Info. 2025/07/20 《速報》 「久石譲スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル」コンサート(東京)プログラム【11/9 update!!】

Posted on 2025/07/20

7月16,17日開催「久石譲スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル at 東京ドーム」です。武道館コンサートから17年ぶりとなったジブリフィルムコンサートは久石譲×ロイヤル・フィルという豪華な日本公演で実現しました。2017年から始まった世界ツアーの集大成であり世紀の凱旋公演です。 “Info. 2025/07/20 《速報》 「久石譲スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル」コンサート(東京)プログラム【11/9 update!!】” の続きを読む

Info. 2025/11/07 ゴーティエ・カピュソン『Gaia (Gaïa) / ガイア』久石譲新曲 収録

Posted on 2025/11/07

久石譲、M.リヒターら現代に称賛される作曲家らと、世界的チェリスト、ゴーティエ・カピュソンが創造する祈りのメロディ

 世界的チェリスト、ゴーティエ・カピュソンが贈るアルバム《ガイア》は、多様な音楽言語を通じて自然の「回復力」「儚さ」「力強さ」というテーマが表現されており、人類と地球とのつながりを探求する、大胆で感情豊か、かつ多面的なプロジェクトです。 “Info. 2025/11/07 ゴーティエ・カピュソン『Gaia (Gaïa) / ガイア』久石譲新曲 収録” の続きを読む

Info. 2025/11/07 躍動するミニマル・ミュージック~「久石譲プレゼンツ ミュージック・フューチャーVol.12」鑑賞記(Web SPICEより)

Posted on 2025/11/07

躍動するミニマル・ミュージック~「久石譲プレゼンツ ミュージック・フューチャーVol.12」鑑賞記 “Info. 2025/11/07 躍動するミニマル・ミュージック~「久石譲プレゼンツ ミュージック・フューチャーVol.12」鑑賞記(Web SPICEより)” の続きを読む

Disc. ゴーティエ・カピュソン『Gaia (Gaïa) / ガイア』

2025年11月7日発売 ※輸入盤
CD カタログNo. 2173272737
LP カタログNo. 2173284248

 

久石譲、M.リヒターら現代に称賛される作曲家らと、世界的チェリスト、ゴーティエ・カピュソンが創造する祈りのメロディ

世界的チェリスト、ゴーティエ・カピュソンが贈るアルバム《ガイア》は、多様な音楽言語を通じて自然の「回復力」「儚さ」「力強さ」というテーマが表現されており、人類と地球とのつながりを探求する、大胆で感情豊か、かつ多面的なプロジェクトです。

このプロジェクトには、マックス・リヒター、ルドヴィコ・エイナウディ、久石譲といった巨匠から新進気鋭の才能まで、16人の現代作曲家が17のオリジナル曲をこのアルバムのために提供。ジャンルや文化を超えた多様な音楽が集結しています。カピュソンはこのアルバムを「地球が音楽を通して自己を表現している」と語っています。この作品は脅かされている自然への賛歌であり、未来への祈りが込められています。自身の故郷であるフランス・アルプスの雄大な自然もインスピレーションの源となっています。

作曲家自身を含む多彩なゲストミュージシャンが演奏に参加しており、《ガイア》の音楽は自然の力強さともろさ、その荘厳さと静けさを描き出しています。カピュソンは本作を「チェロが自然のリズムと共鳴する、音楽的で人間的な冒険」と位置づけています。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

ギリシャ神話の原初の大地の女神、ガイア。このアルバムは、地球の美しさ、力強さ、そしてその脆さにインスピレーションを受け、地球に捧げられた作品です。異なる文化的背景、美学、音楽ジャンルを持つ16人の作曲家を一つの息吹のもとに集めたいという願いから生まれました。それはまた、警鐘を鳴らす歌であり、脅かされているこの美しさへの讃歌であり、未来の世代への祈りでもあります。

(CDジャケットより)

 

 

ワーナーミュージック・ジャパン取り扱い輸入盤のみ、日本語解説書・帯付き

日本語解説書には、各作曲家による作品のコメントの日本語訳、小室敬幸氏による書下ろし解説を掲載

 

 

久石譲
プレリュード Prélude

これはゴーティエ・カピュソンが弾くことを念頭に書いた作品です。

チェロは短いモチーフに続いて、アルペジオのような音型を演奏し、ピアノ伴奏は対照的なリズムパターンを弾きながら、チェロに交わることはなく並行して進みます。

音型の微妙な変化により、倍音構造が変化していくように聴こえるので、演奏者はいかようにも解釈することができ、感情を吐露することも、、冷静沈着に演奏することもできます。

(CDブックレットより)

 

 

久石譲 presents MUSIC FUTUREコンサートでも取り上げてきた作曲家、マックス・リヒター、ブライス・デスナー、ニコ・ミューリーらも顔を揃える本盤は現代作曲家の贅沢な集いだ。そして日本からは久石譲に白羽の矢が立つ。

久石譲「プレリュード」を聴いていると、既出の「Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Cellos」などを思い起こすことになる。雰囲気が近いと感じるのは久石譲がその楽器の特性を掌握したうえで、チェロの開放弦を意識した調性からくるものなのかもしれない。とても魅力的な楽曲だ。録音とリリースに1年以上のインターバルがある。久石譲が「プレリュード」を作曲したのは2024年前半頃の可能性も出てくる。もちろんそれよりも前に依頼され楽曲構想を練り温めていた楽曲かもしれない。久石譲の今が聴けるホットな楽曲であることは確かだ。

 

 

同時発売のLPはCD収録の17曲から12曲を厳選した、数量限定生産140gアナログLPレコード

 

 

