Posted on 2025/10/14
2025年10月11,13日開催「新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #666」です。2025/2026シーズンの定期演奏会に出演するのは3月以来になります。来年度の出演は現時点では予定されていないようです。
今回ご紹介するのは夏のコンサートに続いて3回目の登場thuruさんです。とにかくもうコンサートの前段階からすごい!プログラムの曲を聴きこみスコアを読みこみ。ここまでしたらきっと「楽しめないコンサート」なんてないですよね。久石譲作品のないプログラムなのにたくさんの久石譲を感じることができました。ぜひお楽しみください。
新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #666
[公演期間] 
2025/10/11,13
[公演回数]
2公演
10/11 東京・すみだトリフォニーホール
10/13 東京・サントリーホール
[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:ロバート・マクダフィー *
[曲目]
フィリップ・グラス:ヴァイオリン協奏曲 第2番「アメリカン・フォー・シーズンズ」*
—-Encore—-
ヴィヴァルディ:四季より「夏」第3楽章
—-Soloist Encore—-
ジェイ・アンガー:アショカン・フェアウエル(Theme from ASHOKAN FAREEWELL)(10/13のみ)
—-intermission—-
ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲(1945年版)
—-Orchestra Encore—-
マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス

今回は、新日本フィル定期演奏会#666のコンサートレポートを書かせていただきます。
久石さんと新日本フィルの今年度の共演は3月以来2回目です。新日本フィルのホームページを見てみるとわかるんですがWDO音楽監督、Music Partnerとしての任期が2025年3月で終了しています。もう新日本フィルとのコンサートはなくなってしまうんじゃないか?と心配していましたが無事開催という事でとても安堵しています。
元々はシティ・ノワール、ヴァイオリン協奏曲2番というプログラムでしたがシティノワールが諸事情で変更になり、代わりに火の鳥(1945年版)になりました。今年の5月の大阪4オケや7月のシンガポールでプログラムされており多く演奏されています。インスタグラムには4オケの際のリハーサル動画も投稿されており、これは行くしかないという事でチケットを取りました。
2曲とも久石さんではない作曲家のプログラムという事でそこまでなじみもありませんでしたが、たくさん音源を聞きました。ヴァイオリン協奏曲2番はふらいすと-んさんがXにてポストされていたグラモフォンの音源はもちろん他のも聞きました。ポストされた音源はイヤホンで聞くと右側からコントラバスの低音が聞こえたため通常配置だと思い別の対向配置の音源を多く聞きました。我ながら意識高め。それほどに今回のコンサートは楽しみで待ちきれませんでした。
また、音源だけじゃなくたくさんスコアも見ました。きっと演奏会の前に音源を聞いて予習する人はいると思うんですけど絶対にスコアも見たほうががいい!!聞こえなかったはずの音が聞こえてくるし、久石さんの指揮の意図が分かります。今回も読み込みました。久石さんの楽曲には「Dream More」「Symphonic Fantasy The Tale of the Princess Kaguya」「Woman組曲」「Asian Works」などなど細かい構造が気になる楽曲は無限にあります。これからどの曲が出版されるのか楽しみです。
前置き長くなりすいません。ここからが公演レポートです。
フィリップ・グラス:ヴァイオリン協奏曲 第2番「アメリカン・フォー・シーズンズ」
ソリストにロバートマクダフィーを迎えてのこの曲。フィリップグラスがこの人のために書いた曲です。ヴィヴァルディの四季に啓発され作られたこの曲は4楽章(季節)に加えて各楽章の間にヴァイオリンソロという構成です。また、ヴィヴァルディとは違い楽章に四季が設定されておらず、聴衆各々が想像する四季で楽しむという曲です。ロックを感じました。
Prologue-Movement I
I want to talk youのような雰囲気で始まります。ヴァイオリンの3連符による流れるような旋律、そしてシンセサイザーです。音だけ聞くとチェンバロっぽいなとも思いますがシンセサイザーでした。新日本フィルのインスタグラムにも掲載されています。
Movement II
1楽章とは打って変わってゆっくりしっとりした楽章です。ちょっとHANA-BIっぽさもあるかな?きっとこの楽章が好きな人多いはずです。
Movement III
いきなり弦楽器、シンセサイザーのレの音の反復に始まります。ここでも3連符。3連符キーポイントです。躍動感のある楽章です。
Movement IV
Movement IIIの形を残して発展していきます。三拍子でここでは16分音符。ヴァイオリンやったことないのでわかりませんが単純な難易度は1番高そうでした。ラストは下っていくような旋律を経た後、ソロヴァイオリンが駆け上がってユニゾンでジャン!と締めくくりました。Asian WorksのWill be the Windのラスト40秒ほどと似たような雰囲気を感じました。
