Blog. 「レコード芸術 2017年9月号」ベートーヴェン:交響曲第1番&第3番「英雄」 久石譲 NCO 準特選盤・評

Posted on 2019/04/03

クラシック音楽誌「レコード芸術 2017年9月号 Vol.66 No.804」、新譜月報コーナーに『ベートーヴェン:交響曲 第1番 & 第3番「英雄」 / 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ』が掲載されました。準特選盤、評論家による専門的な分析や考察は視点を広げる学びになります。専門用語や深く切り込む玄人目線は、ついていけないこともたくさんあります。でも、いつかわかる日もくるかもしれません。録音についても詳しく評されとても興味深い内容です。

 

 

新譜月評

THE RECORD GEIJUTSU 準特選盤
ベートーヴェン:交響曲第1番・第3番《英雄》/久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ

 

推薦 金子建志
長野市芸術館(2016年オープン)の芸術監督に就任した久石が、少数精鋭の室内オーケストラとベートーヴェン・ツィクルスを開始。小編成による快速盤の中でも、飛び抜けて速く、スタッカート的な鋭さと切れ味が、抜きん出ている。第1番の主部に雪崩込むあたりから激辛ぶりは徹底しているので、その段階で拒絶してしまう人もいるだろう。常にアクセルを踏み直し、コンサートマスターも一致協力して牽引。それでいて第3楽章のトリオでは木管のテンポを大胆に落とし、後続の弦でルバート的に戻す、といった技も見せる。《エロイカ》はサバール(1994年)と比較すると、I [サバール=15:16、久石=15:35]、II [S=12:42、H=12:04]、III [S=5:25、H=5:30]、IV [S=10:49、H=11:19] と、いくぶん遅いのだが、第1楽章コーダ [15分22秒~] のようにオフビートをジャズ的に強調するぶん速く感じる。第3楽章の [1分02秒~] の掛け合いは、ディミヌエンド付加だけ見えるが、「2/4→3/2拍子」のヘミオラ認識が隠し味。第1楽章展開部 [7分35秒~] のsf強調も、最後の「リテヌート→ア・テンポ」が効いている。第4楽章の [1分24秒~] をソロにするベーレンライター版の指示も自然。第2楽章 [1分30秒~] のチェロのクレッシェンドもベーレンライター版どおりだが、第1楽章コーダのトランペット [14分46秒~] はモントゥー流に途中までハイB♭を吹かせるなど、選択肢の多さも濃さに繋がっている。

 

準 満津岡信育
指揮者の意思がすみずみまで浸透したベートーヴェンである。8型が基本のヴァイオリンは両翼配置で、コントラバスを舞台下手奥にまとめた古典配置を採用。ライナー・ノーツで、久石自身が”われわれのオーケストラは、例えればロックのようにリズムをベースにしたアプローチで誰にでも聴きやすく、それでいて現代の視点、解釈でおおくりすることができます”と記しているように、テンポ設定は速く、拍節感も重厚さは塵ほどもなく、きわめて切れがよい。近藤薫がコンサートマスターを務めるオーケストラは、まさに一騎当千のメンバー揃いで、風を巻くように駆け抜け、要所で舞台上手奥に陣取るトランペットが咆吼し、ティンパニが轟音を発するのが印象的。あえてオフビート的に処理している箇所もあり、リズミックでノリのよい演奏が展開されている。弦のヴィブラートを抑制したり、《英雄》終楽章の最初の変奏の弦楽器をソロで弾かせるなど、目配りも利いている。ただし、今日ではウィーン古典派の諸作品においても、ファイやアントニーニなど、ピリオド・アプローチを軸に、さらに騒然とした演奏を行なう指揮者もおり、その点、久石の指揮ぶりはぐっとスマートで耳当たりがよい。ただし、久石の方法論だと、両曲とも第2楽章は、他の楽章に比べると物足りないのが惜しまれる。また、ティンパニ奏者が木の撥で轟然とffを発する際に、響きがやや飽和気味になる録音が筆者には気になった。

 

[録音評] 鈴木裕
第1番の小さめの編成のオーケストラに対しても、第3番の編成に対しても、近くから聴いているような高い臨場感を持っている。打楽器や金管楽器の力感も十分にあるとともに、弦楽器、木管楽器のパートの響きも透明感高く収録。長野市芸術館の響きのよさも奏功していて、高い天井や広い空間に音が広がっていく感じも実にうまく捉えている。

(レコード芸術 2017年9月号 Vol.66 No.804より)

 

 

本号では、「新譜月報」後半に掲載されている「優秀録音」(5盤選出)ページにも選ばれていました。筆者は [録音評] と同じ、より詳細に記されています。

 

