジナル・スコアと同じに演奏することができます。代替バージョンでも演奏することができます。
オーケストレーションも楽器もすべての修正は論理的である。ゆえに説明できる。(by …)
千と千尋の神隠し
SPIRITED AWAY
あの夏へ(いのちの名前)
ふたたび
One Summer’s Day (The Name of Life)
Reprise
編成特記:
ヴォーカル
全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。
《あの夏へ(いのちの名前)》武道館コンサートは《あの夏へ vocal version 「いのちの名前」》歌とピアノのコラボレーションです。パリ・コンサートは久石譲によるピアノソロで披露されていて近年コンサートで聴けるものと同じになります。世界ツアーを展開していくなかでピアノソロとピアノ&ヴォーカルの両方が候補にあった時期も経ながら現在はグラモフォン・アルバムに収録されている最新版が定着しています。ピアノと歌どちらも輝き溢れる結晶は世界ツアー版と位置づけることができます。前半はスキャットで後半は日本語で歌われます。
2022年10月フランス3都市公演から英語バージョンも登場するようになります。これにはゲストヴォーカルがグラモフォン・アルバムで歌唱しているグレース・デイヴッドソンさんその人だったこともありそうです(アルバム録音2022年6月/アルバム発売2023年6月)。2023年9月ロンドン公演、2024年4月パリ公演、2024年5月ドイツ2都市公演も同様です。この曲は公演ごとのゲストヴォーカルによって日本語ver.と英語ver.とが選ばれていくのかもしれません。グラモフォン・アルバムのCD限定盤DISC2には英語バージョンも特別収録されています。
《ふたたび》武道館コンサートからグラモフォン・アルバムまでDVD/TV/CDと三つの音源を並べてみてオーケストレーションも少しずつ変化しているように聴こえます。とりわけ歌の最後でピアノとハープだけの伴奏になるところなど、フレーズとしてもピアノが前面に出てきたグラモフォン・アルバムです。振り返ってみるとイメージアルバム「千尋のワルツ」だった頃からピアノは主役のひとつでした。《あの夏へ(いのちの名前)》から《ふたたび》まで世界ツアー版は千尋をより鮮明に表現したものになっているのかもしれません。この曲は日本語で歌われます。交響組曲とはまた別モノでどちらも存分に楽しむことができます。
世界ツアー版は交響組曲の抜粋や短縮にあらず。どちらも曇りなき眼で見定めよ。(by …)
となりのトトロ
MY NEIGHBOR TOTORO
風のとおり道
さんぽ
となりのトトロ
The Path of the Wind
Hey Let’s Go
My Neighbor Totoro
編成特記:
合唱
全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。
《風のとおり道》武道館コンサートは、チェレスタ、ハープ、グロッケンシュピール、ウィンドチャイム、ピアノらの打楽器・鍵盤打楽器による演奏でした。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ピアノは外れてそこにマリンバやビブラフォンが配置されているように聴こえます。神秘性に包まれた精緻な音世界です。
《さんぽ》武道館コンサートは合唱とゲストヴォーカル総出演で歌詞の1番から3番までを日本語で歌いつないでいきます。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは合唱によって英語で歌われます。この曲はオーケストラの楽器紹介もそなえた「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」ver.がベースになっています。それを承知したうえでパート構成はこのように変化しています。
武道館コンサート:日本語
1番 木管楽器/合唱 ー 2番 金管楽器/合唱 ー 3番 弦楽器/児童合唱 ー 1番 打楽器・ピッツィカート/ゲストヴォーカル ー 3番 オーケストラ/大合唱 5times
パリ・コンサート グラモフォン・アルバム:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器・打楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/児童合唱 ー 1番 オーケストラ/大合唱 4times
