Overtone.第107回 「久石譲指揮 新日本フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 #666」コンサート・レポート by thuruさん

Posted on 2025/10/14

2025年10月11,13日開催「新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #666」です。2025/2026シーズンの定期演奏会に出演するのは3月以来になります。来年度の出演は現時点では予定されていないようです。

今回ご紹介するのは夏のコンサートに続いて3回目の登場thuruさんです。とにかくもうコンサートの前段階からすごい!プログラムの曲を聴きこみスコアを読みこみ。ここまでしたらきっと「楽しめないコンサート」なんてないですよね。久石譲作品のないプログラムなのにたくさんの久石譲を感じることができました。ぜひお楽しみください。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 #666

[公演期間]  
2025/10/11,13

[公演回数]
2公演
10/11 東京・すみだトリフォニーホール
10/13 東京・サントリーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:ロバート・マクダフィー *

[曲目]
フィリップ・グラス:ヴァイオリン協奏曲 第2番「アメリカン・フォー・シーズンズ」*

—-Encore—-
ヴィヴァルディ:四季より「夏」第3楽章

—-Soloist Encore—-
ジェイ・アンガー:アショカン・フェアウエル(Theme from ASHOKAN FAREEWELL)(10/13のみ)

—-intermission—-

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲(1945年版)

—-Orchestra Encore—-
マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス

 

今回は、新日本フィル定期演奏会#666のコンサートレポートを書かせていただきます。

久石さんと新日本フィルの今年度の共演は3月以来2回目です。新日本フィルのホームページを見てみるとわかるんですがWDO音楽監督、Music Partnerとしての任期が2025年3月で終了しています。もう新日本フィルとのコンサートはなくなってしまうんじゃないか?と心配していましたが無事開催という事でとても安堵しています。

元々はシティ・ノワール、ヴァイオリン協奏曲2番というプログラムでしたがシティノワールが諸事情で変更になり、代わりに火の鳥(1945年版)になりました。今年の5月の大阪4オケや7月のシンガポールでプログラムされており多く演奏されています。インスタグラムには4オケの際のリハーサル動画も投稿されており、これは行くしかないという事でチケットを取りました。

2曲とも久石さんではない作曲家のプログラムという事でそこまでなじみもありませんでしたが、たくさん音源を聞きました。ヴァイオリン協奏曲2番はふらいすと-んさんがXにてポストされていたグラモフォンの音源はもちろん他のも聞きました。ポストされた音源はイヤホンで聞くと右側からコントラバスの低音が聞こえたため通常配置だと思い別の対向配置の音源を多く聞きました。我ながら意識高め。それほどに今回のコンサートは楽しみで待ちきれませんでした。

また、音源だけじゃなくたくさんスコアも見ました。きっと演奏会の前に音源を聞いて予習する人はいると思うんですけど絶対にスコアも見たほうががいい!!聞こえなかったはずの音が聞こえてくるし、久石さんの指揮の意図が分かります。今回も読み込みました。久石さんの楽曲には「Dream More」「Symphonic Fantasy The Tale of the Princess Kaguya」「Woman組曲」「Asian Works」などなど細かい構造が気になる楽曲は無限にあります。これからどの曲が出版されるのか楽しみです。

 

前置き長くなりすいません。ここからが公演レポートです。

 

フィリップ・グラス:ヴァイオリン協奏曲 第2番「アメリカン・フォー・シーズンズ」

ソリストにロバートマクダフィーを迎えてのこの曲。フィリップグラスがこの人のために書いた曲です。ヴィヴァルディの四季に啓発され作られたこの曲は4楽章(季節)に加えて各楽章の間にヴァイオリンソロという構成です。また、ヴィヴァルディとは違い楽章に四季が設定されておらず、聴衆各々が想像する四季で楽しむという曲です。ロックを感じました。

Prologue-Movement I
I want to talk youのような雰囲気で始まります。ヴァイオリンの3連符による流れるような旋律、そしてシンセサイザーです。音だけ聞くとチェンバロっぽいなとも思いますがシンセサイザーでした。新日本フィルのインスタグラムにも掲載されています。

Movement II
1楽章とは打って変わってゆっくりしっとりした楽章です。ちょっとHANA-BIっぽさもあるかな?きっとこの楽章が好きな人多いはずです。

Movement III
いきなり弦楽器、シンセサイザーのレの音の反復に始まります。ここでも3連符。3連符キーポイントです。躍動感のある楽章です。

Movement IV
Movement IIIの形を残して発展していきます。三拍子でここでは16分音符。ヴァイオリンやったことないのでわかりませんが単純な難易度は1番高そうでした。ラストは下っていくような旋律を経た後、ソロヴァイオリンが駆け上がってユニゾンでジャン!と締めくくりました。Asian WorksのWill be the Windのラスト40秒ほどと似たような雰囲気を感じました。

全体通して、マクダフィーの身体が上下左右揺れる揺れる。Youtubeに指揮者なしの同曲も配信されていますのでそちら見ればわかります。ノリノリですね(笑)楽章間のソロでは演奏しながら久石さんのもとに歩み寄って言ったりもしていました。演奏中のアイコンタクトも多くみられました。とても破天荒な方で演奏後にオケや観客に投げキッスをしたり第1ヴァイオリンの後方の方にちょっかいを出したりと観客の笑いを誘っていました。とんでもなく素晴らしい演奏でした。

 

-Encore-

ヴィヴァルディ:四季より「夏」

ヴァイオリン協奏曲2番はヴィヴァルディの四季とともに演奏するために作られたものという事でこの曲が選ばれたのでしょう。久石さんはいない、弦楽オケとシンセサイザー、そしてマクダフィーによる圧巻の演奏です。やっぱりかっこいい。しびれました。対向配置だからこそ際立つカッコよさもありました。

-Soloist Encore-

ジェイ・アンガー:アショカン・フェアウェル

マクダフィーによるソロです。どうやらこの曲はアメリカで別れの時に演奏されるそうで彼なりの敬意の表れでないかなと思います。優しい音色で演奏されました。演奏後には何度もありがとうとつぶやいておられました。

 

―休憩―

 

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲(1945年版)

ストラヴィンスキーの3大バレエ音楽の1つで言わずもがなです。やはり現代音楽の作曲家を語るうえでこの人は外せない。新日本フィルならではの大編成での演奏。圧巻でした。やはり生で見ないと、聞かないと得られないものがある。音圧もレベルが違う。最近の演奏が1945年版なのも意図が感じられます。最初のコントラバスから会場の雰囲気が何か違う。言葉にならない不思議な空気といいますか、全員が最初の静寂に集中しているように感じました。曲の前半は木管の装飾があったりと入り込みやすかったです。中間部の金管の咆哮からはもう久石さんのタクトから繰り出される演奏に終始釘付けで観客としても休む暇がありませんでした。終曲ではホルンの美しい音色や弦楽器、ゆっくりと駆け上がっていくハープなど見ごたえしかありませんでした。最後はクレッシェンドで大きくなっていって曲を締めくくりました。

 

-Encore-

マルケス:ダンソン・ヌメロ・ドス

ダンソン2番です。マルコスさんによる美しいクラリネットから始まります。作曲者のマルケスはメキシコ出身という事で、何か特徴的なリズム感の曲です。久石さんもニコニコで体全身を使ったダンスのような指揮をされていました。盛り上がるところではパーカッションが大活躍で天人の音楽を連想しました。ジャンと曲が終わると同時に拍手喝采。一番の盛り上がりを見せました。

現代音楽にしかないものといいますか、特徴的なメロディは自分の中で少し中毒性が高くて、脳内でリピートされるんです。そういったものは自分が久石さんに出会ってなければなかったと思います。そんな人はもっとたくさんいるでしょう。それだけでも久石さんが成した功績です。客層を見ても老若男女、そして外国の方など様々な方が訪れていました。それだけ注目されている証拠ですね。

 

少し話変わりますが、最近SNSでブラボー問題が話題になっています。終わりが静かな曲ほど拍手、ブラボーのタイミング次第で曲が台無しになってしまいます。交響組曲「紅の豚」など曲途中での拍手もよく見られます。(楽章間の拍手は演奏に対する単なる拍手もありますが)観客もプレイヤーと同じぐらいの緊張感を心の奥底にしまってコンサートを楽しむべきだと思います。今回は開演前から少し心配していましたが演奏を称えるベストタイミングでのブラボーばかりでしたので安心しました。演奏だけじゃなくて観客も含めてのコンサートです。そういった点では観客のマナーはとても大切であると改めて考えさせられました。

半年ぶりとなった新日本フィルとの共演。次回は来年の2月です。久石譲が贈る現代音楽。これからの活動も目が離せませんね!

2025年10月13日 thuru

 

コンサート前から私のコンサートは始まっている。そんなことを感じるレポートでした。「我ながら意識高め」とおっしゃってましたけど、いやあその意識を見習わないといけないと改めて背筋を伸ばした次第です。予習という土台があるからこそ、それはもう鑑賞での吸収度もものすごく高くなりますよね。おそらくthuruさんは多分に音楽に精通されてある方だとお見受けするのですが、音楽的にも雰囲気的にも一気にコンサートのイメージ世界へと連れて行ってくれます。

過去2回のレポートもそうでしたがコンサート当日の数時間後にレポートが届けられるというホットさです。僕にはスピート、クオリティともにとてもできない芸当です。いつかコンサート会場でお会いできる日があるといいなと心から楽しみにしています。素敵なレポートをありがとうございます!

 

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋では、久石譲コンサートのレポートや感想をどしどしお待ちしています。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心持ちで、思い出を残してみませんか。

 

コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
これからもどんどんコンサートレポートの輪が広がっていくといいなあ!

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第106回 「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2025/09/09

2025年8月23~27日開催「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサートツアーです。4月から日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就いています。「音楽監督就任披露演奏会」として愛知・大阪・兵庫・東京の4都市を巡りました。

今回ご紹介するのは、久石譲夏の3大コンサート完全制覇のふじかさんです。最後まで気迫と充実の漲るレポートはさすがです。作品ごとに音楽のイメージも浮かぶし、さらに音楽的情景や物語まで鮮明に浮かび上がってきます。今回いつもより少し提出が遅かったのですが、、いやいや時間とエネルギーを捧げただけのことはある濃密さです。コンサートに行ってレポートを書く、夏の自由研究は大きな花丸3つ達成ですね。ぜひお楽しみください。

 

 

Joe Hisaishi Special Concert 祈りのうた 2025
日本センチュリー交響楽団 音楽監督就任披露演奏会

[公演期間]  
2025/08/23 – 2025/08/27

[公演回数]
4公演
8/23 愛知・愛知県芸術劇場 コンサートホール
8/25 大阪・フェスティバルホール
8/26 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
8/27 東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ヴォーカル:テオ・ブレックマン
合唱:東京混声合唱団

[曲目]
スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽 *Chamber version with brass *日本初演

—-intermission—-
久石譲:祈りのうた(映画『君たちはどう生きるか』より)
久石譲:The End of the World

—-encore—-
Ask me why (Pf.Solo)(大阪・東京)
One Summer’s Day (Pf.Solo)(兵庫)
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

[参考作品]

 君たちはどう生きるか サウンドトラック 久石 The End of The World LP o

 

 

Joe Hisaishi Special Concert 祈りのうた 2025
日本センチュリー交響楽団 音楽監督就任披露演奏会 東京公演 コンサートレポート

 

ツアー最終公演 8月27日の東京公演の模様をレポートさせて頂きます。

2025年8月27日 東京オペラシティコンサートホール 19:00開演

 

夏の3大コンサート、最後を飾るツアーは”祈りのうた”ツアーになります。日本センチュリー交響楽団の音楽監督就任を祝うツアーですが、8月23日からわずか5日間で4公演回るというなかなかハードな日程だったと思います。

プログラムは昨年のFOCの流れもありつつ、その1週間前にイギリスでのコンサートの内容も踏まえつつという構成でしたが、今の時代に対する強い久石さんからのメッセージも込められたとても内容の濃いコンサートとなりました。演奏は一番迫力があったんじゃないか?と思う本当に充実の内容でした。

オペラシティでの久石さんのコンサートは、自分が行った中では、2022年のFOC Vol.4以来となりました。

チケットもぎりを通過し、ホール内に入ると、ステージには割と小さめな編成での椅子がセッティングされていました。19:00少し過ぎたところで合唱隊が登壇、その後オケの楽団の一部の奏者が登場し、チューニングへ。その後久石さんがいつものように笑顔で登場しました。

 

・Steve Reich『砂漠の音楽 Chamber version with brass』

昨年のFOCのコンサートには行っていなかったのですが、公演の写真を見るととても大きな編成で演奏をされていたこの楽曲です。しかし今回はタイトルにあるようにチェンバーバージョン。室内楽編成といっても大きさは様々なのでストリングスの人数が少し減ったくらいの編成かな…?と個人的には思っていましたが、今回あまりにの編成の小ささにびっくりしました。

まるでMFでのフューチャーバンド編成を少し大きくしたような人数構成で、様子が全く様変わりしていました。ブラス隊はステージの上手側にまとめられ、鍵盤隊は下手側ギリギリに配置。コーラスは下手側の奥にブラス隊と当たらない位置くらいまで。こんなに小さいのに、あの壮大な曲を演奏できるのかな…?と思いましたが、いざ演奏が始まるとびっくりするくらいの迫力で響き渡りました。ピアノ、マリンバ、弦楽、コーラスと刻みの音が段階的に増えていき、目眩くミニマルの世界へ出発です。

「ⅰ-fast」では導入部が終わり、コーラスが外れて楽器隊のみの演奏になると、久石さんの楽曲のような感覚になります。『Orbis』や『sinfonìa』『Deep Ocean』、いずれもライヒを初めとする現代の作曲家達の音楽に久石さん自身もインスパイアされて曲が作られ続けている様子も伺えます。

「ⅱ-moderate」では木管とコーラス、パーカッションの軽快な絡みが美しく、「ⅲA-slow」では時計の秒針のように聴こえてくるマリンバを始めとする打楽器隊に、合いそうで合わず徐々にズレていく弦楽の旋律が心地よかったです。

「ⅲB-moderate」でのコーラスの短い単語が次々と繰り返しながら折り重なっていく様子には『かぐや姫の物語〜女性三部合唱のための〜』や『I want talk to you』に近い響きの印象も。ここのセクションを中間部として、ここからは今まで演奏した順番を折り返し、遡りながら演奏していきます。

再び「ⅲA-slow」と同様な構成の「「ⅲC-slow」に入りますが、途中グリッサンドのような音で警告のサイレンが響き渡ります。時計の秒針のような打楽器のサウンドとサイレン音が絡み合うと、世界の終わりへのカウントダウンのような印象を受けました。後半の『The End of the World』にも繋がるテーマです。

「ⅳ-moderate」「ⅴ-fast」と楽曲が戻ってくると、同じ曲なのに聴こえ方が異なる印象を受けるとともに、現在へ戻って来れたような安心感も感じました。終盤は徐々に音が高くなりながら、薄くなっていき、静かに消えていくようにして楽曲は幕を閉じました。

およそ45分間、楽章の切れ間もなく、ノンストップで演奏し続けた久石さん、オケ、合唱隊の集中力には圧倒されました。何度かのカーテンコールののちに前半は終わりました。

 

休憩

 

休憩中に大規模な舞台転換が行われていました。弦は14型の久石さんのコンサートではよくある大きめの編成に。中央には久石さんが弾くピアノが設置され、木管・金管・打楽器奏者、そして合唱隊とステージは奏者で埋め尽くされました。

久石さんが登場してすぐにピアノ向かうと、演奏までのタメの時間も短く、直ぐにチューブラーベルに指示を飛ばしていました。

 

・Joe Hisaishi『祈りのうた』

ここからは2015年のWDOを踏まえたプログラムで久石さんの曲で演奏が続いていきます。まずはこの『祈りのうた』から。

チューブラーベルの弔いの鐘の音が3回鳴るところから始まります。プログラム後半はチューブラーベルの鐘の響きが曲毎に意味を変えながら鳴り続けていきます。その響きを感じ取るのも一つの注目ポイントです。

鐘の音に続き、久石さんが単音でAmのコードを展開しながら紡いでいきます。こんなにもステージには奏者がいるのに、そこに響くのはピアノの単音のみ。ピアノのユニゾンも美しく、遠くまで伸びていきます。単音なのに、ピアノの音なのに、徐々に鐘のように聴こえてくる不思議な旋律。

最初のモチーフを弾き終わると、再び鐘の音が鳴ります。その後、次のモチーフが現れると弦楽四重奏がピアノ音に加わってきます。7度の和音が悲痛な叫びのようにも聴こえてきます。転調後の新たなモチーフも引き続き7度の和音が全体を構成しています。弦楽全体が鳴り響き、そこにチューブラーベルの悲しい追悼の鐘が鳴り響きました。

ここの響きは2015年WDOの時も思いましたが、言葉では形容し難いくらい悲しく、重くたく、でも美しく。全身の鳥肌が立ちました。

再び冒頭のAmのコードのモチーフが伴奏付きで演奏され、それに徐々にストリングが加わってきます。盛り上がりはしますが、嗚咽するようなくらい悲しく、重たい足取りのコーダへ。弔いの鐘が最後まで鳴り響き、静かに曲は終わりました。

今回、構成は若干短くなっており、フルサイズだと、A-A2-B-C-A3という構成になっていますが、今回はA2のパートが抜けて、少しスリムな長さになっていました。

 

曲の雰囲気に圧倒されたのか、会場からは拍手もなく、久石さんもお辞儀をして中断することもなく、間髪入れずそのまま指揮台へと向かいました。

 

 

・Joe Hisaishi『The End of the World』

 『I.Collapse』

前曲で弔いの鐘から一変、力強い警告の鐘が冒頭から鳴りづづけます。初めから熱量たっぷりの激しい演奏で、鬼気迫る迫力に圧倒されました。力強い金管の音色に続き、炸裂する打楽器、雪崩れ込むように響き渡る弦楽の旋律。どこか楽観的な木管の旋律と入れ替わるようになり続ける警告の鐘。どんどんと膨張し続ける不安感を煽るように音量も徐々に上がっていくいき、ホール内も揺れているような錯覚に。ダダダダダダという、本当に物事が崩れ去っていくような下がっていく音形が現れた後、曲のピークへ。パニック状態のような緊張に包まれます。コーダ部は警告の鐘が段々とリットしていき、止まるようなスピードで終わります。