新譜月報|優秀録音
いろいろな意味で意欲的な録音だ。まず、使われているのが2016年5月に誕生した長野市芸術館メインホールで、1300人程度を収容。第1番は同年7月に、第3番は翌年2月に収録されていて、ホールの響きとしてはまだ熟成されていないものの、録音を聴いている限りその響きは若すぎることがなく、音の重心の低さやまろやかさを持っている。確かに第1番の第4楽章など、大きめの音量の部分で密度の薄いソノリティも感じるところだが、第3番ではすでに落ち着いている。オーケストラの演奏については筆者の言及する担当ではないが、その響きを聴きつつコントロールしてることがわかる。そして録音。マルチ・マイクとステレオ・ワン・ポイント・マイクを絶妙にミックス。オーケストラの前後の奥行きは若干浅いが、ライナー・ノーツの写真を見ると実際に浅いので納得させられる。ホール、演奏、録音のそれぞれがよく、これからのシリーズも楽しみな組み合わせだ。(鈴木)

(レコード芸術 2017年9月号 Vol.66 No.804より)

 

 

 

また前月号の「レコード芸術 2017年8月号 Vol.66 No.803」では、いち早く「New Disc Collection」のコーナーでも紹介されました。

 

久石譲&ナガノ・チェンバー・オケの痛快なベートーヴェン

音楽家は作曲家と演奏家に大別される。いずれも音楽のさまざまに精通していることで、表現活動の一環としてタクトを手にする人が少なくない(言わずもがなだが、かつては作曲家=演奏家であった)。宮崎駿のアニメーション映画の音楽を数多く作曲した久石譲も、16年5月に開場した長野市芸術館をフランチャイズに結成されたナガノ・チェンバー・オーケストラの音楽監督として指揮活動を本格化させ、ベートーヴェンの交響曲全集の録音をスタート、その第1弾として第1番と第3番《英雄》をリリースした(昨年と今年の演奏会のライヴ録音)。

久石譲はクラシック音楽の指揮経験は豊かとはいえず、オーケストラは、コンサートマスターが現東京フィルのコンマスでもある近藤薫以下、30名ほどのメンバーは若手中心。それで「どんなベートーヴェンになるんだろう?」と聴いた演奏は……2曲ともにかなり楽しめた!

久石の音楽の運びには、ベートーヴェンの原典研究に基づく近年の表現スタイルを規範にしていることが窺え、メリハリが効いていて明快。テンポは速めで、常に躍動感がみなぎっている。最近の若手オケマンの巧さにも感心することしきり。この勢いの勝った痛快な演奏をするオーケストラが、これからどう熟成し、どのような情動を聴衆の内面に生み出していくのか、興味は尽きない。

(レコード芸術 2017年8月号 Vol.66 No.803より)

 

 

 

 

 

 

 

 

Blog. 「月刊ピアノ 2005年9月号」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/04/02

雑誌「月刊ピアノ 2005年9月号」に掲載された久石譲インタビューです。

 

 

”ハウル”も含む最新アルバム完成!自ら監督するオケをもつ意味を語る

理想があるんだ。だからもう来年の夏の企画までできてるもん(笑)

組曲「DEAD」はいかにして生まれたのか? 音楽監督と指揮を務める新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの次なるステージは? アメリカの映画音楽の巨匠J・ウィリアムズと久石の音楽性の違いは? などなど。どんな質問にも、穏やかに笑いながら鋭い答えを返してくる久石譲。揺るぎない確信から生まれた大きな余裕。そんなものを感じた。

 

オケのメンバーは”久石のフォルテはこれだ!”ってわかってる

ーやはり『WORKS III』で特筆すべきは、組曲「DEAD」だと思うのですが。これは数年前にご自分がメガホンを取る予定だった映画のために書いた曲だそうですね。

久石:
「そう。4、5年前ですね。でもその映画の内容が、人が死んだりとか、ちょっときついものだったので、時期をみようということになって、先に『カルテット』を撮ったんです。でもテーマ曲はできていて、そのときは2曲だけだったけど、僕の頭の中では4楽章の組曲にしようと思っていまして。今年こそは完成させたくてね。やっと発表できました。今回のアルバムはこの曲のために作った、といっても過言じゃないくらい(笑)」

