Disc. 久石譲 『Deep Ocean』 *Unreleased

2016年8月28日 TV放映

『NHKスペシャル シリーズ ディープ オーシャン 潜入!深海大渓谷 光る生物たちの王国』

音楽:久石譲
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

全3回シリーズ ※第二集、第三集は来年夏以降の放送を予定

 

 

久石譲インタビュー

「深海の中でこんなに光るものがあるんだっていうのは驚きでしたよね。発光生物だとか、深海の映像がとても強いすばらしい映像だったので、イメージはすごいつけやすかった。作曲も実はそんなに時間かからないで一気に作れた。全部ミニマル・ミュージックでやったというのは初めてで、うまくいくかどうか非常に不安だったんですけども、生の音で聞いていけばいくほどこれで良かった、おそらく映像ともかなりマッチングするんじゃないか、そこがやっていてすごくうれしかったですね。」

■久石譲インタビュー動画(約2分)
http://www.nhk.or.jp/nature/video/43426.html (2016.8現在)
久石譲インタビューおよびレコーディング風景

より書き起こし

 

 

番組テーマ音楽は緻密で躍動感のあるミニマル・ミュージックで構成されている。管弦楽の各パートや楽器特色を活かしたアンサンブルに近いシャープでソリッドなオーケストレーションが印象的である。番組BGMも数曲書き下ろされており、メインテーマをモチーフとしたり派生させたり、と統一感のある楽曲群が並ぶ。いずれもキャッチーなメロディを持たない、ミニマル手法であるところに注目したい。

2013年TV放映され話題となった「深海プロジェクト」。その最新シリーズとなる「ディープオーシャン」。スタッフが再集結し企画された今プロジェクトには、前回音楽担当した久石譲も名を連ねることになった。そして、『NHKスペシャル 深海の巨大生物 オリジナル・サウンドトラック』で使われた主要楽曲たちも、「ディープオーシャン」では変奏ヴァージョンとして披露されている。こちらもまたメロディや旋律を極力抑えたアレンジとして手が加えられている。またシンプルでソリッドが楽器編成となっている。

「ディープオーシャン」メインテーマと本編BGMの書き下ろし、「深海の巨大生物」からの再構成、新旧あわせて織りこみながらも、今最も旬な久石譲音楽(楽器編成、奏法、構成)が堪能できる作品となっている。

次集以降とあわせて、サウンドトラック盤の発売に大いに期待が高まる作品である。

現時点で未CD化、曲名不明である。

 

 

【2017.1 追記】

2016年12月31日開催「久石譲ジルベスターコンサート2016」にて世界初演。

Deep Ocean *世界初演
1.the deep ocean
2.mystic zone
3.radiation
4.evolution
5.accession
6.the deep ocean again
7.innumerable stars in the ocean

久石譲コメント

「「Deep Ocean」は今夏NHKでオンエアーされたドキュメンタリー番組のために書いた曲を今回のジルベスターのためにコンサート楽曲として加筆、再構成しました(リハーサルの10日前に完成、相変わらず遅い)。ですから世界初演です。7つの小品からできており、ミニマル特有の長尺でもないので聴きやすいと思いますし、ピアノ2台を使った新しい響きは僕自身ホールで聴いてみたかったのです。でも真冬になぜ深海?寒そうなどといってはいけない、あと半年で夏がきます。」(「久石譲ジルベスターコンサート パンフレットより)

 

レビュー

本公演のサプライズ的演目でした。まさかこの作品が聴けるとは、しかも小編成オーケストラとピアノ2台という大掛かりなステージ配置変更をしての演奏です。「ミュージック・フューチャー vol.3」でも別新作をピアノ2台と室内アンサンブル編成で聴かせてくれたばかりです。ここは小ホールとは違い大ホール。ステージ前面ギリギリのところでセッティング、指揮者も奏者も前面中央に密集、少しでも微細な響きが客席奥や2、3階席まで届くようにと配慮されてのことかもしれません。

ミニマル・ミュージックの心地よいグルーヴ感と、神秘的な世界観。多彩な打楽器や管楽器の特殊奏法などで、目をとじて耳をすませたくなる深海の世界が広がっていました。かなり忘れたくない余韻で気になったので、録画していたTV番組を見返してみました。「ダイオウイカ」シリーズからではなく、「ディープオーシャン」として新しく書きおろした音楽は、ほぼ演奏されたんじゃないかなあ、と記憶をふりしぼっています。2017年夏には第2回以降のTV放映も予定されています。サウンドトラックも発売も待ち遠しい作品です、いやホントしてくれないと困る作品です(強く)。

Blog. 「久石譲 ジルベスターコンサート 2016」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

【2017.7 追記】

2017年7月16日(日)21:00~21:49 NHK総合テレビ
第2集「南極 深海に巨大生物を見た」

音楽:久石譲
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

 

TV放映鑑賞後レビュー。なんと驚いたことに第2集用に新曲が数多く書き下ろされている。世界観は第1集を引き継ぎ、小編成ながら緻密な音楽構成を充分に堪能することができる。さらに驚いたことに新曲ではサンプラーを使用した電子音も巧みに織り込まれている。近年ではオーケストラ楽器による生音にこだわった音作りがされてきたなか、2017年のCM曲(ダンロップ・伊右衛門Newヴァージョン)などに目を向けると、エッセンスやアクセント、また隠し味としての電子音を聴くことができる。これは、おそらく2014年からつづいている”現代の音楽”を届けるコンサート企画「Music Future」を経ての結実のように思われる。現代音楽家の他作はもちろん、同演奏会で初演される久石譲新作にも楽器も楽器編成も垣根を越えた新しい音世界が広がっている。「2 Pieces for Strange Ensemble」(2016年 同 Vol.3コンサートににて初演)もそういった点と線の流れにある。

コンパクトな室内楽オーケストラでソリッドながら広さ深さのある立体的な音楽。既存曲のバリエーションも違った表情をみせる。第1集と路線を同じく明確なメロディは持たない楽曲が際立っている。それはイメージをかきたて想像を広げるうえに、深海の奥深い神秘な世界観を演出している。

メインテーマは第1集と同じものが堂々と君臨しているが、改めて聴くとミニマル・ミュージックの緻密なズレと楽器セクションごとの交錯がすばらしい。TV音源ですらステレオで聴くとピアノ2台もきれいに左右から、弦楽セクションも右と左で交錯していることがわかる。エンターテインメント音楽(TV番組メインテーマ)としては贅沢なほどに作り込まれた完成度。久石譲オリジナル作品という位置づけでもまったくおかしくない最新の久石譲がたっぷりつまった名曲。

第3集も新曲があるのか待ち遠しいし、W.D.O.2017コンサートでのプログラム予定「Deep Ocean」も期待が高まる。「ジルベスターコンサート2016」で披露されたのは第1集からの音楽を演奏会用に再構成したもの。もちろんこれが聴けると思うだけでも心躍るし、第2集からのサプライズなんてあったらこれまた驚かされる。いずれにしてもコンサートプログラム大歓迎の作品。

またこの極上のミニマル・ミュージックはコンサートで体感することと、緻密なオーケストレーションの結晶をCDステレオ音源で聴けてこそ!第3集(8月放映)で今シリーズは完結予定であるけれど、ディープオーシャン・サウンドトラックが出るまではファンとしては完結しない!こんな傑作がCD化されないと思うだけで…。楽器ごとの音もおもしろい、決して飽きるとは無縁な聴く人色に染まってくれる楽曲たち。この至福の音楽世界にどっぷりとつかりたい。最高音質で。

 

 

2017年8月27日(日)21:00~21:49
第3集「超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦」

 

なお、2016年TV放送シリーズ第1回はDVD/Blu-ray化され発売されている。

Info. 2017/07/21 「NHKスペシャル ディープ オーシャン 潜入! 深海大峡谷 光る生物たちの王国」DVD/Blu-ray 発売決定

 

 

【2017.8追記】

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」にて2楽曲を追加した9つの小品からなる作品としてリニューアル初演。

Deep Ocean
1. the deep ocean
2. mystic zone
3. trieste
4. radiation
5. evolution
6. accession
7. the origin of life
8. the deep ocean again
9. innumerable stars in the ocean

久石譲コメント

「Deep Ocean」は同名のNHKドキュメンタリー番組のために書いた曲をコンサート楽曲として加筆、再構成したものです。去年の大阪ジルベスターコンサートで初演しましたが、今年の夏に最終シリーズとしてオンエアーされる楽曲を新たに加えてリニューアルしています。ミニマル特有の長尺ではないので聴きやすいと思いますし、ピアノ2台を使った新しい響きをお楽しみください。

 