マックス・リヒター
1. ガイアのシークエンス Sequence for Gaïa

ブライス・デスナー
2. 森ヘ Towards the Forest

JBダンケル(アリィ・アリューシュ・ネアマ編曲)
3. 目覚め Wake

アヤナ・ウィッター=ジョンソン
4. 永遠の住処 Forever Home

ルドヴィコ・エイナウディ
5. 空気 Air

久石譲
6. プレリュード Prélude

アルマン・アマール
7. ボレアス Boreas

ブライス・デスナー
8. 光に向かって Towards the Light

オリヴィア・ベッリ
9. ターマル・メトゥシェラ Tàmâr Mĕtūshelāh

ゼイヴィア・フォーリー
10. 野望 Ambition

ガブリエラ・モンテーロ
11. ブルジェ湖で Sur le lac du Bourget

ジャスミン・バーンズ
12. 陽だまりの人生 Life in Sunshine

ニコ・ミューリー
13. サイド・ピース Side Piece

クウェントン・ブレーシュ
14. 風と雨 Of Wind and Rain

アベル・セラウチュウェ
15. かなたの夢 Toro Tsa Kwa

ミッシー・マッゾーリ
16. いつもの幻影 The Usual Illusion

ミシェル・カニトロ/ヴラディミール・パリエンテ
(カリーム・アベス&ブリス・ダボリ編曲)
サラ・レベッカ(歌詞)
17. ネヴァー・セイ・ネヴァー Never Say Never

【演奏】
ゴーティエ・カピュソン(チェロ)
ジェローム・デュクロ(ピアノ:1, 7, 8)
フランク・ブラレイ(ピアノ:6, 10, 11, 13)
オリヴィア・ベッリ(ピアノ:9)
カプチェッリ(チェロ・アンサンブル:3, 12, 14)
アヤナ・ウィッター=ジョンソン(チェロ 、ヴォーカル:4)
アベル・セラウチュウェ(チェロ、ヴォーカル、プログラミング:15)
ミシェル・カニトロ(プロダクション:17)
サラ・レベッカ(ヴォーカル:17)

【録音】
2024年8月23-27日、10月27-31日、エルマウ城

レーベル : WARNER ERATO
発売国 : Europe

 

Info. 2025/10/27 [TV] 日本テレビ系 news zero 久石譲インタビュー放送 【10/28 update】

Posted on 2025/10/27

日本テレビ「news zero」久石譲インタビュー放送のお知らせ
10月27日(月) 日本テレビ「news zero」(23:00〜)にて、
久石譲のインタビューが放送される予定です。
戦後80年企画として、今夏の演奏会を櫻井翔キャスターに取材いただきました。
ぜひご覧ください。
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Blog. 「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・レポート 【10/28 update】

Posted on 2025/09/07

2025年8月23~27日開催「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサートツアーです。4月から日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就いています。「音楽監督就任披露演奏会」として愛知・大阪・兵庫・東京の4都市を巡りました。

プログラムはスティーヴ・ライヒ作品から久石譲作品まで濃厚です。「就任記念」というお祝いムードではない「就任披露」、戦後80年の今年にふさわしい渾身と気迫の演奏会は全公演とも満員御礼&スタンディングオベーションで熱狂的でした。

 

 

Joe Hisaishi Special Concert 祈りのうた 2025
日本センチュリー交響楽団 音楽監督就任披露演奏会

[公演期間]  
2025/08/23 – 2025/08/27

[公演回数]
4公演
8/23 愛知・愛知県芸術劇場 コンサートホール
8/25 大阪・フェスティバルホール
8/26 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
8/27 東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ヴォーカル:テオ・ブレックマン
合唱:東京混声合唱団

[曲目]
スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽 *Chamber version with brass *日本初演

—-intermission—-
久石譲:祈りのうた(映画『君たちはどう生きるか』より)
久石譲:The End of the World

—-encore—-
Ask me why (Pf.Solo)(大阪・東京)
One Summer’s Day (Pf.Solo)(兵庫)
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

[参考作品]

 君たちはどう生きるか サウンドトラック 久石 The End of The World LP o

 

 

まずは会場で配られたプログラム冊子からご紹介します。

 

 

ご来場の皆さん、作曲家で指揮もする久石譲です。

「祈りのうた2025」と題した今回のツアーは戦後80年としてのメモリアルなものになっています。日本人である僕の”The End of the World”は2001年の9.11をテーマにしていて、アメリカ人であるSteve Reichの”The Desert Music”は日本に落とされた原爆の実験場の砂漠がタイトルの意味になっています。普段は論理的な構造を好む僕でも「縁」を強く感じます。他に”祈りのうた”も用意しています。

また2025年から日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就任することになりました。古典から現代曲まで幅広く演奏し、楽しい痛快なオーケストラとして団員と協力して活動していく所存です。

皆様に楽しんでいただけると幸いです。

2025年 夏
久石譲

(「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

会場で配布されたプログラムには「スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽」の楽曲解説2ページ/歌詞・日本語訳詞4ページ(サウンド&ヴィジュアル・ライター 前島秀国氏 筆)と、「久石譲:祈りのうた」~「久石譲:The End of the World」の楽曲解説2ページ/歌詞・日本語訳詞2ページ(サウンド&ヴィジュアル・ライター 前島秀国氏 筆)が収められた充実した内容になっています。最新アルバム『Joe Hisaishi Conducts』のフィジカル盤(2026年3月27日発売予定/デジタル:2025年8月8日発売)が出た時にはブックレットにそのまま掲載されてほしいくらいの超重要ナビゲーターです。

スティーヴ・ライヒ作品については同じ前島秀国さんによるコラム、久石譲作品についても同じ前島秀国さんによるCDライナーノーツにも同旨たっぷり掲載されています。ぜひご参考ください。

 

出典:ミニマリスト久石譲がスティーヴ・ライヒの大作“砂漠の音楽”日本初演を担う意義とは? | Mikiki by TOWER RECORDS
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/38133

 

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団

その共演歴は約15年以上になります。2008年太王四神記イベント、2012年大阪ひびきの街コンサート、2013年第九スペシャルコンサート、そして2015年,2017年,2019年ジルベスターコンサートなどがあります。2021年には日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任し、それから毎年のように定期演奏会/特別演奏会に登場することになります。大阪を拠点とした関西エリアで精力的にコンサートを開催、2024年にはマカオ公演も実現しました。演奏会プログラムは古典作品への新しいアプローチ、現代作曲家の作品、そして自作品という3つの軸で、常に新しい観客を取り込みながら満員御礼の大盛況です。

2025年4月に日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就任しました。プロの常設オーケストラの音楽監督に就くのは初です。就任について「1度はオーケストラと深く関わる仕事をしてみたいと思っていました。たくさんのお客様に受け入れられた上で高い音楽性を維持できるよう努めます。」とコメントしています。任期は3年です。楽団の年間プログラムや中長期的な音楽戦略などに関わりながら、演奏会への出演もこれまで以上に増える予定とのことで期待です。

音楽監督就任1年目の2025/2026シーズンでは、全ての定期演奏会でベートーヴェン交響曲と現代の音楽を組み合わせるプログラムになっています。また親子で楽しめるファミリーコンサートや、小編成アンサンブルで最先端の音楽を届ける「Joe Hisaishi presents MUSIC FUTURE with JCSO」など多彩なコンサートが開催されます。

 

 

これから!まだ間に合う!

