Overtone.第60回 「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2022/02/15

2月9日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサートです。当初予定からの延期公演です。プログラムも新たにアップデートされリアルチケットは完売御礼。さらに、Vol.2,3に引き続いてライブ配信もあり、国内外からリアルタイム&アーカイブで楽しめる機会にも恵まれました。

今回ご紹介するのは、すっかりおなじみふじかさんです。コンサートたっぷり2時間分、そしてかたときも臨場感を失わないレポートをお楽しみいただけると思います。いつもしっかり予習をしてから演奏会に臨むふじかさんだからこそ書ける、そんな解説&感想の絶妙なブレンドで一気に音楽が立ちあがってくるようです。

 

 

久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4

[公演期間]  
2022/02/09

[公演回数]
1公演
東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Future Orchestra Classics
コンサートマスター/ヴァイオリン・ソロ:近藤薫

[曲目] 
レポ・スメラ:Musica Profana
久石譲:Winter Garden

—-intermission—-

ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 Op.90

—-encore—-
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番 ニ長調

 

 

JOE HISAISHI FUTURE ORCHESTRA CLASSICS VOL.4のレポートをさせて頂きます。

2022年2月9日 東京オペラシティコンサートホール 19時開演

 

FOC演奏会も早いもので4回目。ブラームスの『Symphony No.3』を軸にしたコンサートが開催されました。

開演10分くらい前に客席に入りました。ステージ上は開演ギリギリまで練習する楽団員の姿は無く、19時ちょうどくらいに弦楽隊のメンバーのみが集結しました。チューニングののちに、久石さんが登場。いよいよコンサートが始まります。

 

Lepo Sumera : Musica Profana

弦楽オーケストラのみの編成の楽曲で、チェロとコントラバス以外は立奏で演奏されました。短い序奏ののちに、旋律の躍動と静止を繰り返す力強い演奏が始まります。うねりを感じさせるようなリズミカルな旋律が始まったと思ったら、突如静止。各パートから伝わるリズムが複合的に混ざり合い、心地よいビートを感じさせてくれます。古典とミニマルを融合させたような、どこかクラシカルな装いの本楽曲。中間部ではヴァイオリンが奏でるメロディを後から伴奏が追いかけていきます。久石さんは指揮棒を使わずに、手のみで的確に指示を出していきます。

1997年に書かれた作品なのに、まるで近年の久石さんの作品に似たような雰囲気があり、とても驚きました。旋律・モチーフの躍動と静止は近年での『2 Pieces』、書かれているリズミカルなメロディは『Encounter』を、和声を感じさせない単旋律の動きからは『Chamber Symphony No.2』を連想させます。

後半では冒頭のモチーフをさらに発展させ、疾走感と緊張感を感じさせながらフィナーレへ向かいました。

 

久石さんがステージから一度退場したときに、一旦拍手が途切れてしまい、どぎまぎする久石さんの姿も見られました(笑)

舞台替えののちに、木管・管楽器・打楽器のメンバーたちも集結。再度チューニングのちに、久石さんとコンマスの近藤さんが登場しました。

 

Joe Hisaishi『Winter Garden』

・『1st movement』

2006年のピアノとヴァイオリンのバージョンの音源を持っており、何度も何度も聴いていましたが、オーケストラ版をじっくり聴くのは初めてでした。

冒頭からミニマルとメロディを融合したフレーズが何度も顔を出します。ヴァイオリンがメロディを演奏したのちに、そのメロディを木管が受け継ぎ、ヴァイオリンは別のフレーズへ。オーケストラとソロヴァイオリンの掛け合いが最高に気持ちいいです。

聴いていくうちに、2006年版とは全くの別の作品ということを認識していきます。ただのオーケストラアレンジかと思ったら、完全にオーケストラとソロヴァイオリンの為の協奏曲へ。中盤では『崖の上のポニョ』のイメージアルバム収録の『ポニョ来る』のような雰囲気を感じさせるシーンも。冒頭のフレーズを数度繰り返したのちに、幻想的な和音で1楽章は終わりました。

 

・『2nd movement』

1楽章の幻想的な終わりを受け継ぐように、こちらも幻想的な導入から始まります。まるで冬の日の早朝を連想させる凛とした佇まい。冷たい空気の中にヴァイオリン旋律が響き渡るような感じがします。その後、曲調は少し暗い雰囲気へ。近藤さんのヴァイオリンがとても美しく、フラジオレットを使用したシーンではとても繊細に。

 

・『3rd movement』

そして姿を現す3楽章。こちらは2楽章から雰囲気は一変し、8分の6拍子にて、とても印象的で記憶に残りやすいメロディが奏でられます。その印象的なメロディは1楽章と同じようにチューバやトランペット、オーボエ、フルートなど様々な楽器へ受け継がれていきます。

ソロヴァイオリンからオーケストラへとバトンを渡すシーンでは、近藤さんが一気に久石さんへとコンタクトを取り、次の瞬間にはオーケストラの音色が一気に花開きます。この辺りは終始鳥肌が立っていました。

その後超絶技巧を伴ったソロヴァイオリンのカデンツァへ。このカデンツァは圧巻と興奮の最高のパフォーマンスでした。楽曲のハイライトと超絶技巧がソロヴァイオリンから炸裂します。会場もあまりの驚きの演奏にじっと息を殺して、注視する雰囲気がありました。久石さんも、時折うんうんとうなずきながら熱い演奏を見守ります。圧巻のカデンツァののちに、再度オーケストラの音色が花開き、華やかなフィナーレへ。

20分以上はあった楽曲でしたでしょうか?体感時間は本当に一瞬でした。冬という季節にぴったりであるとともに、世の中の雰囲気には左右されない音の運動性を追求した作品でもありました。こんなに完成度が高い楽曲がいまだに音源化されていないのが残念でなりません。今回の熱演をぜひとも収録してほしい!と強く願いました。

会場も割れんばかりの拍手!久石さんと近藤さんによる何度かのカーテンコール。途中で久石さんが指揮棒を落としてしまうハプニングもありました。

 

ー休憩ー

 

Johannes Brahms『Symphony No.3 in F major Op.90』

ステージは再度舞台替えをしていて、この曲からは近藤さんがコンマスを務めます。

 

『1楽章 Allegro con brio』

長短を感じさせる和音を感じさせる印象的な始まりから、駆け降りるようなメロディが一気になだれ込みます。その後ヴァイオリンの印象的なメロディが始まり、それを次に木管がなぞっていきます。立奏の為、楽団員の皆さんは印象的なフレーズでは大きく身体を揺らしながら、表情豊かに表現していきます。久石さんのクラシック演奏では恒例となった、提示部のリピートも今回もきっちり演奏。全体のテンポ感は少し速めな感じがしました。

提示部の繰り返しに入る部分のオーケストラの迫りくるような盛り上がりには圧倒されました。リピートが終わり、新たな展開が入ってきて、盛り上がる部分ではさらに熱気を感じました。再度、冒頭の提示部が再現されたのち、微妙に変奏しながら、1楽章のフィナーレへ向かいました。

 

『2楽章 Andante』

木管の優しいメロディが印象的な緩徐楽章。クラリネットの音色が会場をゆったりと包み込み、楽団の皆さんにも笑顔が見られました。その後は少し暗さを伴った雰囲気へと展開していきますが、その後に続く弦楽のメロディの美しさに終始うっとり。対向配置の良さを存分に活かし、万華鏡を見ているような音の交差が広がります。メロディが大きくうねりを上げるシーンでは、久石さんも客席へ振り向くくらい大きな身振りを繰り広げていました。再度冒頭のクラリネットが現れて、2楽章は静かに終わります。

 

『3楽章 Poco allegretto』

憂愁を感じさせるメロディが印象的な3楽章。チェロの導入から、ヴァイオリンへとメロディを紡いでいきます。そして木管へ。主題ののちに続く、少し明るめなフレーズとの対称もとても耳に残ります。中間部をへて、冒頭のメロディをホルンにて再現。福川さんのホルンの甘く切ない音色にとても感動しました。終盤はそのメロディをヴァイオリンのオクターブにて演奏したのち、どこかに希望を見出すような雰囲気になり、静かに幕を閉じます。

 

『4楽章 Allegro-Un poco sostenuto』

前楽章とは一転、怪しげな雰囲気から始まり、力強くダイナミックな展開が始まります。その後へ続く、チェロの力強いメロディ。スピード感もあり、手に汗握るような激しい展開が続きます。FOCの得意とするロックのような激しいクラシックがこの4楽章で一気に炸裂したような感じがしました。

盛り上がりのピークを迎え、そのままフィナーレしないのが特徴的な『Symphony No.3』。弦楽によるさざ波のような音型が繰り返されるようになり、1楽章の要素が再度顔を覗かせ、1楽章冒頭の和音を奏でながら、ゆったりと楽曲が終わりました。

 

会場の拍手に包まれる中、久石さんはゆっくりと大きくうなずいた後、お辞儀をしていました。その後は、恒例の楽団メンバーへの拍手タイム。ステージにも笑顔が溢れ、至福の時間となります。

 

Encore

Johannes Brahms『Hungarian Dance No.6』

ブラームス交響曲ツィクルスでのアンコールでは恒例となった『ハンガリー舞曲』今回は6番をセレクト。おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかな雰囲気と情熱的な中間部が印象的でした。シンバルとトライアングルのパーカッションが楽曲に彩りを添えます。打楽器が入る部分は久石さんも腕を大きく振って指示を出していました。

 

その後は久石さんが何度かカーテンコールに応じ、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。楽団員がステージから去った後も、拍手が収まらず、コンマスの近藤さんが久石さんを引き連れて再登場。会場は熱気に包まれました。

今回のFOC公演はプログラム構成も素晴らしく、弦楽オーケストラ、協奏曲、交響曲とオーケストラの魅力を存分に楽しめる構成でした。スペシャルオーケストラのFOC第4回公演、熱気の中終演しました。

2022年2月14日 ふじか

 

 

 

当日会場でお会いすることができました。開演前は最近の久石譲活動について楽しく語り、終演後はもうコンサート一色、これファン交流あるあるですね。立ち話でしたしトータル短い時間ではありますが貴重なコンサート体験のひとピースです。

たぶん5分10分くらいですらすら読めてしまうと思います。そのくらいわかりやすいし楽しく文章が流れていきますね。でも、どう表現したらいいかとかどうしたらうまく伝わるかとか、音楽を言葉にすることもあってとてもとてもエネルギーを使っていただいていると思います。本当にありがとうございます。

ふじかさんが当日会場でリアルタイムに口にしていた感想のひと言ふた言が、ここにはそのまま入っていました。そう言ってたな、と思いながらあの時の光景がよみがえってきます。やっぱり直感や第一印象って大切にしたいですよね。コンサートで感じたこと、ライブ配信で感じたこと、初めて触れた感触はこれからもずっと残ります。

この新鮮さは、また「Winter Garden」がいよいよ音源化されたときに、ブラームス交響曲アルバムがリリースされたときに。僕はまたこのみずみずしいコンサート・レポートをきっと読みます。

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
ふじかさんはマイレポートが書き終わるまでほかの人のは見ません。それよくわかります(^^)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第59回 「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサート・レポート by tendoさん

Posted on 2022/02/14

2月9日開催「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」コンサートです。当初予定からの延期公演です。プログラムも新たにアップデートされリアルチケットは完売御礼。さらに、Vol.2,3に引き続いてライブ配信もあり、国内外からリアルタイム&アーカイブで楽しめる機会にも恵まれました。

今回ご紹介するのは、韓国からライブ・ストリーミング・レポートです。「WDO2021」「新日本フィル定演」「MF Vol.8」コンサートにつづいてこの1年間で4回目の登場tendoさんです。とてもおもしろい注目の仕方と表現で、いつも対訳させてもらいながら楽しませてもらっています。きっと共感ポイントあると思いますよ。

 

 

久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4

[公演期間]  
2022/02/09

[公演回数]
1公演
東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Future Orchestra Classics
コンサートマスター/ヴァイオリン・ソロ:近藤薫

[曲目] 
レポ・スメラ:Musica Profana
久石譲:Winter Garden

—-intermission—-

ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 Op.90

—-encore—-
ブラームス:ハンガリー舞曲 第6番 ニ長調

 

 

はじめに

F.O.C.シリーズもすでに4回目になる。今回の公演もリアルタイム・ストリーミングが決定し、日本公演を韓国で楽しむことができた。世界各国の人々とコンサートの直後に感想を交わすことができ、コンサートが終わった後もアーカイブで見ることができるので、リアルタイム・ストリーミングがこのように継続的に続いていることに感謝するばかりだ。いつの日かパンデミックの状況が良くなって会場に直接行ってパンフレットやCDなどを買って演奏を直接聴く日が来てほしい。

 

F.O.C.シリーズについて

Future Orchestra Classics(F.O.C.)シリーズは久石譲の代表的なコンサートシリーズの一つで、長野で活動していたN.C.Oを母体として再結成されたフューチャー・オーケストラが、古典クラシック作品を久石譲作品などの現代作品とともに演奏するプログラムだ。

フューチャー・オーケストラは、厳選した首席演奏家で構成されており、久石譲は指揮を兼ねる作曲家として、時代を先取りした指揮を追求している。現在はブラームスの交響曲全曲のツィクルスが進行中だ。

 

Lepo Sumera : Musica Profana

 

久石譲のファンなら、もうレポ・スメラはおなじみの名前だろう。今回のコンサートで演奏されるレポ・スメラの曲は、弦楽オーケストラで演奏される曲だ。

いつからか久石譲のコンサートには、弦楽だけで演奏される曲が少なくとも1曲は含まれているようだ。正確な理由は分からないが、金管楽器演奏者たちのクオリティーを高めるためのようでもあり、コンサートのレパートリーで小編成の弦楽からなる曲を試してみることのようでもあり、シンプルに久石譲が弦楽オーケストラを好んでよく楽しむのかも知れない。

Musica Profanaはよく演奏されるとか有名な曲ではないけど、かなり面白い曲だった。緊張感の感じられるメロディーがリズム感のあるように進んでは停止するを緊密に繰り返しながら進行される。現代曲をよく演奏する首席奏者からなるオーケストラ、ミニマル音楽を作曲している久石譲に適している曲だと思った。

何度か緩やかに進んでは再び最初の雰囲気に戻ることを繰り返すが、中断を適切に活用した曲という側面から、久石譲の「2 Pieces」という作品の第1楽章である「Fast Moving Oppositions」という曲が浮かんできた。

 

 

最後のハイライトで曲が盛り上がったとき、久石譲がキューサインを与える姿が素晴らしかった。終わりまで本当に素敵な曲だった。F.O.C. vol.3で演奏したレポ・スメラの交響曲第2番も本当に印象深かったが、今回の曲も本当にすごかった。

 

Joe Hisaishi : Winter Garden

 

Winter Gardenはヴァイオリンのための協奏曲として作曲されたミニマル曲だ。2006年にヴァイオリンとピアノのためのバージョンとして2楽章の曲として作曲され、これはアルバムとしてもリリースされたことがある。だが、以降に新たに3楽章が付け加えられたヴァイオリンとオーケストラバージョンになってから2014年に改訂されたバージョンが出てきたが、映像やアルバムなどでは残っていなかった未知の曲だ。

 

 

久石譲のミニマル曲を聴くときは最近打楽器に耳を傾ける方だが、キラキラしたグロッケンシュピール、トライアングルや欠かせないウッドブロックの音もあった。特に、後ろにあるカウベルが注目を集めた。 久石譲の「The East Land Symphony」や「Deep Ocean」に使われた楽器だ。(2017年の韓国公演でも見たうれしい楽器だ。)

コンサートマスターである近藤薫さんの素敵なヴァイオリン・ソロで始まるが、ヴァイオリンとピアノのバージョンとは違いパーカッションがヴァイオリンとともに和やかな音を出しながら始まるのが印象的だった。

第1楽章は、覚えやすいメロディーを中心に軽快な感じで進められる曲だった。全体的に明るく朗らかな雰囲気だった。最後にヴァイオリンの高音で終わりを迎えるが、その瞬間オーケストラが急にみんな静まる部分が印象的だった。

第2楽章は、先に話したカウベルとともに始まる。瞑想的な雰囲気の穏やかな曲だった。ヴァイオリンの官能的なソロ演奏が本当によかった。 ぼたん雪が少し積もった穏やかな感じで、だんだん緊張感が高まった。オーケストラがヴァイオリンをやさしく包み込んで終わる。

 

 

爽やかな雰囲気で始まる第3楽章は、ヴァイオリンのテクニックが引き立つ曲だった。オーケストラとヴァイオリンが交差し、次々と主要テーマを演奏していく。チューブラーベルが加わってさらに豊かでかっこいい雰囲気に。ソロ・ヴァイオリンのカデンツァ直前のオーケストラが力強く躍動する場面も印象的だった。

 

 

カデンツァは本当に完璧だった!ヴァイオリンのテクニックというのはこういうことなんだ!曲が終わる頃に聴こえる楽器はヴィブラフォンだろうか。 暖かい音色で包み込んで終わりを告げているが、本当に素敵な終わり方だった。

 

Brahms : Symphony No.3 in F major Op.90

 

インターミッションの後に続く曲は、今日の主人公ブラームスの交響曲第3番だ。

第1楽章は、管楽器の力強いハーモニーから始まる。この曲は全体的には明るいようでありながらも、一方ではどこか複雑微妙な感情も感じられた。時々登場する急上昇の和音部分は素敵だった。

第2楽章は、緊張した一日を降りて気楽に聴くことができる曲だった。ロマンティックで叙情的な雰囲気の曲だ。

第3楽章は、おそらくブラームスの交響曲第3番で最もよく知られている楽章ではないだろうか。 訴える力の強い濃厚なメロディーに秋の香りが漂うような感じだった。

 

 

福川伸陽さんのホルン演奏はどんなに素敵なことか!オーボエも本当によかった。最高だった!第3楽章が終わる頃には、しばらく泣きそうになった。一生覚えていたい素敵な瞬間だった。

第4楽章は、実に強烈で情熱的な演奏だった。私も知らないうちにリズムに乗っていた。第3楽章に次ぐ素敵な楽章だった。第4楽章は非常に静かに落ち着いた調子で締めくくられた。ブラームスの交響曲第3番は、すべての楽章でこのように穏やかに締めくくられているのが特徴だと感じた。

 

続くアンコール曲は、やはりブラームスのハンガリー舞曲だった!

 

Brahms : Hungarian Dance No.6 in D Flat Major

やや馴染みのない曲だったが、軽快で茶目っ気が感じられる面白い曲だった。「ドン!ドン!」という音に合わせて腕を振り回す久石譲の姿も面白かった。指揮者と演奏者の息が本当に良かったというか、素晴らしいアンコールだった!