レビュー

2016年から2017年にかけて全3回シリーズで放送される「NHKスペシャル シリーズ ディープオーシャン」のために書き下ろされた楽曲を演奏会用にまとめたものです。2016年大晦日ジルベスターコンサートで事前予告なく初披露されサプライズとなりましたが、今回「3.trieste」「7.the origin of life」が追加され9つの小品からなる作品へと再構成されています。久石譲の最も旬ソリッドなミニマル・ミュージックが堪能できる作品です。

小編成オーケストラとピアノ2台という大掛かりなステージ配置変更をしての演奏は、楽器ひとつひとつの微細な音、普段なかなか見聴きできない打楽器群、特殊奏法による音色のおもしろさ、ミニマル特有のズレをあますことなく体感できる贅沢な音空間です。冒頭から一瞬で神秘的な深海の世界へと誘ってくれます。

気になる追加された2楽曲は、どうもコンサートで初めて聴くような。7月にオンエアされたばかりの第2集からの音楽ではなく、8月にオンエア予定の第3集からのものかもしれません。「3.trieste」は明るく清らかなミニマル音楽だった印象で、「7.the origin of life」は生命の起源にふさわしく音楽の起源バロック音楽まで遡ったような優美な旋律だった印象。第2集はTV放送後何回もリピートしています、たぶん流れていなかったと思います。

エンターテインメント音楽(TV番組メインテーマ)としては贅沢なほどに作り込まれた完成度、楽器編成としても意欲作。久石譲オリジナル作品という位置づけでもまったくおかしくない最新の久石譲がたっぷりつまったメインテーマをはじめ、久石譲独特のミニマル・グルーヴを感じる楽曲群。TVでなんとか耳をすませ、コンサートで臨場感たっぷりに体感し、それでファンとして終われるはずがありません。もしオリジナル・サウンドトラックが発売されたとき、それは久石譲ミニマルアルバムという肩書きでもおかしくない逸品ぞろいです。「これサントラのクオリティ超えてるよね!久石さんのオリジナルアルバムかと思った!」なんて言いたい、そんな日がきっと訪れますように。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

【2017.9追記】

久石譲インタビュー

「やっぱり人間が住む世界とはちょっと違いますよね。だから「異空間」という、そういう感じを音楽でも表現できたらいいかなという気はしてましたね。6500m 7000m 海の底っていうのはすごいわけですよね。そういうところにいる生物、それを少し音楽でも手助けしてそういう雰囲気が出せるといいなと、そう思いました。」

「僕は本来、現代音楽として「ミニマルミュージック」というのをやっているので、その方法論をかなり思いっきり導入したというか、同じフレーズを何度も繰り返すような方法で、たぶんあまりテレビの番組でこういうものを音楽で起用することはないと思うんですけれども、結構実験的にそれをやらせてもらって、音楽的には非常に満足した仕事をさせていただいた。」

「最初のダイオウイカの時から始めて、そこで作ってきた音楽もだんだん回を重ねるごとに進化してきていて、とても映像との関係性も含めて新鮮なものができたと思うので、ぜひ皆さん楽しみにしていただきたいと思います。」

(久石譲さん「超深海は人が住む世界ではない、異空間」インタビュー~NHK公開動画より 書き起こし)

(動画より抜粋キャプチャ)

 

 

 

レビュー

8月27日放送、第3集「超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦」を観て。最終回にあたる第3集でも新たな書き下ろし曲満載。「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2017」で披露された追加楽曲「3.trieste」「7.the origin of life」は、この第3集からのものでありTV放送に先駆けてコンサート初演であったことが確認できた。

第2集でもそうだったように、第3集新曲においてもオーケストラサウンドだけでなく、デジタルサウンドの比重が大きく多彩な音色を聴くことができた。今までにはない音や使い方をしていたのが興味深い。それは「NHK人体」シリーズなどでも堪能できる従来の久石譲デジタルサウンドではない。ラテンパーカッションやヴォイスをシーケンスしたような音ではない、これまでとは異なる種類の電子音。シンプルであり無機質であるといえるかもしれない。たとえばそれを聴いて懐かしさや情感をおぼえるようなことはない、同時にそれはポップス色を消す・エンターテイメント性を消すという相反するけれども確信めいた狙いも感じる。

2016年10月開催「ミュージック・フューチャー Vol.3」コンサートにて、新作オリジナル作品「2 Pieces for Strange Ensemble」が初演された。そのときの久石譲解説に「ニューヨークのSOHOでセッションしているようなワイルドなサウンド(今回のディレクターでもあるK氏の発言)を目指した、いや結果的になりました」とあったのを思い出した。デジタル音として求める音の志向性が変化していることを感じとれると同時に、それはオーケストラや生楽器というアコースティック音との融合においても、着実に進化しているのかもしれない。

そう想いめぐらせると、ますますこの「ディープオーシャン」シリーズのために書き下ろされた楽曲たちは、エンターテイメント音楽と久石譲オリジナル作品のクロスオーバー的ポジションが色濃く浮かびあがってくる。全3回放送のために作られた楽曲はおそらく15~20曲近くになるのではないか。CD盤1枚に完全網羅収まるか溢れるほどの質と量。ぜひ一旦の完結をみたこのタイミングにオリジナル・サウンドトラック盤のリリースを強く願っている。

メインテーマの別バージョンも第3集では聴くことができる。それはストリングス・パートを抜いたものもしくはそれぞれの楽器バランスをMIX調整したものなのか、変奏バージョンとして新たに構成されたものなのか。木管楽器が主体となったミニマル・サウンドで、これまた格別新しい表情を見せてくれる。バリエーション豊かなメインテーマの全バージョン全貌も気になってやまない。

 

 

第2集・第3集は、2017年11月DVD/Blu-ray化発売予定
(久石譲インタビュー動画も特典映像 収録予定)

 

 

【2017.12 追記】

 

なおこの放送回は2018年5月DVD化されている。

 

 

【2018.6 追記】

6月25日~29日ディープオーシャン関連番組が放送された。そのなかでも「ディープオーシャン 絶景 南極の海」(25日放送回)は30分間にわたって久石譲音楽とテロップのみによる放送という貴重な回となった。ナレーションなしで久石譲の音楽をたっぷりと堪能することができる。選曲はおなじみの深海シリーズ・ディープオーシャンシリーズはもちろん、これまでに聴いたことがない新曲もあったように思う(以後4回も同じく)。TV放映ながら音質もよく映像は既出からの再編集ではあるが、サウンドトラック盤がいまだ世に出ていない現状、永久保存版の放送なのは間違いない。

シリーズ・ディープオーシャンは、今後もつづくことを予感させる関連番組。そしてシリーズ完結を迎えるそのとき、サウンドトラックも発売されるのであろうと期待と希望がふくらむ。

 

 

 

【2018.8 追記】

久石:
ドキュメンタリーは個人的に大好きなんですよ。ディープオーシャンの話をいただいて、深海シリーズですね。すごく宇宙と同じぐらい海の中って広がりがあるんだなというので。どの作品も一生懸命作りますけれども、これももちろん一生懸命作って。ディープオーシャンは最終シリーズになるのかな、これに関していうと、初めてと言っていいぐらい全編ミニマルで推したんですよね。テーマのところから全部ミニマルで推した。深海シリーズの1、2はちゃんとしたメロディの普通だったんですが、ディープオーシャンの最後のシリーズに関しては完全にミニマルで推したんですよ。それがね、自分が想像した以上にナレーションといろんな映像とのマッチングがすごく良かったんですよ。なかなか自分の新しい挑戦がね、ちゃんとかたちになるケースって少ないんですけど、これはすごくかたちになった。やったあ!これで新しい音と映像の世界ができた!これからいっぱいそういう注文くるかなあと思ったけど1回も来ないねえ(笑)。なんかこうミニマルの仕事いっぱい来るかなあと思ったけど、なんもこないです(笑)。

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)

 

 

【2019.8 追記】

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」にて披露。

Deep Ocean 【B】
2017年コンサートでも披露された作品。ピアノ2台をオーケストラが囲むというなかなかお目にかかれない編成の魅力。音階をもったカウベル(チューンドカウベル)や珍しいパーカッション群、いつもの楽器が特殊奏法で効果音のようだったりと、生楽器だけで多彩な音世界を魅せてくれる作品です。今回編成が少し大きくなっていました。弦14型(14.12. ~ 7.)と通常オーケストラサイズ、音やフレーズが追加されていたり、厚みが増していたり。……でもこれは、もしかすると編成が変わったことでのバランスの変化、今まで聴こえなかった音が聴こえてきた……気のせいかもしれません……内心気のせいだとは思っていない自分がいますけれども。テレビサントラはまだかな、コンサート音源はまだかな、とずっと追っかけている作品です。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサート・レポート より抜粋)

 

 

NHKスペシャル

 

Disc. 久石譲 『Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE』 *Unreleased

2016年7月29日、「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」にて世界初演。

 

Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE

宮崎駿監督が構想16年、製作日数3年を費やして完成された『もののけ姫』から。タタリ神によって死の呪いをかけられた青年アシタカは、呪いを解くために西の地に向かい、タタラ場の村に辿り着く。そこでアシタカが見たものは、エボシ御前が率いる村人たちが鉄を鋳造するため、神々の森の自然を破壊している姿だった。そしてアシタカは、森を守るためにタタラ場を襲う”もののけ姫”サンの存在を知る。サンと心を通わせていくうち、アシタカは人間と森が共生できる道が存在しないのか、苦悩し始める。

本日世界初演される「Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE」は、昨年初演された「Symphonic Poem NAUSICCÄ 2015」に続き、宮崎監督作品の音楽を交響組曲化していくプロジェクトの第2弾。楽曲構成は次の通り。まず、アシタカが登場するオープニング場面の「アシタカせっ記」。アシタカがタタリ神と死闘を繰り広げる場面の「TA・TA・RI・GAMI」。大カモシカのヤックルに跨ったアシタカが、エミシの村から西の地に向かう場面の「旅立ち」(ここで「もののけ姫」のメロディーが初めて登場する)。負傷した村人を背負って森の中を進むアシタカが、森の精霊コダマと遭遇する場面の「コダマ達」。傷ついたアシタカを森のシシ神に癒やしてもらうため、サンがアシタカをシシ神のもとに連れて行く場面の「シシ神の森」。サンの介抱によって体力を回復したアシタカが、人間と森の共生をめぐり、犬神のモロの君と諍う場面で流れる主題歌「もののけ姫」(本日は、ソプラノ歌手によって歌われる)。エボシ御前とサンの争いを仲裁したアシタカが、自ら負った瀕死の重症を顧みず、サンを背負って森に向かう場面の「レクイエム」。そして、久石のピアノ・ソロが登場する「アシタカとサン」は、シシ神の消えた森に緑がよみがえり、アシタカとサンが互いの世界で生きていくことを誓い合うラストの音楽である。

(楽曲解説:前島秀国 ~「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2016」コンサート・パンフレットより)

 

 

Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE 【A】
スタジオジブリ作品の交響組曲化シリーズ第2弾です。まずは作品の軌跡を紐解きます。

2016年版
a) アシタカせっ記
b) TA・TA・RI・GAMI
c) 旅立ち
d) コダマ達
e) シシ神の森
f) もののけ姫 (vo)
g) レクイエム
h) アシタカとサン (vo)

 

『交響組曲 もののけ姫』(1998)
映画公開翌年、久石譲がチェコ・フィルハーモニー管弦楽団とともに完成させた作品。サウンドトラック盤の楽曲群を、映像やストーリーから解き放たれた音楽作品へ再構成した、もののけ姫交響組曲全8章です。今回の2016年版の原型ともいえるものです。あえて記すと、「もののけ姫」も「アシタカとサン」もフル・オーケストラによるインストゥルメンタル・ヴァージョンであり、2016年版 d)コダマ達 は、未収録楽曲でこのときには構成されていません。交響組曲もののけ姫歴史の始まりであり骨格をなす50分大作。
a) アシタカせっ記
b) TA・TA・RI・GAMI
c) 旅立ち
f) もののけ姫 (inst.)
e) シシ神の森
g) レクイエム
h) アシタカとサン (inst.)

久石譲 『交響組曲 もののけ姫』
『交響組曲 もののけ姫』(1998)

 

『WORKS II』(1999)
『交響組曲 もののけ姫』から4楽曲を選りすぐり、短縮なく忠実に再現したLiveヴァージョン。
a) アシタカせっ記
f) もののけ姫 (inst.)
b) TA・TA・RI・GAMI
h) アシタカとサン (inst.)

久石譲 『WORKS2』
『WORKS II Orchestra Nights』(1999)

 

『真夏の夜の悪夢』(2006)
W.D.O.一夜限りのスペシャルコンサートを収録したLiveヴァージョン。『交響組曲 もののけ姫』より3楽曲を抜粋再構成した《もののけ姫組曲》として約8分半の作品に。主題歌の旋律はヴァイオリンをフィーチャー。
a) アシタカせっ記
b) TA・TA・RI・GAMI
f) もののけ姫 (inst.)

久石譲 WDO 『真夏の夜の夢』
『真夏の夜の悪夢』(2006)

 

『久石譲 in 武道館』(2008)
『真夏の夜の悪夢』で披露した組曲構成をほぼ継承したLiveヴァージョン。主題歌が林正子さんのソプラノによって歌われました。3楽曲すべてに迫力のあるコーラスが編成されています。
a) アシタカせっ記
b) TA・TA・RI・GAMI
f) もののけ姫 (vo)
*a) ~ f) with Chorus

またアンコールに、合唱版が初披露され大きな話題となりました。
h) アシタカとサン (chorus)

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD
『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ 』(2009)

 

『The Best of Cinema Music』(2011)
『久石譲 in 武道館』を継承した構成で、主題歌は英語詞によるヴォーカル・ヴァージョンが披露されています。合唱編成あり。東日本大震災のチャリティーコンサートを収めたLiveヴァージョンです。
a) アシタカせっ記
b) TA・TA・RI・GAMI
f) もののけ姫 (vo) English ver.
*a) ~ f) with Chorus

『久石譲 in 武道館』での記憶が甦る日本語合唱版も披露されました。
h) アシタカとサン (chorus)

久石譲 『THE BEST OF CINEMA MUSIC』
『THE BEST OF CINEMA MUSIC』(2011)

 

以上、《Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE》の軌跡をたどりました。

 

《Symphonic Suite PRINCESS MONONOKE》2016年版
a) アシタカせっ記
b) TA・TA・RI・GAMI
c) 旅立ち
d) コダマ達
e) シシ神の森
f) もののけ姫 (vo)
g) レクイエム
h) アシタカとサン (vo)

2016年版では、f) もののけ姫 でのソプラノ歌手にくわえ、h) アシタカとサン においても久石譲によるピアノ演奏とソプラノ歌手による歌唱でフィナーレを迎えます。どちらも日本語詞で歌われ、h) アシタカとサンは『久石譲 in 武道館』(2008)の同歌詞(作詞:麻衣)です。d) コダマ達 は、これまでサウンドトラック盤のみに収録されていた楽曲で、太古の森をオーケストラによる弦楽ピッツィカート・木管・鍵盤打楽器・打楽器を中心に表現されていました(サウンドトラック盤はオーケストラ+シンセサイザープログラミング)。

a) アシタカせっ記のオープニングからすでに高揚感はピークに達し、b) TA・TA・RI・GAMIに象徴されるけたたましい金管と和太鼓の響きに圧倒され、久石譲ファンのなかでは秘めたる名曲として名高いc) 旅立ち もめでたく交響組曲に組み込まれました。e) シシ神の森では緊張感と威厳のある重厚さに、コントラバスなどの弓を弦に強くぶつけて発せられる効果音的演出。g) レクイエムは、『交響組曲 もののけ姫』(1998)収録の同曲が、あますところなく盛り込まれていました。曲後半はサウンドトラック盤にはない新たに築かれた世界観であり、それが2016年版に引き継がれたことは、もののけ姫の世界を一層壮大にしています。

久石譲が宮崎駿監督との約30年の歴史を経て、新たに取り組んでいるジブリ交響作品シリーズ。国内外からのニーズに応えるべく楽譜出版も並行される同企画は、まさに久石譲が未来へつなげる音楽と言えます。ジブリ作品は日本屈指のエンタテインメントであり、やはりそこには歌の持つ力が重要視されているようにも思います。聴かれつづけること、演奏されつづけること、そして歌い継がれること。久石譲が古典的オーケストラ編成に固執することなく、あらゆる独奏楽器・特殊奏法、そして歌による声や歌詞。音楽的素材を総動員することで、もうひとつのジブリ作品を築きあげる。豊かな表現、巧みなオーケストレーション、そして作品構成力。これは総決算とは決して言いたくない、今なお進化しつづける久石譲音楽です。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

 

2018.10 追記

 

 

もののけ姫 タイトルバック

 

Disc. 久石譲 『Life is』 *Unreleased

2016年7月29日、「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」にて初演。

 

エリエールブランドの大王製紙株式会社は、久石譲書き下ろしによるエリエールブランドテーマ曲を制作。当社では初めてとなる。また、同楽曲は7月29日に長野から始まる「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2016」において初披露。大王製紙エリエールは特別協賛をつとめている。

 

Life is

エリエールのブランドテーマ曲。本公演で初披露される「Life is」は、軽やかなメロディーが”Life”のように、やさしく、そして力強く躍動する。

(楽曲解説:前島秀国 ~「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2016」コンサート・パンフレットより)

 