 

 『Ⅱ.Grace of the St.Paul』

冒頭からチェロソロで悲しく、祈りを込めたような旋律がゆったりとステージから聴こえてきます。音源よりも溜めもたっぷり。旋律の後ろで太鼓も静かに聴こえてきます。徐々に冒頭の旋律に他の楽器が増えていき、どうしようもない漂流感が漂います。突如聴こえてきるサックスのソロ。中間部はジャジーな響きに1楽章から提示されている警告のリズムが所々に顔を出していく展開へ。再度、冒頭で流れたチェロのメロディが今度は、弦楽4重奏が中心に再現します。

その後、再度ジャジーなパートへ移行します。低音楽器のウォーキングベースに、不安感を煽る旋律に、鳴り響く救急車のサイレンのような信号音。ここでは久石さんも指揮棒を振るのをやめて、スイングに身体を委ねている感じがとてもかっこよかったです。でもこの2楽章は改めて生で聴くと、カオスそのもの。どこかで祈りや悲しみがあっても、日常は続き、でも危機もすぐに隣り合わせ。まさしく今この世の中の不安感を凝縮したような2楽章でした。弦楽だけの重たい旋律のパートが続き、行くあてもなく彷徨い続けるような不安定感のまま、消え入るように終わりました。

演奏が止み、会場内も静まりかえっていました。しばしの沈黙ののちに、ボーカルのテオ・ブレックマンさんが静かにステージに登場しました。

 

 『Ⅲ.D.e.a.d』

2005年発表の『DEAD組曲』からリコンポーズされ『The End of the World』に組み込まれた異色の経歴を持つ第3楽章。原曲の多層的で重厚的で悲壮感たっぷりの雰囲気はそのままに声楽パートが新たに加えられ、『The End of the World』では緩徐楽章的な役割も果たしていると思います。

2015年WDOではカウンターテナー、2024年ではソプラノ、そして今回はボーカルという新たな声質での披露となりました。この声の選び方は、久石さんも模索し続けているような気がします。

今回、ボーカルとしてジャズシンガーの方を起用した理由は久石さん自身もしっかりとした意図もあると思いますが、個人的に聴いた感想としては、2022年のWDOで披露された『My Lost City組曲』でメインの旋律がバンドネオンで奏でられてことにより、よりリアルな聴こえ方になった感じに近いものを思いました。

カウンターテナーのような普段聴き慣れないような声ではなく、ソプラノのように高らかに歌い上げるようでもなく、今の生きる人のリアルな想いをボーカルに閉じ込めた感じがします。その予感は後述する第5楽章でより強く感じます。絶望の中、しとしとと呟くように歌われる旋律に終始感動していました。

 

 『ⅳ.Beyond the World』

ミニマル的なパルスのリズムに重厚なハーモニー、半拍ずつずれていくような変拍子、でもメロディアスな要素も感じられる4楽章。制作年の近さから『Oribs』『Links』に通ずるものもあると思います。不安と混沌から生きることへ意志へと転換を提示するとても大事な楽章です。中盤からコーラスが歌い上げる歌詞に今回の公演の久石さんの想いがぎっしりと詰まっている気がします。

後半にかけては1楽章、2楽章で示されていた警告の鐘の音が再び姿を現し、それに負けじと前に進んでいく人々のエネルギーを合唱隊の旋律と歌詞から感じます。盛り上がりがピークを迎えた後、警告の鐘が静かに響き渡る中、5楽章へと続いていきます。

 

 Recomposed by Joe Hisaishi:『The End of the World』

今回、この公演にいく数日前に、親しい友人がこの曲の和訳をしてくれました。その和訳がとても好きで、何度も読み返した上でこの楽曲を聴くと歌詞の切なさがより一層沁み渡りました。

2015年版よりコーラスパートも加筆されており、より美しいシンフォニックな響きに進化しており、さらに感動。前半は、ボーカルのテオさんが優しく語りかけるように、その美しい旋律を情感たっぷりに歌い上げます。その後、後半にコーラスが朗々とメロディーを歌い上げるところでうるうるしてしまいました。

1楽章から響き続けた警告の鐘もこの楽章では優しい一筋の希望の鐘の音色の聴こえてくるのも必聴ポイント。終盤では打楽器の大きなトレモロが会場を揺らすほど大きく炸裂します。これは新たな世界へ向かう旅立ちの合図なのか、それとも新たな火種の合図なのか…?鐘の音が静かに何度か響き渡り、静かに曲が終わりました。

 

客席からは緊張の糸が解けたような大きな拍手、歓声もあったと思います。何度かのカーテンコールが行われ、そしてこちらも恒例となっている各セクション奏者の紹介と拍手が行われました。そして久石さんもカーテンコールを終えたのち、ピアノへと向かいました。

 

Encore

『Ask me why』

今回はピアノソロにて。冒頭のGのコードが響いた瞬間の会場からの声にならない声の雰囲気が忘れられません。構成は今までのピアノソロで演奏してきたものより、少し短めで最後のサビが無くなったショートバージョン。サントラ版の『Ask me why(眞人の決意)』を少し長くしたような感じでした。

ここまで重厚なプログラムを演奏してきて、この曲で久石さんから「さぁ、あなたはどう生きていきますか?」というメッセージもあったような気がしますし、「あなたたちはもう実はどうするか決まっているんじゃないですか?」という確認にも捉えることができました。

サプライズのピアノソロに会場も酔いしれていました。個人的には久石さんの演奏動画といえば、2003年のEtudeツアーのコンサート映像です。今回その収録が行われたオペラシティコンサートホールで久石さんの生演奏が聴けたことは感無量でした。

 

『World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra』

最後のアンコールは渾身のこの曲で。このプログラムの最後の最後にこの曲は本当に感動でいっぱいです。この曲も同時多発テロがきっかけで制作された一つ。2011年には歌詞も加えられ、より楽曲のクオリティが一段と上がった気がします。

今回は本当に歌詞が沁みました。数年前まではコロナ渦で不自由な生活での希望の光に聴こえていたこの曲が、今では昨今の世界情勢を憂い、少しでも前を向いて進んでいく応援歌のような存在にも感じます。

”哀しみにつまずけば 自由が見える 歓びの灯が消えても 共に歩き続けよう”この歌詞が本当に心に刺さりました。ジブリコンサートでの『アシタカとサン』も共通のことを歌っているところにもこの夏のコンサートの共通性も感じてしまいます。

最後は希望の鐘の音が高らかに鳴り響き、この圧巻のコンサートの幕が閉じました。

一瞬の沈黙ののちに炸裂する拍手の音、ここから一気に観客がスタンディングオーべションへ。割れんばかりの拍手喝采の中、久石さんは笑顔で弦楽の主要メンバーと握手を交わし、何度かのカーテンコールで熱狂の渦のままステージを後にされました。

 

 

夏の3大コンサート、全て終えました。本命は7月のサントリー公演でしたが、満足度はこの”祈りのうたツアー”だったかもしれません。

久石さんは常々「音楽家は音楽で伝えればいい」とおっしゃってきています。その言葉通り、音楽で想いをぶつけてきた今回のプログラムに圧倒されました。そして2014年のWDO2期の始動時のインタビューで「もう戦前なんですよ」という言葉も残しています。

ここ数年は世界も混迷を極め、不安定な時代をずっと彷徨っています。でも自分自身を見失わずに前を向いていこうというポジティブなメッセージに本当に救われる気がします。

戦後80年という節目を追悼したり、振り返ったりするわけではなく、今を生きる私たちへの前向きなメッセージを込めた”祈りのうたツアー”。それらの想いをたっぷり浴びた2時間半のコンサート。本当に幸せで、考える時間でもあり、前を向く時間でもあったと思います。

この3大コンサートの中で共通して『Ask me why』が演奏されたことも特筆できる点で、ただ想いを提示するだけではなく、問いかけをしてきたのもただのエンターティメントのコンサートだけで終わらせたくない久石さんの想いも感じました。「アーティメント」の意思が伝わったきたこの夏のコンサートたちでした。

余談ですが、80年前の8月27日は連合国軍の日本進駐が開始された日のようです。Recomposed by Joe Hisaishi:『The End of the World』の終盤で提示される打楽器のトレモロは、その日の新たな歴史の1ページを示した音も込められているのかもしれませんね。

明日からも力強く日々を生きていこうと思いを新たにコンサートホールを後にしました。

 

2025年9月8日 ふじか

 

photos by ふじか

https://x.com/fujica_30k

 

あまりの濃密さにまず3回読みました。コンサートで体感したエネルギーがそのまま言葉のエネルギーになっていてすごいです。この夏だけで3つのレポートを書くというのは、ルンルンだけでは書けない大変さがありますよね。それは同じく3つのレポートをリンク紹介させてもらっているショーさんや、今年初めて2つのレポートを送っていただいたthuruさん、そして海外からでも配信や来韓コンサートをレポートしてくれるtendoさんもそうですね。この夏もたくさんのコンサート模様を伝えてもらって音楽の魅力を発信してもらってありがとうございます。

一人一人の感想を読ませてもらうたびに共感や気づきの連続です。ふじかさんのレポートも作品ごとに僕もそう思う!と共感するところがあったり、The End of the World第2楽章は、まさに自分も今回改めてそのカオス感や末恐ろしさを感じたりしたから、こうやって言葉にしてくれて感謝!と思ったり。コンサートから受け取ったメッセージも同じように感じた人はいると思いますが、ちょっとしたニュアンスはやっぱり一人一人のものだから一言でも二言でも言葉にするとすっと入ってきます。

ふじかさんをして「本命は7月のサントリー公演でしたが、満足度はこの”祈りのうたツアー”だったかもしれません」と言わしめた〈祈りのうた2025〉です。それはもちろんレポートからも伝わってくるし、読んだ人からも共感の声があがるかもしれませんね。とにかく今年の夏の3大コンサートはスペシャル!スペシャル!スペシャル!だった。今年の年末にまたみんなのコンサート・レポートを振り返ってみても、これから先どこかで2025年夏のコンサートを振り返ってみたときも、感想は一緒、スペシャル!スペシャル!スペシャル!だった。

 

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋では、久石譲コンサートのレポートや感想をどしどしお待ちしています。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心持ちで、思い出を残してみませんか。

 

コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
コンサートに行って音楽の経験値は上がる。そのうえ音楽を言葉にする経験値、感想を言葉にする経験値もアップするってすごくないですか!

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第105回 「久石譲&ロイヤル・フィル スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2025/08/05

2025年7月24,25日開催「久石譲&ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート」です。久石譲がComposer-in-Associationを務めるロイヤルフィルとの日本公演が実現です。ジブリフィルムコンサート・ツアーファイナルat東京ドーム、ソウル公演を経てツアー最終日まで熱く駆け抜けたこの夏へ。

今回ご紹介するのは、ジブリフィルムコンサートに続いてふじかさんです。とても熱のこもった音楽世界が広がっています。久石譲音楽の今を感じることができます。全てのプログラムともこれからの音源化が待ち遠しくなる、そんなレポートです。ぜひお楽しみください。

 

 

Joe Hisaishi Royal Philharmonic Orchestra Special Tour 2025
Orchestra Concert at Suntory Hall

[公演期間]  
2025/07/24,25

[公演回数]
2公演
東京・サントリーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ハープ:エマニュエル・セイソン

[曲目]
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番)
I. existence
II. where are we going?
III. substance

—-intermission—-

久石譲:Harp Concerto ※日本初演
Movement 1
Movement 2
Movement 3

—-Soloist Encore—-
ドビュッシー:月の光 (7/24)

久石譲:Symphonic Suite The Boy and the Heron for piano and orchestra
    交響組曲「君たちはどう生きるか」 ※日本初演

—-Orchestra Encore—-
One Summer’s Day (for Piano and Harp) (7/25)
Merry-go-round (for Piano and Orchestra) (7/24,25)

[参考作品]

君たちはどう生きるか サウンドトラック 久石

 

 

Joe Hisaishi Royal Philharmonic Special Tour 2025 Orchestra Concert at Suntory Hall コンサートレポート

 

2日目の7月25日公演の模様をレポートさせて頂きます。

2025年7月25日 サントリーホール 19:00開演

 

夏の豪華コンサートの一つ、サントリーホールでのオーケストラコンサート。こちらもジブリのスクリーンコンサートに引き続きチケット入手困難な公演となりました。

個人的には、この公演が一番の本命でした。最新交響曲、最新協奏曲、最新交響組曲と今の久石さんの最前線を聴く事、触れることのできる特別なプログラム。ジブリコンサートは、ある意味お祭りコンサート。本公演は、まだまだ進化し続ける久石さんの”今”が凝縮されたコンサートです。

この日は、先週の東京ドームコンサートの時は全く異なり、1日中晴天で、酷暑の厳しい夏の日でした。

 

チケットもぎりを通過し、中へ入ると、赤い絨毯に包まれたサントリーホールのホワイエへ。3月以来のサントリーホールです。ホール内へ入ると、ステージ上にぎっしりと並んだオーケストラ奏者の譜面台、椅子。奥には打楽器群。そして配信関係機材が所狭しと配置してありました。

公演開始時間間近になると、コンマスを除き奏者が全員集結。コンマス不在のまま、チューニングが始まり、チューニングが終わると共に、コンマスが登壇する流れでした。その後、久石さんが登場。

いよいよコンサートが始まります。

 

久石譲:Metaphysica(Symphony No.3)

生で演奏を聴くことができたのは、2021年のすみだトリフォニーホールでの世界初演のとき以来でした。その後、世界各地での演奏会でプログラム入りしており、4年経って再び生演奏で聴くことができました。

1楽章『existence』の冒頭の力強いホルンの導入から、一気にミニマルシンフォニックの世界へと連れて行かれます。導入で提示されたホルンのメロディ、モチーフが随所へ変容しながら受け継がれていく様子は、本作品以後に書かれた『Viola Saga』、このプログラムにも入った『Harp Concerto』にも随所に現れています。マーラーの『Symphony No.1』を意識して制作された経緯もあり、力強く響き渡る金管が耳に強く残り、次々と聴こえてくる打楽器も聴いていて楽しいです。木管の細かいパッセージや、弦楽の上昇下降を繰り返すフレーズ、そして何度も聴こえてくる冒頭のフレーズ。終盤に向けてどんどんと盛り上がっていく感じ、聴いていてとても楽しかったです。

演奏が終わって、指揮台の久石さんが少し拍手をしたことで会場にも連鎖する拍手の音。久石も少し会釈したのちに演奏が続きます。

一気に雰囲気の変わる2楽章の『where are going?』。この楽章だけは新日本フィルの公式youtubeでも今でも全編聴くことができます(2025年8月現在)。虚無感を感じさせるような弦楽の息の長いメロディ、多層的で緻密なロイヤルフィルの弦楽アンサンブルが、よりこの楽曲のクオリティを押し上げてくれている感じがします。初演時よりも落ち着いて演奏を聴くことができましたが、改めてこの曲は久石さん流の葬送行進曲な印象を持つことできました。重い足取りのように聴こえてくる弦楽の歩みに、時折遠くの方で聴こてくるコーラルのような金管の音色。2023年9月の新日本フィルでの定期演奏会でのマーラー『Symphony No.5』の1楽章を彷彿とさせる響きを感じました。

冒頭は重厚で足取りのゆっくりな感じで始まりますが、徐々にリズミックで、迫力も増しながら変奏していく様子は久石さんのミニマリスト作曲家としてのテクニックが光ります。中盤で聴こえてくる弦楽4重奏のみで演奏されるシーンから感情が爆発するような後半での金管の力強い音色まで、次々と畳み掛けてきました。

コーダ部では空からの光を感じさせるような荘厳な響きで静かに曲が終わります。

3楽章の『substance』はいかにも久石さんのミニマル曲を感じさせるような、力強い弦楽のうねりと金管と木管の次々と折り重なっていくパルスがとても心地よいです。演奏風景も弦楽が波を描いていくように弓が動いていくシーンも視覚的にもとても楽しい。中盤で盛り上がりがピークに達した後、ホルンが提示する力強いフレーズに裏拍が強調されるリズム伴奏が絶妙な引っ掛かり感があっていてこちらも心地よいです。終盤へ向かうにつれどんどんと増えていく打楽器、益々力強くなっていく金管セクション、複合的に構築されていく木管、弦楽のリズム。盛り上がりが頂点に達したところから一気に崩れ落ちるようにしてフィニッシュです。

 

拍手喝采の中、久石さんが何度からお辞儀をしたのち金管を労うように紹介をします。途中拍手が途切れそうになり、久石さんが拍手を煽りますが、うまく伝わらず手拍子になってしまうような場面も。これには久石さんの「しまった!」というような照れ笑いをされていました。

 

ー休憩ー

 

休憩中に次の演奏曲へ向けてステージ上では大きな舞台転換が行われていました。ステージ中央に設置された赤いハープが印象的でとても目を引きます。

 

久石譲:Harp Concerto

久石さんの最新協奏曲の日本初演がいよいよ始まります。昨年のロサンゼルス初演から始まり世界各地で披露されてきた本楽曲が満を持して日本で演奏されました。オーケストラのチューニング後、久石さんとハープのエマニュエルさんが笑顔でステージへ登場しました。

 

1楽章 

冒頭ソロハープの駆け上がりに続き、力強い全体での一打があり、十六分音符の刻みとハープが細かく交錯し合いながら、緊迫した雰囲気で一気に駆け抜けていきます。ソロハープの動きがとても目を引きますが、オーケストラ奏者のハープも緻密な動きでソロハープの演奏を裏で支えている印象です。一瞬のブレイクののちに、スネアソロ、それに続き雪崩れ込んでくるハープとオーケストラの音色と、今までに無い久石さんの協奏曲の展開に圧倒されてしまいます。冒頭から提示されているハープの旋律が細かく変奏を重ねながら展開されていく様子は、前半で演奏された『Symphony No.3』の流れを汲んでいる印象を受けました。癒しの音色の側面が強いハープですが、こんなにもスリリングで圧倒的な力強さの一面を引き出した久石さんの作曲技術はまだまだ進化し続けていくものだと改めて思いました。コーダ部は冒頭の提示部を再現して力強くフィニッシュです。