世界ツアー version A:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/児童合唱 ー 1番 打楽器・ピッツィカート/ゲストヴォーカル ー 1番 オーケストラ/大合唱 5times
世界ツアー version B:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器・打楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/ゲストヴォーカル ー 1番 オーケストラ/大合唱 4times
世界ツアー version C:英語
1番 木管楽器/合唱 ー 3番 金管楽器/合唱 ー 1番 弦楽器/ゲストヴォーカル ー 1番 オーケストラ/大合唱 4times
武道館コンサートは、オーケストラストーリーズver.をそのまま土台としてパート構成は進みます。加えて編成されていたサクソフォンも間奏でしっかりフィーチャーしていたことも特徴です。
パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ゲストヴォーカルの1コーラス分がなくオーケストラの金管楽器・打楽器パートが合体しています。もともとあったものをなるべく忠実に配置しながらピッツィカートは外れています。
世界ツアーはABCと3つのバージョンがあるのではないかと推察しています。正確性は探求の余地があります。それはゲストヴォーカル参加で児童合唱(ユースコーラス)の出演あり・なしによって1コーラス分異なっているバージョンです。金管楽器・打楽器パートの合体具合(B,C)がよく掴めていない。これからコンサートで聴けるときには、グラモフォン・アルバムで予習しながらも世界ツアーversion A,B,Cのいずれかになるのではと思っています。もう何回も聴いておなじみと思っていた《さんぽ》も世界ツアーでしっかりアップデートされていて複数のバージョンが用意されています。
《となりのトトロ》武道館コンサートからグラモフォン・アルバムまで変わらない名曲です。変わる必要のないパーフェクトさです。中間部には久石譲によるピアノ演奏も入ります。コンサートではソプラノとヴォーカルのパートも入りながら熱狂的なコーダを迎えます。この曲は日本語で歌われます。スタジオジブリのシンボル的キャラクターでロゴにもなっているトトロです。同じようにジブリの夢を音楽のかたちにしたら「となりのトトロ」この曲だと言えてしまう輝きがあります。オーケストラの魅力、ピアノの魅力、歌の魅力、トトロの魅力、パーフェクトです。
この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。
武道館コンサートでは《さんぽ》のあとに宮崎駿監督の短いVTRが流れます。歌を口ずさんでいる映像の余韻にフェードインするように《となりのトトロ》が始まります。そして演奏後には鑑賞していた客席からステージへ歩いて向かい宮崎駿監督から久石譲へ花束が渡されるシーンは何度見ても感動的です。Blu-ray/DVDはアンコールまで完全収録されています。パリ・コンサートのTV放送はここまでです。アンコールはカットされています。グラモフォン・アルバムはアンコールにあたる楽曲は収録されていません。
—–アンコール—–
Madness (「紅の豚」より)
アシタカとサン (「もののけ姫」より)
—–encore—-
Madness from Porco Rosso
Ashitaka and San from Princess Mononoke
《Madness》武道館コンサートは久石譲によるピアノも冒頭メロディ、中間部の強打和音、終結部のメロディワンフレーズにと指揮とピアノを慌ただしく移動しています。アルバム『The End of the World』(2015)に最新の録音があります。世界ツアーはそれよりも少し短縮バージョンになります。そして終結部のメロディワンフレーズはフルートのみに切り替わっています。赤い照明演出も印象的です。