Life is
とてもクラシカルな軽やかな旋律、バロック・古典音楽のような清いシンプルさ。主題を木管や金管が奏であいながら、弦楽やパーカッションを含めて壮大になっていきます。とても清涼感のある佳曲です。これがCM曲でもないブランドイメージ曲ですから、贅沢の極みですね。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

2016.9.14 追記

9月21日~ CMオンエアスタート
「3日目の朝」篇

今回のTVCMの音楽は、作曲家 久石譲さんが書き下ろしたエリエールのブランドテーマ曲「Life is」をTVCM版として特別にレコーディングした曲です。

 

 

2016.9.21 追記

公式サイト:エリエール |CMライブラリ にてCM動画公開 (※2016.9.21現在)

  • elis 朝まで超安心  「3日目の朝」篇 15秒
  • elis 朝まで超安心  「3日目の朝」篇 30秒
  • elis 朝まで超安心  「3日目の朝」篇 メイキング 1分
  • elis 朝まで超安心  「3日目の朝」篇 メッセージ 30秒 (有村架純さんコメント動画)

 

エリエール CM 久石譲 有村架純

 

Disc. 久石譲 『Nightmare』 *Unreleased

2016年6月22日 アプリリリース

タイトル:シノビナイトメア
ジャンル:ダンジョン探索型 大河 RPG
価格:基本無料(一部アプリ内課金あり)
プラットフォーム:iOS/Android

曲名:Nightmare

フルオーケストラにパーカッションを盛り込んだ壮大なメインテーマ。和の要素もありながらファンタジー要素も兼ね備えた作品になっている。変拍子による旋律と緊張感を高める展開が何度聴いても飽きさせない構成となっている。躍動感やスリリングさもありながら、ゲーム世界観の女性らしい優雅さや妖艶を表現している。

未発売楽曲であるが、下記公式サイト予告編動画にて、楽曲フルサイズ約3分を視聴可能となっている。
(2016年6月現在)

「シノビナイトメア」公式予告編動画

 

 

2018.8 追記

「ドラマCD シノビナイトメア コンプリートBOX」に楽曲収録される。

 

Disc. 久石譲 『(三井ホーム)CM音楽』 *Unreleased

2016年4月16日 CMオンエア開始

三井ホーム「TOP OF DESING」
音楽:久石譲 曲名:不明

・「TOP OF DESIGN」 美しさが育つ家篇 (京都) 15秒
・「TOP OF DESIGN」 美しさが育つ家篇 (仙台) 15秒
・「TOP OF DESIGN」 人生を築く家篇 (15秒)
・「TOP OF DESIGN」 人生を築く家篇 (30秒)

CMは、三井ホーム公式サイト内「広告ライブラリー」にて閲覧可能
(※2016年4月現在)

三井ホーム「広告ライブラリー」

同ホームページにて視聴できるのは、上の4本すべてである。

また久石譲コメントも一緒に掲載されている。

「三井ホーム、およびCM制作のみなさまの厚い理解により、恐らく日本初の本格的なミニマル音楽でのCMが完成しました。アート性と高級感、それに親しみやすさが感じられるように作曲しました。 楽しんで頂けると幸いです。」

(三井ホーム 広告ライブラリーより)

 

 

久石譲本人のコメントにもあるとおり、ミニマル・ミュージックによる刺激的で鮮烈な印象が残る音楽になっている。

麻衣のヴォイスと、弦楽、マリンバ、木管など小編成のアンサンブルにて、小刻みに弾けるようなアコースティック・グルーヴを堪能することができる。

CD作品でいうならば「ミニマリズム2 Minima_Rhythm 2」(2015)、さらに言うなれば2014年から新たなコンサート企画として始動した「ミュージック・フューチャー シリーズ」(毎年1回開催)。これらの活動の延長線上、はたまたその進化系として新たに生まれた久石譲の”今旬な”カタチでのミニマル・ミュージックとなっている。

上質で心地よい、ミニマル・ミュージックだからこそ、15秒や30秒ではもちろん足らず、エンドレスで聴き浸りたい音楽であり、転調やズレなど、さらなる楽想としての発展も興味深い作品である。

 

曲名不明、未発売曲、CD作品化が期待される上質な作品である。

 

 

2016.10追記
三井ホーム「広告ライブラリー」(上記紹介)にて、WEB限定動画が配信される。そのなかでCMでは15秒版・30秒版でしか聴くことができなかった同曲が、約1分間視聴可能となった。楽曲の展開の先が少し垣間見れる貴重な動画である。

「震度7に60回耐えた家。」研究員篇 (15秒)
「震度7に60回耐えた家。」インタビュー篇 (15秒)
「震度7に60回耐えた家。」WEB限定動画 (約2分)
菅野美穂 WEB限定インタビュー動画 (約1分)

CMテーマ音楽を約1分間視聴できた動画は、「菅野美穂 WEB限定インタビュー動画 (約1分)」である。

 

 

 

もうひとつが2016年一番新しいCM音楽として発表された『三井ホームCM音楽』。ソリッドに研ぎ澄まされたミニマル・ミュージック全開で、CM音楽におけるインパクトとしては抜群ですが、キャッチーさを求めるならば真逆な作品といえます。

最初聴いたときに「えらく(ミニマルサイドに)振り切った作品だな」とびっくりしたのを覚えています。ただ、これまた考察をもとにすると違う発見があります。マリンバ・ピアノのミニマル伴奏にコーラスが旋律として構成されたこの作品。随所にピッコロとグロッケンシュピールによる装飾が出てくると思います。そしてピッコロはとてもシャープな強く息を吹きかける奏法になっています。

・・・これがなかったとしたときに?

ミニマル・ミュージックの躍動感は維持されますが、一見すごく耳あたりのいいサウンドともなります。心地よいグルーヴ感と優美なコーラス・メロディ。本来ならば、これだけのミニマル音楽がテレビから流れてきただけでもひっかかりは強いですね。普段聴き慣れない音楽としてインパクト充分です。がしかし、やはりあの高音域装飾(ピッコロ・グロッケン)が、強烈すぎるアクセントになっている。あのフレースがあった時点で、久石譲の勝ちだな、と思ってしまうくらいの凄み。

従来の久石譲アンサンブル手法からだった場合、おそらくあのパートはピアノ、サックス、ハープなどの楽器で別の装飾モチーフとして奏でられていた、かもしれません。それが、今の久石譲の手にかかるとあの完成形となるわけで。ない場合、従来手法の場合、そしてお茶の間に響いた楽曲。イメージするだけでも響きの違いは雲泥の差。15秒・30秒の音楽を聴いて、久石譲という作曲家の感性と論理性をまざまざと魅せつけられた思いです。

もっとマニアックな見解をさせてください。

弦楽器や管楽器は持続音です。弾いている・吹いている間、一定の音が鳴り続けます。一方で、ピアノやマリンバ・シロフォン(木琴の種)・グロッケンシュピール(鉄琴の種)などは減衰音です。叩いたときに音が発せられそのあとは減衰していきます。

さて、ここで減衰音のグロッケンと、持続音のピッコロをブレンドして編成する。かつピッコロの奏法を息を強く吹きかける、つまりは音の立ち上がりを強くすることで、フッと息をするようにシャープになり減衰音と同じような音の減衰を期待できます。そうすることで、メロディという主旋律の邪魔をすることなく、もちろんナレーションやセリフの邪魔をすることもなく、かつ瞬間的に強烈なインパクトを印象づけることができる。ほんと久石譲という人が末恐ろしくなってくる数十秒間です。

一連のピッコロ、シロフォン、グロッケンシュピール、トライアングルという高音域楽器をブレンドした妙技は、『コントラバス協奏曲』でもいかんなく発揮されています。またこのことは、”余白のある音楽・そぎ落とした構成”と表現した同作品にもつながります。持続音を減らすことで音厚になりすぎず、減衰音と同じ効果を期待できるパーカッションをふくめ巧みにオーケストレーションしているからです。

Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 2 より抜粋)

 

 

2019.1.9追記
三井ホーム「広告ライブラリー」(上記紹介)にて新しい動画公開。同じ曲が使用されている。

「TOP OF DESIGN」 人生を築く家 湖畔篇 (30秒)
「TOP OF DESIGN」 人生を築く家 湖畔篇 (15秒)

 

 

三井ホーム CM 久石譲

 

Disc. 久石譲 『Orbis for Chorus, Organ and Orchestra』 *Unreleased

2015年12月11日「久石譲 第九スペシャル 2015」にて世界初演。

 

「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」(2007)