1楽章の力強さに圧倒された為か、会場からも楽曲の途中ですが拍手が入ります。ハープの短いチューニングののちに2楽章へ続きます。

 

2楽章

ソロハープとチェロ、ピアノのみの静かなスタートです。

ハープの「ラファミー、レミシ♭ソー」と続く旋律はなんとも日本的な音階でまるで琴が演奏しているような音色に聴こえてきます。すぐにフルートがその旋律をなぞり、ハープが後ろから追いかけてくるような展開になります。ちなみにこの旋律、自宅にある電子オルガンで琴の音色で演奏してもピタリハマるくらい美しい日本的な旋律なんです。その後に続く、「レードレミファミファレー」という旋律もとても美しく、そのメロディをハープが奏し、ヴァイオリンソロへと続きます。ヴァイオリンソロが奏でている時はまるで“人体シリーズ”のサントラの1曲のような雰囲気も感じました。徐々に曲調が明るくなりハープと木管が絡み合いながら光差し込む森の奥深くに進んでいくように。二ノ国2のサントラ『神秘の森』のような印象も受けました。終盤は冒頭の旋律が再度提示されますが、ハープに続き、オーケストラが折り重なるようにして旋律が次々と紡がれていきました。

 

そしてハープソロのカデンツァへ。弦にドライバーを当てるような特殊奏法から始まり、高音から低音まで幅広い音域を使って駆け下りたり、一気に昇っていったり。弦を掌で叩いたり、ミュートをあてて、ミニマル的なフレーズを爪弾いたり。ミニマル的なフレーズは“KIDS RETURN”のサントラより『I Don’t Care』のような軽めのサウンドを感じました。

徐々に3楽章のフレーズが聴こえてきて、それに応えていくようにオケが反応していくとそのまま3楽章へ突入です。

 

3楽章

アップテンポで、明るい雰囲気の3楽章。『DA・MA・SHI・絵』や『Tri-AD』『sinfonìa』の2楽章のようなリズミックで楽しいサウンドがどんどん広がっていきます。ミニマル特有の短くてキレの良いリズムとメロディがソロハープから聴こえてくるとそれに続いて、木管、金管、打楽器、弦楽と次々とフレーズが重なり万華鏡のような変容していくような広がりを見せていきます。コーダ部は冒頭1楽章のようなスリリングなハープとオーケストラの掛け合いを聴かせた後に、ダダン!!という力強いフィニッシュ。様々な音色を魅せてくれたハープコンチェルトの終結部です。

 

日本初演ということで、まだまだ聴き馴染みのない楽曲でしたが、ハープのエマニュエルさんの表現力、オーケストラの力強さに圧倒されたのか、会場は割れるような大きな拍手に包まれました。

エマニュエルさん、久石さんはしっかりと握手を交わし、何度かのカーテンコールが行われました。

 

 

再び、大規模のステージ転換へ。

下手側に置いてあったグランドピアノがステージ中央へ。鍵盤が完全に客席側へ向くような、いわゆる指揮者自らが弾き振りをするスタイルをする時に設置される位置へピアノが置かれました。大きな転換だったので、結構時間がかかった印象です。

 

久石譲:Symphonic Suite The Boy and the Heron for piano and orchestra

いよいよジブリ作品の最新交響組曲作品がお披露目の時です。

今までの交響組曲作品とは大きく編成が異なり、久石さんが自らピアノでエスコートしながらオーケストラを従えていくスタイルにワクワクが止まりませんでした。コンマスがピアノのA49の音を鳴らしてチューニングがスタート。それに続き、指揮者兼ソリストの久石さんが登場し、ピアノに向かいました。

『Ask me why(疎開)』

 物語のスタートを飾った曲から交響組曲もスタートです。イントロのG、Em、D、Cの和音に続き、ミニマル的な「ソーレーソー」というフレーズがピアノから紡がれていきます。サントラ版よりも弦楽の刻みが増えててより物語のスタートを感じさせるようなアレンジに進化していました。

『青サギの呪い〜ワナ』

 力強い「ミー、ミシー」という青サギのモチーフに続き、“悪人”のサントラのような緊迫感のある展開になります。サントラ版よりも厚いオーケストラ編成に進化したためか、よりパワーアップした印象を受けます。

『ワラワラ』

 現実には存在しないキャラクターに印象的な音楽をつけるのは久石さんの得意技。『コダマ達』『天人の音楽』のような耳に残る名曲の一つです。サントラ版ではサンプリングボイスのようなもので表現されていた音色が、この組曲では金管楽器のマウスピースで演奏されました。マウスピースのみでの奏法は久石さんの楽曲では『2 Pieces』『The Border』でも取り入れたきた実績があり、ここにも帰結したと思うと、いろんな楽曲の要素を組み合わさり“君たちはどう生きるか”の世界観が表現されているものだと感じました。

『火の海』

 リトルキャロルのコーラスで表現されていた部分は久石さんのピアノで表現されていました。

『祈りのうた(産屋)』

 サントリホールの大ホールに久石さんのピアノの単音のみが響き渡るとても貴重な時間。本来は7分近くある楽曲ですが、原曲の雰囲気はそのままに短くまとめてありました。10年前の2015年WDOで披露された時から再び披露されたこと思うととても感慨深かったです。終盤はピアノ音色がより低音〜高音(A1,A13,A73,A85)のラの音が強調されていました。

『大王の行進』

 前曲とは雰囲気が一転、明るく快活な音楽となります。快活な印象のこの楽曲ですが、サントラでは序盤『追憶』にて寂しさを感じるアレンジになっていることも印象的です。アレンジの仕方で聞こえ方、捉え方が全く変わるメロディです。『ワラワラ』と『大王の行進』では久石さんが立ち上がり指揮のみに専念となります。

『大崩壊』

 物語終盤でとても印象的に響き渡る楽曲です。チューブラーベルとピアノの希望を感じさせる和音に、翼を広げて飛び立っていくような弦楽、木管のフレーズが新たな世界へと誘っていってくれます。

『Ask me why』

 組曲最後はこの楽曲で、久石さんのピアノで締めくくれます。先日の東京ドーム公演でアンコールの1曲として披露されましたが、その時とは若干アレンジも異なっていた印象です。前半サビの終わりくらいで加わるトランペットが今回は入りませんでした。

サントリーホールという極上の音響空間で、久石さんのピアノと静かな湖面に波が広がっていくような繊細なオーケストレーションがとても美しく、言葉では言い表せないくらい贅沢な時間でした。その感動に包まれながら楽曲は静かに終わりました。

 

 

会場は再び大きな拍手に包まれ、拍手の中恒例の各演奏者の紹介へと移ります。何度かのカーテンコールののちに、ハープが中央へ設置され、アンコールの楽曲へと移ります。

ソロハープのエマニュエルさんと久石さんが登場。二人のソリスト同士の特別なアンコール始まりました。

 

One Summer’s Day (for Piano and Harp)

冒頭の久石さんの和音が奏でられると、会場からは声にならないような「・・・・!!!!」というような音が聞こえました。

アルバム“A Symphonic Celebration”での『One Summer’s Day』と2022年のWDOでバンドネオンの三浦さんと披露された構成を元に、ハープとの新アレンジバージョンが披露されました。久石さんのピアノとエマニュエルさんのハープが折り重なる特別なアンコール。会場の観客のみんなも酔いしれている雰囲気に包まれていました。アウトロでは久石さんのピアノの旋律に合わせて彩りを添えるハープの上下するグリッサンドがとても美しかったです。

 

ステージ上のハープが舞台袖へ引き上げられたあと、久石さんとロイヤルフィルによる最後のアンコールがスタートです。

 

Merry-go-round(for Piano and Orchestra)

近年では久石さんが指揮に徹するアレンジが多くアンコールで披露されてきましたが、今回はピアノが弾き振りスタイルで設置されていることがあってか久石さんのピアノによる導入でスタートです。こちらもイントロのピアノが聴こえると会場はからは声にならないような「・・・・!!!!」というような音が聞こえました。老舗ヨーロッパのオーケストラが奏でるワルツを東京で聴くことができるなんて本当に贅沢な時間でした。転調前のサビでは再び久石さんもピアノ演奏へ加わりました。転調後は盛り上がりもピークのままコーダ部へ一気に駆け抜けていき、最高のフィナーレでした。

 

会場のボルテージも最高潮に。一気に観客へスタンディングオベーションが広がり、会場は総立ちで熱気の渦に。そのまま久石さんは恒例の弦楽メンバーとの握手へ。ですが、中央にピアノがあり、手が届かない奏者もいるため手を大きく掲げて握手のジェスチャーへ。会場からも温かい笑みが溢れます。何度かのカーテンコールのちに久石さんは客席へ大きく手を振って退場、会場も明るくなり、コンサートは無事に終演となりました。

 

熱量たっぷりのとっても濃いコンサートでした。

先週のジブリスクリーンコンサートでは披露されていなかった“君たちはどう生きるか”の楽曲も聴くことができて、ここで初めてジブリコンサートも完結。完全版の『人生のメリーゴーランド』もこのコンサートで聴くことができて、こちらも完結。

今最前線の『Symphony No.3』『Harp Concerto』をヨーロッパで活躍するオーケストラ演奏で作曲者本人の指揮で東京で聴くことができたという事実。

そして来月“祈りのうたツアー”で披露される『祈りのうた』も少し聴くことができたと共に、鳴り響いたチューブラーベルの音色からも来月のツアーの序奏として捉えることもできたと思います。

この公演でこの夏の3本のコンサートが全て繋がっているようにも感じました。

 

とても充実した満足感を心に刻みながら、コンサート会場を後にしました。

 

2025年8月5日 ふじか

 

ふじかさんこの夏大本命、このコンサートへの期待と充実感が伝わってきますね。「最新交響曲、最新協奏曲、最新交響組曲」と文章にも書かれていましたけれど、それだけ大作が並んだプログラムです。興奮状態もひしひしと伝わってきますし、感じとったものもしっかりと伝わってきますね。初めて聴いた、まだ数回目、そんな掴みきれないほど大きな作品をここまで文章にするって結構なエネルギーだと思います。記憶やイメージを言葉に置き換える作業は大変です。だからこそ、ここに鮮やかに封じ込められた素敵なレポートはきっと大切な歴史の一ページになります。ありがとうございます。

熱量たっぷりのとっても濃いコンサート・レポートでした。

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋では、久石譲コンサートのレポートや感想をどしどしお待ちしています。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心持ちで、思い出を残してみませんか。

 

コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
いつかまた自分の行けなかったコンサート、聴けなかった曲のふじかさんレポートを読んでみたい。まっさらから広がる世界に。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第104回 「久石譲&ロイヤル・フィル スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート」(ソウル)コンサート・レポート by tendoさん

Posted on 2025/07/30

2025年7月21,22日開催「久石譲&ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート in ソウル」です。久石譲がComposer-in-Associationを務めるロイヤルフィルとのソウル公演が実現です。WDO2017以来となる8年ぶりの韓国公演はどよめき歓声そしてスタンディングオベーションと熱狂的に迎え入れられました。

今回ご紹介するのは、両日参戦のtendoさんです。8年越しの思いがつまっています。自分が全力で楽しむことはもちろん、事前にコンサートに向けて久石譲音楽(主に自作品)の魅力を韓国国内で発信するなど、ロッテコンサートホールに集う観客への全力活動も素晴らしいです!ぜひお楽しみください。

 

 

Joe Hisaishi Royal Philharmonic Orchestra Special Tour 2025
Orchestra Concert in Seoul

[公演期間]  
2025/07/21,22

[公演回数]
2公演
ソウル・ロッテコンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ハープ:エマニュエル・セイソン

[曲目]
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番)
I. existence
II. where are we going?
III. substance

—-intermission—-

久石譲:Harp Concerto ※韓国初演
Movement 1
Movement 2
Movement 3

—-Soloist Encore—-
ドビュッシー:月の光 (7/21)

久石譲:Symphonic Suite The Boy and the Heron for piano and orchestra
    交響組曲「君たちはどう生きるか」 ※韓国初演

—-Orchestra Encore—-
One Summer’s Day (for Piano and Harp)  (7/22)
Merry-go-round(for Piano and Orchestra) (7/21,22)

[参考作品]

君たちはどう生きるか サウンドトラック 久石

 

 

はじめに

2017年以来8年ぶりの来韓公演、その感動的な瞬間をレビューで残したい。2025年7月21,22日両公演を鑑賞した。どちらの公演も同じプログラムなので一度にレビューを書こうと思う。

今回のコンサートは久石譲がキャリアを始めたミニマル・ミュージックを主体にしたコンサートだ。プログラムに紹介された曲は「交響曲3番」そして「ハープ協奏曲」また「君たちはどう生きるか」交響組曲だ。「君たちどう生きるか」はジブリ作品だがミニマル・ミュージックの手法で書かれた音楽なので、事実上全曲がミニマルで構成されたミニマルミュージックコンサートだ。

TENDOWORKで久石譲曲をレビューし始めたのは、久石譲が究極的に作曲家として追求したミニマル・ミュージックをさらに応援したい理由が強かった。そういう意味で今回のコンサートは本当に重要なコンサートであり重要な意味があった。

 

 

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の紹介

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)は英国のオーケストラで、世界の音楽界の最前線にいる。2024年から久石譲がコンポーザー・イン・アソシエーション(Composer-in-Association)を務めるパートナーだ。

私たちがよく知っていたワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)は2023年のWDOコンサートを最後に休憩に入ったので、自然に久石譲の様々な活動(アルバム録音やコンサート共演など)の大きな軸がロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団に継承されている。そのようなオーケストラが丸ごと韓国に来て公演するのは凄いことだった。

 

 

さて、21日の公演の公演から見てみよう。

 

Joe Hisaishi:Metaphysica (Symphony No.3)

久石譲の三番目の交響曲だ。(この辺りで交響曲番号についてはっきりまとめると、「The East Land Symphony」が交響曲第1番になる。今回のコンサートパンフレットにも確かに表記されている。)

Metaphysicaは新日本フィルハーモニー交響楽団第637回定期演奏会で初演されたのを聴いたことがある。もちろん直接日本に行ったのではなくアーカイブ配信で視聴した。その時の感想はこちらから。

 

初日はロッテコンサートホールの合唱席の一番後方真ん中の席に座って聴いた。そうだ。純粋に指揮者の久石譲の表情を詳しく観覧できる席だった。久石譲は指揮をしながら集中する表情をしながらも、時には演奏が満足なのか笑ったりもした。

この席では合唱席の特性上、打楽器があまりにも強調されてMetaphysicaを完全に楽しむことができないかもしれないと思ったが、幸い合唱席の最後列なのでそのような影響は少なかった。

 

第1楽章はホルンの咆哮で始まり祝典の雰囲気が漂う。Metaphysicaはもともと新日本フィル創立50周年を記念して委嘱された曲なので祝典の性格が強い。ハイライトはフレーズが複雑に絡み合って巧妙な調和が起こった時だった。私はフレーズが絶妙に交錯し広がる複雑な瞬間が好きだ。もちろん指揮や演奏にはかなりの難易度が続くでしょうが。

第1楽章を終え久石譲さんはハンカチで汗をぬぐった。少し緊張している様子だった。心の中で「久石譲さん、頑張ってください!」と叫んだ。

第2楽章は久石譲が指揮棒を手の後ろに折って手を使った繊細な指揮を始めた。第2楽章は弱から強へと徐々に移動していく。パンフレットの楽曲解説で「音の運動性」の意味を少し知ることになった。第2楽章の全体的な感じは夜明けのような雰囲気。あるいは夕焼けになってシニカルになるような雰囲気。曲のタイトルもちょうど「where are we going?」。

グロッケンシュピールの音も少し耳に入った。初演の時には感じられなかった音だ。単なる勘違いなのか、少し追加されたのか、元々あったものが強調されたのか、定かではない。今後アルバムで確認できるかもしれない。初演の時と比べて聴いて面白かった。

第3楽章は非常に爆発的な音を立てて始まる。ド,ソ,レ,ファ,シ♭,ミ♭!!! オーケストラの力強い音とともにストレスは一気に吹き飛ぶ!久石譲の他の自作曲「DEAD」を思い浮かべるぎゅっと抑えて演奏されるド,ソ,レ,ファ,シ♭,ミ♭!! もやはり良かった。トランペットの音も途中で追加されたのか、強調されたのか耳に入ってきた。

 

 

Joe Hisaishi:Harp Concerto

エマニュエル・セイソンさんと共に久石譲さんが舞台上に登場する。コンサートマスターとにこやかに握手を交わし、楽譜もなく金色の素敵なハープに近づき椅子に着席するEmmanuelさん。

ハープ協奏曲第1楽章は分散和音が主体だ。初めに演奏されるフレーズがハープを中心に何度も変奏され演奏された。ハープとオーケストラの組み合わせが完璧な曲だった。適度なスピード感があり、適度なメロディ感もあった。リズム的にも楽しめた曲だった。これがMinimal+Rythmの威力か!

第1楽章はかなりパワフルに終わった。第1楽章の終わりと同時に小さな拍手が沸き起こった。個人的にはその拍手はいいサインだと思った。ハープ協奏曲の始まりは良かった!

第1楽章が終わり拍手に向かって軽く礼をした久石譲さんは、再びハンカチを取り出して汗を拭き取る。「頑張ってください、久石譲さん!うまくいっています!」 はい。私の心の声です。

第2楽章。海外で反応が良かった緩徐楽章だ。やはりメロディアスな感じが強く特にハープ演奏にコンサートマスターのヴァイオリン演奏が素敵に乗せられるのも素晴らしかった。

第2楽章が終わりハープのカデンツァが続く。ハープを上下に扱ったりさまざまな奏法が続いた。またカデンツァには韓国の「타령」(taryeong/打令)の感じが少しある民俗的なメロディーもおもむろに演奏された。

カデンツァに続き自然に第3楽章が始まる。かなりスピーディーで激しい曲だった。ものすごいエネルギーだった。ハープのボディを叩く音もした。第3楽章には前で演奏されたカデンツァのフレーズがすべて入っていた。カデンツァで第3楽章の主題を予告するわけだ。

ああ、ハープ協奏曲はすべての楽章が完璧だった!久石譲の最近のミニマル曲の中でVariation 14 for MFBを聴いたとき、Viola Sagaの第2楽章を聴いたとき、あのヒット作の感じがした!ただ違いがあるとすれば、ハープ協奏曲はすべての楽章が完璧だったということだ!この曲は必ずヒットする!