 

 

今日のコンサートは本当に駆け引きする演奏に夢中になってしまった。FOCが始まった時は、ブラームスの交響曲に目覚める前でしたが、今は久石譲のおかげでその真価をわかってくるようになった。FOCが持っている特有の音色とアクセント、リズム感、スピードなどなど… FOCが持っている魅力は数え切れないほど多かった。

ミニマル作品とクラシック作品をつなげて紹介するコンサートはどれほどか、またこうして完成度の高い曲を聞けて本当に幸せだった。次のFOCは7月にブラームスの最後の交響曲となる。久石譲のRecomposed楽曲はどのように披露するのか、そしてまだ発表されていない曲はどんな曲なのか。

久石譲が指揮したブラームス交響曲全曲を全集で会うその日を楽しみにしてこの文を終える。

 

2022年2月11日 tendo

出典:TENDOWORKS|히사이시조 – Future Orchestra Classics Vol.4 콘서트 리뷰https://tendowork.tistory.com/77

 

 

tendoさんは韓国で久石譲活動を広く知ってもらいたいとウェブサイトで発信しています。なので、韓国の人たちに現在進行系の久石譲を伝える「はじめに」などの導入部で丁寧に解説しています。こんなライブレポートがあるとうれしいですよね。距離感を越えてぐっと身近に感じられます。

ライヴ映像をことこまかに忘れてしまっても、数年後このレポートを見たらきっとその瞬間の映像が蘇ってくるだろうな、音楽が聴こえてくるだろうな、そんなふうに思います。もうね、SNSでライブ配信直前からスタンバイしてる様子(写真付き)とかを見るだけで、なんだかこっちまでそわそわワクワクうれしくなってきます。そういう海外ファンがもっと増えたらいいですね!

tendo(テンドウ)さんのサイト「TENDOWORKS」には久石譲カテゴリーがあります。そこに、直近の久石譲CD作品・ライブ配信・公式チャンネル特別配信をレビューしたものがたくさんあります。ぜひご覧ください。

https://tendowork.tistory.com/category/JoeHisaishi/page=1

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
訳しながら久石譲が使うキーワードを熟知しているなと感嘆しきり。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第58回 「アド・アストラ サウンドトラック/マックス・リヒター」を聴く ~本編音楽と予告編音楽 II~

Posted on 2022/01/10

ふらいすとーんです。

シリーズ マックス・リヒターです。

 

 

映画『アド・アストラ』(2019)は、ブラッド・ピット主演のスペース・アクション映画です。マックス・リヒターは、いわゆるハリウッド超大作の音楽を担当するのはこれが初めてになります。そのこともあってか、本作で初めてグラミー賞にもノミネートされました。

前回は、そのサントラ盤の曲をご紹介しました。音楽の特徴ひとかけらが伝わったのならうれしいです。2021年3月NHK「プロフェッショナル仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」TV番組でも、このサントラからを始めマックス・リヒター曲がたくさん選曲されてちょっとした話題にもなりました。

 

さて今回は。

本編音楽から話はそれて宇宙空間を彷徨うことになります。何光年も彼方に行ってしまって、簡単には戻ってこれなさそうでした。書いてたら、調べてたら、だんだん腹が立ってきて。積年の思い辛みに拍車がかかってしまいそうで。予告編音楽・トレイラー音楽にスポットを当てたい、そんな後編です。

 

 

(前回からのつづき)

……

 

話はそれます。(怒)

 

映画『アド・アストラ』予告編 9月20日(金)公開 (約1分)

映画公開3ヶ月前の予告です。この時点でマックス・リヒターが音楽担当することはわかっていました。ベートーヴェン「月光」の旋律が聴こえてくる!しかもどんどん劇的に展開していってる! これマックス・リヒターによるもの?? クラシック音楽からの引用という点ではそういうことしそうな人、へぇー!すごい!ベートーヴェンから!早く聴いてみたい。

……映画公開情報のなかに一向にサントラ発売情報は現れず、結果としてリリースは先行デジタル配信が映画公開から1ヶ月後、CD盤は2ヶ月後でした。……そして予告編で使われていた音楽が見当たらない。バッハはあるのに(前回Overtoneで紹介しています)ベートーヴェン「月光」はない。ん??

 

 

Moonlight Sonata

答えはこれです。どうやって探し当てたのかも覚えていません。たぶん血まなこになって探したんでしょう。いわゆるトレイラー音楽として作られた作品で、このアルバムには他に「ワルキューレの騎行」「ロミオとジュリエット」「交響曲第5番 運命」なんかもあったと思います。映画予告編で使われていた音楽は、マックス・リヒターが映画のために書き下ろした音楽からではなかったんです。

 

 

かっこいいですよ。

インパクトあります。こんな料理の仕方もあるんだと好奇心あります。ただ甘味料たっぷり着色料たっぷりなジャンクフード感がつきまとう感じがしないでもない(やんわり)。

 

 

それもいいんですよ。

監督が作曲家に依頼する前に映像にあてられた既成音楽のことをテンプトラックと言ったりします。監督が描くイメージをより伝えやすくするものでもありますが、これによって作曲家はもちろん監督自身も先入観に縛られてイメージが広がらないことも起こり得ます。「最近はテンプトラックが付けられてくることが多くて本当に困っている」と語っていた作曲家の記事もいつしか目にした気がします。

マックス・リヒターがバッハ曲を使用することがわかっていて、あるいはすでに出来上がっていて、それに近いものを仮音源として当てた可能性もあります(あるかな?)。監督のテンプトラックがこのベートーヴェン「月光」アレンジ版だった可能性もあります(あるかな?)。音響担当が雰囲気や世界観からセレクトした可能性もあります(ありそう?)。いかなる可能性があったにせよ、あまりにも紛らわしい近すぎる選曲だと思います。。

(怒)だったのは、ちょっと勘違いしてしまうほどの危うさや紛らわしさがもくもくと潜んでいたからです。ちゃんと一曲とおして聴くとおもしろいアレンジだし、一方ではマックス・リヒターはしないだろうアレンジかなともわかってきます。

 

 

……

……

残念なお知らせ。

久石譲の場合にもあります。日本映画では起こらないことですが、海外映画の音楽を担当するときに、予告編でまったく別の音楽が当てられていることが往々にしてあります。プロモーションのためのトレイラー音楽です。

 

映画『赤狐書生 (Soul Snatcher)』
公開日:2020年12月4日 *中国

陳立農 Chen Linong 《赤狐書生》終極預告 (約2分)

✕久石譲音楽

トレイラー音楽。

 

 

韓国公開時予告編

영화 [적호서생] 메인 예고편 : 이현, 천리농 : 2021.04.29 : 액션 모험 코미디 (約1分半)

✕久石譲音楽

異なるトレイラー音楽。しかも《音楽:久石譲》をテロップ大きく打ち出し。

 

 

日本(映画祭)公開時予告

【のむコレ’21上映作品】『レジェンド・オブ・フォックス 妖狐伝説』予告編 (約2分)

◎久石譲音楽

これが正しい。

 

とても魅力的な音楽です。日本予告編を見てサントラ聴いてみたくなった人いませんかいますよね。 久石譲が手がけた現時点で最新の映画音楽です。ぜひ聴いてみてくださいね。(2021年2月Digitalリリース&2021年12月DVD発売)

 

 

 

負の歴史があります。

取り上げやすかった直近ものからピックアップしました。けれども、こういったケースは過去にもたくさんありますありました。

その映画の音楽を久石譲が担当することを強く宣伝効果狙うこともあります。もちろん映像には《音楽:久石譲》ドン!名前が大きくクレジットされている。もしファンなら、これは予告用の別音楽だとすぐにわかることも、久石譲ってこんな音楽書く人なんだ、今回はこんな音楽書いたんだ、なんだかイメージ変わる、そう勘違いする人もきっといると思います。ファンにしたってそうです。あまりにも久石さんだと言われたらそうなのかなと可能性を感じる音楽、似たような音楽を持ってこられたら、たぶん迷ってしまいます。

しかもですよ!(フーンッ!)これが日本でなら予告編公開と同時にSNS話題になって、これ久石譲?…迫力ある音楽だ!…なんか新鮮!…久石譲の音楽はハズレない!…久石譲の音楽強すぎもってかれてる!…音楽がうるさい!…久石譲っぽくない…たぶん違うと思いますよ…久石譲じゃないでしょこれ……そんな拡散と誤解と修正が飛び交って、たぶん落ち着きますよね。それが叶いにくい海外映画において起こりやすいケースだからまた曲者です。久石譲音楽という共通理解が少ない地域において。拡散と誤解のまま滞留してしまいそうです。

 

 

なんか鼻息が荒い?!

……

お願いです。

予告段階ではまだ音楽が出来上がっていないケースもあるかもしれません。宣伝効果としてのトレイラー音楽の活用もあるでしょう。…30秒予告編くらいならまあわかる。…2分間でも同じトレイラー音楽を鳴らしっぱなならまあまあわかる。でも!めまぐるしいカット割りに合わせて音楽も曲調豊かにいろいろ切り貼りして仕上げちゃうでしょう。それだともうお手上げ。

なんとか紛らわしさや誤解は極力回避してほしいです。たとえば、music for promotionとかused from Trailer songとかused by promotional musicとか、、小さくてもいいのでクレジットしてほしい、映像の隅っこのほうでもいいので。こんな提案はいかがでしょう。

監督・作曲家・プロデューサー。監督は予告編にどこまでタッチしますか? 作曲家は事前に依頼がないかぎり予告編まで介入しないノータッチですよね。個人的には、この予告編音楽問題は、プロデューサーにかかるところが大きいと思っています。あるいは国ごとに作品の配給権をつかんだその各国プロデューサー。いかなるシチュエーションであれ、プロデューサーがしっかりと音楽について理解を深めてもらって、音楽を取り扱っていただけるといいなと切望します。プロモーションも作品の一部だと思います。

 

 

深呼吸しました。

ちょっと気になって調べてみたことがあります。そうしたら、トレイラー音楽というものがひとつの産業としてあるんですね。ハリウッドの映画予告編に専門特化したオーケストラおよび作曲家集団。その元祖ともいえるのが「トレイラーヘッド」詳しくはウィキペディアにあります。興味あったら掘り下げてみてください。

 

代表的なアルバムを紹介すると。

『trailerhead』
映画の予告編で使用されたBGMを集めた作品。収録されたBGMの映画タイトルは『パイレーツ・オブ・カリビアン:デッドマンズ・チェスト』『スパイダーマン2』『スパイダーマン3』『パイオハザードIIアポカリプス』『ファンタスティック・フォー超能力ユニット』『ナイトミュージアム2』『ロード・オブ・ザ・リング』『ダ・ヴィンチ・コード』『アリス・イン・ワンダーランド』他。

trailerhead:TRIUMPH
映画の予告編で使用されたBGMを集めた作品。収録されたBGMの映画タイトルは『ハリーポッターと死の秘宝Part1&2』『アバター』『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド』『宇宙戦争』『アンダーワールドビギンズ』『トワイライト・サーガブレイキング・ドーンPart1』『デイ・アフター・トゥモロー』『ウルヴァリンX-MEN ZERO』『フライト・プラン』他。

Introduction to TRAILERHEAD
2分でボルテージ最高潮! 話題のド迫力「映画予告編サントラ」国内独自企画ベスト盤が登場! 世界最高峰のシネマ・オーケストラ集団が織り成す圧倒的な音世界!「進撃の巨人」「相棒-劇場版II」「GANTZ」など邦画作品でも使用され、その荘厳なサウンドが話題に!

 

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わずか2-3分で映画の印象を決定づける映画予告編において、そこで使用される音楽が最も重要なのは間違いない。限られた時間の中で、観客のボルテージを最高潮に盛り上げるこれらの楽曲を制作しているのが、railerhead(トレイラーヘッド)と呼ばれる超絶オーケストラ集団だ!ハリウッド映画を知り尽くした作家陣をはじめ、100人編成のオーケストラと70人のコーラスという壮大なスケールで構成され、その制作楽曲は1200曲を超える。また、予告編で使用される楽曲は通常のサウンドトラック盤には収録されない<幻の楽曲>としてファンの中でも熱く語られていた。それらの映画予告編やゲーム音楽で使用されたトラック がCDに収録されて発売決定!錚々たる映画の予告編などで使用され、そして中にはYoutubeにて100万回以上の試聴回数を誇るトラックも出現するなど、このシーンへの熱い想いはますますヒートアップ!
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(メーカー・インフォメーション より)

 

 

僕らは、これまでにいつのまにか、この手の音楽をたっぷりと服用されていた。なんとなくこのジャンルのポジションやコアな熱気みたいなものが伝わったでしょうか。

 

 

Spiderman 2 Trailer (約2分半)

映画『スパイダーマン2』(2004)予告編です。いくつかの音楽が切り貼りされています。その後半部分が次のこちら。下の公式音源です。

 

Immediate Music – Lacrimosa Dominae

from Epic Music World Official

これでもかと煽る煽る(笑)いかに煽られてきたことか。エナジードリンクのようなカンフル効果ありますね。インパクト・吸引力・訴求力はプロの技としか言いようがありません。お見事です。お見事なんですけれど、ここに潜む過剰に煽ることの危うさ、音楽による誇大広告の助長みたいなものもまた感じてしまう。考えさせられるいい例です。

 

しかもこれ、カルミナ・ブラーナしか浮かびません。

 

Orff: Carmina Burana / Fortuna Imperatrix Mundi – “O Fortuna”

 

このまま使っていいんじゃないかな。あるいはカルミナ・ブラーナ《おお、運命の女神よ》から引用したとわかるかたちで編曲したほうがいいとさえ思います。僕が言いたいのは、なんちゃってというか、○○風に作ってしまうことで、映画音楽が陳腐なポジションに成り下がってしまう要因をつくっていないか、そうしてこなかったか、ということにまで思い及んでしまうからです。クラシック音楽とは到底並べられない……となってしまった要因に、なんとなく雰囲気でつけちゃう音楽があったような。商業性を狙いすぎた、芸術性(作品性)を守ってこれなかった。

久石譲が否定的に語る「効果音楽のようなもの」のエピソードも思い出します。それらは「走ってたら速い音楽、泣いてたら悲しい音楽」とわかりやすい例で語られてきたものです。映像をなぞる・映像を誇張するという意味では、トレイラー音楽こそ効果音楽の最たる象徴と…言い切ってしまいたい。(フーンッ!再熱)

そして、トレイラー音楽の需要やポジションが確立されるにつれて、これらの音楽は予告編のラインを越えて、映画本編にまで影響を及ぼしてきた。似たような音楽が増えてきた。とにかく観客を飽きさせるなというように。ハリウッド映画音楽の歴史の流れのなかにこんな側面あってそれは今に至る、そんな気さえしてきます。

一度その濃い味に慣れてしまうと、ほかのものは薄味に感じてしまって、素材を生かした旨味に反応できなくなってしまいます。

 

 

 

プラス面

汎用性が高いというのが最大の魅力です。唯一の魅力です(チクリッ!?)。何か特定の作品を連想させることのない広義なBGMです。とにかくいろいろなテーマの作品集があるんです。ラブストーリー、ヒューマン、ネイチャーといかなるジャンルも膨大な曲で対応しています。CDからYouTubeからサブスクから調べていたら、どんどん芋づる式に湧いてくると思います。

瞬間でエナジーチャージしたいときとか?一気にテンション上げたいときとか?会議やプレゼン前とか?ヒーローになりたいときとか?変身したいときとか?……とにもかくにも一瞬でスイッチ入るシリーズだとは思います。

 

 

マイナス面

効果音楽的な音楽、消費され尽くす音楽、煽られ錯覚する音楽、舌がバカになる音楽(やんわりじゃない)。言い過ぎでしょうか。たまに食べるのはいいけれど、甘味料たっぷり着色料たっぷりなジャンクフードのような音楽はマヒします。そういう音楽ばかりにふれるのは、心にも体にもあまりよくないんじゃないかなあ、と根拠はありません。

僕は、おもしろいなとは思うけれど、リピートはしないし、手元には置かないかな。否定的な理由ならいくらでも書けるけど、こういった音楽が好きな人もいるだろうし。だから、感情的ケンカにならないように論理的に説明できたらとがんばります。

 

 

……

……

ズバリ!

顔のない音楽なんです。

その映画を象徴するメインテーマ、その映画を表現するメロディたち。それらを顔としたときにトレイラー音楽には顔がありません。これはもっともなことで、いかなる映像にも当てはめられる汎用性を求められて作られたものです。顔がなくて当然とも言えます。

ただ、僕にはそれが使いまわしのきく効果音楽のようで、どれでもいいんでしょ、鳴ってればいいならあなたである必然性を感じませんと。もっと言うと「サントラよりも予告編の音楽のほうがインパクトあってかっこよかったね!」……もしそんな声を聞いてしまったなら、むずむずしてきます。メラメラと。

さきほど紹介したトレイラー音楽「Lacrimosa Dominae」をもう一回聴いてみてください。ちゃんと聴くと、メロディがない音楽全体が伴奏のように聴こませんか。顔のない胴体だけが図体デカく歩いている音楽のよう(やんわり超えてる)。

 

 

 

彷徨ってる、戻ってこい。

◇トレイラー音楽とわかる予告編にしてほしい
◇できるだけ本編音楽から使ってほしい
◇トレイラー音楽聴きかた注意
◇トレイラー音楽と本編音楽の効果は似て非なる
◇トレイラー音楽と本編音楽の手法は似て非なるべき
◇映画音楽の地位を歪めない足を引っ張らない
◇プロモーションも作品の一部

 

 

これなら納得でしょう。

ハリウッド映画のアクション・SF・ファンタジーなど、ヒーローもの善と悪との戦いの構図になると、必ず出てくるのがオーケストラとコーラスを主体とした荘厳な響きの曲です。運命、宿命、神、神話と行き着く先は西洋宗教音楽に還る。そんなことを映画『ファンタスティック・ビースト』のときにも書いたかもしれません。おのずとトレイラー音楽にもこういったテイストの楽曲は多いです。さっきのカルミナ・ブラーナ風の曲もそうでしたね。

ジョン・ウィリアムズも映画『スター・ウォーズ』の音楽で表現しています。顔のある音楽とはこういうことだ!(と思っている)。本編で幾度使われるメロディやハーモニーをふんだんに使って『スター・ウォーズ』でしか成立しえない音楽をつくっている。

まず性格のはっきりした映画主要テーマ曲の旋律がはっきりあってこそです。顔があるから個性が出てくるし、表情の変化(アレンジ)もうまく伝わる。映画を表現するためにキーとなっているメロディ・楽器・ハーモニーらを使ってこんなふうに料理したんだ!意外性ある音楽的展開してる!とうれしくなってくる。これこそ、映画音楽から感じる世界観だったり、映画全体をコーディネートした音楽構成に魅了される、映画音楽の醍醐味です。

 

Star Wars The Phantom Menace Music Video – [Duel Of Fates]

 

カルミナ・ブラーナ風なんて言わせないぞ、すごい密度と燃焼度です。並べてもひけをとらない、とらないどころかの新しい創造。しかも『スター・ウォーズ』のためだけの音楽になっている。顔があって強靭な胴体があってたくましく存在感のある音楽。こういうのを聴いていると、あぁクラシック音楽はこうやって映画音楽に継承されてきたんだなと思います。

 

 

 

さらに彷徨いたくなる!?