 

 

久石譲は今シーズン自ら指揮する定期演奏会でコンサートマスターを松浦奈々さんの一人に固定しています。これについて「1回目で最高の音は出し切れない。数回、演奏することで高いレベルに到達できる」と狙いを語っています。

日本センチュリー交響楽団は約50人の小規模編成です。久石譲は「スポーツカーみたいで、スピード感と切れ味が売り。世界の潮流もそうだ。一人でも多くの観客の心をつかみたい」と意気込みを語っています。室内オーケストラでアンサンブルを磨くスタイルは久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS(FOC)とも共通していますね。

 

 

さていよいよ。

〈JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025〉プログラムは、戦後80年を迎えた今年、原爆をもテーマにした「スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽」、9.11に影響を受けた「久石譲:The End of the World」、太平洋戦争の中を生きた映画『君たちはどう生きるか』から「祈りのうた」の三作品です。ここからひとつの大きな〈祈り〉をテーマにしていると感じます。

決して優しくはないプログラムですから、普段のSNSなら「何かわからなかったけどすごかった」みたいな感想も目にしていいはずなのに、今回はコンサートの満足感と納得感を投稿したものがとても目立ちましたね。とりわけ、本演からアンコールまでのプログラムの大きな流れやテーマに感嘆したり、しっかり受け止めている声はとても多かったです。

それからオーケストラ+合唱という圧倒的なパワーです。ステージ後方にずらっと並ぶほどの大所帯でもない約27人の混声合唱でしたが、オーケストラとのバランスも素晴らしく合唱の力に心揺さぶられました。あまり語れる機会もないからはっきり言いたい。久石譲のオーケストレーションの凄さはもうたくさんの人がわかってる。合唱の声部の緻密さや構成もかなり凄い。オーケストラでメロディにたくさんの対旋律やフレーズが交錯するのと同じようなことが合唱でも起こっている。ハモったりするだけじゃない、メロディと内声で層のように歌っているだけじゃない。そう思っているから、ステージの大迫力の合唱も立体的に響いてきて堪能しきりです。

 

 

スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽 *Chamber version with brass

スティーヴ・ライヒといえばミニマル・ミュージックを代表する作曲家の一人です。世界中でたくさんの作品が演奏されていますが、1984年のこの作品はあまりの規模の大きさと難しさからこれまで日本では演奏されていませんでした。日本初演を飾ったのは「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.7」コンサート(2024)です。オーケストラと合唱の約150人という大編成でオリジナル版が披露されました。

本公演では「金管付き室内オーケストラ版」がこれまた日本初演されました。ショット・ミュージックの総譜案内には《ライヒ/ピアソン:砂漠の音楽 ― 金管付き室内楽版 ― 増幅(アンプリファイ)された10の声、縮小オーケストラと金管のための(Boosey & Hawkes)》とあるとおりでこの表記が全てを言い当てているように思います。アラン・ピアソンによる編曲版で、より演奏会でプログラムしやすい編成規模になっています。

僕は、ほぼ中央寄りの一列目で鑑賞したため(座席運に感謝!)、舞台奥の楽器編成がうまくわかりませんでした。オリジナル版も3つのグループに分かれる弦楽セクションですが、室内楽版は3つのカルテットと2人のコントラバスという極めて削ぎ落とされたゾクゾクする編成でした。そのほか、オリジナル版と共通する2人のティンパニ、2台のピアノ+4台のキーボード、本演では27人による混声合唱などとなっていました。

こじんまりとしたものをイメージしますか? 全くもってです。より鋭くなった各楽器や各パートの音はゾクゾクする音像でした。そしてブラスがとても効いていた。素晴らしかったです。圧倒的に飲み込まれる感覚はオリジナル版と同じです。さらにスコアを見るように明瞭に聴こえてくる楽器たちは、アンサンブルフリークにはたまらないものです。弦楽3つのグループも各首席奏者がそれぞれ引っ張っていてしびれました。打楽器だけで10人もいることも、パーカッションフリークにはたまらないものです。本演と同じか近い演奏はCD録音や演奏会動画などでも探すことができます。

 

 

〈JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025〉プログラムの「砂漠の音楽」と「The End of the World」は、今年8月BBCプロムスでもロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との共演で演奏されました。久石譲初出演です!それに関連して公開されたインタビュー動画では、「砂漠の音楽」についてスティーヴ・ライヒさんから「第二次世界大戦後80年に原爆を作った国の作曲家が書いた曲を、落とされた国の作曲家・指揮者が演奏する。これはとてもある種の縁があるというか意味のあることではないか。運命を感じる」とメッセージをもらったと語っています。

久石譲コンサートでは、これまでにスティーヴ・ライヒ作品から「エイト・ラインズ」「クラッピング・ミュージック」「シティ・ライフ」「デュエット」を演奏しています。2024-2025年夏には「砂漠の音楽」、そして今年10月には「18人の音楽家のための音楽」がMUSIC FUTURE Vol.12で予定されています。この作品もライヒ代表作のひとつで「砂漠の音楽」と同じ手法で書かれていることも大きな特徴です。演奏者18人の精鋭アンサンブルに期待です。

 

次いつ聴けるかわからない大作「砂漠の音楽」です。2024年日本初演のオリジナル版のライヴ音源が音源化されたばかり!聴くたびに走馬灯のようによみがえってくる録音芸術はうれしい。そして久石譲ファンでいることがいろいろな作品に豊かに出会えてうれしい。

 

 

 

ー休憩ー

 