コンサートのパンフレットで注目したのは【交響曲3番そして君たちどう生きるか交響組曲はすでにすべて録音済みで、ハープ協奏曲も東京でライブレコーディング予定】だということだ! 来年にも発売されるだろうが、早く発売されて全世界に知らせるべきだと思った。

 

ハープ協奏曲が終わりEmmanuelさんのソリスト・アンコールが続いた。ドビュッシーの「月の光」だった!本当にコンサートで思い出す素晴らしい瞬間の一つだ。その黄金の輝きとハープの美しい音色··· 涙が自然とにじんだ。

合唱席ではハープのペダルの動きもよく見えたがハーピストのその足技にも驚いた。ハープは本当に難しい楽器だな、それとともに本当に魅力的な楽器だな!

 

 

久石譲のコンサートの醍醐味の一つは、まさに舞台セッティングにある。短い時間にテキパキと舞台をセッティングする方々が現れメインハープをキャリアに乗せてすっと消えた。もっと驚くべきことは、久石譲の指揮台も遠くへさっと片づけられることだった。さらに驚くべきことに、久石譲のメインピアノは合唱席と向き合うようにセットされた。ちょっと待って、ピアノを弾く久石譲の表情が正面にあるじゃない?! この席に座って本当によかった!!!

 

 

Joe Hisaishi:Symphonic Suite The Boy an the Heron for piano and orchestra

久石譲の「Ask me why」演奏で始まる。弦楽器がピアノの演奏を包み込む。続いて「アオサギ」のモチーフが久石譲のピアノで演奏される。

今回の組曲は「君たちはどう生きるか」の異世界で使われた曲が主になったものと見られる。2曲を除いてはピアノがメインで、片手でピアノを弾きながら片手では指揮をする場面が続いたりもした。ピアノのない2曲は立ち上がって素手で指揮した。

一番記憶に残るのは「ワラワラ」という曲だった。不思議な打楽器も使われゴングも使われた。特に独特なサンプリング音はトランペットのマウスピースで表現した。木の打楽器の音は木ではなく鈴と鉄製の打楽器で演奏された。

「大伯父のテーマ」オーケストラの節度が感じられた。そして続く「Ask me why」。最近東京ドームで演奏されたバージョンと全体的な印象は似ていた。映画の場面が次々と思い浮かぶ素敵な交響組曲だった。映像と音楽の力はやはりすごい。

さらに、合唱席からオペラグラスで覗き込んだ楽譜には、「Symphonic Suite The Boy an the Heron」の隣に「Short Ver.」という文字があった。 ロングバージョンを先に作曲して少し切り取ったのかな?ロングバージョンは長さがどのくらいかな?今回録音したのはどっちかな?いろいろと気になることが増えていくばかりだ。

 

 

熱狂的な歓声と拍手が続き、アンコールが続いた。

久石譲さんが登場し、ピアノに向かって手招きし、「演奏しようか?」というイタズラなジェスチャーを見せてはピアノの椅子に着席する!

今回演奏される「Merry-Go-Round」 最初のイントロが聴こえるやいなや観客の嘆声が続いた。さらに今回演奏されたバージョンは、前半部だけが久石譲がピアノを演奏するのではなく、中盤部も演奏する2005年バージョン。貴重なアンコールだった。

今日は90%を超える観客のスタンディングオベーションが起きた。本当に熱狂的な雰囲気だった。そして団員の方々も合唱席の方にも後ろを向いて挨拶しててくれた。こちらにも丁寧に心配りを見てくれてありがとうございます!

 

 

 

続いて22日の公演の番組を見ていこう。

 

少し重複するので主な変化点を中心にレビューする。1日目は久石譲の指揮の正面の姿とピアノ演奏の正面を集中的に観察できる合唱席だったが、2日目は舞台を正面から見る。すべての楽器が一目で見えたりもするが音響的にもとても良い席で鑑賞した。

 

Joe Hisaishi:Metaphysica (Symphony No.3)

やはり素敵な祝典曲になるMetaphysica。前日よりさらにバランスが良くなった。久石譲さんも緊張感が解けたのか、2日目は汗を拭かなかった。(私の応援が効いたか?)

第1楽章はフレーズが重なって複雑な音が作られる時のカタルシスがすごかった。Metaphysicaの初演当時にはホルンを持ち上げる場面があった。第1楽章と第3楽章の最後にホルンを持ち上げる箇所が再現されるだろうか? 関心を持ったが持ち上げなかった。前日の合唱席だから見えないわけではなかった。初演と確かに違う点だ。

 

Joe Hisaishi:Harp Concerto

2日目は舞台を正面から見ていたので、第2楽章を終えたカデンツァの姿をオペラグラスで詳しく見ることができた。ちょっと待って、小さく長くて黒いプラスチックを利用してハープ弦を上下にこすったり、椅子の横に置いた銀箔紙のようなものを利用して弦にあてながらもう一方の手で弦の弾き独特の音を出したりもした。ハープボディを叩く時も最初は右にその次は左に。 向きを変えながらボディを叩いた。

Emmanuelさんは演奏中ずっと微笑んでいて、指揮者の久石譲さんとよくアイコンタクトをした。ハープ協奏曲の曲を心から愛し楽しんでいる感じでテクニックも完璧だった。

2日目は楽章間の拍手がなかった。ハープ協奏曲が終わった後に歓声が続いたが、前日と違ってハーピストのアンコールはなかった。

実は前日のドビュッシーの「月の光」が本当に良かったが、ちょっとすれ違う思いで全曲が久石譲作曲のコンサートでドビュッシーの曲が演奏されるのは玉に瑕だと思ったりもした。一瞬の久石譲ファンとしての小さな心配のようなものだ。とにかく昨日とは違うアンコールにつながるという予想が始まった。

 

Joe Hisaishi:Symphonic Suite The Boy an the Heron for piano and orchestra

最後の「Ask me why」では涙がポロポロと落ちて嗚咽するところだった。とてもうっとりしてその雰囲気に心酔した。

 

 

続く歓声、熱烈な反応!

あれ? 突然ハープが再びキャリアに乗せられて舞台に急いでセッティングされる。

そうして始まったアンコールはOne Summer’s Day。それも久石譲さんのピアノとEmmanuelさんのハープ。デュエットバージョンだった。最初の小節が聞こえるやいなや観客の嘆声が聞こえた。私は口を塞いだ。

One Summer’s Dayのスペシャルバージョンのアンコールは、急に準備されたものではないだろうか?前日の観客の熱い歓声に突然アイデアが浮かんだとか。もしそうなら、ソウルで一日で準備して初めて演奏したことになるだろう。いろいろ感動的だった。ハープの素晴らしいグリッサンドで曲は終わった。

最初のアンコールが終わり、観客のスタンディングオベーションが続いた。続く二番目のアンコールはやはりMerry-Go-Round!やはりイントロが演奏されるやいなや歓声が起こった。今日も中盤も久石譲さんが演奏する完璧なバージョンだった。

大々的なスタンディングオベーションが続いた。観衆の歓呼の声も圧巻だった。本当に爆発的な反応だった。2017年と比べると今回のコンサートは両日ともはるかに圧倒的な熱烈な反応だったようだ。

 

 

終わりに

実は今回のコンサートは久石譲のファンとして心配していた部分もあった。

韓国で久石譲の名前をつけた公演はヒット曲中心のメドレー形式のコンサートだ。人々はそのような形式に慣れていて、近年久石譲が追求するコンサートと大きく違う。韓国にとても久しぶりにいらっしゃるので最近の傾向と人々の認識の距離が相当あった。

実際に今回のコンサートの主なプログラムは30分の大きさでやや現代的で難解と感じられるMetaphysica、そして30分のミニマル作品のハープ協奏曲。

それで私は今回のコンサート計画が知らされるやいなや、いくつかの文章を投稿しながらコンサートの予定曲の性格について大々的に知らせようと努力した。

幸いにもそのブログの閲覧数は相当でしっかり投稿した文章が大きな効果があったのではとも感じた。そのような面でとても嬉しかった。久石譲さんも韓国公演が本当に盛り上がったと思う。その結果One Summers’ Dayのスペシャルなバージョンにも繋がったのではないかとも思う。

今回のコンサートはコンサートパンフレットも韓国語にすべて翻訳されていて、そのような部分で細心の配慮が感じられた。幸い全曲がミニマルで構成されたこの歴史的で重要なコンサートで熱く爆発的な反応が起きた。

コンサートが終わってからも余韻が相当だった。貴重な時間をつくって韓国で公演してくださってありがとうございます。 これからまた会いましょう!

 

公式X(旧ツイッター)に紹介された写真と映像に私の姿が写っていた。夢じゃなかったね。現実だったね。

久石譲のファンの方々と大切な会話もして、FlyingStoneさん(ふらいすとーん)の日本から海を渡ってきた大切なプレゼントも渡された。

私にこんな日も来るんだな、これからも一生懸命生きていかなければならない。そんな凄いエネルギーを与えてもらったコンサートだった。

 

2025年7月25日 tendo

出典:히사이시조 로얄 필하모닉 오케스트라 스페셜 투어 2025 오케스트라 콘서트 인 서울 리뷰 :: TENDOWORK
https://tendowork.tistory.com/93

 

 

 

photos by tendo

 

tendoさんのレポートは真剣さと愛嬌があっていつも楽しいですね。日常的にSNSで投稿や交流もありますが、とにかく視点や考察まで鋭い。なるほどそうかもしれない!と感嘆します。それはこの公演からも見つけることができますね。とりわけ久石譲のミニマルを中心とした自作品においては、日本はもとより世界中を見渡しても最前列にいるファンの一人だろうと思います。もっと会話できたらどれだけ楽しいだろう。でもなにより日本じゃない場所でそんなファンがいてくれて心からうれしい!

さて、tendoさんに教えてもらって、コンサート前に啓蒙活動したブログがこちらです。とても丁寧に久石譲の自作品について紹介されています。もともとtendoさんがミニマルから久石譲音楽に入っているのでそれはもうお墨付きの案内人です。「いい投稿をありがとう」とか「予習できて感謝しています」とか「おかげでもう少し公演が楽しめると思います!ありがとうございます!」といったコメントにも溢れています。

実際に閲覧者は何千人にも及びこのソウル公演を楽しみにしていた多くの人たちが見たと思います。ほんと素晴らしいです。

 

 

tendoさんのサイト「TENDOWORKS」には久石譲カテゴリーがあります。そこに、直近の久石譲CD作品・ライブ配信・公式チャンネル特別配信をレビューしたものがたくさんあります。ぜひご覧ください。

https://tendowork.tistory.com/category/JoeHisaishi/page=1

 

いつもtendoさんのレポートや活動を見ると、自分もがんばろうと思わせてくれます。ありがとうございます。

 

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋では、久石譲コンサートのレポートや感想をどしどしお待ちしています。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心持ちで、思い出を残してみませんか。

 

コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
いつか会えることを夢みて。でもいつでも繋がってる。音楽は人も心もつなげてくれてる。感謝!

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第103回 「久石譲&ロイヤル・フィル スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート」コンサート・レポート by thuruさん

Posted on 2025/07/26

2025年7月24,25日開催「久石譲&ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート」です。久石譲がComposer-in-Associationを務めるロイヤルフィルとの日本公演が実現です。ジブリフィルムコンサート・ツアーファイナルat東京ドーム、ソウル公演を経てツアー最終日まで熱く駆け抜けたこの夏へ。

今回ご紹介するのは、ジブリフィルムコンサートに続いてthuruさんです。ライブ配信で臨場感たっぷりです。そのままコンサートの時間で進んでいるような感想はイメージ映し出す疑似体験です。ぜひお楽しみください。

 

 

Joe Hisaishi Royal Philharmonic Orchestra Special Tour 2025
Orchestra Concert at Suntory Hall

[公演期間]  
2025/07/24,25

[公演回数]
2公演
東京・サントリーホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ハープ:エマニュエル・セイソン

[曲目]
久石譲:Metaphysica(交響曲第3番)
I. existence
II. where are we going?
III. substance

—-intermission—-

久石譲:Harp Concerto ※日本初演
Movement 1
Movement 2
Movement 3

—-Soloist Encore—-
ドビュッシー:月の光 (7/24)

久石譲:Symphonic Suite The Boy and the Heron for piano and orchestra
    交響組曲「君たちはどう生きるか」 ※日本初演

—-Orchestra Encore—-
One Summer’s Day (for Piano and Harp) (7/25)
Merry-go-round (for Piano and Orchestra) (7/24,25)

[参考作品]

君たちはどう生きるか サウンドトラック 久石

 

 

久石譲スペシャルツアーinサントリーホールコンサートレポート

 

ライブ配信された7月25日公演の様子をレポートさせていただきます。

東京ドームツアーと並ぶこのコンサート。久石譲ファンの中にはこのコンサートを待っていた人も多くいるはずです。それもそのはず、演奏予定の3曲はすべて音源化されておらずファンからしたら触れる機会が少ないからです。

一昨年、第2期が終了したWDO。その代わりともとれるこのコンサート。その様子を画面越しながらお伝えさせていただきます。

 

Metaphysica(交響曲第3番)

新日本フィルによって委嘱されたこの作品。ミニマル全開でした。

1.existance
テンポは速く、リズミカルで16分音符が管楽器と弦楽器の間を行ったり来たり。リズム中心のとても難しい楽曲でした。中間でチェロをはじめとした優しいパートの後、本人公式インスタグラムに上がっていた録音のパートを発見。なんのレコーディングをしていたのか気になっていましたが予想通りMetaphysicaでした。また、コントラバスの早いピチカートもみられ、全体的にミニマルチックな第1楽章でした。

2.Where we are going?
新日本フィルのYouTubeにもあがっていたため、この第2楽章だけは予習できました。弦楽器の怪しくも悲しいような雰囲気で始まり、タイトルのように本当に自分はどこに行っているんだろうと思わせるような曲でした。少し映画音楽にもありそうな雰囲気で、そこから金管が出始め、打楽器が刻み始めます。どこかSymphony No2やThe End of the Wouldのような雰囲気でまた、ミニマルとクラシックが融合しているようにも感じました。

3.Substance
これもまた16分音符中心です。弦の不協和音に始まります。3つある楽章の中で一番ミニマルっぽく感じました。ベルなど打楽器が印象に残る曲でした。駆け上がっていくような中間部、ラストの1部分は新日本フィルのYouTubeに上がっています。最後はラヴェルのラヴァルスのような終わり方でした。

全体通して、Symphony No2などスネアをはじめとする打楽器の感じでか、この打楽器の使い方久石さんっぽいなとわかるようになってきました。それほどに近年の久石さんのオリジナル作品における、重要なポイントは打楽器である。ということがこのMetaphysicaを通じてよくわかりました。

 

休憩

 

Harp Concerto

久石譲✕エマニュエル・セイソンのタッグがおくるハープ協奏曲。とても楽しみにしていました。が、電波が悪く、第1楽章の終わりからしか見られませんでした。見逃し配信で見ます、、、

Movement1.
聞き取れた範囲だけになります。これもミニマルっぽい感じで弦とうまく調合していました。また、特殊奏法なのかわかりませんがハープからボイスパーカッションのような音も多く聞こえました。

Movement2.
ここで大きな気づきが1点。エマニュエル・セイソンがポケットからドライバーのようなものを取り出し、ハープの弦にこすりつけたり、紙のようなもので弦を押さえつけて演奏したりと、現代音楽みのある第2楽章でした。

Movement3.
ここでもハープの弦ではなく反対をたたきながら演奏し、特徴的なパートが見られました。オーケストラとハープの合わさった絶妙な音楽。素晴らしいの一言に尽きます。

ハープの見たことのない特殊奏法に翻弄され、絶妙な演奏に圧倒されました。

 

Symphonic Suite The Boy and the Heron for Piano and Orchestra
(交響組曲 君たちはどう生きるか)

この作品が交響組曲化するにあたってずっとミニマル中心で1曲1曲が短いのにどうするんだろうと思っていました。シンガポール公演の写真を見て、アンサンブル形式だと確認してから今日まで、どうなるんだろうとずっと考えていました。サントラないの曲名に従って自分なりにまとめてみました。

1.Ask me why(疎開)
おなじみの久石さんによる和音から始まり、オーケストラも入ってきました。弦楽器の伴奏がきれいな和音ではなく少し不協和音のようになっていたのが気になりました。明らかだったので演奏ミスではないかと。

2.青サギ
サントラ曲名でいうと青サギ、青サギ3、青サギの呪いの3曲が合わさっていました。そのため、まとめて青サギとしました。久石さんの力強いピアノとオーケストラで不穏な雰囲気を演出します。

3.ワナ
青サギの不穏な雰囲気のままこの曲へ。こちらも力強いピアノが印象的でした。

4.ワラワラ
久石さんは指揮に徹し、ホルンが不思議な生物のテーマを彩ります。SEは金管楽器の奏者がマウスピースで行いました。

5.火の雨
サントラでコーラスが歌っている部分はピアノに置き替えられていました。オーケストラとともに盛り上がりを見せます。

6.祈りのうた(産屋)
宮崎駿監督のために作られたこの曲。しっかりと組曲にも入っています。久石さんがピアノでメロディーを奏でた後、コンマスとともに不思議な旋律を奏で暗い雰囲気をオーケストラが演出します。

7.大王の行進
自分がサントラで1番といってもいいほどに好きな曲です。サントラに比べてアップテンポで久石さんもニコニコ指揮をされていました。

8.大伯父の思い
楽団のピアニストがレの音を一定のリズムで奏でこの曲がスタート。明るい曲で組曲の終盤を彩ります。

9.Ask me why
東京ドームツアーのアンコールと全く同じです。やはりサントリーホールですので東京ドームとは段違いで音が良い。絶妙なオーケストレーションが素晴らしいです。Ask me whyにはじまり、Ask me whyに終わる。まるで千と千尋の神隠し組曲のようです。やはりどちらの曲も共通するのはピアノの重要さ。近年、久石さんのピアノに演奏回数は減少傾向にありますがやっぱり久石さんとピアノは切っても切り離せないですね!