久石譲初期の代表曲のひとつ「794BDH」です。上のスター・ウォーズ曲と似たような音型が聴かれます。偶然にも限りなく近いモチーフから構成されているこの2曲。西洋と東洋のルーツの違いが鮮明に見てとれて並べるととてもおもしろいです。けっこう具象化された好例かもなあと見つけてつなげて楽しい。

 

794BDH

from Joe Hisaishi official

 

こんなことばかりしていたら宇宙空間の彼方から戻ってこれなくなります。ブラックホールには気をつけましょう。

 

それではまた。

 

reverb.
楽しい音楽探査ができました♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第57回 「アド・アストラ サウンドトラック/マックス・リヒター」を聴く ~本編音楽と予告編音楽 I~

Posted on 2022/01/09

ふらいすとーんです。

シリーズ マックス・リヒターです。

 

 

映画『アド・アストラ』(2019)は、ブラッド・ピット主演のスペース・アクション映画です。マックス・リヒターは、いわゆるハリウッド超大作の音楽を担当するのはこれが初めてになります。そのこともあってか、本作で初めてグラミー賞にもノミネートされました。

テレビを見ていると、いろいろな番組でBGMに使われていることの多いマックス・リヒターの曲たち。それだけ印象的だし、映像になじみやすい、いろんな解釈や感情に喚起できる、そんな魅力があるのかもしれません。もちろんこのサントラからも使われていたことあります。これまでマックス・リヒターを聴いたことがない、そう思っている人でも、実は知らない間に耳にしていた可能性はいっぱいにあります。

『アド・アストラ サウンドトラック』は、2枚組CD・2時間というボリュームで、スコアを担当したマックス・リヒターをメインに、ローン・バルフとリルス・フラームという作曲家による追加音楽も収録されている本編音楽完全盤です。アルバムは輸入盤のみとデジタル配信です。

 

さて今回は。

サントラからマックス・リヒター音楽の魅力を紹介したいです。ですけれど、話はそれて宇宙空間を彷徨うことになりそう…なりそうでしたから、2回にわけることになります。前編は、サントラに収録されている本編音楽から。

 

 

AD ASTRA
Score by MAX RICHTER

DISC 1
01. To The Stars
02. Encounter
03. Cosmic Drone Gateway
04. I Put All That Away
05. A Trip To The Moon
06. Terra Incognita
07. Ex Luna Scientia – Requiem
08. Journey Sequence
09. The Rings Of Saturn
10. The Wanderer
11. Erbarme Dich
12. Forced Entry
13. Preludium
14. Resonantia
15. Let There Be Light
16. Ursa Minor – Visions
17. Event Horizon
18. Musurgia Universalis
19. You Have To Let Me Go

DISC 2
01. Tuesday (voiceless)
02. Opening
03. Briefing
04. Space Journey
05. Rover Ride
06. Pirate Attack
07. Orbs
08. Underground Lake
09. Trip To Neptune
10. Says

Music by:
マックス・リヒター
except
ローン・バルフ(DISC 2: Track2-9)
ニルス・フラーム(DISC 2: Track10)

 

 

1.To The Stars

from Max Richter Official YouTube

映画メインテーマです。弦楽オーケストラの広がりが、大きな宇宙空間へと誘ってくれます。時空の感覚を麻痺させるような滞空時間の長いストリングスに、無重力に浮遊するようなピアノの調べがのります。反比例的に重力感のある低音が、身を委ねたくなる安心感と心地よさをもたらしてくれます。

ずばり言ってしまうと眠りに最適、そんな音楽ですね。からだのリズムに沿うような浮遊感、深く深く降りていくような彷徨感。耳を傾けるというよりも、体ごとどっぷりと音楽に浸る、そんな感覚です。瞑想や深呼吸したくなるかもしれません。眠りというキーワードは、マックス・リヒター音楽のひとつの大きなテーマを持っているのですが、その話はまたいつか。

 

 

5.A Trip To The Moon

同じ映画メインテーマからです。エレクトロニックな音響が、無重力空間を演出してくれているようです。なんとなし、いま自分以外の周りすべての時間も空間もフリーズしている、そんな錯覚におぼれます。

 

メインテーマの別アレンジ曲はほかにもあります。「10. The Wanderer」、「1.To The Stars」とまったく同じじゃないかと聴き流してしまいそうですが、微細な音像バランスの違いがあります。並べて聴くとわかりやすいです。「10. The Wanderer」はコントラバスとチェロのレベルが強調されていて、後半に進むにつれかなり低弦によった音響になっています。同じ音源からミキシング調整して、ニュアンスの差異を出しているんじゃないかなと思います。こういうところ、マックス・リヒターの心理下に忍びこんでくる巧みさ。たぶん聴く人は、低音のことを意識していなくても、Track1.か10.か無意識にどちらが好みか選んでいる。そんな気がします。

「19. You Have To Let Me Go」、シンセサイザー重低音を土台に、澄みきったコーラスと弦楽オーケストラになっています。さきほどの「10. The Wanderer」とは変わって、高音・高弦を中心としたつくりになっています。彼方まで光がうすく伸びていきそうな果てしない広がりを感じます。

 

 

11.Erbarme Dich

バッハ:マタイ受難曲 第39曲アリアをアレンジした曲です。ゆるやかな波長のシンセサイザーに、オルゴールのような音色を使ったメロディ。たぶん、原曲にもともとある旋律(声部)だけを使っていて、アレンジのための新しい旋律は加えていないと思います。マックス・リヒターはバッハ音楽にとても造詣が深い、リスペクト感の伝わってくるアレンジ手法です。

 

Johann Sebastian Bach – Zweiter Teil, 39. Aria (Alt) Erbarme dich

原曲です。バッハのマタイ受難曲は引用されるバイブルみたいなものなのかもしれませんね。久石譲も、自作品『THE EAST LAND SYMPHONY』の第5楽章The Prayerで、バッハ:マタイ受難曲 第62曲コラールを引用しています。どんなかたちで登場しているのか、ぜひ聴いてみてくださいね。

 

 

12.Preludium

こちらもバッハ「平均律クラヴィーア曲集」からプレリュードをアレンジした曲です。原曲とは異なる短調な響きが印象的です。これだけ聴くと、ベートーヴェン「月光」からかな?と思ってしまいそうですが、バッハです。

 

Tzvi Erez plays Bach: Prelude 1 in C Major BWV 846 from the Well-Tempered Clavier

原曲です。なかなかこの両極端な明るさと暗さを変換して頭のなかで一致させるのって難しいですよね。もしサントラ曲名に「プレリュード」って書いてなかったら気づかなかったかもしれません。

 

 

17.Event Horizon

ひとつのマックス・リヒター音楽のかたち。真髄というかスタイルと言っていいようなもの。ミニマルな音型を主題としてただひたすらにくり返す。でも同じことのループや変化しない音楽ではない。くり返しながら、潮の満ち引きのように音の濃淡を表現し、微細に音の厚みや薄さで呼吸させていく。旋律を加えることでドラマティックさやエモーショナルさを一瞬のぞかせる。そうですね、音像を揺らしていく、そんな秘技なのかもしれませんね。

 

これは、「1.Tuesday(Voiceless)」(Disc2)にも言える手法です。とりわけ20分近いその曲では、壮大な音楽の満ち引きを感じてもらえると思います。そしてどこを切り取っても涙腺を刺激されてしまうから不思議です。その人が今思っていることや思い巡らせなかで起こる感情の起伏をそのまま音楽にのせたような。なにかを深く考えたいときとか。

もともとは『3つの世界 / Three World』(2017)というバレエのために制作された音楽です。そのアルバムからの同曲音源をそのまま使っています。映画『アド・アストラ』で再び使用するにあたって、原曲頭30秒間のナレーションや波のSE音をきれいにカット処理しているので、映画サントラ盤では「1.Tuesday(Voiceless)」という表記になっています。

 

 

Ad Astra – Score by Max Richter | Pt. 1 JOURNEY (約3分)

マックス・リヒターのインタビューとレコーディング風景動画です。英語はスルーしてしまうのが残念なところです。映像見ながらコントラバス奏者8人もいるとびっくりです。一般的なオーケストラでも4~5人くらい、久石譲コンサートだと7~8人くらいでしょうか。「宇宙の音も使ってるよ」そんなことも言っています、ざっくりすぎるすいません。

 

 

サントラまとめ。

全曲ともメインテーマ「1.To The Stars」のような楽器編成を基調としています。ピアノ&ストリングスやプラスシンセサイザーの楽曲たちです。マックス・リヒター音楽の大きな特徴になっている独特な重低音シンセサイザー。強いアクセントで出ているときもあれば、実はどんな曲にもうっすらと入ってるじゃないかなと思うことあります。「1.To The Stars」弦楽オーケストラ曲ですが、もしかしたら低音シンセを人の耳にはなかなか聴こえない配合でブレンドしてるんじゃないかなとか。低音波?無意識下?潜在的心地よさみたいなものを感じてしまっているのかもしれません。好んで聴いているのか、好まされてしまっているのか。

[Disc1] Track-1,5,10,11,12,17,19 & [Disc2] Track-1。サントラ盤から、ゆっくりリラックスできるような音楽を中心に紹介しました。聴きやすいのは、ほかには [Disc1] Track-4,8,14あたりでしょうか。どの曲も、一曲ずっとリピートしていても飽きない音楽です。マックス・リヒターの最小音型でシンプルに構成された音楽は、聴くシチュエーションを限定しない無限な広がりをもち、作品を超えた再利用にも値することはすでに多く証明されています。

あとの曲たち…、アクシデントや恐怖を誘発するような、不協和音だったり、急にびっくりするようなそんな音楽もあります。怖くて落ち着いて聴けないかもアルバムの通しプレイでは。ぐっすり眠りにつきたいときや、安らかタイム・くつろぎタイムのプレイリストにはご用心です。

 

このサントラ音楽は「2021 NHK プロフェッショナル 庵野秀明 エヴァンゲリオン」でも何曲か使用されてました。とても効果的かつ印象的に。[Disc1] 「2.Encounter」「9. The Rings of Saturn」「14.Resonantia」& [Disc2] 「Tuesday (Voiceless)」。今回ふれていない曲ばかりです。ぜひサントラ聴いてみてください。思い出す曲あるかもしれません。

 

 

いつもなら。

ここから久石譲音楽につながって話をすすめたくなります。…久石譲キャリア初のプラネタリウム音楽について。『ad Universum』は…と。久石譲ミニマルを貫いた極上の宇宙空間が広がっています…と。今はまだ一緒に共感しあえない音楽です……。いつかオリジナル音源がリリースされることを大きく宇宙に願って。

 

マックス・リヒターは、作品のほとんどをロンドンAir Studiosで録音しています。久石譲作品でいうと『WORKS・I』や『水の旅人 -侍KIDS- オリジナル・サウンドトラック』が同じスタジオです。さらには、『アド・アストラ サウンドトラック』のコーラスはLondon Voicesです。久石譲作品でいうと『Minima_Rhythm』収録の「The End of the World III.Beyond The World」や『Melodyphony』収録の「Orbis」のコーラスはLondon Voicesです。ご縁あります。……だから?!…なに?!…、えっと、しっかり名門を選びぬいて作品をのこしてきた、ということを言わせてください。

 

 

話はそれます。(怒)

 

映画『アド・アストラ』予告編 9月20日(金)公開 (約1分)

映画公開3ヶ月前の予告です。この時点でマックス・リヒターが音楽担当することはわかっていました。ベートーヴェン「月光」の旋律が聴こえてくる!しかもどんどん劇的に展開していってる! これマックス・リヒター??

 

……

……

 

ここから宇宙空間を彷徨うことになります。何光年も彼方に行ってしまって、簡単には戻ってこれなさそうでした。書いてたら、調べてたら、だんだん腹が立ってきて。積年の思い辛みに拍車がかかってしまいそうで。次回は、予告編音楽・トレイラー音楽にスポットを当てたい、そんな後編です。

 

マックス・リヒターが手がけた現時点で一番新しい映画『アド・アストラ』(2019)サウンドトラックです。ぜひゆっくり聴いてみてください。

 

それではまた。

 

reverb.
映画の内容は覚えていません。長かったなあという印象はあるかなあ。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第56回 「VOICES 1, VOICES 2/マックス・リヒター」を聴く

Posted on 2021/12/10

ふらいすとーんです。

シリーズ マックス・リヒターです。

 

 

マックス・リヒターとの出会い。それは久石譲コンサートにプログラムされた「Mercy」という曲です。2016年「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.3」で演奏されたヴァイオリン&ピアノのデュオ曲、とてもシンプルで深く心に沁み入ります。

ヒラリー・ハーンが、アンコール・ピースとして作曲家たちに委嘱した小品(5分以内の楽曲)を集めたアルバム『27の小品』(2013)。この時に書き下された提供曲が「Mercy」です。

 

Richter: Mercy

from Hilary Hahn Official YouTube

 

 

そして、ヒラリー・ハーン初のベストアルバム『ヒラリー・ハーン ベスト』(2018)に、ライヴ録音版が収録されます。この音源は同年発表のマックス・リヒター初のベストアルバム『ボイジャー マックス・リヒター・ベスト』にも収録されます。

ここで初めてマックス・リヒター名義のアルバムに収められることになります。作曲家がアーティストのために提供した楽曲を、自身のアルバムにも取り込み発展させていく。久石譲楽曲にもこの流れはもちろんあります。ぐっとおさえたなかにもライヴならではのエモーショナルを感じる演奏です。

 

Richter: Mercy (Live)

 

 

そして2020年。

「Mercy」を重要な核としたオリジナルアルバム『VOICES』が発表されます。とてもおもしろいコンセプト・アルバムです。メーカーからのテキストをご紹介します。

 

 

「世界人権宣言」からインスピレーション。構想10年以上をかけた作品。

◆マックス・リヒターの9作目となるスタジオ・アルバム『ヴォイシズ』は、「世界人権宣言」からインスピレーションを受けて、構想10年以上をかけた作品。

◆第二次大戦後の世界の重大問題に取り組むべく、1948年、国際連合総会で採択された『世界人権宣言』は、エレノア・ルーズベルトを長とする哲学者、アーティスト、思想家らによって草案された。『ヴォイシズ』でリヒターが楽曲との融合を試みるのは、1949年に録音された『世界人権宣言』の前文。冒頭には、ルーズベルト本人の肉声が聴こえる。ルーズベルトとクラウド・ソーシングされた“人々の声” に並び、コラールかつオーケストラル、かつエレクトロニックな音景を補足するナレーションを担当するのは、米国の女優キキ・レイン(2018年ドラマ映画「ビール・ストリートの恋人たち」)。

◆マックス・リヒターのコメント:「考える場としての音楽、というアイディアに惹かれたんだ。今、僕ら人間に考えねばならないことがあるのは、あまりにもあきらかだからね。僕らが生きているのは非常に困難な時代だ。自分たちが作った世界を見回し、絶望と怒りを覚えるのは容易なことだ。でも、問題を作ったのが僕たち自身であるのなら、解決策もまた手の届く範囲にあるはずだ。『世界人権宣言』は人間が前に進むための道を示してくれている。欠点がないわけではないが、より良い、思いやりのある世界は実現可能だという、力づけられるヴィジョンを謳っているんだ」

《VOICES》のプレミア公演は2月、ロンドン、バービカン・センターで60名以上のミュージシャンを集めて行なわれた。それは従来のオーケストラ編成の概念を大きく変える音楽だ。「世の中が上下逆になり、普通だとされるものが転覆する、というアイディアから生まれた。そこでオーケストラを上下逆さまにしたんだ。楽器の割合という意味で」とリヒターは言う。こうして彼が書き上げたのは、12本のダブルベース、24本のチェロ、6本のヴィオラ、8本のヴァイオリン、そして1台のハープのためのスコアだ。そこに加わるのは、12名の言葉のないクワイア、キーボードにリヒター本人、ヴァイオリン・ソリストのマリ・サムエルセン、ソプラノ歌手グレース・デヴィッドソン、そして指揮者のロバート・ジーグラー。この大がかりなプロジェクトのビジュアルは、リヒターのクリエイティヴ・パートナーであるアーティスト/映像クリエイターのユリア・マーが手がけた。

◆Disc-1には、ナレーション入り。そして、Disc-2にはナレーションの入っていない「Voiceless Mix」ヴァージョンが収録される。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

伝えたいことはちゃんと書かれているように思います。ポイントは、【音楽+朗読】【世界人権宣言】【考える場としての音楽】【上下逆さまのオーケストラ編成】などでしょうか。

 

ヴォイシズ / マックス・リヒター
VOICES  MAX RICHTER

[CD1]

1. All Human Beings
2.Origins
3.Journey Piece
4.Chorale
5.Hypocognition
6.Prelude 6
7.Murmuration
8.Cartography
9.Little Requiems
10.Mercy

[CD2]
CD1  (Voiceless Mix) Version

 

 

 

Max Richter – All Human Beings (Official Music Video by Yulia Mahr)

from Max Richter VEVO

1曲目に収録されているアルバムを象徴する楽曲です。フランス語、ドイツ語、スペイン語、オランダ語、英語による【世界人権宣言】ナレーションをフィーチャーした作品になっています。【考える場としての音楽】という発想がすごいなと思います。アルバムを進めていくと、日本語による朗読も聞こえてきます。音楽の力を借りてすっと入ってくる言葉たちに、ふと考えてみる瞬間が訪れるようです。

 

 

Max Richter – Mercy (Official Music Video by Yulia Mahr)

本盤で初のオリジナル・アルバムのなかに「Mercy」、アルバム内の位置とバランス「Mercy」は、演奏者も新たに新録音です。秘蔵っ子マリ・ サムエルセンのヴァイオリンに、マックス・リヒター本人によるピアノです。ヒラリー・ハーン版との音色や演奏の違いをテイスティングしながら味わうものオツです。音の肌ざわりがたしかに。

アルバムからMusic Videoが作られているのは2,3曲です。いかにこの曲が大切なのかが伝わってきます。アルバムの核となっているように「7.Murmuration」は「Mercy」の断片的な素材からできています。

 

 

『ボイジャー』~マックス・リヒターが語る「慈悲」

from UNIVERSAL MUSIC JAPAN

 

VOICES – Max Richter (Out July 31st) (約30秒)

from Max Richter Music

レコーディング風景をおさめたプロモーションです。約30秒のなかで、オーケストラ編成や「Mercy」のひとコマも見ることができます。前半に流れている「4.Chorale」は、聴くタイミングを間違うと涙の洪水に襲われてしまう、そんな楽曲です。

 

 

そして2021年。

構想10年以上をかけて制作されたという『VOICES』の続編が登場します。こちらもメーカーからのテキストをご紹介します。

 

 

世界人権宣言に発想を得て生み出され、大きな反響を呼んだ『Voices』のヴァージョン2!