《アシタカとサン》武道館コンサートは日本語で、世界ツアーは英語で歌われます。久石譲によるピアノが1コーラスをオーケストラとともに奏で、間奏を挟んで合唱が1コーラスを歌います。コンサートでは間奏のところで今伝えたい久石譲のメッセージがスクリーンに映し出されています。2021年インタビューで「スタジオジブリフィルムコンサート世界ツアーで使用しているオーケストレーションを関連楽曲に導入した」(交響組曲もののけ姫について)と語っているとおり、歌われるキーの高さやオーケストレーションなど統一性もあります。そのうえで交響組曲はソロ・ヴァイオリンが1コーラスを奏で間奏を挟んでソプラノによって日本語で歌われます。
この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。
Joe Hisaishi said:
宮崎さんが「すべて破壊されたものが最後に再生していく時、画だけで全部表現出来るか心配だったけど、この音楽が相乗的にシンクロしたおかげで、言いたいことが全部表現できた」と話されていたことが、とても印象に残っています。
(Blog. 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る 『久石譲 in 武道館』より 一部抜粋)
映画「もののけ姫」のラストで「ともに生きよう」というセリフがある。それはお互いの痛みを分かち合いながら、希望を持ってそれぞれの場所でしっかり行動せよという意味にも僕には取れる。
(Blog. 「久石譲 3.11 チャリティーコンサート」(2011) コンサート・パンフレットより 一部抜粋)
ここまででコンサートの全てです。アンコールとはなっていますが切り離すことのできないプログラムです。それは映画エンドロールのあとに続くエピローグのようなもの大切なパートです。本演が終わって夢の時間を楽しんだで終わってしまっては…。今私たちが直面している世界を強く投影したかのような《Madness》、そして私たちの今と未来を問いかける《アシタカとサン》。現実と希望とをこの二曲が私たちに照り返しているようです。これから世界ツアーはどこまで羽ばたいていくでしょうか。アジアそして日本での凱旋公演も待ち望まれます。『君たちはどう生きるか』プログラムも加わってさらにパワーアップするのかどうなのか、夢はいつも膨らむばかりです。
グラモフォン・アルバム『A Symphonic Celebration』はジブリフィルムコンサートのマッチングアルバムとも言えます。けれど公式の商品情報では「世界ツアー中のジブリフィルムコンサートを最新録音で待望の音源化!」などと一切の関連ワード含めて使われていません。一番効果的かつインパクトのある宣伝で謳っていない。
そこには、アンコールまで完全収録されていないからとか、まだまだプログラムがバージョンアップするかもしれないとか、マーチングバンドあり・なしなど出演者によって演奏形態バージョンがあるとかいろいろあるのかもしれません。一番大切なことは「ジブリフィルムコンサート」は映像×音楽の対等で最高のパフォーマンスだということです。やっぱりコンサートで体感するしかないところが大いにある。もしこれからコンサートに行ける時が来たらチャンスを掴みとりましょう。スタジオジブリと久石譲が仕掛ける一大プロジェクト、その歴史の一ページにいたい。歴史の生き証人になって未来へ伝えたい。最高の瞬間を。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
Posted on 2025/03/01
久石譲さんが日本に求める「音楽の循環」 大阪国際フェス、4月開幕
今春始まる第63回大阪国際フェスティバル2025。大阪の四つのオーケストラが集う5月の「4オケ」公演では、大阪・関西万博の開催を記念し、世界の名曲とともに現代日本の楽曲が演奏される。4月に日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就任し、「4オケ」で指揮する久石譲さんに、現代の音楽への思いを聞いた。 “Info. 2005/03/01 久石譲さんが日本に求める「音楽の循環」 大阪国際フェス、4月開幕(朝日新聞より)” の続きを読む
Posted on 2023/08/17
新日本フィルハーモニー交響楽団のシーズンプログラムが発表されました。Music Partnerの久石譲も定期演奏会に登場します。 “Info. 2023/08/17 新日本フィルハーモニー交響楽団 〈2024/2025シーズン〉定期演奏会プログラム 発表【2/28 update!!】” の続きを読む
Posted on 2024/10/20