ほぼすべての曲でピアノを弾いた久石さん。こんな姿はとてもレアです!でも、ほかの交響組曲がおよそ25分から30分なのに対して、この組曲は15分ほど。楽曲内容的に長くうまくつなげるというのは難しいと思いますがここからの改訂に期待します!

 

 

Soloist Encore
One Summer’s Day for Harp
東京ドームツアーでも演奏されたピアノとボーカルバージョンのボーカルがハープに置き換わったものです。2022年のWDOもバンドネオンとともに演奏されました。泣いちゃいました。

Encore
Merry Go Round
よくアンコールで演奏されるものと変わりありません。しかし変更点が一か所。Symphonic Variation Merry Go Roundとこのアンコールバージョンの違いは、ワルツが始まった後の久石さんのピアノのメロディーです。微妙に違います。転調前のチェロが奏でるSymphonic Variation Merry Go Roundのピアノパートも久石さんがもう一度ピアノを弾かれました。つまり、曲中にイントロ、ワルツ後、転調前の三回ピアノを弾いたという事になります。(語彙力皆無だけどどうにか伝わらないかな)

以上で全曲目終了です。会場全体スタンディングオーベーション。楽団員も久石さんもニコニコが止まりません。複数回のカーテンコールの後、コンサート終了です。

サントリーホールでの二日間。ソウル含めると四日間。本当に素晴らしい演奏だったと思います。久石譲✕ロイヤルフィルによる活動はまだ終わりません。おそらくこの一年以内にMetaphysicaを含むもしかするとこの公演の三つの曲目をいれたアルバムが出ることでしょう。久石譲ファンとしては待ちきれませんね。これからの活動が世界中の人々に感動を与えることを願っています。

2025年7月25日 thuru

 

とても同時進行な鮮やかなレポートありがとうございます。コンサートの余韻より前の、その瞬間感じたことがそのまま時間とともに流れるようでとても楽しかったです。しかも久石譲の音楽を現在進行形で追いかけていないと書けないような視点に溢れていてすごいです。

ちょっと裏側をお話させてもらうと、このレポートが届いたのは当日夜23時、ライブ配信終了からちょうど2時間後でした。それでこの吸収度・咀嚼度・充実度、すごくないですか!?だから、ここにあるのは、誰しも共感するところがあるコンサートを聴きながら思っていることの現れなんですね。本当にありがとうございます。

Merry-go-roundピアノ3回弾いた、よく伝わりました。

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋では、久石譲コンサートのレポートや感想をどしどしお待ちしています。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心持ちで、思い出を残してみませんか。

 

コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
コンサートレポートをもらうたびに久石さんの熱いファンがここにもいるんだ!!ってうれしくなりますね。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第102回 「久石譲スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2025/07/24

7月16,17日開催「久石譲スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル at 東京ドーム」です。武道館コンサートから17年ぶりとなったジブリフィルムコンサートは久石譲×ロイヤル・フィルという豪華な日本公演で実現しました。2017年から始まった世界ツアーの集大成であり世紀の凱旋公演です。

今回ご紹介するのは、ふじかさんです。久石譲と共に歩んだ14回目のレポート!さすが過去コンサートの記憶と思い出もたっぷり詰まったレポートに脱帽です。しかも一筆書きしたような勢いは、ライブの余韻どころかライブ直後に鮮やかすぎてただただ楽しい。ぜひお楽しみください。

 

 

Joe Hisaishi Royal Philharmonic Orchestra Special Tour 2025
Studio Ghibli Film Concert Tour Final at Tokyo Dome

[公演期間]  
2025/07/16,17

[公演回数]
7/16 1公演
7/17 2公演
東京・東京ドーム

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
合唱:東京混声合唱団/ブルックリン・ユース・コーラス/リトルキャロル
ソプラノ : エラ・テイラー
ヴォーカル:麻衣
マンドリン:マリー・ビュルー
マーチング:陸上自衛隊東部方面音楽隊
      陸上自衛隊第1音楽隊
      海上自衛隊東京音楽隊
      航空自衛隊航空中央音楽隊
      航空自衛隊中部航空音楽隊

[曲目]
風の谷のナウシカ
1. “NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF THE WIND”

魔女の宅急便
2. “KIKI’S DELIVERY SERVICE”

もののけ姫
3. “PRINCESS MONONOKE”

風立ちぬ
4. “THE WIND RISES”

崖の上のポニョ
5. “PONYO ON THE CLIFF BY THE SEA”

天空の城ラピュタ
6. “CASTLE IN THE SKY”

紅の豚
7. “PORCO ROSSO”

ハウルの動く城
8. “HOWL’S MOVING CASTLE”

千と千尋の神隠し
9. “SPIRITED AWAY”

となりのトトロ
10. “MY NEIGHBOR TOTORO”

—–encore—-
Ask me why (for Piano and Orchestra)(映画『君たちはどう生きるか』より)
Madness(映画『紅の豚』より)
Ashitaka and San(映画『もののけ姫』より)

[参考作品]

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD A Symphonic Celebration

 

*プログラムの楽曲リストは、コンサートページや上のDVD/CD作品ページをご参照ください

 

 

Joe Hisaishi Royal Philharmonic Special Tour 2025 Studio Ghibli Film Concert Tour Final at Tokyo Domeコンサートレポート

 

初日7月16日公演の模様をレポートさせて頂きます。

2025年7月16日 東京ドーム 19:00開演

3月、コンサート情報発表を知り、衝撃が走りました。今年の夏は豪華コンサート3本立て。ジブリフィルムコンサート、ロイヤルフィルとのスペシャルコンサート、祈りのツアー、どれも甲乙付け難い特別なコンサートたち。その中でも特に人気の集中したジブリフィルムコンサートに、幸運にも行くことが出来ました。

前回2008年の武道館公演は行くことが出来ませんでしたが、行けたフィルムコンサートとしては、2011年の大阪城ホールでのチャリティーコンサート公演ぶりとなりました。

 

 

当日、東京の天候は雨が降ったり、強風が吹いたりの悪天候。ですが、入場時間周辺は少し穏やかになり、青空が垣間見えたりする中、会場へ入ることが出来ました。

会場外は、今までにないレベルの人、人、人!!!世の中にはこんなにも久石さんが好きな人がたくさんいるんだなぁ・・・と改めて驚きました。入り口周辺にはコンサートの大型掲示物がたくさん。いつものコンサートとはスケールが違いすぎて、動揺してしまいました笑

手荷物検査、チケットもぎりをすぎて、回転扉を通過すると、そこには大きな「Joe Hisaishi Studio Ghibli Film Concert Tour Final」と書かれた液晶パネルが掲示されていました。

ドーム内に入ると、ものすごい座席の数!大阪城ホールではキャパシティが16,000人くらいでしたが、今回は40,000人収容とのことで、2倍以上!改めて規模の大きさに驚きました。

開演の10分くらい前にスクリーン映像とBGMが流れ始め、特別な時間の始まり。聴いたことのないピアノ曲、『感-feel-』のようなアルペジオが印象的なゆったりとした曲とともに、スクリーンには樹々の絵が映し出されていました。(ふらいすとーんさんに確認したところ、曲名は『Musica del Museo』との事でした)

19時くらいからオーケストラ奏者、合唱隊が次々にステージに登壇。チューニングののちに、笑顔で久石さんがステージへ登場。いよいよコンサートが始まります。

 

 

『NAUSICAA OF THE VALLEY OF THE WIND』

ティンパニの轟音とともに、ナウシカからスタートです。2011年チャリティー公演もこの曲から始まっています。前奏に続き、久石さんがピアノへ移動。近年のコンサートでは中々聴けなかったピアノソロがもう冒頭から始まるという超贅沢な構成。

ここのピアノソロも年代ごとによって若干の違いがあるんですよね。2011年くらいはメロディーに装飾音がついていたり、2014年くらいからはシ♭ードーレーと続くところで左手の伴奏がなくなり両手でメロディのみに。今回は2015年のSymphonic Poem版を継承した感じがしますが、少しリズムが変わっていたりと発見がありました。

合唱が加わり、『ナウシカレクイエム』、『メーヴェとコルベットの戦い』『遠き日々』と次々と名曲が畳み掛けます。大型スクリーンに映し出される映画のシーンとステージ上の生演奏。視覚情報が多すぎて、どこを追って聴けばいいのか若干混乱気味であっという間にフィナーレの『鳥の人』へ。終盤、『風の伝説』へのメロディへと繋ぎ、転調する部分のアルペジオはこのツアーから追加された気がします。

 

『KIKI’S DELIVERY SERVICE』

武道館公演以来、この楽曲は細かく改訂されていて、今回のフィルムコンサートツアーではそれらの集大成なアレンジになっていると思っています。

『海の見える町』ではピチカートから始まり、メロディフォニー版から採用されたメロディの装飾音とターン、伴奏のピアノ、2014年版から採用された木管や弦楽でのメロディの追いかけっこ、2018年版から採用された副旋律や華やかな打楽器パート。各アレンジから良いところがそれぞれ合わさって聴いていてとても楽しい構成に進化しています。

『傷心のキキ』ではスクリーンの映像と曲の悲しさが相まって泣きそうになりました。『母さんのホウキ』は2019年の交響組曲版とほぼ同じと思われ、最後の最後までソロヴァイオリンの技巧的でも美しく響き渡る音色に酔いしれました。

 

『PRINCESS MONONOKE』

武道館から採用されたコーラス入りの豪華アレンジ版。久石さんの右から大きく腕を振るような仕草とともに太鼓の打撃音。『アシタカせっき』からスタートです。コーラスが入る部分から音量もグッと上がり、ステージからの迫力が凄く鳥肌が立ちました。

続く、『タタリ神』では和太鼓の力強い音ともにおどろおどろしい弦楽や木管のうねり、迫り来るような旋律。

『もののけ姫』ではソプラノのエラ・テイラーさんが登場し、日本詞で歌われていました。ワンコーラス後に続く、転調とソプラノが副旋律に回る構成は、久石さんのコンサートでしか聴けない特別なアレンジ。最終盤でのハイツェーでのロングトーンは収録音源よりも長く、圧倒されました。

 

『THE WIND RISES』

世界ツアーからソロ楽器がバラライカからマンドリンへ置き換わりました。今回は青いスーツを着たマリー・ビュルーさんが務め、久石さんのピアノのエスコートともに楽曲が始まりました。何気にこの曲を個人的にコンサートで聴けたのは2014年の長野公演以来だったと思います。

続く『菜穂子』のテーマでは主旋律が久石さんのピアノソロからマンドリンへ変わっています。組曲から採用された副旋律を木管が彩りを添えます。

再び『旅路』へ。スクリーン映像は二郎と菜穂子の2人のシーンを中心に描かれ、繊細で美しいメロディがより際立って聴こえてきました。映画のキャッチコピー“生きねば”というメッセージが改めて心に強く響きました。

 

『PONYO ON THE CLIFF BY THE SEA』

『深海牧場』の導入から始まり『海のおかあさん』へ。再びソプラノのエラ・テイラーさんが歌い上げます。2023年に披露された交響組曲版では合唱バージョンになりましたが、改めてソプラノソロが映える曲だなぁと思いました。こちらも終盤のロングトーンの箇所は音源よりも長かったと思います。

『いもうと達の活躍』で合唱で現れる宗介のテーマも忘れないように。『母と海の賛歌』波の魚に乗って宗介に会いに来るポニョの映像が印象に残ります。

『崖の上のポニョ』は英語詞バージョンで。1番が終わり、2番への間奏で転調していく様子が個人的にはとても気に入っています。2番のピアノソロパートでは2011年時は久石さんがピアノを弾いていましたが、ワールドツアーからは指揮のみになっています。

最終盤、楽曲の終わりとともに、スクリーン映像も映画のラストシーンへと変わり、曲が鳴り止むとともに、映像もしっかり終わるとという演出に心を打たれました。会場も圧倒されたようで、拍手が一際大きかった気がします。

余談ですが、2011年のチャリティーコンサートでは『THE GENERAL』組曲の1楽章と1楽章が取り上げられ、5楽章では爆破のシーンと楽曲がぴたりと合う演出もしていたことも思い出しました。

 

『CASTLE IN THE SKY』

アリーナ内に登場した自衛隊のマーチングバンドの演奏によって『ハトと少年』から始まります。マーチング版の演奏は2017年の交響組曲版ではなく、トランペットとオーケストラのためのWDO版のリズムが元になっています。

続く、『君をのせて』はコーラスのみからスタートして、徐々にマーチングバンドも伴奏に混ざってくる構成に。スクリーン映像は映画本編のオープニングのシーンとなっていました。

最後の『大樹』ではアレンジは違えど、交響組曲版を元にし、さらに合唱が加わる豪華版。コーダ部も一度静かに消えそうになったところから突如駆け上がり、バン!と終わる展開に。

会場内で聞くと、広すぎる会場故に若干の音ズレがあった印象でしたが、改めて配信版は音ズレもなくぴたりハマった演奏になっていました。

 

『PORCO ROSSO』

ここでは1曲まるまる久石さんがピアノを演奏するとても貴重な時間。

ピアノソロも演奏される度に少しずつ変化がありますよね。さらに途中からは音源にも収録されていない、指パッチン付き。やがて金管木管が入ってきてメインメロディーは引き継がれていきます。クラリネットのアドリブ的なパートが終わると、楽曲は終盤へ。最後の部分はピアノの音だけで終わらずに、他のパートも和音を重ねてフィナーレへ。

こちらも余談ですが、2022年の交響組曲のアウトロでの弦楽パートも素敵だったんですが、いまだに収録されず・・・笑 早くこちらも再び聴きたいところです。

曲が終わるとオーケストラのスタンバイのため、久石さんは一旦ステージからはけますが、準備完了し、チューニングが終わるとすぐにステージへ。休憩なしのノンストップ公演です。

 

『HOWL’S MOVING CASTLE』

再びオーケストラ編成での演奏に戻りました。『Symphonic variation ”Merry -Go-Round”』に『Cave of Mind』が加わったアレンジで武道館より演奏されてきていますが、改めて聴くと、このアレンジによってより”ハウルの動く城”の音楽世界観がより完成されたなぁと思います。

『Symphonic variation ”Merry -Go-Round”』の方は序盤に『空中散歩』のシーンで一度完全版のワルツのパートが出てきますが、『Symphonic variation ”Merry -Go-Round”』+『Cave of Mind』ですと、本当に最後まで完全版ワルツが姿を表しません。なおかつ映画本編の内容に沿って楽曲が展開されてきていて、映画そのものも追体験できる交響組曲的な要素も加わっています。

『Cave of Mind』が奏でられると、久石さんがピアノへ・・・そう最後に『人生のメリーゴーランド』の完全ワルツが締めくくりに演奏されます。

この日の公演は久石さんのピアノソロのアレンジが変わりました。メロディのスタートが通常の「レーソーシ♭ー」ではなく、「レーミ♭レド♯レソシ♭レー」という感じで出だしにターンの装飾音がついたお洒落なアレンジでした。『小さいおうち』のワルツを彷彿させるような、少しジャジーな印象を与えるような、そんな演奏でした。

個人的には結構気に入りましたが、配信の最終公演では通常の演奏に戻っていたようです。そこから大団円のワルツが優雅に奏でられて、楽曲はフィニッシュです。

 

『SPIRITED AWAY』

麻衣さんがステージに登場して、前半の『One Summer’s Day』からスタートです。

2017年の世界ツアーが始まった頃はピアノソロのみでしたが、公演を重ねいていくうちにこちらも変化してきて、最終的には麻衣さんのボーカルと久石さんのピアノが入れ替わりながら進む前半、『いのちの名前』の歌詞が歌われる後半の構成となりました。

ちなみにこの久石さんの伴奏で2022年のWDOは三浦さんのバンドネオンをフィーチャーして演奏されていたのも記憶に新しいですよね。

こちらも久石さんが最初から最後までピアノで麻衣さんをエスコート。アウトロには、麻衣さんの高音でのスキャットも新たに加わり、こんなに広大な東京ドームの空間、久石さんのピアノと麻衣さんの歌声のみが響き渡るという贅沢な時間が流れていました。

ここで久石さんがマイクを取って短めですが、MCがありました。

「海外で娘ですとここで紹介するとウケるんです」と言った後、麻衣さんの紹介へ。会場からは温かい拍手に包まれました。そして「皆さん楽しんでますか?」と問いかけた後の拍手を聞き取った後、再び演奏へ戻りました。

後半は『ふたたび』のボーカルバージョン。このアレンジはジブリフィルムコンサートでしか聴くことのできない貴重な楽曲。間奏で聴くことのできる壮大なオーケストレーションも個人的には好きなポイントです。

 

『MY NEIGHBOR TOTORO』

チェレスタやマリンバ、グロッケンが可愛らしく奏でる『風のとおり道』が短く流れた後、明るく快活な『さんぽ』へ。楽器紹介付きの『オーケストラストーリーズ』のアレンジと合唱が融合したバージョンです。冒頭の歌だし、コーラスが通常より早く入ってしまうトラブルのありました。後半は麻衣さんとエラ・テイラーさんが登場し、二人での美しいハモリも聴かせて下さいました。

その後はメインテーマの『MY NEIGHBOR TOTORO』が本編のトリを飾ります。シンプルなメロディを際立たせるための緻密なオーケストレーションが本当に印象的で、曲中3回転調を繰り返していきます。後半の久石さんのピアノソロを際立てるヴァイオリンの副旋律が個人的には本当に好きなポイントです。

In CからIn Bへ半音下がる転調を過ぎて、楽曲はクライマックスへ。トトロのメロディが次々と畳みかけるように壮大なフィナーレでバン!という音でフィニッシュです!個人的には2017年のWDO川崎公演で聴いた以来でしたので、かなり久しぶりな印象でした。

 

ここで本編は終了で、割れんばかりの大きな拍手。その中でいつものコンサートで恒例なオーケストラメンバー、合唱団への紹介&拍手タイム。何度か久石さんの出入りがあったのちに、僕にも拍手して!のような仕草ののちに、久石さんはピアノへ向かいます。

 

 