ーDEADのスペルD,E,A,Dを音名に置き換えた、レ、ミ、ラ、レを主に使った作りになってるんですね、どの楽章も。おもしろい。

久石:
「映画の内容を考えながら、最初に思いついたアイデアだったんだけど、明快でしょう。明快だから音のインパクトも強い。だからどうしても弦楽オーケストラでやりたかったんです。フルだといろんな音色がありすぎちゃって派手になっちゃうから。弦だけの方がきっと深い世界が表現できるなあと思ってね」

ー元々久石さんがやってらっしゃった、現代音楽的なアプローチの作品ですよね。特に3楽章なんか、バリバリ、ミニマルですね。

久石:
「やっぱりそれは僕の本籍地みたいなものだから。すごく真剣になるとスタンスがそこに戻っちゃうんだよね、どうしても。でもね、もう一歩踏み込んじゃうと、ほんとうに現代音楽の作品になっちゃうんだけど、僕がいまやってるフィールドで考えると、それをポップスという世界の中に留める、ということが大事になってくるんです。僕は特別な人たち相手に音楽を作る芸術家じゃないからね。宮崎映画とか北野映画から僕の音楽を知ってくれたような多くの人たちと、コミュニケーションできる音楽でなくちゃいけないんです。今回はそのギリギリ(笑)。だいぶ挑戦的なことはしたなと思いますけどね」

ーところで、ワールド・ドリーム・オーケストラの音楽監督に就任されて1年経ちますが、オーケストラとの活動はいかがですか?

久石:
「作家としては最高に幸せなオケとの関係ができてると思いますね。おもしろいのはね、譜面にあるフレーズ、たとえばチェロなんて、譜面通りに弾けば、フォルテであっても、タ~ラ~ラ~って、上品に弾くんだけど、僕の楽譜にこういうフレーズでフォルテなんて書いてあると、なんの指示も出さないのにみんなガンガン弾きだすの(笑)。久石のフォルテはこれだって、もうわかってるんだよね」

ー確かに、記号のフォルテが、作曲家の頭の中に鳴ってるフォルテのイメージと同じというわけではないですもんね。

久石:
「譜面は表現できる範囲が意外と狭いですね。どんなに精密に書いて、その通りに演奏したっていい演奏になるわけじゃない。譜面の後ろにある世界というか、それぞれの演奏家が解釈できる範疇、そこに音楽家の個性が生まれるわけでね。そういう意味では自分が監督してるオーケストラがあるというのは本当に素晴らしいです。誰よりも僕の好きな音を出してくれるからね。今年の冬、ワールド・ドリーム主体のコンサートをやるんですけど”12月の恋人たち”というタイトルで、『白い恋人達』『シェルブールの雨傘』『男と女』……フレンチ・ムービーの曲を僕がアレンジします。あとコール・ポーターを、外人シンガーを呼んでやろうと思っていて。恋人同士で来るには最高のコンサートだと思うよ」

ー本当にハイペースに、次々とアイデアが湧いてくるんですねえ。

久石:
「ワールド・ドリームが好きだから、どんどんアイデアが出てきちゃうんです。だってもう来年の夏の企画までできてるもん(笑)。あとね、僕には理想があって……僕のコンサートの次の日にフルオケでマーラーを聴きに行く、なんていう人はあんまりいないと思うんですよ。そういう人たちに、クラシックの敷居はそんなに高くないんだって知ってもらいたくてね。だから冬のコンサートでも、フレンチムービー音楽とコールポーターと一緒に、ラヴェルのボレロもやるんです。別にクラシックの入門編をやりたいわけじゃなくて、クラシックにもポップスにも、こんなにいい音楽があるんだよって、垣根なくみんなに知ってもらいたいんだよね。たとえば『シェルブールの雨傘』のあとにブラームスの3番の3楽章なんかをやって、これっていい曲だなあって、先入観なしに聴いてもらえれば嬉しいじゃない。ワールド・ドリームではそういうことをどんどんやっていきますよ」

ーここまでたくさんの大作映画の音楽を次々に手がけていらっしゃる久石さんを”日本のジョン・ウィリアムズ”と呼ぶ声も多く聞かれます。ご自分では嬉しいことですか? 不本意なことですか?