日本センチュリー交響楽団 2025/2026 シーズンラインナップが発表されました。創立35周年を迎え、久石譲が音楽監督に就任する1年目の定期演奏会です。もちろん久石譲も登場するその公演をそれぞれご紹介しています。 “Info. 2025/06/13 「久石譲指揮 日本センチュリー交響楽団 第290回 定期演奏会」開催決定!!【2/27 Update!!】” の続きを読む
Posted on 2024/04/04
2025年3月2,3日、久石譲コンサートがフランス・パリで開催されます。共演オーケストラはボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団です。なお、3日(6:45pm)にはトーク・セッションも予定されています。 “Info. 2025/03/02,03 「HISAISHI SYMPHONIQUE」久石譲コンサート(パリ)開催決定!!【2/26 update】” の続きを読む
Posted on 2024/06/04
2025年2月27,28日、久石譲コンサートがフランス・ボルドーで開催されます。共演オーケストラはボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団です。また、3月2,3日開催予定のパリ公演と同共演/同プログラム予定となった、フランス・ツアーになります。 “Info. 2025/02/27,28 「HISAISHI SYMPHONIQUE」久石譲コンサート(ボルドー)開催決定!! 【2/26 update】” の続きを読む
Posted on 2025/02/24
《前編》はジブリフィルムコンサートのプログラムや楽器編成そのほか参考作品までを見ていきました。《中編》《後編》は作品ごとに見ていきます。
▽プログラム
▽出演/楽器編成
▽歌
▽参考作品(DVD/TV/CD)
▽MUSIC VIDEO
▽INTERVIEW VIDEO
▽コンサート軌跡
▽風の谷のナウシカ
▽魔女の宅急便
▽もののけ姫
▽風立ちぬ
▽崖の上のポニョ
▽天空の城ラピュタ
▽紅の豚
▽ハウルの動く城
▽千と千尋の神隠し
▽となりのトトロ
武道館コンサート(2008)、パリ・コンサート(2017)から始まった世界ツアー、その最新版を録音したグラモフォン・アルバム『A Symphonic Celebration』(2023)です。最新版のポイントは? まずは作品ごとに一言でズバリ!その前にちょっと確認です。全作品とも堂々と声を大にして初音源化となる内容やバージョンです。それではスタート!
『風の谷のナウシカ』世界ツアー版も遂に完全版、『魔女の宅急便』世界ツアー版のためのオーケストレーション、『もののけ姫』合唱付き&日本語は世界ツアー版だけ、『風立ちぬ』新プログラム、『崖の上のポニョ』グローバルにブラッシュアップ、『天空の城ラピュタ』世界ツアー版(管楽+合唱)初登場、『紅の豚』新しいアンサンブル編成、『ハウルの動く城』オフィシャルスコアと対向配置で完全音源化、『千と千尋の神隠し』ピアノと歌の結晶、『となりのトトロ』さんぽのバージョン注目、です!
これから作品ごとにぐぐっと迫っていきます。時に細かいところに注目してしまうこともあるかもしれません。今まで聴いてたものと何が違うの?どこが違うの?となったらここを思い出してみてください。
クラシック名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからのデビュー盤です。宮崎駿監督の輝かしい功績を称えるものであり、久石譲の音楽が世界に認められる瞬間です。前人未到の快挙を成し遂げてきたスタジオジブリと海外でも華々しい活躍をみせる久石譲。とは言っても前代未聞です。世界的クラシックレーベルからスタジオジブリにスポットライトを当てた作品が出ること、その第一弾に久石譲は自身の交響曲ら現代作品ではなく宮崎駿監督作品を選んだこと。映画音楽がクラシックになる日、私たちは今その道のうえを共に歩いています。
世界に聴かせたかったジブリがここにあります。久石譲のピアノでしか伝えることのできないジブリの世界があります。歌いたくなるメロディは空を翔けていく。海外オーケストラらしい空気と風の生まれる音。私たちは音楽を聴きながら自分なりのジブリ的情景を気の向くままに描くことができる。知っている曲たちの、知らなかった輝きをぜひ。
風の谷のナウシカ
NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF THE WIND
オープニング「風の伝説」
ナウシカ・レクイエム