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「Orbis」 ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~
曲名はラテン語で”環”や”繋がり”を意味します。2007年の「サントリー1万人の第九」のために作曲した序曲で、サントリーホールのパイプオルガンと大阪城ホールを二元中継で”繋ぐ”という発想から生まれました。祝典序曲的な華やかな性格と、水面に落ちた水滴が波紋の”環”を広げていくようなイメージを意識しながら作曲しています。歌詞に関しては、ベートーヴェンの《第九》と同じように、いくつかのキーワードとなる言葉を配置し、その言葉の持つアクセントが音楽的要素として器楽の中でどこまで利用できるか、という点に比重を置きました。”声楽曲”のように歌詞の意味内容を深く追求していく音楽とは異なります。言葉として選んだ「レティーシア/歓喜」や「パラディウス/天国」といったラテン語は、結果的にベートーヴェンが《第九》のために選んだ歌詞と近い内容になっていますね。作曲の発想としては、音楽をフレーズごとに組み立てていくのではなく、拍が1拍ずつズレていくミニマル・ミュージックの手法を用いているので、演奏が大変難しい作品です。

「Orbis」ラテン語のキーワード

・Orbis = 環 ・Laetitia = 喜び ・Anima = 魂 ・Sonus, Sonitus =音 ・Paradisus = 天国
・Jubilatio = 歓喜 ・Sol = 太陽 ・Rosa = 薔薇 ・Aqua = 水 ・Caritas, Fraternitatis = 兄弟愛
・Mundus = 世界 ・Victoria = 勝利 ・Amicus = 友人

Blog. 「久石譲 第九スペシャル」(2013) コンサート・プログラムより
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CD作品としては「メロディフォニー」(2010)にてロンドン交響楽団演奏でレコーディングされている。
Disc. 久石譲 『メロディフォニー Melodyphony ~Best of Joe Hisaishi〜』

 

 

「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」(2015)

Orbis for Chorus, Organ and Orchestra
オルビス ~混声合唱、オルガン、オーケストラのための
I. Orbis ~環
II. Dum fata sinunt ~運命が許す間は
III. Mundus et Victoria ~世界と勝利

作詞:久石譲

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新版「Orbis」について
2007年に「サントリー1万人の第九」のための序曲として委嘱されて作った「Orbis」は、ラテン語で「環」や「つながり」を意味しています。約10分の長さですが、11/8拍子の速いパートもあり、難易度はかなり高いものがあります。ですが演奏の度にもっと長く聴きたいという要望もあり、僕も内容を充実させたいという思いがあったので、今回全3楽章、約25分の作品として仕上げました。

しかし、8年前の楽曲と対になる曲を今作るという作業は難航しました。当然ですが、8年前の自分と今の自分は違う、作曲の方法も違っています。万物流転です。けれども元「Orbis」があるので、それと大幅にスタイルが違う方法をとるわけにはいかない。それではまとまりがなくなる。

あれこれ思い倦ねていたある日の昼下がり、ニュースでフランスのテロ事件を知りました。絶望的な気持ち、「世界はどこに行くのだろうか?」と考えながら仕事場に入ったのですが、その日の夜、第2楽章は、ほぼ完成してしまった。たった数時間です。その後、ラテン語の事諺(ことわざ)で「運命が許す間は(あなたたちは)幸せに生きるがよい。(私たちは)生きているあいだ、生きようではないか」という言葉に出会い、この楽曲が成立したことを確信しました。だから第2楽章のタイトルは日本語で「運命が許す間は」にしたわけです。何故こんな悲惨な事件をきっかけに曲を書いたのか? このことは養老孟司先生と僕の対談本『耳で考える』の中で、先生が「インテンショナリティ=志向性」とはっきり語っている。つまり外部からの情報が言語化され脳を刺激するとそれが運動(作曲)という反射に直結した。ちょっと難しいですが、詳しく知りたい方は本を読んでください。

それにしても不思議なものです。楽しいことや幸せを感じたときに曲を書いた記憶がありません。おそらく自分が満ち足りてしまったら、曲を書いて何かを訴える必要がなくなるのかもしれません。

第3楽章は「Orbis」のあとに作った「Prime of Youth」をベースに合唱を加えて全面的に改作しました。この楽曲も11/8拍子です。

ベートーヴェンの「第九」と一緒に演奏することは、とても畏れ多いことなのですが、作曲家として皆さんに聴いていただけることを、とても楽しみにしています。

平成27年12月6日 久石譲

(「久石譲 第九スペシャル 2015」コンサートパンフレットより)
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※同パンフレットには、久石譲作詞による全3楽章の歌詞も掲載されている。ラテン語による原詞と日本語訳詞が併記されている。現時点(2015.12現在)での掲載は差し控えている。

 

 

ここからは初演感想・補足などを含むレビューである。

第1楽章、オリジナル版「Orbis」(2007)がこの楽章にあたる。新版「Orbis」(2015)には、細かな手直しは施されているが、楽曲構成は従来を継承している。一聴してわかるのはテンポが遅くなっていること、チューブラーベルが編成に加えられたことだろう。祝典序曲としての単楽曲ではなくなり、ファンファーレのように躍動感で一気に駆け抜けるところから、楽章のはじまりとしての役割に変化した。全3楽章という作品構成ゆえと、第2・第3楽章までつづくコーラスの役割に従来以上の重きをおいた結果、テンポをおさえるとこになったのではないか。実際、この第1楽章で散り放たれたキーワードたちが、後の楽章において結晶化してつながりをもってくる。そう捉えると、ここで言葉をしっかりと響かせることは必然性を帯びてくる。

第2楽章、通奏低音のようにオルガンが楽章を通してゆっくりとしたミニマルなアルペジオ旋律を奏でる。同じ動きで弦楽オーケストラが織り重なる。そこにコーラスがさとすように語りかけてくる。あえてキャッチャーなメロディとしての旋律を持たせていない。混声合唱のハーモニーが厚く深く包みこむ内なる楽章。チューブラーベルの鐘の響きは静かな余韻と残響をもたらしている。

第3楽章、幻の名曲「Prime of Youth」(2010・Unreleased)が「Orbis」の楽章のひとつとして組み込まれたことが衝撃だった。強烈なミニマル・モチーフ、リズム動機を備えていた同楽曲が、コーラスをむかえ従(対旋律)にまわったのである。もし「Prime of Youth」という作品をコンサートで聴いたことのある人がいるならば(おそらくほとんどいない、2010年東京・大阪2公演のみである)、これはまさにカオスである。オリジナル版が持つファンファーレのように高らかに鳴り響く冒頭から、怒涛のようにシンフォニック・ミニマルが押し寄せてくる。コーラスを配置したことでさらに魂の叫びのごとく巨大な渦をまく。中間部では第1楽章Orbisの旋律が顔をのぞかせる。時を越えてPrimeとOrbisが融合した瞬間だった。かくもここまで勇壮で威厳に満ちた久石譲オリジナル・ソロ作品があったであろうか。クライマックスのかき鳴らす弦、金管、木管は圧巻であり、高揚感を最高潮にコーラスとともに高く高く昇っていく。おさまりきれない、なにか巨大なものがその姿を現した、そんな衝撃的な閃光を象徴する楽章となったことは確かである。

歌詞について、「いくつかのキーワードとなる言葉を配置し、その言葉の持つアクセントが音楽的要素として器楽の中でどこまで利用できるか、という点に比重を置きました。”声楽曲”のように歌詞の意味内容を深く追求していく音楽とは異なります」(元「Oribis」および新版 第1楽章) この久石譲の言葉を借りるならば、新版「Orbis」第2楽章・第3楽章は明らかに異なる。ひとかたまりのセンテンス、つまり言葉に意味をもたせたのである。これは興味深い。あえて自らの作家性として作品にメッセージ性を持たせない氏が、ここでは発声による言葉の響きから、歌詞による言葉の想いを届ける手法で新たな楽章を書き下ろした。同時にこのことは、コーラスを楽器の1パートに据えるところから一気に飛躍させたことになる。これをもって管弦楽と声楽は少なくとも対等、5:5の比重を分け合うことになったのである。

 

総じて、初演一聴だけでは語ることのできない拡がりと深さがこの作品にはある。中途半端な断片的感想は未聴者に余計な先入観を与えかねず、一聴のみで作品を掌握したように語ることは作家への冒涜にもつながりかねない。それでもあえて書き記したのには理由がある。

この作品は大傑作である。久石譲が芸術性を追求した作品群にはこれまで「The End of the World」「Sinfonia」など数多く存在する。楽章構成とミニマル色を強く打ち出すという点でも共通点はある。だがしかし、「新版Orbis」はその次元を超えた。延長線上、集大成、結晶化、新境地、さまざまな言い回しがありもちろんそういった意味合いも持っている。それらをおさえてあえて言葉を選ぶならば、「そこは別世界・別次元だった」。