久石:
「やっぱりオーケストラを扱って映画音楽をやってるから比べられるのはしょうがないと思うし、昨年、ワールド・ドリームでスター・ウォーズのテーマを自分で振ってみてよくわかったんだけど、あれだけのクオリティと内容のオーケストレーションをやれる人はいないですよ。すごく尊敬してるし、僕なんかまだまだだな、と思います。でもね、実際の音楽でいうと、僕と彼の作るものはまるで違うんですよ。僕は東洋人なので、5音階に近いところでモダンにアレンジしてやったりするものが多いんです。でもJ・ウィリアムズはファとシに非常に特徴がある。正反対のことをやってるんです。それはすごくおもしろいなあと思いますね。音楽の内容も方法論も違うけど、僕もあれくらいのクオリティを保って作品を発表し続けたいですね」

(月刊ピアノ 2005年9月号より)

 

 

久石譲 『WORKS3』

 

久石譲 『パリのアメリカ人』

 

久石譲 『W.D.O.』 DVD

 

 

 

 

Blog. 「モーストリー・クラシック 2019年5月号 vol.264」久石譲パリ公演 記事

Posted on 2019/03/31

クラシック音楽情報誌「モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC 2019年5月号 vol.264」(2019年3月20日発売)に 久石譲コンサートの記事が掲載されました。

2019年2月開催「久石譲 シンフォニック・コンサート」パリ公演です。毎号、海外の音楽情報を伝えるコーナーのひとつとしてカラーページで紹介されています。

 

 

World Music Scene
海外音楽情報 世界の話題

Paris | February 2019 | FRANCE

文=三光洋(音楽ジャーナリスト)

「ジャポニスム 2018」で久石譲の演奏会がフィルハーモニー・ド・パリで
「東の国の交響曲」、「千と千尋の神隠し」などの演奏を観客は総立ちで讃える

昨年秋から行われた「ジャポニスム2018」の一環として、パリで久石譲のコンサートが行われた。2月10日にフィルハーモニー・ド・パリの演奏会に先立って開催されたトークショーには例外的に1000人を超える人々が詰めかけた。

久石は30分間、エマニュエル・オンドレ、フィルハーモニー・ド・パリ企画部長の質問に答えた。話題は作曲家としての歩み、バッハへの思い、東洋人としての死生観、フランス文化と多岐にわたった。「二日酔いの朝にベートーヴェンの交響曲は聴きたくない」といったユーモアも交えた直截な語り口に観客は静かな中にも和やかな雰囲気が広がっていた。

演奏会は当初2月9日と10日マチネの2回の予定だったが、切符は発売後わずか15分で4800枚が完売。10日夜の追加公演が決まり、延べ7200人が会場に足を運んだ。

プログラム前半は5楽章からなる42分の大曲「東の国の交響曲」だった。第1楽章「東の国」は2013年に作曲されたが、東日本大震災から受けた衝撃で、残りは16年になってようやく完成している。「東の国」は日本であるとともに、大きな被害を受けた東北でもある。

セリー音楽の影響が所々に感じられる一方、思い切った休止によって楽想が一転する独自の手法は映画音楽に永年携わってきたことと無縁ではないだろう。第2楽章「Air」は打楽器の繰り返しが特徴で、「音大生時代からずっとミニマル音楽に惹かれてきた」という先刻の談話が思い出された。

ソプラノ・ソロの市原愛は、第3楽章「東京ダンス」で日本語と英語による子供の囃子歌、第5楽章「祈る人」のラテン語詩句で澄み切った声を聴かせた。この最終楽章には作曲中にずっと頭の中で鳴っていたという「マタイ受難曲」の旋律が引用されるとともにフーガが使われ、バッハへの傾倒ぶりがうかがえた。

休憩後の後半は映画音楽を素材とした2曲が並んだ。「青春」(mládí)で久石はピアノを弾くとともに、弦楽器だけになった楽団を指揮した。「菊次郎の夏」で使用された”Summer”をはじめ、北野武監督の3作品で使われた旋律が流れた。

最後にフランスでも大ヒットした宮崎駿のアニメ映画「千と千尋の神隠し」を組曲にまとめた「Spirited Away Suite」が演奏されると、若者を主体とする観客はそろって立ち上がり、大きな歓声で久石と3Dオーケストラを讃えた。

パリとリヨンの高等音楽院を優秀な成績で卒業した若手を選抜し、映画音楽の演奏を行っている2012年創立の楽団(コンサートマスター、赤間美沙子)は、溌剌とした練度の高い演奏を聴かせてくれた。

(モーストリー・クラシック MOSTLY CLASSIC 2019年5月号 vol.264 より)

 

*写真は本誌掲載のものではありません。近いものを使用しています。

 

 

久石譲 シンフォニック・コンサート
Symphonic Concert JOE HISAISHI

[公演期間]  
2019/02/09,10

Saturday, February 9, 2019 at 8:30 p.m. 
Sunday, February 10, 2019 at 4:30 p.m.
Sunday, February 10, 2019 at 8:30 p.m.