メーヴェとコルベットの戦い
遠い日々
鳥の人
The Legend of the Wind
Nausicaä Requiem
The Battle between Mehve and Corvette
The Distant Days
The Bird Man
編成特記:
合唱
全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。
《オープニング「風の伝説」》武道館コンサートは大規模編成、ティンパニも2台だったことから連打する幕開けもこだまして轟いています。ここの木管の入りも異なります。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは一般的なオーケストラ編成になっていてティンパニは1台です。楽曲が進んでいくなかでも他の太鼓系が活躍しています。すべてはここから始まった、宮崎駿×久石譲ゴールデンコンビの歴史です。コンサートも久石譲によるピアノからメロディを奏ではじめることは象徴的です。
《ナウシカ・レクイエム》パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、盛り上がりのところでティンパニロールが追加されていたり管楽器の厚みやハープ、ピッツィカートの修正などを聴くことができます。合唱パートは、『ヴェルディ:レクイエム(鎮魂ミサ曲)より「怒りの日」』のラテン語歌詞が引用されています。
《メーヴェとコルベットの戦い》パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、最後にシンバルやティンパニロールが追加されています。
《遠い日々》最も改訂されている楽曲です。ひらひらとコードが展開する導入部は、パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは小節数が増えています。次にメロディに入ってからです。武道館コンサートは合唱です。オーケストラはストリングスが土台になっています。くり返しなしです。パリ・コンサートはスキャットで始まります。そのときチェレスタ、ハープ、グロッケンシュピールで静かに添いピッツィカートが加わっていきます。後半は合唱が入りオーケストラも広がりくり返しありになります。グラモフォン・アルバムは合唱ですがオーケストレーションは武道館/パリとも異なります。くり返しもありです。ここでの合唱声部は精緻に分かれて織りあがっています。たしかな聴きどころです。
パリ・コンサート(2017)とグラモフォン・アルバム(2023)だけを比べても大きく飛躍したようにも感じます。ここで見逃してはいけない作品があります。それは「Symphonic Poem NAUSICAÄ 2015」完全版です。グラモフォン・アルバムの《遠い日々》パートはこれとほぼ同じ構成です。久石譲は2021年インタビューで「スタジオジブリフィルムコンサート世界ツアーで使用しているオーケストレーションを関連楽曲に導入した」(交響組曲もののけ姫について)と語っています。つまり、ナウシカでいうと2017年の時には2015年版の継承はまだ据え置かれいた。世界ツアーを展開していくなかで楽曲構成やオーケストレーションを出来得るところは統一させていった。これはほかの作品でも見ることができます。
《鳥の人》武道館コンサートにはありませんが、パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムには中間部に「風の伝説」冒頭のアルペジオが2小節入ります。ハープとピアノでグラモフォン・アルバムのほうがピアノに比重が寄って聴こえます。TV音源とCD音源の違いもあるため聴こえ方や判断は難しいところです。聴かせたかったのはもちろんCD音響のほうになるでしょう。
おまけ。エンディングのティンパニ最強音は何回鳴っているでしょうか?正解は武道館8回、パリ9回、グラモフォン8回です。交響組曲もまた8回です。2017年から2023年まで修正を重ねている小さい確かな証拠です。
最新版の風の谷のナウシカは見てきたとおり正真正銘の初音源化になります。さらにオーケストラの対向配置から混声合唱・児童合唱のステレオ配置まで完成度を極めた壮大なタペストリー、世界ツアー版も遂に完全版です。
この作品は、児童合唱(ユースコーラス)が出演しない公演ではメインの合唱団のみで歌われます。