 

久石譲:祈りのうた(映画『君たちはどう生きるか』より)

2015年1月5日宮崎駿監督の誕生日に贈られたピアノ曲です。久石譲は「東日本大震災の影響も受けて、祈りとしての分散和音だけで作った曲」とも語っています。三鷹の森ジブリ美術館の展示室用音楽としても使用されるピアノ版は『Minima_Rhythm II』に収録されています。

2015年、戦後70年となった年のWDO2015コンサートでピアノ+弦楽合奏+チューブラー・ベルズ版(『The End of the World』収録)が世界初演されました。映画『君たちはどう生きるか』の「祈りのうた(産屋)」はこのバージョンが元になっています。

コンサートホールに響く水を打ったようなピアノの音は、神聖な空気につくり出します。本演では序盤の繰り返しがカットされていたと思います。冒頭から終結まで聴こえるチューブラーベルズも、様々な想いが倍音となって胸に響きます。祈りや黙とうを捧げる時間を音楽のかたちにしたようなこの曲、大切な一曲です。

 

あっと驚くことに、演奏後の緊張感を保ったまま次のプログラムは続けて演奏されました。

 

久石譲:The End of the World

I. Collapse
II. Grace of the St.Paul
III. D.e.a.d *
IV. Beyond the World ◇
Recomposed by Joe Hisaishi: The End of the World *◇

*ヴォーカル ◇合唱 

2007年にニューヨークの9.11跡地を訪問したことがきっかけとなって作曲された作品です。2008年に全3楽章の組曲が誕生し、その後スタンダードナンバー「The End of the World」と自作品『DEAD』の第2楽章〈The Abyss~深淵を臨く者は・・・・~〉を組み込みながら、こちらも戦後70年にあたる2015年に全5楽章が初演されました。約40分からなる交響作品です。

2025年8月BBCプロムスでも演奏された作品です。久石譲はそのインタビュー動画でスタンダードナンバー「The End of the World」について「”あなたに愛されてなかったら世界は終わる”というラブソングだったんですが、この場合の一人称のラブソングの”あなたに”を”あなたがたに”とかそう捉えていったときに、これってとても大きい人類の曲になるんじゃないかと思って」と語っています。

今年はこの作品を最新アルバム『Joe Hisaishi Conducts』とBBCプロムスのライブラジオそして本公演で聴くことができて、それぞれのパフォーマンスを楽しめるという贅沢さでした。ヴォーカルはマイクを使用していましたが、テオ・ブレックマンさんの歌唱法を聴けばそれもまた納得です。独特なスモーキーな声色は、とても繊細に濃淡にフレーズを歌い分けていました。光や希望というよりも、今のこの世界の悲痛さのほうをより感じました。

日本センチュリー交響楽団の演奏も素晴らしかった。勢いがすごかった!全員野球ならぬ全員演奏といった結束力と集中力が伝わってきました。僕はわりと欲しがるわがままさで何でもコンサート音源化してくださいと言いがちなタイプなんですけれど、この演奏はそれとはまた違う感覚でした。録音にはそぐわないライヴらしい演奏、ほんとそうで勢いとそのパワーは体感することでしか味わえない高揚感がありました。こんな生演奏が聴けるなら録音されなくてもウェルカムだよ!!みたいな手放し感ですね。鼓膜が震えるほどの合唱のエネルギーもすごかった。録音には収まり切れない快演をたっぷり浴びました。9月にはまたピッツバーグ交響楽団と共演予定になっています。世界中で響きわたる大作です。

 

 

The End of the Worldの変遷

久石譲 『Another Piano Stories』

3楽章からなる特殊編成版とスタンダードナンバーは久石譲が歌唱しています。

 

久石譲 『ミニマリズム』

3楽章のオーケストラ版となって合唱パートも加わりました。

 

「d.e.a.d」楽章が組み込まれスタンダードナンバーまでの全5楽章になりました。

 

2015年版ですが第2,5楽章などで新たにアップデートしています。詳しくはFOCvol.7コンサートレポートをご覧ください。

 

さらに言うと、本公演および直前にBBCプロムスで演奏された『The End of the World』は、これまた「Recomposed by Joe Hisaishi: The End of the World」で新たな修正を聴くことができました。『Joe Hisaishi Conducts』収録の2024年ライヴ版までは、歌詞を歌う後半パートから合唱が登場しますが、今回は前半からコーラスのハーモニーが書き加えられていました。まだまだ底の知れない進化をつづける作品です。

 

 

ーアンコールー

 

君たちはどう生きるか
Ask me why (大阪・東京)

久石譲によるピアノソロです。〈祈りのうた2025〉では少し曲尺が短くなっていました。1コーラス~間奏と行ってAメロに戻ってきますが、そのAメロ終わりでrit.して、次のサビには進まずに一気にアウトロの最終和音へと飛びます。アンコールサイズとしては、もしかしたらこれから定着していくバージョンになるのかもしれませんね。

 

あの夏へ(兵庫)

会場ごとにアンコール曲を変えてくるなんてうれしい!久しい!大好き! この曲を聴けた人たちもまたうっとりだったでしょうね。

〈久石譲&ロイヤル・フィル スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート〉でも披露されたこの曲は、そのコンサートレポートでは、2001年7月20日公開『千と千尋の神隠し』、その2ヶ月後に起こった9.11米同時多発テロについて少し触れました。

「あの夏へ/One Summer’s Day」「ある夏の日」という言い方もできますね。”One Day”は”ある日”ですけれど、過去と未来、両方の「いつか」を表すことができます。未来にしか使えない”Someday”の「いつか(いつになるか分からないけれど)」は遠い未来または不確かや不特定なニュアンスになるのに対して、”One Day”は「いつか(必ず)」という確信や強い願いや意志を込めたニュアンスになります。

「あの夏へ/One Summer’s Day」は、過去のあの夏へ想いを馳せることもできる。そして未来のあの夏へと強く思い描くこともできる。そこへ向かって行く意志や引き寄せる努力、つまり未来へ祈ることもできる曲だと思うのです。久石譲がこの曲をとりわけ好んでいることには、そういった時空を超えたテーマもあるのではないか(My one answer)と思っています。

 