ひとつだけ断言できることがある。ここに「ジブリ音楽:久石譲」の代名詞は必要ない。この作品を聴いてジブリのような映像やイメージが浮かぶというなら、それはまやかしである。一線を画して聴衆は対峙しなければいけない、無心で。そうして初めて出逢えるのは、心に入ってくる音楽、魂に響く音楽、本能に直接訴えかけてくる音楽、である。なにが言いたいのか。もしかしたら遠い未来の人たちが久石譲を語るとき、真っ先にジブリ音楽でもないCM音楽でもない、「Orbis」が代名詞となっているかもしれない。

 

 

万全を期ししたレコーディング、作曲家の意思を介したトラックダウンが行われた完成版を聴く日までは、この作品の真髄はわからないだろう。混声合唱、オルガンとオーケストラ、三位一体となった”環”がその巨大な姿を現す日を待つ。今初演において未完、まだ発展や進化の余地があるのかもしれず、完全版としてのCDパッケージ化は時間がかかるのかもしれない。ただ待つのみである。

もしも叶うとするならば、未完でもいい、その時にふれた「Orbis」をかたちに残してもいいではないか。「Orbis」、「新版Orbis」、新たな新版や改訂版が連なってもいい。そもそも作品自体が暗示している。”環”はどんどん”つながり”、魂をもって創造をつづける。そこに終わりはない、永遠。

 

息をあげて主観でレビューを書くことに冷ややかな反応があることは覚悟している。だからこそ、1日でも早く、ひとりでも多くの人に「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」新版を聴いてもらえる日が来ることを切に願う。そうして少しでも共感してもらえたり、わかち合えるなにかが生まれることこそ、聴衆たちにもたらされる喜びである。

 

Disc. 久石譲 『栃木市民の歌 -明日(あす)への希望-』 *Unreleased

2015年11月13日栃木市市制5周年記念式典にて発表。

市歌「栃木市民の歌 ~明日(あす)への希望~」
作曲:久石譲 作詞:麻衣

同式典において麻衣の歌唱により初披露、小学生との合唱も披露された。

 

麻衣は、太平山を何度も訪れたことがあったという。市歌の制作が決まってからはさらに構想を練るため、渡良瀬遊水地や市中心部の巴波川など市を3度訪問。「父とたくさん話し合い、栃木の人たちの地元への思いを表現した」と語る。

市長は市歌について「地元を離れた人の郷愁を誘う曲になるとうれしい」と期待を寄せている。

 

市歌はCDを市図書館などで貸し出すほか、市ホームページで試聴もできる。
https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/8/121.html

栃木市ホームページによって視聴・ダウンロードできるのは下記4項目である。

  • 栃木市民の歌~明日への希望~(歌:麻衣)
  • 栃木市民の歌~明日への希望~(ピアノ伴奏)
  • 譜面(メロディ譜)
  • 譜面(ピアノ伴奏)
  • 譜面(混声四部合唱)
  • 歌詞カード

 

老若男女が歌えるシンプルで清らかな歌曲である。

楽譜にも「Giocoso」と明記されているが、《陽気に、楽しく》という音楽用語であり、市民みんなで楽しく歌いあってほしいという表れであろう。

また珍しい点といえば、シンプルな旋律ながら付点8分音符が多く見られ、このことがリズミカルで快活な歌曲/合唱曲への一役を担っているといえる。(8分音符の連続の場合”タタタタ”となり、付点8分音符の連続の場合は”タータタータッ”となる)

これから先市民の歌として愛されるなかで、同市で久石譲コンサートなどが企画された際には、オーケストラと合唱での共演などの可能性もあるかもしれない。

 

 

 

2018.3 追記

 

 

 

栃木市 栃木市民の歌 アスへの希望 ジャケット 2

 

Disc. 久石譲 『(東北電力)CM音楽』 *Unreleased

2015年10月29日よりCMオンエアー開始(東北6県+新潟県)。

東北電力企業広告「より、そう、ちから。」
音楽:久石譲 曲名:不明

CMは、東北電力「CMギャラリー」でも閲覧可能。
(※2015年10月現在)

東北電力 | CMギャラリー

同ホームページにて視聴できるのは、
・CM本編(30秒)
・メイキング映像(2分30秒)

なおメイキング映像では本楽曲のフル・バージョンを聴くことができる。

 

 

小編成オーケストラで構成された楽曲は、木管楽器が旋律を奏で、弦楽器がリズミカルに刻む、清潔感のある明るい曲調である。

メイキング映像でのフル・バージョンでは、さらにその全貌をうかがうことができる。シンプルなメロディですぐに覚えて口ずさんでしまえそうな魅力はさすが匠の技である。さらに、その裏では緻密なオーケストレーションによって管弦楽が構成されており、メロディも木管楽器、弦楽器、金管楽器へと奏で継がれていく。

同年手がけた『みずほフィナンシャルグループ みずほの丘』CM音楽にも通じる気品のある作品である。

曲名不明、未発売曲、CD作品化が期待される上質な作品である。

 

 

2017.1 追記

2017年1月4日よりニュー・ヴァージョンO.A開始。ピアノを基調としたきれいな調べ。

「よりそう地域とともに」篇 30秒

【それ以前のCM一覧】
「スローガン宣言」篇 30秒
「新料金プランはじまりました」篇 30秒
「よりそう松山さん(料金プラン)」篇 30秒

*上記3本CM音楽はオリジナル版

東北電力 | CMギャラリー にて視聴可能 (※2017.1現在)
http://www.tohoku-epco.co.jp/brand/#cm-gallery

 

 

東北電力 久石譲

東北電力 ロゴ

 

Disc. 久石譲 『コントラバス協奏曲』 *Unreleased

2015年10月29日 日本テレビ系「読響シンフォニックライブ」 公開収録にて世界初演。

2016年1月21日 日本テレビ系「読響シンフォニックライブ」放映 (1/30 BS日テレ)

 

出演
指揮:久石譲
コントラバス:石川滋 (読響ソロ・コントラバス)
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:日下紗矢子

曲目
久石譲:
コントラバス協奏曲 (日本テレビ委嘱作品) ※世界初演
第1楽章 Largo – Con brio
第2楽章 Comodo
第3楽章 Con brio

収録:2015年10月29日 東京芸術劇場

 

 

委嘱経緯

久石譲がコントラバス協奏曲を作曲したのは、石川滋のアルバム「バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番~第3番」を送られたことがきっかけ。その2013年は、石川滋が2006年から活動のベースとしていたスイスのベルン交響楽団ソロ首席コントラバス奏者から、読響が初めて設けたソロ・コントラバス奏者として入団した年。同年読響は、宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」の音楽録音や、「読響シンフォニックライブ」での「オーケストラストーリーズ・となりのトトロ」「ベートーヴェン:交響曲第7番」の演奏、年末「第九コンサート」で、久石譲(指揮)と共演を重ねていた年でもあった。

久石は石川のバッハを聴き、すぐに1枚の葉書を送った。お礼とともに書かれていたのは「グルーブがいいですね」という言葉。「面白いなぁと思いました。グルーブを褒めてくださるクラシックの方って珍しいですから」と石川は語る。「グルーブは、ジャズで言うリズム感とかノリですね。うねりという感じもあります。僕にジャズのバックグラウンドがあることを、久石さんはおそらくご存知ないと思いますが、『コントラバスと言えばピツィカートでしょ』と曲を書かれる前におっしゃっていました。それで、第2楽章の冒頭であそこまでソロでピツィカートというわけです」。

事実、その第2楽章の冒頭は、グルーブ感溢れるジャズセッションの趣きに溢れ、NYのライブシーンを彷彿とさせる。最初に第1楽章のスケッチが8月中旬、そして9月頭に第2楽章、末に第3楽章、10月になって全楽章の完成版を手にする。タイトなスケジュールの中、「時間を見つけては、音を出し、スコアを読み込んでいました」と語る石川。

曲全体は、久石が得意とするミニマルミュージックの世界。独奏のコントラバスには、フラジオや高度な和音の連続など、高い技巧ととびきりの歌心が求められ、オーケストラパートの難易度も非常に高い。「読響での再演、再々演、そして録音などの機会があれば、一生をかけてチャレンジしたいし、もっともっと自分のものにしたいですね」と最後に語った石川の言葉には、並々ならぬ決意も込められていた。

(参考文献:スズキ・メソード公式サイト内 コンサート・レポートより 編集)

 

 

番組内 久石譲インタビュー

読響との初共演時の印象は…?

松井(司会):
久石さんと読響の初共演は3年半前ですが、今でも印象に残っていることはありますか?

久石:
ショスタコーヴィチの交響曲第5番などを演奏したのですが、作曲家の僕が指揮をするということで、読響の皆さんに助けていただき、とてもいい演奏になったということを覚えています。その他にも、初共演の翌年、2013年には宮崎駿監督作品、「風立ちぬ」の映画音楽レコーディングに読響が参加。読響にとってスタジオジブリの映画音楽を演奏するのは初めての経験でした。また、その直後に読響と久石さんは2度目の共演を果たし、オーケストラストーリーズ「となりのトトロ」(語り:樹木希林)、ベートーヴェン・交響曲第7番、そしてジョン・アダムズ作曲の「ザ・チェアマン・ダンス」を演奏しました。

今後の読響と久石さんの関係性は?