一番目の作品ということもあって少し丁寧に長くなりました。あくまでも個人の耳で聴きとれた範囲のことを記しています。オーケストラ編成の違い、フォーメーションの違い(通常配置/対向配置)、録音環境や音質の違い(ライヴ/セッション、DVD/TV/CD)などもあって、フラットに聴き比べることは難しい面もあります。違って聴こえるようだけどスコアは同じかもしれない、ここも明らかに違うようだけど触れられていない、たくさん気づきもあると思います。以降の作品も武道館/パリ/グラモフォンの三つで進めていきます。交響組曲は突っ込んで触れていません。好きな作品をもっと楽しみたいときは合わせて聴き並べてみてください。
魔女の宅急便
KIKI’S DELIVERY SERVICE
海の見える街
傷心のキキ
かあさんのホウキ
A Town with an Ocean View
Heartbroken Kiki
Mother’s Broom
編成特記:
ヴァイオリン・ソロ
全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。
《海の見える街》サウンドトラックから「海の見える街」「大忙しのキキ」の2曲が再構成されていると言っていい楽曲です。時折コンサートでプログラム「魔女の宅急便/Kiki’s Delivery Service」として単曲演奏されることもある人気曲です。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ピッツィカートで始まるメロディの後フルートやストリングスで奏でられるメロディに装飾が付いています。クラシカルな旋律を奏でる中間部は武道館コンサートはオーボエでしたが、後者二つはフルートからオーボエへそして木管のアンサンブルも少し変化しています。終結部は武道館コンサートは金管楽器のみでしたが、後者二つはストリングスも入りオーケストラ全体でフォルテで終わります。この曲全体に言えることで「Kiki’s Delivery Service 2018 *改訂初演」(WDO2018/未音源化)をグラモフォン・アルバムは継承しています。とりわけ後半部はジャジーなホーンセクションをはじめ華やかにリズミカルに踊っています。
《傷心のキキ》武道館コンサートは、ハープ2台だったこともあり歌い出しのメロディと伴奏とを2奏者で分け合いながらメロディラインにビブラフォンの響きが重ねられているように聴こえます。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、ハープ1台で歌い出しはハープ、ピアノらで紡がれています。さらに言うとグラモフォン・アルバムはシロフォンも加わっているようにも聴こえ、そのたった8~9小節のなかに繊細さがつまっています。
《かあさんのホウキ》武道館コンサートは、ヴァイオリン・ソロのメロディ歌い出しを久石譲によるピアノがエスコートしています。Aメロ一巡目はヴァイオリンとピアノだけにスポットが当たっている時間です。Aメロ二巡目から久石譲は指揮へ移りオーケストラも加わっていきます。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、久石譲は指揮者としてヴァイオリン・ソロを導いていきます。そのため歌い出しの伴奏は、ハープのアルペジオとピアノの伴奏音型が紡いでいます。二巡目もその流れを引き継いだままオーケストラが加わっていきます。
パリ・コンサートから新たに手を加えられたBメロのファゴットとホルンの織りなす内声がなんとも美しい。グラモフォン・アルバムはちょっと後ろに引いていますがしっかり聴こえます。そこからのカデンツァ風のヴァイオリン・ソロは奏者ごとの個性を楽しめるパートです。同じ楽器でも歌い方や響かせ方から艶感までを感じることができます。
交響組曲の《海の見える街》《傷心のキキ》《かあさんのホウキ》はいずれもオーケストレーションが異なります。比べられる箇所はいくつも挙げらると思いますが、大きくはサウンドトラックを基盤にしていること、そして何と言っても楽器編成にアコーディオンやマンドリンが入っていることです。世界ツアー版の魔女の宅急便は、一般的なオーケストラの音色パレットで最大限に描かれています。交響組曲とはまた別モノでどちらも存分に楽しむことができます。
もののけ姫
PRINCESS MONONOKE
アシタカせっ記
タタリ神
もののけ姫
The Legend of Ashitaka
The Demon God
Princess Mononoke
編成特記:
