Posted on 2024/08/12
7月25,26日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.11」コンサートです。今年は「JOE HISAISHI FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.7」(7/31-8/1)とのスペシャルウィークです。久石譲の3大コンサート(WDO,FOC,MF)のうち2つのコンサートがこの夏一挙開催です。
今回ご紹介するのは、久石譲3大コンサートに久石譲指揮定期演奏会/特別演奏会にと足しげく参戦するふじかさんです。それうはもう聴きなれてる書きなれてるだけあって、そういう音楽なんだとイメージしやすい。ぜひお楽しみください。
JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE Vol.11
[公演期間]
2024/07/25,26
[公演回数]
2公演
東京・紀尾井ホール
[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Music Future Band
[曲目]
フィリップ・グラス / 久石譲:2 Pages Recomposed
フィリップ・グラス:弦楽四重奏曲 第5番
—-intermission—-
デヴィッド・ラング:Breathless
マックス・リヒター / 久石譲:On the Nature of Daylight
久石譲:The Chamber Symphony No.3 *世界初演
[参考作品]
MUSIC FUTURE VOL.11 初日公演の様子をレポートさせて頂きます。
2024年7月25日 紀尾井ホール 19:00開演
久石さんが主宰するMUSIC FUTURE シリーズも早くも11回目になりました。現地に足を運ぶのは2018年以来、6年ぶりとなりました。コロナ禍から数年はライブ配信等もあり昨年まではネット上で追いかけることはできました。
開場10分くらい前に現地に到着。少し天気が崩れ始め、雨が少し降ってきたところで開場時間となりました。チケットもぎりをすぎて、ホール内に入ると天井のシャンデリアがとても煌びやかでした。
18:30を過ぎたところで、「第5回Young Composer’s Competition」の講評と演奏が始まります。まず依田さんが登場、紹介のちに、審査員の久石さんと足本さんが登壇されました。依田さんがMCで質問をしながら、久石さんと足本さんが回答するスタイル。近年の久石さんのコンサートではMCが無くなったため、久石さんの声を聞ける貴重なMFシリーズでもあります。
冒頭で依田さんの質問を久石さんが聞き取れず、何度も聞き返すところからはじまり、久石さんの「こんにちは」から始まり、MFが11回目の開催であること、コンペは5回目で、作品が40曲以上あったこと。今回の受賞作品は弦の書き方がよく、亡くなった西村先生へのオマージュも感じられたことなどから、ミニマルベースの作品ではなかったが、入賞することになったことなどが語られました。
一度、3人が舞台から袖に戻りましたが、慌てて依田さんが再登場。依田さんが「大事なことを忘れていました~」と久石さんが袖から「何のフリだよ~笑」と答えながら再登場。そこから久石さんが「今回は国立音大の学生さんたちが演奏してくださいます」と深々とお辞儀をされていました。その後学生カルテットチームが登壇し、コンペ作品の演奏に入りました。
・Fabil Luppi : SOL D’Oriente Fantasia for string quartet
3つの短めの楽章からなる作品でした。冒頭は久石さんの『Metamorphosis』のように音が変容していくようで、グラデーションが変化していくような音色でした。中盤の楽章ではグリッサンドで低音から高音まで駆け上がっていき、トレモロ奏法が各所で響き渡る構成。終盤ではピチカートやトレモロが次々と展開されて、さざなみが寄せて返していくような印象を受けました。
講評では「不協和音が全体を支配して~」とのことでしたが、聴きにくいわけではなく、カルテットという弦楽だけの響きを存分にいかした作品だなぁと素人目線ですが感じることできました。
演奏が終わり、奏者が退場すると、コンサート本編へ向けて舞台の配置転換が行われました。19:00すぎに会場が暗くなり、ステージに続々と奏者が登壇。チューニングの後に久石さんが登場。いよいよ本編のスタートです。
・Philip Glass/Joe Hisaishi:2 Pages Recomposed
2018年のMFでの演奏以来、再度プログラム入りました。「♪ソドレミファー」という音型をひたすら繰り返し、音型を微妙変えながら、発展させていくミニマルスタイルの作品です。久石さんがリコンポーズすることによって、久石さんの曲では?と錯覚を起こす楽曲でもあります。
CD音源にもなっているのですでに何度も聴いてきましたが、改めて生で聴くと、無いはずのフレーズが立体的に聴こえてくる面白さがより際立ちます。「ソドレミファ」の一部を強調していくだけで、揺らぎのような音型や、時計の針が動くような旋律が聴こえてきます。