録音ノート
生きていくのが非常に困難な時代に、「考える場としての音楽」として《VOICES》を発表した。そして、《VOICES 2》はこのコンセプトを発展させたもの。ある意味、この2枚目のアルバムは、1枚目のアルバムで提起された疑問を見つめるための空間とも言える。

最初にリリースした《VOICES》の音楽的な材料に基づいて、《VOICES 2》は音楽的な言語を純粋に器楽的で抽象的な方向に発展させた。このプロジェクトの最初の部分(一枚目の《VOICES》)では、世界人権宣言のテキストに焦点を当てていたが、今作「2」では、これらの言葉やアイデアを深化させるための音楽的な空間を開拓しているんだ。

《VOICES》の最後のトラックだった「Mercy」は、この新しい構成の中で、プロジェクトの終わりではなく、中間点となり、音楽が進むにつれて、「Mercy」のDNAが音楽の風景全体に浸透していく。

ここに収めている曲の大部分は、オリジナルのセッションの一部として録音されたもので、同じプレイヤー達が参加している。数ヶ月間のロックダウンの間に追加のレコーディングをする必要があったのだけれど、アビーロードにある不気味なほど閑散としたスタジオ1の広大なスペースでのピアノソロのレコーディングを忘れることはできない。

– マックス・リヒター

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

ヴォイシズ 2 / マックス・リヒター
VOICES 2 MAX RICHTER

1.Psychogeography
2.Mirrors
3.Follower
4.Solitaries
5.Movement Study
6.Prelude 2
7.Colour Wheel
8.Origins (Solo)
9.Little Requiems [Cello Version]
10.Mercy Duet

 

 

「1.Psychogeography」は、前作「1. All Human Beings」の別アレンジ曲です。「3.Follower」は、前作「3.Journey Piece」の別アレンジ曲です。ほかにも、Track.8-10などは曲名からみて別バージョンのそれとわかるものもあります。もしかしたらたぶん、スコアを深く読み解くことができれば、もっと2アルバム作品の構造的つながりや有機的な結びつきがわかってくるのかもしれません。

 

 

Max Richter – Solitaries (Audio)

「Mercy」の素材を使ったオルガン曲です。9/8拍子のなかメロディが巧みなシンコペーションを生んでいるからか、不思議な心地よさがあります。

 

 

Max Richter – Mercy Duet (Audio)

ピアノ2台の「Mercy」です。たぶん上のオルガンver.と同じ9/8拍子だと思うんですけれど、1拍目だけ音符を任意でたっぷり伸ばすようになっているのでしょうか。1拍目だけ1.5拍みたいな(もっとちゃんとロジカルな譜面なのかな?)。これによって独特の揺らぎを生んでいるように感じます。均整なリズムのオルガンver.とは印象も変わってきますね。

 

 

Max Richter, Mari Samuelsen, Robert Ziegler – Movement Study (Audio)

この曲も「Mercy」の素材からできています。オルガン、シンセサイザー、コーラスなど。時間の流れをとめてそこで漂っているような、浮遊感を感じます。神秘的な音空間ですね。余談です、ちゃんと低音が効いてなかったらこんな曲はもっと存在感の薄いものになってしまう、ように思います。

 

 

Max Richter – Mirrors (Official Music Video by Yulia Mahr)

この曲なんかは「Mercy」の素材の反転構造になっているんじゃないかなあと思ったりもしています。楽譜的に?音符的に?鏡に映したような?…「Mirror」というタイトルからも。音楽的なことがわからないから推測の域を飛び出せないところが残念です。

 

ほかにも「7.Colour Wheel」も「Mercy」の素材を使っていると聴ける曲です。

 

 

「Mercy」の存在感。前作『VOICES』で終曲としてフィナーレを飾ったと思っていたら、続編『VOICES 2』でDNA(素材)として張り巡らされるようにアルバム全体に浸透していく。聴いてすぐにわかるものから深く読み解くことができたときにわかるようになるものまで。

もしかしたら、これからもヴァリエーションがふえていく、新たに発展していく、そんな曲なのかもしれません。もしかしたら、代表曲「On The Nature Of Daylight」のように、映画をはじめ使われるメディアが増殖していく、そんな曲なのかもしれません。マックス・リヒターにとって、大切なテーマを秘めた一曲であることは、たしかなようです。

 

 

『VOICES』『VOICES 2』の発売形態は、CD輸入盤・デジタル配信となっています。CD日本盤はなくライナーノーツなどで作品を理解できる楽しみはありません。とは言うものの、作品発表時にウェブや誌面でマックス・リヒターのインタビューを見れることが近年増えています。作品を理解するうれしい手引きになります。

 

いくつかご紹介します。

 

「第1条と第2条に謳われている〈自由〉と〈平等〉は、基本的人権の中でも最も重要な理念です。したがって、この条文を繰り返し朗読させることで、自由と平等が世界人権宣言の〈メインテーマ〉というか、〈ベースライン〉だということを強調したかったのです」

「世界人権宣言の理想が現代社会で必ずしも達成されているとは言えないため、それを音楽でどのように表現したらよいのか、というのが発想の出発点です。ふつうオーケストラというと、ヴァイオリンのような高音域のパートが大きな比重を占めています。でも、それとは逆に、低音域を重視した編成が存在してもいい。私自身、低音や低周波のサウンドが好きですしね。そこで、高音域と低音域の比率を逆にした編成、すなわち〈アップ・サイド・ダウン・オーケストラ〉を用いることで、私たちの生きる現代社会が理想とかけ離れた〈反転状態〉になっていることを示したのです。一種のメタファーとしてね」

出典:Mikiki|マックス・リヒター(Max Richter)、人権と正面から向き合ったマーラー風の新作『Voices』を語る より一部抜粋
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/26580

 

 

──『VOICES 2』について。これは構想10年以上という『VOICES』のパート2と考えていいのでしょうか? 2枚のアルバムの相関関係を教えてください。

”『VOICES』は世界人権宣言の言葉を中心に出来上がっているが、まったく言葉を持たないインストゥルメンタルのパートもある。そこは人言宣言の言葉を聴き手が考え、省みるためのスペースだ。

その考えるための場所をさらに広げたのが『VOICES 2』だ。なので僕はこの2枚を一つのプロジェクトとして捉えている。『VOICES』は情報、人権宣言の言葉をそこに存在させることが目的だったが、『VOICES 2』ではその言葉について考えてほしいということだ。その意味では1枚目はマインド(頭脳)で、2枚目はハート(心)で聴くアルバムだ。”

 

──『VOICES 2』を聞いてほしい人はどんな人ですか?

”全員さ(笑)。『VOICES』は本能から生まれたものだ。ここ数年、僕らはいろんな意味で道を失っていたと思う。20世紀の後半は第二次世界大戦の暗い時代からの脱却、復興、人類にとって素晴らしい世界を再構築するべく声明、つまり世界人権宣言という形で一歩を踏み出したわけだが、そのどこかで人間は道を失ってしまった。

近年、世界各国で見られるナショナリズムの台頭、ポピュリズム(大衆迎合)、ゼノフォビア(外国人排斥)といった動きはどれも民主主義、文明社会に逆行するものだ。ある意味、歴史を逆戻りしてしまっている。「僕らはこんなんじゃなかったのではないか?」「こここまで頑張ってやってきたのではなかったのか?」 それをリマインドする曲を作れないものかと思っていた時、この美しい(世界人権宣言の)言葉があった。そこで思ったのさ。一瞬この言葉だけを考える時間を持とう……とね。

ここで謳われているのは可能性、そして未来。それは人の心を鼓舞させる。誰の心をもだ。つまり僕を含め、あらゆる人のためのものなんだ。ライヴで演奏された曲を聴き「人権宣言の存在は知っていたが、その内容を初めて知り、なんと素晴らしいことが謳われているんだろうと知った」というコメントも多くもらった。実際、本当に素晴らしい内容なんだよ。だからこそ『VOICES』は存在するんだ。”

出典:Qetic|Interview MAX RICHTER より一部抜粋
https://qetic.jp/interview/max-richter/393560/

 

 

 

マックス・リヒターは社会派作曲家のくくりに閉じ込める作曲家ではありません。それよりも、音楽のあり方を追求している作曲家なんだと思います。常に実験性をもった音楽づくりをしています。芸術・文学・歴史といったあらゆる要素を取り込みながら現代の音楽として提示している。オリジナル・アルバムにはこういった作家性が如実に現れています。

もし20年くらい前に登場していたら。”癒やし系音楽”のカテゴリーで消耗される不運にみまわれてしまったかもしれない。そのくらいシンプルだし聴いてすぐすっと入ってくるとリスナーは感じてしまうマックス・リスター音楽です。聴き方によってはすぐにすべてわかった感じにもなるし、安直だ浅いと感じる人もいるかもしれません。

音楽に癒やしはあっていいと思います。が、イージー・リスニング的扱いをするにはもったいない。シンプルな旋律や構造といった音楽が最大化して効果を発揮する。一滴のしずくがいつしか大河となるように。ミニマムのなかからマキシマムを生みだすマックス・リヒターの音楽には、人が持っているのと同じ潜在的パワーを感じます。

 

 

 

久石譲楽曲に「Absolution」というのがあります。映画『花戦さ』のために書かれた楽曲「赦し」です。のちに自作品『ASHIAN SYMPHONY』の第4楽章として組み込まれました。経緯や詳細については、興味あったらぜひ紐解いてみてください。

マックス・リヒターの「Mercy」と久石譲の「Absolution」。作家としてかたちにしたいこと伝えたいことは、共鳴するなにかがあるのかもしれませんね。辞書をひくように言葉から探求してみたい。「慈悲」と「赦し」に共通するひとつは[苦しみを取り除く]ことでしょうか。もっと深く深く音楽と言葉によって真意が心のなかに降り積もっていったらいいなと思います。

 

それではまた。

 

reverb.
12月10日は「世界人権デー」です。

reverb.
2021年は初めて月1Overtoneを達成できました。そしてコンサート・レポートのOvertoneから久石譲ベスト2一口コメントまでたくさんいただきました。ありがとうございました。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第55回 「MUJI BGM」を聴く

Posted on 2021/11/01

ふらいすとーんです。

無印良品はお好きですか?

僕はわりによくショッピングします。店舗もネットもあります。日常生活のあらゆるカテゴリーを取りそろえている無印です。人によっては、「MUJIのステーショナリーは愛用してる」「生活雑貨シンプルでかわいい」「日用品かゆいところに手が届くグッズみつけた」「掃除したくなるアイテムそろってる」「飽きのこない洋服で合わせやすい」なんて、これは無印良品を使っているという人も多いかもしれませんね。

購買意欲をさらに促進する?店舗の滞在時間をさらに伸ばす? そんな効果あるのかないのか、お店で流れているオリジナルBMGのお話です。

 

 

お店で買い物していると、気になった商品を手にとって眺めながら、思わずBGMに合わせて鼻歌を歌ってしまったことないですか。あるような気がします。無印良品の店舗で流れている音楽って、爽やか、そよ風、心地いい。そんな楽曲多い気がします。北欧、アイリッシュ、ケルティック。そんなジャンル多い気がします。初めて聴く知らない曲なのに、曲に合わせてメロディ追っかけてよんで鼻歌あわせようとしてしまう。ルンルン気分で買い物するおなじみの光景が浮かんできます。

 

いいセンスだな。いい選曲だな。

そういえばCDも出してるのって

お店で流れてるBGMだよね。

大のMUJIファンは買うだろうね。

……

と通り過ぎてきた音楽です。

 

 

 

2021年5月、こんなニュースが飛び込んできました。新型コロナウィルスの影響でテレワークや在宅時間が増えたこともきっかけになっているようです。

 

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無印良品の店内BGM全327曲が一挙サブスク解禁

今回配信されたのは、2001年以降に発表された、無印良品の店内で流れるBGMの数々。収録されたCDは累計24枚におよび、世界16か国・地域をテーマとした伝統音楽になっている。BGMの楽曲はすべて現地の音楽家が演奏したオリジナル録音で、総数は300曲以上にのぼる。時代に消費される音楽とは一味違う、暮らしに寄り添った音楽の魅力を堪能できる。

楽曲の紹介は以下のとおり。〈BGM2〉から〈BGM25〉までの計327曲、16か国が、5月19日より順次配信されている。

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出典:Mikiki|無印良品の店内BGM全327曲が一挙サブスク解禁 より一部抜粋
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/28550

 

 

聴いてみたい!

心動かされたのは「BGMの楽曲はすべて現地の音楽家が演奏したオリジナル録音」、初めて知りました。そうなんだ、その土地に根づいている楽器と楽曲が収録されている。

久石譲音楽が好きな人は、あらゆる楽曲に散りばめられた民族楽器にも興味もつ人いると思います。「この曲にはこんな楽器が使われてるんだ」新鮮な出会いと喜ぶ耳って、これまでに何回も経験ありましたよね。エスニックな楽器とエスニックな色彩は、久石譲音楽のきらりと光るエッセンスです。

『となりのトトロ』のバグパイプ、『魔女の宅急便』や『ハウルの動く城』のアコーディオン、『風立ちぬ』のバラライヤやマンドリン、『かぐや姫の物語』のケルティックハープ、などなど。すぐに思い浮かぶスタジオジブリ作品だけでもたくさん使われています。

また、登場が多いものでいうと、シタール、リュート、ティンホイッスル、そしてエスニックで多彩なパーカッション群。久石譲ソロアルバムからサウンドトラックまで、必ずどこかにひと味効いたアクセントな音色ありますね。

 

 

 

同じWebニュースから。

 

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■楽曲紹介
(BGM NO./タイトル/国/制作年/紹介文)

・BGM2/Paris/フランス/2001/パリのメトロミュージシャンによる演奏を集めました。
・BGM3/Sicily/イタリア/2003/シチリアを中心とした南イタリアのトラディショナルミュージックです。
・BGM4/Ireland/アイルランド/2003/アイリッシュケルトの民謡音楽を集めました。
・BGM5/Puerto Rico/プエルトリコ/2004/サルサの原点、カリブ海プエルトリコの素朴な音楽です。
・BGM6/Andalucia/スペイン/2004/フラメンコのメッカ、セビリアの民族音楽です。
・BGM7/Scotland/イギリス/2005/スコットランドのトラディショナルミュージックです。
・BGM8/Stockholm/スウェーデン/2005/白夜の国、スウェーデンの透明な光から生まれた音楽です。
・BGM9/Naples/イタリア/2006/南イタリア・ナポリで歌い継がれた伝統音楽です。
・BGM10/Buenos Aires/アルゼンチン/2006/タンゴ発祥の地、アルゼンチン ブエノスアイレスを訪れ、タンゴの名曲をモダンアレンジしました。

 

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出典:Mikiki|無印良品の店内BGM全327曲が一挙サブスク解禁 より一部抜粋
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/28550

(以降、全BMG25までつづく)

 

 

 

聴いてみたい!

心動かされたのは、……ということは「世界各国その地域の伝統音楽が現地の楽器と音楽家によって録音されたもの」純正100%、そのまじりっけなしに誘惑されずにはいられません。

久石譲音楽に親しんできた人なら、曲で使用された民族楽器やそこからつながって民族音楽にまで興味広がっていくことあります。僕も昔からケルティックな音楽は好きでインストはもちろん北欧ポップスまで。いや違う待てよ、昔から好きなんじゃなくて、久石譲音楽の影響でいつのまにか好きになっていたのかもしれない。そう思うほどです。

 

 

そして今回。

サブスク解禁全327曲聴きました!楽しかったですよ。けっこうアルバムごとに◎○△ポイント付けたり、アルバムの特徴をひと言メモしたり、お気に入り曲選ぶならこの曲かなとチェックしたり。

正直に告白すると、僕は楽器の音色を聴きたかったんです。もちろんどんな曲があるのか楽しみもあります。でも楽曲的な良さを見つけたい、よりも、楽器の音色のうまみを堪能したい。こっちのほうが動機としては勝っていました。変わってますね。

ひとつ例を出すと、バグパイプやケルティックハープ(アイリッシュハープ)。久石譲曲ではいい塩梅のアクセントとして使われています。いい塩梅=「くぅーっ!ニクい!あるのとないのじゃ大違い!効いてる!神チョイスでしょ!」。ここにあるMUJI BGMは、水を得た魚のように、民族楽器たちが主役となって持ち味を充分に発揮しながら奏でられています。そこが聴きたかった。ケルティックハープ一色に包まれるっていいなあ、曲想によってはこんな音色ニュアンスもあるんだ。そんなうまみを余すところなく堪能したい、できます。

 

 

素材を活かした10曲選びました。

全327曲聴いたなかから選りすぐりの!とはいきませんが、ちょっと以上に気になった曲たちからご紹介します。楽器や曲想でなるべくまんべんなく。もちろん僕の好みは、いかんせん潜在的に反映されてしまっていることは予め目をつぶってください。そう思って耳をひらいてくれるとうれしいです。

 

 

Douce Nuit

 

・BGM2/Paris/フランス/2001/パリのメトロミュージシャンによる演奏

曲名見ただけならわからないですよね。聴いたらわかる「きよしこの夜」です。爽やかでいいですね。アルバム順に聴いていったので走りだしから驚きました。カバーもあるの?クリスマス曲もあるの?と。完走してから言えること、全327曲中クリスマス曲はたぶんこの1曲だけです。誰もが知ってるスタンダードナンバーはほかになかったと思います。だから、あまり必死に探そうとしないでくださいね。徒労におわってしまうかもしれません。

(BGM1は国内ミュージシャンたちによるオリジナル楽曲で制作されています。細野晴臣さんとかだったかな。1980-2000年の店内BGMを集めたCD3枚組だったかな。BGM1アルバムは解禁されていません。そこから次企画として「世界の伝統音楽」シリーズ BGM2が始まっているようです。)

 

 

Passeggiando per Lipari

・BGM3/Sicily/イタリア/2003/シチリアを中心とした南イタリアのトラディショナルミュージック

ボンジョルノ~! そんな賑やかしい声たち聞こえてきそうです。カラッとした青い空にカラッとしたギターの音色。自然と体も弾みそうなリズミカルさです。なんだか、ピクニック、レクレーション、とにかく、屋外に飛びだしたいモードです。

 

 

Sidh Beag agus Sidh Mor

・BGM4/Ireland/アイルランド/2003/アイリッシュケルトの民謡音楽

いいなあ、ケルティックハープ。とっても満足です。曲想もいいですよね。ハープって高音はしゃきっとしてるし低音はぼーんとしてる。弦をはじく強さでも質感やニュアンスが変わって、そういうところも聴き入ってしまいます。

 

 

Andrew Carr / Co a ni mire ri Mairi

・BGM7/Scotland/イギリス/2005/スコットランドのトラディショナルミュージック

あらまた、ケルティックハープ。2曲からなるのかな。風のように爽やかなんだけど、風の流れで起こるちょっとした小さいうねり、そんなグルーヴ感も感じます。

 

 

Le Dénicheur

・BGM12/Paris/フランス/2007/パリを代表する音楽「ミュゼット」を収録

ふかふか焼きたてのパンの匂いたちこめそうです。こんな曲を聴きながら朝の市場で買い物楽しみたい。世界は違うけれど、ソフィーとマルクルみたいに。あまり尖ってないまろやかなアコーディオンの音色もいいです。オープンカフェでとびきりのコーヒー。

 

 

Monk’s Jig – Donnybrook Fair – Boys of the town

・BGM17/Ireland/アイルランド/2012/アイルランドに根ざしたケルトミュージック

アイルランドではヴァイオリンのことをフィドルというようです。楽器は一緒で呼び方と演奏するジャンルが違うのかな。シンプルに言うと、クラシック音楽を演奏するならヴァイオリン、民族音楽を演奏するならフィドルと使い分けてるのかな。カントリー調のギターのカッティング、後半に出てくる音程感のない乾いたパーカッションもいいですね。もしこのあたりが好きならシークレット・ガーデンというアーティストもおすすめです。

 

 

ARKU DANTZA

・BGM22/Basque/スペイン/2017/食と芸術のバスク地方

なんの楽器だろう? わからないまま、コロンと丸いおもしろい音色が好みです。長調と短調のメロディが入れ替わり進みます。『菊次郎の夏』が思い浮かびそうな音色です、なんの楽器だろう?