組曲「World Dreams」第一楽章
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

2004年に久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ(WDO)のテーマとして書き下ろされた楽曲です。その後、時代の変化とともに楽曲の位置づけも変化していきました。今ではWDOの枠を超えて様々なコンサートで演奏され、海外オケとの共演機会も増えている楽曲です。歌詞をつけた合唱版が初披露されたのは2011年東日本大震災が起こった年の10月です。この版は合唱のためのキーになっているほか、オーケストレーションも混声合唱の各声部と呼応するようになっています。

本公演の「The End of the World」と同じく9.11を強く意識した楽曲でもあります。原版、合唱版、組曲版、ライヴ音源を含めて複数のアルバムに収録されています。その全ての楽曲解説ページで久石譲のメッセージは紹介されています。

”「作曲している時、僕の頭を過っていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。『何で・・・・』そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国家のような格調のあるメロディーが頭を過った」”(CDライナーノーツより)

 

 

本演からアンコールまで、大きなテーマとストーリーを持ったプログラムは圧巻でした。「砂漠の音楽」から「World Dreams」までオーケストラと合唱の巨大なエネルギーは圧倒的でした。作品ごとに響くチューブラーベルズも、警鐘、弔鐘、鎮魂の鐘、そして希望の鐘。

アンコールの会場掲示も注目すべきかもしれません。「Ask me why」ではなく「君たちはどう生きるか」とまさに言葉とおりに聴衆に投げかけています。「World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra」ではなく「組曲 第一楽章」とまたここから始まるんだということを強く示唆しているようにも感じました。(本来の組曲版は合唱編成はありません)

 

大阪

兵庫

from SNS (ご提供いただきありがとうございます)

 

 

祈り

祈りとは決意です。広辞苑によると、日本語の「祈り」の語源には「生きる(い)ことを宣(の)る」つまり「自分の意志を宣言すること」の意味があるそうです(詳しくは検索!)。そう考えていくと、「平和の祈り」とは平和を願うことはもちろん、自身の平和への意志を宣言しそれを実現するための具体的な行動を伴う決意表明とも言えます(詳しくは検索!)。なんだかスケールが大きい話にも聞こえますね。でもたぶんそんなこともないです。

日常的なニュースを目にすれば、簡単に人を傷つけてもいい、簡単に人を殺してもいいと思っている人は確かにいるとわかります。それが個人なのか団体なのか国なのか、その数の大きさや影響の大きさが問題なのか、日々さまざまな争いごとは起こっています。じゃあ自分はどうすると自問自答。まずは自分が周囲の人と争いを起こさないように努力する、何かが起きた時は歩み寄り平和的解決へ努力する、この半径3メートルの世界からまた始めたいと気持ちを新たにしました。

戦後80年は、再び戦争に向かわせなかった先人たちの意志と努力のおかげでもあります。次は戦後100年、いや戦後100年を迎えられるかは自分たちにかかっているのかもしれません。まったく無関係ではいられないのは確かだと思うとちょっと身震いちょっと怖い。

2025年夏、久石譲3大コンサート〈スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル〉〈オーケストラ・コンサート〉〈祈りのうた2025〉その全てのプログラムで演奏されたのは『君たちはどう生きるか』(Ask me why/祈りのうた)です。久石譲は音楽をとおして、多彩なプログラムをとおして自分はこう思うけどあなたはどう思う?と問いかけたのだと思います。そうして、これから”君たちはどう生きるか”と返された大切な夏でした。「Ask me why(〇〇の決意)」、〇〇に久石譲コンサート2025に足を運んだ人数分一人一人の名前が入ったら、それはきっととてつもない祈りのエネルギーになる。音楽は無力じゃないし、音楽家に「音楽は無力だ」とは言わせたくはない。音楽に力を持たせられるのもまた聴く人だ、と前向きな希望も持ちました。祈り、そしてさらに一歩踏み出して決意、心震える夏でした。

 

 

 

”音楽は世界を変えられるわけではないし、戦争を止めることもできません。ただ、音楽には人間を人間たらしめる重要な価値があり、(平和のために)できることがある。僕はそう信じています。”(久石譲)

Info. 2025/01/01 [新聞] 「戦後80年 音楽で問う 作曲家・久石譲さん【平和をつなぐ】」(岐阜新聞ほか) より抜粋)

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

もう48回目の久石譲コンサートレポートになるんですね。ずっと追いかけててずっと記していてすごいです。SNSでも紹介させてもらったときに「Lv.48の着眼点で楽しいタメになる!!」と何気なしに書いていたら、そこから周りの久石譲ファンの皆さんの自身のレベル投稿が始まっておもしろかったですね。僕もレベル見たんですけれど3回計算して3回とも違ったのでその間をとることにしました(テキトー)。Lv.64でした。行ったことを忘れてるものもあるし、行った気になってるものもあるし、最近では配信で見たものを参戦したつもりになんて注意しないと記憶の改ざんが勃発しています。

回数もいいけど、行くたびにレベルアップしてる感じがいいですよね。音楽の経験値は上がるし豊かになります。あなたはレベルいくつですか? どんな値だったにしろ、きっとわかった瞬間ちょっとした充実した気持ちになると思いますよ。

 

久石譲夏の3大コンサート完全制覇のふじかさんです。最後まで気迫と充実の漲るレポートはさすがです。作品ごとに僕もそう思う!と共感するところがあったり、The End of the World第2楽章は、まさに自分も今回改めてそのカオス感や末恐ろしさを感じたりしたから、こうやって言葉にしてくれて感謝!と思ったり。コンサートから受け取ったメッセージも同じように感じた人はいると思いますが、ちょっとしたニュアンスはやっぱり一人一人のものだから一言でも二言でも言葉にするとすっと入ってきます。

 

 

2025.10.28 update

(Updated up to here on Oct. 28, 2025)

 

 

リハーサル風景

from 久石譲コンサート2025公式X(Twitter)
https://x.com/joehisaishi2025

 

 

ほか

from テオ・ブレックマンInstagram
https://www.instagram.com/theobleckmann/

 

 

公演風景

愛知公演

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最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