[公演回数]
3公演 (フィルハーモニー・ド・パリ)

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:3D Orchestra
ソプラノ:市川愛

[曲目] 
久石譲:THE EAST LAND SYMPHONY
1.The East Land  2.Air  3.Tokyo Dance  4.Rhapsody of Trinity  5.The Prayer
—-intermission—-
久石譲:【mládí】for Piano and Strings ~Summer / HANA-BI / Kids Return~
久石譲:Spirited Away Suite /「千と千尋の神隠し」組曲

—-encore—-
Porco Rosso (Pf.solo) ※9日公演
Asitaka and San (Pf.solo) ※10日公演
となりのトトロ

 

 

コンサート風景、本誌にもあったトークショー内容・カンファレンス動画(ノーカット33分)、現地取材記事や現地コラム、現地コンサート・レポートなどは、こちらでまとめてご紹介しています。

 

 

 

 

 

Info. 2019/03/29 久石譲さんよりメッセージをいただきました (長野市芸術館HPより)

久石譲さんよりメッセージをいただきました

長野市の皆さんへ

長野市の皆さん、久石譲です。この3月で長野市芸術館の芸術監督を任期満了に伴い退任することになりました。開館準備期間の2年半、そしてオープン後の3年にわたり、多くの方々から支援を頂き深く感謝しています。 “Info. 2019/03/29 久石譲さんよりメッセージをいただきました (長野市芸術館HPより)” の続きを読む

Info. 2019/04/27,29,30 「久石譲 スプリングコンサート Vol.1 ~仙台フィルとともに~」 ツアー開催決定!! 【3/28 Update!!】

Posted on 2019/01/02

久石譲×仙台フィルが起こす音楽の奇跡
東北での開催が決定!

 

Sakura Tour 2019
久石譲 スプリングコンサート Vol.1 ~仙台フィルとともに~ “Info. 2019/04/27,29,30 「久石譲 スプリングコンサート Vol.1 ~仙台フィルとともに~」 ツアー開催決定!! 【3/28 Update!!】” の続きを読む

Info. 2019/04/30 「TRADITIONAL BEST / EXILE ATSUSHI」CD発売決定 「懺悔」「天音」久石譲楽曲収録 【3/23 Update!!】

Posted on 2019/01/11

平成最後の4月30日に39歳の誕生日を迎えるEXILE ATSUSHIが、“日本の心”をテーマとしたベストアルバム「TRADITIONAL BEST」を発売!

同作のテーマは“日本の心”。これは日本に生まれたアーティストとして、日本という国を想い、日本に生きる人々を想う活動の中で生まれたもので、同テーマのもとに現在まで活動を展開してきたという。 “Info. 2019/04/30 「TRADITIONAL BEST / EXILE ATSUSHI」CD発売決定 「懺悔」「天音」久石譲楽曲収録 【3/23 Update!!】” の続きを読む

Info. 2019/05/05,06 「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」(プラハ) 開催決定!! 【3/19 Update!!】

Posted on 2018/10/20

2019年5月5日、久石譲によるスタジオジブリ宮崎駿監督作品演奏会がチェコ・プラハにて開催決定!

2017年6月パリ世界初演、「久石譲 in パリ -「風の谷のナウシカ」から「風立ちぬ」まで 宮崎駿監督作品演奏会-」(NHK BS)TV放送されたことでも話題になりました。

1984年公開の「風の谷のナウシカ」から2013年公開の「風立ちぬ」まで、宮崎駿監督と久石譲コンビが手がけた全10作品の音楽を演奏するスペシャルなジブリフィルムコンサート。巨大スクリーンに映し出される映画の名シーンと共に奏でられるオーケストラの迫力の音楽。指揮・ピアノはもちろん久石譲、共演オーケストラはプラハ・シンフォニエッタ。 “Info. 2019/05/05,06 「久石譲 シンフォニック・コンサート スタジオジブリ宮崎駿作品演奏会」(プラハ) 開催決定!! 【3/19 Update!!】” の続きを読む

Blog. 「MUSICA NOVA ムジカノーヴァ 2007年3月号」久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/03/18

ピアノの情報誌「MUSICA NOVA ムジカノーヴァ 2007年3月号」に掲載された久石譲インタビューです。久石譲の創作活動への姿勢、芯のようなもの、普遍的に語られる大切なことが凝縮されています。

 

 

表紙の人

時間を超えて響いていく、美しい意志 久石譲

文:青澤隆明(音楽評論)

「過去は振り返らないんですよ、興味なくて」。久石譲はきっぱりと言う。「いまのほうが圧倒的にいい。前に戻りたいという気持ちはまったくないです。どんどん自分のやりたい音楽をやれる環境に近づいているから、いまが最高。そういう考え方ですね」。