 

 

Aijā žūžū (lullaby)

・BGM23/Latvia/ラトビア/2018/「バルトの貴婦人」とうたわれる美しい国ラトビア

バグパイプというと、スコットランドやアイルランドのイメージがあります。ラトビア?これバグパイプだよね?と調べました。実はラトビアなどバルト諸国でも盛んな楽器のようです。世界って広い。

 

 

映画『となりのトトロ』のオープニング主題歌「さんぽ」は、イメージアルバムからサウンドトラックへある楽器が追加されています。もともとイントロは、太鼓とシンバルの行進曲のように完成していました。映画製作中のある日、バグパイプの入ったものが宮崎駿監督に届けられたとき、監督は一瞬でそれが気に入ったそうです。たしかに、バグパイプがあるのとないの、印象もワクワク感もだいぶん違いますね。ぜひ聴き比べてみてください。

 

久石譲 『となりのトトロ サウンドトラック集』

 

 

 

Pääskyläinen

・BGM 24/Finland/フィンランド/2019/森と湖の国フィンランド

きれいなコーラスワークです。透明感いっぱいです。

アルバムは各13~15曲ほど収録されています。ベースはインストゥルメンタル曲中心です、ボーカル曲は全体の1~2割くらいあると思います。今回CDを手にとっていないサブスクで聴いたので、楽器のクレジットなんかは全くわかりません。もし鳴っている楽器と書いている楽器違っていたらすいません…もう終わりかけのここで言う?!…。

 

 

Mountain Jigs

・BGM 25/Ireland/アイルランド/2020/ケルト文化が根ざした国

ケルト音楽の笛と一口に言っても、そこにはたくさんの種類があるみたいです。ティンホイッスルのような高音も鳴っていますけれど、どの笛いくつの笛が楽しくアンサンブルしているんでしょうね。

 

from MUJI BGM YouTube

 

 

気になる土地から。

好きな国、気になる地域の音楽から聴いてみるのもいいと思います。ちょっとした旅行気分ですね。メモからほかの楽器のことをいうと、BGM5 Puerto RicoやBGM6 Andaluciaはギター、BGM10 Buenos Airesはタンゴ、BGM20 Limaはカスタネット、BGM21 Bulgariaはブルガリアン、そんな特徴あったと思います。

 

気になる季節から。

楽曲配信プラットフォームはほぼ完備されています。日本国内はもちろん世界の各配信サービスで提供されているようです。そしてMUJIでは、どの地域の音楽が一番聴かれているか、どの国で一番聴かれているか、そんな追跡リサーチもしっかりしているようです。いつか見た制作者インタビューでは、台北でもっともMUJI BGM聴かれてるとあった、そう記憶しています。

一挙24枚327曲は聴けない、順番に聴いていくほど時間もない。そんな人にはMUJI公式が提供しているSpotifyプレイリストおすすめです。

 

 

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■Spotifyプレイリスト
ボーカルの入らない環境音楽として、自宅でのテレワークやリラックス・タイムに音楽をお楽しみいただけるよう、BGMシリーズのなかから、様々なシチュエーションに応じてお聞きいただけるプレイリストを定期的に更新します。Spotifyプレイリストは、年に4回更新予定です。

30曲 – 1時間40分
BGM2~25のうち、〈初夏を過ごす〉をコンセプトに楽曲をプレイリストとしてまとめました。
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出典:Mikiki|無印良品の店内BGM全327曲が一挙サブスク解禁 より一部抜粋
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/28550

 

……

夏プレイリストは上のリンクでわかります。季節はめぐり、今は秋コレクションに変わっています。

 

 

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MUJI BGM Autumn
プレイリスト • 2021
37曲 • 2時間

「MUJI BGM」は、様々な国をテーマにしたBGM2~25を絶賛配信中。季節は秋へと移り変わり「芸術の秋」「食の秋」というイメージからやや哀愁の感じられるような楽曲をセレクトしたプレイリストになっております。「MUJI BGM」のプレイリストでは様々なシチュエーションに応じてお聞きいただけるプレイリストを定期的に更新しております。是非お聞きください。
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出典:MUJI BGM 配信|無印良品
https://www.muji.com/jp/ja/stories/other/712536

(Autumn Playlist ※2021年11月1日現在)

 

 

公式サイトにはCDアルバム購入ページもあります。アルバム1枚990円(税込)です。各曲30秒ずつのダイジェスト視聴もできるようです。最新作BGM26はワルシャワなんですね。けっこう根強い人気を誇っているBGMシリーズのようで、コンプリートしている人、新作を楽しみにしている人も多いみたいです。また、冬のプレイリストも楽しみですね。季節の変わり目とプレイリストの変わり目はわからないので気になる人はチェックです。毎年季節ごとに少しずつ内容も更新されていくんだと思います。

 

 

 

むすび。

僕はマイルドな言い方をして、かなり個性的な興味の入口でMUJI BGMを聴き楽しみました。むずかしい顔をしてガチで聴いてやる、そんな音楽じゃないのかもしれません。本格的かどうかはわかりませんが本場ものなのはたしかです。たっぷり収穫ありましたよ。

このご時世にからめていろいろなことも書けます。気軽に旅行に行けない今だからとか、テレワークや在宅でおうち時間増えた今だからとか、ちょっとでもリラックス安らげる時間がほしい今だからとか。もちろんそんなニーズもしっかりつかんだ人気で聴かれているだろうMUJI BGMです。

 

今回思ったことは3つです。

〈土地を楽しむ音楽〉だなということ。本当ならその土地に行かないと聴けない曲を楽しむことができます。実際に気温や湿度の影響などで、その土地から持ち運べない楽器や音楽ってあります。日本の尺八なんかもそうです。とてもデリケートな楽器らしいです。旅行気分はもちろん、人生で訪れるには余りある土地を楽しむ音楽です。

〈暮らしを聴く音楽〉だなということ。その土地に根づいている音楽だからこそ、暮らす人々の生活音すら一緒になって聞こえてきそうです。伝統音楽には、宗教や風習と結びついて受け継がれてきたものもあると思います。どんなときによく演奏される音楽なのかな? どんな人たちに紡がれてきた音楽なのかな? そう想像してみるのもおもしろいです。

〈日常を楽しむ音楽〉だなということ。個人の半径3メートル以内でみてみると、料理しながら掃除しながら、いつもの家事を楽しく味つけしてくれそうです。読書しながらエクササイズしながら、頭も体もすっきりして効果あがりそうです。個人の半径3メートルから広げてみてみると、誰かと一緒に時間を過ごしたくなる、そんな音楽のようでもあります。会話が弾みそうとか笑顔になりそうとか。不思議ですよね。個人でもちゃんと満たされる。そして誰かとスペースを共有したくなる音楽。

ちょっと部屋に花を飾るように、ちょっと日常の変化を感じてみる。1曲聴いただけでもそんな気分になれそうなMUJI BMGのお話でした。

 

 

Clothiers March

おやすみなさいのケルティックハープ。

 

それではまた。

 

reverb.
無添加な音楽はきっと体にも心にもいい♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第54回 久石譲ベストアルバム「Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol.2」を聴く

Posted on 2021/10/21

ふらいすとーんです。

久石譲キャリア初、世界同日リリースのベストアルバム『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』は2020年2月に届けられました。世界共通盤(各国盤に対訳ライナーノーツ封入)、デジタル配信、収録曲と連動した新しいミュージックビデオの公開など。これまでの活動を集大成してお祝いしたいような永久保存盤の登場でした。

それから約1年半。ベクトルを同じくした第2弾ベストアルバム『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi』が2021年8月にリリースされました。

 

 

久しぶりに一曲一曲ゆっくり聴きました。ファンにとっても節目のような心持ちで、初めて聴いたときのあの感動や、懐かしさ、新しく抱く感情もあったりしながら、久石譲音楽と共に歩んできた時間に思い馳せる、そんなベスト盤です。

コンサートでプログラムされるときを除いて、昔の曲について振り返ること、今感じること、今記すこと。いい機会だと思って、このベスト発売当時ツイッターに一曲ごとコメントしていきました。今回はそれをまとめたものです。一般的な楽曲解説にはなっていないので、ぜひオリジナル盤やベスト盤のライナーノーツなどで、詳しくは紐解いてもらえたらなと思います。

いちファンが語るその曲のこと(魅力・思い出・解説)です。あなたが思うその曲のこと(魅力・思い出・解説)と少しでも共感することがあったならうれしいです。ツイートしたそのままをご紹介します。

 

……

という趣旨で第1弾ベストアルバムをOvertoneしました。

 

 

 

第2弾ベストアルバムでは、一口コメント大募集企画!全28曲から好きな1曲1ツイート「この曲好き!」その魅力・思い出を140文字で。よせがきのように集まったらいいなとTwitterで募集しました。

 

 

tendoさん(@tendo01)
ken*さん(@bellaortensia)
むーんさん(@HisaishiM)
yasu-da-joeさん(@yasu-da-joe)
スラスイさん(@sura_DTMer)
まーくさん(@masakzk)
森智香RRLRssさん(@tomo_ringring)
ふじかさん(@fujica_30k)

 

ご参加ありがとうございます!久石譲愛あふれる方たちばかりです。ぜひこの機会に勢いでもってFFつながったりして、ファンの共感できる場所が広がっていったらいいなと思います。

 

 

Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2

【Disc1】
01. ANGEL DOLL (映画『キッズ・リターン』より)
02. la pioggia (映画『時雨の記』より)
03. il porco rosso (映画『紅の豚』より)
04. Lost Sheep on the bed
05. FOR YOU (映画『水の旅人 侍KIDS』より)
06. White Night
07. DA-MA-SHI-E
08. Departures -memory- (映画『おくりびと』より)
09. TWO OF US (映画『ふたり』より)
10. Rain Garden
11. Friends (TOYOTA「クラウン マジェスタ」CMソング)
12. Summer (映画『菊次郎の夏』より)
13. Les Aventuriers
14. Kids Return (映画『キッズ・リターン』より) ※初収録

【Disc2】
01. Links
02. VIEW OF SILENCE
03. Nocturne
04. Silence (住友ゴム工業「デジタイヤ プレミアム VEURO」CMソング)
05. MKWAJU 1981-2009
06. Ashitaka and San (映画『もののけ姫』より)
07. The Rain (映画『菊次郎の夏』より)
08. DEAD for Strings, Perc., Harpe and Piano: 1. D.e.a.d
09. Tango X.T.C. (映画『はるか、ノスタルジィ』より)
10. The Little House (映画『小さいおうち』より)
11. HANA-BI (映画『HANA-BI』より) ※初収録
12. Silencio de Parc Güell
13. WAVE
14. World Dreams

 

 

 

Jump to the point
▽アルバム全体
▽DISC 1 収録曲
▽DISC 2 収録曲

 

全体

初めて見たものを親だと思うヒナのように、ある日僕らは運命的に久石譲音楽に出会った。『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol.2』このベストアルバムにはそんな出会いの瞬間が詰まっている。

アビー・ロード・スタジオにてマスタリグ。Songs of …”HOPE”つながり?! ベスト1はどこだろう? 曲ごとの調整はもちろんハイレゾ音源にも対応した最高品質と職人エンジニア。僕のオーディオ装置と耳はハイスペックじゃないけれど。聴く心持ちはハイスペックでいたい。はい。

ひとつの音からたくさんを聴くピアノ曲。たくさんの音からひとつを聴くオーケストラ・アンサンブル曲。たっぷり入っています。全28曲なんと18枚のアルバムから贅沢セレクト&初収録2曲!たっぷり入っています。

このアーティストの次の作品が出たらとにかく買って聴かなくちゃ。その年月。がっかりしたこともあったけれど、また次を期待して楽しみに待たなくちゃ。その信頼。新譜出るたびにそのときの自分との距離感で測りながら一緒に歩んできた。その足跡。

「でもやっぱり自分で作ったプレイリストの方が最強ですね」結局それかい(ken*)

前アルバムにも今アルバムにも「坂の上の雲」や「人体」シリーズ、「ぴあの」などNHK関係のものが収録されてない?編集さん、NHKはお嫌い?それとも何か権利関係?個人的には「Stand Alone」(坂の上の雲)や「THE INNERS」(人体Ⅰ)を入れて欲しかったなぁ。(むーん)

1980年代から現在まで、振り返れば私の人生の殆どは久石さんの音楽と共に歩んでいる。何とも幸せな時期に生まれたんだろうとベストアルバムを聴くとしみじみ感じる。この先もずっと久石さんの音楽を聴いて歩んで生きたい。(むーん)

久石譲さんは僕の人生です。(スラスイ)

 

 

 

DISC 1

ANGEL DOLL

ミディアムテンポのKids Returnのメロディは、うまくコントロールできないパワーや感情をさとしてくれるよう。久石譲いわく「歌おうと思うと歌えないくらい、拒否しているメロディ」は青春の時間そのもののよう。

映画『キッズ・リターン』の前半部分で、喫茶店の少年が店員に手紙と一緒に手渡したのが天使の人形だ。 この曲では「Kids Return」のメインメロディーをギターが演奏する。なぜか夕日が映し出すイメージが描かれる曲だ。ドキドキしながらも、一方では寂しい、わからない感じ。(tendo)

The 久石さん的な和音の響きが堪らないですね……ミディアムテンポで進行する『Kids Return』のメロディは遣り切れなさと落ち着きが同時に存在しているかのように思う。(スラスイ)

 

la pioggia

イタリア語で”雨”。イントロはピアノの雨粒のよう。大人の恋物語を描いた映画主題曲。古都を舞台に日本情緒ある映像と旋律。だけどなんでか第一印象から門出の春のイメージが染みついている。最新ミュージックビデオ後半の桜色した映像うれしかった。ずっとこんな色してた。

イタリア語で”雨”。歌い出しのストリングスとやさしく合いの手入れるハープ。あるときマーラーの「アダージェット」につながった。映画『ヴェニスに死す』で印象的な美しい曲。久石譲のなかでは深いところでなにかつながっているのかもしれない、いないのかもしれない。

心が本当に楽になる曲だ。 弦楽器が暖かく包み込まれていて、温かい雰囲気を醸し出している。 個人的には近藤浩志さんのアルバム『ARCANTO』での音源が好きだ。この曲は少しゆっくり演奏するともっと感じが出る曲のようだ。(tendo)

『Rain Garden』が雨の陰鬱な表情を彩るのであれば,こちらは雨露の美しさ,雫の輝き,そして雨の優しい表情を彩っているように思う。雨粒のようなPianoと,それを優しく包み込む音色の温かみが深く沁みます。(スラスイ)

 

il porco rosso

はやく大人になりたい子どもと、いつまでもピュアでいたい大人のための曲。このバージョンは、ジャジーでエレガントな美しいセッション。「カッコイイとは、こういうことさ。」

すでにポピュラーになっていた大人も楽しめるジブリ映画。そこへ大人も楽しめるジブリ音楽を印象づけた曲かもしれない。決定打ともいえるかも。いつの時代にもどこの国にも国民的映画には素敵な音楽がある。「俺達は運命共同体ってわけだ」「パートナーってわけね」

「TWO OF US」がモチーフになった曲ではないかと思ったことがある。しかし、ジャズの香りが漂う全く違う曲になった。個人的にこの曲をピアノで演奏していて諦めたことがある。いつかまた挑戦して必ず素敵に演奏したい曲だ。(tendo)

ジャジーな一曲。映画紅の豚も大好きで、2019年の久石譲&WDOのコンサートのアンコールでこの曲が流れ始めた瞬間大号泣しました。ピアノソロから始まり途中から楽器隊が入ってくるverが1番好き。この曲には生きる中で大切なことが詰まっているなぁと感じます。(森智香RRLRss)

優雅で大人の雰囲気漂うジャジーな楽曲。後半の即興演奏的な旋律も魅力的。ロマンチシズムに浸る夜。(スラスイ)

 

Lost Sheep on the bed

ゆっくりと力ぬいて身も心もあずけるベッド。メロディと和音はどっちもN極の磁石のよう付かずにそれる彷徨感あります。曲に惹かれすぎて耳が覚めないように。迷える羊もいつしか眠りにつきそうです。

1分5秒から雰囲気が一度変わるが、この部分が好きだ。夢の国へとゆっくり浸っていく感じがする。暖かい日差しの下で平和に眠った猫を見守るような感じの曲だ。(tendo)

微睡むような旋律が魅力的。思わず夢見心地に。昼寝前に聴ききたい楽曲。(スラスイ)

 

FOR YOU

愛と夢と希望と。もしも…「久石譲が音楽を担当したディズニー映画」そんな架空の話をしても、けっこう信じてしまうかもしれない。ハートウォーミングに素敵にまっすぐにオーケストラは歌う。

ハリウッドにはスピルバーグもディズニーもいた。ファンタジーな映像と音楽は等しかった。もしかしたら、日本には久石譲のファンタジー音楽にこたえる映像に恵まれなかったのかも。スタジオジブリ作品をのぞいては。そんな裏返しな必然性すら感じてしまう王道の名曲です。

この曲が私は大好き。特に後半3分過ぎぐらいからのストリングス。まるで大空を滑空するかのような響きを聴くと自然と背筋がゾクゾクして涙が出てくる。だから私は、この曲を車の運転中は聴かないように気を付けている(笑)(むーん)

『MELODY Blvd.』アルバムの一番目の曲である「I Believe In You」も僕にとって大きな力になる素敵な歌でしたが、「FOR YOU」の英文歌詞バージョンでした。「あなたになら…」の歌も日本語歌詞バージョンです。すべてのバージョンが素敵です。久石譲さんは知れば知るほど驚きますね!(tendo)