ENCORE

『Ask me why』

聴き慣れない弦の刻みが始まり、「なんだこの曲は!?」と思った瞬間、馴染みのあるコードGの和音が・・・そうです ”君たちはどう生きるか”よりメインテーマの『Ask me why』のピアノとオーケストラによる新アレンジです。

久石さんのピアノに寄り添うように、弦楽や木管、金管が静かに折り重なっていくとても美しいオーケストレーションで、聞いている瞬間は本当に衝撃で鳥肌が立ち続きました。中間部の間奏では、リズムの波紋の広がりが印象的で、『Sense of the Light』のような雰囲気も感じました。

昨今の”Single Track Music”の要素も取り入れられてようなアレンジに進化したこの楽曲。今後も生で聴ける機会がたくさんあると嬉しい限りです。

終盤のサビでは今までの演奏とは少しリズムが異なる箇所もあり、弦楽の波が広がっていくような副旋律もかっこよく、その後は静かに新たな和音が追加されてフィニッシュでした。

 

『MADNESS』

アンコールは2曲だと思うから、『MADNESS』はやらないだろうな・・・と思っていたら、この曲の演奏が始まりました。久石さんが2度ほど楽曲中にピアノと指揮台を行ったり来たり、国内での演奏は2022年のWDO以来だったと思います。

構成は武道館でのアンコール、交響組曲版と同じ少し短めの構成で、あっという間にフィナーレでした。最後のバン!という音に続け、会場内は爆音とともに、金銀のテープが炸裂。会場内も「あっ!!」という驚きの声で包まれました。

 

『Ashitaka and San』

アンコール最終曲はこちらの楽曲で。武道館の際も演奏されていましたが、世界ツアーからは前半の久石さんのピアノ演奏にオーケストラの伴奏がつき、サントラバージョンに近いアレンジとなりました。最後の一音まで久石さんのピアノを堪能し、後半は指揮台へ、オーボエ、弦楽の間奏に続き、コーラスが加わります。

間奏の間に久石さんからのメッセージがスクリーンに投影されました。

今回は英詞での合唱で、日本詞がそのまま英詞になった印象でした。最後は合唱の美しいハーモニーが希望の音色を奏でて、静かに消えゆくように演奏が終わりました。

 

 

再び会場は割れんばかりの大きな拍手に包まれました。久石さんは何度か舞台袖とステージは行き来したのち、弦楽パートの奏者の方々と握手を交わし、会場に大きく手を振ってステージから去っていきました。

あっという間でしたが、とても濃密だった2時間の公演。近年のコンサートではなかなか見ることができなかった、久石さんのピアノ演奏も堪能でき、大満足なコンサートとなりました。たくさんピアノを弾いていたコンサートで直近で印象に残っているのはWDOツアーの2015年、2017年、2022年でしたが、それらのコンサートよりもピアノを弾いていた印象です。

コンサート後半、ピアノと指揮を行ったり来たりする姿は2010年のアジアツアー、2011年のフィルムチャリティーコンサートあたりも彷彿とさせてくれました。

夏の大きなコンサートはあと2本ほど大きなツアーが控えています。次回は久石さんの最新作が堪能できるサントリー公演。こちらも本当に楽しみです。

2025年7月22日 ふじか

 

photos by ふじか

https://x.com/fujica_30k

 

これから先いつ読んでも瞬時にフラッシュ=バックしそうなレポートありがとうございます。その公演でしか書けない感想、ライブ配信でしか書けない感想がありますね。ふじかさんの鮮やかな16日公演の感想はおそらく大変貴重な記録になるでしょう。みんなが期待する円盤化もどの公演が選ばれるかはわかりません。そうは言っても17日夜の最終公演だろうという予想は誰しもありますよね。そうだからこそ16日公演のレポートは未来への財産です。

僕はふじかさんとコンサート会場でご一緒できたときには、終演後に喫茶しながらお話できる機会もあります。今回はこのコンサート・レポートを読みながらしっかりたっぷりコンサート談話できた気分です。皆さんもそんな気分を味わうことができたならうれしいです。

 

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

公式写真と出演者SNSで綴るコンサート記録!写真計81枚!

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋では、久石譲コンサートのレポートや感想をどしどしお待ちしています。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心持ちで、思い出を残してみませんか。

 

コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
ジブリコンサートの感想を語れるなんて、今しかできないギフトですよ~!いつでもウェルカムしています。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第101回 「久石譲スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル」コンサート・レポート by thuruさん

Posted on 2025/07/20

7月16,17日開催「久石譲スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル at 東京ドーム」です。武道館コンサートから17年ぶりとなったジブリフィルムコンサートは久石譲×ロイヤル・フィルという豪華な日本公演で実現しました。2017年から始まった世界ツアーの集大成であり世紀の凱旋公演です。

今回ご紹介するのは、はじめましてですthuruさんです。ライブ配信での鑑賞ですがその解像度とまるでそこにいるような臨場感と体感が伝わってきてすごいです。ぐっと一気に進んでしまいます。そしてこれまでも久石さんの音楽を聴き続けているとわかる着目点や気づきにわくわくします。ぜひお楽しみください。

 

 

Joe Hisaishi Royal Philharmonic Orchestra Special Tour 2025
Studio Ghibli Film Concert Tour Final at Tokyo Dome

[公演期間]  
2025/07/16,17

[公演回数]
7/16 1公演
7/17 2公演
東京・東京ドーム

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
合唱:東京混声合唱団/ブルックリン・ユース・コーラス/リトルキャロル
ソプラノ : エラ・テイラー
ヴォーカル:麻衣
マンドリン:マリー・ビュルー
マーチング:陸上自衛隊東部方面音楽隊
      陸上自衛隊第1音楽隊
      海上自衛隊東京音楽隊
      航空自衛隊航空中央音楽隊
      航空自衛隊中部航空音楽隊

[曲目]
風の谷のナウシカ
1. “NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF THE WIND”

魔女の宅急便
2. “KIKI’S DELIVERY SERVICE”

もののけ姫
3. “PRINCESS MONONOKE”

風立ちぬ
4. “THE WIND RISES”

崖の上のポニョ
5. “PONYO ON THE CLIFF BY THE SEA”

天空の城ラピュタ
6. “CASTLE IN THE SKY”

紅の豚
7. “PORCO ROSSO”

ハウルの動く城
8. “HOWL’S MOVING CASTLE”

千と千尋の神隠し
9. “SPIRITED AWAY”

となりのトトロ
10. “MY NEIGHBOR TOTORO”

—–encore—-
Ask me why (for Piano and Orchestra)(映画『君たちはどう生きるか』より)
Madness(映画『紅の豚』より)
Ashitaka and San(映画『もののけ姫』より)

[参考作品]

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD A Symphonic Celebration

 

*プログラムの楽曲リストは、コンサートページや上のDVD/CD作品ページをご参照ください

 

 

久石譲ジブリフィルムコンサートファイナル東京ドームコンサートレポート

3月、日課の響きはじめの部屋のチェックをしているとなんと待ち侘びた日本でのこのコンサートの決定を受け4か月。胸が高鳴る思いでこの2日間を過ごしました。自分は大切な予定が重なる可能性があったのでチケットは買えず、ライブ配信での視聴となりました。その様子をお届けします。僕の目と耳で得たライブのレポートですので少し誤ったものもあるかもです。

開幕を飾るのはやはり『風の谷のナウシカ』宮崎監督とのタッグ一作目です。全体的に、A Symphonic Celebration(以後ASC)と楽曲に変化は見られませんでしたが全体的にスピードが速かったように感じました。ナウシカに限らず、ライブ配信通して、スネアやタンバリンなど打楽器とマイクが近かったのか、強調して聞こえました。

続くは『魔女の宅急便』スクリーンに作中風景が映るのを確認してから数秒おいて海の見える街がスタートしました。WDO2018を継承したジャジーな演奏でした。久石さんは指揮棒を使わずニコニコで指揮をされていました。武道館さながらの上から指揮台、弦楽器群を見渡すアングルもあり、感動しました!海の見える街から傷心のキキへは拍手もなくスムーズに移り変わりました。かあさんのホウキでは、コンサートマスターがスタンドプレイ。ライトアップされていました。豊嶋さんとはまた違う少し遅めなためのある演奏で僕の目にはすでに涙が、、、

3作目は『もののけ姫』アシタカせっ記のスタートは太鼓ではなくバスドラムでした。太鼓自体は設置されていてタタリ神では使用されていました。タタリ神は久石さん公式インスタにも掲載されていたように、ASCに比べかなりスピードアップされていました。最後のもののけ姫に向かっていく、音の重なりでは上から抑えるような指揮が印象的でした。ここで舞台左からソプラノのエラ・テイラーさんが登場。日本語を上手に歌われていました。海外公演同様、スクリーンには他の作品も歌詞が英語で書かれていました。気づいた違いはASCに比べ、歌詞途中の『もりのせい〜』のところをすごく伸ばしていました(伝われー!)また演奏中、久石とソプラノのアイコンタクトが多かったのが印象的でした。曲が終われば大きな拍手。ソプラノのにっこりでした!

もののけ姫がおわり、スタッフが3人楽譜やマイクを設置すると、マンドリンのマリー・ビュルーさんが登場。『風立ちぬ』が始まりました。こちらも気づくほどの変更はなく、久石さんは伴奏スタートでした。ピアノから指揮へ戻る際のマンドリンはASCに比べ、強くゆっくり演奏されていました。また、足で拍をとりながら笑顔で久石さんとアイコンタクトを取り演奏されていました。

スタッフ3人が楽譜やマイクを片付けると、『崖の上のポニョ』がスタート。海のお母さんはもののけ姫と同じソプラノが歌われました。気づいた点が2箇所。いもうと達の活躍の合唱が『Ah-Ah-』と入るあたり。とても遅く感じました。久石さんはコーラスに向かって指揮をしていました。もう一つ、ポニョのメインテーマの中間部優しくなってASCではトランペットがメロディを奏でていましたが、今回はトランペットは聞こえず、ピッコロのみのように聞こえました。(上手く聞こえなかっただけかも)このパートも遅めでした。そこからラスサビとコーラスが入る際、独特なテンポでした。ジャン!と終わるとこれまでにない割れんばかりの拍手が起きました!

続くは自衛隊の白黒混じる軍服によるマーチング『天空の城ラピュタ』です。3隊合同演奏で、人数も多かったため、かなり編曲されているように感じました。とても安定感がありました。その後のCrying youではASCではハープからスタートでしたが、世界ツアー同様合唱からはじまり、ここでも泣いてしまいました、、、自衛隊も途中で加わり、最後はタメありのフィニッシュです。久石さんのほかに、観客席中央部、そして左右スクリーン前のあたりに自衛隊の指揮者がおり、4拍子で大きく拍をわかりやすく取られていました。そして大樹へ。スネアの刻みが最高でした。途中からコーラスも加わり、ラストは交響組曲と同じ掛け合いをコーラスで行い、ダーンジャジャジャン!と自衛隊が締めてフィニッシュです。そして、マーチングで退場となりました。コーラスが手拍子をはじめ、観客もそれに合わせる形で手拍子をしていました。

スクリーンに鈴木敏夫プロデューサーの書いたメインビジュアルが映し出された後、『紅の豚』演奏メンバーが入場します。海外ツアー同様フィンガースナップもあり、ジャジーな演奏でした。スクリーンに写るジーナをバックにピアノを弾く久石さん。めちゃくちゃかっこよかったです。クラリネットの掛け合いも最高。ラストはアンサンブル全員の和音で終了です。

オケが戻り、チューニングをしたところで『ハウルの動く城』です。ここでなんでもないことですが僕の気になってる事が一つ。Worksバージョンに比べASCやこのライブ配信も所々ファゴットの音がよく聞こえるのが気になる今日この頃です。星をのんだ少年では、ドームの天井が青いライトで照らされ、まるで映画に入り込んだかのような演奏でした。人生のメリーゴーランドでは、久石さんのピアノの後のオーボエソロの後にトランペット?か金管がプッと音を出してしまうハプニングが。これにはワルツを奏でるバイオリン奏者も笑っていました。演奏自体に問題はなく、カメラが揺れるほどの拍手が送られました。演奏後にはソロを吹いたトランペット、ファゴットが立って拍手を受けました。

拍手やめのサインを久石さんがした後、麻衣さんが登場。『千と千尋の神隠し』です。少し喉の調子が悪いように見えましたが素晴らしい演奏でした。ピアノの伴奏は少しアレンジされていましたが、ASCからほぼ変わりはなかったです。最後に麻衣さんが高音を出すパートが追加されていました。ふたたびでは、先ほどよりも大きく歌うので、問題なく素晴らしい演奏が行われました。他の公演ではこのコーナーでMCがあったそうです。

そしてラストの『となりのトトロ』風の通り道に始まり、さんぽへと繋ぎます。さんぽは、ASCと違い、武道館コンサートが継承されており、各楽器スタンドプレイのあとのサックスパートはクラリネットに置き換えられていました。また、打楽器フェーズ、コンマスのヴァイオリンソロもありました。そして海外ツアーと異なり、スムーズにトトロのメインテーマに行くのではなく、拍手挟んで静かにヴァイオリンがトトロのテーマを奏ではじめます。中間部のピアノで無事泣きました。最後の転調部は少し遅くタメがありました。

ここまでが予定されていたセットリストです。ソリスト、自衛隊各隊のお偉いさん?が出てきて久石さんと何度も何度もお辞儀をして、アンコールへ。

1曲目は『君たちはどう生きるか』よりAsk me whyです。何度かピアノソロでは演奏されていましたが、今回はピアノとオケのバージョンでした。最初はオケは和音の伴奏でしたが、途中から16部音符で刻む演奏へと移り変わりました。管楽器はそこまで目立ったパートはありませんでした。(トランペットやフルートくらい)映画通してミニマルでいく。その覚悟を感じた演奏でした。今度サントリーホールで日本初演の交響組曲君たちはどう生きるかの伏線かのようにも感じました。

アンコール2曲目はMadnessです。やはりこの曲といえば赤い照明。ダークな雰囲気で演奏が始まりました。途中ピアノ間に合うのかなとヒヤヒヤしながら聴いていました笑。大きな変更はありませんでしたが、終盤のオケとピアノの掛け合いで少し、ずれが起きてしまいましたが逆にいい味を出していたように感じました。やはり東京ドームという大きな会場での音響の弊害ですね、、、しかし、素晴らしい演奏でした。最後には金銀のテープが勢いよく投下されました!

ラストはアシタカとサン。Madness同様に、パリでのコンサート、ASCではアンコールの2曲は収録されていません。武道館ぶりの合唱付きのアシタカとサンは本当に素晴らしかった。この海外ツアー8年間の集大成であるこのコンサートを締めくくるにふさわしい曲。そして演奏でした。交響組曲に比べて、最初の弦楽器の導入が変わったようにも聞こえました。コーラスは英語。大地に緑が戻りました。ここでもやはり泣いてしまいました。

曲が終われば、割れんばかりの拍手。しかし、観客でスタオベの人は少なく、久石さんがおでこに手を当てて見渡す仕草をすると、笑いが起きながらも観客がたちはじめ、大きな拍手が起きました。また、スクリーンには鈴木敏夫プロデューサーが写り、おぉという歓声もおきました。

凱旋公演となった今回の2日間のコンサート。コンサートホールではないため、音響など、難しいこともあったかと思います。しかしそれをも忘れさせる素晴らしい演奏。久石譲xロイヤルフィル。このタッグは今後も韓国、日本、イギリスでコンサートを行います。自分はサントリーでのライブ配信見るつもりですのでまたレポート書かせていただきます。全世界のジブリそして久石譲ファンが喜べる2日間となったこと。心から嬉しいです!!!!

2025年7月19日 thuru

 

とてもディティールの伝わるレポートありがとうございます。コンサートに行った人なら、もっと言うとライブ配信を見た人なら共感できることもたくさんある視覚的にも音響的にも解像度の高いレポートですね。じゃあ、わからない人にはわからない、そんなことはありません。このライブ配信のレポートは一期一会とても貴重なものです。このときのカメラアングルや音響バランスはおそらくライブ配信(客席から見えるものやスクリーンに映し出されるものとも少し違う)のためだけ、だからです。

これから先めでたく円盤化されたときに(勝手に確定!?)視覚的にも音響的にもさらにブラッシュアップされて完成度もぐっと上がってくると予想しますよね。ひとつだけ、僕もトランペットに関しては会場でも配信でもマイクバランスが小さいと感じるときがありました。公演を経る中で修正がかからなかったということは、なんらかの理由があるのかもしれませんね。特に金管楽器はキンキンと音がハウリングするのを防ぐためとかいろいろあるのかもしれませんね。逆に、昼公演でこの楽器音大きいなと思ったのは夜公演の配信ではうまく調整されていたとも感じました。

とにかくドームですからね、ステージに300人乗ってますからね、コンサートホールの聴き方とは前提が違います。マーチングバンド200人もふくめて贅沢すぎる巨大コンサートです。それはもうテーマパークのように大迫力な空間を楽しみたい。ライブ配信もしてくれて少しでもあの臨場感を体感できただけで心からうれしいですよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

公式写真と出演者SNSで綴るコンサート記録!写真計81枚!