いろいろな音楽が好きで、3、4歳のときにまずはヴァイオリンに触れた。「音楽をやるのは当たり前だと思っていたので、音楽家になる、と決心する必要はなかったです」。中学2年のとき、譜面を起こして吹奏楽の仲間に配るのが面白くて、それで演奏家より作曲家のほうがいいと思った。昨年から自身のオーケストラ作品を台北、香港、北京、上海、大阪で演奏し、3月、東京でのコンサートでツアーを締めくくるが、指揮者、ピアニストとしても広く活躍する現在でも、彼の音楽活動の根本が作曲にあることは揺るがない。「他人の曲は弾かないです。作曲家である自分が必要とする演奏を自分でしているから」。他の演奏家が弾くこともあまり考えていないと言う。「そういう意味では、積極性のある作曲家じゃないね(笑)。結果としてみんなに喜んでもらえるのが最高に嬉しい。だれかのために書いている、となった瞬間、作曲家としてのスタンスが変わってしまう気がして。最初に自分がいちばん喜べることを一生懸命やって、『うん、わかる』と聴いてもらえるのが理想です」。

ミニマルミュージックをベースに置く現代音楽の作曲家として出発し、「集団即興演奏を管理するシステムづくり」に取り組んでいた久石譲は、1980年代からポップス的なフィールドに入り、映画やCM音楽の名匠としても広く知られるようになった。そしていま、自分のスタンディング・ポジションを明確にする意味でも、弦楽四重奏やオーケストラ的な「作品を書こう」と考えている。「いちばんピュアに自分が考えていることを表現できる。それだけに大変と言えば大変ですけど」と語るピアノのためにも、数年前に発表した10曲に書き足し、全調性による24曲のエチュードとして完成させいたと意欲をみせる。「子ども用のピアノ曲も書きたいよね、作曲家として試されるけど。あまり難しくなくて、気持ちよくなれるものができたら最高」。

生活のなかに入ってくるようにピアノがあるといい、と語るその言葉は、久石譲のポップ・ミュージックが僕たちの日常を訪れるときのことをふと想わせる。日常生活と芸術的な美的時間を瞬時に結びつける表現者は、この現代をどのように生きているのだろうか。

「その時代の独特の空気、政治や経済も関係してくるけど、そのなかで自分が感じていることをきちんと表現したいというのはあります。ただ、単なる今日的な表現では、5年経つと古くなる。今日的な題材を扱いながらも、永遠のテーマになるような。本質的なところと関わりあえたらいいよね。そういうものをできるだけ探そうとしているところはあります。たとえばCMも、初対面の人の印象と近いところがあって、音楽はぱっと聴いた瞬間にその世界観がわかってしまう。それに、CMは15秒といっても1回じゃなく、何度もリピートして流れる。半年で色褪せてくるか、イメージが残るか、それが最大の試練と言えます」。

では、久石譲の音楽人生が一篇の映画だとしたら、いま、どんな物語のどのあたりを歩いているのだろう。こう尋ねると、音楽家は即座に「アンディ・ウォーホルが延々とエンパイア・ステイト・ビルを撮っていたような感じで、まあ、どこをとっても同じでしょう」と答えて笑った。「10年経っても、自分のスタンスは変わっていないと思う。今まで百パーセント満足したものはないからね」と。久石譲の不断の音楽冒険は、彼の愛するミニマル・ミュージックのように挑戦をくり返し、ひとつの限られた物語的な時間に帰着することはないのだろう。

「この次は絶対にクリアーにしようと、絶えず線になって反省して、さらに理想的な高い完成度の…、ここが難しいんですけどね。完成度が高ければいい音楽になるかというと、ものすごく立派な譜面を書いたからってそうはならない。むしろちょっと粗っぽく書いて、なんだかなあっていうときのほうが、人々に与えるインパクトが大きいケースもありますからね。実のところ、音楽がまだわからない。だからたぶん、10年後もそういうことに悩みながら、『いい音楽をどう創ろうか』と考えていくんじゃないかと思います」。

(ムジカノーヴァ MUSICA NOVA 2007年3月号 より)

 

 

 

Blog. 「GQ JAPAN 2006年3月号 No.34」 AUDI × HISAISHI 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2019/03/17

雑誌「GQ JAPAN 2006年3月号 No.34」に掲載された久石譲インタビューです。AUDI特集のなかのひとつとして紹介されました。

 

 