Blog. 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.12」コンサート・レポート

Posted on 2025/10/27

10月22,23日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.12」コンサートです。今年は久石譲とスティーヴ・ライヒという世界を代表するミニマル作曲家の作品が並ぶ豪華競演です。東京・長野で開催されました。

 

 

JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE Vol.12

[公演期間]  
2025/10/22,23

[公演回数]
2公演
10/22 東京・東京オペラシティ コンサートホール
10/23 長野市芸術館 メインホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Music Future Band
ピアノ:滑川真希

[曲目]
久石譲:The Circles  ※世界初演

久石譲:Piano Sonata
I. Heavy Metal
II. Blues Invention
III. Toccata

—-intermission—-

スティーブ・ライヒ:18人の音楽家のための音楽

 

 

まずは会場で配られたコンサート・パンフレットからご紹介します。

 

 

2025年のMUSIC FUTURE Vol.12はいよいよスティーヴ・ライヒの「18人の音楽家のための音楽」を演奏します。日本人奏者を中心としたこの楽曲の演奏はこれが初めてです。また前半は今回のために作曲した僕のThe Circles(世界初演)とPiano Sonataの東京初演も行います。

そのまた前に行う18時半からのYoung Composer’s Competitionでは全世界から130曲近くもの応募が寄せられました。これはもう国内のコンクールの域を脱しており我々関係者はその想いを受け止め、真摯に向かい合わなければならないと思っています。

12年続いたこのMUSIC FUTUREは来年から海外でももっと積極的に行っていきます。さらなる飛躍を目指して進化していきますので応援してください。

2025年10月
久石譲

 

Joe Hisaishi:The Circles ※世界初演

2025年10月4日土曜日にやっとThe Circlesのスコア制作が終わった。コンサートの2週間前で演奏者にはすまないと思っている。

変拍子のリズミックな楽曲を作ろうと考えたのはスティーヴ・ライヒの「The Desert Music」の気が遠くなるほど続く変拍子を指揮した結果「そのような曲を自分は書いてない」と思い今回チャレンジした。

即興的な短いフレーズを積み重ねていく方法を取ったのだが、思ったより軽やかな曲想となりフレンチテイストな楽曲になった。クラリネット2、パーカッション2、ピアノ2、とストリングカルテットというシンプルな編成で約7分の楽曲になった。

The Circlesというタイトルは、楽曲が途中から冒頭に向かって短いフレーズごとに逆行していき最後は一つの大きなリングになるためそれを表したものである。

久石譲

 

Joe Hisaishi:Piano Sonata

Piano Sonataはピアニストの滑川真希さん、フィルハーモニー・ド・パリ、Festival Ars Electronica、MIT Center for Art, Science & Technologyの共同委嘱で2020年の秋にフィルハーモニー・ド・パリで予定されていたコンサートのために作曲した。

が、COVID-19のため延期され、2022年に第3楽章のToccataのみフィルハーモニー・ド・パリで初演された。込み入ったテクスチュアのため何度か書き直しを提案したが、真希さんは果敢に挑戦され、今年の大阪万博で世界初演された。東京では今回のMusic Futureが初めてである。

Piano Sonataは1. Heavy Metal、2. Blues Invention、3. Toccataの3楽章で構成した。タイトルが示す通りリズムを重視した作曲を目指し、メインモチーフを単に繰り返すのではなく様々に変容していく構成を取った。そのため機械的な演奏になりがちなのだが、真希さんはとても情熱的でヒューマンな演奏をすることで楽曲の内在するパワーをGroove(グルーヴ)を表現した。またハーモニーではなくポリフォニックな方法をとっているためバロック音楽に近いと僕は思っている。言わば現代バロック音楽(Contemporary Baroque Music)である。

久石譲

 

Steve Reich:Music for 18 Musicians

*スティーヴ・ライヒ 訳・編:前島秀国氏(サウンド&ヴィジュアル・ライター)による楽曲解説が掲載されています

 

 

Music Future Band 2025

Violin 1 郷古 廉
Violin 2 横島 礼理
Viola 中村 洋乃理
Violoncello 櫃本 瑠音
Clarinet 亀井 良信、マルコス・ペレス・ミランダ
Percussion 内田 真裕子、神谷 百子、高瀬 真吾、東 佳樹、藤井 里佳、二ツ木 千由紀、 和田 光世
Piano 石川 良子、今村 尚子、鈴木 慎崇、三又 瑛子

Voices
東京混声合唱団
Soprano 稲村 麻衣子、大沢 結衣、小巻 風香
Alto 小林 音葉

(「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.12 コンサート・パンフレット」より)

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

開場18:00、開演19:00、その開場時間内の18:30からYCC優秀作品の評と演奏が行われました。審査を務めた久石譲さん、前島秀国さん、足本憲治さんが登壇され、それぞれお話しされました。久石譲挨拶にもありましたが約130曲もの応募があったそうです。過去最多なのはもちろんのことコンペ規模として相当なものです。コンサート・パンフレットにも講評が掲載されています。また公式サイトには一時審査通過作品も含めた講評と冒頭音源が公開されています。どんな作品が集まったのかぜひご覧ください。

第6回 Young Composerʼs Competition|久石譲プレゼンツ ミュージック・フューチャー Vol.12
https://joehisaishi-concert.com/comp2025-jp/

 

第6回 Young Composer’s Competition 受賞曲
Luca Pettinato「Fiore di un giorno」

東京公演で演奏されました。とてもゆったりとリラックスして聴ける曲で、奇をてらわない展開というか流れゆくままに気持ちよく進んでいく音楽でした。クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、プリペアドピアノという編成で約7分の曲は、奏法や響きにも細かい意図があり、観客らが席へ移動する開場時間のなか静かに皆さん耳を傾けていました。演奏は国立音楽大学の学生によるもので、演奏後には作曲者であるLuca Pettinatoも客席から登壇され大きな拍手が送られました。

 