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

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コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
まさかジブリコンサートの感想を語るときが来るなんて、夢だけど夢じゃなかった。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第100回 久石譲ベストアルバム新定番3選

Posted on 2025/01/22

ふらいすとーんです。

今回はズバリ!久石譲ベストアルバム新定番3選です。約45年を超える音楽活動のなかでベスト/コンピレーション・アルバムも数多く世に送られてきました。いま総括するならこれ、そして今から始めるならこれ、そのどちらも満足の太鼓判3枚のアルバムをご紹介します。

 

 

『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』(2020)

 

久石譲キャリア初!世界的クラシック・レーベルDECCA GOLDから世界同日リリースとなった新時代のベストアルバムです。フィジカル/デジタルで世界中どこでもアクセスポイント。CD帯には「久石作品の中でも映画のために作られた珠玉のメロディが際立つ代表曲を中心に構成された愛蔵版」とあります。全28曲収録!詳細はDisc.ページをお楽しみください。

 

アルバムをお祝いしてSNSで一曲ごと一口コメントしたものをまとめました。

 

 

 

『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』(2021)

 

早くも一年後に届けられたワールド・ベスト第2弾です。ワールド・ワイドに活動する久石譲にふさわしい、海外スタッフによって選ばれた楽曲たち。CD帯には「映画・CM音楽、そしてライフワークのミニマル・ミュージックから構成された久石譲の多彩な世界に触れる一枚」とあります。全28曲収録!詳細はDisc.ページをお楽しみください。

 

アルバムをお祝いして第2弾は広く一口コメントも大募集しました。ファンにとっての一曲、好きな理由やエピソード、好きが溢れる。またやりたい。

 

 

 

『A Symphonic Celebration』(2023)

 

世界展開がすぎる!次はなんとクラシック名門レーベル、ドイツ・グラモフォンからのデビュー盤です。その第1弾に選ばれたのは、今も世界ツアー中で話題沸騰のあのコンサート「ジブリフィルムコンサート」をほぼ完全コンパイルした企画盤です。CD帯には「宮崎駿監督映画作品への提供曲をロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共にロンドンにてオーケストラ録音」とあります。特別収録も含めた全12曲!詳細はDisc.ページをお楽しみください。

 

 

久石譲ベストアルバム新定番3選、入門編としてボリュームたっぷりに最適です。過去のベスト盤に入っていた曲も多く選ばれていて、長年のファンも納得と充実のコンピレーションです。その証拠にこれまでは「これから久石譲を始めるオススメ」を尋ねられた時に、オーケストラならこれかなあ、ピアノならこれなかあ、ジブリはこれかなあ…でも…が残る。これからは迷わずにコレとおすすめできる、そんな一枚ができてうれしい心強い。

 

 

こぼれ話3選

収録元まで知りたい

アーティストの入門編でベストアルバムを聴きながら、この曲気に入った!このテイストもっと聴きたい!どのオリジナルアルバムに収録されてるんだろう…載ってないわからない。そんな経験ないですか?

以前はポップスでもインストゥルメンタルでも、ベストアルバムが発売されるとなったら公式サイトやレーベルサイトに、あるいは販売流通サイトや音楽配信サービスの商品紹介に、そしてCDブックレットに「この曲のオリジナル盤はこのアルバムです」とわかっていたと思います。近年はなぜかその記載が減っているように感じています。載せない意図やメリットがどこにあるのかなかなか頭を振り絞っても浮かんでこない。

リリース前なら情報を出さない楽しみ方もあると思います。曲目だけを見てどのアルバムからだろう?どのバージョンが収録されるんだろう?まさかのニューバージョン?!新録音?!とわくわく予想や期待も膨らみます。これはポップスなどのベスト=シングル曲と違ってインスト曲だからこその面白さもありますね。多くの作曲家はサントラなどのオリジナル・バージョンから、音楽的にさらに幅広く充実させたリワーク・バージョンを誕生させています。ライブ音源だってある。リリース後はぜひ情報を公開してほしいです。全貌を明らかにして更新してほしいです。もう隠す必要もない、開示してこそ新しいワクワクが生まれる。手にとったCDブックレットをゆっくり眺めたい。

 

情報ソースはこれから扉を叩こうとしている新しいファンへの親切心です。今から歩きはじめるフィールドで、右も左もわからないなか順路を示してくれる情報は心強い道標になります。手がかりもない見つけられないだと、せっかく芽生えた好奇心の旅は早々に終わってしまいます。自分だったら諦めるかもなあ、まだ思い入れも強くない段階でそこまでエネルギー費やせるかなあ…それよりあのアーティストは追いかけやすそうだし楽しそう目移りしそう…って。

すごいチャンスロスです。正直、新しいファンの本当の試練はそこじゃありません。収録元がわかったとして、そのアルバムが今でも聴けるのか、手に入るのか、フィジカル/デジタルどちらを探したらいいのか、手強いぞ。聴けるところまで無事に辿り着けるのかが問題であって、そこに行くまでの情報なんて前提条件でクリアにしてあげたい。自国のエンタメに日常的に接している人たちにもたもたさせてしまうなら、海外から興味を持ってくれた人たちどうしましょう。

どれだけSNSが主流になったとしても、いやだからこそ、総合的に体系的に一元化されている場所があると、いつでも新しいファンは助かるものです。それが公式サイトなのかウィキペディアなのか、どこでもいいし誰でもいいと思います。ファンサイトも少しでもそんなお役に立てるのならうれしいです。──という気持ちで、いつもベストアルバムのDisc.ページには収録元を載せるようにしています。ささやかな親切心ですがどうぞお納めください。

 

 

 

令和だから言っとこう

SNSを見ていると新しい風が入ってきていると感じる時があります。「Summerって久石譲なんだ」「Summerってジブリ?映画の曲?」「伊右衛門の曲って久石譲だったんだ」「伊右衛門初めてフルバージョンで聴いてみた」発見するたびに新しい聴き手が増えたんだなあ、初めてその曲に触れた人がまた一人増えたんだなあ、とうれしくなります。ここで古参ファンの皆さん、「何言ってんだ、そんなの当たり前すぎて一昨日来やがれ」「ちっ、いまだにそこか、はぁ布教が足らん」なんて思っても言ったらダメですよ。約45年間の音楽活動ですから。ファンの軌道も何周目に入った?というかほんと螺旋のようにぐるぐる昇って広がっているのを肌で感じますね。例えばお酒でも新酒、5年もの、10年もの、20年もの、それぞれフレッシュさから熟成まで味わいが広がるからこそ奥深い楽しみ方ができます。だから新しいファンがいたことをみんなで喜びましょう。年数を重ねていくファンキャリアをみんなでお祝いしましょう。

「久石譲ってバリバリの現代音楽もやってるんだ」「ミニマル・ミュージックを作ってたんだ」そんな声も聞かれますね。映画音楽やCM曲のイメージしかなかったらびっくりしますよね。その感覚、平成に置いていこう。久石譲の原点はミニマル・ミュージックであり、久石譲の最新もまたミニマル・ミュージックを追求しています。上の『Songs of Hope: The Essential Joe Hisaishi Vol. 2』(2021)には、耳にしたことのあるメロディから本格的な現代曲まで分け隔てなく並んでいます。これちょっとうらやましいです。先入観なしに疑いようなくこれが久石譲なんだと受け取れる感覚、ベスト盤に選ばれるような曲なんだと同じ心持ちで聴ける感覚。長年のファンでも「久石さんの現代作品は聴かない、ちょっと苦手かも」「ミニマルってなんか難しい」ってありますよね。その感覚、平成に置いていこう。これから新しくファンになる人たちは、ミニマル・ネイティブですよ。令和だしね、令和スイッチでいきましょう。

食わず嫌いの人には、いいから一回聴いてみてってCD貸したりなんかして。デジタルは貸すわけにもいかないですもんね。プレゼントとしても喜ばれそうですね。手にとって眺めているだけでもちょっとした幸せな気持ちになります。そんな昭和譲りのかたちも大切にしたい。

 

 

 

 

 

 

 

ファンにとってのゴール/スタート

とにかく音楽の間口が広いことに驚くばかりです。そして現役感がすごい。あの人は今、あの曲は今じゃないけど、時間をワープするほどの懐かしさは憶えません。それはずっと聴きつづけているから、ずっとどこかで流れてきたからです。どの曲も人生の特別な瞬間を思い出させてくれます。どの曲も人生の特別な瞬間を作ってくれます。そのたびに温かい記憶や幸せなぬくもりを連れてきてくれる。なかには、ひととおり聴いたつもりでいたけれど抜けてたなんて曲もあるからまた楽しい。それはもうベストアルバムに選ばれてるくらいですからね、いちいち聴きごたえがあってしょうがない。かぶりつきみたいな感じで聴こう。

共に歩んだファンは、とっておきのマイベストやプレイリストがありますね。公式ベスト盤とのギャップこそ自分が積み重ねてきた大切なファン時間です。そうやって辿り着いたゴールもあれば、ベスト盤からここから広がっていくスタートもありますね。その楽曲を引き立たせるのに最適な編成で収録されている楽曲たち、この曲はどういう成り立ちの曲なのか、タイアップはあったのか、サントラの原曲も聴いてみたい、このバージョンのほうが好みかも、えーっ!?こんな曲がベストに収録されてないの!?、かぶりつきみたいな感じで調べてさらに聴こう。

 

 

これまでの音楽活動を久石譲とファンと一緒に祝うアルバムです。おめでとうございます!ありがとうございます!──ベストアルバムに選ばれなかったからといって、どうでもいい曲ということではありません。ベストアルバムは新しい旅の始まりです。そこから自分のベストトラックを見つけていく楽しみがたっぷり用意されています。自分だけのベストアルバムが作れたとき心のFUN CLUB会員証がもらえるらしいですよ。久石譲に出会う前の世界より、久石譲に出会ってからの世界のほうが好き。そんな人が一人また一人とできていったらいいな。

 

それではまた。

 

reverb.
今日も世界中が聴いている The Music of Joe Hisaishi!

reverb2.
100回おめでとう!でも自分だけの力じゃない。たくさんいただいたコンサートレポートもあって、この100回はファンの久石譲愛でできています。ありがとうございます!

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第99回 通常配置と対向配置、誰が決める?

Posted on 2024/12/20

ふらいすとーんです。

今回はオーケストラの楽器配置です。

久石譲は本格的にクラシック音楽の指揮活動を始めた2010年代前半から、コンサートもレコーディングもそのほとんどを対向配置(古典配置/両翼配置)というフォーメーションで臨んでいます。ベートーヴェンはじめ古典派の時代にも主流だったものです。この配置の特徴に、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが左右対称に位置すること(だから両翼)や、コントラバスとテューバの低音が左と右とで拮抗することなどがあります。

一方の通常配置(一般配置)は、20世紀に入ってから音響的に高音から低音へと固めて流れるように、楽器群も高音楽器(左)から低音楽器(右)に固めて配置したものです。録音する際にも合理的だったのがそのきっかけとも言われています。どんどん広いホールで演奏されるようになる時代の変化ともリンクしています。大きな音の塊やうねりとなりやすい通常配置から生まれる音響と、より掛け合いやアンサンブルのさまを感じやすい対向配置から生まれる音響、それぞれにメリットあります。

 

対向配置(左側)と通常配置(右側)

 

 

久石譲音楽の対向配置の魅力、コンサートで体感してほしいところ。ぜひハマってください。

 

それからそれから、久石譲ファンおなじみ「World Dreams」「DA・MA・SHI・絵」や、交響組曲になった「ラピュタ」「もののけ姫」なども、オリジナル盤の通常配置と最新録音の対向配置、音源で耳をすませてほしいところ。聴きどころ満載です。

 

 

 

通常配置と対向配置、どっちが多い?

今、クラシックはじめオーケストラ演奏会では、どうなっているでしょうか。コンサートに行ったとき、テレビや動画で見るとき、気にしてチェックしてみてください。感覚値では半々くらいじゃないかなと思います。もしアーカイブされている過去映像まで遡るなら通常配置のほうが少し多いかもしれません。

ベートーヴェンもブラームスも対向配置を想定して作曲した。なのに楽器配置はどちらでも演奏される。久石譲も対向配置を想定して作曲している。なのに通常配置で演奏されることもある。なんで?──ずっと素朴な疑問でした。古典音楽はともかくとしても、現代作品であれば作曲家の意思は直に尊重されないものなのかな?、、なんならオリジナルスコアに「この作品は対向配置を推奨している」くらい明記してもいいことじゃないのかな?

 

通常配置と対向配置、誰が決める?

作曲家の意思はあまり尊重されないのか、じゃあ決定権は指揮者が握っているのか、そう思案していたところ違う発見もありました。クラシック音楽誌「レコード芸術」にあった音楽評論家のお話から紹介します。

 

 

連載 Viewpoint 70

今月のテーマ・ディスク
シューベルト:交響曲第8番《未完成》&第9番《ザ・グレイト》

 

③「古典配置」が「対話」を促進

通常配置か対向配置かそれが問題だ

舩木:
それにしても、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管はずいぶん変わりましたね。私が実演で初めて聴いたのは、マズアに率いられて来た1987年の来日公演。ちょっと雑味を含んだ、渋くて重量のある響きで。それが今は、本当に洗練されたオーケストラになりました。

満津岡:
それにまず古典配置になったのも大きいですよね。

舩木:
同感です。ブロムシュテットは、本来は古典配置、つまり第2ヴァイオリンが客席からみて右側にいる「対向配置」でやりたい人でしょう。サンフランシスコ響でもやっていましたか。シュターツカペレ・ドレスデンでは通常配置でした。

満津岡:
ドレスデンは伝統があり「私たちは通常配置で」と言われてできなかったそうです。ゲヴァントハウス管は、シャイーの時代も古典配置で演奏していましたし、アンサンブルの作り方がじつに巧みです。

舩木:
対向配置で、プレイヤーたちも腕を上げたと思います。

満津岡:
ブロムシュテットは、第2ヴァイオリンも第1ヴァイオリンと同じぐらいうまくなくていはいけない、と言っています。パーヴォ・ヤルヴィも、通常配置だと第2ヴァイオリンが完全に伴奏になってしまうと話していましたが、同じ考え方ですよね。

舩木:
ブロムシュテットが古典配置を実施したことと、彼のスコアの読みが変わってきたことの間には、関連があると思いますか?

満津岡:
大いにあると思います。ブロムシュテットは、自伝の中で対向にする根拠として「19世紀までの音楽は、それを前提に書かれているから」と話していましたし、それによってスコアの読み方、バランスのとり方も変わって来るのは当然だと思います。

舩木:
今回の録音でも、内声部の扱いが非常に丁寧ですね。ABABAの構造で書かれた第2楽章で、Bがイ長調で再帰してくるところ【第267小節~】。ここの第2ヴァイオリンとヴィオラは、本当に見事です。連続する16分音符でユニゾンで動いているのですが、ちょっとしたクレッシェンド/デクレッシェンドが、寄せては返す波さながらで、とても美しい。

満津岡:
確かにそこは見事。古典配置では、ヴィオラと第2ヴァイオリンが一緒に動くところも一つのポイントですね。

舩木:
シューベルトのスコアをよく見ると、第2ヴァイオリンは、他の楽器とこのように組になって音色を作ることもあれば、対話をするところもあり、とても繊細に書かれていますね。対向配置の方が、これら二つの状況の違いがはっきりと出やすい。

満津岡:
《ザ・グレイト》は、通常配置では「対話」が分かりづらく、となるとあとはテンポをぐらぐら揺らしてクライマックスをつくるしかやりようがない(笑)。ブロムシュテットはそういう演奏に対して非常に否定的なことを言っています。自伝の中でも「対話の原則」という言い方をしていて、そのことは、ことにこの《ザ・グレイト》のような作品だと非常によくわかりますし、実際とても効果的です。

舩木:
まさに。各パートがどんなバランスと言葉遣いでもって対話するか。そこをみるのは、この音楽を聴く醍醐味でしょう。

(「レコード芸術 2022年10月号 Vol.71 No.865」より抜粋)

 

 

答えは「オーケストラ楽団の伝統」という決定権もあるということでした。一般的に、指揮者と楽器配置はイコールです。対向配置をとっている指揮者であれば古典~近代クラシック~現代音楽も対向配置で臨むことが多いと思います。オーケストラ側が共演指揮者に合わせて臨機応変に対応している。そんな中でも、かたくなに通常配置を死守したいオーケストラ楽団もあるんですね。もしかしたら「この作品は」だったのかもしれませんけれど。ウィーン・フィルも通常配置のほうが感覚的に多い気はしますが、指揮者の要望に応えて対向配置をとる演奏会もあります。

オーケストラも「音をつくる」と言われます。それぞれの楽団で音像や雰囲気に特徴があります。普段と演奏配置が変わればパートの呼吸が合わせにくかったり、アイコンタクトがしづらかったりと、いろいろあるでしょう。音の距離もあるから、楽器の距離が変わるだけで0コンマ何秒で合わせるタイミングも変わってくるとか、いろいろあるでしょう。なるほどなるほど。だからリハーサルもすごく大切ですね。なるほどなるほど。

上のお話では、対向配置の魅力や特徴を伝えるキーワードも満載でしたね。「アンサンブルの作り方がじつに巧み」「第2ヴァイオリンも第1ヴァイオリンと同じぐらいうまくなくてはいけない」「プレイヤーたちも腕を上げた」「対話」、なるほどなるほど。

 

 

久石譲=対向配置です。話題にあがったシューベルト交響曲もあります。上の解説のポイント箇所をおさえながら、久石譲版も聴いてみよう。

 

 

 

話は変わって。

通常配置の魅力も知りたい。また別のクラシック音楽誌「モーストリー・クラシック」ではこんなことが触れられていました。オーケストラの楽しみかた?オーケストラを楽しむポイント?、そんなコーナーだったと思います。

 

 

弦楽器の通常配置は、客席から見て左(下手)から、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロだ。チェロの音をより明瞭に聴衆に届けたいときはチェロを内側にしてヴィオラを外側にする。いずれの配置でもチェロの後方にコントラバスが控える。

もう1つのタイプは、第2ヴァイオリンが上手外側に来て第1ヴァイオリンと向かい合う左右両翼配置(対向配置)だ。これもチェロが上手奥、または下手奥の2タイプがあり、下手奥のときはコントラバスも一緒に来る。

左右両翼型は古い時代に慣例だった配置で、例えばベートーヴェンの交響曲第4番、第6番『田園』、チャイコフスキーの第6番『悲愴』等にはヴァイオリンのステレオ音響効果を聴かせる箇所があるので、この配置が活きる。

だが、新しい時代になると、この形では対応できない作品も書かれるようになった。例えば、ショスタコーヴィチの交響曲第5番の第3楽章は、ヴァイオリンが2部ではなく3部に分かれ、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンのそれぞれのパート譜に3つのパートが書き込まれているため、ヴァイオリン奏者は1ヵ所にまとめられていないと3分割が不可能、もしくはとてつもなく困難になる。

そうしたことから、指揮者のストコフスキーが提唱して現在の通常配置がおこなわれるようになったようだ。しかし、左右両翼配置を偏愛する指揮者も少なからず存在するし、曲によってはその方が映える。だから、いかなる配置をとるのかを見極め、そのメリットが果たして発揮されているかを聴きとるのが大きな楽しみとなる。