AUDI × HISAISHI

「僕にとってクルマとは、大音量で音楽を聴けるプライベートな空間。そんな大切な時を共に過ごせる誠実で繊細なクルマです」

20年以上活動を続けている宮崎駿作品の音楽はもちろん、ふと耳にする短いCM音楽 ~サントリー緑茶・伊右衛門~ であっても、聴く人の心を大きく揺さぶる久石譲の音楽。

「音楽って不思議なんですよ、思っている以上に歴史が短いんです。クラシック音楽が生まれたのはたかだか200年前、ポップスは1920年代以降ニューオーリンズのJAZZから。その後急激に数多くの音楽が生まれた。そんな中で大切にしているのは、出会ったことのない自分に出会ったような新鮮さ……自分自身が感動できるような音楽であることです」

最近では自ら指揮棒を振り、新日本フィルとの活動も増えている。

「自分が信頼するオーケストラが演奏することを想定して曲を書くと、よりエモーショナルな楽曲を作ることができるんです。実際に指揮をして経験を積み、それがまた作曲にフィードバックされています」

久石の活動の場は、世界に広がっている。昨年11月には香港映画のために中国のオーケストラの指揮も。

「大陸的な中国の国民性が出て、とてもよいテイクが録れました。言葉の問題はありましたが、改めて音楽に国境はないなと実感しました」

(GQ JAPAN 2006年3月号 No.34 より)

 

 

 

Blog. 「DVDビデオ・ぴあ 2001年10月号」 映画『Quartet』久石譲 インタビュー内容

Posted on 2019/03/16

雑誌「DVDビデオ・ぴあ 2001年10月号」に掲載された久石譲インタビューです。映画初監督作品『Quartet / カルテット』についてたっぷり語られています。

 

 

映画の作曲家が映画を撮るということ
久石譲インタビュー

宮崎駿、北野武、大林宣彦といった人気監督作品の音楽監督として、現代日本映画の最前線を突っ走っている久石譲が映画監督に初挑戦した。その「カルテット」は、弦楽四重奏団を組んだ若者4人を追った青春ドラマ。だが、ただの青春映画ではない。これは久石いわく「日本初の音楽映画」。映画の作曲家が映画を撮るとき、いったいそこには何が生まれるのだろうか。

取材・文=賀来タクト

 

監督挑戦に当たり、久石譲は映画音楽の作り手としての自身を基本に置いた。職業監督としてではなく、映画音楽へのより深い理解を得るための「経験の一つ」だというのだ。

「いろいろお誘いをいただいてきた中の一つが形になってきたときに、それならと思って引き受けたんです。あくまで僕は音楽家ですから、その僕が監督するなら、ドラマに対して音楽がいかに絡みきれるか、音楽がセリフ代わりにものを言うように作れるか、そういうことにこだわってみたかった」

言葉を超えた映像と音楽のジョイント。久石が目指した映画こそ「日本初の音楽映画」であった。そういう理想にかなった作品は海外でもそんなに見当たらないと、苦笑いが漏れる。

「あえていえば、ジョン・コリリアーノが音楽をやった『レッド・バイオリン』くらいかな。黒澤明監督が”映画的”なる表現をされていましたね。音楽と映像が深く絡んでいったときに、そういう映画にしかできないものに迫れる瞬間って必ずあると思うんです。そういうところに1シーンでもいいから到達したかった」

偶然と言うべきか、「レッド・バイオリン」さながらに、その初監督作品「カルテット」では弦楽器とドラマが巧みに絡みあった物語が展開する。学生時代、弦楽四重奏団を組んでいた若者4人がふとしたことで再会、それぞれ人生の転換期を迎えていた彼らが今一度カルテットのコンクールに挑戦するというもの。随所に描かれる演奏シーンのために、久石は撮影前に使用する楽曲40曲を全てオリジナルで書き上げ、それに合わせて撮影を進めた。

「全体の半分弱くらいが音楽シーンで、時間軸に固定されますから、構成自体は難しくなかったんです。でも、セリフの投げ合いで感情を引っ張りすぎると音楽シーンのパワーがなくなっちゃうから、芝居は極力抑える、カメラは引くって決めてましたね。そういう意味では、北野監督的なやり方だったんですよ。過剰に説明をせずに、どこまで引いて見せるかという意味ではね。武さんは僕が映画を撮るというのを知っていたんです。あるとき一緒にご飯を食べていて、武さんが大杉漣さんに話をしていたんですよ。”ラーメンをおいしく撮る方法って、いかに本当においしいかと見えるようなカットを撮らなくちゃいけないんだよ。たいがいの監督がしくじるのは、いかにうまいかという内容を説明しちゃうから。トンコツ味でとか昆布のダシでとかさ、そうするとトンコツが嫌いな人はそれを聞いた瞬間、半分引いちゃうんだよな”って。大杉さんに話をするフリをして、たぶん僕に言ってくれたんだと思う。それがすごく残っていて、大変なヒントをいただきましたよね」