自然と涙が溢れてくるような,そのような感情を抱かせてくれる楽曲。雨が降り止み,次第に太陽の光が差し込んでくる情景が思い浮かぶ。水のように澄み渡ったオーケストレーションが魅力的。高音のStringsとHornの掛け合いに感極まる瞬間。Solo Violin&Piano ver.も素敵です。(スラスイ)

 

White Night

とってもあったかい。ピアノとストリングスとベルと。私にはとっておきのクリスマス・ソングあるんだ。それだけで久石譲ファンはほっこりしてる。そしてこう思ってる。たくさんの人に聴いてほしい、ちょっとした温かさをわけてあげられると思うよと。

ホワイトクリスマスが思い浮かぶ曲です。中盤部以降はベルも鳴っています。いろいろな冬の幸せだった思い出が、一つ二つ思い出させる曲ですね。久石譲の曲には、心をなでるあたたかい力があるようです。(tendo)

出会ったその日から,自分のクリスマスはこの楽曲と共にある。冬の“あたたかさ”を捉えた,和やかで優しい楽曲。一変して転調後は,賑やかに煌めく聖夜の街に目を輝かせているような,美しい情景が思い浮かんでくる。最後の鐘の響きと共に,26日を迎えています。(スラスイ)

 

DA・MA・SHI・絵

こちら起伏と弾力感に富んだロンドン交響楽団の演奏、風圧がたまらない。そこから約10年。引き締まったソリッドなWDOの演奏、対向配置の音響がたまらない。『Spirited Away Suite』CD収録のほうも聴いてみてほしい。だましかたも進化していますよ。きっと。

Disc1の真ん中のトラックにミニマル作品が挟まれていて異色だと感じました。オランダの画家エッシャーの作品をモチーフに作られた作品です。どの楽器に耳を傾けるかによって異なって聴こえる魅力的な曲です。私は特に金管楽器が好みですね!(tendo)

複数の旋律が積み重なり,変化していく様はまさにEscherのだまし絵。幾何学的なミニマル楽曲。対向配置での演奏もまた魅力的。炸裂する金管が非常にコンサート映えすると個人的に……何度聴いても飽きません。(スラスイ)

 

おくりびと ~memory~

言葉にならない想いを、言葉では言い尽くせない想いを、ピアノとチェロが語ってくれる。草原をなでる優しい風のように。いつまでも上書きされない思い出のまま。

試写会で映画を観て、エンドロールが終わったとき、自然と拍手があったのを覚えてます。この時点でまだサントラが未発売で、発売までしばらくサビのメロディを忘れないように、思い出しては頭の中で再生、思い出しては頭の中で再生を、繰り返しておりました。(ken*)

美しいメロディーを目を閉じて聴いていると、私たちを慰めてくれるような気もして、人生の楽しさを歌っているようでもある。映画のオリジナルサウンドトラックであるにもかかわらず、コンサートの演奏曲やソロアルバムの収録曲の間に挟まれても違和感がない。(tendo)

全てを包み込むような温かみのある音色で,情緒的に歌うCelloが非常に美しい。えも言われぬ幸福感に溢れる楽曲。人生に寄り添い,在りし日を偲ぶメロディ。(スラスイ)

 

TWO OF US

映画『ふたり』メインテーマ。いくつかのボーカル曲もある。胸がしめつけられる。そして涙腺の解放へ。僕は、このバージョンや近年のWDO[HOPE]ver.で、高ぶった演奏の終わりと拍手との一瞬の合間に、すすり泣きや涙でむせぶ観客席の余韻を耳にしなかったことはない。

人には原点というものがあると思うが、私の原点は名アルバム「My Lost City」であり、中でも最もお気に入りだったこの曲である。悲しい三重奏のこの曲を聴いた時、私は久石さんに魅入られてしまった。その日から30年、私は久石さんに実らぬ片想いを続けている。(むーん)

W.D.O.2017の韓国公演で僕の涙と鼻水をぬぐった曲です。弦楽器の非常に魅力的なものを感じましたね!ピアノに弦楽器の哀しい音色が加わると、ハマるしかない曲です。(tendo)

感傷的なメロディが涙を誘う楽曲。啜り泣くような弦の響に思わず胸がつかえる。(スラスイ)

 

Rain Garden

音楽で中間色の風合いを表現するのってむずかしいと思う。鮮やかでくっきりした久石譲曲の集まる『ピアノ・ストーリーズ』シリーズにこんな曲は欠かせない。輪郭線のはっきりしない濃淡ゆらぐ水彩音のよう。素敵な間奏曲のひととき。

Piano StoriesⅡで最後に好きになった曲。この曲が好きなった瞬間は、自分史上はじめて全曲好きなアルバムが誕生した瞬間。(ken*)

クラシックスタイルの曲だ。ピアノのみで構成された曲で、久石譲の演奏を心ゆくまで楽しむことができる。少し暗くて憂鬱な雰囲気の曲だが、雨の日に趣をもって聴くことができる曲だ。(tendo)

印象主義音楽を思わせるような,物憂げで湿度の高い,涼しげな楽曲。長2度の響きが心地よくてクセになる。梅雨の時期にこの楽曲を聴いて「雨の日も悪くないなぁ」と思ったり思わなかったり。しめやかに降る雨と共に,心落ち着く安らぎのひととき。ラヴェル好きは必聴。(スラスイ)

 

Friends
ベストアルバム全28曲うち6曲のライヴ音源が収録されている。1999年から2017年にわたる。そこにあるのは録音物というよりも出来事なんだと思った。二度と起こることのないその時だけの出来事。一期一会のフレンズ。かけがえのない時間。そして記憶のぬくもり。

ライブバージョンゆえ、鍵盤に顔を近づけ眉をハの字にして、情熱的にピアノを弾く姿が思い浮かびます。(ken*)

この曲もCM曲として始まった曲だ。上品で洗練された雰囲気の曲です。『PIANO STORIES II ~The Wind of Life~』のアルバムに収録されたオーケストラバージョンも良いと思う。子供の頃一緒に遊びまわった友達よりは、大人になってお酒を一杯飲む友達の感じがする、そんな曲。(tendo)

優しい旋律に思い出が溢れ出す。この曲を聴きながら,旧友と語らう日を楽しみに生きていく。(スラスイ)

 

Summer

「こんな曲が聴きたかったんだ私」日本人の夏心を射とめた曲。サントラはじめ、ピアノソロ、アンサンブル、オーケストラ、ギターまで。いろいろなバージョンは、いろいろな夏の風景をみせてくれる。私の夏の主旋律。

久石譲の音楽に本格的にはまるきっかけになった曲だと思う。この曲の魅力はあまりにも多く計り知れない。このアルバムに収録された曲は『Shoot The Violist』アルバムのバージョンで、マリンバの弾む魅力が存分に感じられる。(tendo)

夏の情感を見事に描いた,夏を代表する楽曲。蒸し暑い昼下がりも,この楽曲を聴けば忽ち“思い出の夏”の1ページに。様々なver.によって多様な表情を見せつつ,何気ない夏の日常にノスタルジックな感情を抱かせてくれるこの楽曲が大好きです。(スラスイ)

 

Les Aventuriers

魅惑の5拍子はノンストップに疾走する。狂熱的に聴き惚れたあとには『Symphonic Suite “Kikiʼs Delivery Service”』CD収録のほうも聴いてみてほしい。こんな改訂あったんだとコロンブスの卵です。弦楽は面舵いっぱい!取り舵いっぱい!冒険者たちの夢への航海。

コンサートでもよく演奏された曲ですね。独特のリズム感と休まない疾走で気分が急上昇します。緊張感とスリルが感じられる曲です。1967年のフランス映画『冒険者たち』にインスピレーションを受けて作曲したという。比較して聴いてみるのも面白いですね。(tendo)

活発な5拍子楽曲。Cello&Marimbaのリズムで身体を動かしたくなる衝動に襲われる。メロディもリズムもひたすらに格好良い![Woman] ver.での上行するViolaも魅力的。(スラスイ)

 

Kids Return

初収録!WDO2017ライヴ音源。ピアノとストリングスがぶつかり合うパッションと進化した律動に熱くなる。曲がフィニッシュしても湧き起こったエネルギーと高揚感をもてあます。ひたむきの青い春。

『Kids Return』は迷い挫折する2人の友達を通じて残酷な現実を描いた映画でしたが、最後のシーンのセリフでは「まだ始まってもいない」という希望を物語ります。青春の唐突さと自分の道を淡々と歩いていく勇気を感じられる曲です。(tendo)

痛い程に剥き出しの感情,迸る情熱と,それを如何に取り扱うべきか何処に持っていくべきか分からない,不器用で熱い青春を思い浮かべる楽曲。鬼気迫るStringsと力強いPiano……衝突し,迫ってくる両者に思わず圧倒されてしまいます。緩急とメロディの受け渡しが秀逸。(スラスイ)

 

 

 

 

 

DISC 2

Links

まさに雷に打たれたような衝撃だった。それまでに聴いてきたどの久石譲音楽とも違っていたから。戸惑ったファンもいれば歓喜したファンもいる。次のステージを宣言した瞬間だった。黄色い声援が崇高な拍手喝采へと変わる時代の転換点のように。

今振り返ってみれば『Minima_Rhythm』は装置的なアルバムだった。ファンに変化を求めたし新しい魅力を提示した。そんなきっかけや引き金になっていたと時間が証明する。15拍子の求心力は大きく広がっていく、つながっていく。ミニマリズムのモニュメント。

私は本当に好きな曲だ。ミニマル曲だが、街を歩く時にもよく口ずさんだりする。8分の15拍子で複雑な変拍子を持つ曲だが、そんな複雑な曲とは思えないほど聴きやすいし、リズム感のある曲だ。(tendo)

快速の15/8拍子。聴くだけでニヤニヤするミニマル楽曲。WDO2018での衝撃と感動は忘れません……(スラスイ)

 

VIEW OF SILENCE

羽生結弦選手「Hope&Legacy」のおかげで新たな生命とファンを獲得した幸福な曲。今も昔もピアノとストリングスという構成には強いこだわり。久石譲いわく”「内なる情熱」というようなエモーショナルな部分が引き出せたと思う”。至芸の弦音(つるおと)美しい。

ザ・久石譲と言ってもいい名曲。タイトルとは逆説的に、情熱をさらけ出すような演奏。おそらく「VIEW」は表向き、とか目に見える部分という意味で、そこはSilenceだけど、目に見えない部分があって、そこはViolenceかもしれねえぜ?って言ってるんだと思ってます。(ken*)

ピアノとString Orchestraが本当によく似合う素敵な曲だ。ありがたいことに韓国公演前に日本のフィギュアスケート羽生結弦選手の曲選定でこの曲が再注目され、W.D.O.2017でプログラムされ素晴らしい演奏を直接聴くことができた。(tendo)

力強い打鍵,情熱的なメロディの交差する熱い楽曲。緊迫感と熱情を秘めて駆け抜ける旋律に鳥肌が立つ。(スラスイ)

 

Nocturne

ノンタイアップなオリジナル楽曲だから輝く曲というのがある。もし映像にあわせてしまったらメロウにすぎるかもしれない。いつまでもそのままでいてほしい。純度の高い夜想曲は微かに照らしまどろむ。

単曲買いする習慣だったなら再会しないような曲かもしれない。でも、わからなかったものがわかる、いや、うまくつかめなかったものがしっくりくる。そんな時はきっと訪れる。うれしい再会の機会はとっておきたい。だから作品はいつも全曲買い。

『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』のために作曲されたピアノソロ曲で、C♯minorからなる曲だ。ショパンのNocturne No.20と比べて聴いてみると面白い。寂しく悲劇的な雰囲気の曲のようだが、久石譲ならではの明るく希望に満ちたメロディーがあちこちに隠れている。(tendo)

美しさと優しさを秘めた夜想曲。時に切なく,時にあたたかく。この曲と共に,心ゆくまで夜を堪能したい。(スラスイ)

 

Silence

曲名なぞって小さく弱く弾いてはいけない曲。水を打ったような静けさには、ぴんと糸の張った緊張感がある。そのエネルギーがピアノのパッションになる。音楽だけに耳を傾けるためのサイレンス、なのかもしれない。

この曲はダンロップVEUROのCM曲として作曲された。これと同時に久石譲のオリジナルアルバム『ETUDE』の1曲目である。 2分34秒からの部分は圧巻だ。15秒で勝負するCM曲から始まったというのが信じられない完成度とクールな曲だ。(tendo)

内声和音とオクターブのエチュード。静かに夜を語る曲想,かと思いきや情熱を秘めたオクターブの旋律が美しく響く……月光に照らされながら聴きたい楽曲。(スラスイ)

 

MKWAJU 1981-2009

このオーケストラ版を聴くたびに「ムクワジュ組曲」残り3曲と交響作品になったならと夢をみる。「ASIAN SYMPHONY」のように。とてもエキゾチックな作品になる。エスニック、アジア、そして日本をまたにかけたシンフォニーたちに。躍動する久石譲ミニマルの原点。

久石譲の原点と呼ばれるにふさわしい曲だ。2つのマリンバ、アフリカ太鼓などの楽器が加わって久石譲の弾ける独特の魅力がぷんぷん感じられるミニマル曲だ。(tendo)

エスニックな雰囲気漂うミニマル楽曲。緻密に計算された“ズレ”の美を堪能することが出来る。思わず身体もノリノリに……(スラスイ)

 

アシタカとサン

久石さんの曲は最短距離で人の心に届いてしまう。

『もののけ姫』の最後のシーンで流れる曲だ。久石譲の定番アンコール曲だ。久石譲がアンコール曲でこの曲のピアノソロバージョンを演奏してくれたことを思い出す。個人的にピアノでよく演奏していた曲だったから、さらに感慨深かった。(tendo)

まさにEvergreenな楽曲。オーケストラver.はもちろん,ピアノソロver.も美しい。様々なver.がありますが,どれも大好き。(スラスイ)

 

The Rain

雨に洗われた風景は光っている。曲の後半に「Summer」の旋律が聴こえてくる。太陽のまぶしい夏だから、雨で潤った風景は反射してさらにまぶしく輝くことをおしえてくれる。

ヴァイオリンとピアノ、そしてチェロとピアノのハーモニーが印象的な曲だ。温かいメロディー。そして、後半部に聴きき馴染んだ「Summer」のメロディーがヴァイオリンで演奏される時、全身に戦慄が走った。(tendo)

雨の中,一人そこに立っているような情景が思い浮かぶ。終結部の『Summer』の旋律で,次第に光芒が差し,夏の暑い太陽が見える。久石さんは“雨”の表現が本当に豊か。美しい……(スラスイ)

 

1.D.e.a.d

ミニマルでストイックな構造。レミラレ(DEAD)にこだわった。弦楽オーケストラにこだわった。不協和音は美しい音楽をつくるために必要なものなんだ。危うさと狂気はときに美しく、のみ込まれそうになる。

久石譲も方向性に悩んだ時期があったようだ。自分が追求していたミニマル作品を出し、ひいては交響曲を作曲したかったのではないか。クラシック、現代音楽の世界に再び戻ってきた重要な位置の作品だと思う。(tendo)

レミラレ(D,E,A,D)の旋律が支配する,狂気と美の共存する楽曲。そのメロディは深淵を知っているかのよう。(スラスイ)

 

Tango X.T.C.

映画『はるか、ノスタルジィ』メインテーマ。久石譲いわく「過去に対面して行くサスペンス」をイメージしたという。オーケストラ・バージョンは、とりわけその振り幅をのぞかせる。そして久石譲のタンゴはいたく官能的だ。

最後にシンバルが一緒に演奏する部分が一番好きだ。振り返ってみると、この曲は私の人生で久石譲の曲を通じて慰めと安定を得るきっかけになった曲だ。久石譲×Tangoはいつも素晴らしい。(tendo)

美しく官能的な旋律は,聴く人を忘我の境地へと至らせる。金管の和音が非常に美しい。(スラスイ)

 

小さいおうち

元来、久石メロディは4拍子だった。いつしか久石メロディは3拍子までも手中に収めてしまった。同じ山田洋次監督の『東京家族』も3拍子、『家族はつらいよ3』はシリーズ主題曲が3拍子へ変化した。そして巨匠のタッグは昭和がほのかに香る。懐かしくて温かい佇まい。

白状するとこのベストで聴くまでこんなにも魅力的な曲であったとは気づかなかった。改めて新鮮な気持ちで聴いたこの曲は、哀愁と切なさが全体に漂う、なんとも不思議な魅力が放ってた。唄えるメロディーに魅力を添えるコードとリズム。久石譲の魅力が凝縮された楽曲だ。(yasu-da-joe)

映画『小さいおうち』の主人公「たきのテーマ」ともいえる運命のテーマから「とき子のワルツ」へとスムーズにつながる。『MY LOST CITY』アルバムと『紅の豚』のように、『小さいおうち』と『風立ちぬ』も久石譲の音楽観で出会い接点をなしているのは興味深い。(tendo)

あたたかさに包まれた楽曲。弦楽器の響きが心に沁みる。後半のワルツも穏やかで少し切なく,ノスタルジックであたたかい。(スラスイ)

 

HANA-BI

初収録!WDO2017ライヴ音源。ピアノとストリングスで彩られた【mládí】コーナーは北野武監督作品3曲からなる。海外公演でも熱望必至のプログラム。そしてコンサートで聴いたものと同じ演奏は、いつまでも感動の余韻にひたることができる、ようになった。

2003年に久石譲がピアノソロで演奏した映像がW.D.O.2017で目の前に再現された。夢のような瞬間だった。さらに、この演奏をアルバム音源で聴けるなんて嬉しい。2分23秒からの部分が本当に好きだ。(tendo)

美しく闇を秘めた楽曲。どこかイタリアの雰囲気。美しいのだけど,決して明るいわけではない。そこが複合的な感情を表しているかのようで魅力的です。(スラスイ)

 

Silencio de Parc Güell

シンプルゆえに繊細に訴えかけてくる。音の余白からいろいろな想いが溢れだしそうになる。インティメイトなピアノの調べは心を無防備にする。灯(ともしび)を見つめる。

タイトルの”Parc Güell”はスペインの有名な建築家ガウディ作品の”グエル公園”を意味する。生前に行ってみたい場所の一つである。この曲も平和で柔らかい感じの曲だ。天才建築家と天才音楽家の出会いが、このようなのだろうか?(tendo)

ゆったりとした雰囲気が魅力的な楽曲。その穏やさには,創造性が秘められている。そのような気がします。(スラスイ)

 

WAVE

寄せては返す波のように心地のよいエモーショナル。走馬灯のような心の揺らぎ。まるでフィルムの1コマ1コマをつないで流れていくように16分音符のピアノ織りなす調べ。日常のいろいろな場面や感情に寄り添ってくれる音楽。聴く人色に染まってくれる曲。

2011年韓国での公演で初めて聴いた曲だ。久石譲がピアノに腰を下ろしてアンコール演奏を始めたが、私は初めて聴いた曲にしばらく戸惑っていた記憶がある。しかし今では、私はこの曲の魅力にとらわれてしまってたまにピアノで演奏している。(tendo)

人生初の久石さんのコンサート『ミニマリズムツアー2009』でのアンコール、ステージのスポットライトを浴びたピアノで演奏されてる姿がいまでも印象に残ってる。ミニマルの波形に乗る現れては消える単音のメロディ。音源が出るのをずっと待ってた名曲。(ふじか)

その名の通り,波のように揺れ動く旋律が魅力的なミニマル楽曲。街中に溶け込むような,何処かでこの曲が流れていてほしいなと思える雰囲気をもっている。(スラスイ)

 

World Dreams

WDOテーマ曲。久石譲いわく「国歌のような格調あるメロディ」は、今や久石譲ファンのアンセムになっている。合唱版や組曲版にも進化したこの曲は、常に時代を映した鏡といえる。時間の架け橋となってこれからも一緒に歩んでいく曲。音はふくらむ。夢はふくらむ。

夢と希望と未来を表現した曲だ。チューブラベルが本当に印象的だ。この曲をコンサート会場で実際に聴いた時は本当に嬉しかったし、情熱的な指揮と演奏がとても素晴らしかった。(tendo)

互いに手を取り合うように,様々な楽器がユニゾンで歌う格調高い楽曲。希望を抱いて鳴る打楽器,ファンファーレのような金管,世界に響かせるかのようなベル,優しく歌う木管,それらを包み込む弦楽器。この楽曲は,希望の未来を奏でている。(スラスイ)

 

 

 

いかがでしたか?