松井:
改めて、久石さんにとって読響はどんな存在ですか?

久石:
日本を代表する素晴らしいオーケストラで、皆さん一生懸命に演奏してくれます。なので、この関係性は長く続けていきたいと思いますし、より大きなプロジェクトが出来るような、点ではなく、線になる活動を今後もできるといいなと思っています。

(2016年5月開館予定、久石譲が芸術監督をつとめる長野芸術館、そのこけら落とし公演を読売交響楽団との共演にて記念コンサート開催予定)

「コントラバス協奏曲」について

久石:
音がこもりがちになる低域の楽器をオケと共演させながらきちんとした作品に仕上げるのはハードルが高かったです。僕は明るい曲を書きたかったので、ソロ・コントラバス奏者の石川滋さんには今までやったことないようなことにもチャレンジしていただく必要もありました。

 

番組内 石川滋インタビュー

久石譲作曲「コントラバス協奏曲」。石川滋の語るこの曲への思いとは…?

松井(司会):
今回お送りしたコントラバス協奏曲ですが、この曲は、久石さんが石川さんと読響のために書き下ろされた新曲だとお聞きしましたが、いかがでしたか?

石川:
久石さんに曲を書いていただくということは夢のような出来事でした。ましてやソロ楽器としてはマイナーであるコントラバスで協奏曲を書いてくださったのは自分にとってとても貴重な経験になりました。

松井:
コントラバス協奏曲というのはジャンル自体珍しいかと思うのですが、その中で久石さんからのコントラバスへの要求というのはどういうものでしたか?

石川:
最初に譜面を見たときはその曲の素晴らしさに感動して、「ぜひ弾きたい!」と思ったのですが、冷静に譜面を見てみると「これは弾けるのだろうか?」と思うほど難曲でした。音の数や跳躍の多さ、それに音域がとても広く短時間の間に弾かなければならないなど…大変でしたね。

松井:
私も会場で聴かせていただきましたが、聴いているだけで「次は何が来るのだろう」というわくわく感がありましたし、コントラバスをやったことが無い私でも難しそうだなというのが分かりました。ですがとてもかっこいい、素敵な曲だと思いました。

石川:
今久石さんがなさりたい音楽というものがすごくわかる中で、今まで培ってきた映画音楽などのポップな音楽性も随所に見られて、とても素晴らしい曲です。

(公式サイト:読響シンフォニックライブ | 放送内容より 編集)

 

コントラバス協奏曲 1

 

 

「コントラバスを独奏楽器としてイメージしてみた時、真っ先に思い浮かぶのがロン・カーターのようなジャズ・ベーシストなんですよ。そうすると、これも当然”アメリカ”になってくる。よくよく考えてみると、今年の作曲活動のポイントは、じつは”自分の内なるアメリカ”を確認し直すことだったのかと。それが必然的な流れならば構わないし、結果的に良い作品が生まれればいい。チェロ協奏曲の延長として作曲しても面白くないですから。これはすごく面白い曲に仕上がると思いますよ。期待してください」

Blog. 雑誌「CDジャーナル 2015年11月号」久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

解説

久石譲作曲 コントラバス協奏曲
演奏時間 約30分

僕から久石さんにお願いしたことは2つ。
一つは、「小品」ではなく、コンチェルトとしての“格”を持った作品にしてほしいということ。そしてもう一つは、100年後もコントラバス奏者にとってのレパートリーであって欲しいということ。なんとも言葉足らずで要領を得ないリクエストでしたが、久石さんは「また随分とハードル上げるなぁ」と苦笑いしながら受け止めてくださったのです。

このやりとりから1年。
当代随一の作曲家・久石譲が、当代随一のコントラバス奏者・石川滋と、その仲間たちである読売日本交響楽団のために書いた「コントラバス協奏曲」が、いよいよお披露目されます。

曲は3つの楽章からなります。
全体にミニマルミュージックの手法が散りばめられ、コントラバスの技巧に富んだ独奏が打楽器群の刻むビートの上で踊ります。さらに小編成のオーケストラの各楽器にもソロが割り振られ、独奏コントラバスや他楽器と絡み、細かなリズムの「ズレ」によって立体的な響きが創造されていきます。

独奏コントラバスに求められる技術は大変に高度です。この楽器の調弦に基づく4度のインターバルがベースとなり、ハーモニックスやコルレーニョ、重音といったテクニックが次々と登場します。左手の運指も、右手の運弓も、最高レベルの難度であることは間違いありません。しかしそれらは当然のことながら「超絶技巧のお披露目」のためのものではなく、「コントラバスの表現の可能性」を追求した「必然」です。久石さんと石川さんが積み重ねたやりとりによって完成した楽譜は、結果的に超高難度のものですが、過去のヴァイオリンやピアノの名作たちが、当時「演奏不能」と言われつつも現代ではレパートリーになっている歴史的事実を思えば、「挑戦」の正しい形なのだと感じます。

下手くそなりにコントラバスを弾いていた経験ある者として言えば、技巧的なソロ以外にも、この曲には多くのコントラバスの魅力が詰め込まれています。ジャズやタンゴの薫りがするパッセージでは、独奏コントラバスがベースラインを奏で、読響の名手たちによる様々なソロを魅力的に支えます。歌心くすぐる旋律では、コントラバスの最も響きの美しい音域が用いられ、ここにもコントラバスへの愛情を感じることができます。オケのコントラバスと独奏コントラバスとの絶妙な「ランデブー」はバス弾きにとって感涙ものです。

実は久石さん、この曲を書くためにコントラバスを入手しました。ソロチューニングされた楽器を傍らに置き、きっと譜面を書かれていたことでしょう。そういった楽器への誠実な向き合い方にも、お願いをした側として頭の下がる思いです。

《編成》
フルート2(2番はピッコロ、アルトフルート持ち替え)、オーボエ、クラリネット2(2番はEs管持ち替え)、ファゴット、コントラファゴット、ホルン2、トランペット、テナートロンボーン、バストロンボーン、ティンパニ、打楽器(ドラムセット、カウベル、ウッドブロック、大太鼓、クラベス、トライアングル、マリンバ、ビブラフォン、グロッケンシュピール、シロフォン、ほか)、ピアノ、チェレスタ、ハープ、弦5部(8-6-4-4-3)、独奏コントラバス

(参考文献:番組プロデューサー制作日誌より Facebook 編集)

 

コントラバス協奏曲 3

 

 

番組公式Twitterより

このcb協の肝ともいえる打楽器群には、岡田さん・西久保さん・野本さんの読響メンバーに、加藤恭子さん&柴原誠さんという個人的に大好きな2人が加わった強力メンツ!独奏コントラバス以外にも聴きどころ・見どころがいっぱいの作品です!!

コントラバス協奏曲では、普段とは違うアングルからの映像もあり、石川滋さんの“技”がご覧いただけます。ハイポジやフラジオの左手、ジャーマン弓の捌き方やピチカートの指先、弦の“鳴らし方”までが映像になっていると思います。

(「読響シンフォニックライブ」公式サイト Twitter より 抜粋)

 

 

 

もう一度『コントラバス協奏曲』をじっくり聴いていきました。するとそこには管楽器や打楽器・パーカッションの奏法にみられる同じような響きが随所にありました。ピッコロ、シロフォン、グロッケンシュピールなど。

『コントラバス協奏曲』ってアンサンブル?