久石譲:The Circles ※世界初演

構成や楽器編成については久石譲の楽曲解説にあるとおりです。とても魅力的な作品でした。「フレンチテイスト」というキーワードは的を得ています。楽想的には「Woman」「Les Aventuriers」をさらに複雑にした感じ、「イザベラ・バードの日本紀行」(ラジオ音楽:未音源化)のような品のあるモダンさも感じます。フェルメール&エッシャーの「Circus」とかも感じたかもしれません。曲はマリンバとシロフォンも効いていたし(だったよね?)、ソリッドな弦楽器はアコーディオンのようにシャープな音像でした。とても聴きやすい&聴きごたえのある曲でもっと聴きたかったです。久石譲は本公演でこの作品のみ指揮しています。

 

久石譲:Piano Sonata

約22分の作品。5月にEXPO大阪2025で世界初演されました。満を持してのプログラムです。そもそもこの作品の経緯はとてもユニークです。2020/2022年に作曲され2025年に初演を迎える間、「MUSIC FUTURE用に書き直せないか?」という久石譲の着想から2024年MUSIC FUTURE Vol.11でアンサンブル作品「The Chamber Symphony No.3(室内交響曲第3番)」として別の作品にも仕上げられています。

この2つの作品、ピアノ・ソナタと室内交響曲は姉妹作品と言えます。全体構成はほぼ同じだと思いますが、楽器編成からくる組み立てる構造の差異はあると思います。前年Vol.11で同作品を聴いていたので、今回聴きながら思い出すフレーズもたくさんありました。とにかく卓越したピアノパフォーマンスは素晴らしかった。

久石譲の楽曲解説にこうあります。

”Piano Sonataは1. Heavy Metal、2. Blues Invention、3. Toccataの3楽章で構成した。タイトルが示す通りリズムを重視した作曲を目指し、メインモチーフを単に繰り返すのではなく様々に変容していく構成を取った。そのため機械的な演奏になりがちなのだが、真希さんはとても情熱的でヒューマンな演奏をすることで楽曲の内在するパワーをGroove(グルーヴ)を表現した。またハーモニーではなくポリフォニックな方法をとっているためバロック音楽に近いと僕は思っている。言わば現代バロック音楽(Contemporary Baroque Music)である。”

何回でも読みたい、まさにこの通りの作品と演奏なんだろうと思います。どの楽章もそれぞれに印象的なメインモチーフが執拗に現れカノン風に展開したりモチーフが変容していったりします。滑川真希さんの演奏も力強くありながら狂いのない正確さでたたみかけるかと思えば、第2楽章ではモチーフに合わせてハミング(グレン・グールドがバッハを弾く時ように)したりとヒューマンな演奏も魅せてくれました。楽章間の静寂も作品の一部となった緊張感は得難い体験です。

タイトルにも目を向けてみます。

The Chamber Symphony No.3
I. Symphonia
II. Invention for two voices
III. Toccata

Piano Sonata
I. Heavy Metal
II. Blues Invention
III. Toccata

第1,2楽章のタイトルがそれぞれ変わっています。バッハの有名なピアノ曲に「インヴェンションとシンフォニア」という曲集があります。インヴェンションは2声、シンフォニアは3声です。Piano Sonataだけを見ると、おそらく第1,3楽章は3声、第2楽章は2声で構成されているように聴こえました。ひとつのモチーフ(メロディ)を右手で弾き、そのあとに左手で追いかけたり(カノン)、曲が進むにつれて右と左の2声でモチーフが変容していくのがバッハのインヴェンションです。同じ構造をもっているのがII. Blues Inventionと言えるのかもしれません。そして印象的なメインモチーフがブルースのそれを連想させたりもする。全体を通してわかりやすく言うと、右手も左手もフレーズをバリバリに弾きまくり縦横無尽に手がクロスしている。一方で一般的に右手でメロディ弾いて、左手で和音を弾くのがホモフォニー(ハーモニー)です。

もう一度、久石譲の楽曲解説に戻ってみてください。”現代バロック音楽(Contemporary Baroque Music)である”とはっきり書かれていますね。曲はバッハの時代の人たちがびっくりするくらい難しいです。I. Heavy Metal ヘビメタの概念もまだないから髪の毛逆立つかもしれません。トッカータ(伊: toccata)は、【主に鍵盤楽器による、速い走句(パッセージ)や細かな音形の変化などを伴った即興的な楽曲で、技巧的な表現が特徴。(Wikipediaより)】です。

 

 

バッハ「インヴェンション 第1番」

ひとつのモチーフ(A)が最初に右手で登場して、次に左手で追いかけて、また右手と左手で繰り返しながら、モチーフ(A’)に変容したりしながら。おもしろい点は左手だけ弾いても成立する旋律になっていることです。対等なんですね。右手と左手の2つの声部だけで構成されています。

(a public domain classical piece)

 

スーパーマリオで言うと。バッハのインヴェンションは、マリオとルイージがコンビネーションで力を合わせて進んでいくよ!そんな感じですね。

(a public domain classical piece)

 

そしてバッハのシンフォニアは、キノピオも加わって活躍するよ!そんな感じですね。

これがモーツァルト「トルコ行進曲」になると、右手はメロディを左手は伴奏を弾くホモフォニーになります。ズン・チャッチャッの伴奏だけだと何の曲かハッキリはしませんよね。メロディがあって曲になります。マリオカートで言うと、マシンだけじゃダメ、乗る人がいなきゃ!そんな感じですね。聴いてみて違うと思う!、そう思ってもアカこうらぶつけないでくださいね。

 

(a public domain classical piece)

 

 

「久石譲:Piano Sonata」仕組みが少しわかって聴くと、僕は好きです。バッハの音楽は理系に人気があると聞いたことがあります。数式が美しいとか、構造が面白いという感覚に近いんでしょうか。数式が美しいか、言ってみたいですね。Piano Sonata、また聴きたい!