中盤の盛り上がり後は、久石さんが音量を小さくする指示を出します。後半部は、ストリングスのトレモロが加わり、より迫ってくるような迫力が出てきます。1st Vnの奏でる「ソドレー」「ソドレミー」の鋭い旋律がとってもエモーショナルに感じました。
・Philip Glass:String Quartet No.5
舞台転換後、今度はカルテットのみの演奏。コンペの演奏では着席でしたが、本編では立奏スタイルになっていました。しかも、このカルテットでもいわゆる対向配置スタイル。久石さんのこだわりを感じます。
1.ピチカートのちに悲しげな旋律が提示されました。このモチーフが今後の楽章で展開されていきます。
2.チェロの波打つような低音の音型にピチカートと和音が繰り返されていきました。シンコペーションが印象的の少し明るさのある雰囲気から徐々に暗い雰囲気へ。
3.アップテンポで明るい雰囲気の楽章。二ノ国サントラの『ホットロイト』ような印象を受けました。時折2nd Vnの小林さんとViolaの中村さんが楽しそうに顔を見合わせながら笑顔で演奏されていました。
4.3楽章とは一変し、重苦しいく切ない旋律が印象的。1st Vnの郷古さんの音色が美しく響き渡っていました。
5.プログラムに記載されていた通り、ジェットコースターのように上下に大きく動き回る音型から始まります。時折『Tri-AD』に似たような旋律も聴こえてきます。1楽章の再現部の後に、激しいダンスパートのセッションへ。再度1楽章の再現部に戻り、最後はピチカートで静かに消えていくように終わりました。
ここまでで2曲の弦楽4重奏曲を聴いて、この編成の奥深さを感じました。久石さんのいつか書かれるはずの『String Quartet No.2』も期待しています。
ー休憩ー
・David Lang:Breathless
休憩をはさんで、今度は木管が中心の楽曲です。下手側からフルート、オーボエ、クラリネット、バスーン、ホルンと並んでいました。フルートから始まり次々といろんな楽器が単音を鳴らしていくと、それらが旋律のように聴こえたり、リズムが構築されていくような楽曲でしたが、個人的には今回のコンサートの曲目で一番難解に感じました。
小鳥のさえずりや、木々が風で揺れる音が意図しないところで楽曲のように聴こえてくるような効果を利用している雰囲気も感じました。演奏はとても難しそうで、皆がリズムをしっかりと刻みながら、個々のタイミングを測って音を紡いでいっているようでした。
・Max Richter/Joe Hisaishi:On the Nature of Daylight
続いては金管セクションがメインの楽曲。舞台下手側からトランペット、ホルン、バスーン、トロンボーンでトランペットのやや後ろよりにクラリネットという編成でした。
トロンボーンによる息の長い和音のベースにホルンの柔らかな旋律がゆったりとした気持ちにさせてくれました。そのホルンの旋律を福川さん信末さんと交互にパスしあう様子が印象的です。後半はトランペットのロングトーンも加わり、穏やかながら、とても力強いフィナーレへと向かっていきました。
最後の曲は、いままでのメンバー・セクションが集結して、久石さんの新曲へと続きます。
・Joe Hisaishi:The Chamber Symphony No.3
1.ストリングスの導入からはじまり、金管セクションが加わりました。「♪タラッ!タラー」というフレーズが随所に加わり、キャッチーで印象的なモチーフが繰り返されていきました。ピアノがそのフレーズを奏でると弦楽がピチカートを添えたり、木管が彩りを加え、フルートがそのフレーズを奏でるとトライアングルの音色が印象的に残ります。
中盤ではスローテンポとなり、弦楽とピアノをフレーズを紡いでいる記憶があります。終盤にかけて徐々に激しくなり、打楽器や金管が大活躍。スネアの連打や金管の華やかな咆哮から緊迫感がありました。
2.前楽章とは雰囲気が一変。急・緩・急の構成のためか、ゆったりと出だしから始まりました。古典的なピアノの旋律にストリングスが重なっていきます。元々はピアノソロのための作品だったためか、随所にピアノの旋律が場面転換時に現れる感じがしました。ピアノの旋律を挟み、金管が入ってきたり、木管が入ってきたり。
タンバリンとストリングス、ミュートのトランペットとピアノと音色が記憶残りやすい、組み合わせのパートが続きます。徐々に盛り上がっていき、『Metaphysica(交響曲第3番)』の2楽章のような構成を思い出しました。終盤は冒頭の雰囲気を再現し、次の楽章へ進みます。
3.かぐや姫の物語のサントラより『絶望』のような力強い音を4打くらい繰り返したのち、弦楽により細かく動くパッセージが繰り返されていきます。徐々に動きが大きくなり、上下へ駆け巡るような早い旋律が印象に残ります。この細かいパッセージがピアノソロや、木管、金管、弦楽と様々なパートへ次々と引継ぎ、時にはテンポを落としたり、急加速したり、息つく間もなく怒涛のように楽曲雰囲気が次々と変化していきました。