コントラバスを主役に据えるということは実はものすごく挑戦的なことなのかもしれない、と。それは音域の狭いうえに低音域であり、なかなか前面には出にくい響き、つまり埋もれてしまいやすい。同じ弦楽であるヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、これらの弦楽合奏を悠々と音厚で奏でようものなら、コントラバスは主張できたとして低音域の音厚。でもソリストとしての独奏となった場合は、厚みでは負けてしまい、ゆえにピッツィカートが効果を発揮するのかも、など。

この作品で久石譲が巧みにオーケストレーションしているのは、弦楽合奏にかえて管楽器・打楽器・パーカッションを各々の楽器の特性を活かし、色とりどりに配置していることです。全体としては音の塊として厚くしすぎることなく、余白のある音楽、輪郭のくっきりとしたそぎ落とした構成ができあがります。さらに薄くならない、単調にならない、間延びしないよう、絶妙にオーケストレーションされているのが各種管楽器・打楽器・パーカッション。そこにコントラバスを主役として迎えているわけです。

とりわけ管楽器+パーカッション、打楽器+パーカッションという旋律を数多く聴くことができます。パーカッションがリズムを刻んだり、拍子を打つ役割だけでなく、管楽器や打楽器と同じフレーズで重ねられているということです。音程のある管楽器群や打楽器群で音に厚みをもたせるところから、基本的には音程のないパーカッションを重ねることで”薄くならない””単調にならない”という、広がりのある色彩豊かな展開を実現しています。編成されているパーカッションの種類も豊富なうえに、同じ楽器でも奏法バリエーション豊かで聴くたびに新たな発見があります。これを一寸狂わぬ演奏で、しかもレコーディングではない一発勝負の公開収録コンサートで、見事に表現している読売日本交響楽団の技術力の高さに、あらためて唸らされます。

従来の壮大なシンフォニーではなく、この手法はまさにアンサンブル的です。「ミュージック・フューチャー」でアンサンブルを進化させ、さらに新しいオーケストレーションを構築するようになったからこそできた作品、それが『コントラバス協奏曲』だったのかもしれません。この『コントラバス協奏曲』で「アメリカ」と形容したのは、『The End of the World for Vocalists and Orchestra』でのアメリカとは少し異なり、ポスト・クラシカル、ポスト・ミニマルの最先端を進めている「アメリカ発信現代の音楽」と共鳴している位置づけにある、という趣旨です。とても気に入っている作品です。

よし!今回は木管楽器(フルート、ピッコロ、オーボエ、クラリネット、ファゴット、コントラファゴットほか)に意識を集中させて聴いてみよう、次は金管楽器(ホルン、トランペット、テナートロンボーン、バストロンボーン)に、次は打楽器(マリンバ、ビブラフォン、グロッケンシュピール、シロフォンほか)に、次はいつもよりも奥に名脇役に徹しているピアノ、チェレスタ、ハープは? パーカッション(ドラムセット、カウベル、ウッドブロック、大太鼓、クラベス、トライアングルほか)だけを追っていても、おもちゃ箱のようにいろんなところから飛びこんでくる! そんな発見ができると思います。

Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 2 より抜粋)

 

 

読響シンフォニックライブ 2015

 

Disc. 久石譲 『Untitled Music』 *Unreleased

2015年10月4日、「題名のない音楽会」リニューアル第1回放送にて初演。

曲名:「Untitled Music」
作曲:久石譲
指揮:久石譲
ヴァイオリン:五嶋龍
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団

 

世界一長寿のクラシック音楽番組『題名のない音楽会』(テレビ朝日系)。2015年秋、若き天才ヴァイオリニスト・五嶋龍さんを司会に迎え大胆リニューアルした。それにともない新テーマ曲「Untitled Music」を久石譲が書き下ろしている。

7月15日東京オペラシティでの公開収録にて、新司会者の五嶋龍による「題名のない音楽会」の初公開収録が行われ、作曲者である久石譲自らが指揮し日本フィルハーモニー交響楽団にて演奏された。

記念すべきリニューアル第1回目(10月4日)にて放映。

番組内インタビューにて久石譲は、「伝統のあるクラシックの番組として、一番新しい才能の五嶋龍くんの強力な個性と、そのふたつを念頭において一生懸命書きました。」とコメントしている。

また演奏中のテロップ表示にて、【曲名は番組名から「題名のない音楽」。音楽会に向かうワクワク感を表現。】と紹介されている。

 

 

冒頭から華やかなオーケストラ・サウンドにて幕をあけ、ヴァイオリンの音色が心躍るように流れていく。クラシック音楽番組にふさわしい気品のある凛とした構成に、ヴァイオリンもバリエーションある奏法を駆使し、表情豊かな音色と響きで魅せる。

久石譲のミニマル・ミュージックをベースとした芸術性と、エンターテイメントで培われた大衆性、その両極性を凝縮させたような結晶化された作品である。近年の指揮活動によってさらに磨きかかったオーケストレーションと構成力によって、ヴァイオリンをいかに際立たせるか、そしてヴァイオリンという楽器の可能性を最大限に追求かつ表現した楽曲となっている。

高音域楽器のピッコロ、グロッケンシュピール、トライアングルなどを巧みにブレンドすることにより、キラキラと輝いた印象を受ける。高音域楽器の対比として、金管楽器をファンファーレ的に配置することで、格調高い華やかさがあり、ヴァイオリンの音域をとてもうまく浮き立たせている。と、個人的には感じます。また緻密でありながら余白のある音楽、主役を際立たせる巧みなオーケストレーションである。

いつもとは違うちょっとフォーマルな音楽会。いつもとは違うちょっとオシャレもして、今まで聴いたことがない音楽との出会いと体験に胸を踊らせて会場へと向かう。そんな心持ちを表現したような作品になっている。

テーマ曲としては約3分半の小品として完成されているが、ここからさらにヴァイオリン・コンチェルトとして発展させていってもおもしろそうな、そんな可能性を秘めた作品である。

番組オープニングでは、「Untitle Music」オープニング・パートが、番組エンディングでは同楽曲エンディング・パートがそれぞれ使用されている。

 

これから番組の案内役として浸透していき、TVの向こう側の日常を華やかにしてくれるだろう。

披露された「Untitle Music」が久石譲コンサートで聴ける日はくるのか、久石譲 x 五嶋龍という夢のコラボレーションがCD化される日はくるのか、時間とともにこれからさらなる変化と進化を遂げていくであろうこの作品を、楽しみにその成長を見ていきたい。

 

 

2015.12 追記

久石:
「年によって比重が変わります。今年はどちらかというと、自分の作品が多いですね。でも、CMやゲーム音楽も作っていますね。あとは五嶋龍君が司会になった『題名のない音楽会』の新テーマ曲も書かせてもらいました。この「Untitled Music」という曲は自分でもすごく気に入っています。テーマ曲というだけでなく、作品としても聴いていただけると思うのですが、リズムが相当難しくて、絶対に自分では振りたくないなぁ(笑)と思ったくらい(実際は初回放送時に五嶋と共演)。でも、あの曲を書いたことで一つ吹っ切れたところがありました。」

Blog. 「月刊ぴあの 2015年12月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

2016.1 追記

2016年1月24日(日) 9:00-9:30 テレビ朝日系
「題名のない音楽会 -五嶋龍の音楽会-」

2015年10月番組リニューアル第1回にて発表された久石譲作曲「Untitle Music」も再びフルサイズにて放映される。

五嶋龍 番組内インタビュー

「(久石譲が)現代音楽というレッテルを貼って欲しくない、枠に入れて欲しくないとおっしゃっていた。リズムとハーモニー、そして音の並び方というのが非常にエッジー(流行の最先端)な音楽。前に進むような、音楽を過去から未来へ押していくようなイメージだと思います。」

 

五嶋龍が語る「Untitled Music」 (演奏中画面テロップ表示)

「冒頭からリズムが小節ごとに変わり、色々な進化を広げていくのがこの曲の特徴」

「『Untitled Music』とは『題名のない音楽』。これは無限の可能性があるというイメージにピッタリ」

「今 我々が新しい流行や新しい音楽を作っていると実感させてくれる楽曲」

「パターン化された音を繰り返す「ミニマルミュージック」も取り入れている」

題名のない音楽会 untitled music

 

 

2016.3 追記

2016年3月開催「久石譲&五嶋龍 シンフォニー・コンサート in 北京 / 上海」コンサート・ツアーにて、久石譲指揮、五嶋龍Vnによる「Untitled Music」が、中国にて5公演披露されている。

Blog. 「久石譲&五嶋龍 シンフォニー・コンサート in 北京・上海」 プログラム詳細

 

 

2016.6 追記

2016年6月5日TV番組「題名のない音楽会」にて、久石譲指揮、五嶋龍Vn、新日本フィルハーモニー交響楽団演奏にて、披露されている。リニューアル初回時の東京フィルハーモニー管弦楽団とはまた趣が異なり、ダイナミックで抑揚豊かな演奏となっている。「題名のない音楽会 久石譲が語る歴史を彩る6人の作曲家たち 前編/後編」というテーマで、2週連続でプログラムされた後編で披露されている。公開収録は4月25日。公開収録時には「Untitled Music」を録り直し、1回目の演奏に久石譲・五嶋龍のいずれかが満足できなかったのか、演奏後の短い会話を経て、その場ですぐに2回目の演奏となった。

 

(演奏中テロップ表示)

「ミニマルミュージックをヴァイオリン協奏曲のスタイルで表現した曲。」

Info. 2016/05/29,06/05 [TV] 「題名のない音楽会」 久石譲2週連続出演! 【5/22 UPDATE】

 

 

2017.4 追記

五嶋龍から新司会者交代にともない、番組テーマ曲「Untitled Music」も3月をもって終了。今後は久石譲作品として発展していくのか、コンサートでプログラムされる機会が訪れるのか、五嶋龍との日本公演は実現するのか、いろいろな楽しみと可能性を秘めた作品であることに変わりはない。

 

 

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