たくさんの素敵なコメントありがとうございます。

 

 

──言葉がとまる。

なんだか詩集をゆっくり丁寧に味わいながら読んでいるような気分になります。そして、それぞれの詩にその人が投影されている。思い出のときを一緒に見つめかえしているような気分にさせてくれます。そこに自然と立ち上がってくる曲たちに包まれて。

 

 

全曲プレイしながらゆっくり読んでみる。好きな曲を選んで、ほかの人はこの曲をどんなふうに思っているのか見てみる。ファンによるライナーノーツのように『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』を聴くときには思い出してめくってみてほしい。そんなとっておきのOvertoneになればいいなと思っています。

 

 

 

久石譲ベストアルバム『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol.2』発売にあわせて、新たに制作されたMusic Videoたちです。

 

Joe Hisaishi – HANA-BI

 

Joe Hisaishi – la pioggia

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

 

むすび。(もツイートそのまま)

映画について語られるとき、いつの頃からだろう、音楽の話題で盛りあがるの珍しいことじゃなくなった。登場人物たちと同じように惹きつけられ魅了され尽きない花が咲く。もし、久石譲がいなかったら、映画音楽界は今あるものとは結構違ったものになっていたんじゃないかな。

ジョン・ウィリアムズはたくさんの映画音楽ベスト盤がある。実は交響曲や協奏曲の自作品も発表してるの知ってる? この久石譲ベスト盤は映画音楽+ミニマル・ミュージックを軸とした自作品も収録。それが世界中で広く聴かれるようになる。ワールドベストとしてこの違いは計り知れない。

《DEAD組曲》からもメロディの「愛の歌」じゃなくてミニマルの「D.e.a.d」を選ぶあたり、大衆性・商業性 ≦ 芸術性・作家性を世界中に聴かせたいという戦略野心すら感じてCool!!です。ベスト1よりもリスナーライクじゃない、ぐっと重心とバランスのとれた久石譲音楽を集成しています。

久石譲ふたつのベスト『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』『Songs of Hope: Vol.2』 同曲異編はこの6曲「Summer」「il porco rosso」「Departures」「Kids Return」「HANA-BI」「Ashitaka and San」。ピアノ、アンサンブル、オーケストラほか。聴きわけるほどに味わい奥深い。

 

 

それではまた。

 

reverb.
それぞれの一口コメント。同じものは一つもない。ここ音楽の魅力!たまらない(^^)♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第53回 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.8」コンサート・レポート by tendoさん

Posted on 2021/10/11

10月8日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.8」コンサートです。入魂1公演、一期一会の1公演。また前回Vol.7に引き続いてライブ配信もあり、国内外から広く視聴できるコンサートになりました。

今回ご紹介するのは、韓国からライブ・ストリーミング・レポートです。久石譲コンサートがライブ配信されたものは、ほぼ記しているだろうtendoさんです。そして、、久石譲インスタグラムでコメントした&いいね!もらった記念すべき第1号おめでとうございます!(^^) もうフットワークがあっぱれすぎて…とろい僕にはお手上げ。

 

 

久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.8

[公演期間]  
2021/10/08

[公演回数]
1公演
東京・紀尾井ホール

[編成]
指揮:久石譲
室内楽:Music Future Band
バンドマスター:西江辰郎

[曲目]
Nico Muhly: Step Team (2007) *日本初演

Bryce Dessner: Murder Ballades for Chamber Ensemble (2013) *日本初演
1. Omie Wise
2. Young Emily
3. Dark Holler
4. Wave the Sea
5. Brushy Fork
6. Pretty Polly
7. Tears for Sister Polly

—-intermission—-

Arvo Pärt: Fratres for Violin and Piano (1977/1980)

Lepo Sumera: 1981 from “Two pieces from the year 1981” (1981)

Joe Hisaishi: 2 Dances for Large Ensemble (2021) *世界初演
Mov.I How do you dance?
Mov.II Step to heaven

 

 

今回はコンサートのレビューをコンサート直後に一気に書きます。

 

久石譲 presents MUSIC FUTUREコンサートの紹介

もう8回目になりましたね。久石譲のMUSIC FUTUREコンサートは、ミニマル曲をはじめとする様々な現代音楽を紹介するコンサートです。WDO、FOC、MF 久石譲の3大コンサートです。

MFではWDO、FOCと同じく久石譲の新曲がよく初演されます。WDOでジブリアニメの交響組曲シリーズとしてアルバムが発売され、FOCでベートーベン、ブラームスの交響曲がアルバムとして発売されるように、MFでは久石譲 presents MUSIC FUTUREアルバムシリーズも一緒に進行中です。

 

10月20日に発売される『久石譲 presents MUSIC FUTURE V』アルバムもコンサート会場で先行発売されたそうです。本当に羨ましい経験ですね!

 

 

久石譲のインスタグラム

コンサート前には面白いことがたくさんありました。

まず、ツイッターでは@joehisaishi2019アカウントで久石譲の一言インタビュー動画が公開されました。〈現代音楽とは何か。〉〈 コンサートで演奏される曲はどんな曲なのか。〉 簡単な紹介になっています。

 

そして久石譲の個人インスタグラムです。

スタッフによる久石譲の公式アカウントとは別の@joehisaishi_composerという新アカウントです。可能な限り本人によって直接運営されるそうです。とても急なニュースでしたが、写真が掲載されたり削除されたり、はじめごちゃごちゃもありましたが久石譲さんの年代にインスタグラムを運営するというのは本当にすごいですね!

少し自慢しますと、私は久石譲さんの個人インスタグラムの最初のレスと一番目のいいねを頂いた人になりました。

本当に素敵な瞬間でした。

I Want to Talk to Youの実現でした!

その他にもコンサートの貴重なリハーサル映像と久石譲さんが直接書いたいろんなメッセージがありました。日常を垣間見ることもでき、本当に良い経験でしたね。

 

 

そうです。

今からしっかりコンサートのレビューを始めます。 

 

Nico Muhly:Step Team

 

コンサート前に予習できなかった曲でした。Spotifyでも再生されていません。曖昧な曲でしたが、ピアノのスタッカートを中心に曲が進んでいくようでした。途中でトロンボーンが長く噴き出したり、曲が途切れるような進行でした。

 

 

久石譲が指揮途中に指で数字を指さします。理由は分かりませんが、WDO2014でもペンデレツキの曲を指揮する時、似たような指揮をしていたと思います。

その後、久石譲のインスタグラムで聞こえていたメロディが出てきて、雰囲気も明るくなりますね。私も現代音楽にはもう慣れたようで、すぐによく楽しめました。

 

 

久石譲の総譜には、謎の記号があふれていますね。演奏もそうですが、指揮も手強い曲ということでしょう。ところでこの譲報、見てもいいですよね? 私はカメラが近寄ったので見るしかありませんでした。 ^^;

 

 

Bryce Dessner:Murder Ballades for Chamber Ensemble

 

続く曲はMurder Balladesです。第1楽章は、とてもさわやかな雰囲気です。

この曲が演奏された瞬間突然泣き出してしまいました。実は今日は元気が本当にない日でした。疲労度が極限に達していて、また消化もうまくいかなくて、それで気分も良くなかったんですね。心も体も極限に疲れていて大変な状況に、ユーモラスで明るい曲が流れて一瞬緊張がほぐれていろんな感情が来たようです。

コンサートは音楽を完全に楽しむことができる素晴らしい時間だと思います。たとえオンラインストリーミングで楽しむコンサートでもね。そして音楽で伝えられるのは、楽しさとコミュニケーションです。久石譲さんのコンサートでたくさん癒されて、エネルギーももらえた感じでした。

とにかくまたコンサート内容に戻りましょう。

 

 

第3楽章ではピアノに独特な装置をしておいたのかユニークな音がしました。アルバムで聴くのとコンサート・リアルタイムで視聴するのとは、こういった違いではないでしょうか? このようなコンサートを見ていると、音楽家たちの創意性と熱情が感じられます。

 

 

独特な打楽器も登場します。マレットを変え続けながら曲に合わせて演奏する姿が印象的でした。最後の第7楽章も久石譲のインスタグラムでリハーサルの映像として公開された部分でした。本当に強力なエネルギーを感じた曲です。本当に素敵ですね。

 

 

久石譲のMC

 

久石譲がMUSIC FUTUREコンサートを愛していることは彼のMCとしてもわかります。WDOとFOCには久石譲のMCがないのに対して、MFのコンサートには久石譲のMCが外せない感じですね。

オンラインで7回目のコンサートと今回の8回目のコンサートを見たのがすべてですが、雰囲気からして今までも毎回MCをしてきたんじゃないか…という推測です。

日本語なのでほとんど聞き取れないけど、インスタグラムに関する話をしていますね!フォロワー数を誇る彼の姿が本当に… 😁 その中の最初のコメントと最初のいいねが私ですよ!

 

 

Arvo Pärt:Fratres for Violin and Piano

 

アルヴォ・ペルト、そしてレポ・スメラ。 2人ともエソトニアの現代作曲家です。エソトニアはやや馴染みのない国ですが、アルヴォ・ペルトはとても馴染みの名前ですね。レポ・スメラは、最近の久石譲のコンサートによく登場する名前です。休憩後、二人の作曲家の作品が並べられます。

久石譲の指揮なしで、ヴァイオリンとピアノが演奏します。MF Vol.7でも指揮のない曲が登場したのを見て、これも毎シリーズこんなパターンを繰り返してきたのでしょうか。

ヴァイオリンの複雑な独奏の最後にピアノのどっしりした演奏。そしてヴァイオリンとピアノの静かな旋律。

 

 

ピアノの演奏には鍵盤の一番低い音も使われていますね。パターンが繰り返される曲です。おぼろげな愛を語る曲かな? イメージがたくさん見えて、多くの感情が行き交う曲であることは確かです。ヴァイオリンの激しい演奏にはぐりぐりした感情が出て、ヴァイオリンとピアノの静かな演奏にも様々なイメージが浮かぶ曲です。例えば、静かに日光が照らす教会の中とか、夜明けの冷たい風に吹かれながら歩く街とか…。

 

 

Lepo Sumara:1981 from “Two pieces from the year 1981”

 

このピアノ曲、もしかして久石譲が直接演奏しないか。そんな期待を少しだけしたんですが (笑) こんな難しいピアノ曲を演奏する時間に作曲に力を入れたほうがいいですよね!指の健康も考えなければなりません。

 

 

この曲では前の曲とは反対に、ピアノの一番高い音が使われています。大したことではないかもしれませんが、やっぱり面白い要素ですね。電子楽譜を使用しているようですが、原理が少し気になりますね。機会があれば調べてみます。

レポ・スメラの交響曲2番目もそうだったけど、短い音階での執拗に繰り返されるメロディに、独特の雰囲気が感じられますね。ところどころに雰囲気を切り換える、重くて強力な低音も特徴のようです。演奏が終わった後の静寂が本当に良かったです。

 

 

Joe Hisaishi:2 Dances for Large Ensemble

 

いよいよ久石譲の新曲です。

タンタンターンタンターンというリズムが登場するが、これは「The End of the World I.Collapse」での基本リズムと同じです。それぞれの楽器が統一感のない演奏をします。 拍子も違うし、メロディも違うようです。タイトルからも分かるように、ダンスリズムになっているけれど絶対ダンスを踊れない曲を作ってみようという感じの曲です。上と下に音の躍動性を見せる部分は久石譲の『Metaphysica』の第1楽章が浮かびました。

不思議な曲です。前では”統一感のない演奏”と言いましたが、慌ただしい中にどこかに秩序感は感じられます。たぶんリズムを利用したのでしょうが、以前久石譲の『Metaphysica』をレビューしたときも混沌の中に秩序を感じると私は言っていなかったか? いろいろと『2 Dances』の最初の楽章と『Metaphysica』の最初の楽章は共通点がたくさん感じられますね。

第1楽章の演奏が終わると拍手が沸き起こりました。本来は、楽章間の拍手は省略しなければなりませんが、私もこの瞬間に会場にいたら、思わず拍手が沸き起こっていたのではないかと思いました。

 

 

第2楽章の「Step to heaven」は変奏曲形式の曲です。このごろ久石譲がよく作曲するスタイルですね。久石譲の『交響曲第2番』第2楽章である「Variation 14」とイメージが一番重なってみえる曲でした。楽器、拍子、パーカッション、雰囲気が変わり続けながら曲が進んでいきます。曲が急に速くなって、急に停止する場面があります。

 

 

しかし、数秒の静寂後に再び曲が進行しますが、こうした展開も久石譲の『交響曲第2番』第3楽章である「Nursery Rhyme」に見られる構成に似ていると感じました。久石譲のいろんな交響曲の姿が見られる曲だなんて興味深い曲ですね。ピアノ、フルート、ヴァイオリンの曲終わりも格好よかったです。

 

 

続く拍手と挨拶。

久石譲がメンバーたちを一列に並べた後、抜けた人がいないか何度も見回した後、聴衆に向かって挨拶する場面が印象深かったです。

本当にものすごいエネルギーを感じたコンサートです。久石譲さんは本当にすごいですね!この気運のまま!私は活気に満ちた日常をまた過ごすことができそうです。これからの久石譲さんの活躍も本当に楽しみです。

 

2021年10月9日 tendo

 

出典:TENDOWORKS|久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.8 콘서트 리뷰
https://tendowork.tistory.com/76

 

tendo(テンドウ)さんのサイト「TENDOWORKS」には久石譲カテゴリーがあります。そこに、直近の久石譲CD作品・ライブ配信・オフィシャル特別配信をレビューしたものがたくさんあります。ぜひご覧ください。

https://tendowork.tistory.com/category/JoeHisaishi/page=1

 

コンサートを体感しているあいだのtendoさんの心情の流れまで、ぐっと伝わるレポートでじんわり沁みわたってくるものがあります。いつも思うのですが、ほんとよく見てる!よく聴いてる!すごいなあ!を心のなかで連発しながら楽しみました。

ふたつ。tendoさんは韓国でも人気と知名度を誇る久石譲の、スタジオジブリ作品をはじめとした映画音楽以外をもっと国内で広く知ってほしい。そうして個人サイトで発信しています。もし韓国で深く久石譲音楽にハマっていきたいファンにはうれしい道標になりますよね。どんなアクセスと出会いとつながりが待ちうけているか誰もわからない。そのきっかけや機会が存在している、未来へのワクワク感ありますね。

プログラムノートなしに、ここまで深く聴き入っているってすごいです。全作品とも楽曲解説見てないなかで、純粋に音楽だけでどう聴いたのかどう聴こえたのか。合ってる間違ってるなんてない、自分が感じたことこそすべて、胸に大切にしまいたいものです。自分なりの回答をしぼり出すことが経験値アップになることは、何においてもそうですよね。集中力おそるべしです。

 

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
人のレポートで吸収力アップする実感うれしいですよね(^^)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第52回 「久石譲指揮 新日本フィル 第637回定期演奏会」コンサート・レポート by tendoさん

Posted on 2021/10/10

9月11,12日開催「久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第637回 定期演奏会」です。終演後は、新日本フィル・ファンの熱い感想がSNSに溢れていました。また12日公演は、アーカイブ有料配信も期間限定(9/22-9/28)で視聴でき、多くの人が楽しめたコンサートとなりました。

今回ご紹介するのは、韓国からライブ・ストリーミング・レポートです。WDO2021のコンサート・レポートも対訳させてもらいました。国内外でのライブ配信の実現が、国内外のファンレポートも叶えてくれてうれしいかぎりです。それにしても深堀りな考察に対訳ににらめっこ。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #637

[公演期間]  
2021/09/11,12

[公演回数]
2公演
9/11 東京・すみだトリフォニーホール
9/12 東京・サントリーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙

[曲目]
新日本フィル創立50周年委嘱作品
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番) *世界初演
I. existence
II. where are we going?
III. substance

—-intermission—-

マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」

 

 

はじめに

今回の公演では久石譲の新作である3番目の交響曲が世界初演され、マーラーの最初の交響曲が演奏された。交響曲第2番についてのレビューをしてから2ヶ月も経っていないけれど、3番目の交響曲を映像とともに聴くことができるのは久石譲のファンとして非常に嬉しかった。3番目の交響曲もやはり見逃さずに、きちんとレビューしてみようと思う。

 

Joe Hisaishi : Metaphysica (Symphony No.3)

久石譲の3番目の交響曲で、Metaphysicaはラテン語で形而上学という意味を持っている。形而上学は、さまざまな意味で使われる言葉だが、久石譲のプログラムノートによれば、形而上学が存在と知識を理解する学問であるように、今度の交響曲も音の運動性だけで構成された楽曲を目標にすると記している。交響曲の第1楽章と第3楽章のタイトルは形而上学で使われる用語を使っているのがおもしろかった。

実は、マーラーという作曲家も死と形而上学について一生をかけて悩み、追求した作曲家である。形而上学に対するマーラーと久石譲の”全く異なるアプローチ”は、確実に異なる性格の2つの交響曲を作っている。

 

I. existence

 

新日本フィルハーモニー交響楽団の50周年を記念して委嘱された、そして新しいシーズンの始まりとなる曲にふさわしい、6台のホルンの壮大な演奏で始まる。祝典の雰囲気が感じられる。このメロディは最初の楽章のメインテーマである。