『Tri-AD』のような弦楽器が上昇していく様子や、『Contrabass Concerto』のような打楽器の連打。『2 Pieces』のような強い打撃の音。これらの久石さんの既存楽曲を次々と連想することができました。終盤は弦楽の上昇音型と激しいリズムの連打から、突如曲が止まり、ピアノの長い低音の伸ばす音で失速するようにして終わるのが記憶に強く残りました。
MFシリーズはアンコールはないため、演奏が終わると、メンバー全員がステージ前に一列になり、何度かお辞儀をしていました。久石さんも終始楽しそうにメンバーと交流をしていました。
今回、配信等は現時点では予定されていませんが、ステージや会場に少なくとも7台のカメラが置かれていました。収録用のマイクもかなりの本数がありましたので、新作を含め、どこかで機会がありそうです。
18:30くらいからスタートして、カーテンコールが終わると時刻は21:15くらい。舞台転換が多かったのもありますが、3時間近くのコンサートとなりました。
たっぷり音楽を聴けて大満足で会場を後にしました。
2024年8月9日 ふじか
そうこんなコンサートだったとか、そうこんな曲演奏してたとか、何年先に見てもすぐに思い出せそうです(感謝!)。そっかこんなコンサートだったんだとか、そっかこんな曲演奏してたんだとか、久石譲新作ってこんなんだったんだとか、何年先に映像がなくても音源がなくてもすごくイメージできそうです(チクッ!)。
ふじかさんのレポートにもありました「2 Pages Recomposed」の演奏についてです。音源化もされていて再演となりましたが、指揮の緩急や強弱は以前よりも明確になっていましたね。近年指揮するミニマル作品例えば「DA・MA・SHI・絵」などもそうですが、ある一定の音量で疾走感をキープする従来からの変化がうかがえます。ベートーヴェンやシューベルト交響曲にみられる明確な強弱記号のスコアなども影響があるのでしょうか。いずれにしても、ミニマルをp(ピアノ)で均一に鳴らすのはf(フォルテ)で鳴らすことよりも大変な気がします。ぜひ聴きどころです。
僕の知る限りふじかさんもショーさん(下に紹介)も、かなりの数のコンサートに行かれていて、イベントの重なるスペシャル・ウィークもあると思います。その全部を書くことはなかなか難しいことです。そんななかこうやって書き残してくれてありがたい限りです。
【MUSIC FUTURE Vol.11】
2日間に渡り、大きな拍手をありがとうございました!
来週はFOCでお待ちしています! pic.twitter.com/55R0smqIbL— 久石譲コンサート@WDO/FOC/MF (@joehisaishi2019) July 26, 2024
こちらは、いつものコンサート・レポートをしています。
みんなのコンサート・レポート紹介
会場でもお会いしたファンつながりショーさんのコンサート・レポートです。会場の雰囲気からコンサートの細かいところまでたくさん伝わってきます。同じコンサートにいても見ているところや感じているところは一人ずつ全く違う、それもわかって読んでてとても楽しいです。ファン歴も長く過去数多くのコンサート・レポートが収められています。今となっては触れれるだけ貴重なページ、ぜひめくってみてくださいね。
JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.11(2024.7.26)
from Sho’s PROJECT OMOHASE BLOG 改 seconda
久石譲コンサート オーナーの鑑賞履歴
from Sho’s PROJECT OMOHASE BLOG 改 seconda
それから、国際色豊かに英文レポートです。コンサート一日のことが鮮明に記されています。作品ごとの聴く前と聴いた後のイメージの変化がよく伝わってきます。こういう感じ方もあるんだと学びながら楽しく読ませてもらいました。世界各地の映画音楽作曲家のコンサートに足を運びそのレポートがいっぱいです。今は日本を拠点とされているようです。ぜひWeb翻訳してお楽しみください。
Joe Hisaishi presents Music Future Vol. 11 (2024) – Soundtracks in Concert
from Soundtracks in Concert – Your one-stop source for soundtrack concert reports, reviews and more!
「行った人の数だけ、感想があり感動がある」
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みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。
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reverb.
ひとつのコンサートに4つもコンサートのレビューを紹介できるなんてうれしい限りです。
*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
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