ソプラノ、合唱
全体構成は武道館/パリ/グラモフォンと変わっていませんが、楽曲ごとには変化を見てとれます。
《アシタカせっ記》《タタリ神》《もののけ姫》武道館コンサートの合唱付きは強烈に焼きついています。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムでもしっかり継承されました。その一方で交響組曲は2021年に完全版となりましたが、合唱編成は外れてあくまでもサウンドトラックに忠実にさらにダイナミックに再構築されています。合唱付き&日本語のもののけ姫が聴けるのは世界ツアー版だけです。また『The Best of Cinema Music』には全体構成は同じで合唱付き&英語で歌うもののけ姫がライヴ収録されています。
《もののけ姫》武道館コンサートは、イントロから久石譲によるピアノで一音一音降りていきます。ヴォーカルとピアノを主役にしながらオーケストラはそっと支える。1コーラスを経て最高潮に達する後半部から久石譲は指揮へ移ります。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは、指揮に専念することになりオーケストレーションも修正されています。イントロの一音一音はハープとストリングスが美しい層をつくり、歌い出しからはハープとオーケストラのピアノ奏者などが伴奏フレーズを受け持っていきます。この曲はどの開催地/ソプラニストでも日本語で歌われます。作品の精神世界と日本語の美しさを伝える一曲です。ソプラノの歌唱を聴かせたい交響組曲と、ソプラノ+合唱に拮抗して絡み合ってくるホルンやトランペットの咆哮が前面に出ている世界ツアー版、この後半部の燃焼度もまたすごいです。
和太鼓・締め太鼓・チャンチキといった打楽器も登場する作品です。日本から持参されて業者も同行してなどして現地の気候で楽器メンテナンスを行い公演を迎えます。舞台裏でも多くの人が携わっている一大プロジェクトです。
ピアノと距離とオーケストレーションと。世界ツアーを展開していくなかで久石譲によるピアノパートは従来より少し減っています。指揮に重きを置くことでオーケストラの演奏やプログラム全体のコントロールもしやすくなります。映像とテンポやタイミングを合わせる演出面もあります。久石譲にとってはもう何回も重ねたプログラムであってもオーケストラはいつでも初共演でリハーサルも限られています。
武道館コンサートでの「もののけ姫」ヴォーカルとピアノのパート、「かあさんのホウキ」ソロ・ヴァイオリンとピアノのパートなど印象に残っているシーンです。ピアノはポロロンとテンポを揺らしても情感を込めてニュアンスをつけても、ステージ中央で距離も近い二者間は気配や息遣いを感じながら阿吽の呼吸でパフォーマンスできます。
世界ツアーでピアノから切り替えられるときハープやオーケストラのピアノ奏者などを絡めながらオーケストレーションの修正が施されています。このときピアノのパートは久石譲によるニュアンスを必要としない、誰が弾いてもその表現は担保される、あるいはリズムもしっかりとりやすい伴奏フレーズになっていたりもしそうです。半径3メートル内の二者間とは異なり、15メートル以上離れたオーケストラのピアノ奏者とステージ中央のソリストと、呼吸やタイミングを合わせたり音の伝達スピードも出てきたり。ピアノにハープなど他の楽器を組み合わせていることも意図や効果がありそうです。この視点から見ていくと、久石譲本人が弾いている曲やピアノパートもまた必然性がありそうです。
交響組曲も久石譲本人がピアノを弾いているパートとそうじゃないパートがあります。加えて言うなら交響組曲は音源化とスコア化とが並行して進められています。久石譲が出演しないコンサートでもスタジオジブリ交響組曲は人気プログラムです。ステージ中央にピアノの置かれない、オーケストラの後方にあることを想定して交響組曲も再構築されているのかもしれません。交響組曲の「もののけ姫」パートや「かあさんのホウキ」パートもピアノの役割や伴奏フレーズは変わっています。
風立ちぬ
THE WIND RISES
旅路(夢中飛行)
菜穂子(出会い)
旅路(夢の王国)
A Journey (A Dream of Flight)
Nahoko (The Encounter)
A Journey (A Kingdom of Dreams)
編成特記:
マンドリン
パリ・コンサートから加わった新プログラムです。