巨大な飛行機が離陸のために滑走路を走ることさえ省略して高く昇ってしまい、青空を自由に飛び回るような感じの曲だった。私がそのような飛行機になったと空想して自由に身を任せれば、混沌の中の平和が訪れる不思議な曲だった。

この曲に混沌の中で秩序が感じられるのは、拍子のためではないかという気がする。久石譲がプログラムノートで明らかにした「休符を含む16分音符3つ分のリズムがすべてを支配し、その上でメロディ的な動きが変化している」という説明は完璧に理解するのは難しいです。

複雑で速いリズムが落ち着きを取り戻し、すぐに激情的に揺れ動く。この時、7台のホルンが一斉に楽器を高く持ち上げて演奏する。

 

 

マーラーの交響曲を意識した視覚的な効果かもしれない。 音響的な効果もあると思う。再び激しくなり、クライマックスに進んだ後、久石譲が拳を握ると同時に、急いで締めくくられる。

 

 

II. where are we going?

 

弦楽器がテーマを提示している。前の楽章とは対照的に、比較的落ち着いてゆったりとした速度の聴きやすいメロディである。

 

 

久石譲の指揮棒を見ると、こういう雰囲気では指揮棒を手放したまま素手で指揮するのが見られる。

 

第2楽章もやはり、主題となるモチーフが繰り返されるミニマル曲だ。木管楽器、そして金管楽器が次々と登場し、感情的に盛り上がる。久石譲が指揮棒を再び持ち出す。その後しばらくして、曲の雰囲気が変わる。 拍子が早くなってメロディーが変化している…? 実際には全くそうではない。同じフレーズのメロディの拍子が圧縮されて変奏されただけだ。

 

 

第2楽章の中間部にQuartetのパートもある。面白い構成だ。

 

大太鼓、ティンパニ、スネアドラムなどのパーカッションが以後、曲の雰囲気を盛り上げる。そこにボール(gong)とチューブラーベルが合わさって素晴らしい雰囲気だ。グロッケンシュピールのきらめく音も聴こえる。そのように絶頂に達してからトロンボーン、トランペット、ホルンなどが主題を見事に演奏して最後に弦楽器が再びテーマを静かに繰り返して終わる。まるで世の中の美しさを語っているような楽章だった。

 

 

III. substance

 

第3楽章は再び混沌としている。非常に爆発的な音を立てて始まる。ド、ソ、レ、ファ、シ♭、ミ♭! 2オクターブをまたぐ音域を一気に飛び越える。第1楽章の「existence」よりずっと激烈で速い。

宇宙にロケットを立て続けに打ち上げた後、宇宙を遊泳するような雰囲気になったり、再び混沌がやってくる。そのように雰囲気が何回も変化する曲になっている。

曲の核心となっている6つの音を2回押し込むように演奏する部分もある。ド!ソ!レ!ファ!シ♭!ミ♭!その部分から久石譲のミニマル曲である『DEAD』のような感じをうけた。

その後も静かだと思うと、ドンドンと騒がしい雰囲気になり、また続いていたずらな雰囲気に流れていく。この時、欠かせないウッドブロックが登場し、思わず笑みを浮かべた。

マーラーの交響曲第1番の第4楽章は、静かになったり爆発したりを繰り返して感情を極限に達するさまが似ている感じもうけた。

 

 

7台のホルンが第1楽章の時のように再び空を飛び始め、曲の終盤に向かっている。第3楽章の最初のように、2オクターブを越える音域を一気に飛び越える爆発的なロケットを相次いで発射して(?)仕上げられる。

 

 

〈Metaphysica〉は2番目の交響曲と同じく音の運動性と論理のみを重視して作曲された曲だと思いますが、はるかにリズムが複雑で、スピード感や音の動きが強烈だった。結論として〈Metaphysica〉は大規模な編成にふさわしく強力さを見せてくれた交響曲だと思う。特に最後の楽章は混沌して爆発的な雰囲気に圧倒され、曲を聴いてから何日も寝込んだ…ではなかったが、それほどインパクトの強い曲だった。

 

 

G.Mahler : Symphony No.1 in D Major ‘Titan’

第1楽章の徐々に夜が明けるような雰囲気や、カッコウの音と呼ばれる4度下りから、前に演奏された久石譲の〈Metaphysica〉とは克明に異なる二つの交響曲の性格を把握することができた。

 

 

舞台の外から聞こえるトランペットの音。楽譜に「in sehr weiter Entfernung aufgestellt(非常に遠い距離に配置する)」という指示のため、トランペット奏者は舞台の外で演奏した後、舞台に入場するところも見ることができる。

 

交響曲を書く前に作曲されたマーラーの歌曲「さすらう若者の歌」のテーマが頻繁に登場したり、第2楽章にはオーストリア民謡のレントラー舞曲が登場し、第3楽章では有名なボヘミアン民謡「Jacques Frere」(フレール・ジャック)を葬送曲風にパロディにして演奏するなど、マーラーの独特さを時代を超えて感じることができた。

最も圧巻だったのは第4楽章だった。 若いマーラーの苦しみが感じられる凄まじい始まりは地獄のテーマだ。続いて、長く美しく演奏される第2主題は天国のテーマだ。

 

 

第1楽章でトランペットが舞台の外で演奏した序奏(Introduction)と天国のテーマが出会い、喜びを感じることができる。この時、ホルンの8人の奏者が全員立ち上がり、強力な演奏を披露する。(ホルンの後ろで演奏するトロンボーンは、この瞬間のために今まで待機していたのだ)

 

 

〈Titan〉でホルンを持ち上げて演奏する姿と、〈Metaphysica〉でホルンを持ち上げて演奏する姿、そして〈Titan〉の最後の楽章と〈Metaphysica〉の最後の楽章。妙に共通点が見えるような二つの交響曲ですが、感情を最大限に排除したままの論理、音の運動性のみを追求した〈Metaphysica〉と、森の静かな朝の雰囲気や様々な感情を感じることができた〈Titan〉。大編成の豪華なオーケストラに久石譲の新作、マーラーの交響曲まで。本当に楽しいコンサートだった。

 

 

おわりに

2021年は《ミニマル・ミュージックの年》だ。『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2 』に収録されたミニマル曲、『Minima_Rhythm IV』、「I Want to Talk to You」「Symphony No.2」「Symphony No.3」、そして10月のMUSIC FUTUREコンサートでの「2 Dances」まで。これから久石譲がさらに交響曲4番、5番、6番などを順番に出し始めるのか、それとも様々な編成のミニマル曲を作るのか楽しみだ。

 

2021年9月25日 tendo

 

出典:TENDOWORKS|히사이시조 – 신 일본 필 교향악단 제637회 정기 연주회 리뷰
https://tendowork.tistory.com/75?category=721068

 

tendo(テンドウ)さんのサイト「TENDOWORKS」には久石譲カテゴリーがあります。そこに、直近の久石譲CD作品・ライブ配信・オフィシャル特別配信をレビューしたものがたくさんあります。ぜひご覧ください。

https://tendowork.tistory.com/category/JoeHisaishi/page=1

 

もし僕がジョン・ウィリアムズをわりとリアルタイムに追いかけていると仮定します。日本にいると情報も積極的に自らキャッチしにいかないとわからない。くわえて映画音楽ジャンル以外で自作品もここまで追えるかな。最新コンサートのライブ配信があるとわかっても、そのうちCDになったときにでも、そう思ってしまわないかな、そんなことを思ったりします。

それだけに、久石譲の映画音楽ジャンルと変わらないかそれ以上に、凄まじい熱量と行動力をもって追いかけている。リアルタイムに久石譲音楽を浴びている。すごいなあ!うれしいなあ!だからもっともっと紹介したいなあ! そんな気持ちあります。

 

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
音楽も言葉もニュアンスって大切。だから翻訳も丁寧にしたいと。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第51回 「久石譲指揮 新日本フィル 第637回定期演奏会」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2021/09/28

9月11,12日開催「久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 第637回 定期演奏会」です。終演後は、新日本フィル・ファンの熱い感想がSNSに溢れていました。また12日公演は、アーカイブ有料配信も期間限定(9/22-9/28)で視聴でき、多くの人が楽しめたコンサートとなりました。

今回ご紹介するのは、ふじかさんのコンサート・レポートです。もう6回目にもなります(プレッシャーになってない?!その話はのちほど)。予習していないとここまで書けないかも、そんな全体から細部まで遠近法なレポートお楽しみください。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #637

[公演期間]  
2021/09/11,12

[公演回数]
2公演
9/11 東京・すみだトリフォニーホール
9/12 東京・サントリーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙

[曲目]
新日本フィル創立50周年委嘱作品
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番) *世界初演
I. existence
II. where are we going?
III. substance

—-intermission—-

マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」

 

 

新日本フィル 第637回定期演奏会(指揮 久石譲)の模様をレポートさせて頂きます。

2021年9月11日14:00開演 すみだトリフォニーホール

 

残暑の残る9月中旬、新日本フィルの新シーズン開幕と新日本フィルのComposer in Residence and Music Partner というポジションに就任した久石さんが就任祝いを兼ねてのコンサートが開催されました。

今回はマーラーの『Symphony No.1』を軸に久石さんの新作『Symphony No.3』を世界初演という、とても重厚なプログラムが組まれました。まだまだコロナ禍の影響の真っただ中にいる、昨今マーラーの”巨人”がこの世の中にどのように響くのか…とても期待にあふれるコンサートになりました。

 

チケットもぎりを過ぎ、ホワイエに入るとトリフォニーホールから新日本フィルへ豪華な花束が贈られていました。ホール内へ入ると、今回は巨大編成のオーケストラのためか、ステージの端ギリギリまで椅子が置かれています。1st ヴァイオリン16人の巨大編成。超大作の2曲がホールにどのような響きで伝わるのかワクワクしてきました。

 

 

Joe Hisaishi『Metaphysica(Symphony No.3)』

1楽章 existence

独特のリズムにホルンのメロディからスタート。口ずさみにくいような複雑なメロディと交錯するリズムからは、高速で螺旋階段を昇っていくような印象を受けました。その後、冒頭のメロディを変容させながら、弦楽、金管へと受け継がれていきます。低音弦のピチカートが現れるあたりからは『Contrabass Concerto』の様な雰囲気の箇所も。

中間部の息の長いヴァイオリンメロディからはクラシックの要素も取り入れられたのかなと感じるところもありました。後半に向かうにつれ、増えてゆくパーカッションからは『The East Land Symphony』の1楽章に通ずる世界観も。

 

2楽章 where are we going?

前作の『Symphony No.2』の1楽章と同じような雰囲気のタイトルを持つ本楽章。浮遊感と虚無感を感じるような独特なメロディが全体を構成していきますが、どこかクラシカルな響き。交響曲における緩急楽章を意識したのかなと思いました。しかし、冒頭で提示されたメロディは変奏をしていき、『Symphony No.2』の2楽章に共通した空気を感じさせます。ミニマルの交響曲なので、あるモチーフを繰り返しながら変容していくというところは一貫されているようでした。

 

3楽章 substance

久石さんの力強い振りとともに、響く2音の和音。その後、ミニマル特有のパルスと弦楽器のうねりで進行していきました。弦楽が下から上へと上昇していく様子からは、『弦楽オーケストラのための螺旋』や『5th Dimension』、打楽器が一定のリズムを刻む様子からは『The End of The World』の1楽章のような印象も。終盤に向かうにつれリズムとメロディが幾重にも重なり、独特なグルーヴ感を感じさせ、そのまま力強くフィナーレへと向かいました。

 

コンサートで聴いた様子を箇条書きでメモし、その後配信で一度確認しながらレポートを書きましたが、たくさんの要素が緻密に構成された本楽曲はなかなか感想を書くのが難しく、箇条書きになってしまいました。

『Symphony No.2』と似たような変奏部分の要素はあり、『The East Land Symphony』のような重たく、緊迫した様子も少なく、純粋な音の追求の作品であるということは伝わってきましたが、これから音源化されたものを何度も繰り返し聴いて自分の中に取り入れていきたいと思う作品でもありました。

 

 

休憩

 

 

Gustav Mahler:『Symphony No.1 in D major”Titan”』

1楽章 Langsam.Schleppend.Wie ein naturlaut.

短・長とも感じさせない弦楽の長い和音の上に、木管の4度音程の下降が次々と紡がれ、遠くから聴こえるファンファーレの華やかな音色。それに続くカッコウの鳴き声のような音色。ホルンのふくよかな音色。短い冒頭からすでにたくさんの要素を詰め込んだ超大作がどっしりとスタートしました。主題へと向かうための半音階的な低音弦のフレーズもジリジリと迫ってくるような雰囲気にワクワクが膨らみます。

それから続く主題のメロディ。牧歌的で明るいメロディから幸福感が伝ってきました。今回も冒頭主題の繰り返しはきっちりと再現。2度目の主題は1度目とはまったく異なった音色で聴こえるのは、毎回不思議に感じます。

中間部から暗・明をいったり来たりしながら、終盤へ向かっていく様子はとても高揚感に包まれました。終盤のティンパニとオケとの掛け合いは少しテンポ感は速めでスッキリとフィニッシュへ向かいました。

 

2楽章 Kraftig bewegt,doch nicht zu cshnell

舞曲的な出だしのパートは速めのテンポ感で演奏されると思いきや、どっしりとした低音弦のリズムから。少しタメがある感じがして、大股でステップを踏む感覚。楽しい雰囲気のメロディを聴いていると、顔もほころんでしまいました。

中間部へと向かうホルンソロからは、ここからは雰囲気が大きく変わるよ!というような合図を送るような久石さんが印象的でした。ゆったりとした3拍子が印象的な中間部は美しいメロディをじっくりと聴かせてくれるとともに、恒例の対向配置から聴こえてくるヴァイオリンの掛け合いがさらに華やかに聴こえてきます。再び前半の主題に戻るとどっしりとした演奏へ。久石さんの指揮も大きな身振りで全体を引っ張っていきました。

 

3楽章 Feierlich und gemessen,ohne zu schleppen

有名な民謡のメロディで始まるこの楽章、少しテンポ感は速めで小切れよくコントラバスのソロから始まりました。久石さんの『Symphony No.2』の3楽章と共通した要素を感じられる本楽章。メロディが次々と折り重なる部分はミニマル的なアプローチも感じることができました。

途中から出てくる木管の副旋律をひょいっと拾い上げるような指揮をしているのも印象的でした。この楽章でも中間部では非常に美しいメロディが特徴的ですが、こちらもじっくりと聴くことができました。再び冒頭の主題に戻ると、さらに要素が追加されていて、視覚的にも音楽的にも楽しめました。

 

4楽章 Sturmisch bewegt-Energisch

3楽章から絶え間なく演奏される本楽章。久石さんの大きな振りとともに、嵐のような激しい旋律が上下します。この楽章は同じような波形のフレーズが次々と現れて構築されていくので、ミニマル的なアプローチがよく似合いました。冒頭の激しいパートから一転して、中間部は弦楽によるメロディはより優雅に、情熱的に。久石さんも大きく身体を動かして、全体に指示を出していきました。

一度主調のD-Durが顔をのぞかせ、小さな盛り上がりを見せたあと、1楽章の再現が始まります。ここまで全体を通しての体感時間あっという間で、ここの再現で「もう終わりか!」と思ってしまいました。

ここからは言うまでもなく、怒涛の展開を魅せてくれます。ヴィオラの怪しげなメロディから、一気に炸裂する金管のファンファーレ。再び主調のD-Durに転調したのち、金管が主音から下降してゆく華やかなメロディをふんだんに聴かせて、迫りくるような大迫力のコーダ。圧倒的な迫力に泣きそうになってしまいました。身体が熱くなるような熱い演奏でフィナーレまで一気に駆け抜けていきました。

 

 

会場からは惜しみない拍手が続きました。久石さんもそれに答えるようにいつもより時間をかけじっくりと楽団員へと称賛の拍手を送ります。久石さんに拍手が向けられると照れてしまって、オーケストラの奥のほうへ隠れていってしまうシーンも(笑) 最後は客席に大きくバイバイと手を振ってステージを去りました。

長年の信頼とさらなる音楽の進化へと向かう久石さんと新日本フィルの皆様。今後のコンサートにも更なる期待が膨らむ就任記念コンサートになりました。

 

2021年9月27日 ふじか

 

 

 

とてもボリュームいっぱいのレポートでしたね。

久石譲作品、ふじかさんのレポートはいつも他作品が引き合いに出されています。久石譲の作曲活動の点と点が線になっているような気がしてきます。また聴いていない新作でも、おのずとイメージしやすくなりますね。でも似てる似てないじゃないんですよね。作風として同じベクトルを感じる、たぶんそんな表現に近いんじゃないかなあ、と僕なんかは勝手に共感しています。その作品につながったんだ!? ハッと驚くこともままあります。

マーラー作品、ふじかさんは毎回予習されているんですよね。いつもコンサートが近づくと予習ツイートが流れてくるので、そうだ僕もしなきゃと思い出すほどです。そして音源だけじゃない、スコア片手に予習しているときもある。これにはまいった。とてもとても及ばない。コンサートを最大限に楽しみたい!最大限に浴びて吸収したい!、、、言わなくても伝わってきます。

 

こぼれ話。

コンサート会場でお会いして話すことできました。コンサート・レポート、なんか書くの当たり前とか思ったり…プレッシャーになっていたりしませんか?コンサートを純粋に楽しめていますか? そんな質問に「自分の記憶の整理もできるので楽しく書かせてもらってます」と笑顔でひと言。ありがとうございます!

そして独り言のように、「これってアーカイブ配信見てから書いたほうがいいかなあ」と真剣な眼差しで一点を見つめてた瞬間が印象的でした。それもあってコンサートから間を置いたこのタイミングで送ってくれました。コンサート、書く、観る聴く、書くまとめる。けっこう時間とられる工程だと思います。でも、それだけ自分のなかに染みこんでいくことも多い、と僕も信じています(笑)。

 

”コンサートで聴いた様子を箇条書きでメモし、その後配信で一度確認しながらレポートを書きましたが、たくさんの要素が緻密に構成された本楽曲はなかなか感想を書くのが難しく、箇条書きになってしまいました。”

 

レポート中にありましたが、すごく同感です。視聴してはじめてわかったこともあるし確認できたこともある。けれど、なかなか感想を書くのは難しい。僕は最初からさじを投げて、視聴前にコンサートレポートを一旦終わらせてしまいました。追記しようとも思ったけれど、部分でしかないんですよね、ちょっとしたことの追加に終わる。それなら世界初演の瞬間の感想のまま、今はさわらないでおこうと。急いでわかることもないし、わかりっこないし。音源化されてスコア化されて、ゆっくり味わっていきたい作品ですね。

 

 

いつも楽しいツイートもチェックです。好きな音楽ジャンルでFFつながりたくなるかも(^^)

ふじかさん
@fujica_30k

 

 

こちらは、「コンサート・パンフレット」から久石譲による楽曲解説や、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

 

reverb.
ちょっとした反応やリアクションあると書いた人はとってもうれしいです(^^)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