数を数えるというのは編成規模をみることだ。第1ヴァイオリンが16なら「16型」といい、原則的にそこから2ずつ減じて、第2ヴァイオリン14、ヴィオラ12、チェロ10、コントラバス8となる。「14型」なら12、10、8、6、「12型」なら10、8、6、4が基準だ。

(「モーストリー・クラシック 2023年1月号 vol.308」より抜粋)

 

 

これを見ていくと、通常配置にも対向配置にも基本型とさらに細かい配置パターンがあること、対向配置で映える作品があること、通常配置でないと対応しづらい作品があることなど、またいろいろなことが見えてきて好奇心も生まれてきます。

これ、だから、なおさら予めスコアに楽器配置を推奨してたほうがいいんじゃない?って素人はついそう思うのですが。そうかあ、でもそうするとプログラムが組みづらくなる。同じ演奏会で前半はベートーヴェン交響曲を対向配置で、後半はショスタコーヴィチ交響曲を通常配置でなんて出来ない。休憩時間に大掛かりなセットチェンジにもなるし、そもそもリハから大変になるし、演奏者の楽器と音の距離感も対応がとても難しいはず。

久石譲の場合、古典音楽と現代音楽を並べる、クラシック音楽と自作品を並べるプログラム。そして同じアプローチで臨む、だから一貫して対向配置をとっているんですね。はっきりしてる。

 

 

進化。

これはもう時効でいいかな、今思えばで感想を振り返ってもいいかなと思うこと。久石譲が対向配置に切り替えた頃の演奏会は弦が薄いと感じることがありました。過去から聴き親しんでいた久石譲の音楽、たとえばナウシカやなんかで。その時は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが分かれたから塊としての音圧が無くなったのかなと心ひそかに抱いていました。同じタイミングで大規模だった編成から一般的な2管編成へとぐっと絞られたこともあったのかもしれません。なんか迫力がないと思った演奏会がいくつかありました。

今となってしまえば、そんな記憶も吹き飛ぶくらい久石譲指揮の音像は充実しています。楽器配置が違うということは、楽器の鳴らし方も変えていかないといけないのかもしれません。今、久石譲コンサートを聴いても、あるいは一番小さい編成(室内オーケストラ)のFOCコンサートを聴いても、迫力が足りないなんて思うことは決してないと思います。つまり久石譲は私たちに内緒で勝手に進化している。手放しで音を楽しみ、ワクワクやゾクゾクを味わえるのは、対向配置を採用して約10年以上になる指揮:久石譲の優れた技芸です。

 

 

メモ。

今回のことで少し過去コンサートの映像を振り返り。WDO2014なんと通常配置の衝撃、WDO2015以降は盤石の対向配置、いや2013年の読響シンフォニックライブも対向配置、いやいや2011年の西本願寺音舞台もその前のチャリティーコンサートも対向配置。そうです、移行期はこの2011年「3.11 チャリティーコンサート 〜ザ ベスト オブ シネマミュージック〜」前後じゃないかなと思っています。アルバム聴いてもジャケットを見ても対向配置になっています。

「ミニマリズム」(2009)や「メロディフォニー」(2010)までは通常配置です。2009年から2011年にまたがる「坂の上の雲」もそうです。そこから2015年前後くらいの作品は移行期で入り乱れてるかもしれません。録音時期やライヴかなどにもよるでしょう。

 

 

むすび。

通常配置と対向配置、いろんなことがわかりました。わかりましたが、久石譲=対向配置です。最新録音版の「World Dreams」「DA・MA・SHI・絵」や交響組曲になった「ラピュタ」「もののけ姫」などを聴いても対向配置の効果は絶大です。当初から対向配置想定して書いていた?と思うくらいぴしゃっとハマっています。もともとあったフレーズたちでそう感じてしまうサラウンドに耳の幸せ広がっていく。

これからますます久石譲作品は世界中で演奏されていきます。通常配置と対向配置のどちらでも聴ける機会は増えていくでしょう。通常配置で違う魅力が聴けるならそれは楽しいし半減したら残念に思う。今人気のある作品たちが音源とスコアと両輪で世に出てきている流れはうれしいことです。対向配置で演奏する効果を多くの指揮者や演奏者の皆さんが掴んでくれたらうれしい。

未来の音楽評論家・評はきっとこうなる。「久石譲の”DA・MA・SHI・絵”は第1Vnと第2Vnがミニマルなフレーズをステレオに掛け合う対向配置の魅力と快感だ」「久石譲の”交響曲第2番”も”第3番”も対向配置でないと作曲家の意図やスコアに潜む仕掛けを再現することは難しいだろう」「アニメーション音楽だと甘くかかっていると観客に見透かされてしまう。スタジオジブリの今にも飛び出してきそうな立体的な絵と同じように、この交響組曲の立体的な音楽を描くのに対向配置はマストだ。作曲家の久石譲は、自ら指揮を振るコンサートでも、アップデートされてきた交響組曲そのすべてで対向配置をとっている。資料となる音源もある。~~」なんて言われてたらほんとうれいしい。

 

それではまた。

 

reverb.
対向配置フリーク集まれ!!

 

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第98回 「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.11」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2024/08/12

7月25,26日開催「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.11」コンサートです。今年は「JOE HISAISHI FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.7」(7/31-8/1)とのスペシャルウィークです。久石譲の3大コンサート(WDO,FOC,MF)のうち2つのコンサートがこの夏一挙開催です。

今回ご紹介するのは、久石譲3大コンサートに久石譲指揮定期演奏会/特別演奏会にと足しげく参戦するふじかさんです。それうはもう聴きなれてる書きなれてるだけあって、そういう音楽なんだとイメージしやすい。ぜひお楽しみください。

 

 

JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE Vol.11

[公演期間]  
2024/07/25,26

[公演回数]
2公演
東京・紀尾井ホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:Music Future Band

[曲目]
フィリップ・グラス / 久石譲:2 Pages Recomposed
フィリップ・グラス:弦楽四重奏曲 第5番

—-intermission—-

デヴィッド・ラング:Breathless
マックス・リヒター / 久石譲:On the Nature of Daylight
久石譲:The Chamber Symphony No.3 *世界初演

[参考作品]

久石譲 presents MUSIC FUTURE IV

 

 

MUSIC FUTURE VOL.11 初日公演の様子をレポートさせて頂きます。

2024年7月25日 紀尾井ホール 19:00開演

久石さんが主宰するMUSIC FUTURE シリーズも早くも11回目になりました。現地に足を運ぶのは2018年以来、6年ぶりとなりました。コロナ禍から数年はライブ配信等もあり昨年まではネット上で追いかけることはできました。

開場10分くらい前に現地に到着。少し天気が崩れ始め、雨が少し降ってきたところで開場時間となりました。チケットもぎりをすぎて、ホール内に入ると天井のシャンデリアがとても煌びやかでした。

 

18:30を過ぎたところで、「第5回Young Composer’s Competition」の講評と演奏が始まります。まず依田さんが登場、紹介のちに、審査員の久石さんと足本さんが登壇されました。依田さんがMCで質問をしながら、久石さんと足本さんが回答するスタイル。近年の久石さんのコンサートではMCが無くなったため、久石さんの声を聞ける貴重なMFシリーズでもあります。

冒頭で依田さんの質問を久石さんが聞き取れず、何度も聞き返すところからはじまり、久石さんの「こんにちは」から始まり、MFが11回目の開催であること、コンペは5回目で、作品が40曲以上あったこと。今回の受賞作品は弦の書き方がよく、亡くなった西村先生へのオマージュも感じられたことなどから、ミニマルベースの作品ではなかったが、入賞することになったことなどが語られました。

一度、3人が舞台から袖に戻りましたが、慌てて依田さんが再登場。依田さんが「大事なことを忘れていました~」と久石さんが袖から「何のフリだよ~笑」と答えながら再登場。そこから久石さんが「今回は国立音大の学生さんたちが演奏してくださいます」と深々とお辞儀をされていました。その後学生カルテットチームが登壇し、コンペ作品の演奏に入りました。

 

・Fabil Luppi : SOL D’Oriente Fantasia for string quartet

3つの短めの楽章からなる作品でした。冒頭は久石さんの『Metamorphosis』のように音が変容していくようで、グラデーションが変化していくような音色でした。中盤の楽章ではグリッサンドで低音から高音まで駆け上がっていき、トレモロ奏法が各所で響き渡る構成。終盤ではピチカートやトレモロが次々と展開されて、さざなみが寄せて返していくような印象を受けました。

講評では「不協和音が全体を支配して~」とのことでしたが、聴きにくいわけではなく、カルテットという弦楽だけの響きを存分にいかした作品だなぁと素人目線ですが感じることできました。

 

演奏が終わり、奏者が退場すると、コンサート本編へ向けて舞台の配置転換が行われました。19:00すぎに会場が暗くなり、ステージに続々と奏者が登壇。チューニングの後に久石さんが登場。いよいよ本編のスタートです。

 

・Philip Glass/Joe Hisaishi:2 Pages Recomposed

2018年のMFでの演奏以来、再度プログラム入りました。「♪ソドレミファー」という音型をひたすら繰り返し、音型を微妙変えながら、発展させていくミニマルスタイルの作品です。久石さんがリコンポーズすることによって、久石さんの曲では?と錯覚を起こす楽曲でもあります。

CD音源にもなっているのですでに何度も聴いてきましたが、改めて生で聴くと、無いはずのフレーズが立体的に聴こえてくる面白さがより際立ちます。「ソドレミファ」の一部を強調していくだけで、揺らぎのような音型や、時計の針が動くような旋律が聴こえてきます。

中盤の盛り上がり後は、久石さんが音量を小さくする指示を出します。後半部は、ストリングスのトレモロが加わり、より迫ってくるような迫力が出てきます。1st Vnの奏でる「ソドレー」「ソドレミー」の鋭い旋律がとってもエモーショナルに感じました。

 

・Philip Glass:String Quartet No.5

舞台転換後、今度はカルテットのみの演奏。コンペの演奏では着席でしたが、本編では立奏スタイルになっていました。しかも、このカルテットでもいわゆる対向配置スタイル。久石さんのこだわりを感じます。

1.ピチカートのちに悲しげな旋律が提示されました。このモチーフが今後の楽章で展開されていきます。

2.チェロの波打つような低音の音型にピチカートと和音が繰り返されていきました。シンコペーションが印象的の少し明るさのある雰囲気から徐々に暗い雰囲気へ。

3.アップテンポで明るい雰囲気の楽章。二ノ国サントラの『ホットロイト』ような印象を受けました。時折2nd Vnの小林さんとViolaの中村さんが楽しそうに顔を見合わせながら笑顔で演奏されていました。

4.3楽章とは一変し、重苦しいく切ない旋律が印象的。1st Vnの郷古さんの音色が美しく響き渡っていました。

5.プログラムに記載されていた通り、ジェットコースターのように上下に大きく動き回る音型から始まります。時折『Tri-AD』に似たような旋律も聴こえてきます。1楽章の再現部の後に、激しいダンスパートのセッションへ。再度1楽章の再現部に戻り、最後はピチカートで静かに消えていくように終わりました。

 

ここまでで2曲の弦楽4重奏曲を聴いて、この編成の奥深さを感じました。久石さんのいつか書かれるはずの『String Quartet No.2』も期待しています。

 

ー休憩ー

 

・David Lang:Breathless

休憩をはさんで、今度は木管が中心の楽曲です。下手側からフルート、オーボエ、クラリネット、バスーン、ホルンと並んでいました。フルートから始まり次々といろんな楽器が単音を鳴らしていくと、それらが旋律のように聴こえたり、リズムが構築されていくような楽曲でしたが、個人的には今回のコンサートの曲目で一番難解に感じました。

小鳥のさえずりや、木々が風で揺れる音が意図しないところで楽曲のように聴こえてくるような効果を利用している雰囲気も感じました。演奏はとても難しそうで、皆がリズムをしっかりと刻みながら、個々のタイミングを測って音を紡いでいっているようでした。

 

・Max Richter/Joe Hisaishi:On the Nature of Daylight

続いては金管セクションがメインの楽曲。舞台下手側からトランペット、ホルン、バスーン、トロンボーンでトランペットのやや後ろよりにクラリネットという編成でした。

トロンボーンによる息の長い和音のベースにホルンの柔らかな旋律がゆったりとした気持ちにさせてくれました。そのホルンの旋律を福川さん信末さんと交互にパスしあう様子が印象的です。後半はトランペットのロングトーンも加わり、穏やかながら、とても力強いフィナーレへと向かっていきました。

 

最後の曲は、いままでのメンバー・セクションが集結して、久石さんの新曲へと続きます。

 

・Joe Hisaishi:The Chamber Symphony No.3

1.ストリングスの導入からはじまり、金管セクションが加わりました。「♪タラッ!タラー」というフレーズが随所に加わり、キャッチーで印象的なモチーフが繰り返されていきました。ピアノがそのフレーズを奏でると弦楽がピチカートを添えたり、木管が彩りを加え、フルートがそのフレーズを奏でるとトライアングルの音色が印象的に残ります。

中盤ではスローテンポとなり、弦楽とピアノをフレーズを紡いでいる記憶があります。終盤にかけて徐々に激しくなり、打楽器や金管が大活躍。スネアの連打や金管の華やかな咆哮から緊迫感がありました。

2.前楽章とは雰囲気が一変。急・緩・急の構成のためか、ゆったりと出だしから始まりました。古典的なピアノの旋律にストリングスが重なっていきます。元々はピアノソロのための作品だったためか、随所にピアノの旋律が場面転換時に現れる感じがしました。ピアノの旋律を挟み、金管が入ってきたり、木管が入ってきたり。

タンバリンとストリングス、ミュートのトランペットとピアノと音色が記憶残りやすい、組み合わせのパートが続きます。徐々に盛り上がっていき、『Metaphysica(交響曲第3番)』の2楽章のような構成を思い出しました。終盤は冒頭の雰囲気を再現し、次の楽章へ進みます。

3.かぐや姫の物語のサントラより『絶望』のような力強い音を4打くらい繰り返したのち、弦楽により細かく動くパッセージが繰り返されていきます。徐々に動きが大きくなり、上下へ駆け巡るような早い旋律が印象に残ります。この細かいパッセージがピアノソロや、木管、金管、弦楽と様々なパートへ次々と引継ぎ、時にはテンポを落としたり、急加速したり、息つく間もなく怒涛のように楽曲雰囲気が次々と変化していきました。

『Tri-AD』のような弦楽器が上昇していく様子や、『Contrabass Concerto』のような打楽器の連打。『2 Pieces』のような強い打撃の音。これらの久石さんの既存楽曲を次々と連想することができました。終盤は弦楽の上昇音型と激しいリズムの連打から、突如曲が止まり、ピアノの長い低音の伸ばす音で失速するようにして終わるのが記憶に強く残りました。

 

MFシリーズはアンコールはないため、演奏が終わると、メンバー全員がステージ前に一列になり、何度かお辞儀をしていました。久石さんも終始楽しそうにメンバーと交流をしていました。

今回、配信等は現時点では予定されていませんが、ステージや会場に少なくとも7台のカメラが置かれていました。収録用のマイクもかなりの本数がありましたので、新作を含め、どこかで機会がありそうです。

18:30くらいからスタートして、カーテンコールが終わると時刻は21:15くらい。舞台転換が多かったのもありますが、3時間近くのコンサートとなりました。

たっぷり音楽を聴けて大満足で会場を後にしました。

2024年8月9日 ふじか

 

そうこんなコンサートだったとか、そうこんな曲演奏してたとか、何年先に見てもすぐに思い出せそうです(感謝!)。そっかこんなコンサートだったんだとか、そっかこんな曲演奏してたんだとか、久石譲新作ってこんなんだったんだとか、何年先に映像がなくても音源がなくてもすごくイメージできそうです(チクッ!)。

ふじかさんのレポートにもありました「2 Pages Recomposed」の演奏についてです。音源化もされていて再演となりましたが、指揮の緩急や強弱は以前よりも明確になっていましたね。近年指揮するミニマル作品例えば「DA・MA・SHI・絵」などもそうですが、ある一定の音量で疾走感をキープする従来からの変化がうかがえます。ベートーヴェンやシューベルト交響曲にみられる明確な強弱記号のスコアなども影響があるのでしょうか。いずれにしても、ミニマルをp(ピアノ)で均一に鳴らすのはf(フォルテ)で鳴らすことよりも大変な気がします。ぜひ聴きどころです。

僕の知る限りふじかさんもショーさん(下に紹介)も、かなりの数のコンサートに行かれていて、イベントの重なるスペシャル・ウィークもあると思います。その全部を書くことはなかなか難しいことです。そんななかこうやって書き残してくれてありがたい限りです。

 

 

 

 

こちらは、いつものコンサート・レポートをしています。

 

 

みんなのコンサート・レポート紹介

会場でもお会いしたファンつながりショーさんのコンサート・レポートです。会場の雰囲気からコンサートの細かいところまでたくさん伝わってきます。同じコンサートにいても見ているところや感じているところは一人ずつ全く違う、それもわかって読んでてとても楽しいです。ファン歴も長く過去数多くのコンサート・レポートが収められています。今となっては触れれるだけ貴重なページ、ぜひめくってみてくださいね。

JOE HISAISHI presents MUSIC FUTURE VOL.11(2024.7.26)
from Sho’s PROJECT OMOHASE BLOG 改 seconda

久石譲コンサート オーナーの鑑賞履歴
from Sho’s PROJECT OMOHASE BLOG 改 seconda

 

それから、国際色豊かに英文レポートです。コンサート一日のことが鮮明に記されています。作品ごとの聴く前と聴いた後のイメージの変化がよく伝わってきます。こういう感じ方もあるんだと学びながら楽しく読ませてもらいました。世界各地の映画音楽作曲家のコンサートに足を運びそのレポートがいっぱいです。今は日本を拠点とされているようです。ぜひWeb翻訳してお楽しみください。

Joe Hisaishi presents Music Future Vol. 11 (2024) – Soundtracks in Concert
from Soundtracks in Concert – Your one-stop source for soundtrack concert reports, reviews and more!

 

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋 では、久石譲コンサートのレポートや感想、いつでもどしどしお待ちしています。応募方法などはこちらをご覧ください。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心もちで、思い出をのこしましょう。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
ひとつのコンサートに4つもコンサートのレビューを紹介できるなんてうれしい限りです。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