《旅路(夢中飛行)》マンドリンと久石譲のピアノで始まります。マンドリンのトレモロによるブリッジから久石譲は指揮へ移り曲想はオーケストラで大きく膨れあがります。
《菜穂子(出会い)》パリ・コンサートはピアノメロディでした。久石譲は前曲が終わってすぐにピアノに戻り、またこの曲が終わってすぐに指揮へ移りと忙しいパートでした。世界ツアーの途中からこの曲は指揮に専念することになり、そのメロディはマンドリンに託されます。
《旅路(夢の王国)》こちらも公演を重ねていくなかでオーケストレーションが修正されています。グラモフォン・アルバムは、細かいところではリズム系パーカッションが鳴ってる鳴ってないパートが変わっていたりします。それよりも注目したいところがあります。曲はトランペットで奏でられる美しい中間部の後クライマックスへと盛り上がっていきます。そこでトランペットは俊敏にミュート(音を抑える役割や音色を変化させる機能)を付けて伴奏のリズムを刻みそしてメロディへと加わっていきます。この音像がバヤンを模してその狙いがあるように感じてきます。バヤンはロシアあるいはウクライナの民族楽器でアコーディオンの仲間です。「風立ちぬ第2組曲」は、バラライカ、バヤン、ギターといった特殊楽器が色彩を添えています。世界ツアー版はトランペットがメロディを響かせることで気高さや力強さもまた引き立っていると感じます。
崖の上のポニョ
PONYO
武道館コンサート
深海牧場
海のおかあさん
波の魚のポニョ
フジモトのテーマ
ひまわりの家の輪舞曲(ロンド)
母の愛
いもうと達の活躍〜母と海の讃歌
崖の上のポニョ
↓
パリ・コンサート
グラモフォン・アルバム
深海牧場
海のおかあさん
いもうと達の活躍~母と海の讃歌
崖の上のポニョ
Deep Sea Pastures
Mother Sea
Ponyo’s Sisters Lend a Hand – A Song for Mothers and the Sea
Ponyo on the Cliff by the Sea
編成特記:
ソプラノ、合唱
全体構成は武道館コンサートから大きく変わっています。
『もののけ姫』と同じようにすべての構成曲で合唱付きです。
《深海牧場》合唱パートは、物語に関連する単語(海、水、愛、母 etc)をラテン語で組み合わせてはめ込まれています。パリ・コンサートがTV放送された「久石譲 in パリ」ではカットされていますがしっかり本演では演奏されています。
《海のおかあさん》ソプラノによって日本語で歌われます。後半には合唱も加わっていきます。
《いもうと達の活躍~母と海の讃歌》ここまでの曲に言えることですが武道館/パリ/グラモフォンとすぐに見つけられるほどの変更点もなく引き継がれているように聴こえます。それだけ当初からオーケストレーション含めて完成されていたとも言えます。
《崖の上のポニョ》武道館コンサートは大橋のぞみほかゲストヴォーカル総出演で大合唱です。主題歌オリジナルバージョンを基調としてオーケストラサウンドでダイナミックに。当時大ヒットした主題歌は振り付けも話題になり大橋のぞみと児童合唱も一緒に振り付きで披露されました。パリ・コンサートとグラモフォン・アルバムは合唱です。児童合唱は編成されていません。ピッツィカートが奏でるAメロは弾(はじ)ける音で泡から生まれ溢れるようです。オーケストラ楽器がBメロと奏でていきサビは英語で歌われます。独特なリズミックを生む単語と弾ける発音(子音,破裂音)の英語で大合唱は相性抜群です。たくさんの泡たちが弾ける生命の力です。静かになる中間部ではピアノがメロディを奏でていますが、パリ・コンサートの時からオーケストラのピアノ奏者が担っています。
この作品は交響組曲(2023・未音源化)と比較しても断然おもしろい作品です。交響組曲は《深海牧場》も《海のおかあさん》も曲尺は長くオーケストレーションもさらに精緻です。《崖の上のポニョ》も英語で大合唱は共通していますが終盤に聴かれる海から空まで高く昇っていくごとく讃歌する大転調は圧巻です。そうは言っても今はまだ音源がない。武道館コンサートからの進化で披露された「久石譲 3.11 東日本大震災チャリティー・コンサート」で世界ツアー版の基盤は出来上がっています。残念ながらコンサートを収めたライブアルバム『The Best of Cinema Music』には収録されていません。このたびグローバルにブラッシュアップされて初音源化です。
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次回《後編》につづく