ちなみに、撮影現場では主要スタッフに使用楽器の譜面が手渡された。小節ごとにカメラの動きやアングルを決めるなど、絵コンテ代わりに使ったのだ。必死だったのはスタッフばかりではない。役者陣は楽器の実演を余儀なくされ、場面によってはプロに眼前で演奏をしてもらう、その動きにならいながら演奏シーンを撮ったのだ。

「音楽映画と謳っていながら、役者さんが本当に弾いているように見えなかったらアウトじゃないですか。演奏で観る人を引かせないようにするのは難しい。日本でそれをうまくやっている映画ってあまりないですよね。なおのこと譜面を渡されたスタッフもパニクってましたけれども(笑)」

撮影を終えてしばらく経ったある日、主人公の第1バイオリン奏者・明夫を演じた袴田吉彦に問えば「僕にとって素に帰る映画になっちゃいました」という声が返ってきた。演奏シーンの大変さに加え、芝居も概ね任されていたことが自分の原点を見ざるを得ない結果になったというのだ。

「それはすごく嬉しいな。本当に袴田くんでなかったらこの映画はできなかった。袴田くんの役は、父親の想い出のために音楽を愛していながら恨んでもいるという矛盾した気持ちを抱えていて、最後の最後まで笑わない。そんな女性から見たら嫌みな男をどう魅力的に引っ張るかっていうことでは脚本の段階から悩みましたし、逆にステレオタイプに陥らない人間を描けたという満足感も大きいですね」

ドラマ自体に目を移すなら、そういった「引きの視点」がもたらした独特の味わいに注目すべきだろう。どこか喉越しのスッキリした「涼しい映画」になっているのだ。

「あ、そこのところ、太字で(笑)」

破顔一笑。

「そう、泣かそうと思えば、そういうシーンはいくらでもできる。でも、観る人の心に作品を残したいのなら、寸止めにするというか、過剰な情報や先入観を与えちゃダメなんです」

日本の空気とは思えないサラサラ感があると言おうか。「カルテット」には湿気の少ない空気感が確かにある。

「ありがたいなぁ。まずウェット感をどう取っていくかというね、日本的情緒をとにかく外していく作業に徹しましたよね。それを日本の風土で撮るのは大変なんです。スタッフには”なぜもっと芝居をさせないんだ”という気持ちがあったと思うんです。その中で初心を貫いていくことは精神的には大変でしたね。その辺は”初監督で何も知らないので”といって押し通しましたけれど(笑)」

あとで振り返っても「カルテット」には嫌みなクドさがない。

「この映画、2回観た人の反応がいいんですよ。芝居や何かを全部言葉でやっていると2回観たいとはあまり思わないですよね。でも、音楽は2度聴いても嫌にならない。その音楽が今回、セリフ代わりになってますね。リピートに耐える映画になったかと思うと、とてもうれしいですね」

実は撮影を1年前に終えてしまっている「カルテット」の後、久石は既に監督第2作を撮りあげていた。その「4 Movement」では、音楽映画という括りはなかった。つまり、音楽家としてではなく、より純粋に監督という立場で撮った作品になったといえるのだが……。

「音楽家として最低にやりづらい作品でした。画が全部音楽的なカットなんです。音楽でやるべきアクセントやリズムというものを画が全部やってしまっていて、それに音楽で上乗せするなんて過剰でしょ? 一番やりづらい監督は久石譲ですね(笑)」

映画監督を経験して「脚本の読み方が深くなった」と、再び顔が締まる。理想の映画音楽とは何かを探るための経験は、想像以上の結実を希代の作曲家にもたらしたようだ。

「映画って”映る画(うつるえ)”って書きます。武さんはそれを”1秒間に24枚の絵が映し出されるもの”という表現をされた。僕にとってはアクション、動くことなんです。『カルテット』では音楽シーンを格闘技ともいうべきアクションで考えていました。セリフのない『4 Movement』では人の動きの部分部分を追っていきました。その動きをつかまえるということを、もっとやってみたい。映画は全部が出ますから、もっと自分を磨いてね。そんな気持ちが残ったのは確かです」

映画監督・久石譲が再登場する日はそう遠くはなさそうである。

(DVDビデオ・ぴあ 2001年10月号 より)

 

 

QUARTET カルテット

 

久石譲 『カルテット DVD』

 

久石譲 『4 MOVEMENT』