全体通して、マクダフィーの身体が上下左右揺れる揺れる。Youtubeに指揮者なしの同曲も配信されていますのでそちら見ればわかります。ノリノリですね(笑)楽章間のソロでは演奏しながら久石さんのもとに歩み寄って言ったりもしていました。演奏中のアイコンタクトも多くみられました。とても破天荒な方で演奏後にオケや観客に投げキッスをしたり第1ヴァイオリンの後方の方にちょっかいを出したりと観客の笑いを誘っていました。とんでもなく素晴らしい演奏でした。
-Encore-
ヴィヴァルディ:四季より「夏」
ヴァイオリン協奏曲2番はヴィヴァルディの四季とともに演奏するために作られたものという事でこの曲が選ばれたのでしょう。久石さんはいない、弦楽オケとシンセサイザー、そしてマクダフィーによる圧巻の演奏です。やっぱりかっこいい。しびれました。対向配置だからこそ際立つカッコよさもありました。
-Soloist Encore-
ジェイ・アンガー:アショカン・フェアウェル
マクダフィーによるソロです。どうやらこの曲はアメリカで別れの時に演奏されるそうで彼なりの敬意の表れでないかなと思います。優しい音色で演奏されました。演奏後には何度もありがとうとつぶやいておられました。
―休憩―
ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲(1945年版)
ストラヴィンスキーの3大バレエ音楽の1つで言わずもがなです。やはり現代音楽の作曲家を語るうえでこの人は外せない。新日本フィルならではの大編成での演奏。圧巻でした。やはり生で見ないと、聞かないと得られないものがある。音圧もレベルが違う。最近の演奏が1945年版なのも意図が感じられます。最初のコントラバスから会場の雰囲気が何か違う。言葉にならない不思議な空気といいますか、全員が最初の静寂に集中しているように感じました。曲の前半は木管の装飾があったりと入り込みやすかったです。中間部の金管の咆哮からはもう久石さんのタクトから繰り出される演奏に終始釘付けで観客としても休む暇がありませんでした。終曲ではホルンの美しい音色や弦楽器、ゆっくりと駆け上がっていくハープなど見ごたえしかありませんでした。最後はクレッシェンドで大きくなっていって曲を締めくくりました。
-Encore-
マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス
ダンソン2番です。マルコスさんによる美しいクラリネットから始まります。作曲者のマルケスはメキシコ出身という事で、何か特徴的なリズム感の曲です。久石さんもニコニコで体全身を使ったダンスのような指揮をされていました。盛り上がるところではパーカッションが大活躍で天人の音楽を連想しました。ジャンと曲が終わると同時に拍手喝采。一番の盛り上がりを見せました。
現代音楽にしかないものといいますか、特徴的なメロディは自分の中で少し中毒性が高くて、脳内でリピートされるんです。そういったものは自分が久石さんに出会ってなければなかったと思います。そんな人はもっとたくさんいるでしょう。それだけでも久石さんが成した功績です。客層を見ても老若男女、そして外国の方など様々な方が訪れていました。それだけ注目されている証拠ですね。
少し話変わりますが、最近SNSでブラボー問題が話題になっています。終わりが静かな曲ほど拍手、ブラボーのタイミング次第で曲が台無しになってしまいます。交響組曲「紅の豚」など曲途中での拍手もよく見られます。(楽章間の拍手は演奏に対する単なる拍手もありますが)観客もプレイヤーと同じぐらいの緊張感を心の奥底にしまってコンサートを楽しむべきだと思います。今回は開演前から少し心配していましたが演奏を称えるベストタイミングでのブラボーばかりでしたので安心しました。演奏だけじゃなくて観客も含めてのコンサートです。そういった点では観客のマナーはとても大切であると改めて考えさせられました。
半年ぶりとなった新日本フィルとの共演。次回は来年の2月です。久石譲が贈る現代音楽。これからの活動も目が離せませんね!
2025年10月13日 thuru

コンサート前から私のコンサートは始まっている。そんなことを感じるレポートでした。「我ながら意識高め」とおっしゃってましたけど、いやあその意識を見習わないといけないと改めて背筋を伸ばした次第です。予習という土台があるからこそ、それはもう鑑賞での吸収度もものすごく高くなりますよね。おそらくthuruさんは多分に音楽に精通されてある方だとお見受けするのですが、音楽的にも雰囲気的にも一気にコンサートのイメージ世界へと連れて行ってくれます。
過去2回のレポートもそうでしたがコンサート当日の数時間後にレポートが届けられるというホットさです。僕にはスピート、クオリティともにとてもできない芸当です。いつかコンサート会場でお会いできる日があるといいなと心から楽しみにしています。素敵なレポートをありがとうございます!

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」
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コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。
みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。
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reverb.
これからもどんどんコンサートレポートの輪が広がっていくといいなあ!

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number]
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