 

 

この番組でポリフォニーの紹介も少しされていました。その時に冒頭のさわりで演奏していたのは上の楽譜の「バッハ:インヴェンション第1番」です。

 

 

Piano Sonataの姉妹作品にあたるThe Chamber Symphony No.3は、久石譲が提唱するSingle Track Music(単旋律)の手法が使われています。その説明は「ここ数年僕は単旋律の音楽を追求しています。一つのモチーフの変化だけで楽曲を構成する方法なので、様々な楽器が演奏していたとしても、どのパートであっても同時に鳴る音は全て同じ音です(オクターヴの違いはありますが)」(久石譲)とあるとおりです。

The Chamber Symphony No.3の第2楽章は「II. Invention for two voices」です。つまりタイトルそのまま2声のインヴェンションで作られている。そこに単旋律の手法が加わることで、ある音だけ同時に複数の楽器で鳴っていたり、ドとかレとか同じ音だけどオクターヴ高いまたは低い音でこれもまた必ず同時に鳴っていたり。

バッハのインヴェンションで例えるならこういうイメージです。

 

単旋律の手法を使うと

 

Piano SonataもThe Chamber Symphony No.3も第2楽章は2声で書かれていると思います。単旋律の手法を取り入れることで複数のモチーフ(声部)があるような錯覚効果もありながら、実は上のように同じ音が重なっていてモチーフ自体は2声になることをタイトル「II. Invention for two voices」が示しています。また楽器の出し入れで楽想がカラフルになることもあってPiano Sonataの「II. Blues Invention」からくるブルースの雰囲気はなくなっていると感じました。いろいろな意図やコンセプトでタイトルが変わっているのかもしれません。

 

 

待望の音源化!「MUSIC FUTURE  Vol.11」でプログラムした「The Chamber Symphony No.3」収録!

 

 

 

久石譲×滑川真希 共演歴

Joe Hisaishi: Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra 約20分

Joe Hisaishi: Variation 57 for Two Pianos and Chamber Orchestra (2019)
1. (00:03)
2. (07:30)
3. (10:05)

“JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE Vol.6”
October 25, 2019 at Kioi Hall, Tokyo
[world premiere]
Joe Hisaishi (condoctor)
Maki Namekawa & Dennis Russel Davies (piano duo)
Future Band (concertmaster: Tatsuo Nishie)

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

同作品は2022年に同じく指揮:久石譲、ピアノ:滑川真希 & デニス・ラッセル・デイヴィスでチェコ初演もされています。

 

 

 

 

20分間の休憩を挟んで後半です。大掛かりな舞台転換(楽器セッティング)も行われて期待は高まります。1時間もある大作ですから本公演のひとつのメインディッシュです。

演奏に先立ってまずは登壇した久石譲からMCがありました。「この作品は来年で50周年を迎えること」「ずっとやりたかった作品であること」「日本の演奏団体でのパフォーマンスは初であること」「日本人のきめ細やさも出ていて世界に通用すると思っていること」「指揮者のない作品で演奏者たちが自発的に作り上げていったこと」、とても素晴らしい演奏ですと太鼓判を押していました。

 

スティーブ・ライヒ:18人の音楽家のための音楽

本公演での楽器編成は、ヴァイオリン、チェロ、クラリネット2(兼バスクラリネット)、女声4、ピアノ4、マリンバ3、シロフォン2、ヴィブラフォン、マラカスでした。Music Future Bandから19名ですね。プログラムノートにも、「この作品は最小限で18人で演奏可能、通常は18~22人で演奏されることが多い」とありました。また「声楽と一部の楽器に限り、マイクの増幅を使用する」ともありました。

 

もう、こんなコンサート、こんな楽器布陣のステージなんて、一生に一度あれば幸運かもしれない。

from 久石譲コンサート2025公式X(Twitter)

 

映像や音源で聴いたことはありましたけど、この曲を生演奏で体感できるなんてミニマル・ラブです。演奏者の集中力と主体性がストレートに伝わってきました。無機質な側面もあるミニマル・ミュージックも、演奏者が合図したり体を揺らしたり、全身で表現していて見ていても飽きません。マリンバ1台を正面からと反対側からも連弾?するという離れ業なんかも目と耳を疑いながら信じられない。

本公演は記録用のカメラとマイクもしっかりありました。こういうコンサートこそ未知の扉、映像を初めて見て芽生える好奇心なんかもあるんじゃないかなと思います。新しい映像も音源も常に世界中から更新されている作品です。ぜひ興味あったら探してみてください。このMusic Futureパフォーマンスもいつかそんな日が来るといいですね。日本ですごいコンサートやってる!日本でこんなすごい演奏してる!って。満員の会場からは拍手とブラボーの大盛況ぶりで、何度もカーテンコールに応えていました。

実は、久石譲作品にもスティーヴ・ライヒと共鳴するような素晴らしい作品はたくさんあります。過去の久石譲作品からもつながりはたくさん見つけることはできます。近年でいうと「Deep Ocean」「プラネタリウム」の音楽などはとりわけ!ですがいずれも未音源化です。スティーヴ・ライヒ作品を演奏したい人たちがいるように、久石譲作品を演奏したい人たちはいっぱいいます。えっ、久石譲のこんな作品あるの?って早く世界中に知られてほしい。まずは音源かスコアで存在することを証明してほしい。スタジオジブリ音楽と同じように、久石譲のほかの作品たちも日に当たってほしい。もったいなさ過ぎる現状に開いた口が十年近く塞がっていません。心から望んでいます。

 

 

今年だけでも久石譲コンサートに足を運んだ人は、ミニマルに出会えた人、ミニマルにハマった人もきっといると思います。MUSIC FUTURE Vol.12も圧巻のミニマルアワーでした。

近年は東京以外や海外でも開催が増えてきたMUSIC FUTUREコンサートです。久石譲挨拶にも「12年続いたこのMUSIC FUTUREは来年から海外でももっと積極的に行っていきます。さらなる飛躍を目指して進化していきますので応援してください。」とありました。期待しかありません!応援しかありません!音源化希望しかありません!ここまで作品を作り続けている現代作曲家って他にいないんじゃないでしょうか。

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

 

 

リハーサル風景

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公演風景(東京)

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from 久石譲本人公式インスタグラム
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東京公演、終演‼️ご来場の皆さま、ありがとうございました…!
素晴らしい経験をさせていただいております✨
ピアニスト鈴木慎崇さんも一緒です😊

from 東京混声合唱団公式X(Twitter)

 

 

長野公演

from 久石譲コンサート2025公式X(Twitter)

 

from 東京混声合唱団公式X(Twitter)

 

(「久石譲:The Circles」演奏メンバー)

from 中村 洋乃理 Hironori Nakamura X(Twitter)
https://x.com/Nakanakaviola

 

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

Music Future Series

 

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